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・澤田 俊明

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Academic year: 2022

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棚田の保全と活用にむけた 6 次産業化 オーナーモデルの経済効果について

岸村 憲作

1

・澤田 俊明

2

・坂本 真理子

3・

宮井 浩志

4

1正会員 株式会社あいコンサルタント(〒771-0134徳島市川内町平石住吉209番地5-403 [email protected]

2正会員 博士(工学)有限会社環境とまちづくり・徳島大学客員教授(〒771-4501徳島県勝浦郡上勝町福 原川北30番地)

[email protected]

3正会員 有限会社環境とまちづくり主任研究員(〒771-4501徳島県勝浦郡上勝町福原川北30番地)

[email protected]

4非会員 徳島大学地域創生センター特任助教(〒771-4501徳島県勝浦郡上勝町福原川北30番地徳島大学上 勝学舎)

[email protected]

中山間地域における棚田をはじめとする二次的自然は,保全と活用の同時解決が求められている.棚田に おける耕作者の大半は,65歳以上の高齢者が占めている.棚田を保全・活用するためには,棚田における稲 作技術の継承・継続した労働力の確保・収益性向上等が課題である.本研究では,徳島県勝浦郡上勝町にお ける棚田オーナー制を対象として,既存オーナー制と酒づくりを介した6次産業化オーナー制の仕組みを取 り上げ,棚田米の収益性向上に着目し,その経済効果の検討を行った.

Key Words: Rice terraces preservation, Sixth industrialization,Economic effect,Continuous activity

1. はじめに

中山間地域では人口減少等により人間活動の影響を受 けて形成・維持されている二次的自然環境の存続が危ぶ まれている.この中山間地域における「生活様式・産業 構造の変化,人口減少など社会経済の変化に伴い,自然 に対する人間の働きかけが縮小撤退することによる里地 里山などの環境の質の変化,種の減少ないし生息・生育 状況の変化」は生物多様性の第2の危機としてクローズ アップされている.

COP10(生物多様性条約第10回締約会議)において環

境省と国連大学高等研究所は,SATOYAMAイニシアテ ィブを提唱するなど,中山間地域における自然資源の持 続可能な利用・管理が課題となっている.

また,文化的景観(地域における人々の生活又は生業 及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民 の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの)

についても,重要文化的景観の保存と活用が課題となっ ている.以上のように,棚田をはじめとする二次的自然 環境は保全と活用の同時解決が求められている.

徳島県勝浦郡上勝町では,棚田の保全と活用を目指し

た取り組みが行われてきており,これまでにもワーキン グホリデーによる農山村交流や棚田オーナー制の展開と 課題に関する既往研究が行われている.

2. 研究目的

本研究は,棚田の保全・活用を目指した新たな事例と して徳島県勝浦郡上勝町における棚田を活用した6次産 業化オーナーモデルに着目し,その経済効果を検討する ことを目的とする.

3. 棚田保全・活用の取り組みと課題 (1) 既存オーナー制度について

上勝町では,重要文化的景観に選定されている樫原の 棚田において,NPO法人郷の元気による棚田オーナー制 が実施されている.本取り組みは,会費1口50,000円で 100㎡の棚田オーナーとなり,特典として玄米約30㎏を 受け取ることができる.オーナーは,田植え・草刈り・

稲刈りといった農作業に参加する.会費として支払われ た50,000円は,農作業を行う農家が35,000円,事務局を 担うNPO法人が15,000円を得る仕組みである.耕作放棄

(2)

2 地の提供を促進するための工夫として,農地提供のみで

も5,000円が農地提供者に入る仕組みとなっている.こ

の5,000円は100㎡で収穫できる米を販売した場合の農家 の手取に相当する額となっている.

玄米30㎏

図-1 既存オーナー制(土地所有者が農作業実施)

玄米30㎏

図-2 既存オーナー制(土地所有者が土地提供のみ)

(2) 既存オーナー制度の課題

樫原地区におけるオーナー数は,図-1に示すとおり微 増状態である.他の集落でもオーナー制度の導入を望む 声が聞かれるものの,新たなオーナーを呼び込むことが できるかは不確定である.また,高齢化の進展に伴 い,100㎡以上の比較的大きな棚田も放棄されつつあるな ど,新たなオーナー制度開発の必要性が高まっている.

13 12

15 18

16 17

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

2006 2007 2008 2009 2010 2011

図-3 樫原の棚田オーナー数の推移

上勝町の農業を支える世代は,65歳以上の高齢者であ り,近い将来に農業の担い手が不足することが懸念され る.新たな担い手を確保するためには,棚田米の収益性 向上が急務である.

0 50 100 150 200 250

100~

90~94 80~84 70~74 60~64 50~54 40~44 30~34 20~24 10~14 0~4

図-4 上勝町の年齢層別人口(H23.3.31現在)

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

昭和55 昭和56 昭和57 昭和58 昭和59 昭和60 昭和61 昭和62 昭和63 平成1 平成2 平成3 平成4 平成5 平成6 平成7 平成8 平成9 平成10 平成11 平成12 平成13 平成14 平成15 平成16 平成17 平成18 平成19 平成20 平成21 平成22

-5 上勝町の年度別人口推移(H23.3.31現在)

(3) 棚田における収益性の比較

棚田での農作業を維持するためには,面積当たりの生 産性向上が重要となる.普通米として販売した場合の売 上・ブランド米として販売の売上・オーナー制による収 入について収益性の比較を行った.

棚田1枚100㎡あたり玄米30㎏と設定すると,オーナー 制の収入は普通米の7倍程度となる.

NPO 法人 郷の元気 農家

土地・農作業提供

オーナー 農作業参加

オーナー料50,000円

手数料 15,000 円 35,000円

NPO 法人 郷の元気 農家 B

農作業のみ提供

オーナー 農作業参加

オーナー料50,000円

手数料 15,000 円 30,000円

農家 A 土地のみ提供

5,000円

(3)

3 (a) 普通米

聞き取りによれば,玄米 30 ㎏を上勝町管内JAに販売 した場合,農家の手取はおおよそ5,000円である.

(b) ブランド米

現在,樫原の棚田米は消費者への販売価格で玄米30㎏

が10,500円(350円/㎏)で販売されている.このうち,

農家の収入は9,200円である.

全国の主要な棚田ブランド米について,インターネッ トで玄米価格を調べた結果,平均約570円/㎏で販売され ている.「棚田米」・「天日干し米」・「源流米」・

「無農薬米」といったキーワードでブランド化が図られ ている.

(c) オーナー制

全国水土里ネットホームページの「全国棚田オーナー 制度」一覧に基づき,全国棚田のオーナー料を調べた.

もっとも安いオーナー料は110円/㎡,高いオーナー料は 500円/㎡,オーナー料の平均は約300円/㎡である.樫原 の棚田は全国で一番高いオーナー料500円/㎡であり,農 家収入は350円/㎡となる.

4. 上勝町正木地区における酒オーナー制の 取り組み

(1) 6次産業化オーナー制

棚田米の栽培・収穫・加工までをオーナー制の仕組み に組み込み,棚田米の付加価値向上を目指すのが6次産 業化オーナー制である.NPO法人郷の元気は徳島県勝浦 郡上勝町正木地区において,平成23年5月より「かみか つ酒つくり隊」という酒オーナー制をスタートさせてい る.

(2) 酒オーナー制モデルの仕組み

酒オーナー制は,オーナーからの出資金により酒米を 清酒に商品化するという6次産業化を内在させている点 が特徴である.酒米から清酒へと付加価値を向上させる ことで,棚田単位面積当たりの収益拡大を目指している.

もう一つの大きな特徴は,オーナーが支払う30,000円 のうち10,000円は上勝町内でのみ使用可能な商品券とし てオーナーに還元する点である.これにより上勝町内で 総額500,000円の消費が見込まれる.

その他,プロジェクト実施により排出される二酸化炭 素約2.5tをカーボンオフセットする取り組みや清酒売 上の5%を上勝町に寄付する取り組みも行われている.

-6 酒オーナー制モデル図

z 参加費1口:30,000円.

z 募集口数:50口.

z 参加特典:清酒1升瓶3本,上勝町商工会発行商品 券10,000円.

z 参加内容:田植・草刈・収穫・酒蔵見学.

z その他:参加者の移動,酒瓶製造,清酒運搬に伴 い発生する二酸化炭素をオフセット.

清酒売上の5%を上勝町へ寄付.

z 農地面積:約3,000㎡

z 生産量(米):870㎏

z 生産量(清酒):800本(うち650本販売)

z 販売予定価格:3,000円/1,800ml

NPO 法人 郷の元気 事務局 オーナー 農作業体験

徳島県内酒造会社 清酒製造 農家

土地・農作業提供

30,000円/口 上勝町商品券10,000円

清酒1升瓶3本 上勝町内

商店

購買総額500,000円

清酒 玄米

製造委託費 労務費

(4)

4 (3) 酒オーナー制参加者の分析

酒オーナー制参加者の性別は,男性 75%,女性 25% となっている.参加者の年齢層は,30 代が最も多く 30%,次いで40代が20%,20代・50代・70代以上が各 15%となっている.

オーナー制への参加動機は,「米作りの段階からお酒 づくりに参加することに興味を持ったため」,「プロジ ェクトの趣旨に賛同したため」,「この仕組みを他地域 でも実施したいため」等であった.

0% 20% 40% 60% 80% 100%

20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

図-7 酒オーナー制参加者年齢層

5. 酒オーナー制モデルによる経済効果

オーナー制による売上額は,上勝町商工会商品券使用 分500,000円,玄米販売による売上収入300,000円,清酒販 売による売上収入1,950,000円が見込まれる.清酒製造に 係る費用は,約1,200,000円程度になると試算されること から,農家と事務局への収入合計は,おおよそ1,000,000 円程度になるものと試算される.

上勝町内の経済効果は,1,550,000円(517円/㎡)とな り,既存オーナー制の500円/㎡をやや上回るものと試算 される.また,地域経済への経済効果は,2,750,000円

(917円/㎡)となる.

上勝町は「まるごとエコツー特区」の認定を受けてい ることから,農家民宿や農家レストランが濁酒製造免許 を取得することが認められている.将来的に,濁酒オー ナー制を実施すれば,町外の酒造会社に支払っている清 酒製造費も町内の業者に支払うことができる.

-1 酒オーナー制モデルによる経済効果試算

項目 売上額 ㎡あたり 上勝町内商店売上 500,000円 167円 農家玄米販売売上 300,000円 100円 徳島県内酒造会社売上 1,200,000円 400円 清酒販売による利益 750,000円 250円

合計 2,750,000円 917円

6. おわりに

棚田で農作業を続けている過半数は,65歳以上の高齢 者であり,耕作者の多くは年金を受給している.近い将 来,こうした棚田維持の担い手が現役を退くことが予想 されるなか,年金を受給していない世代が,いかに経済 的自立を図りながら棚田を維持するかが課題となってい る.酒オーナー制は大規模棚田の利活用事例としても有 効であり,こうした6次産業化オーナーモデルは,棚田 米の付加価値向上の新たな取り組みとして期待される.

参考文献

1) 田中紀子,花岡史恵,澤田俊明ほか:都市農村交流 型ワーキングホリデイの特徴分析-徳島県・上勝町 ワーキングホリデイの事例から-土木計画学研究講 演集,2005

2) 田中紀子,花岡史恵,澤田俊明ほか:地域再生にむ けた都市農村交流型ワーキングホリデイの展開と課 題-徳島県・上勝町ワーキングホリデイの事例から

-土木計画学研究講演集,2006

3) 花岡史恵,澤田俊明ほか:棚田保全に根ざした棚田 オーナー制の展開と課題-徳島県・上勝町「樫原の 棚田」を事例として-土木計画学研究講演集,2007

2011.8.5受付)

参照

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