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「開発」と「貧困」の視点から持続可能な社会の形成を目指す

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Academic year: 2022

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「開発」と「貧困」の視点から持続可能な社会の形成を目指す 公民科教育の単元開発研究

桑原敏典(岡山大学大学院教育学研究科)

本研究は 、高 等学校公 民科 において、 「 開発」と「 貧 困」の 問題を 取り上げ 、持 続可能な 社会 の形成を 目指し、 それ を支える 市民 の育成を 目標 とする単 元を 開発しよ うと するもの であ る。「開発 」 と「貧困」

の問題は 、従 来から公 民科 において も取 り上げら れて いる。し かし ながら、 その 学習は問 題の 表面的な 理解にと どま り、他国 の立 場も理解 し自 らもでき るこ とを見つ けて 取り組も うと いうスロ ーガ ンの提示 で終わる こと が多いよ うに 思われる 。本 研究にお いて は、持続 可能 な社会と いう 観点から「開 発」と「貧 困」の問題 を 捉えなお し、それを支 える 社会の仕 組み やシステ ムを も認識さ せる 単元の開 発を 目指した。

キーワー ド: 公民科、 単元 開発、持 続可 能な社会 、開 発、貧困

Ⅰ.はじめに

本研究は、以下の三つの課題に応えようとするも のである。第一は、持続可能な社会とはどのような ものであり、それはなぜ実現されなければならない のか。第二は、持続可能な社会を実現するために、

「開発」は「貧困」の問題とどのように関わるのか、

あるいは関わらないのかということである。そして、

第三は、上記の二つの課題に公民科教育を通して応 えていくならば、どのように取り組んでいくべきか いうことである。本研究では、これらについて、持 続可能な社会を作り上げるためにはシステムの転換 が必要であることを主張し、具体的には、既存のシ ステムを吟味し持続可能な社会を形成する制度や仕 組みを考えさせる公民の単元開発の原理と方法を提 示していきたい。

持続可能な社会とは、将来の世代が、今の世代と 同様の幸福を享受できることを保障し得る社会のこ とである。かつて、開発すべき土地がまだまだ残さ れており、消費できる資源が大量にあった時代には、

便利さと快適さをどんなに追求しても、致命的な打 撃を与えさえしなければ、その状態が持続し得ない ものであるとは考えられなかった。しかし、現在は、

我々が日常生活の中でごく普通の幸せを享受するこ とが、少しずつ地球に回復不可能な打撃を与え将来 そのような幸せを受けることができなくなる時代を もたらすことが明らかとなっている。ゴミを捨てる こと、自動車に乗って旅行に出ること、レストラン

で食事をするといったごく日常の行動が、持続し得 ない社会を生むのである。つまり、持続可能な社会 を実現するためには、我々の生活の仕方を見直すこ と、生活の基盤となっている社会のシステムを見直 すこと、そして、そのシステムの基盤となっている 我々の考え方を問い直すことを避けては通れないの である。

このように考えると、開発によって幸せを求めて きた従来の考え方は否定され、開発は望ましくない ものと考えがちである。確かに、開発が我々の生活 を便利にして、必ず幸福をもたらしてくれるとは言 えない状況が見られるようになった。しかし、開発 なくしては全ての人が同じレベルの幸福を享受でき ないのも事実であろう。さもなければ貧困に甘んじ なければならないのである。開発を進め、貧困を解 消し、そのうえで持続可能な社会を形成していくこ とが求められていると言える。このことは、従来の ように開発を市場の原理にまかせ、各自が効率性を 追求していけば資源の適正な配分がなされるという ことに立ち帰っていくということではない。なぜな ら、持続可能な社会において資源を配分すべきは、

今の社会に生きている人間だけではないからである。

将来の世代にも適正に資源を配分し得るような新た なシステム作りが求められているのである。

公民教育が、持続可能な社会の形成という要請に

応えるためには、このようなシステムとそれを支え

る思想の転換を捉えさせるということである。そし

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て、そのような社会を支える市民としての資質を身 に付けさせなければならない。本研究においては、

経済発展と環境保護をめぐる先進国と発展途上国の 問題を取り上げながら、貧困をなくし持続可能な社 会を形成するための開発を進めていく国際社会のシ ステムを考えさせていく公民科単元の開発を通して、

冒頭で述べた本研究の三つの課題に応えていきたい。

Ⅱ.現在の公民科教育における「開発」と「貧困」

の取り扱いと問題点

現在、公民科教育において「開発」と「貧困」が 取り上げられるのは、「現代社会」と「政治・経済」

である。「現代社会」では、内容(1)「現代に生きる 私たちの課題」、内容(2)-イ「現代の経済社会と経 済活動の在り方」、内容(2)-エ「国際社会の動向と 日本の果たすべき役割」の中で取り上げることがで きよう。また、「政治・経済」では、内容(2)「現代 の経済」のイ「国民経済と国際経済」や、内容(3)

「現代社会の諸課題」のイ「国際社会の政治や経済 の諸課題」で、取り上げられるはずである。

現在の公民科教育における、 「開発」と「貧困」の 問題の取り扱い方については、次の4点の問題を指 摘することができる。

① 生徒にとって遠い国の問題としての「開発」

と「貧困」

② 経済的な問題に焦点化された取扱い

③ それぞれの言葉に付きまとう固定化されたイ メージ

④ 背後にある社会の仕組みやあり方が見えない こと

①は、 「開発」と「貧困」が専ら発展途上国の経済 上の問題として取り扱われることによる。そのため、

深刻な問題であることは理解できても、飽くまで自 分たちの世界とは切り離された遠く離れた国の事象 としか認識できないのである。②は、現状の公民科 授業が重要とされる概念の解説にとどまり、それら を構造化して現実の社会の出来事と関連付けて教授 するものとなっていないことに起因する。そのため、

授業は事項の羅列にとどまり、経済領域に分類され る事柄については、飽くまで経済問題としてのみ取 り上げられ、背後にある政治の在り方や社会関係が 考察されないのである。③は、 「開発」と「貧困」と いう言葉に対して生徒だけではなく教師も持ってい るイメージが、これらの問題について冷静かつ合理 的に判断・思考することを妨げているのではないか

ということである。そのイメージとは、 「開発」は悪 であり、 「貧困」を解消に対しては長期的に見れば無 駄であり、一部の階層に利益をもたらすのみである というものである。したがって、 「開発」の負の面の みが強調され、実際には「開発」によって現代社会 は発展してきたことや、それなくしては現実的には

「貧困」を解消しえないことなどが見落とされがち となってしまうのである。④は、②の問題とも関連 するが、 「開発」と「貧困」をたんなる経済上の問題 としてのみとらえ、その背景にある政治制度やシス テム、社会的なつながり等の理解にまで深められて いないということである。

以上のような問題点を克服し、生徒自身が「開発」

と「貧困」の問題に関心を持ち、自らもその解決に 向けて取り組もうとする意欲を育てるためには、こ れらを領域にとらわれることなく総合的に取り扱い、

社会の構造やシステムと関連付け、わが国の社会の 在り方と重ね合わせながら考察できるようにしてい くことが必要であると考えられる。

Ⅲ.「開発」と「貧困」のとらえ方

Ⅱで示した問題点を克服するために、本研究では

「開発」と「貧困」を総合的に取り扱っていくこと にしたいが、具体的には以下の4点のような視点か ら捉えていく。

① モノの「開発」ではなく,人の「開発」

② 「貧困」とは経済的な問題ではなく,政治,

社会,文化といったあらゆる側面の問題を含む ③ 「貧困」は何かが不足していることではなく,

機会や能力が奪われていること

④ 「開発」は,貧困によって奪われているもの を取り戻すこと

①と②は、 「開発」と「貧困」の概念を従来よりも 広くとらえ直すことを意味している。その結果とし て、③、④のようにこれらの概念に新たな意味を付 加していきたい。 「貧困」は、経済に限らず人を取り 巻く環境の問題であり、本来は手にすることができ るはずのものが奪い取られている状況である。そし て、 「開発」は、そのような状況を解消し、本来の在 り方を回復することである。そのため、ただ経済的 な利益を配分することではなく、人が本来的もって いる能力を発揮できるような状況を持続的に作り出 すこととなる。

このように考えると、 「貧困」は発展途上国だけの

問題ではないことが分かる。経済的に恵まれていれ

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ば、自分のもつ能力を発揮する機会と条件をそれだ け多く手にしている可能性は高いものの、経済的な 豊かさは「貧困」解消の絶対的な条件ではないとい うことは言えよう。また、 「開発」は、富をもたらす ことでも配分することでもなく、ただ、本来であれ ば発揮できるであろう能力が発揮されない状況を解 消するだけのことである。しかし、それは一時的な その場しのぎの解決ではなく、その人が自らの生き 方と社会の在り方を熟考し、能力を発揮する場と方 法を決定できるようにするに十分なほど、将来にわ たって持続できるものでなければならない。

以上のような観点から、持続可能な社会の形成と いう点にも考慮しながら、公民科教育における「開 発」と「貧困」を取り上げた単元を開発していくこ ととする。

Ⅲ.単元開発の視点

1.持続可能な社会の形成と「開発」と「貧困」の 問題

単元開発にあたっては、持続可能な社会の形成と

「開発」と「貧困」の関係に関して、次の二点に留 意して教材研究を進めていくこととした。

① 経済成長を目標とする「開発」は,一時的に

「貧困」を解消し得ても持続可能な社会は作り 得ない。

② 「開発」は,失っている機会や能力を取り戻 し人が自立することを支援するもの。持続可能 な社会は自立した当事者によって作られる。

すなわち、従来の大型プロジェクトを中心とする 開発は、一時的な需要の増大と雇用の確保を生み出 すものの、プロジェクト自体が終了するとともにそ れらの恩恵ももたらされなくなり、後には維持しえ なくなった巨大な建造物が残されるという結果をも たらすということが少なくなかった。そして、 「貧困」

の解消を目指して新たなプロジェクトが発足すると いうことが繰り返されてきたのである。このような 状況は、 「開発」できる土地や自然が豊富にあった時 代だからこそ可能であった。今や、そのような未開 の地は限られており、開発のもたらした負の遺産に よって地球は極限まで疲弊している。したがって、

「貧困」の解消のためには、経済成長を目指すので はなく、持続可能な社会を作り出す人材の育成に主 眼をおいた「開発」が必要なのである。

そのような、 「開発」は、必然的にそれぞれの社会 を構成している当事者の手によって行われることと

なろう。なぜなら、その社会に住み、将来にわたっ てその維持や発展を支えるのは当事者以外にないか らである。そのため、 「開発」は、それら当事者が自 らの能力が発揮できるように支援するためのものと なり、従来の先進工業国から発展途上国への資金の 投下ということではなくなるのである。

以上のように、持続可能な社会という観点から「開 発」と「貧困」の問題を捉えていくためには、経済 第一主義の否定と、当事者主義にたつ問題解決が不 可欠であると言える。

2.教材選択の視点

本研究では、教材選択に当たっては以下の二点に 留意した。

① 「貧困」に焦点を当てた教材選択

・現象としての「貧困」と,要因としての「貧 困」

② 「開発」に焦点を当てた教材選択

・結果としての「開発」と,可能性としての「開 発」

「貧困」に焦点を当てる場合には、現在、観察で きる現象として表れている「貧困」だけではなく、

様々な問題の根底にあり、本来享受できるはずの生 活を人々ができていない状況の根底にある要員とし ての「貧困」にも注目したい。

また、 「開発」については、具体的に結果として何 か利益をもたらすことを目指したものだけではなく、

直接的で物質的な効果は決して大きくはないが人々 の将来に対する可能性を開くことを目指したものに 注目していきたい。

以上のような観点から、開発単元では、 「貧困」と して発展途上国の問題を取り上げるだけではなく、

格差社会と呼ばれるようになった日本においても同 様の現象が見られないかを検討させることにする。

また、「開発」については、2006 年にグラミン銀行 がノーベル平和賞を受賞したことにより一層注目さ れるようになった、マイクロファイナンスを取り上 げていくことにする。

3.授業構成

本研究においては、主に「開発」に焦点をあて、

事実の解釈を重視した事実探究型の意思決定学習を

目指すこととする。事実探究と意思決定は一見相い

れないもののようにも見えるが、本研究では、飽く

まで事実探究にとどまりながらも、事実の評価を通

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して自らがどのような社会を志向するか、持続可能 な社会のあり方はどのようなものかについて考察さ せていきたいと考えている。

「開発」と「貧困」の問題を取り上げた場合の授 業構成については、以下のような3つのタイプが考 えられるのではないか。

① 「貧困」に焦点化した探究型の授業構成 ② 「開発」に焦点化した意思決定型の授業構成 ・結果重視の事実探究型意思決定

・理念重視の価値探求型意思決定

「貧困」の側からこの問題を捉えさせようとする ならば、その原因や結果を探究させる授業構成が考 えられよう。それに対して、 「開発」の側から考えさ せようとすれば、それは必然的にその「開発」の評 価を含むことになる。すなわち、社会の現状や、将 来どのような社会を形成していきたいかという構想 に基づいて、 「開発」の成果や影響を評価することが、

「開発」の学習には不可欠と考えられるのである。

本研究においては、 「開発」の具体的な事例としてマ イクロファイナンスを取り上げ、それが実際にもた らしている効果と、その結果変化した社会のあり方 を検討させていくため、 「開発」の結果を重視した事 実探究型の意思決定学習を取り入れることとした。

4.開発単元のねらい

本研究において開発した単元は、以下の4点をね らいとしている。

① 「貧困」と「開発」それぞれの概念の見直し ② グローバルな「貧困」とローカルな「貧困」

の関連付け

③ 生活水準の向上ではなく,人間らしい生き方 の追求としての「開発」

④ 「開発」の背後にある社会の仕組み,システ ムの認識

①については、これまで述べてきたようにそれぞ

れの概念について従来よりも広く、そして経済的な 観点にこだわらずに取り上げていくこととする。ま た、②に示したように、 「貧困」を広い観点からとら えることで世界規模の問題と、身近に潜んでいるわ が国の「貧困」の問題を関連付けることも目指した い。そのうえで、人間を育てる「開発」のあり方と それを支える社会の仕組みやシステムの変革につい ても認識させることをねらいとしている。

Ⅳ.公民科教育における「開発」と「貧困」に関す る単元開発

具体的な開発単元は、後に教授書としてまとめて 掲載している。

Ⅴ.おわりに

開発単元は、マイクロファイナンスという従来取 り上げられることのなかった教材に注目し、「開発」

と「貧困」について生徒に新たな視点から捉えさせ ることができるものとなった。しかしながら、マイ クロファイナンスは歴史学や文化人類学など多様な 学問において取り上げられており、本研究で取り上 げたのはその一面に過ぎない。この事象自体につい て多様な領域から教材研究を進めていくことが課題 として明らかになったと考えている。

[参考文献]

・岩田正美『現代の貧困』筑摩書房,2007 年.

・ヴァンダナ・シヴァ『緑の革命とその暴力』日本 経済評論社,1997 年.

・絵所秀紀・穂坂光彦・野上裕生『シリーズ国際開 発第1巻 貧困と開発』日本評論社,2004 年.

・菅正広『マイクロファイナンスのすすめ』東洋経 済新報社,2008 年.

・斎藤文彦編著『参加型開発―貧しい人々が主役と

なる開発へ向けて』日本評論社,2002 年.

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高 等 学 校 公 民 科 教 授 書 試 案 1 . 単 元 名 「 貧 困 の な い 社 会 を ど の よ う に 実 現 す る か 」

2 . 単 元 目 標 貧 困 と は 何 か と い う こ と に つ い て 多 様 な 面 か ら 考 察 し , 社 会 の 諸 事 象 を 貧 困 と い う 観 点 か ら 捉 え な お す こ と が で き る よ う に す る 。 そ の う え で , な ぜ 貧 困 が 生 じ る の か , そ の 解 消 の た め に は ど の よ う な 努 力 が な さ れ て き た の か を 追 究 し , 貧 困 の 背 景 に あ る 社 会 の 仕 組 み や な さ れ て き た 取 り 組 み の 効 果 や 課 題 を 明 ら か に し て い く 。 そ し て , 最 終 的 に は , 様 々 な 状 況 で 貧 困 に 苦 し ん で い る 人 々 を , そ の 状 況 か ら 救 い 出 す た め に ど の よ う な 方 法 が あ る か に つ い て 自 分 な り の 考 え を 持 つ こ と が で き る よ う に す る 。

3 . 単 元 計 画( 全 4 時 間 )

第 1 時 :「 貧 困 と は 何 か ? な ぜ , 貧 困 が 生 じ る の か ? 」

貧 困 と は ど う い う 状 態 か に つ い て , ア フ リ カ で 飢 餓 に 苦 し む 人 々 , ニ ー ト と 言 わ れ る 日 本 の 若 者 , ワ ー キ ン グ ・ プ ア に 苦 し む 日 本 の 労 働 者 の 比 較 し な が ら 考 え さ せ る 。 特 に , 貧 困 に 苦 し ん で い る 人 々 が 何 を 失 っ て い る か を 考 察 さ せ る こ と で , 貧 困 と は た ん な る 所 得 の 問 題 で は な い こ と に 気 付 か せ る 。

第 2 時 :「 開 発 は 貧 困 を 解 消 し 得 る の か ? ― 緑 の 革 命 の 功 罪 ― 」

農 村 開 発 の た め に 1960 年 代 に 普 及 し た「 緑 の 革 命 」と は 何 か ,そ の 結 果 と し て 貧 困 が ど の よ う に 解 消 さ れ ,そ の 一 方 で ど の よ う な 問 題 が 生 じ た か を 考 え さ せ る 。「 緑 の 革 命 」を 手 掛 か り と し て ,従 来 型 の 開 発 が 経 済 成 長 を 目 指 し , あ る 程 度 の 成 果 を 収 め た も の の 限 界 も あ っ た こ と に 気 付 か せ , 貧 困 を 解 消 し 持 続 可 能 な 社 会 を 構 築 し て い く た め の 開 発 と は ど の よ う な も の で な け れ ば な ら な い か と い う こ と へ の 課 題 意 識 を 持 た せ る 。

第 3 時 :「 開 発 は 何 の た め に 行 う の か ? ― モ ノ か ら 人 へ ― 」

1990 年 代 に な っ て 注 目 さ れ る よ う に な っ た 援 助 の 手 法 で あ る マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス を 取 り 上 げ て ,そ の 仕 組 み と 貧 困 緩 和 へ の 効 果 を 考 え さ せ る 。 そ の う え で , 従 来 型 の 開 発 が 経 済 成 長 を 目 指 し た も の で あ っ た の に 対 し て , 新 し い 開 発 は モ ノ よ り も 人 の 開 発 を 重 視 し た も の で あ る こ と に 気 付 か せ る 。 そ し て , そ の よ う な 開 発 を 進 め て い く た め に は 従 属 関 係 を 基 調 と す る の で は な く , パ ー ト ナ ー シ ッ プ に 基 づ く 国 際 関 係 が 必 要 で あ る こ と を 理 解 さ せ る 。

第 4 時 :「 貧 困 を な く す た め に ど う す べ き か ? ― グ ロ ー バ ル な 問 題 か ら , ロ ー カ ル な 問 題 の 解 決 へ ― 」

こ れ ま で の 学 習 を ふ ま え て , グ ロ ー バ ル な 貧 困 問 題 を 解 決 す る 国 際 社 会 の シ ス テ ム が ど の よ う な も の で あ る か を 明 ら か に し , そ の シ ス テ ム を 応 用 し て , ニ ー ト や ワ ー キ ン グ ・ プ ア な ど の 国 内 の 貧 困 問 題 を 解 決 で き る か ど う か に つ い て 考 え さ せ る 。 例 え ば , マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の 手 法 が 国 内 に も 応 用 で き な い か を 検 討 し , そ の メ リ ッ ト と 限 界 に 気 付 か せ る 。

4 . 到 達 目 標

( 1 ) 概 念 的 知 識 A . 貧 困 の 定 義

a - 1 . 貧 困 は , 所 得 や 資 産 な ど が 不 足 し 衣 食 住 に 困 る と い う 経 済 的 状 態 で あ る 。( 狭 義 の 貧 困 )

a - 2 . 貧 困 と は , 自 分 ら し い 生 き 方 を す る た め の 能 力 や 自 由 が 奪 わ れ て い る 状 態 で あ る 。( 広 義 の 貧 困 ) B . 貧 困 の 原 因

b - 1 . 貧 困 は , 経 済 が 縮 小 し 資 金 が 不 足 し て い る た め に 生 じ る 。( 狭 義 の 貧 困 の 原 因 )

b - 2 .貧 困 は , 経 済 的 な 要 因 だ け で は な く , 政 治 的 , 社 会 的 ,文 化 的 要 因 に よ っ て , 自 分 ら し く 生 き よ う と す る 自 由 が 制 約 さ れ る こ と に よ っ て 生 じ る 。( 広 義 の 貧 困 の 原 因 )

C . 開 発 の 目 的

c - 1 . 開 発 と は 経 済 成 長 を 促 す こ と で あ り , そ の た め に は 経 済 活 動 を 活 発 に す る た め に 資 金 を 供 給 し 道 路 , 鉄 道 , 港 湾 等 の 社 会 基 盤 を 整 備 す る 必 要 が あ る 。( 開 発 に 関 す る 古 い パ ラ ダ イ ム )

c - 2 . 開 発 は , 貧 困 に 苦 し ん で い る 人 々 の 生 活 改 善 を 目 標 と し て お り ,そ の た め に は , そ の 人 々 が 自 分 ら し く 活 動 で き る 環 境 を 整 え る 必 要 が あ り ,活 動 を 制 約 し て い る 経 済 的 , 政 治 的 ,社 会 的 ,文 化 的 要 因 を 取 り 除 か な け れ ば な ら な い 。( 開 発 に 関 す る 新 し い パ ラ ダ イ ム )

D . 開 発 の 方 法

d - 1 . 経 済 成 長 を 促 す た め に ,開 発 は , あ ら か じ め 決 定 し た 目 標 に 向 け て 政 府 等 を 中 心 に ,支 援 す る 先 進 国 と 援 助 さ れ る 発 展 途 上 国 と の 関 係 の 中 で 計 画 的 に 進 め ら れ る 。( 古 い パ ラ ダ イ ム に 基 づ く 開 発 の 方 法 ) d - 2 . 生 活 改 善 を 目 指 し て ,開 発 は,途 上 国 の 人 々 が 主 体 と な っ て 自 己 実 現 を 妨 げ て い る 制 約 を 取 り 除 く こ と を 支 援 す る よ う に 進 め ら れ る 。支 援 の 形 は 支 援 す る 側 と 支 援 を 受 け る 側 が 対 等 に 話 し 合 っ て 決 定 さ れ る 。( 新 し い パ ラ ダ イ ム に 基 づ く 開 発 の 方 法 )

E . 開 発 の 背 景 と な る ( 国 際 ) 社 会 の シ ス テ ム

e - 1 .古 い パ ラ ダ イ ム に 基 づ く 開 発 論 は , 援 助 す る 側 ( 先 進 国 )に 援 助 を 受 け る 側 ( 発 展 途 上 国 ) が 従 属 す る 関 係 性 に 基 づ い て い る 。

(6)

e - 2 .新 し い パ ラ ダ イ ム に 基 づ く 開 発 論 は , 援 助 す る 側 ( 先 進 国 ) と 援 助 を 受 け る 側 ( 発 展 途 上 国 )は た が い に 平 等 で , パ ー ト ナ ー シ ッ プ に 基 づ く 関 係 に あ る と 考 え る 。

( 2 ) 概 念 構 造 図

5 . 単 元 の 展 開

第 1 時 :「 貧 困 と は 何 か ? な ぜ , 貧 困 が 生 じ る の か ? 」

過 程 教 師 の 指 示 ・ 発 問 教 授 学 習 過 程 資 料 生 徒 に 獲 得 さ せ た い 知 識 導

【 様 々 な 貧 困

○ 貧 困 と は ど の よ う な 状 態 を 意 味 し て い る だ ろ う か 。

○ 今 の 社 会 で ど の よ う な 人 が 貧 困 に 苦 し ん で い る だ ろ う か 。

○ 次 に あ げ る 人 々 は ,貧 困 に 苦 し ん で い る 人 々 で あ る が ,そ れ ぞ れ ど の よ う な 状 況 か を 説 明 し な さ い 。

① ア フ リ カ の ジ ン バ ブ エ で 貧 困 に 苦 し ん で い る 女 性 。

② い わ ゆ る「 ワ ー キ ン グ・プ ア 」と 言 わ れ る 状 況 に あ る , 日 本 の 男 性 。 ③ い わ ゆ る「 ニ ー ト 」と 言 わ れ る 日 本

の 若 者 。

◎ 貧 困 と い っ て も 状 況 や 程 度 は 様 々 で あ る 。貧 困 と は ど の よ う な 状 況 を 意 味 し て い る の だ ろ う か 。

◎ な ぜ ,貧 困 に 苦 し む 人 が い る の か 。貧 困 を 解 消 す る た め に は ど う す れ ば よ い の だ ろ う か 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 予 想 す る

(1) (2) (3)

・ 生 活 が 苦 し い こ と , 収 入 が 少 な い こ と 等 。

・ 失 業 し て い る 人 , 生 活 保 護 を 受 け て い る 人 , 発 展 途 上 国 の 人 等 。

・ ① : 干 ば つ に よ り 食 料 が 無 く な る 一 方 で 多 く の 子 ど も を 抱 え て い る 。 子 ど も も 母 親 も 生 命 の 危 機 に さ ら さ れ て お り , 夫 は そ の よ う な 妻 を 捨 て て い な く な っ た 。

②:30 代 の ホ ー ム レ ス の 男 性 。派 遣 で 様 々 な 仕 事 を し て お り , カ プ セ ル ホ テ ル に 寝 泊 ま り し て い る 。実 家 は 生 活 保 護 を 受 け て お り , 頼 る こ と は で き な い 。

③ : 働 く 自 信 が な く て な か な か 就 職 活 動 に 取 り 組 め な い 20 代 の 男 性 。ア ル バ イ ト に よ っ て 生 活 を し て い る 。

・収 入 が な い こ と ,働 く こ と が で き な い こ と 等 。

・ 生 活 保 護 を 充 実 さ せ れ ば よ い , ア フ リ カ で 飢 餓 に 苦 し ん で い る 人 に は 援 助 を 増 や せ ば よ い , 景 気 を 良 く し て 就 職 で き る よ う に す れ ば よ い 等 。

展 開

【 貧 困 の 定 義 と 原 因

】 ○ 収 入 が な い こ と が 問 題 だ と す れ ば ,金 銭 的 な 支 援 を す れ ば 問 題 は 解 決 す る だ ろ う か 。

○ 貧 困 と は 何 か 。先 に 挙 げ た 人 々 に 欠 如 し て い る も の は , 収 入 だ け だ ろ う か 。 ま た ,そ れ ら が 欠 如 し て い る の は な ぜ か , 資 料 を 読 み 考 え な さ い 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 答 え る

(4) (5) (6)

・ あ る 程 度 は 解 決 す る の で は な い か , 収 入 だ け の 問 題 で は な い の で は な い か 。

・ ① : 衣 食 住 全 て が 欠 如 し て い る 。 さ ら に , 権 利 や 自 由 も な い 。干 ば つ な ど の 自 然 現 象 だ け が 原 因 で は な く ,エ イ ズ な ど の 病 気 ,内 戦 な ど の 政 治 的 不 安 定 が 原 因 と し て 考 え ら れ る 。

先 進 国 発 展 途 上 国

< 政 府 >

経 済 開 発 社 会 基 盤 整 備

[ 支 配 ] [ 従 属 ]

< 大 企 業 > < 政 府 > < 途 上 国 の 人 々 >

資 金 所 得 向 上

衣 食 住 の 確 保

【 古 い パ ラ ダ イ ム に 基 づ く 開 発 と 国 際 社 会 の シ ス テ ム 】

先 進 国 発 展 途 上 国

人 間 開 発 自 助 努 力 促 進

[ パ ー ト ナ ー シ ッ プ ]

< 政 府 >

< 企 業 >

< N G O >

< 政 府 >

< 途 上 国 の 人 々 > 様 々 な

形 の 支 援

【 新 し い パ ラ ダ イ ム に 基 づ く 開 発 と 国 際 社 会 の シ ス テ ム 】

(7)

○ 貧 困 と い っ て も ,そ の 程 度 ,状 況 ,原 因 は 大 き く 異 な っ て い る 。共 通 し て い る も の は 何 か 。

T : 発 問 す る P : 答 え る

② : ① の 女 性 ほ ど で は な い が , 衣 食 住 が 欠 如 し て い る 。 職 が な い 。 景 気 後 退 に よ る 失 業 や 就 業 条 件 の 悪 化 の 他 に , 生 活 費 の 増 大 , 多 重 債 務 な ど も ワ ー キ ン グ ・ プ ア を 生 み 出 す 原 因 と な る 。

③ : 衣 食 住 に つ い て は , 現 時 点 で は 欠 如 し て い る と は 言 え な い が , こ の ま ま の 状 態 が 続 け ば や が て は 不 足 す る と 考 え ら れ る 。 職 , 希 望 ,将 来 へ の 見 通 し が な い 。1990 年 代 以 降 , 若 年 層 の 就 職 が 難 し く な っ た こ と , 家 庭 や 学 校 の 中 で 自 己 実 現 を し て く こ と の 意 義 や 方 法 を 見 出 せ な く な っ て い る こ と が 原 因 の 一 つ 。

・ 自 分 の 望 む よ う な 生 き 方 が で き な い こ と , 自 分 の 好 き な こ と が で き な い こ と , 自 分 の 能 力 を 発 揮 で き な い こ と 等 。

終 結

【 次 回 の 課 題

○ 貧 困 を ど の よ う に 定 義 す れ ば よ い だ ろ う か 。

○ 貧 困 を 解 消 す る た め に は ,金 銭 的 な 支 援 を す れ ば 十 分 だ ろ う か 。

○ 先 に 挙 げ た 三 者 の 中 で ,最 も 早 い 解 決 を 必 要 と す る の は 誰 か 。

○ ま ず は ,発 展 途 上 国 の 貧 困 問 題 に つ い て 解 決 の 方 策 を 考 え て み よ う 。

T : 説 明 す る

T : 説 明 す る 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 説 明 す る

・ 貧 困 は 狭 義 に は , 所 得 や 資 産 な ど が 不 足 し 衣 食 住 に 困 る と い う 経 済 的 状 態 で あ る が , も っ と 広 く と ら え る こ と が で き る 。 そ の 場 合 は , 自 分 ら し い 生 き 方 を す る た め の 能 力 や 自 由 が 奪 わ れ て い る 状 態 を 意 味 す る 。

・ 貧 困 は , 経 済 が 縮 小 し 資 金 が 不 足 し て い る た め に 生 じ る だ け で は な く , 政 治 的 , 社 会 的 , 文 化 的 要 因 に よ っ て , 自 分 ら し く 生 き よ う と す る 自 由 が 制 約 さ れ る こ と に よ っ て 生 じ る 。

・ ア フ リ カ で 飢 餓 に 苦 し む 女 性 。

・ 次 回 の 課 題 。

〔 配 布 資 料 〕 (1): 新 聞 記 事 等

(2): 岩 田 正 美 『 現 代 の 貧 困 』 筑 摩 書 房 , 2007 年 , pp.14- 16 を 参 考 に 作 成 。

(3):玄 田 有 史・曲 沼 美 恵『 ニ ー ト ― フ リ ー タ ー で も な く 失 業 者 で も な く 』幻 冬 舎 ,2004 年 ,pp.57- 75 を 参 考 に 作 成 。

(4): 新 聞 記 事 等

(5): 岩 田 正 美 前 掲 書 第 5 章 「 不 利 な 人 々 」 pp.138- 164 を 参 考 に 作 成 。

(6): 玄 田 有 史 ・ 曲 沼 美 恵 第 6 章 「 誰 も が ニ ー ト に な る か も し れ な い 」 pp.234- 268 を 参 考 に 作 成 。 第 2 時 :「 開 発 は 貧 困 を 解 消 し 得 る の か ? ― 緑 の 革 命 の 功 罪 ― 」

過 程 教 師 の 指 示 ・ 発 問 教 授 学 習 過 程 資 料 生 徒 に 獲 得 さ せ た い 知 識 導

【 前 時 の 確 認

○ 前 時 の ① の 貧 困 の 問 題 を 解 消 す る た め に は ,ど の よ う な 方 法 が 考 え ら れ る か 。

○「 緑 の 革 命 」と は ど の よ う な 援 助 で あ っ た か , 資 料 か ら 読 み 取 り な さ い 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 答 え る

(1)

・ 食 料 を 送 っ た り , 経 済 援 助 を す る 等 。

・1960 年 代 以 降 に 東 南 ア ジ ア や 南 ア ジ ア を 中 心 に 急 速 に 普 及 し た 農 業 の 改 善 。 先 進 国 で 成 功 を お さ め て い た 高 収 量 品 種 の 導 入 と 化 学 肥 料 の 大 量 投 入 と い う 農 業 技 術 の 進 歩 を , 発 展 途 上 国 に 適 用 し た も の 。こ れ ら の 援 助 と 同 時 に , 灌 漑 設 備 の 整 備 , 病 害 虫 の 防 除 技 術 の 向 上 , 農 作 業 の 機 械 化 が な さ れ , 農 業 生 産 が 大 き く 改 善 さ れ た 。

展 開【 緑 の 革 命 の 功 罪

◎「 緑 の 革 命 」後 も ,貧 困 の 問 題 は 解 決 し て い な い 。「 緑 の 革 命 」 は 失 敗 だ っ た の か , な ぜ ,「 緑 の 革 命 」 は 貧 困 を 解 消 で き な か っ た の か 。

○「 緑 の 革 命 」が 失 敗 だ っ た と 言 わ れ る の は な ぜ か 。 資 料 を 読 み ま と め な さ い 。

T : 発 問 す る P : 予 想 す る

T : 発 問 す る P : 答 え る

(2) (3) (4)

・ 生 産 が 増 え て も 発 展 途 上 国 の 人 々 の 手 に 入 ら な か っ た , 長 続 き し な か っ た 等 。

・ 化 学 肥 料 の 大 量 投 入 を 必 要 と す る た め , 化 学 肥 料 の 消 費 を 増 大 さ せ た 。 そ の 結 果 , 土 壌 が 変 化 し 毒 性 を も つ よ う に な っ た 。 し ば ら く は 大 豊 作 が 続 い た も の の , 不 作 が 報 告 さ れ る 場 所 も 見 ら れ る よ う に な っ た 。

(8)

○「 緑 の 革 命 」は ,全 く の 失 敗 だ っ た の か 。

評 価 で き る と こ ろ は な い の か 。

○「 緑 の 革 命 」は ,効 果 と 限 界 に つ い て ま と め な さ い 。

○ 貧 困 解 消 策 と し て の「 緑 の 革 命 」の 問 題 点 は 何 か 。

T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 説 明 す る

ま た , 単 一 種 の 米 や 麦 を 栽 培 す る こ と は 生 態 系 に 大 き な 変 化 を も た ら し た 。 結 果 と し て 病 気 , 土 壌 の 劣 化 , 水 害 , さ ら に は 他 の 農 作 物 の 生 産 の 減 少 が も た ら さ れ た 。

さ ら に , 高 収 量 品 種 の 種 子 は ア メ リ カ の 巨 大 企 業 が 支 配 し て お り , 結 果 的 に そ の よ う な 企 業 や 先 進 国 へ の 発 展 途 上 国 の 従 属 を 強 め る こ と に な っ た 。

・「 緑 の 革 命 」に よ り 穀 物 生 産 は 増 え た 。そ の た め 食 料 増 産 が 食 料 価 格 の 高 騰 を 抑 制 し た 。 ま た , 農 村 経 済 が 活 性 化 さ れ 雇 用 機 会 や 所 得 を 増 大 さ せ た 。 穀 物 価 格 の 低 下 は , 実 質 的 に 貧 困 解 消 を 促 進 し た 。

・「 緑 の 革 命 」は ,農 業 生 産 を 増 や し 食 料 価 格 を 低 下 さ せ た り , 農 村 経 済 は 活 性 化 し た り す る こ と で 貧 困 の 解 消 に 貢 献 し た 。 し か し , 生 態 系 の 変 化 を は じ め と す る 自 然 環 境 の 悪 化 や , 先 進 国 へ の 従 属 を 強 め る と い っ た 社 会 環 境 の 変 化 を も た ら し , こ の こ と は 発 展 途 上 国 の 人 々 の 生 活 の 向 上 に は つ な が ら な か っ た 。

・ 食 料 の 不 足 と い う 危 機 は 回 避 さ せ , 経 済 成 長 を も た ら す も の の , そ の 後 永 続 的 に 発 展 途 上 国 の 人 々 が 自 立 し て 成 長 し 続 け る た め の 基 盤 は 形 成 し な か っ た 。

終 結

【 従 来 の 開 発 の 課 題

○「 緑 の 革 命 」を は じ め と す る 経 済 成 長 を 目 標 と す る 開 発 は ,貧 困 を ど の よ う に と ら え て い る と 言 え る か 。

○ 経 済 成 長 を 目 標 と す る 開 発 の 特 徴 と 問 題 点 を ま と め な さ い 。

○ 貧 困 の 定 義 を 考 え る と ,開 発 は ど の よ う な も の で な け れ ば な ら な い か 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 説 明 す る

・ 資 金 が 不 足 し て い る と い う 狭 義 の 貧 困 概 念 に 基 づ い て い る 。

・ 開 発 と は 経 済 成 長 を 促 す こ と で あ る と い う 前 提 で 進 め ら れ る 。 そ し て , あ ら か じ め 決 定 し た 目 標 に 向 け て 政 府 等 を 中 心 に , 支 援 す る 先 進 国 と 援 助 さ れ る 発 展 途 上 国 と の 関 係 の 中 で 計 画 的 に な さ れ る 。 そ の た め に は 経 済 活 動 を 活 発 に す る た め に 資 金 を 供 給 し 道 路 , 鉄 道 , 港 湾 等 の 社 会 基 盤 を 整 備 し て い く 。

・ あ る 程 度 の 経 済 成 長 を 遂 げ た 後 に , 発 展 途 上 国 の 人 々 が 自 立 し て 成 長 で き る よ う な も の で な け れ ば な ら な い 。 そ の た め に は , あ ら か じ め 定 め ら れ た 目 標 の 達 成 を 目 指 す の で は な く , 発 展 途 上 国 の 人 々 が 自 身 で 目 標 を 考 え , そ の 達 成 に 向 け て 働 き か け る こ と を 支 援 す る よ う な 形 が 求 め ら れ る 。

〔 配 布 資 料 〕

(1):「 緑 の 革 命 」 ウ ィ キ ペ デ ィ ア を 参 考 に 作 成 。

(2):「 緑 の 革 命 と 化 学 肥 料 の 生 産 ,輸 入 ,消 費 」ヴ ァ ン ダ ナ・シ ヴ ァ『 緑 の 革 命 と そ の 暴 力 』日 本 経 済 評 論 社 ,1997 年 , pp.101- 118 を 参 考 に 作 成 。

(3):「 緑 の 革 命 の 生 態 系 へ の 影 響 」 ヴ ァ ン ダ ナ ・ シ ヴ ァ 前 掲 書 , pp.207- 218 を 参 考 に 作 成 。 (4):「 緑 の 革 命 が 生 み 出 す 従 属 関 係 」 ヴ ァ ン ダ ナ ・ シ ヴ ァ 前 掲 書 , pp.218- 236 を 参 考 に 作 成 。

(5):「 緑 の 革 命 の 功 績 」絵 所 秀 紀・穂 坂 光 彦・野 上 裕 生『 シ リ ー ズ 国 際 開 発 第 1 巻 貧 困 と 開 発 』日 本 評 論 社 ,2004 年 , pp.62- 64 及 び そ の 他 資 料 を 参 考 に 作 成 。

第 3 時 :「 開 発 は 何 の た め に 行 う の か ? ― モ ノ か ら 人 へ ― 」

過 程 教 師 の 指 示 ・ 発 問 教 授 学 習 過 程 資 料 生 徒 に 獲 得 さ せ た い 知 識

○ 発 展 途 上 国 の 人 々 が 自 立 し て 成 長 す る こ と を 支 援 す る た め の 方 法 に は ,ど の よ う な も の が 考 え ら れ る だ ろ う か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス と は 何 か ,ど の よ う な 援 助 な の か 資 料 か ら 読 み 取 り な さ い 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 発 問 す る P : 答 え る

(1)

・ 教 育 支 援 を し 能 力 を 身 に 付 け さ せ る , 継 続 的 に 資 金 を 貸 し 出 す 等 。

・1983 年 に バ ン グ ラ デ シ ュ の 大 学 で 経 済 学 を 教 え る ユ ヌ ス 教 授 に よ っ て 設 立 さ れ た グ ラ ミ ン 銀 行 は , 代 表 的 な マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス で あ る 。 グ ラ ミ ン 銀 行 は , 担 保 を も た な い 貧 困 層

(9)

に お 金 を 貸 し 出 す 。 通 常 の 銀 行 が 融 資 対 象 と し な い 貧 困 層 ,特 に 女 性 に 焦 点 を 当 て て い る 。 た ん に , 金 を 貸 し 出 す だ け で は な く , 地 域 に 密 着 し て 生 活 や 事 業 に つ い て サ ポ ー ト す る 。 グ ル ー プ に 貸 し 出 す こ と に よ っ て 返 済 率 を 高 め ,そ の 率 は 90% 以 上 で あ る 。政 府 も 出 資 し て い る 。

展 開

【 マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の 効 果 と 限 界

◎ 従 来 の 金 融 の 常 識 で は 考 え ら れ な い マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス が な ぜ 成 功 し た の か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス と 一 般 の 金 融 機 関 と の 違 い は 何 か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス は ど の よ う な 効 果 を も た ら し て く れ て い る か 。資 料 か ら 読 み 取 り な さ い 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス が ,破 た ん し な い の は な ぜ か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス に 限 界 は あ る か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の よ う な 取 り 組 み は ,従 来 の 開 発 と 何 が 異 な っ て い る の か 。

T : 発 問 す る P : 予 想 す る T : 説 明 す る T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 説 明 す る

T : 説 明 す る

T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 説 明 す る

(2)

・ ど う し て も 返 済 し な け れ ば な ら な い よ う な 仕 組 み を 作 っ て い る , 政 府 が 出 資 し て い る 等 。

・ 貧 困 層 に 貸 し 出 し , 貧 困 の 削 減 を 目 的 と し て い る こ と 。 そ の た め , 借 り 手 の 生 活 や 事 業 支 援 ま で 行 い 信 頼 関 係 を 構 築 す る 。 小 規 模 の 融 資 を 無 担 保 で 行 い , 収 入 を 生 み 出 す 活 動 や 事 業 を 促 進 す る 。

・ ジ ン バ ブ エ の 農 村 部 で 形 成 さ れ て い る 貯 蓄 ク ラ ブ は , 近 隣 住 民 で 組 織 さ れ 毎 週 行 わ れ る 集 会 で 貯 蓄 を 集 め て い る 。 N G O の 支 援 を 受 け て 融 資 も で き る よ う に な り , そ の 結 果 , 融 資 を 受 け た も の が 所 得 を 増 や し た り , 貯 蓄 を し て 不 慮 の 事 態 へ も 対 応 で き る よ う に な っ た り , 資 産 を 形 成 し た り す る な ど の 効 果 が も た ら さ れ た 。 ま た , 集 会 を 通 し て 情 報 交 換 や リ ー ダ ー の 育 成 も 行 わ れ る よ う に な っ た 。

・ 地 域 に 密 着 し , 地 縁 や 血 縁 等 の ネ ッ ト ワ ー ク に 基 づ い て い る た め に , 返 済 へ の 意 識 が 高 め ら れ て い る 。 ま た , 地 域 の ニ ー ズ に 合 っ た 運 営 が な さ れ て い る こ と も 重 要 。

・融 資 が 返 済 さ れ る こ と が 大 前 提 で あ る た め に , も っ と も 下 層 の 極 貧 層 を 救 済 す る に は 限 界 が あ る 。 ま た , 小 口 融 資 の た め に , 新 規 に 事 業 を 立 ち 上 げ る た め の 資 金 と し て は 少 な い 。

・ 援 助 を 受 け る 側 の 主 体 性 を 重 ん じ て い る 。 目 標 自 体 は , 援 助 を 受 け る 側 が 自 ら の ニ ー ズ に 合 わ せ て 設 定 す る 。

終 結

【 新 し い 開 発 の あ り 方

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の 取 り 組 み の 前 提 に あ る ,貧 困 に 対 す る 見 方 は ど の よ う な も の か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス が 示 唆 す る こ れ か ら の 新 し い 開 発 の あ り 方 を ま と め な さ い 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス は ,日 本 国 内 の 貧 困 問 題 の 解 決 策 に も な り 得 る か 。

T : 発 問 す る P : 答 え る T : 説 明 す る

T : 発 問 す る P : 答 え る

・ 貧 困 は , 自 己 実 現 の 能 力 や 機 会 が 奪 わ れ て い る 状 態 で あ る と 捉 え ら れ て い る 。

・ 開 発 は , 貧 困 に 苦 し ん で い る 人 々 の 生 活 改 善 を 目 標 と し て お り , そ の た め に は , そ の 人 々 が 自 分 ら し く 活 動 で き る 環 境 を 整 え る 必 要 が あ り , 活 動 を 制 約 し て い る 経 済 的 , 政 治 的 , 社 会 的 , 文 化 的 要 因 を 取 り 除 か な け れ ば な ら な い 。 生 活 改 善 を 目 指 し て , 開 発 は , 途 上 国 の 人 々 が 主 体 と な っ て 自 己 実 現 を 妨 げ て い る 制 約 を 取 り 除 く こ と を 支 援 す る よ う に 進 め ら れ る 。 支 援 の 形 は 支 援 す る 側 と 支 援 を 受 け る 側 が 対 等 に 話 し 合 っ て 決 定 さ れ る 。

・ 期 待 で き る の で は な い か 。

〔 配 布 資 料 〕

(1):「 バ ン グ ラ デ シ ュ の グ ラ ミ ン 銀 行 」菅 正 広『 マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の す す め 』東 洋 経 済 新 報 社 ,2008 年 ,pp.19

- 24 を 参 考 に 作 成 。

(2):「 ジ ン バ ブ エ に お け る 貯 蓄 ク ラ ブ の 活 動 」斎 藤 文 彦 編 著『 参 加 型 開 発 ― 貧 し い 人 々 が 主 役 と な る 開 発 へ 向 け て 』 日 本 評 論 社 , 2002 年 , pp.117- 121 を 参 考 に 作 成 。

(10)

第 4 時 :「 貧 困 を な く す た め に ど う す べ き か ? ― グ ロ ー バ ル な 問 題 か ら , ロ ー カ ル な 問 題 の 解 決 へ ― 」 過 程 教 師 の 指 示 ・ 発 問 教 授 学 習 過 程 資 料 生 徒 に 獲 得 さ せ た い 知 識

導 入

【 二 つ の 開 発 論 の 応 用

○ こ れ ま で の 学 習 を ふ ま え て ,次 の 二 つ の 事 例 に つ い て そ の 成 否 が 分 か れ た 理 由 を 説 明 し て み よ う 。

① : イ ン ド に お け る ダ ム 建 設 ②:ブ ル キ ナ フ ァ ソ に お け る 農 村 開 発

T : 発 問 す る P : 答 え る

(1)

(2) ・① バ ー グ ラ ダ ム は 1963 年 に 長 い 用 水 路 を 抱 え る 灌 漑 シ ス テ ム を も っ た 大 型 ダ ム と し て 使 用 が 開 始 さ れ た 。 し か し , 建 設 に よ る 環 境 の 変 化 等 に よ っ て 地 域 に よ っ て は 水 不 足 を 生 じ さ せ る 結 果 と な り , さ ら に は 大 規 模 な 洪 水 を も た ら す こ と に も な っ た 。

② ブ ル キ ナ フ ァ ソ に お け る ナ ー ム と い う N G O は , 地 域 住 民 の 団 結 を 生 み 成 功 し て い る 。 農 業 の 生 産 性 を 向 上 さ せ た り , 職 業 訓 練 や 識 字 教 育 に も 大 き な 効 果 を も た ら し て い る 。 農 地 の 改 善 な ど も 進 ん で い る が , こ れ ら の 活 動 は 地 域 の 人 々 が 集 ま り 組 合 を 作 り , 草 の 根 か ら 拡 大 し た 住 民 主 導 の も の で あ っ た 。 ① は , 大 規 模 開 発 を ト ッ プ ダ ウ ン に 進 め た

結 果 で あ り , ② は , ボ ト ム ア ッ プ に 住 民 主 導 で 進 め た も の で あ る 。 後 者 の 方 が 地 域 の ニ ー ズ に 合 っ て お り , 地 域 の つ な が り を 生 む こ と で そ の 後 の 自 立 を 促 し て い る 。

展 開

【 日 本 国 内 の 貧 困 解 消 策 の 考 案

◎ こ れ ま で 学 習 し た 二 つ の 開 発 論 は ,ど の よ う な 社 会 シ ス テ ム に 基 づ く も の だ ろ う か 。先 進 国 ,発 展 途 上 国 ,そ れ ぞ れ の 政 府 ,企 業 ,人 々 の 関 係 を 図 式 化 し な さ い 。

○ 従 来 の 開 発 論 と 新 し い 開 発 論 で は ,先 進 国 と 発 展 途 上 国 の 関 係 は ど の よ う に 違 っ て い る だ ろ う か 。

◎ 新 し い 開 発 論 の 背 景 に あ る 社 会 シ ス テ ム は ,日 本 国 内 の 貧 困 問 題 の 解 決 に 示 唆 を 与 え て く れ な い だ ろ う か 。

○ マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス は 日 本 国 内 に も 導 入 で き な い だ ろ う か 。 導 入 す れ ば ,国 内 の 貧 困 の 問 題 を 解 消 で き る だ ろ う か 。

T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 説 明 す る

T : 発 問 す る P : 答 え る

T : 発 問 す る P : 答 え る

・ 到 達 目 標 の ( 2 ) 概 念 構 造 図 。

・ 従 来 の 開 発 論 は 二 つ の 関 係 を 支 配 と 従 属 と し て と ら え て い た 。 そ れ に 対 し て , 新 し い 開 発 論 は パ ー ト ナ ー シ ッ プ と と ら え て い る 。

・ 援 助 を す る も の , 援 助 を 受 け る も の と い う 関 係 で は な く , 援 助 を 受 け る 側 が 自 立 で き る よ う に , 受 け る 側 に 寄 り 添 っ た 関 係 に 基 づ く 対 策 が 必 要 で あ る 。

・ 法 整 備 を 進 め , 政 府 や 地 方 自 治 体 な ど が 支 援 を す れ ば 導 入 で き る の で は な い か 。 貧 困 を 完 全 に 解 消 す る こ と は で き な い か も し れ な い が , 削 減 に は 有 効 で あ る と 思 わ れ る 。 終

結 ○ ワ ー キ ン グ・プ ア や ニ ー ト と い っ た 国 内 の 貧 困 問 題 を 解 決 す る 自 分 な り の 対 策 を 考 え て み よ う 。ま た ,現 在 の 日 本 国 内 で な さ れ て い る 諸 政 策 を 評 価 し て み よ う 。

T : 発 問 す る

P : 答 え る ・ 主 体 性 の 尊 重 , 自 立 支 援 , 能 力 開 発 な ど の 原 理 に 基 づ く 対 策 が 有 効 で あ る と 思 わ れ る 。 一 方 , 一 次 的 な 資 金 の 投 資 は , 長 期 的 に は 効 果 が 薄 い と 推 察 さ れ る 。

〔 配 布 資 料 〕

(1):「 大 型 ダ ム と 政 治 権 力 」 ヴ ァ ン ダ ナ ・ シ ヴ ァ 『 緑 の 革 命 と そ の 暴 力 』 日 本 経 済 評 論 社 , 1997 年 , pp.142- 151 を 参 考 に 作 成 。

(2):「 ブ ル キ ナ フ ァ ソ の 農 村 開 発 」 斎 藤 文 彦 編 著 『 参 加 型 開 発 ― 貧 し い 人 々 が 主 役 と な る 開 発 へ 向 け て 』 日 本 評 論 社 , 2002 年 , pp.92- 97 を 参 考 に 作 成 。

英文表題 :Developing a tentative teaching plan for Civics focused on a sustainable society to teach

about

“Development”and“Poverty”

著者:Toshinori KUWABARA ; Division of Social Studies and Language Education, Graduate School of Education, Okayama University

キーワー ド: Civics,Developing a tentative teaching plan,a sustainable society,Development,

Poverty

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