求めたのは「映画用フィルムのように」
撮影の仕事の傍ら筆者が教鞭をとっている京都造形 芸術大学では、3 年前から学生とともに劇場公開映画 を毎年 1 本製作するというプロジェクトを行っている。 小さな大学の 1 学科が製作する映画、フィルムで撮影 する予算はない。過去 2 本は大学所有のパナソニック AG-HPX555 を使用して、DVCPRO HD の 1080/24p で 撮影。1 本目の木村 威夫 監督作品「黄金花」はキネコ してフィルム化、2010 年に全国で劇場公開された。ま た 2 本目の高橋 判明 監督作品「MADE IN JAPAN −こ らッ!−」は HDCAM の 1080/24p で完パケ、2011 年 9 月 24 日、京都シネマから順次公開予定になっている。 このプロジェクトの 3 本目として企画されたのが、 山本 起也 監督作品「カミハテ商店」である。今回は 学生のためにぜひフィルムで撮影をしたいと考えてい たが、諸々の事情で断念。35 ㎜フィルムカメラに近 い感覚で撮影できるということで、発売間もない AG-AF105 を使用することした。大学で普段使用している カメラが、同社製の AG-DVX100B ということもあり、 学生にとって違和感のない操作感で安心できるという 一面もあった。 ■ガンマと感度の設定 初めて使用するカメラということもあり、入念にテ スト撮影とラッシュを繰り返し、ガンマと感度を検証。 ガンマは CINE-LIKE D と B.PRESS を場面によって使 い分けることにした。 マトリックスは、シネライク、H ディテールと V デ ィテールは− 2、クロマは− 3 で、他はすべてノーマ ルに設定。フィルムモードを使用し、感度は複数のモ ニターやプロジェクターで見た印象や波形モニターで の検証の結果、カメラ設定の ISO 表示より 2 倍程度の 感度があると判断して主に ISO200 を使い、露出計の 感度を ISO400 で測定することにした。実際には、露 出計を使い照明のバランスをつくり、絞り値を決め、 カメラやモニターの波形で確認しながら最終的な絞り 値を決定した。 モニターには、パナソニックの 7.9 型液晶モニター BT-LH80W を HD-SDI で接続。カメラと BT-LH80W の 波形モニターの数値に大きな違いはなく、絞り値を決映画「カミハテ商店」
映画撮影監督/京都造形芸術大学 准教授小川 真司
(JSC)AG-AF105 運用事例・1
める上でカメラ搭載の波形モニターは非常に有効であ った。ちなみに AG-AF105 のビューファインダーとモ ニターは同時に使用できない上、波形とベクトルスコ ープはモニターのみの表示。液晶モニターの見え方は 撮影環境に左右されて信用できないため、筆者はビデ オカメラでも多くの場合、ビューファインダーを使用 してオペレートをする。波形はモニターに、映像はビ ューファインダーにと、両方同時に使用できると良い と感じた。 ■シネレンズを使って撮影 今回、フィルムカメラで映画を撮るようにしたいと いうことで、カメラには音声を繋がず、カメラマイク の音もオフにして映像と音は完全に別素材として作業 を進めることにした。また、レンズはすべて 35 ㎜フ ィルムカメラ用を使用。フォーカスは 2nd 助手(学生) がフォローする体制とした。 レンズは、大学所有の Carl Zeiss のセットレンズ(18, 25, 35, 50, 85 ㎜)に加え、知人友人の協力で集めた Cooke のセットレンズ(16, 18, 35, 50, 75, 100 ㎜)、Cine Varotal の 10 倍ズーム、そして Angenieux の 10 倍ズームをシ ーンに合わせて使い分けた。マウントはマイクロフォ ーサーズ/PL の変換を入手し、Carl Zeiss のセットレン ズだけは NEW ARRI マウントのため ARRI/PL の変換 を装着して使用した。 Cooke と Angenieux は、40 年以上前のレンズのため レトロかつソフトな印象で、回想シーンを中心に使用。 Carl Zeiss も 30 年以上前のもので三角絞りであったが、 レンズが奇麗でキレが良くシャープなのでメインレン ズとして使用した。また Cine Varotal も新しく癖がな かったので、主にロケーションでの撮影に使用した。 カメラとレンズがすべてそろったのがクランクイン 一週間前のため、DSLR 用のアクセサリーを急遽購入 し、多少の加工を加えてレンズサポートを自作した。 AG-AF105 は、発売直後からサードパーティーのサポ ートパーツが順次発売されているので今後は充実する だろうが、カメラのマウント部周辺が比較的弱いため、 大きなレンズを装着する場合はレンズサポートが必需 品となる。コンシューマー用のスチルレンズを使用す る場合も、ズームレンズなどではなるべくレンズサポ ート装着をおすすめする。13 本のレンズを場面によ 25 ㎜で俯瞰撮影。ワイドレンズでもピントはシビア。かならずメ ジャーを使ってフォーカスをチェックする Cine Varotal ズームは大きく、重量もあるので取り扱いには神経 を使った。サポートパーツが正規品ではないので、下のサポー トロッドに載せてゴム紐で縛っただけ、上からはモニター用の フリーアームで固定 一日何十回とレンズ交換。プロ用レンズには遊びがないため、慣 れない学生は取り付けに苦労する
って使い分け、レンズ交換を一日何十回と繰り返した わけだが、1 カ月の撮影で不具合は生じなかった。 ■被写界深度は状況に合わせてコントロール 大判イメージセンサーのカメラを使う一番の理由は 被写界深度の浅い画づくりにある。浅い被写界深度の なかで的確にフォーカスを送ることの難しさは経験者 でしかわからない。これも映画製作を学ぶ上では重要 なことで、ぜひ学生に知ってもらいたいことであった。 単レンズの絞り開放値は F1.2 ∼ 1.4、ズームは F4 だ が、撮影では単レンズは F2.8 ∼ 4、ズームは F4 ∼ 8 を主に使った。むやみに絞りを開けて被写界深度を浅 くするのではなく、状況に応じてコントロールして使 ったということである。 DSLR でもそうであるが被写界深度の浅さが魅力だ からといって、開放付近を多用すると大事なところが ピンボケだったり、柔らかすぎて眠たい映像の連続に なってしまったりと失敗することが多い。その点、大 判センサーカメラの中でも小さめのセンサーをもつ AG-AF105 は扱いやすいといえる。逆に、より浅い被 写界深度を必要とする作品では物足りなさを感じる場 面もあるだろう。
アンダーで映画的な画づくりのために
パナソニックが VARICAM や DVX シリーズで培っ て き た シ ネ ラ イ ク ガ ン マ は 、 AG-AF105 にも引き継がれてい て、暗部の滑らかな階調は健在、 フィルム撮影を諦めた作品には 心強い味方となった。 しかし、暗部ばかりの画づく りをするとノイズが気になる傾 向がある。暗部の SN 比は見た 目の印象で HVX205A や AG-HPX175 から特に良くなった感 じは受けなかった。また暗部の ノイズに関しては、HD NORM (ノーマルガンマ)や CINE-LIKE V を使ったほうが少ない印象が 冬の日本海の寒く寂しいトーンを出すために CINE-LIKE D を選択。少し暗めでクロマを下げた シネレンズでは比較的ワイドな 25 ㎜(F2.8)でも、自然なボケ足で狙ったところだけフォー カスを合わせられるある。CINE-LIKE D はダイナミックレン ジが一番広いのだが、暗部のノイズは一 番目立つように感じる。 今回の作品は「劇場公開作品をフィル ムでつくる」というところから始まった 企画のため、フィルムのダイナミックレ ンジに少しでも近いガンマを使うことに した。アンダーな画づくりの中で出てく るノイズは、暗部だけの画づくりを避け、 バランスに気をつけた上で「映画の味」 として利用。当然、ハイ(明部)の部分も 面積と強さのコントロールが必要で、ク リップするほどのハイ(明部)をつくらな いような画づくりが奇麗な映像を撮影す る基本となる。 波形モニターの 100 %付近でもディテー ルを表現するが、105 %から急激にディテ ールがなくなり、110 %を超えるとディテ ールは表現されず色の反転も見られる。 フィルムに比べて、ビデオはハイ(明部) の表現が弱いと以前からいわれているが、 CCD から CMOS、SD から HD になり、ハ イ(明部)の表現性も変わってきており、 撮影前には充分なテストをして画づくり のプランを立てる必要があると感じた。
収録データのバックアップ
記録メディアには、16G バイトの SanDisk 製 SDHC メモリーカード(class10)を 5 枚用意した。撮影フォー マットは AVCHD の 1080/24p で、16G バイトでは AG-AF105 の最高画質 PH モードで約 90 分の撮影ができる が、1 カットが長くても 5 分程度であったため、書き 込み/読み出しの不具合は今回一度もなかった。 それぞれのカードは一杯になるまで収録したが、毎 晩、撮影終了後にその日に撮影したオリジナルデータ を MacBook Pro 経由で 3 つの HDD へコピー、そのう ち 1 つの HDD には Final Cut Pro で ProRes 422 に変換 したファイルも保存した。オール地方ロケということ もあり、SDHC メモリーカードのデータも消去せずに 保存している。 大げさに感じるかもしれないが、メモリーカードに 記 録 す る カ メ ラ で 映 画 を 撮 る 場 合 は 、 最 低 2 つ の HDD にバックアップを取ることは基本となっている。 実際、昨年の作品で編集中のデータが破損してバック アップの HDD から修復した経験もある。ProRes 422 が入っている HDD は編集作業に使う予定で、他の 2 つはバックアップとして別の場所に保管している。 ★ ★ ★ 100 年以上続いているフィルムに比べ、ビデオは 50 年の間にアナログからデジタルに変化し、そのなかで 性能が上がっている一方、たくさんのフォーマットが あり安定しない上、記録メディアも各社さまざまであ る。映像制作をする者からみると各社共通で長持ちす るフォーマットが望まれているが難しい状況である。 AVCHD ファイルを SD メモリーカードに記録する AG-AF105 はマイクロフォーサーズマウントを採用す ることで、アマチュア用のスチルレンズからプロ用の シネレンズまで使える。DVX シリーズのように多く のプロに使われるようになるのか楽しみである。 ■「カミハテ商店」: 2011 年秋完成、2012 年全国劇場公開予定 あらすじ:日本海のはずれの小さな港のバス停「上終(カミハテ)」。 その先には老女が営む寂れた商店と自殺の名所である断崖絶壁が あるだけ。寒い冬の商店に、時折訪れる見知らぬ客に老女は…。 製作:北白川派 配給:マジックアワー 監督:山本 起也 出演:高橋 恵子、寺島 進、あがた森魚 ほか 圧縮率の高い AVCHD だが、遠景の木々もきちんと再現されている。映画館 で観ても観客はビデオだとは思わないだろう 35 ㎜(F5.6)、晴れの日のオープンで ND フィルターを使って絞りをコントロ ール。どのレンズでもボケ足はコントロールしやすい映画「SHINOBI」や「どろろ」、そして 2011 年春に 公開された二宮 和也 主演「GANTZ」などの作品で活 躍するアクション監督の下村 勇二 氏が、日本の新し い映画スタイルを米国へ向けて発信するためのショー トムービー「PINK SPIDER」を AG-AF105 で収録した。 本作はアクション主体であり、1920 × 1080 フル HD の バリアブルフレームレート記録や、7 ㎜からのショー トズームレンズが選択できること、小型・軽量で機動 力に優れていることが、AG-AF105 を選択した大きな ファクターとなっている。 実際にアクションシーンの収録では、機動力のある ボディとショートズームの組み合わせが最大限活かさ れ、手持ちでカメラを自由自在に操って、迫力のある 映像がスピーディーに撮影された。また AG-AF105 は、
ショートムービー「PINK SPIDER」
Multicamlaboratory渡邊 聡
AG-AF105 運用事例・ 2
アクションシーンの収録 では、機動力のあるボデ ィとショートズームの組 み合わせが最大限活かさ れたフィルムカメラと同様、カットごとのコマ数を簡単に 変更して収録でき、現場で素早くプレビューチェック も可能なので、さらに効率的な撮影が実現できたとい える。
2
本の LUMIX レンズだけで収録
マイクロフォーサーズシステムは、短いフランジバ ックのおかげで、バリエーション豊富で安価なスチル レンズをマウント変換アダプターを介して装着するこ とができる。そこに着目したシャローフォーカスの映 像が AG-AG105 の特長ともいえるわけだが、今回はア クション作品ということで機動性を優先して求め、あ えて LUMIX G VARIO 7-14 ㎜/F4.0 ASPH.と LUMIX G VARIO HD 14-140 ㎜/F4.0-5.8 ASPH./MEGA O.I.S.の LUMIX レンズ 2 本だけで収録が行われている。LUMIX G VARIO 7-14 ㎜/F4.0 ASPH.は、常用できる 世界最小サイズを実現し、対角線画角 114 °の広角域 をカバー。撮影可能範囲は、ズーム全域で撮像面から 25 ㎝となっており、パースペクティブを活かした撮影 が可能だ。
一方、LUMIX G VARIO HD 14-140 ㎜/F4.0-5.8 ASPH. /MEGA O.I.S.は、13 群 17 枚(非球面 4 枚/ED レンズ 2 枚)のレンズ構成からなるズームレンズ。28 ∼ 280 ㎜ 相当(35 ㎜換算)の幅広い画角をカバーし、標準ズーム レンズと望遠ズームレンズの 2 本分の画角が、同レン ズ 1 本で手に入る。またコントラスト AF の精度が高 く、素早いピント合わせが可能となっており、さらに 光学式手ブレ補正(MEGA O.I.S.)を搭載しているので、 光量の少ない室内の撮影でも手ブレを抑えられる。 ■「PINK SPIDER」 あらすじ: 20XX 年、TOKYO。世に蔓延する「魔物」たちから 人間を守り闘うスレイヤーズ「ピンクスパイダー」。メンバーで ある 3 人の少女たちは見た目の可愛さとは裏腹に特殊な能力をも ち、日夜「魔物」たちと死闘を繰り広げていた。しかし歴史の 影に潜んでいた「魔物」たちは遂に人類に宣戦布告。『人類』と 『魔物』との均衡が大きく崩れ始めて…。 製作:ワーサル 制作プロダクション:ノースシーケーワイ プロデューサー:矢部 大 監督・脚本:下村 勇二 撮影監督:工藤 哲也 アクション監督:園村 健介 出演:高良 光莉(ホリプロ)、桃瀬 美咲(ホリプロ)、水崎 綾女(ホ リプロ) 「PINK SPIDER」では、機動性を優先し、 LUMIX G VARIO 7-14 ㎜/F4.0 ASPH.と LUMIX G VARIO HD 14-140 ㎜/F4.0-5.8 ASPH./MEGA O.I.S.の 2 本だけで収録が 行われた
AG-AF105
採用の経緯とレンズの選択
2011 年、春。マレーシアのケーブル局「ASTRO」の テレビ映画で、パナソニック AG-AF105(マレーシアで の型番は AG-AF102)を使った撮影を行った。タイトル は「LARI, SAYANG, LARI」という。監督は、ハリウッドでシナリオライター/シナリオ アナリストとして実績のある田中 靖彦 氏。筆者は撮 影監督として参加した。企画自体は、2010 年の初夏に 始まった。 予算やストーリーラインから機材の選定を 始めたのだが、潤沢でないバジェットでも、マレーシ ア以外の国への配給も視野に、説得力のある画づくり を求めて単焦点レンズ中心での撮影をすることが基本 の考えにあった。DSLR ムービー全盛の現在において、 当然それらを使用することを見越しての検討であった が、移動ショットが多いことが予想される撮影で、実 撮影ではサポートリグが必須である DSLR ムービーを 使うことをためらった。 そんな折に、パナソニックからマイクロフォーサー ズ規格のミラーレス デジタル一眼カメラ「DMC-GH1」 「DMC-GH2」を発展させたようなビデオカメラ「AG-AF105」がアナウンスされた。「DMC-GH シリーズ」は フランジバックの短さにより、マウントアダプターを 介してどんなレンズも装着できる自由度の高い画づく りが可能で、一世を風靡したコンパクト デジタル一 眼カメラだ。動画性能も整っていて、過去いくつかの 仕事で投入し、好評をいただいたことがある。 そのビデオカメラ版という感じとスペックを見るに、 AG-AF105 であれば「LARI, SAYANG, LARI」を理想ど おりの画づくりで撮影が行えるのではないかと、第一 候補に挙げることにした。発売時期は年内ということ で、テスト撮影を重ねても翌年のクランクインに充分 間に合うだろうと考えたのである。
レンズは、マイクロフォーサーズマウントのパナソニ ック製 LUMIX G VARIO 7-14 ㎜/F4.0 ASPH.と LUMIX G VARIO HD 14-140 ㎜/F4.0-5.8 ASPH./MEGA O.I.S.に 加え、キヤノン FD マウントの New FD レンズから 14 ㎜ F2.8L、20 ㎜ F2.8、24 ㎜ F1.4L、35 ㎜ F2、50 ㎜ F1.4、85 ㎜ F1.2L、200 ㎜ F2.8、さらにニコン F マウント Ai Nikkor 50 ㎜ F1.4S と Ai Zoom-Nikkor 80 ー 200 ㎜ F4S で、合計
映画「LARI, SAYANG, LARI」
Studio DU 主宰/ディレクター(http://studiodu.com)
林 和哉
11 本を用意した。デジタル世代のレンズも選択肢とし てあったが、今回はクリアーな描写よりも、多少甘め であっても味のあるレンズが良いと考えた。 マウント変換アダプターには、近代インターナショ ナルが扱っている宮本製作所 RAYQUAL 製を使用。中 でも、ニコン→マイクロフォーサーズアダプターは絞 りをコントロールするリングが付いているため、G タ イプのレンズシリーズも使用することができる逸品 だ。クリックが付いているため、G タイプレンズ使用 の際にも絞りの目安を付けやすい。 またこの作品が、マレーシアでの AG-AF105 を使っ た商業映像の稼働実例第 1 弾ということで、現地のパ ナソニックも興味をもってくれ、機材協力を取り付け ることができた。 ■AG-AF105 本体の機能とレンズでフォーカスワーク 機材が決まり、プリプロダクションも順調に進んで、 年明け 4 月のクランクインを迎えた。現地に入り、ロ ケーションを再確認。事は順調と感じていた矢先に、 機材手配をしていた現地の機材ショップで思わぬこと が起こった。頼んでいたモニター関係の機材が、アク シデントにより使用できなくなったのだ。代替のもの はあったのだが、SD のブラウン管型でかつバッテリ ーが巨大、というフットワーク重視の撮影にまったく そぐわないものとなってしまう。 そこで、今回は AG-AF105 本体のアシスト機能とレ ンズによるフォーカスワークで勝負しようという賭け に出た。これが最終的には良い結果をもたらしたのだ が、撮影期間中は気が気でなかったのも事実だった。
アシスト機能を駆使して効率的に撮影
マレーシアは、熱帯性雨林気候に属している。カラ ッと晴れていたかと思うとにわかに曇りだし、バケツ をひっくり返したような雨が降ってくる。当然、撮影 時の画のコンティニュイティは、困難を伴った。 とはいっても、限られた撮影日数の中で撮り上げる にはとにかくカメラを回すしかない。このとき、画の 継続性を維持するために WFM が非常に役に立った。 ビデオ撮影のようなテンポが要求される中、「測光を して諸々調整して…」という時間はなく、言葉の壁に よる意思の疎通の問題もあったので、邪道ではあるが、 液晶に映った WFM のスチルを押さえておいてカット 間の整合を取る、という方法で進めた。 とにかく常夏のマレーシア、明るさは申し分なく、 オープンロケでは ISO の SW 設定を、L を 200、M を 320、 H を 400 とした。キヤノン New FD レンズの 24 ㎜ F1.4L、 WFM をスチルで撮影しておき、比較してカット間の整合を取る 方法は意外と効率的だった しっかりとしたモニタリング環境は構築せず、AG-AF105 本体 のアシスト機能とレンズによるフォーカスワークで勝負した RAYQUAL のニコン→マイクロフォーサーズアダプターは絞り リングが付いており、G タイプのレンズも使用できる50 ㎜ F1.4、85 ㎜ F1.2L を使用した人物撮影では、ND は 3 か 4、レンズ絞りの開放は使わず 1 ∼ 2 段絞ったとこ ろが常用であった。
広角には、LUMIX G VARIO 7-14 ㎜/F4.0 ASPH.を使 用。このときは ND をほぼ 3 に固定、パンフォーカス を活かすために積極的に絞っていった。ND フィルタ ーがカメラ本体に内蔵されていたことは、実に大きか った。これだけで、AG-AF105 を使う理由に事足りた という印象だ。 ■FA(フォーカスアシスト)機能の恩恵を実感 全般を通して、AG-AF105 に搭載されている FA(フ ォーカスアシスト:フォーカスの合っている部分のエ ッジを赤く表示してくれるもの)の恩恵を預かった。 監督の田中氏は、明確なビジョンをもち、意志決定 も迅速なので手際よく現場は進んでいた。それでも撮 影開始当初、撮影場所の使用時間の問題で、ドライリ ハーサルのみ、テクニカルリハーサルなしに一発本番 という状況が起こった。それは筆者の立場にしてみれ ばあってはいけないことであり、あったとしても、カ メラを回してその流れに乗ってしまっては自分の首を 絞めるだけだとわかっていたが、撮るしかないという 状況だった。 シビアなフォーカスも FA のおかげで乗り切 ることができた AG-AF105 は本体が小さいので、どこにでもカメラを 構えることができ、またクレーンやレールへのセット アップもかなり容易だった
スタートとエンドの位置だけもらい、フォーカスリ ングにマーキング。フレーミングの作業と合わせてフォ ーカスを送る。FA をオンにしてキャストのまつげに当 たっている RED 表示を頼りにピンを送っていく。すべ てが筆者一人でのオペレーションになった。そうなっ た経緯は割愛するが、筆者個人の責任の下にオペレー ションするのが良いと判断したからだ。この状況はマ レーシアにくる前から半ば覚悟していたことであった。 FA の性能に信頼を置いていたので、 取り立てて慌 てることはなかったのだが、AG-AF105 を撮影カメラ に決定する大きな要因の 1 つが FA 搭載にあり、こう いった難易度が高い撮影の負担を軽減してくれる各種 の機能だったので、選んで良かったと一番実感した部 分だった。 これ 1 つとっても、AG-AF105 でなければ絶対に成 立しない撮影だった。結果として、このリズムにすっ かり慣れてしまい、後半も同じような方法で撮ってい くようになっていた。このことで、当初予定されてい た膨大なカット数を超えてエキストラカットまで撮る ことができるようになった。カメラのセットアップを 身軽にしたことが、ここで効いてきたのだった。 ■少ない照明の夜間撮影でも充分な照度を確保 夜間での撮影も多かったのだが、単焦点レンズを使 うことで、従来のビデオでは考えられないほどの明る さで撮影できるメリットを享受した。照明の仕込む数 を減らすことができたのはかなりの作業短縮に繋がっ た。ISO400 をメインに、時に ISO800 まで使用したが、 SN 比も良いと感じる。ISO800 が常用域として良いク ォリティをもたらしてくれた。 また、本体が小さいので、どこにでもカメラを構え られたこと、クレーンへのセットアップはかなり容易 だった。たまに車のトランクに入り込み、後続の車や 人物を撮るということも行った。 ★ ★ ★ レンズ交換を躊躇するほどのタイトな撮影時間と、 クォリティの両立。これらを実現できたのは、ビデオ カメラの体裁と DSLR の光学性能をコンパクトな筐体 に凝縮してくれた AG-AF105 があればこそだった。 クランクアップ翌日、仮編集したフッテージを見た 現地局は相当に喜び、ほどなく続編の製作が決定した。 「LARI, SAYANG, LARI」のトレーラーは、製作会社で
ある「42nd PICTURES」の Web サイトから視聴が可 能だ(http://www.42ndpictures.com)。興味をもたれ た方には、ぜひご覧いただきたい。
■「LARI, SAYANG, LARI」
あらすじ:恋人スリナの政略結婚相手を殺害した罪に問われた ハキミは、自らの無実を証明し、スリナと一緒になるために、 マレーシア大陸をめぐる逃避行を展開する。ハキミのことを悪 人と疑わぬスリナの富豪家族は、スリナの叔父にあたる私立探 偵ジェフリを雇い、ハキミ捕獲に乗り出す。 監督:田中 靖彦 製作:ビー 田中 撮影監督:林 和哉 出演:アリフ・サター、エリン・マリック、ロイ・アズマン 夜間撮影時、少ない照明機材でも充分な照度を得ることができた
パナソニック 株式会社
AVC ネットワークス社ビジネスソリューション事業グループ www.panasonic.biz/sav/株式会社 テックス(撮影機材レンタル)
℡ 03-3226-6594 http://www.tec-s.tv/アナミ海外 株式会社
℡ 03-3384-1860 http://www.anamikaigai.co.jp/ ・AF105PLH(AG-AF105 用 PL マウントホルダー):オープンプライス(実勢価格¥25 万 5150)キヤノン 株式会社
お客様相談センター℡ 050-555-90001 http://canon.jp/ ・EF3 5 ㎜ F1.4L USM :¥20 万 5000(税別) ・EF5 0 ㎜ F1.2L USM :¥18 万 5000(税別) ・EF8 5 ㎜ F1.2L II USM :¥23 万 5000(税別)株式会社 近代インターナショナル
℡ 03-3208-0911 http://www.kindai-inc.co.jp/ ・Kipon EOS-m4/3A(キヤノン EF →マイクロフォーサーズマウント変換アダプター):¥2 万(税別) ・Kipon L3 9-m4/3(Leica スクリュー→マイクロフォーサーズマウント変換アダプター):¥6000(税別) ・Kipon M4 2-m4/3(M4 2 →マイクロフォーサーズマウント変換アダプター):¥1 万 9000(税別) ・NOVOFLEX MTF/MIN-MD(ミノルタ MD →マイクロフォーサーズマウント変換アダプター):¥2 万 2000(税別) ・NOVOFLEX MTF/NIK(ニコン→マイクロフォーサーズマウント変換アダプター):¥2 万 4000(税別) ・宮本製作所 RAYQUAL NFG-M4/3(ニコン→マイクロフォーサーズマウント変換アダプター):¥2 万 4000(税別)株式会社 ケンコー・トキナー
℡ 03-5982-1060 http://www.kenko-tokina.co.jp ・バリアブル NDX(可変式 ND フィルター):¥5 万 5000(φ77 ㎜、税別)、¥6 万 5000(φ82 ㎜、税別)株式会社 コシナ
サービス窓口℡ 0269-22-5106 http://www.cosina.co.jp/ ・Voigtlander NOKTON 2 5 ㎜ F0.95(マイクロフォーサーズマウント):¥9 万 5000(税別) ・Distagon T* 3 5 ㎜ F1.4ZE(EF マウント):¥19 万 4000(税別) ・Planar T* 5 0 ㎜ F1.4ZE(EF マウント):¥6 万 7000(税別) ・Planar T* 8 5 ㎜ F1.4ZF.2(F マウント):¥11 万 9500(税別)株式会社 駒村商会
℡ 03-3639-3351 http://www.komamura.co.jp/ ・Schneuder Kreuznach Cine-Xener(PL マウントレンズ):価格 P.14 参照 ・ホースマン TS プロ ベースユニット:¥8 万 1900(税込) ・ホースマン レンズサポート:オープンプライス ・ホースマン PL マウントアダプター:オープンプライス株式会社 シグマ
カスタマーサービス部℡ 0120-9977-88(モバイル℡ 044-989-7436) http://www.sigma-photo.co.jp/ ・ 3 0㎜ F1.4EX DC HSM(F マウント):¥5 万 5000(税別) ・ 5 0㎜ F1.4EX DG HSM(F マウント):¥6 万(税別) ・ 8 5㎜ F1.4EX DG HSM(F マウント):¥9 万 4300(税別)有限会社 テクニカルファーム
℡ 03-5942-5500 http://www.technicalfarm.com/ ・Canon EF ZOOM TF-Version(EF マウント):オープンプライス株式会社 ナックイメージテクノロジー
映像制作営業部℡ 03-3796-7901 http://www.nacinc.jp/ ・Carl Zeiss Compact Prime CP.2(PL マウントレンズ):価格 P.20 参照株式会社 ノビテック
映像機材部℡ 03-5728-6340 http://www.nobby-tech.co.jp/ ・uniQoptics Kenji Suematsu シネグチャーシリーズ(PL マウントレンズ):価格 P.17 参照 ・Zacuto Universal Baseplate(ベースプレート):¥5 万 6000(税別)・Zacuto Z-Focus(フォローフォーカス):¥10 万 7500(税別) ・Zacuto Z-Finder EVF(LCD モニター):¥8 万 500(税別)