仏
頂
肉
髻
の
研
究
1
仏 頂系
経
軌 中 に 見 ら れ る 三 十 二相
・
肉 髻 の 表 現 を 中 心 にi
佐
々木
大
樹
仏 頂肉書の研 究 (佐々木 〉一
は
じ
め
に 筆 者 は、
こ れ ま で 六 五 三 年 か ら 翌 年 に か け て 阿 地 瞿 多 に よ っ て 翻 訳 さ れ た と い う 「 陀 羅 尼 集 経 」(
全 + 二 巻)
に つ(
↓ い て 研 究 し て き た。
こ の 『 陀 羅 尼 集 経 一 の 第一
巻 「 金 剛 地 印 法」
で は 「 帝 殊 羅 施 鑠 鶏 謨 彌(
鮭 光 聚 仏 頂)
」 を 、 ま た、
第 十 二 巻 「 都 会 壇 法 」 で は、
「 仏 頂 仏 」 を 中 尊 に 充 て て お り、
当 経 に お け る 仏 頂 尊 の 重 要 性 が 窺 わ れ る 。 こ の 仏 頂 な る 尊 格 は、
こ の 「 陀 羅 尼 集 経 」 に 限 ら ず、
以 降 に も 『一
字 仏 頂 輪 王 経 一(
全 五 巻 V や 『 大 仏 頂 広 聚 陀 羅 尼 経 」(
全 五 巻)
な ど の 大 部 な 経 典 に 、 ま た「
仏 頂 尊 勝 陀 羅 尼 経 』 な ど の 重 要 な 陀 羅 尼 経 典 に、
中 心 的 な 存 在 と し て 登 場 し て い る 。 不 空 も ま た 「 菩 提 場 所 説}
字 頂 輪 王 経 一(
全 五 巻)
や 「 金 剛 頂 経}
字 頂 輪 王 瑜 伽一
切 時 処 念 誦 成 仏 儀 軌 』(
全(
2》
一
巻)
な ど を 翻 訳 し て お り 、 他 に も 仏 頂 系 の 翻 訳 者 と し て、
金 剛 智・
善 無 畏 等 の 名 を 挙 げ る こ と が で き る 。 こ の よ う に 仏 頂 系 経 軌 は、
唐 代 を 中 心 に 盛 ん に 翻 訳 さ れ 、 三 崎 良 周 先 生 の 数 え に よ れ ば 漢 訳 だ け で 五 十 三 種 に な る と い う。
(
3}
ま た 「 鷲 語 仏 典 の 研 究」
に よ れ ば 、 幾 種 か の 梵 本・
蔵 訳 も 現 存 し て お り、
そ の 流 通 の 広 さ を 感 じ さ せ る 。一
141一
智山学報 第五十五輯 仏 頂 系 の 密 教 は 、 初 期 か ら 中 期 へ の 密 教 史 の 中 で 見 過 ご す こ と が で き な い
一
大 潮 流 で あ る と 思 わ れ る 。 こ の 仏 頂(
4)
尊 に つ い て 体 系 的 に 論 じ た も の に、
三 崎 良 周 先 生 の 論 文 「 仏 頂 系 の 密 教 」 が 挙 げ ら れ る 。 近 年 で は、
千 葉 照 観 先 生(
5)
が、
不 空 な ど を 中 心 と し て 中 国 に お け る 仏 頂 尊 受 容 の 問 題 を 論 じ て い る 。 し か し 概 し て 先 行 研 究 は 少 な く 、 ま た そ の 多 く は 漠 訳 資 料 の み を 用 い る も の で あ り、
充 分 に 解 明 さ れ て い な い 問 題 も 多 く 残 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 筆 者 も 近 年、
仏 頂 尊 の 研 究 に 傾 倒 し、
「 陀 羅 尼 集 経 」 第一
巻 の 記 事 を 中 心 に 検 討 を 加 え て き た。
・
「 陀 羅 尼 集 経 」 所 収 の 仏 頂 系 経 軌 の 考 察(
二 〇 〇 四「
智 山 学 報一
五 三)
・
「
陀 羅 尼 集 経 』 の 研 究 − 釈 迦 仏 頂 の 成 立 を め ぐ っ て ー(
二 〇 〇 五「
密 教 学 研 究」
三 七 V 特 に 後 者 の 論 文 で は、
『 陀 羅 尼 集 経 」 所 収 の 仏 頂 系 経 軌 が、
い わ ゆ る 仏 伝 の 「 舎 衛 城 の 神 変 」 に 起 因 す る こ と を 指 摘 し た 。 漢 訳 さ れ た 経 典 に よ っ て そ の 成 立 を 推 し 量 る な ら ば、
「
陀 羅 尼 集 経 一 所 収 の 仏 頂 系 経 軌 は 初 期 に 位 置 す る も の で あ り、
こ の「
舎 衛 城 の 神 変 」 と の 繋 が り は 興 味 深 い 問 題 を 示 唆 す る よ う に 思 わ れ る 。(
6)
今 後 の 研 究 の 方 向 性 と し て は、
(
a)
資 料 的 に は 漢 訳 だ け で は な く 梵 蔵 の 関 係 資 料 を 加 え る こ と、
(
b
) 内 容 的 に は 仏 伝・
大 乗 経 典 等 と の 関 係 性 を 考 慮 す る こ と、
の 二 点 に こ だ わ っ て 今 後 の 研 究 を 推 し 進 め た い と 考 え て い る 。一
142一
二問
題
の所
在
(
ヱ 仏 頂 尊 と は一
般 的 に、
仏 の 三 十 二 相 の一
で あ る 「 頂 上 肉 髻 相 」 の 理 念 化・
人 格 化 に 起 因 す る も の と い わ れ る 。 ま た 菩 提 流 志 訳 = 字 仏 頂 輪 王 一 「 画 像 品 第 二 」 で は、
「 仏 眼 菩 薩 」 「 如 来 毫 相 菩 薩 」 「 如 来 牙 菩 薩 」 な ど が 登 場 す る が 、(
8)
こ れ ら も ま た 仏 頂 尊 と 同 様 の 成 立 背 景 を 有 す る も の と 思 わ れ る 。 し か し 「 三 十 二 相 」 か ら こ れ ら の 尊 狢 、 特 に 「 肉 髻 相 」 か ら 仏 頂 尊 と い う 成 立 過 程 を 具 体 的 に 検 証 し た 論 文 は い ま だ な い 。 こ の 如 来 の 「 肉 髻 」 か ら 仏 頂 尊 へ と い う成 立 の 流 れ は
、
蓋 然 的 に は 頷 か れ る も の で あ る が、
そ の 実 証 を 試 み る の が 当 論 考 の 狙 い で あ る。
そ の た め に は、
従 来 の 仏 教 に お け る 「 肉 髷 相 」 の 解 釈 の 変 遷 を 探 る 必 要 が あ ろ う 。 ま た 密 教 の 側 に お け る 「 三 十 二 相 」 「 肉 髻 相 」 に つ い て 整 理 す る 必 要 も あ ろ う 。 紙 数 の 関 係 上、
と り あ え ず 当 論 文 で は、
特 に 後 者 の 問 題 を 中 心 に ま ず 論 じ て み た い と 思 う。
そ し て、
闍 那 崛 多 訳 「 大 法 炬 陀 羅 尼 経 』 な ど 「 三 十 二 相 」 に 言 及 す る 密 教 経 典 は 少 な か ら ず 存 在 す る と 思 わ れ る が、
こ こ で は 仏 頂 系 の 資 料(
特 に 仏 頂 尊 を 主 尊 と す る も の V を 中 心 に、
二 つ の 大 き な テ ー マ 、 五 つ の 小 さ な テ ー マ を 設 定 し て、
以 下 検 証 を 進 め て い き た い と 思 う 。 1 : 仏 頂 系 経 軌 に お け る 「 三 十 二 相 」 の 表 現・
特 性 を 探 る(
1)
三 十 二 相 の 相 選 択 (2
)
三 十 二 相 の 特 性(
3)
三 十 二 相 中 の 優 劣 2 : 仏 頂 系 経 軌 に お け る 「 肉 髻 相 」 の 表 現・
特 性 を 探 る(
1)
無 見 頂 相 (2
)
仏 頂 肉 髻 の 放 光一
143一
三
仏
頂
系
経
軌
にお
け
る 「 三十
二相
」 の表
現
と
特
性
仏頂肉髫の研 究 (佐々木)(
9)
三 十 二 相 ( ユ 螽身
陰 ヨ 駐 碧 磊 。翼
超 帰 巴 は、
仏 が 具 え る と い う 三 十 二 の 勝 れ た 身 体 的 特 徴 の こ と で あ る 。 『 大 智 度(
m)
論」
第 四 巻 に 記 さ れ る 三 十 二 相 を 例 と し て 挙 げ れ ば、
足 下 安 平 立 相・
足 下 二 輪 相(
千 輻 輪 相)
・
長 指 相・
足 踝 広 平 相・
手 足 指 縵 網 相・
手 足 柔 軟 相・
足 趺 高 満 相・
伊 泥 延 膊 相・
正 立 手 摩 膝 相・
陰 馬 相・
身 広 長 等 相・
毛 上 向 相・
一
々 孔[
毛 生 相・
金 色 相・
丈 光 相(
円 光一
尋 相V
・
細 薄 皮 相・
七 処 隆 満 相・
両 腋 下 隆 満 相・
上 身 如 師 子 相・
大 直 身 相・
肩 円 好 相・
四 十 歯 相・
歯 斉 相・
牙 白 相・
師 子 頬 相・
味 中 得 上 味 相・
大 舌 相・
梵 声 相・
真 青 眼 相・
牛 眼 睫 相・
頂 髫 相・
白 毛 相(
白 老 相)
で あ る 。 ま た 同 様 の も の に 八 十 随 好(
餝 ξ 壁 傷 蔓 昌 磐 笛、
八 + 種 好 な ど と も 漢 訳)
と 呼 ば れ る も の智 山 学報 第 五 十五輯 が あ る が
、
こ れ は 仏 の 相 好 を 更 に 細 か く 、 八 十 種 に ま と め た も の で あ る。
(
11}
先 行 研 究 で は 、 こ の よ う な 身 体 観 は 、 仏 教 外 の 宗 教.
習 俗 に 起 因 す る も の と さ れ て い る 。 す で に 厨 三 冨 三 ℃ 凶 乱〔
12}
中 に、
そ の 概 念 の 萌 芽 を 見 出 す こ と が で き る が 、 こ の 段 階 で は、
「 三 十 二 相 」 と い う 枠 組 み と、
特 徴 的 な 数 相 が 想(
13V 定 さ れ て い た だ け の よ う で あ る 。 以 後 、 こ の 三 十 二 相 と い う 概 念 は、
多 く の 経 典 や 論 書 に 取 り 込 ま れ 普 及 し て い く(
14)
が、
こ の よ う な 背 景 か ら、
相 の 序 列 や 選 択 に お い て 多 く の 異 同 が 生 じ た よ う で あ る 。 三 + 二 相 の 記 事 は 数 多 く、
そ の 内 容 も 非 常 に 錯 綜 し た も の で あ る が 、 高 原・
岡 田 先 生 に よ っ て 系 統 化 の 試 論 が 提 出 さ れ た こ と に よ り、
全 体 像 は(
15}
解 明 さ れ つ つ あ る よ う に 思 わ れ る 。 こ の 系 統 化 の 作 業 範 疇 に は、
密 教 系 の 資 料 は 含 ま れ て い な い よ う で あ る が、
密 教 経 典 を 見 て い く と 少 な か ら ず 「 三 十 二 相 」 の 概 念 を 読 み 取 る こ と が で き る。
今 回 筆 者 が 問 題 と す る 仏 頂 系 の 経 軌 中 よ り一
例 を 挙 げ れ ば、
「 如 是 地 樹 下 画 釈 迦 牟 尼 如 来 。 備 三 十 二 相 大 人 相 八 十 妙 好(
「
大 正蠶
第「
九 巻 二一
二 〇 頁 眇 段)
」 と あ る 。 さ す が に 「 三 十 二 相 」 諸 相 を 仔 細 に 表 記 す る 密 教 典 籍 は 少 な い と 目 さ れ る が、
わ ず か に 以 下 に 挙 げ る 資 料◎
中 に、
他 資 料 に は 見 ら れ な い 独 創 的 な 三 十 二 相 説 が 展 開 す る こ と を 確 認 し た〔
* 資 料 ◎ は 異 訳 関 係 に あ る)
。 資 料 菩 提 流 志 訳『
一
字 仏 頂 輪 王 経 』(
大 正 蔵 恥 九 五一
一
全 五 巻)
三 十 二 相 に 言 及 す る 資 料 資 料 菩 提 流 志 訳 「 五 仏 頂 三 昧 陀 羅 尼 経 」(
大 正 蔵 恥 九 五 二”
全 四 巻)
資 料 ◎ 不 空 訳 「 菩 提 場 所 説→
字 頂 輪 王 経 』(
大 正 蔵 恥 九 五 〇”
全 五 巻)
(
1
)
三 十 二 相 の相
選 択 ま ず 資 料 ◎ に 挙 げ ら れ る 三 十 二 相 と し て、
資 料 : 「 序 品 第一
」
如 何 な る 相 好 が 挙 げ ら れ て い る か を 確 認 し て い き た い 。一
144一
仏 頂 肉 髻の研究 (佐々木) 爾 時 世 尊 坐 菩 提 樹 下 金 剛 福 地 。 便 入
一
切 如 来一
字 仏 頂 輪 王 神 変 大 三 摩 地 。 倶 時 十 方 現 在 刹 土一
切 如 来。
皆 坐 菩 提 樹 下 金 剛 福 地。
亦 各 同 入一
切 如 来一
字 仏 頂 輪 王 神 変 三 攣 地。
当 時 世 尊 入 是 神 変 三 摩 地 時 。 尽 周 憶 念 十 方 三 世一
切 刹 土一
切 有 情 有 情 界 。 及 此 三 千 大 千 世 界一
切 有 情 有 情 界。
既 殃 無 量 倶 胝 胝 伽 沙 等 大 劫 所 修 積菊
飢,
桐 施 浄 戒 安 忍 精 進 際 慮 艇 荐 善 行 無 辺 醤 楓 。 三 十 二 大 丈 相 。 放 大 明 。 所 謂 頂 上 眉 毫 眼 耳 鼻 鬢 頬 脣 口 歯。
断 齶 牙 頷 肩 肘 臂。
胸 乳 心 臍 胸 上 相。
髀 膝 脛 掌 背 指 。 如 来 輻 転 輪 法(
* 法 輪)
印。
如 来 如 意 印 如 来 槊 印 。 如 来 錫 杖 印 如 来 心 印。
如 来 難 怒 頂 三 地 印 。 如 来 大 慈 如 来 大 悲 。 如 来 三 摩 地 如 来 無 畏。
授 衆 記 別 如 来 大 明 王 。 如 是 相 処一
一
各 放 無 量 種 光。
其 光 各 有 種 族 光 明 囲 繞 荘 厳。
q 大 正 蔵 」 第一
九 巻 ニ ニ 六 頁 a 段)
一
145一
資 料 : 「 五 仏 頂 王 陀 羅 尼 入 三 摩 地 加 持 顕 徳 品 第 二 」 爾 時 世 尊 入 仏 神 変 大 三 摩 地 。 入 三 摩 地 時 。 尽 周 憶 念一
切 有 情 界 已。
六 波 羅 密冖
善 根 。ー
一
九 巻 二 六 四 頁 b 段)
資 料 ◎ 「 序 品 第一
」 時 世 尊 坐 大 菩 提 樹 下 。 於 大 福 生 地 。 如 来 入 仏 遊 戲 三 摩 地 時 。 受一
切 衆 生 界。
無 量 恆 河 沙 数 倶 胝劫
積 鍛o.
.
施 戒 忍 運等
波 羅 蜜 か.
白 相 。 眉 従 鼻 従 耳 4 4 如 是’
λ 二 。 如 来 法 輪 印 頭 。 従 袈 裟’
去魂
従則
以 無 量 倶 知 殊 觚 沙 等 大 劫 酬 修 積 粂無
量一
各 有 種 族 光 明 而 囲 纔 之 。(
「
大 正 蔵 」 第}
一
切 如 来 悉 皆 同 入 是 三 摩 地 。 世 尊 彼 時 。 憶 念 微.
無 蚤 難 行 苦 徹 。 儼藻
。 所 謂 衡 環 徳 二 従 二 乳 問 。 従 従 ニハ
ニ 膝 従 二 脛ハ
ニ 踝 。 。 如 是 真 多 摩 尼 宝。
如 来 鑠 訖 底 三 。 錫 杖 印 。 従 如 是一
切 如 来 心 印 処 。智 山学報 第五 十五 無 能 勝 忿 怒 転 輪 王 入 三 摩 地 無 能 勝 印
。
如 是一
切 如 来 大 慈 悲 処 。一
切 如 来 三 摩 地 。 如 是’
無 畏 処 記態
。 如 是一
切 如 来 明 真 言 処。
放 光 。 於一
一
光 明 無 量 光 明 以 為 眷 属。
(
「 大 正 蔵」
第一
九 巻皿
九 三 頁 c 段 〜)
ま ず 注 目 し た い の は、
資 料 ◎ に 共 通 す る …,
.
.
点 線 の 部 分 で あ る 。 こ こ で は 、 「 無 量 の 過 去 世 に 積 集 さ れ た 六 波 羅 蜜 の 善 根 」 の 力 に よ っ て、
仏 の 三 十 二 相 か ら 大 光 明 が 放 た れ る こ と が 述 べ ら れ る 。 初 期 の 三 十 二 相 説 は 、 相 の 名 称 を 列 ね る だ け で あ る が、
大 乗 の 経 論 中 で は 三 十 二 相 を 獲 得 し た 善 因 へ の 言 及 が 積 極 的 に 試 み ら れ て い る。
『
大〔
16)
方 便 仏 報 恩 経 一「
無 上 依 経 一 『 菩 薩 善 戒 経』
や、
『 大 智 度 論 一 『 瑜 伽 師 地 論 』 な ど が 代 表 的 な も の で 、 特 に 『 賢 劫 経 一(
17)
「 三 十 二 相 品 」 で は、
三 十 二 全 相 を 六 事(
六 波 羅 蜜)
と の 関 係 で 説 明 し て い る 。 こ の 点 線 の 部 分 に 関 し て は、
大 乗 仏 教 の 解 釈 が 踏 襲 さ れ て い る こ と が 知 ら れ る 。 し か し 資 料 ◎ の 波 線 部 分 に 示 さ れ る 三 十 二 相 の 相 選 択 に つ い て は、
伝 統 的 な 教 説 か ら の 極 端 な 乖 離 が 見 て 取 ら れ る 。 波 線 の 前 半 部 分 で は、
身 体 的 な も の が 取 り 挙 げ ら れ 、 三 十 二 相 と の 繋 が り を 感 じ さ せ る が、
相 好 の い ず れ に 対 応 す る の か 判 然 と し な い も の も 多 い 。 む し ろ 八 十 随 好 に 含 む べ き も の も 多 い よ う に 感 じ ら れ る 。 ま た…
波 線 の 後 半 部 分 に つ い て、
資 料 で は 「 如 来 千 輻 転 法 輪 印・
如 来 如 意 印・
如 来 槊 印・
如 来 錫 杖 印・
如 来 心 印・
如 来 難 勝 奮 怒 頂 輪 王 三 摩 地 難 勝 印 」 と い っ た 印 契 、 「 如 来 大 慈・
如 来 大 悲・
如 来 三 濠 地・
如 来 無 畏 授 衆 記 別・
如 来 大 明 呪 王 」 と い っ た 理 解 不 能 な も の を、
ま た 資 料 ◎ で は 「 如 来 法 輪 印 処・
如 是 真 多 摩 尼 宝 処・
如 来 鑠 訖 底 三 昧 処・
錫 杖 印 処 … … 云 々 」 等 の も の を 三 十 二 相 と し て 挙 げ て い る 。 当 然、
こ れ ら の 要 素 が 三 十 二 相 に 組 み 入 れ ら れ た 例 を 見 な い し、
従 来 説 に 照 ら し て も、
三 十 二 相 と し て 分 別・
整 理 す る こ と す ら 至 難 で あ る か の よ う に 思 わ れ る 。 こ れ ら の 仏 頂 系 経 軌 中 の 相 選 択 は、
正 統 か ら す る と 全 く 出 鱈 目 な も の で あ る が 、 こ の 選 択 が 意 図 的 で あ る の か、
ま た こ の 構 成 自 体 が 何 を 意 図 す る の か、
現 時 点 で は 確 定 し た 理 解 を 導 く こ と は で き な い。
一
i46一
仏 頂 肉 髷の研 究 (佐々木)
(
18冒
(2
)
三 十 二相
の 特 性(
印 契 の 出 生〉
次 に 同 じ く 資 料◎ 中 に 見 ら れ る
、
三 十 二 相 に 関 す る 独 自 の 解 釈 を 見 て い き た い 。 資 料 : 「 印 成 就 品 第 七 」 爾 時 世 尊 誥 金 剛 密 跡 主 菩 薩 言。
ー
。 汝 善 男 子 如 来 復 有 無 量 倶 胝 百 千 呪 印 。 是一
一
印 。 各 有 無 量 僕 従 印 等。
(
「
大 正 蔵 一 第}
九 巻 二 四 五 頁 c 段 〜)
資 料・
・
「 五 頂 王 密 印 第 八 」 爾 時 世 尊 誥 金 剛 密 跡 。ー
.
汝 善 男 子 如 来 有 無 量 倶 胝 百 千 印 。 是一
}
印 各 有 無 量 僕 従 印 故 。(
「 大 正 蔵一
第}
九 巻 二 八 〇 頁 b 段)
資 料 ◎ : 「 密 印 品 第 八 」 爾 時 世 尊 告 金 剛 手 秘 密 主 言。
金 剛 手ー
。 善 男 子 是 印 等。→
切 如 来 所 説 。一
一
印 。 百 千 倶 胝 印 以 為 眷 属。
皆 従 如 来 支 分 生 。(
「
大 正 蔵 」 第一
九 巻 二一
四 頁 a 段)
(1
)
の 箇 所 で、
三 十 二 相 中 に 「 印 契 」 を 挙 げ て い る こ と を 指 摘 し た 。 資 料 ◎ の 密 印 品 で は 、 波 線 の ご と く 仏 の 身 体 、 す な わ ち 三 十 二 相 の 大 丈 夫 相 か ら 印 契 が 、 そ の 」 々 の 印 契 か ら 無 量 の 印 契 が 出 生 す る と い う 次 第 が 明 か さ れ て い る 。 そ し て 実 際 に、
「 如 来 毫 相 印 」 「 如 来 眉 印 」 「 如 来 臍 印 」 「 如 来 舌 相 印 」 等 、 三 十 二 相 に 深 い 関 わ り を 持 つ で あ ろ う 諸 印 契 が 列 記 さ れ て い る 。 そ の 深 意 は 不 明 で あ る が、
三 十 二 相 と 印 契 を 積 極 的 に 関 与 さ せ る こ と 、 ま た 三 十 二 相 に 何 か を 生 起 さ せ る 根 源 的 力 を 見 出 し て い る こ と 、 こ れ ら に つ い て は 独 自 の 解 釈 と 指 摘 す る こ と が で き よ う 。一
147一
智山 学報第五十五輯
(
3
)
三 十 二 相 中 の 優劣
次 に そ の 三 十 二 相 の 中 で も、
い ず れ の 相 を 重 視 し て い る の か を 見 て い き た い。
こ れ に つ い て 言 及 す る 記 事 は 資 料 の み で あ る が、
他 に は 不 空 訳 = 字 奇 特 仏 頂 輪 王 経 』 中 に 明 確 な 表 現 を 認 め る こ と が で き る。
「
大 法 壇 品 第 八 」 の 冒 頭 爾 時 世 尊 譜 金 剛 密 跡 主 菩 薩 言 。 汝 当 諦 聴 。 我 為 利 益一
切 有 情 。 略 説一
字 頂 輪 王 大 秘 密 曼 拏 擺。
此 曼 拏 擇。
於 出 世 世 間 。 為 最 為 上 。ー
。
又 如 如 来 天 上 人 中 為 大 導 師。
是一
字 頂 輪 王 大 曼 拏 攘 亦 復 如 是 。 於 諸 呪 壇 為 大 輪 王 而 最 第一
。(
「 大 正 蔵 一 第一
九 巻 二 四 六 頁 a 段 〜)
* 不 空 訳 = 字 奇 特 仏 頂 輪 王 経』
「 曼 拏 羅 儀 軌 品 第 三 」(
大 正 蔵 恥 九 五 三)
世 尊 我 当 知 。 此 如 来 仏 頂 不 思 議 如 是 。 仏 三 十 二 大 人 相 中。
仏 為 最。
如 是一
切 真 言 中。
此 仏 頂 真 言 為 最 勝。
如 是 世 尊 天 中 。 仏 為 無 上 大 師 。(
「
大 正 蔵 」 第一
九 巻 二 八 九 頁 c 段↓
こ こ で の 波 線 部 分 か ら は、
三 十 二 相 の 中 で も 仏 頂、
す な わ ち 頂 上 肉 髻 相 を 最 勝 の も の と す る 立 場 が 明 確 に 読 み 取 ら れ る 。 大 乗 の 経 論 で は、
三 十 二 相 全 て を 等 分 の 価 値 と し て 扱 わ ず、
幾 相 か を 偏 重 す る 傾 向 が 強 い。
そ の 顕 著(
担 な 例 と し て 「 白 毫 相 」 の 名 が 挙 げ ら れ る が、
「 肉 髻 相 」 も ま た 重 視 さ れ た一
つ と 数 え ら れ よ う 。一
148一
四
仏
頂
肉
髻
の表
現
・
特
性
仏 頂 と は、
三 十 二 相 中 の 「 頂 上 肉 髻 相 」、
す な わ ち 仏 の 頭 頂 上 の 隆 起 し た 部 分 を 指 し 示 す 。 こ の 仏 頂 肉 髻 に つ い て、
仏 頂 系 経 軌 中 よ り 様 々 な 傾 向 を 読 み 取 る こ と が で き る が、
当 論 文 で は、
(
董)
無 見 頂 相(
2
)
仏 頂 肉 髻 の 放 光、
仏 頂肉書の研 究 (佐々木) と い う 二 点 に し ぼ り 問 題 を 設 定 し た
。
(
1
)
無 見 頂 相 ☆ 不 空 訳
「
一
字 奇 特 仏 頂 経 」 妙 清 浄 慧 無 二 現 行 。 説 無 相 法 住 仏 住 。 得一
切 仏 平 等 。 無 碍 通 達 不 退 転 法 。 無 奪 境 界 不 思 議 清 浄 。 得 三 世 平 等 遍一
切 世 界 身 o 螂蒙
。(
「 大 正耀
厩」
第一
九 巻 二 八亠
ハ型
貝 a 段)
出 如 是 声。
奇 哉 世 尊 仏 頂 。 設 住 十 地 菩 薩 不 能 瞻 睹 。q
大 正 蔵 一 第一
九 巻 二 八 七 頁 b 段)
我 請 世 尊 説 真 言 不 思 議 。 世 尊 諸 仏 世 尊 明 王 仏 頂 不 思 。 設 住 十 地 菩 薩 不 能 瞻 睹。
何 況 余 釈 梵 護 世 天 等 。(
「
大 正 蔵 一 第一
九 巻 二 八 九 頁 b 段 ) こ こ で は 、 「 仏 頂 の 相 は、
十 地 の 菩 薩 で あ っ て も 見 る こ と が 不 可 能 で あ る」
と い う 無 見 頂 相 の 思 想 が 鮮 明 に 示 さ れ て い る 。 こ の よ う な 記 事 は 全 て の 仏 頂 系 経 軌 に 共 通 す る わ け で は な い が 、 比 較 的 後 期 の 翻 訳、
特 に 不 空 訳 の も の【
20}
に 強 く 打 ち 出 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 こ の よ う な 「 無 見 頂 相 」 の 概 念 は、
決 し て 仏 頂 系 経 軌 独 自 の も の で は な く、
す で に 大 乗 の 諸 経 論 中 に そ の 傾 向 を 見 出 す こ と が で き る 。 そ し て、
そ の 表 現 の 形 態 と し て は 以 下 の よ う な 二 通 り の も の が 見 受 け ら れ る 。(
21)
1、
「
頂 上 肉 髻 相 」 を 三 十 二 相 の一
、
「 無 見 頂 」 を 八 十 随 好 の一
と 別 出 す る 系 統 「 無 上 依 経」
「 大 般 若 経 」 「 大 乗 百 福 経 』 等(
22)
2、
肉 髻 相 と 無 見 頂 相 を一
体 の も の と 表 現 す る 系 統 「 大 般 浬 槃 経 」 「 大 宝 積 経一
等、
「 菩 薩 地 持 経 一 「 菩 薩 善 戒 経 」「
瑜 伽 師 地 論 一 等 こ れ ら の 解 釈 は}
見 対 立 を し て い る よ う に 見 え る 。 し か し 「 大 智 度 論 」 第 二 十 九 巻 で は、
一
149一
智 山学 報 第五十五 輯 と
、
な か っ た と 思 わ れ る 。 目 す べ き こ と で あ ろ う 。 問 日 。 若 須 八 十 随 形 好 。 何 不 皆 名 為 相 而 別 為 好 。 答 日 。 相 大 厳 身 。 若 蒙 大 則 已 摂 小。
’
次 相 而 細。
衆 生 見 其 相。
好 則 難 見 故 。 又 相 者 余 人 共 得 。 好 者 或 共 或 不 共 。 以 是 故 相 好 別 説 。(
「
大 正 蔵 」 第 二 五 巻 二 七 四 頁 c 段)
三 十 二 相 を 仔 細 に 展 開 し た も の が 八 十 随 好 で あ る と 関 係 性 を 明 確 に 規 定 し て い る 。 阿 含 系 統 の 資 料 で は 見 ら れ 「 無 見 頂 相 」 の 思 想 が 表 出 し た 時 に、
「 肉 髻 相 」 の 属 性 と し て 次 第 に 表 現 さ れ て い っ た こ と は 当 然 の 帰 結 い ず れ に し ろ 大 乗 に お け る 「 肉 髻 無 見 頂 相」
と い う 概 念 も ま た、
仏 頂 系 経 軌 に 取 り 込 ま れ た こ と は 注(
2
)
仏 頂 肉 髻 の 放 光 こ の 「 放 光 」 と い う 性 質 が 仏 頂 肉 髻 に お け る 最 も 顕 著 な 特 性 で あ る か と 思 う 。 そ の 記 事 は 、 様 々 な 仏 頂 系 経 軌 に 散 見 す る こ と が で き る が
、
以 下、
代 表 的 な も の を 抽 出 し て 列 挙 し た い 。 ☆ 阿 地 瞿 多 訳 「 陀 羅 尼 集 経 一(
大 正 蔵 掬 九 〇一
)
時 仏 世 尊 知 会 衆 心。
即 入 火 光 三 摩 地。
ー
。 照 三 千 大 千 世 界 已 。 仏 以 自 手 作 仏 頂 印 。 誦 仏 頂 呪 。 於 仏 光 中 。 化 作 無 量 阿 僧 祇 兢 伽 沙 那 由 他 仏。
其一
一
仏 。 於 虚 空 中 行 住 坐 臥 。 各 放 無 量 光 明 。 身 出 水 火 。 現 作 種 種 仏 威 神 事。
(
「 大 正 蔵 一 第一
八 巻 七 八 五 頁 c 段“
「
大 神 力 陀 羅 尼 経 釈 迦 仏 頂 三 昧 陀 羅 尼 品 」)
爾 時 世 尊 起 大 慈 悲。
即、
、
頂 上 肉 鬢 相 中 。 五 色 光。
遍 照 十 方一
切 世 界 。 於 虚 空 中 遊 旋 如 蓋 。 其 光 明 中 有 菩 薩 。 名 帝 殊 曜 施。
結 加 趺 坐 放 大 光 明。
身 支 節 中 各 出 火 焔。
口 説 神 呪 。 多 者 名 日 大 仏 頂 呪 。 少 者 名 為 小 仏 頂 呪 。 説 如 是 等 種 種 呪 法 。 并 作 印 法。
帝 殊 曜 施 説 此 呪 等。
現 威 神 時 。 映 蔽 於 前 何 耶 掲 哩 婆 身 。 及 呪 神 悉 不 復 現(
「
大 正 蔵 」 第一
八 巻 七 九 〇 頁 b 段 〜口
「
金 輪 仏 頂 像 法 」)
一
150一
仏頂 肉書の研 究 (佐々木) ☆ 失 訳 「 大 仏 頂 如 来 放 光 悉 怛 多 般 怛 羅 大 神 力 都 摂
一
切 呪 王 陀 羅 尼 経 大 威 徳 最 勝 金 輪 三 昧 呪 品 第 こ(
大 正 蔵 恥 九 四 七)
爾 時 世 尊。
知 其 会 衆 心 生 狐 疑 。 即 入 火 光 三 昧 。ー
。 照 於 三 千 大 千 世 界 巳。
仏 自 作 仏 頂 印 。 召 請 十 方 諸 仏 菩 薩 。 於 虚 空 中 。 無 量 恒 河 沙 諸 仏 菩 薩 普 皆 雲 集 。 其 十 方 諸 仏 亦 放 光 明。
身 出 水 火。
現 大 威 力。
(
「 大 正 蔵一
第一
九 巻一
八 〇 頁b
段)
爾 時 世 尊。
巳 見 十 方 諸 仏 菩 薩 人 天 請 巳 。 即 入 三 昧 。 寂 然 不 語 。’
肉 髻 中。
涌 出 十驢
百 宝 明。
於 光 明 中。
又 涌 出 千 葉 蓮 華 。 台 上 有 化 如 来 。 結 跏 趺 坐 。 蓮 華 台 中 。 其 化 仏 頂 上 。 復 放 十 道 百 宝 光 明。
遍 照 十 方 世 界。
一
切 毛 孔 。 皆 放 香 風 。 有 大 金 輪 在 虚 空 中 。 転 其 光 明 中 。 皆 遍 示 現 無 量 百 千 兢 伽 河 倶 知 那 庚 多 金 剛 密 跡 諸 大 神 王 力 士。
q 大 正 蔵 」 第一
九 巻一
八 二 頁 a 段)
☆ 般 刺 蜜 諦 訳 「 大 仏 頂 如 来 密 因 修 証 了 義 諸 菩 薩 万 行 首 楞 厳 経 一(
大 正 蔵 恥 九 四 五)
爾 時 世 尊
蟹
蠶
。 光 中 涌 出 会 宝 蓮 。 有 化 如 来 坐 宝 華 中 、 頂 放 十 道 百 宝 光 明。
一
一
光 明 皆 遍 示 現 十 恒 河 沙 金 剛 密 跡。
驚 山 持 杵 遍 虚 空 界 。 大 衆 仰 観 畏 愛 兼 抱 。 求 仏 恃 怙一
心。
聴 仏 無 見 頂 相 放 光 如 来 宣 説 神 呪(
「 大 正 蔵 一 第一
九 巻 =一
一
三 頁 c 段)
* 以 上 三 本 は 異 訳 で、
と・
と の 記 事 が 対 応 し て い る ☆ 菩 提 流 志 訳 = 字 仏 頂 輪 王 経 一 ( 大 正 蔵 恥 九 五 ご 最,
、
頂 出 無 無 特百 千 明 。 其 各 有 雑 色 謂 青 黄 赤 白 雑 色 光
。
是 光 晃 曜 遍 照 十 方 無 量 無 数 種 種 仏 刹。
及 此 三 千 大 千 世 界一
切 地 獄 傍 生 諸 界 黒 業 有 情。
一
切 罪 悩 尽 皆 銷 滅。
一
切 行 化 持 呪 菩 薩。
遇 斯 光 者 悉 皆 成 就。
如 斯 現 者 尽 是 如 来 無 量 大 福 。 光 照 滋 沢 現 不 思 議 。 経 須 臾 時 作 大 利 楽。
抜 諸 有 情一
切 苦 業 。 光 復 映 蔽 競 伽 沙 数…
切 仏 刹 。一
切 魔 界 魔 之 宮 殿 魔 所 光 明 。 是 等 世 界 光 皆 遍 照 。 上 至 有 頂 下 至 阿 毘 地 獄。
是 中一
151一
智 山 学 報 第五十五輯 有 情 遇 斯 光 者 。 各 相 警 慰 身 心 愉 喜 。 其 光 還 来 繞 仏 三 匝
。
各 復 本 相 。(
「
大 正 蔵 」 第】
九 巻 二 二 六 頁 a 段 〜”
「 序 品 第一
」
)
☆ 菩 提 流 志 訳『
五 仏 頂 三 昧 陀 羅 尼 経』
(
大 正 蔵 恥 九 五 二)
ー
。
是 中 有 情 遇 斯 光 者 各 相 警 悟 。 其 光 還 来 遶 仏 三 匝 各 復 本 相。
(
「 大 正 蔵一
第一
九 巻 二 六 四 頁 b 段日
「
入 三 摩 地 加 持 顕 徳 品 第 二」
)
☆ 不 空 訳 「 薺 提 場 所 説一
字 頂 輪 王 経』
(
大 正 蔵 恥 九 五 〇)
ー
。
照 無 量 仏 刹。
照 此 三 千 大 千 世 界一
切 地 獄 傍 生 。 悉 除 息 塵 翳 息一
切 苦。
建 立一
切 真 言 行。
於 諸 菩 薩 作}
切 義 利 。 成 就 大 福 荘 厳 。一
切 安 楽 易 成 就 。 於 刹 那 頃 作一
切 義 利 成 就 已 。 於 恒 河 沙 数 仏 世 界 齎 宮 殿 。 成 令 萎 瘁 。 映 蔽一
切 魔 光。
乃 至 有 頂 下 至 無 間 大 地 獄 。 辺 際一
切 処 。 照 曜 光 曜 驚 覚一
切 有 情 。 復 来 旋 遶 世 尊 三 匝 已。
(
「
大 正 蔵」
第一
九 巻一
九 四 頁 b 段 :「
序 品 第 こ)
* 以 上 三 本 は 異 訳 で.
・
・
の 記 事 が 対 応 し て い る ☆ 失 訳 「 大 仏 頂 広 聚 陀 羅 尼 経」
(
大 正 蔵 恥 九 四 六)
如 来 身 上 放 大 光 明 。 出 種 種 雑 色 。 於 如 来 頂 上 。 具 足 三 十 二 相 。’
放 色 明 。 其 光 明 能 照 三 千 大 千 世 界 。 上 至 有 頂 下 至 十 八 地 獄。
其 光 変 為 諸 色 宝 雲。
其 雲 空 中 雨 衆 七 宝 及 諸 雑 色 微 妙 蓮 華 。 遍 布 其 地 。 種 種 衣 裳 諸 天 嚴 身 之 具 。 七 宝 天 冠 釵 鐺 環 釧 等 。ー
。 各 照 十 方 百 千 億 世 界 仏 。鑠
。 各 照 十 方 百 千 萬 億 無 量 世 界一
切 諸 仏。
悉 皆 踊 躍 歡 喜。
皆 来 隨 喜。
蒹
。 普 遍 世 界 所 有 天 龍 夜 叉 。 乾 闥 婆。
附 修 羅 。 迦 楼 羅 緊 那 羅。
摩 譫 羅 伽。
入 非 人 等 。 所 有 地 修 羅 餓 鬼 神 生 人 類 。 照 彼 所 有 罪 業 等 。 衆 生 光 所 触 者 遇 斯 光 者 。 所 有一
切 苦 厄 重 報 皆 得 解 脱 。 怪 未 曽 有 不 可 思 議 。 其 睹 史 天 以 其 光 力 故 得 生 化 楽 天 。 其 余 諸 天 各 上 昇一
階 。一
切 諸 天 亦 復 如 是 福 力 増 長〔
「
大 正 蔵」
第一
九 巻一
五 五 頁 b 段 〜 昌 阿 迦 膩 託 天 請 問 序 品 第 こ)
一
152一
仏頂 肉髷の研究 (佐々木) ☆ 仏 陀 波 利 訳 「 仏 頂 尊 勝 陀 羅 尼 縫 一
(
大 正 蔵 恥 九 六 七)
爾 時
姆
羅
。 遍 満 十 方}
切 世 界 已。
其 光 還 来 繞 仏 三 匝 。 従 仏 口 入 。(
「 大 正 蔵 」 第一
九 巻 三 五 〇 頁 b 段)
☆ 杜 行 顕 訳 「 仏 頂 尊 勝 陀 羅 尼 経 』(
大 正 蔵 恥 九 六 八)
其 時 如 来 頂 放 大、
。 其 光 雑 色 流 照 十 方一
切 生 界。
還 至 仏 所 右 纔 三 匝 従 仏 口 入 。〔
「 大 正莖
第一
九 巻 三 五 三 頁 b 段)
☆ 地 婆 訶 羅 訳 「 仏 頂 最 勝 陀 羅 尼 経 一(
大 正 蔵 恥 九 六 九)
爾 時 世 尊 聞 見 釈 天 陳 請 畢 已 。ー
。 流 照 十 方一
切 世 界 。 照 巳 還 至 仏 世 尊 所。
右 纔 三 匝 従 仏 口 入。
(
「
大 正 蔵 」 第一
九 巻 三 五 五 頁 c 段)
☆ 地 婆 訶 羅 訳 「 最 勝 仏 頂 陀 羅 尼 浄 除 業 障 呪 経 一 ( 大 正 蔵 恥 九 七 〇)
爾 時 世 尊ー
。
流 照 十 方一
切 仏 界 。ー
互 相 紛 映 右 旋 宛 転。
還 至 仏 所 遶 仏 三 匝 。 従 仏 口 入。
(
「 大 正 蔵 」 第一
九 巻 三 五 八 頁 b 段 V ☆ 義 浄 訳 『 仏 説 仏 頂 尊 勝 陀 羅 尼 経 」(
大 正 蔵 恥 九 七 ご 爾 時 世 尊 聞 此 語 巳 。 即 便 微 笑 於ー
遍 照 三 千 大 千 世 界 還 至 仏 所。
若 仏 世 尊 説 過 去 事 光 従 背 入。
若 説 未 来 事 光 従 胸 入 。 若 説 地 獄 事 光 従 足 下 入。
若 説 傍 生 事 光 従 足 跟 入 。 若 説 餓 鬼 事 光 従 足 指 入。
若 説 人 事 光 従 膝 入 。 若 説 力 輪 王 事 光 従 左 手 掌 入 。 若 説 転 輪 王 事 光 従 右 手 掌 入 。 若 説 天 事 光 従 臍 入 。 若 説 声 聞 事 光 従 口 入。
若 説 独 覚 事 光 従 眉 間 入 。 若 説 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 事 光 従 頂 入 。 是 時 光 明 還 至 仏 所 。 遶 仏 三 匝 従 仏 口 入 。(
「 大 正 莇 巖 鼈 二 九 巻一
二亠
ハ ニ 頁 b 段 ) * 以 上 五 本 は 尊 勝 陀 羅 尼 経 系 統 の 異 訳 で、
ー の 記 事 は 対 応 し て い る一
153一
智 山学 報 第五十五輯 以 上
、
十 二 種 類 の 漢 訳 仏 頂 系 経 軌 か ら 主 だ っ た 〜 の 例 文 を 掲 げ た が 、 そ こ に は 多 少 の 表 現 の 相 違 を 含 み つ つ も 、 仏 頂 肉 髻 か ら 大 光 明 が 放 た れ る と い う一
致 し た 特 性 が 示 さ れ て い る 。・
の 「 百 宝 」 の 光 明 の 具 さ な 意 味 は 不 明 で あ る が、
・
・
で は そ れ ぞ れ 「 青 黄 赤 白 紅 」「
青 黄 赤 白 紫 」 「 青 赤 黄 白 黒 」 の 五 色 光 を、
ま た で は 「 青 黄 赤 白 朱 紫 頗 梨 馬 瑙 等(
「 大 正莖
第一
九 巻一
五 六 頁 a 段 ) 」 を 、 ま た・
で は 「 雑 色」
と す る こ と か ら 様 々 な 彩 り が 交 錯 融 通 し た 光 線 と 思 わ れ る 。 そ の 仏 頂 肉 髻 か ら 放 た れ た 光 明 は、
「 三 干 大 千 世 界 」 あ る い は 「 十 方一
切 世 界 」 を 照 ら し 出 す と い う が 、 そ こ に は い か な る 意 味・
効 力 が 見 出 せ る の で あ ろ う か、
そ れ が一
番 の 問 題 で あ る 。 ま ず 光 自 体 の 表 現 に つ い て、
(
1
) (n
)
の 形 態 が 見 受 け ら れ 、 ま た 続 く 文 脈 に 臨 む と、
光 を 目 の 当 た り に し た 衆 生 た ち に 様 々 な 反 応 が あ る こ と が 知 ら れ る 。(
1)
光 中 に 仏・
菩 薩・
金 剛 を 化 現 す る(
神 変)
反 応 a : 光 中 の 神 変 に よ っ て 仏 へ の 対 抗 者 は 帰 伏 さ せ ら れ る・
… … … … … …・
… …・
…・
… … …・
…・
… [ 反 応b
: 光 中 の 神 変 に 怖 畏 し な が ら も、
信 奉 者 は 慰 安・
歓 喜・
讃 嘆 す る … …・
… … … …・
・
… … …(
H
)
単 な る 光 の み 反 応 c : 光 に 遇 し た 大 衆 は、
怖 畏 し な が ら も 慰 安・
歓 喜 し、
さ ら に一
切 の 罪 業 や 苦 厄 が 消 滅 さ れ 、 あ [ る い は 生 天 等 の 果 報 を 得 る … … … … … …・
… … … … … …・
・
… … … … … … ….
… : … … …反 応 d : 特 に 記 述 な し … … … … …
・
…・
: … … … … … …・
… … … : … … …・
・
… … … … …・
…・
… …・
こ の 類 型 化 に よ っ て 明 白 で あ る よ う に
、
仏 頂 肉 髻 か ら の 放 光 に は、
仏 へ の 対 抗 者 を 帰 伏 す る、
ま た 随 順 す る 衆 生 達 に は 滅 罪 な ど の 福 徳 果 報 を 与 え る、
と い う 二 つ の 威 力 が 具 わ っ て い る 。 そ し て 何 よ り 注 目 す べ き は、
(
1
)
(
H
)
の い ず れ に お い て も、
放 光 の 直 後 に は 、 そ の 経 軌 に お け る 最 も 重 要 な 話一
154一
仏頂肉髻の研 究 (佐々木) が 展 開 す る こ と で あ る
。
例 え ば、
「 仏 頂 法 」、
「 金 輪 」、
「 悉 怛 多 般 多 羅 の 神 呪 」 、 コ 字 頂 輪 王 明 呪 法 等 」、
「 仏 頂 尊 勝 陀 羅 尼 」 等 の 秘 奥 の 教 え が 仏 に よ っ て 開 示 さ れ る の で あ る 。 そ の 所 説 の 内 容 は 様 々 で あ る が
、
い ず れ も 各 経 典 中 の 主 題 で あ る と い う 点 で は】
致 し て い る 。 以 上 の こ と を 勘 案 す る と、
仏 頂 肉 醫 か ら 放 た れ る 光 に は 二 つ の 意 味・
効 力 が 見 出 せ る よ う に 思 わ れ る。
(
1)
「 あ ら ゆ る 世 界 を 照 ら し 出 す」
と い う 光 の 特 性 と は 、 世 界 の 教 え を あ ま ね く 識 知 す る こ と を 象 徴 し た も の で あ り 、 直 後 に 説 か れ る 教 え を 権 威 付 け る、
ま た 最 勝 性 を 訴 え る 働 き が あ る と 思 わ れ る 。(
2V そ の 光 の 威 力 あ る い は 神 秘 性 に は、
仏 教 内 外 の 衆 生 の 意 識 を 説 法 者 で あ る 仏 に 向 か わ せ る 働 き が あ る よ う に 思 わ れ る。
そ し て 衆 生 の 意 識 が 完 全 に 仏 に 注 が れ た 時 に こ そ 、 仏 は 深 奥 な る 教 え を 衆 生 達 に 開 示 す る の で あ ろ う。
こ れ ら の 二 つ の 特 性 は、
仏 に よ る 放 光 全 般 に 付 属 す る 特 性 と も 考 え ら れ る が 、 そ れ を「
仏 頂 」 に く ぎ る と こ ろ に 仏 頂 系 経 軌 の 立 場 が 明 示 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 し か し、
そ の 仏 頂 か ら の 放 光 と い う 事 態 も ま た、
仏 頂 系 経 軌 に 限 ら れ た 表 現 で は 決 し て な く、
大 乗 経 典 中 に そ の 起 源 を 求 め る こ と が で き る 。 例 え ば、
鳩 摩 羅 什 訳 「 妙 法 蓮 華 経 」 で は 、 爾 時 釈 迦 牟 尼 仏。
放 明 大 人 相 肉 髻、
明 。 及 眉 間 白 毫 相 光 。 遍 照 東 方 百 八 万 億 那 由 他 恆 河 沙 等 諸 仏 世 界(
「 大 正 蔵 」 第 九 巻 五 五 頁 a 段“
「 妙 音 菩 薩 品 」)
(
23)
(
弩 と あ り、
現 時 点 で は 他 に 「 観 仏 三 昧 海 経一
中 に 類 文 を 見 つ け る こ と が 出 来 た 。 こ の よ う に 「 仏 頂 肉 髻 の 放 光 」 は す で に 大 乗 仏 教 中 に 窺 う こ と が で き る が、
白 毫 に 比 べ る と そ の 用 例 は 、 概 し て 少 な い よ う で あ る。
こ の 少 数 派 で あ っ た 「 仏 頂 肉 髻 の 放 光 」 と い う 傾 向 を 偏 重、
徹 底 し た と こ ろ に、
仏 頂 系 経 軌 と し て の 特 色 が 見 出 せ る よ う に 思 わ れ る 。 最 後 に、
以 上 の 仏 頂 系 経 軌 の 記 事〔
〜)
と は 異 な る 傾 向 を 持 つ 、 宝 思 惟 訳 『 大 陀 羅 尼 末 字 中一
字 心 呪 経 」(
大一
155一
智山学報 第五 十 五輯 正 蔵 恥 九 五 六
)
の 放 光 記 事 に つ い て 取 り 上 げ た い 。 如 是 我 聞 。一
時 仏 在 浄 居 天 宮 不 可 思 議 種 種 荘 厳一
切 菩 薩 衆 会 中 住 。 及 諸 天 龍 薬 叉 健 達 縛 阿 素 洛 等 星 宿 天 仙。
皆 是 十 地 菩 薩 方 便 化 現 。 在 於 此 会。
爾 時 世 尊 坐 蓮 華 蔵 界。
観 察 大 衆 諸 天 仙 等。
為 欲 利 益 後 末 世 時一
切 衆 生 故。
入 於一
切 如 来 最 上 大 転 輪 王 頂 三 昧。
即、
眉 間 放一
大、
。 其w 普 遍 十 方 世 界一
切 仏 刹。
其 中 衆 生、
斯w
者 。 靡 不 悦。
其 光 遍 已 還 至 { 所。
囲 繞 三 匝 入 如 来 頂。
当 入 之 時 復 現 種 種 荘 厳 之 相。
其 光 之 内 忽 有 声 日 。 我 是 大 転 輪 王一
字 之 呪。
無 量 天 仙 恭 敬 囲 繞。
爾 時 光 中 復 出 声 日 。 告 釈 迦 如 来 我 是一
切 如 来 智 慧 転 輪 王一
字 心 呪 。 於一
切 過 現 未 来一
切 諸 仏。
我 是 最 上 秘 密 心 呪。
宝 蓋 仏。
娑 羅 樹 王 仏 。 無 量 光 仏 。 無 勝 仏 。 妙 眼 仏。
妙 幢 仏 。 花 王 仏 。 彼 等 諸 仏 普 皆 已 説。
一
切 過 去 無 量 諸 仏 亦 皆 随 喜 。 汝 今 当 為 未 来 衆 生 。 敷 演 斯 呪 令 諸 衆 生 獲 大 利 益 。 爾 時 世 尊 見 聞 斯 已。
告 諸 大 衆。
汝 等 当 知 云 何 名 為一
字 転 輪 王 呪 。 即 説 呪 日 此 是 梵 本 轟一
字 之 呪 部 鮭 林 琺甎
器
(
「歪
蔵 」箜
九 巻 三蓋
頁 ・ 段v
こ の 本 文 で は、
他 の 仏 頂 系 経 軌 と は 表 現 を 異 に し、
仏 の 眉 間 か ら 放 た れ た 光 明 は、
あ ら ゆ る 世 界 を 巡 っ た 後 に 仏 頂 よ り 入 っ た と し て い る 。 こ れ に 類 似 す る 記 事 は、
「 華 厳 経 一 あ る い は そ の 系 統 の 資 料 に 見 出 す こ と が で き る 。 実 叉 難 陀 訳 「 華 厳 経 」 に 依 っ て、
そ の 例 を 挙 げ れ ば 「 如 来 出 現 品 」 に は 以 下 の よ う に あ る。
爾 時 世 尊 。’
眉 間 自 毫 相 中 。 放 大、
明。
名 如 来 出 現。
無 量 百 千 億 那 由 他 阿 僧一
、
明。
以 為 属。
、
普 照 十 方 尽 虚 空 法 界一
切 世 界 右 遶 十 匝 。 顕 現 如 来 無 量 自 在。
覚 悟 無 数 諸 菩 薩 衆 。 震 動一
切 十 方 世 界。
除 滅一
切 諸 悪 道 苦 。 映 蔽}
切 諸 魔 宮 殿。
顕 示一
切 諸 仏 如 来。
坐 菩 提 座。
成 等 正 覚。
及 以一
切 道 場 衆 会。
作 是 事 已。
而 来 右 逶 菩 薩 衆 会 。ー
。 作 如 是 念。
甚 奇 希 有。
今 者 如 来。
一
156一
放 大 光 明 。 必 当 演 説 甚 深 大 法
。
(
「 大 正奮
第一
〇 巻 二 六 二 頁 a 段)
こ こ で も 眉 間 白 毫 相 よ り 放 た れ た 大 光 明 が 、一
切 世 界 を 十 匝 め ぐ り、
最 後 に 如 来 性 起 妙 徳 菩 薩 の 頂 上 よ り 入 っ た こ と が 述 べ ら れ て い る。
同 様 の 記 事 は 「 十 地 品 」 「 入 法 界 品 」 に も、
ま た 異 訳 で あ る 仏 陀 跋 陀 羅 訳・
般 若 訳、
お よ(
25)
び 『 十 地 経』
『 如 来 興 顕 経 』 の 対 応 箇 所 に も 見 受 け ら れ る 。 確 か に 仏 頂 で は な く 菩 薩 の 頂 で あ り、
ま た 前 後 の 経 典 の 内 容 も 全 く 異 な る も の で あ る 。 し か し そ れ は 各 々 の 経 典 の 立 脚 点 が 異 な る と い う こ と だ け で、
『 大 陀 羅 尼 末 字 中一
字 心 呪 経」
の 当 該 記 事 は、
確 実 に 華 厳 経 的 表 現 が 踏 襲 さー
(
26)
れ て い る よ う に 思 わ れ る。
そ の こ と は 冒 頭 の 波 線 に 「 華 蔵 世 界 」 と あ る こ と か ら も 窺 い 知 る こ と が で き よ う。
仏頂肉書の研究 (佐々木) 五結
語
以 上、
「 三 十 二 相 」 「 仏 頂 肉 髻 」 の 二 点 に つ い て 仏 頂 系 経 軌 に お け る 表 現 を、
特 に 大 乗 仏 教 と の 比 較 対 照 に お い て 整 理・
分 析 し て き た。
そ の 三 十 二 相 説 は 従 来 の 仏 教 の 解 釈 を 踏 襲 し つ つ も、
そ の 個 別 の 相 に つ い て は 他 の 諸 経 論 に 類 を 見 な い も の が 確 認 さ れ た 。 そ の 内 容・
系 譜 に つ い て は 未 だ 不 詳 な 部 分 が 多 い が、
密 教 で 重 視 す る 印 契 を 三 十 二 相 と 積 極 的 に 結 合 さ せ て い た こ と は 注 目 す べ き 解 釈 で あ ろ う 。 ま た 三 十 二 相 の 中 で も、
そ の一
相 で あ る 「 頂 上 肉 髻 相 」 を 最 勝 と す る と こ ろ に 仏 頂 系 経 軌 の 立 場 が 明 確 に 示 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 論 文 の 後 半 で は 「 仏 頂 肉 髻 相 」 に つ い て 、 「 無 見 頂 相 」「
仏 頂 肉 髻 の 放 光 」 の 二 点 を 検 証 し た が、
こ れ も ま た 大 乗 仏 教 に お け る 肉 髻 の 解 釈 に 少 な か ら ず 依 拠 し て い る こ と が 判 明 し た 。 特 に 「 仏 頂 肉 髻 の 放 光 」 と い う 表 現 は、
仏 頂 系 経 軌 に お い て 大 き な 意 味 を 持 つ も の と 筆 者 は 考 え て い る 。 当 論 文 に お い て 、 そ の 問 題 を 十 分 に 解 明 で き た と は 思 わ な い が、
そ の 起 源 を 大 乗 経 論 中 に 見 出 す こ と が で き た 、 ま た 大 乗 仏 教 か ら 密 教 へ の 流 れ の一
端 を 把 握 で き た こ と一
157一
智 山学 報 第五十五輯 は 大 き な 収 穫 で あ っ た
。
大 乗 仏 教 に お け る 「 仏 頂 肉 髻 の 放 光 」 の 表 現 は 数 少 な い 用 例 で あ る が、
そ れ を 偏 重・
徹 底 し た と こ ろ に 仏 頂 系 経 軌 と し て の 立 脚 点 が 明 示 さ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 今 後 も 既 存 の 枠 を 越 え て 、 仏 教 に お け る一
つ の 展 開 相 と し て、
よ り 広 い 視 野 か ら 「 仏 頂 系 の 密 教 」 と い う 潮 流 に つ い て 考 察 を 深 め て い き た い と 思 う。
注(
1>
・
拙 著「
「 陀 羅 尼 集 経」
の 研 究 ー 特 に 巻 四 「 十一
面 観 音 経 」 と、
巻 十 「 功 徳 天 法 」 の 異 訳 対 照 を 中 心 と し て ー 」(
二 〇 〇 三 年「
智 山 学 報」
五 二)
・
拙 著 「 『 陀 羅 尼 集 経 」 に 関 す る 諸 文 献 の 考 察 」(
二 〇 〇 五 年 「 大 正 大 学 大 学 院 研 究 論 集一
二 九)
(
2)
た だ し 善 無 畏 が 翻 訳 し た と さ れ る 仏 頂 系 経 軌 に は 中 国 撰 述 と 目 さ れ る も の が 多 い。
例 を 挙 げ れ ば、
「
三 種 悉 地 破 地 獄 儀 軌」
と 通 称 さ れ る一
群 の 経 典、
ま た 「 尊 勝 仏 頂 修 瑜 伽 法 儀 軌 」 な ど で あ る。
こ れ ら の 中 国 撰 述 と さ れ る も の は、
い ず れ も 中 国 の 諸 目 録 中 に そ の 名 前 を 見 出 せ な い も の で あ り、
内 容 的 に も 道 教 的 要 素 が 混 入 す る 等 し て い る 。(
3V「
梵 語 仏 典 の 研 究一
W(
密 教 経 典 編)
九 六 〜一
〇 〇 頁 に「
白 傘 蓋 仏 頂 陀 羅 尼」
系 統、
一
〇 〇 〜一
〇 六 頁 に 「 尊 勝 仏 頂 陀 羅 尼 」 系 統、
ま た一
五 〇 頁 以 降 の 「 雑」
の 箇 所 で も、
仏 頂 系 と 目 さ れ る も の を 認 め る こ と が で き る 。(
4)
吉 岡 博 士 還 暦 記 念 「 道 教 研 究 論 集」
(
一
九 七 七 年)
所 収 「 仏 頂 系 の 密 教」
。
筆 者 の 論 考 は、
三 崎 先 生 に よ っ て 提 唱 さ れ た 御 説 に 負 う と こ ろ が 多 い。
(
5)
千 葉 照 観 先 生 の 御 論 考 に は 以 下 の も の が あ る 。・
「
金 閣 寺 建 立 に 見 ら れ る 仏 頂 思 想」
(
一
九 八 六 年 門 天 台 学 報 」 二 八)
・
「
不 空 の 密 教 に お け る 仏 頂 尊 の 位 置 づ け 」(
一
九 八 七 年 「 大 正 大 学 綜 合 仏 教 研 究 所 年 報」
九)
・
「
不 空 訳 経 中 の 仏 頂 尊 曼 荼 羅 に つ い て 」(
一
九 八 七 年 「 天 台 学 報」
二 九)
・
「
不 空 に お け る 仏 頂 尊 − 法 身 に 関 連 し て ー 」 コ 九 八 八 年「
天 台 学 報 」 三 〇 V一
1S8一
仏 頂 肉書の研 究 (佐々木