九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
抵抗板を設置した空積みブロック構造における滑動 抵抗力の評価とその算定法に関する研究
末松, 吉生
九州大学大学院工学府海洋システム工学専攻
https://doi.org/10.15017/26633
出版情報:Kyushu University, 2012, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(別紙様式2)
論 文 内 容 の 要 旨
近年,地球規模で異常気象をもたらしている地球温暖化は深刻な国際問題に発展しており,日本政府も 2020年までに1990年比25%の温室効果ガスの排出量の削減を目標に掲げており,土木・コンクリート業界 においても温室効果ガスの削減可能な技術が求められている.こうした折,国土交通省は河川の豊かな生 態系と自然環境を保全するため,中小河川に関する河道計画の技術基準で「今後は治水機能の確保に加え て河岸・水際部が本来有する環境上の機能を確保する視点が重要になる」と通達した.環境面の機能を付加 するためにはコンクリ-トを充填してブロックを一体化する練積みでなく,粒状材を用いた空積みが不可 欠となる.しかし,空積みブロックは練積みより滑動抵抗力が不足しやすいなどの理由から積極的には使 用されていない.もし,空積みで練積みと同等の安全性が確保できれば,河川の生態系や自然環境の保全 に貢献でき,温室効果ガスも確実に削減することが可能になる.
また,地震の頻繁化や地球温暖化による異常気象で災害の外力が増大している今日,河川のみならず陸 上の擁壁分野においても更なる安全性の確保が求められている.本研究は,ブロックの滑動抵抗力を2倍 以上向上させ,環境に優しく,経済性にも優れた空積みブロック構造の開発を目的としており,そのため に以下の3つを目標に掲げている.
1)抵抗板による壁体の滑動抵抗力を実証し,その滑動抵抗力を適正に評価する.
2)抵抗板による滑動抵抗力発現のメカニズムを明らかにする.
3)抵抗板を設置した壁体における滑動抵抗力の算定法を示す.
第1章では,近年の地球環境の問題とこれからの国の河道計画から,河川護岸,陸上擁壁分野における 空積みブロックの必要性と本研究の目的と目標を述べ,本論文の構成を示した.
第2章では,ブロックの底部に突起を固定した実物ブロックのせん断実験から,突起付コンクリートの
滑動抵抗力を検証した.結果は,突起がないコンクリートの1.4倍であった.また,実験で得られた滑動抵 抗力をブロック底面の摩擦力と突起に作用する受働土圧に分けて検討した結果,突起付コンクリートの滑
区 分 甲 氏 名 末 松 吉 生
論文題名 抵抗板を設置した空積みブロック構造における滑動抵抗力の評価と その算定法に関する研究
動抵抗力は,コンクリート底面での摩擦力とクーロンの土圧論から求めた受働土圧の和とほぼ一致した.
これにより,固定突起には受働土圧が発揮されていることが確認された.
第3章では,ブロックに突起を固定することは最下段以外では不可能に近いことから,施工が簡単なブ ロックに抵抗板を固定しない非固定式とブロックに固定する固定式抵抗板の滑動抵抗力を検証した.結果 は,非固定式でブロックの後壁と接触しない非接触型抵抗板の滑動抵抗力が最も大きいことが分った.
第4章では,3段重ねの模型ブロック体を試作し,非接触型で後壁内面側に抵抗板を設置した試験体,中 央に設置した試験体,抵抗板を設置しない試験体の垂直応力載荷型実験から非接触型抵抗板の滑動抵抗力 を実証し,これらの滑動抵抗力を適正に評価した.結果は,抵抗板を設置しない試験体の各段の滑動抵抗 力の評価を1とすると,後壁側に設置した場合の評価値は,下段では3.9,中段は3.4,上段は2.2であった.
中央に設置した場合では下段は 2.3,中段は 2.4,上段は 1.8であったことから,いずれの段位においても 非接触型抵抗板の有効性が確認された.また,滑動抵抗力は中央よりも後壁側に設置した方が全ての段位 で大きく,かつ上段位より下段位の方が大きな抵抗力を示していることから,滑動抵抗力は抵抗板の前面 に作用する前面土の土塊量とその土被り圧に影響されることが確認された.次に,抵抗板を設置すると,
載荷重が増加しても中段と上段ブロックの水平変位差の差分量が増加しないことから,抵抗板には上・下 のブロックを一体化する働きがあることも明らかになった.
第5章では,抵抗板の前面と背面およびブロックの後壁内面に作用する水平応力に関する実験から,壁
体の内部に発生する応力を把握して滑動抵抗力発現のメカニズムの検討を重ねた.そして,背面土圧によ り壁体が変位すると各段のブロック底面のすべり面に摩擦抵抗力が発生する.これと同時に後壁内面の下 半部と抵抗板背面の上半部に水平応力が集中し,その結果として抵抗板が前方に変位することにより,抵 抗板前面に受働土圧が作用する滑動抵抗力発現のメカニズムを示した.
第6章では,施工性と経済性に優れ,抵抗板によって発揮される滑動抵抗力を活かした空積みブロック 構造の概要と特徴を述べるとともに,その施工手順を示した.さらに,抵抗板による滑動抵抗力の算定式 をクーロンの土圧論を基に導き,この算定式から,第4章で実験した各試験体の滑動抵抗力の評価を行い,
これらの評価値と実験から得られた評価値とを比較した.その結果,両者の評価値がほぼ一致したことに より,抵抗板の滑動抵抗力に関する算定式の妥当性が明らかとなった.
第7章では,全体の研究成果を総括するとともに,今後の展望と課題について述べた.