九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
q超幾何級数の三項間漸化式
鈴木, 由佳
https://doi.org/10.15017/1931727
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(数理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式3)
氏 名 : 鈴木 由佳
論 文 名 : Three-Term Recurrence Relations for Basic Hypergeometric Series ( q 超幾何級数の三項間漸化式)
区 分 : 甲
論 文 内 容 の 要 旨
Gaussの超幾何級数は、数学の様々な場面に現れる非常に重要な無限級数である。この級数の重
要性の一つとして特殊値公式を持つことが挙げられるが、この特殊値公式は、例えば組合せ論にお いて二項係数の積の和を評価するために用いられるなど、数学の他分野において様々な応用がある。
それ故に、本研究者は、特殊値公式を与えるための条件は何かという「Gaussの超幾何級数の特殊 値公式の理解」を重要な課題と位置付け、この課題を達成するために、この課題を一般化した「Heine の q超幾何級数の特殊値公式の理解」を目標とし、「Heine のq 超幾何級数の三項間漸化式に関す る研究」に取り組んだ。そして次の結果を得た。
(1) q超幾何級数の三項間漸化式を二通りの表示式で明示的に与えた。
(2) (1)を得るために、一般q超幾何級数に関するGasperの変換公式を一般化した。
(3) (2)の系として、Gasperのq-Karlsson-Minton型和公式の一般化を導出した。
以下、Gaussの超幾何級数を超幾何級数、Heineのq超幾何級数をq超幾何級数と書くことにす
る。超幾何級数とq超幾何級数は、どちらも三つのパラメータを係数に持つ一つの独立変数に関す る無限級数として定義される。パラメータと独立変数が特殊な値を取るとき、これらの級数を、冪 関数、ガンマ関数、上昇階乗冪の積や商で表示できることが知られているが、超幾何級数とq超幾 何級数のこのような特殊な値を表示する式を特殊値公式と呼ぶ。これまでに様々な方法で特殊値公 式を見つける研究が成されており多くの特殊値公式が発見されているが、特殊値公式を与えるため のパラメータと独立変数の値の必要条件についてはよくわかっていない。本研究者は、とくに超幾 何級数とq超幾何級数の三項間漸化式を用いた方法で特殊値公式が得られるための必要十分条件を 明らかにするために、q超幾何級数の三項間漸化式を二通りの表示式で明示的に与えた。
超幾何級数の三項間漸化式とは、パラメータが整数差ずれた三つの超幾何級数に対して一意的に 定まる有理関数係数の一次関係式のことをいい、q 超幾何級数の三項間漸化式とは、パラメータ及 び独立変数をqの整数冪倍だけずらした(qシフトした)三つのq超幾何級数に対して一意的に定 まる有理関数係数の一次関係式のことをいう。1812 年にGauss は、超幾何級数の各パラメータの 差が0か 1である場合の三項間漸化式を与え、1847 年に Heine は、q 超幾何級数の各パラメータ 及び独立変数の商が1かqである場合の三項間漸化式を与えた。GaussとHeineの三項間漸化式を 反復利用することにより、超幾何及びq超幾何級数の任意の三項間漸化式を導出できることが知ら れているが、19世紀前半のGauss とHeineによる研究以降、21 世紀に入るまでその表示式は明示 的には得られていなかった。
2012年に蛭子彰仁は、超幾何級数の三項間漸化式の係数の表示式を二つの超幾何級数の積の和に よって明示的に与え、2017 年の論文では、この表示式を用いて超幾何級数の特殊値公式をいくつも 導出した。本論文の研究は、蛭子彰仁による三項間漸化式についての結果を、q 超幾何級数の三項
間漸化式へ拡張したものである。
第一章では、q 超幾何級数のパラメータのみをqシフトした場合の三項間漸化式について考察す る。q超幾何級数を解に持つq差分方程式、隣接作用素、Heineのq -Euler変換公式、一般q超幾 何級数に関する Gasperの変換公式と和公式を用いて、q超幾何級数のパラメータのみ qシフトし た場合の三項間漸化式を二通りの表示式で明示的に与える。一つの表示式は、三項間漸化式の係数 を二つのq超幾何級数の積の和で表示したもので、これは蛭子彰仁による超幾何級数に関する結果 のq類似である。もう一つの表示式は、三項間漸化式の係数を二つの一般q超幾何級数の和を係数 に持つ多項式で表示したものである。
第二章では、第一章で用いた Gasper の変換公式を一般化することにより、q 超幾何級数のパラ メータだけでなく独立変数もqシフトした場合の三項間漸化式を二通りの表示式で明示的に与える。
これらの表示式は、第一章の結果の一般化であり、一つの表示式は、係数を二つのq超幾何級数の 積の和で表示したもので、もう一つの表示式は、係数を有限個の一般q超幾何級数の和を係数に持 つ多項式で表示したものである。また、Gasper の変換公式の一般化の系として、一般 q 超幾何級 数に関するGasperのq-Karlsson-Minton型和公式の一般化を導出する。
本論文でq超幾何級数の三項間漸化式の係数の二通りの表示式を明示的に得たことにより、三項 間漸化式を用いて導かれる特殊値公式への理解が深まることが期待できる。有限個の一般q超幾何 級数の和を係数に持つ多項式による表示式は、有限個の項の和であるのでコンピュータを用いた三 項間漸化式の計算に適しており、q 超幾何級数の特殊値公式を与えるパラメータと独立変数の値を 求めるアルゴリズムの作成に役立つ。一方、二つのq 超幾何級数の積の和による表示式は、q超幾 何級数の対称性に由来する三項間漸化式の対称性を求めるのに適しており、q 超幾何級数の特殊値 公式を三項間漸化式の対称性で移り合うものごとに統一的に扱うことに役立つ。