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小型ガスエンジンの燃焼特性に及ぼす雰囲気酸素濃 度の影響

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Academic year: 2021

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小型ガスエンジンの燃焼特性に及ぼす雰囲気酸素濃 度の影響

著者 閻 宏

出版者 法政大学大学院理工学研究科

雑誌名 法政大学大学院紀要. 理工学・工学研究科編

巻 61

ページ 1‑4

発行年 2020‑03‑24

URL http://doi.org/10.15002/00022744

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法政大学大学院紀要 理工学・工学研究科編 Vol.61(2020年3月) 法政大学

小型ガスエンジンの燃焼特性に及ぼす 雰囲気酸素濃度の影響

EFFECTS OF ATMOSPHERE OXYGEN CONCENTRATION ON COMBUSTION CHARACTERISTICS FOR A SMALL GAS ENGINE

閻宏

Hong YAN

指導教員 川上忠重

法政大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程

In recent years, damage caused by natural disasters, typhoons and heavy rains has increased, and secondary disasters that have been generated. The measures are important not only for life saving, but also for securing lifelines, and therefore, there are cases that require fuel security and urgency for various rescue equipment operations .From these points, it is necessary to secure fuel to maintain the minimum power generation capacity.

This experiment has been carried out to examine the effects of the atmosphere oxygen concentration on combustion characteristics for a small gas engine. The oxygen concentration can changeable by addition ratio of nitrogen. The fuels were used by the n-butane and isobutene. The main results are as follows.

(1) It is possible to reduce the NOx emission by addition of nitrogen for small gas engine.

(2) At the same nitrogen addition ratio, the HC emissions of isobutane are bigger than that of the n-butane for small gas engine.

Key Words : Gas Engine, Emission characteristics, Nitrogen 1. 緒論

近年,自然発生による地震,台風や集中豪雨等による被害が 拡大しており,また,それに伴う二次災害等も発生している.

その対応には,人命救助のみならずライフラインの確保も重 要であり,そのために各種の救助機器運用のための燃料確保 や緊急性を要する事案を含むため,より簡便な燃料供給が求 められている.特に中型・大型ガソリン発電機やディーゼル発 電機を用いる場合,必要最低限の発電能力を維持するための 燃料確保が必要・不可欠であるが,交通網の寸断による供給不 足や欠如による被害拡大は,2011 年東日本大震災を含めて記 憶に新しいところである.

これらの解決方法の 1 つして,小型ガスエンジンの活用が 着目されている.小型ガスエンジンは,家庭用農作業耕運機や 発電用の動力源として用いられ,燃料としてカセットインタ イプのポンベが採用されているものが多く,特に専門知識を 有さない場合においても,燃料供給を行うことが可能である.

ただし,燃料の主成分はブタンであるため,密閉性の高い緊急 レスキュー用現場で用いる場合,雰囲気酸素濃度の低下によ る不完全燃焼割合の増大や機関の不安定作動も想定されるた め,小型ガスエンジンの燃焼特性の把握は極めて重要である.

そこで本研究では,緊急レスキュー用の小型ガスエンジン の開発を目的とし,使用燃料は N-ブタンとイソブタン二種類 分別で用い、希釈気体として空気および窒素を用いた場合の 低酸素雰囲気濃度での燃焼生成物濃度と完全燃焼割合の関係 を明らかにするために、特に CO、HC,CO2および NOx 濃度等に 着目し、雰囲気中に含まれる窒素の添加割合、および燃料性 状の影響について考察を行った。

2. 実験装置及び方法

本実験で用いた実験装置の概略図を Fig.1 に示す. Table.1 に本供試機関の諸元表を示す.本実験では,燃料性状の影響を 評価するために,ガスボンベ(N-ブタンとイソブタン)からの 燃料と空気を混合し,さらに窒素添加を行うことにより,吸入 空気の酸素濃度を調整した.あらかじめ測定しておいた本試 供 機 関 の 空 気 比 λ =1.0 を 基 準 と し , そ こ に 0%,2.5%,5%,7.5%,10%,の窒素を圧縮空気に添加し,(以下,添 加率),ヒーターで 0W,300W,600W,900W の負荷を掛け,それぞ れの条件における排気成分を測定した.

燃焼の排気ガス測定 には自動車用排ガス分析計 を使 用 し,CO,HC,CO2,NOx の4成分を測定した.使用した燃料の流量 の内訳を Table.2 に示す.

測定においては,暖機運転を十分に行った後,1 回の測定に つき,15 回表示された値を読み取り,平均化した.これを 3 回 行い,得られた平均化データをさらに平均化し,各負荷におけ る結果とした.

(3)

Fig.1 Experimental devices

Table 1 Engine specification

Engine type 4 stroke cycle

single engine

Cooling system Air cooling

Displacement 49.4㎝3

Valve system OHV

Compression ratio 8

Ignition system Transistor type

magneto ignition

Type of fuel LPG(Liquid butane)

Table 2 Fuel component (Nitrogen addition) N2 Addition rate N2[L/min]

0% 0

2.5% 2.56

5% 5.26

7.5% 8.1

10% 11.11

3.実験結果及び考察実験方法

Fig.2 に,N-ブタンを用いた場合の機関負荷に対する CO 排 出濃度を,窒素添加率をパラメータとして示す.ここでの総括 当量比はφ=1.0(一定)である.この図から明らかなように,窒 素添加による CO 排出濃度に及ぼす影響は,無添加の場合を除 き,どの負荷条件においても,大きな差異は観察されず,本実 験範囲内では,2.7VOL.%程度である.ただし,中・高負荷領域 (600W および 900W)においては,僅かな窒素添加でも,無添加

れた.これは,窒素添加による燃焼温度低下による不完全燃焼 割合の増加に起因するものであるが,特にレスキュー用発電 機での機関運転では,同様な条件下での機関運転が想定され るため,HC 濃度についても検討が必要である.

Fig.3 に同様の条件での HC 排出濃度を示す.この図から明 らかなように,どの機関負荷においても,窒素添加率の増大に 伴って,HC 濃度は最大 100ppm 程度増加している.レスキュー 用発電機での用途では,機関の連続運転が必要不可欠であり, 排出量増加に対する対応は必須であるが,CO は完全燃焼割合 の増加により,その排出濃度の低減が可能である.したがって, 本実験範囲で排出 CO2濃度の検討を行うこととした.なお,CO 排出濃度の低減には含酸素燃料の添加による低減効果も報告 されており,100ppm 程度の増加は,添加燃料等により,十分対 応可能である.

Fig.4 に窒素を燃料中に添加した場合の完全燃焼割合に及 ぼす影響を評価するために,機関負荷に対する CO2排出量を窒 素添加率パラメータとして示す. この図から明らかなように, どの機関負荷においても窒素添加による CO2排出濃度の減少 傾向が確認された.特に機関負荷が高負荷(900W)においては 10%程度減少している.ただし,機関負荷は 900W が定格で出力 され,また,窒素添加による CO2排出濃度は 11.5VOL.%程度が 確保されており,窒素添加による著しい不完全燃焼は,発生し ていないと考えられる.すなわち,小型ガスエンジンを用いた, レスキュー用発電機の低酸素領域での CO2排出濃度に及ぼす 著しい影響は,発生しないことが示唆される.

Fig.5 に同様な条件での NOx 排出濃度を示す.この図から明 らかなように,窒素添加率の増大に伴って,どの機関負荷条件 においても無添加の場合と比較して,著しい NOx排出濃度の 減少が観察された.さらに,その減少率は機関負荷の増大に伴 って増加している.これは,窒素添加による火炎温度低下に伴 う,サーマル NOx の減少に起因している.さらに,機関負荷率 の増大に伴って,容積効率が減少することにより,完全燃焼割 合が低下したためと考えられる.したがって,レスキュー用発 電機を低酸素雰囲気で用いた場合には,NOx濃度についての 検討は,本実験範囲内では不要と思われる。

ここで,先の CO および HC 濃度の窒素添加による増大効果 の低減について検討するために,比較的安価に入手可能な構 造異性体であるイソブタンに着目し,同様の検討を行うこと とした.

Fig.2 CO emission(N-ブタン)

(4)

Fig.3 HC emission(N-ブタン)

Fig.4 CO2 emission(N-ブタン)

Fig.5 NOx emission(N-ブタン)

Fig.6 イソブタンを用いた場合の機関負荷に対する CO 排出 濃度を窒素添加率をパラメータとして示す.総括当量比はφ

=1.0 である.低・中負荷領域(300W および 600W)においては,CO 濃度は窒素添加によって,0.2VOL.%程度増加している.さらに 高負荷領域(900W)においては,窒素添加率によらずほぼ一定 値となっている.これは機関負荷が増大することで燃焼温度 が上昇し,より燃焼が促進され,不完全燃焼時に発生する CO が減少したと考えられる.さらに,N-ブタンを用いた場合は, 窒素添加無しと比較して,高負荷領域において CO 濃度の著し い増加が発生していたが,イソブタンではぼ同程度の排出量 である.すなわち,燃料性状を変化させたことにより,低酸素 雰囲気においても CO 濃度の制御が可能であることが示唆さ れる.

Fig.7~9 に同様にイソブタンを用いた場合の HC,CO2およ び NOx の排出濃度を,それぞれ示す.これらの図から明らかな ように,先の N-ブタンの場合と比較して,機関負荷に対する窒 素添加の影響は,ほぼ,同様の傾向を示しており,著しい差異 は発生していない.N-ブタンとイソブタンの構造異性体の影 響については,燃焼初期の連鎖創始反応が極めて重要である が,レスキュー用小型機関においては,定格出力下での機関運 転が行われており,そのため,機関の暖気が十分行われている 場合には,その影響が減少したためと考えられる.ただし,各 種燃焼生成物の排出濃度は,初期燃焼および燃料性状に強く 依存することが知られており,各種燃焼生成物の排出濃度に 及ぼす燃焼性状の影響について,検討することとした.

Fig.6 CO emission(イソブタン)

Fig.7 HC emission(イソブタン)

Fig.8 CO2 emission(イソブタン)

(5)

Fig.9 NOx emission(イソブタン)

Fig.10 に,機関負荷 300W の場合の窒素添加率に対する HC 及び NOx の排出量を示す.この図から明らかなように,ま ず,HC 濃度については,どの窒素添加率においても,イソブタ ンの方が N-ブタンよりも HC 排出濃度が増大し,その増加率は, 窒素添加率の増大に伴って増大している.一方,NOx 排出は,窒 素添加率 5VOL%までは,大きな差異は発生せず,窒素添加率 7.5%以上は,イソブタンの排出量が N-ブタンと比較して大き くなっている.NOx 濃度の排出の大部分は,サーマル NOx の発 生が大部分を占めていると考えられるが,同一高窒素添加領 域(7.5%および 10VOL%)での N-ブタンと比較して,イソブタン の HC 濃度が大きく,また,NOx 濃度も大きくなっており,基本 的には,イソブタンでの構造異性体の燃焼生成物低減効果は 発生していない.ただし,NOx 濃度が増加しているため,高窒素 添加領域おいては,燃焼促進効果(燃焼速度の増大等)が発生 しているものと考えられる.当然,窒素添加は,火炎温度を減 少する方向で作用するため.燃料性状の変化による助燃効果 の増大と,窒素添加による助燃効果の減少割合とのトレード オフの関係が発生することが考えられる.したがって,CO およ び CO2の排出濃度について検討を行った.

Fig.11 に窒素添加率に対する CO および CO2排出量を,燃料 性状をパラメータとして示す.この図から明らかなように,CO 濃度については,N-ブタンおよびイソブタンを用いた場合,機 関負荷による大きな変動は発生していない.ここで,同一窒素 添加率での.CO 排出濃度に着目すると,イソブタンは N-ブタ ンと比較して,0.5VOL.%程度増加している.一方,CO2 濃度は, イソブタンの方が,CO2 排出濃度が減少しており,燃焼中の不 完全燃焼割合の増加に伴って,CO2の排出濃度が減少したこと に起因するもと考えられる.また,その減少率は,窒素添加率 の増大に伴って増加している.本実験範囲内では,高窒素添加 領域において,HC,NOx および CO2濃度に燃料性状の影響が,特 に顕著に観察されていることから,今後さらに,添加燃料や水 噴射による燃焼温度域を変化させた場合の条件下での燃焼生 成物低減効果について,検討を行う予定である.

Fig.10 N-ブタンとイソブタン(HCとNOx)

Fig.11 N-ブタンとイソブタン(COとCO2) 4.結論

本研究では,発電用小型ガスエンジンを用いて,燃料中に窒 素を添加することによる燃焼生成物の低減および燃焼促進効 果に関する検討を行った.以下に結果を示す.

(1) 小型ガスエンジンにおいては,窒素添加により,NOx の排 出低減が可能である.

(2) 小型ガスエンジンにおいては,同一窒素添加率において, イソブタンを用いた方が N-ブタンと比較して HC 排出濃 度は増加する.

参考文献

1) 戸田拓也:小型ガスエンジンの排気特性に及ぼす混合気性 状の影響について.

2)村山正,常本秀幸,自動車エンジン工学,P.50 3)篠木紀孝,川上忠重,日本機械学会関東支部山 梨講演会論文集,NO.407,2017

Table 2 Fuel component (Nitrogen addition)  N 2  Addition rate  N 2 [L/min]

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