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た金言のように︑幾度となく繰り返した︒私は無粋とわかりつつ一度尋ねた︒これらのもの 00たちの家は︑ここなのですか? と︒あなたは優しい瞳を燃え立たせて︑私の眼の奥を見据えながら答えた︒﹁それはわからない
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︒ただし︑彼らは所有物ではない︒崇高な力をもつ彼らは︑自らを賤しんだりはしない︒自ずと持ち主を選ぶんだよ︒あの時代は︑彼らにとっても災厄だった︒私に呪をかけて︑ここに難を逃れてやってくることを自ら選んだのだ﹂天井の隅から牙剝くガルーダの木像が睥睨し︑その場にいる者の心を見定めている︒そんな書斎で︑あなたはランプンから持ち帰った無数のテキスタイルを︑日々︑丁寧に捲っていく︒檳榔の世界樹が帆柱としてカヌーに聳え︑舳先や帆の上には朱鳥がとまり︑祖霊たちが天から舞い降りてくる︒海面下では︑ジュゴンの群れがその原初の旅を祝福し︑舟と海との間には蛇とも渦ともつかない文様がくりかえされている︒ランプンの始原的神話世界を描いた織物の束︒この土地は︑インドネシアの独立後︑国内植民地として数百万人のジャワ移民が入り込み︑ その言語︑文化は失われてしまった︒その神聖図像のシンボリズムは︑今日ではあなたにしか解せない︒南スマトラの失われた人々の太古の記憶が︑ここハワイにて微かな痕跡をとどめ︑あなたの手先のふるえを介して物語が蘇る︒その遥かなる旅の奇跡に感じ入らずにはいられない︒だが︑あなたの渚に寄せる忘却の波は︑痕跡を容赦なく浚ってゆきもする︒浸食に抗いながら︑あなたは日々雄弁に︑これら図像の終わりなき注釈を書き続けるのだ︒この家は︑記憶の宝物庫︒ただ︑すべての物語は︑あなたたちの旅に鍛えられた美しい皮膚にうねる波紋のような皺に︑ひっそりと光輝を放ちながらたゆたってもいる︒そのことを思えば︑あなたたち自身が︑すべての道と︑想いと︑記憶の宿る図書館なのかもしれない︒私が偶然に訪れ歩いたのは︑あなたたちが旅した海の︑ほんの一つの渚に過ぎないとしても︑そのように想う︒記憶の熱源は︑確かにそれらのもの 00のうちにあるのだろう︒でもブロン│
︑あなたの︑いつも労わるようにしてアボカドやパパイアにナイフを入れるその手つき︑少し曲がった背筋︑慈しむような透明な眼差しから︑私にはその温度が伝わってくるように感じられる︒■さかもと・よしろう史亡神精・学文命 総士後期合程修了博科究研学際国課
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特集 図書館をめぐる5つの物語
42 あまりに豊穣で鮮烈な生の軌跡︑これまで生きられた時の充溢が︑いま生涯の黄昏にあるあなたを生かしている︒同時にその記憶が︑老いとともに薄らぎ消えゆくことの恐怖も計り知れない︒生き切った過去への満足の︑同じコインの裏の顔がその苦悶であることを︑あなた自身わかっているのだろうけれど︒ギャレット︑あなたはいつも何度でも︑その冒険に満ちた生涯について語ってくれた︒何度も︑くりかえし︑同じ話を︒あなたは第二次大戦後の時流を嫌い︑二〇歳のときオハイオの家を出奔︑カザンツァキスの﹃ユリシーズ﹄を一冊だけ抱えてパタゴニアを目指した︒挿画に見入っているだけで数年が経ってしまうようなこの美しい書物を︑書棚よりとり出してあなたは語る︒ベトナム戦争の召集令状を黙殺して乗り込んだ南氷洋調査船で︑ニュージーランド︑オーストラリアへ︒その地でタスマニア出身の︑最も深い意味において彼女でしかありえなかった旅の伴侶ブロンに出会い︑二人でインドネシアへ渡った︒ この魔力に満ちた群島は︑あなたたちを虜にした︒音楽や舞踊︑影絵が密やかに︑しかし雄大に語る︑日常の闇にある豊穣の宇宙︒その力をもの 00として顕現させたクリスやバティックなど至高の芸術たち︒究極の美と魔性を秘めたそれらが︑独立するも経済的には破綻してしまった国家によって︑二束三文で売られ国外へ離散していくのを目の当たりにしたあなたたちは︑土地の王族や豪商らをパトロンに得て︑群島中を旅し︑職人や神官たちと深く付き合いながら︑膨大な芸術・美術品を収集︑アーカイヴしたのだった︒そのうちのいくらかは︑太平洋を越えてホノルルまで旅し︑パンチボウルの麓にある︑このペントハウスに今も眠っている︒﹁︿無︲時間﹀だ︒この家にあるものはすべて︿無︲時間﹀の︑つまり永遠の美を備えている︒それは心のなかの時をくり抜く︑その穴からきみは永遠へと旅するんだ﹂あなたは︑“Timelessness”という言葉を︑その生に刺繡され
記 憶 の 宝 物 庫
ブ ロ ン と ギ ャ レ ッ ト 阪 本 佳 郎
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