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アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」 : 判 例法理の展開

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(1)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」 : 判 例法理の展開

著者 米谷 壽代

雑誌名 同志社法學

巻 59

号 3

ページ 151‑226

発行年 2007‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011320

(2)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五一同志社法学 五九巻三号

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」

判例法理の展開

米 谷  壽 代

 (一五四一)

1章    2章    1節  2節    3章    1節 

2節   

3節    4章    1節  2節    5章    1節    2節  3節 

(3)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五二同志社法学 五九巻三号 (一五四二)

1

章 問題の所在  アメリカの環境訴訟

an din ue s to st g

、訴えが却下ばめされる事例がしばしにらた格では、当事者適(い)が認めれな 1

問題となっていた

や団代、市民七環境保護体〇による運動の高まり年 。九一、はに景背のそる。はの格適者事当で断在現、しかし判のあ和に向傾るれさ緩傾に的般一は向 2)

編、三第法憲るよに所判裁、び及定制の律法るよに会議、てっよに 3

の事件及び争訟性(

ca se & c on tr ov er sy

)の要件の柔軟な解釈がされてきたことがある。それ以前の環境訴訟は、コモン・ロー上の不法行為の訴えとして、提起されることが多かった。そこでは、訴訟原因(

ca us e of a ct io n

)が限定された。 そして、現在でも生活環境の改善を求めて、不法行為訴訟の提起をする傾向は維持されている。 しかし、一九六〇年代後半以降、環境立法が整備されるとともに制定環境法(

en vir on m en ta l le gis la tio n

)にもとづく

訴訟が多くなった。その過程で、各別の環境立法のもと憲法第三編の要請である「事件及び争訟性」を有していれば、当事者適格を認めるという包括的な要件が裁判所において提示されたのである。そのなかでも主として、「事実上の侵

害」(

in ju ry in f ac t

)の概念が問題となっている。この「事実上の侵害」の要件は、環境訴訟ではない一九七〇年の

D at a P ro ce ss in g

判決

法憲準基断判の件要の上るたあれさ示てめ初ていおにで 4

v. b lu C a rr Sie

年の二七九一、後のそ。 5

M or to n

判決

SC R A P

、一九七三年の判決 6)

たをさ示提が件要れたさ和緩、て経れ 7)

f n o rs de en ef D v. uja L

。の年二九九一 8)

W ild lif e

(以下、

L uja n

判決とする

〇れの方向性が示さた適。そして、二〇用いがしは具体的要件整)理され、やや厳で 9

〇年に出された

F rie nd s of th e E ar th , I nc . v . L aid la w

見示というさ方が提され和緩び再れているた

uja n L w la aid L

向が格方)(以下、判決とするにのよって判決の厳化 10

11

(4)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五三同志社法学 五九巻三号  しかし、本当に

L uja n

判決の厳格化の方向性を

L aid la w

判決が緩和していると評価していいのだろうか。

L uja n

判決を連邦下級審判決はどのように受け取り解釈してきたのだろうか。また、下級審での解釈に二〇〇〇年に出された

L aid la w

判決はどれほどの影響を及ぼしているのだろうか。 このような問題意識のもと、本稿では、

L uja n

判決で提示された「事実上の侵害」の要件の適用の方向性に対し、

L aid la w

判決における「事実上の侵害」の認定が与えた影響、および、そこで提示された基準の射程を検討する。また、本稿では、日本であまり十分に分析されていない一九九六年以降から二〇〇七年三月までの約一〇年余りにわたる連邦 控訴審判決を対象とする

七起て頻繁に様々な訴訟の提が巡行われた背景には、一九っをがれ「事実上の侵害」概念判例において要求され、そ  。 12

〇年代にアメリカの主要な制定環境法において、議会の制定した法律を施行する上で日本では認められていない市民訴訟規定(

cit iz en s uit p ro vis io n

)の導入がはかられてきたことが挙げられる

、導らかとこたれさ入が定規の、こはで稿本。 13

「事実上の侵害」概念に与えられた影響の検討もあわせて行う。そして、ここで明らかにされる「事実上の侵害」の態様と要件を検証することによって、二〇〇四年に改正された日本の行政事件訴訟

行で法不事民、くなりかば囲範用適の 14

為訴訟において認められてきた損害概念に有益な示唆を得ることができると考えている。なぜなら、「事実上の侵害」

とは、従来の民法の解釈のなかでは非常に認定の困難な損害を含む広い概念であったからである。そして、本稿で扱う環境訴訟という局面では、とくに、時間的、空間的に広がりのある拡張的利益の侵害が問題とされている。このような

利益の侵害に対し、どのような救済をはかっていくことが望ましいのかという点についての手がかりが、アメリカの環境訴訟における「事実上の侵害」概念を捉えることによって得られるのではないか。また、当事者適格を認める要件と

しての「事実上の侵害」の評価は、日本の議論でいうところの訴えの利益の場面で論じられることが多い

。しかし、訴 15

 (一五四三)

(5)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五四同志社法学 五九巻三号

えの利益に関する日本の現在の議論状況は、いまだ形式的かつ抽象的な段階でとどまっており、具体的利益の内容につ

いてまで踏み込んだ議論がされていない状況である

。あるいてえ考とるがこ義意るす介紹で。こ本ていたきおてれ触いでつに成構の文論本稿を議るぐめをれそと論 「メ境環カリらア、そこ訟か訴事における。実上の侵害」の態様だ 16

 第

容境、び及、緯経の定制法環民種各たし場登と々続降市訴年提内の定規な的型典、示の訟面場たれさ入導の定規以〇六

2

組枠の訟訴境環の代現るけおにカリメア、ていおにみ章明史九一、し観概を緯経的歴らのそ、にめたるすにかを

を紹介する。 第

3

事件を整理した上で、「実の上の侵害」要件が要求要格章高においては、連邦の最裁適判決の確立した当事者し

ている一般的基準を整理する。 第

4

害目して、「事実上の侵」にを認める要件が具体的着例章、では、一九九六年以降約判一〇年間の連邦控訴審に

どのような場面で認められ、評価されているのかを紹介することとしたい。 第

5

章では、第

n uja L 4

す害について検討。るきその上で、判侵べ章態で分類した侵害の様すのなかでも特に注目決 以降、連邦最高裁判所で出された

L aid la w

判決が「事実上の侵害」の下級審判例にどのような影響を与えているのか分析を行う。最後に、「事実上の侵害」要件が当事者適格の判断において果たしている役割とその発展可能性について若 干の考察を行った。 本稿を通じて、

in ju ry in fa ct

については、金銭賠償に結びつく

da m ag es

より広い概念である利益の侵害であるという

ことを明確にするうえで、以下では「事実上の侵害」という訳語を使うこととする

17  (一五四四)

(6)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五五同志社法学 五九巻三号

2

章 環境訴訟の概要  アメリカでは、制定環境法(

en vir on m en ta l le gis tla tio n

益利境環る がの認識て高まっ要い性重ら)護保、在現、のか前以定制の 18

・ンれわ行てじ通をーロたモきコ、はていつに済救のて 19

る訟よに為行法不ていおに訴境環も後今、てしそ。 20

訴えが頻発することが予想される

第き利益の救済が求められてた環不法行為訴訟の三類型を境、環ら本章においては、制定境法が施行される以前か  。 21

1

節にて概観する。そして、環境利益の救済が不法行為訴訟において、いかなる点で行き詰まりをみせたのかを明らかにする。第

2

節においては、第

1

民要に触れる。市訴の訟規定についても概法節打で述べた救済の開境策としての制定環、

ここで簡単に説明を加えておく。

、し的統伝、はてとはえ訴の上ーロに、ン、スンサーュニス主パスレト、に・モ い環境訴訟におてコ、問題となる 

1

点上コモン・ローの題救済とその問節  ネグリジェンスの三類型の不法行為による訴えがある

るす明説に を特に焦点せ合わ済簡単に救類。及件要訟訴の型び各、はで節本 22

てにゆる環境訴訟の文脈おいいて行き詰まりをみせわ、ーでの上で、コモン・ロ上。の救済がいかなる点そ 23

きたのかを明らかにする。

 (一五四五)

(7)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五六同志社法学 五九巻三号

1

 コモン・ロー上の救済  ⑴ トレスパス (

tr es pa ss

) トレスパスとは、中世以来、身体、土地または動産に対する暴力的侵害のことであった。そして、その被害者にはト レスパス訴権による救済がはかられてきた。一八世紀には侵害の暴力性という要件が、侵害の直接性に置き換えられ、トレスパス(すなわち「直接侵害」という)は、被告の積極的行為(

po sit iv e ac t

)とそれによる侵害の直接性(

dir ec tn es s of in va sio n

)とを要件として成立する不法行為となった。これは、侵害行為があればそれだけで成立する(

ac tio na ble pe r se

)不法行為であり、実損害の発生を成立の要件としないものであった。また、「直接侵害」という不法行為は、

侵害が意図された(

in te nd ―

故意の)場合のみならず、侵害が意図されない場合にも成立する中世的な厳格責任の観念をあらわすものであった。しかし、一九世紀初頭以降支配的になった過失責任主義と相容れなかったため、一九世紀後

半以降、判例により徐々に変容を遂げた。侵害が故意でない場合に、被告の過失を要求するようになり、ついには、現在、過失のある場合には本節⑶で紹介するネグリジェンスの問題となり、トレスパスの問題とならないと考えられてい

る。このように、トレスパスは、故意の場合

確くたっなと題問多めが害侵るす対にた、土要の段手済救や件てこし目注に害侵の地て境し 環訴訟の場面では、主と さとるのす立成みるれでようになったにある。の 24

認をしておく。 土地に対する「直接侵害」とは、他人の占有する土地を、正当な理由なく、故意にかつ直接的に侵害することである。

 また、ここでいう不法行為を成立させる侵害とは、他人の土地に立ち入ること、または他人の占有を奪うことであって、被告自身が立ち入らずに、境界内に物を投げ入れること、動物を追い込むことも含まれる。ここでは、実損害は問

題とならない。  (一五四六)

(8)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五七同志社法学 五九巻三号 直接侵害に値する被告の行為には、土地の占有を奪う(

dis po ss es sio n

)ことはもちろん、ごくわずかでも他人の土地に侵入する(

en tr y

)こともあてはまる。

 そして、この不法行為の訴権は、土地を占有している者(

pe rs on in p os se ss io n of t he la nd

、行め命令、自救行為などの不法為差一般に認められる方法に加えて止、ら方こで与え償る救済れ法しては、損害賠と えのみ与そられる。)に 25

加害物留置権

訟訴れらめ認もる復い回有占地土、て 26

27

 ⑵ ニューサンス(

nu isa nc e

) もともと、「ニューサンス」とは、他人の土地利用(土地が提供する便益の享受)の妨害を意味した

28

 沿革としては、一三世紀初頭以降、上記のような土地利用の妨害に対する救済に「物的訴権」(

re al ac tio n

る妨権訴除排であ害「 種一の) 29

of el n dis e siz as se isi n ov

わさがと)ったものであったあ。動」(び、「新侵奪不産」占有回復訴権及 30

その後、一五世紀初めから、「ニューサンス」的妨害に対し、より手続きが簡便な「ケース

action on the

」の訴権( 31

case for nuisance

)が許されるようになった。一六世紀末には、古い「妨害排除訴権」が「ケース」の訴権にとって代

わり、救済の認められる当事者の範囲も自由保有権者以外の土地利用権者にまで広がった。

 このような沿革からも、今日の「ニューサンス」法は、損害賠償という不法行為的側面と、妨害排除という物権法的側面(

pr op rie ta ry a ct io n

)とをあわせもっている。

 また、元来、刑事責任のみを生じさせていた「パブリックニューサンス」という妨害行為も、一六世紀前半頃に不法行為の一部として扱われるようになった

き人定の者が他の々のよりもとくに大特中行。衆公てっよに為の害妨のでここ 32

な損害を被ったときに加害者に対し損害賠償の訴えの提起が認められた

33

 (一五四七)

(9)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五八同志社法学 五九巻三号

 このように「ニューサンス」には、性質の異なる「プライベートニューサンス」(

pr iv at e nu isa nc e

)と「パブリック ニューサンス」(

pu bli c nu isa nc e

)が含まれている

ベ「スンサーュニトー イラプ 明。るすを説訟の下、両者の訴要。件について若干以 34

便ののもな的括包く広はと益る地あ土るれさ護保、ていおに」で 35

。「ニューサンス」法を 36

成立させる妨害の原因は様々であり、臭気、煤煙、振動等である。妨害の態様(損害)も、土地建物あるいは、その上または中にある動産に対する有形的損害(

ph ys ic al in ju ry

)や居住者に与える不快感、不便、非衛生的状態など多様な

ものである。しかし、土地の占有的利用に対する妨害が「ニューサンス」(訴えることのできる妨害)となるためには、その妨害が実質的かつ不合理であることが要求される。甘受すべき迷惑・不便の限度が不合理性の基準であり、妨害(原

告の損害)の性質・程度や被告の行為の性格などの種々の要因の総合的な考察によって決まるのである。 責任の基礎は、原告のおかれている「不合理な妨害」状態にある。中世において、「ニューサンス」訴訟ではフォー

ルト(過失)の有無はほとんど論じられてこなかった。一九世紀に入り、「ニューサンス」法に影響を与えた過失責任主義の思想は、種々の責任の一構成要素としてフォールトの有無を考慮することを要求した。そして、それは救済方法

に応じて異なっている

れでらわかかもにたっあき合べる知はたま、り知ず理在たらめ認が情事ういとっ的かならとを置措去除なを存のそが告 い因原害妨のそ、て告おにがンサーュニ、たス以被出被、に合場たれさ創。てっよに情事の外ま 37

たとすると、被告に責任が課されることになる。これに対し、妨害原因を被告が創出した場合には、被告の責任はより厳格になるものであった

38

 このように「ニューサンス」法は、「ネグリジェンス」とは異なり、土地利用の妨害を要件とする。そのため、保護の範囲が狭い。しかし、その反面、「ネグリジェンス」では救済が難しい臭気や騒音による不快な妨害による財産価値

の低下というような非有形的ないし経済的な損害を救済の対象とすることができる。  (一五四八)

(10)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一五九同志社法学 五九巻三号  「ニューサンス」において認められる救済方法とは、損害賠償、差止命令、及び妨害原因の除去である。「ニューサンス」における損害賠償において特徴的なのは、過去の損害についてのみ賠償が認められることである。日々生ずる追加

的損害についてその都度新しい訴権が成立する。差止命令は、裁判官の裁量次第で与えられる救済方法であり、損害賠償が救済として十分である場合には差止命令は与えられない。そして、損害賠償が原告の現実的な損害によってはじめ

て成立するものであるのに対して、差止命令は、現実に損害が発生する以前にもなされうる。このような「予防的差止命令」(

in ju nc tio n qu ia t im et

)は、「ニューサンス」が生じる蓋然性の高い場合、または、「ニューサンス」によっても

たらされる損害が回復不可能なものである蓋然性が高い場合に与えられる。 妨害原因を除去するために、自力救済による方法も肯定される。しかし、この方法は社会の平穏を乱すおそれがある

ので、限定的場面でしか適用されない。原則として自力救済をはかろうとするものは、妨害を生じさせた者に対し、妨害状態の是正を求める通告を与えることが要求される。ただし、妨害が不作為による場合、身体・財産の危険が通告の

余裕を与えないほど切迫している場合などには、通知を必要としないこともある。しかし、除去行為によって不必要な損害を相手に与えてはならないし、妨害除去の方法が二種類以上ある場合には、相手に与える損害がより少ない方法を

選ばなければならない。

 以上、説明してきた「プライベートニューサンス」に対し、「パブリックニューサンス」は、ある地域内の多数の人々の生活の合理的な快適さと便宜とを実質的に害するような妨害を意味する。「パブリックニューサンス」が成立するに

は、具体的にどれだけの数の人々が影響を受けている必要があるのかということは妨害の態様によって異なる。そして、「パブリックニューサンス」を成立させる妨害も様々である。公衆の安全・健康を害することのみならず、公衆の道徳

感情、便益、社会の平穏を害することなど広範囲にわたる

39

 (一五四九)

(11)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六〇同志社法学 五九巻三号

 「パブリックニューサンス」は犯罪であって、当然には民事的救済の対象にはならない。それが私人たる原告の差し

止め請求または損害賠償の対象となるためには、原告が公衆一般の被る損害以上の特別損害を被ったことが必要である。特別の損害とは、直接的、実質的かつ原告に特有の損害である。「プライベートニューサンス」と異なり、特定の

土地の利用を妨害することは要件とされていない。また、救済方法の種類として考えられるのは、「プライベートニューサンス」とほぼ同じであった。

 ⑶ ネグリジェンス(

ne gli ge nc e

)  ネグリジェンスとは、被告の不注意・過失(

fa ult

)による損害の発生を証明しなければ成立しない不法行為である。上述のトレスパス、ニューサンスはともにその沿革においては、静的安全の利益を保護する類型であったのに対し、ネ

グリジェンスは行為の自由を保護するための不法行為である。そして、この類型は、一八世紀末あるいは一九世紀初頭、産業革命以降、急速に発展した工業化・都市化の招いた偶発的事故の増加に伴う社会経済の要請から発展した。それま

での類型では、上記のような事故すべてについて、原因者に責任が課されていた。しかし、それでは企業活動が阻害され、かつ、緊密な生活関係を営む市民の行動が著しく制約されることになる。そのため、過失(

fa ult

)によらない事故

の犠牲になった個人は、社会全体の利益、特に社会の富の増進のために自己の不運を甘受すべきだと考えられたのである。

 このようにネグリジェンスは、侵害利益と侵害行為とを基礎にして成立する他の不法行為とは異なっており、行為の特質を基礎にして成立する点に特徴のある不法行為の類型だといえる。

 そして、その成立要件は主に以下の三点であるとされる。①被告が原告に対して相当の注意義務

を負っていたこと。 40  (一五五〇)

(12)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六一同志社法学 五九巻三号 ②被告がその義務に違反したこと。③義務違反の結果原告が損害を被ったこと。これらの要件を原告が立証し、それに対して被告が抗弁事由を主張立証できなければ、被告の有責性が決まらないのである。被告の有責性が決定した後、損

害が金銭評価され救済がはかられる。

 第

2

 コモン・ロー上の救済の行き詰まり

1

評害利益から侵害行為を価なして救済をはかる類型侵う節レで見てきたように、トスよパス・ニューサンスのの

不法行為では、土地に由来する利益の保護が主流だったため、当事者適格の範囲におのずから制限が加えられていた。環境訴訟で問題となる利益を保護するために訴訟が提起された場合に、当事者適格の範囲の狭さゆえに訴えが却下され

ることが多々あった。また、特に「プライベートニューサンス」においては、個人の甘受すべき迷惑・不便の限度である不合理性についての基準が問題とされた

土こ近接していると地を要求する(と土ン。そいてじ生がスるサーュ、ニ上の 41

地の近接性)要件も重要であったため、当事者適格は明らかに限られていた。「パブリックニューサンス」による訴訟では、土地の近接性の要件は必要とされなかったが、州によっては訴えを提起できる資格をもつ者を検察官に限るとこ

ろもあった。また、仮に個人に訴えの提起が許されたとしても、「プライベートニューサンス」と並立して訴える場合

が多く、いずれにしても原告が公衆一般の被る侵害以上の特別侵害を受けていたことの立証が困難なことが多かった。 そして、一方当事者の行為に注目するネグリジェンスでは、侵害利益の性質に着目するよりも、被告の行為の特質が

問題とされるため、トレスパスや、ニューサンスで想定されていた当事者よりも広範囲の者に不法行為責任を課すことが可能となった。しかし、この責任の背景には、「社会全体の利益のために是認された活動に危険が内包されていたと

しても、そこで生じた不利益は不運な被害者に甘受させてよい」という思想

当のめたのそ。るあでたいてしれ隠え見が 42

 (一五五一)

(13)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六二同志社法学 五九巻三号

然、当初社会全体の利益のための活動と捉えられていた事業や産業が、後に多大な侵害を引き起こしているという事実

が明らかになるにつれ、個々人の不満が噴出し、訴訟が増加した。そしてそのような事態に対処するべき局面において、被害者は明らかな利益の侵害をうけているのに、その侵害発生までの経緯が複雑かつ外部から見えにくいため、被告の

正体が明確にならず、証拠確保も難航を極めることが多かった。このような事情により、過失責任法は見直されはじめ、損失補償制度発展の動きも起こってきたのである。

 このような流れの中で、制定環境法の整備も盛んに行われるようになり、環境訴訟の場面では、保護の必要性が求められる利益については事前予防策も含め、様々な方策が講じられてきた

保どの般一境環いならまとに人私、はでこそ。 43

護の目的で「ニューサンス」の考え方が応用され、その見地から多くの制定法による補強も行われてきている。これらの規定する「制定法的ニューサンス」に対する規制は主として公的機関(通常は地方当局)により発動され、(当然に

は民事責任を生じさせるものではないものの)、妨害原因の除去・規制は効率的に実施されているといえる。このように「ニューサンス」のコモン・ローは被害者が損害賠償を求め、私人の主導により法的サンクションの発動を求める方

法として、いまなお重要であるが、この考え方を基礎とした制定法による手当てがなければ、環境保護の手段としては不十分なものとして認識されている

44

  第

2

節 制定環境法の導入 護規法境環定制のてしと定別行特るよに法政行、れつ施のる一保境環の降以年〇六九に要特。たきてっま高が請にす化

1

まはて当もに型類のどに、うよたきて見ていおにら節なこ在顕が題問いし難のとるよかはを済救で訟訴なうい

運動の高まりのなかで様々な環境立法が誕生した。そこでは、行政機関に対する義務が多く課されていた。しかし、行  (一五五二)

(14)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六三同志社法学 五九巻三号 政機関の義務が過大になりすぎると、その十分な義務の履行ができなくなるおそれがある

定ら的で市民訴訟規定の導入がはかれるた。このような規定を設けた制目せも監民にさの執行を法視せる機能を果たさ 議のため、て会によっ市。そ 45

環境法はニューサンスの訴えを基礎に立法されている。もともとニューサンスの訴えにおける問題点は、前節で見てきたように、当事者適格が認められる範囲はとても狭いということがあった。この点への打開策としても、だれにでも原

告となる資格が付与される市民訴訟規定の導入がはかられたのである。 そこで、本節では、本稿の分析対象となる連邦控訴審判決において問題とされた制定環境法に重点をおき、

1

で法律 の制定趣旨及び目的、さらに市民の果たしている役割を具体的に紹介し

46

2

で市民訴訟規定の概要を示す。

na l P l E nm io at N en ta oli iro cy A ct nv

(一九六九)法 策政境環家国邦連⑴  

1

 各種制定環境法の趣旨

 連邦国家環境政策法(以下、NEPAとする)は、環境保護をアメリカの国家政策とすることを宣言し、安全で健康的な環境の確保、歴史的・文化的環境の保存、生活のアメニティ向上等を国家目標とした法律である

。そして、それら 47

の目標を達成するために連邦の諸機関への行為義務を規定した。それとあわせて、法律の施行のため行政機関に対して

指導・監督権限を有する環境諮問委員会

C ou nc il of E nv iro nm en ta l Q ua lit y

(以下、CEQとする)が創設された。特に、連邦諸機関が環境に重大な影響を及ぼすことになる活動を提案する際には、予めその環境影響調査書

E nv iro nm en ta l Im pa ct S ta te m en t

(以下、EISとする)の作成を課すことが定められた。 そして、EISの審査過程に環境保護団体が関与できるようにすることを必要事項とした。具体的には、NEPA一

〇二⑵⒞条において、「EISのコピー並びに環境基準を作成し、実施権限を持つ連邦政府、州政府および地方の適切

 (一五五三)

(15)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六四同志社法学 五九巻三号

な行政機関のコメント及び意見は、大統領、CEQ、並びに関与団体に対し、情報公開法に従って開示しなければなら

ない」と規定している。更に、一〇二条⑵

にでなしにうよるき用れ利が人個にび並所けば研いSIE、たま。るてなし定規と」いなら究、情及、郡、州を報市び

G

環、し関対に邦機諸府政の連、「境は質の回復、持、向上に必要な助言維

対する社会の関与は、最初の作業枠組みの決定段階、EIS草案へのコメントの段階、そして、決定前の最終EIS案へのコメントの三段階で行われる。また、このような団体の関与の方向性は、大統領命令一一五一四号とCEQ規則に

よって拡大された。CEQ規則においては、社会の関与のために「NEPA関係の公聴会、一般会合、及び環境関係文書の利用ができること」を個人や機関など一般に公示し、知らせることを規定している。

 裁判所の審査については、NEPAに明文規定はないが、暗示されている。そこで、一般的に、裁判所は政府機関のEISを審査し、NEPAのもとでそれが「適正」であるか否かを決定している。そして、提訴は、多くの場合、政府

機関の決定に参加していない環境団体または第三者によって行われている。 このようなNEPAの環境保護の手法は、世界でも初めて採用され各国の環境保護法制に大きな影響を与えている。

 ⑵ 大気浄化法 

C le an A ir A ct

(一九七〇)  大気浄化法(以下、CAAとする)は、大気汚染による人間の健康への悪影響を防止するために設けられた法律である

48

 この法律制定の背景として、大気汚染が肺気腫、気管支炎その他の呼吸器系疾患などの慢性疾患の原因であり、癌や動脈硬化等の他の原因による死亡率の増加とも結び付いている等という研究結果が明らかになったことがある。法制定

以前は、大気中への汚染物質排出に対する規制は州に全面的に任せられていた。しかし、この対策は失敗に終わった。  (一五五四)

(16)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六五同志社法学 五九巻三号 その後、一九九〇年に連邦政府の権限と責任を強化する改正がされ、現在のCAAの規定が設けられた。 大気汚染は、低レベルかつ継続的な汚染にさらされることによって人間の健康に目立たない長期的な影響を及ぼす。

CAA一一二条においては、死亡率または回復不能の重い疾病、もしくは活動を損なう回復可能な疾病の増加を引き起こす「有害」大気汚染物質に関する全米統一基準を定めている。公衆の健康と福祉を脅かす大気汚染物質に関して、連

邦環境保護庁(以下、EPAとする)による基準の義務付けも行われている。しかし、大気汚染の人間に対する影響は十分解明されていないため、有効な「限界」または「安全」レベルの設定ができないという問題はいまだ残されている。

 一九九〇年改正では、同法を遵守させるための執行方法が強化され、制裁の対象となる行為が拡大した。また、CAA違反に関する推定規定が設けられ、違反の継続を政府が証明しやすくなった。さらに「過去」になされた同法違反に

対する市民訴訟の提起を初めて立法化し、市民訴訟規定をより強化している

事条Aの市民訴訟規定三〇四のC内容を以下に示す。①当A、めて制定環境法のなかに定られている典型的な例とし  。 49

者の州籍や訴額にかかわりなく連邦地裁に民事訴訟を提起できる。②CAAにもとづく排出基準・制限の違反またはそれに関して発せられたEPAもしくは州から出された命令に違反した者に対して、だれでも差止め訴訟や民事課徴金の

支払いを求めて訴訟の提起ができる。③また、EPAが同法にもとづいて課された非裁量的な義務もしくは行為を怠っ

たと主張して、誰でもその履行を求めて市民訴訟を提起できる。④直接に、連邦大気質環境基準の執行を求めて市民訴訟を提起することはできないが、その基準を達成する目的で州の実施プランに組み込まれた基準のすべてについて執行

を求め、訴訟を提起することができる。 このほか、連邦議会は、CAA違反がより容易に発見されるように、大気汚染物質の主要な発生源となる施設に対し、

操業許可の段階で適用される規制を最初に明らかにするよう要求した。また、多数の施設には、モニタリング義務・報

 (一五五五)

(17)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六六同志社法学 五九巻三号

告義務・記録保存義務などが課された。そして、施設がCAAを遵守しているかどうか定期的に評価させ、あらゆる違

反についてEPAと州の機関への報告義務が課されている。

 ⑶ 絶滅危惧種の保存法 

E nd an ge re d S pe cie s A ct

(一九七三)  絶滅危惧種の保存法(以下、ESAとする)は、絶滅危惧種、及びその依存する生態系の保全を目的として、一九七 三年にアメリカで制定された法律(前身は一九六六年)である

し務し定指が)官長商もはていつに物動たの海境申の定指が体団環で・人私、がるあ洋(さ長務内は」)種るいてれ官 な(種るびと象対の法滅絶「危惧種およ。生存を脅か本 50

立てを行うことも許可されている。内務長官(商務長官)は、種の指定にあたって「重要生息地」もあわせて定めなければならないとされる。連邦行政機関は、対象種の生存を危険にさらす行為、対象種の生息地を破壊し悪化させる行為

を回避する義務を負い

じけ、たま。るいてれら付か務義が成作の書価評いな影出禁も買売・獲捕・入輸るの種惧危滅絶るよに者響物生は関機 は生が)種定予定指るたま息種定指に域地発(場す開邦連たし画計を発な、うよのこ、はに合開 51

ている。 また、ESA一一条⒢において認められる市民訴訟は、⑴ESAもしくはそれを執行するための規則に違反する旨を

申し立てられているすべての者または団体の行為の差止めを求めること、⑵すべての国内における絶滅危惧種もしくは希少種の捕獲の禁止を内務長官に強制すること、⑶ある種を絶滅危惧種もしくは希少種に指定し、およびその重要生息

地を指定することを内務長官に求めている四条のもとで、裁量のない義務を履行することを内務長官に強制すること、の三つの訴えである。  (一五五六)

(18)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六七同志社法学 五九巻三号  ⑷ 資源保護及び回復法 

R es ou rc e C on se rv at io n a nd R ec ov er y A ct

(一九七六) 資源保護及び回復法(以下、RCRAとする)は、有害廃棄物の発生からその最終的処理・処分までの段階の全てに おいて汚染を防止し、これにより将来における浄化の必要性を予防する点の基本的な枠組みを定めている。具体的には、四つの目標を掲げている法律である

こ康響から国民の健と悪環境を保護する影る①よの目標とは、廃。棄物の廃棄にそ 52

と、②廃棄物のリサイクルと回収によりエネルギーと天然資源を保全すること、③可能な限り迅速に、有害廃棄物を含めて、発生する廃棄物量を削減、または、なくすこと、④国民の健康と環境を保護する方法に基づいて廃棄物管理を行

うことを明らかにすることである。 以上の目標を達成するため、一〇のサブタイトル(A~J)から構成される関連するマニュフェストプログラムが確

立されている。また、RCRAは有害および非有害の固体廃棄物を適正に管理する枠組みを形成している。一方で、不適切あるいは放棄地で発見される有害廃棄物、あるいはそれらの有害廃棄物から漏洩している緊急対策が必要な有害物

質の問題に対する記述はなく、これらの問題は、一般的にスーパーファンド法と呼ばれる一九八〇年に制定された包括的環境対処補償責任法(以下、CERCLAとする)で規定され、補われているのである

53

 そこで、RCRAでは、具体的にEPAが有害廃棄物等の発生、輸送、処理、または保管等に関して総合的に規制す

べきことを定めている。EPAには、執行のために情報収集権、施設調査権、遵守命令、民事制裁金、行政制裁金、暫定的差止命令、本案的差止命令や刑事制裁に関する権限が認められている。公衆の健康または環境に対して切迫的かつ

実質的な危険を惹起する可能性のある有害廃棄物に関わる過去または現在の行為を行う者に対して、訴訟を提起し、遵守命令を発することも許されている

もの規制を受けるもにA対して、だれでのR訟Cらに、市民訴規。定もあり、Rさ 54

遵守を求める訴訟提起を可能としている

場はい義務もしく作の為を怠っているな量、。るす対にAPE裁に時同とれそ 55

 (一五五七)

(19)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六八同志社法学 五九巻三号

合に、その履行を求める訴訟提起も認めている

56

 ⑸ 水質浄化法 

C le an W at er A ct

(一九七七)  水質浄化法(以下、CWAとする)は、前身を連邦水質汚濁防止法 

F ed er al W at er P oll ut io n C on tr ol A ct

(以下、

F W P C A

とする)とした法律である

F W P C A

にこめていたが、主れはをとして州定制系年。が一九七二ま体では水質規の 57

よって設定された基準をもとにした法律であった。しかし、河川の用途によって基準が異なるという点からも実効性に乏しく失敗に終わり、一九七二年に議会によって、一九八三年までに釣りと泳ぎができるように、一九八五年までには

航行可能な水域への汚染物質の排出を完全になくすという目標が掲げられた

に余準基てみを裕なた分十、きづ基をて全規条七〇三も定うるいとるあできべに保よも的な制約り公衆の健康と水質の の置措技めたの基や術準がたてられ、。そ 58

おいて定められた。毒性物質の基準としては、死、病気、ガン、変異、生理的欠陥、奇形を生物にもたらす物質を毒物とみなすとされた。このような目標を引き継ぎ、連邦による規制権限を強化した法律が一九七七年に改正されたCWA

である。そのため、そこでの保護の対象も

F W P C A

で目標とされていたものとほぼ同じである。 また、水質浄化法においても五〇五条において、市民訴訟規定が導入されている

れ基こはくしも準出排、はでこそ。 59

にかかわるEPAの命令に違反している者に対し、いかなる市民も民事訴訟を提起できると定めている。また、同条は、EPAがその非裁量的行為の履行を怠っている場合、EPAに対し市民は民事訴訟を提起できる、と定めている。その

管轄は、訴額や当事者の州籍にかかわらず、連邦の第一審裁判所にある。一方で、同条はいくつかの制約を課している。一つは通知要件である。これは、市民訴訟を提起しようとする者は、訴訟を提起する六〇日前までに、市民訴訟を提起

する意向であることをEPA、州ならびに違反者に対し通告しなければならないというものである。第二の制約は、排  (一五五八)

(20)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一六九同志社法学 五九巻三号 除効と呼ばれるものである。これは、EPAもしくは州が法実現のための民事訴訟もしくは刑事訴訟を提起しこれを誠実に追行しているときは、市民訴訟の提起は認められないというものである。ただし、この場合にも、市民は行政によ

る法実現訴訟に訴訟参加する権利を持っている。

るな、だれでも市民が原告とっかて被告に環境法を遵守すでな議会九七〇年以降、連邦るが 主要な環境法を施行す一

2

市民訴訟規定の登場  よう請求することを認めるという市民訴訟規定の導入が行われた。具体的には、CAA

、CWA 60

、RCRA 61

AL 、CERC 62

(るCST、下以法す制規質物害有、と 63

)、ESA 64

A知RCPE、下以(法利権るの域地びよお画計急緊、び及、 65

とする

)において規定された 66

要準AAにおいては、排出基・た制限、またはその遵守をCしと入制定環境法の中でもっも古くに市民訴訟規定を導  。 67

求する命令に違反した者、及び、法律に基づいて非裁量的な義務、または、作為を怠っている環境保護庁長官などを被告として連邦の裁判所にだれでも民事訴訟を提起できると規定されている。そして、一般的な市民訴訟規定による訴え

の手続きとしては、原告となりうる者が、訴えを提起する六〇日(法律によっては九〇日)前までに、環境保護庁、違

反したとされる州の行政機関、及び、違反者に対して訴訟提起を意図した書面による通知することを要求している。その後、行政機関によって、市民の提出した書面に対して、なんら方策がとられない場合に、市民が差止請求及び民事課

徴金を請求する訴えを提起することができる。この民事課徴金は通常国庫に支払われるよう規定されているが、なかには、市民に支払われるという規定を設けている法律もある。

 市民訴訟規定導入の目的としては、上記に示したような環境法による規制を効果的に実現させるという意図があっ

 (一五五九)

(21)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七〇同志社法学 五九巻三号

た。市民による訴訟提起を広く認めることによって、行政機関による是正訴訟を補完する役割を果たすという意義を有

していると評価される制度であり

たい と能を担わせるういる性格を持って機すに視た、市民に行政よ、る法の執行を監ま 68

69

3

章 当事者適格法理の発展

1

節 概要 理法から明は源起のなのは格適者事当  いで

1

 当事者適格法理の転換点とその背景

、は反違約契、はたま、為行法不、で上。の度制訟訴の下ーロ・ンモコ 70

もしくは、政府機関に対しては明らかな財産権侵害(

vio la tio n

)が訴因となる場合にしか出訴することができなかった。そのため、市民が政府の行為を争う場合にも、上記のような「法的被害(

le ga l w ro ng

)」が必要であると考えられて

いた

特乱場立的治政と府政、し混異が念概利権、い伴にののないる、たま。たっなにうよする発頻が訟訴るよにちた者くて 二法たれわ扱で域領の」私し、「は準基の害被的法の。〇。法化雑複が張主の利権的る世よに家動活、り入に紀こ 71

にニューディール期以降、行政機関の権限が増大したこととあわせて、行政機関の行為を争う訴訟が増加した。このような訴訟を認めるための基準として裁判例において当事者適格の法理が発展した。一九四六年、連邦行政手続法 

A dm in ist ra tiv e P ro ce du re A ct

(以下、APA

にっけ受を響影悪てよ、に訟訴政行るす関たも律はす対に理審法司、者したけ受を害被はく格法資、るたはる関あ連の とする)が成訟した際、「行政訴立たのめに的被害をうけている者、ま法 72  (一五六〇)

(22)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七一同志社法学 五九巻三号 が与えられる」と規定された

で利や釈解言文の律法な有行に政行。たれさ示提、政理認足満に訟訴るれらめがにとこるす起提てっよが法例判の格適 級記上ていおに審あ下、規に代年〇六九はる定限者事当るあで界ので条二〇七APA。一 73

きない市民団体や環境保護団体の大きな影響力の下で、多くの制定法が議会によって施行された

。これについては、第 74

2

章第

2

も市民訴訟規定と密れ接に関係しているたさ節環でみてきた制定境定法とそのなかで規。  一方、その当時からの当事者適格の法理の争点は、伝統的な身体的被害とも財産的被害とも定義されない利益が問題となっている納税者としての当事者適格

、競業者の有する経済的利益 75

困済のとこるす握把に的経のどな益利的境環び及 76

難な利益侵害を主張する当事者適格についてであった。一九七〇年の

D at a P ro ce ss in g

判決以降、当事者適格厳格化の傾向がしばらく続いた

77

 しかし、その後、アメリカの環境訴訟における当事者適格の要件は一九七三年の

Sie rr a C lu b

判決により理論的な転換がはかられた。そこでは、「事実上の侵害」を被っていること、及び議会が保護を求めていた「利益の範囲

zo ne o f in te re st

」について「議論の余地のある」主張を提起する限り、政府に対する訴訟を提起するための市民の一般的権利が認められたのである。

Sie rr a C lu b

判決

S C R A P

は、判決 78

。次たし展発に階段の、れが継け受てっよに 79

 

SC R A P

判決とは、ロー・スクールの学生団体である原告が、行政手続法に基づき、被告(州際通商委員会)による

鉄道運賃値上げの違法性について争った訴訟である。そこで、原告の主張する「事実上の侵害」の内容とは、学生がハイキング、魚釣り、バックパックを行うための森林、公園、ひいてはワシントンD.Cの周囲の山林地域において、鉄

道運賃値上げのもたらすリサイクル用品の運搬に対して悪影響を与えるというものであった。裁判所は、この主張に対し、「因果関係の非常に希薄なもの」であるという言及をしたが、原告の当事者適格をみたすのには十分であると判示

した。

 (一五六一)

(23)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七二同志社法学 五九巻三号

 そして、

SC R A P

判決は、環境上の当事者適格をもっとも広く認めるための基準となった。それ以降

SC R A P

判決より

緩やかな基準を示した判例は見られない。その後、連邦最高裁判所は、より制限的な立場をとるようになった。特に、違法な行政行為と侵害の間に存在するとされる因果関係について裁判所は極めて慎重に考慮している。そのような事例

において、最高裁判所は原告の主張する侵害が原告に有利な判決を下すことによって現実に救済されるかどうかという救済可能性について特に関心をもって判断した。なぜなら、「事件及び争訟性」に関する連邦裁判所の管轄を規定して

いる憲法第三編に矛盾したものとなる権限の行使は根拠がないと考えたからである。 

A lle n v. W rig ht

19 84

税スは、プライベートクたールにおける非課ち供あ子おいて、原告でる)マイノリティーのに 80

条項の区分を問題として争った

にた事当の告被める適あで薄希に的体者格全い決判のこ。事実認定の下で当事者適格を否定したうとは」いなれらめ認 もにとな行の府政たっとり題問、「は所判為主。因まあが係関果の張間の害侵たれさ裁 81

よって、近年の最高裁判所で当事者適格の一般的要件として判断されている主要な四つの要件が提示された。その要件とは、以下の通りである。

①問題の行為は、いくらかでも現実的もしくは脅かされている「事実上の侵害」の原因となっていること。②その侵害は、問題の行為に対し、関連があり、追跡可能なもの(

tr ac ea ble

)であること。

③その侵害は司法判断によって救済可能であること。④その侵害は違反が主張されてきた制定法によって保護されている利益の範囲内にあること。

 最初の三つの要件は、憲法第三編に基づくものであり、一方、四番目の要件は「慎重性の

pr ud en tia l

」要件であり、議会によって変更されうるものである

いいの要件に基づても判断が示されてこで後。判裁高最邦連の例のそ、てしそ 82

った

83  (一五六二)

(24)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七三同志社法学 五九巻三号

訟場要件については、二つの面格での議論がある。代表訴の適な者境訴訟で最も原告とる ことの多い団体の当事環

2

団体の当事者適格 

re pr es en ta tio na l s uit s

H un t t es t

述・トンハるべにス下以、はていつ在の代にテ表ト般るいてれさ求要に的一(が件要のつ三の)訟訴 出実ともを」害侵の上事現「る被の体自体団に訴)は。るあで訟訴表代くす多。るあで合場ると 84

85

①団体の会員が個人的に当事者適格を有していること。②団体がその目的に密接に関係している利益の保護を求めていること。

③請求が主張されておらず、要求される救済が団体の会員に対して訴訟に参加するよう求めていないこと。 一方の団体自体の被る損害をもとに出訴する場合というのは、通常は、代表訴訟で救済を十分図ることができるため

問題となりにくい性質を持っている。しかし、個人的感情や趣味の問題として片付けられてしまう危険が大きい問題(動物の虐待の中止、学術上貴重な種の保存等)の場合に団体自体の被る損害の主張が必要とされる場合もあり、代表訴訟

とは別に認められる例は少ないが、利用されている。そこで、従来主張されてきたのが、次章以下で考察する情報上の侵害の訴えである。

b lu C a rr Sie

文れ要件が緩和さる格傾向に対し、一九八三年の論の当適九 先述したような一七者三年の判決以降の事

3

 スカリア判事の問題提起 において、スカリア判事が当事者適格の法理をより厳格に解釈していかなくてはならないという立場からの議論をしていた

者性批判的かつ不可分」の質てを持つものであり、当事「しの対ぜなら、当事者適格判。断が三権分立の原則にな 86

適格を緩やかに解することが、ひいては他の立法・行政府の果たすべき役割に司法による過剰な介入を認めることにつ

 (一五六三)

(25)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七四同志社法学 五九巻三号

ながるためである。この論稿では、連邦最高裁判所においてスカリア判事が当事者適格を決める判断の前提になるだけ

でなく、環境利益を主張する団体の主張を裁判所において肯定的に評価しない見解が示されている。具体的には、スカリア判事は、環境法を施行する判事は「彼ら独自の階層の政治的偏見を強制する危険性がある」という主旨の議論をし

ている。このような当事者適格に対する議論がされているなか、一九九〇年代にはスカリア判事の主張を踏襲した

L uja n

判決が出された。この判決は、学界において、

Sie rr a C lu b

判決、

SC R A P

判決によって拡大された当事者適格の要 件を厳格に判断するものであるという評価をうけ、多くの批判的学説も提示された

、評ずしも要件を厳格化していると価、わしだた。るれ思でにうよいなき必はけにて具体的場面るおる解釈においけ のかし、その後判下級審例にお。し 87

L uja n

判決で整理された一般的要件がその後の判例の「事実上の侵害」に関する判断基準とされたのは確かである。そこで、この点について、どのように判例として定着したのか改めて評価していく上でも、以下において、

L uja n

判決お よび、

L aid la w

判決の概要を示すこととする。

n uja L

件理適格の憲法上の要件が整さ事法事「の編三第憲れ、てしそ。た者て当た 前、でみてき節ように、判決おい

2

向動節 例判要主裁高最邦連の

及び争訟性」を解釈した当事者適格を判断する要件として、以下で紹介する三つの基準が確立された。しかし、原告によって主張された具体的事実の下では、当事者適格の一要件である「事実上の侵害」が認められないと判断された。

 そのような

L uja n

判決以降、二〇〇〇年になって、連邦最高裁判所において、当事者適格の要件を緩和した

L aid la w

判決があらわれた。本節では、この両判決の概要を紹介し、続く第四章において、

L aid la w

判決における、

L uja n

判決の

当事者適格の要件の評価を把握することにしたい。  (一五六四)

(26)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七五同志社法学 五九巻三号

 ⑴ 事案の概要

Lujan 1

 判決

 本件は、ESAの適用範囲の改正をめぐって、環境保護団体によって提起された訴訟である。 ESAには、連邦行政機関が指定種の存続に影響を与える行為をする場合に、連邦行政機関と内務長官との協議義務

が規定されていた。内務長官は、当初、この協議義務を海外における行為にも適用されるとした規則を制定していた。しかし、後に改正して協議義務を国内の行為に限った。原告・環境保護団体は、ESAは海外にも適用ありとしてこの

規則の改正を争った。 第一審では、原告が本件訴訟における当事者適格を欠いているという内務長官による申立てを認め、正式審理を経な

いでされる略式判決(

su m m ar y ju dg em en t

、者。そして、原告団体の当事適し格を略式判決において肯定した定棄し 控訴審では破否戻差、第一審の略式判決を )。たし下を 88

内務長官に再度の規則改正を求めた。この判断の根拠として、控訴審は、三つの侵害を挙げていた

的に適格を有するか否かという点つめいてであった。なかでも中心る求長則原告が内務をの規官改司査正法審ていつに 。、は点争のでここ 89

に争われたのは、要件の一つの「事実上の侵害」の有無であった。

 ⑵ 当事者適格の一般的要件

 先に触れた

A lle n v. W rig ht

19 84

)において提示されてきた基準であるが、本判決においても改めて連邦最高裁の環境判例における当事者適格の一般的要件として、以下の三点が提示された

90

 ①原告は「事実上の侵害」を受けたこと、すなわち法的に保護された利益への侵害を受けていなければならない。

 (一五六五)

(27)

アメリカ環境訴訟における「事実上の侵害」一七六同志社法学 五九巻三号

その侵害は⒜具体的かつ特定されたもので、さらに、⒝現実に差し迫ったもの(

im m in en t

)でなければならない。想

像上または仮定上の侵害はこれに当たらない。 ②問題とされた行為が侵害の原因であること、すなわち、侵害は争われている被告の行為から生じたといえる因果

関係が存在しなければならない。 ③侵害は原告に有利な判決によって救済される見込みがなければならない、というものであった。

 これらの要件は、第

4

控もていおに審訴邦章連のて全う扱で、

。れるいて

L aid la w 2

決て触れる判さ用引しにと準基もでいおて

 ⑶ 「事実上の侵害」の具体的判断 

 原告の主張した「事実上の侵害」は認められなかった。原告の提出した宣誓供述書(

aff id av it

)の記載内容は以下の通りである。

 会員Aは一九八六年にエジプトへ旅行、絶滅に瀕したナイル・ワニの棲息地を観察したが、再びその地に訪れ、ワニを直接見たいと望んでいた。アスワン・ハイ・ダムの修復とエジプトの水利基本計画策定を監督するアメリカの役割に

よって棲息地が壊され、自分は事実上の侵害を被ると主張した。会員

ら発す助援の関機開マ際国のカリメアるハた減れこ、せさ少をウ地息棲は画計リ。し象ア観を地息棲のどな豹、察アジ

B

一九ン八一年スリラはカに旅行、絶滅にした瀕

の種の絶滅を早める。将来、スリランカの棲息地を再訪してこれらの動物を見るつもりであるが、この計画によって、自分は被害を受けると主張した。これに対して、多数意見は、本件の原告会員の宣誓供述書に述べられた事実が当事者

適格の一般的要件①⒝「現実的に差し迫った」侵害には当たらないと判断した。また、合衆国の海外援助資金は開発計  (一五六六)

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