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中国の登録会計士・会計士事務所の独立性の確保 : 日本とドイツの比較法研究

著者 張 達恒

雑誌名 同志社法學

巻 71

号 6

ページ 2047‑2109

発行年 2020‑01‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000613

(2)

中国の登録会計士・会計士事務所の 独立性の確保

――日本とドイツの比較法研究――

張   達 恒 

第1章 問題意識

第1節 研究の背景―多発する粉飾決算事件―

1 中 国

 中国の上場会社の粉飾決算は、2つの種類に分けられる。第1は、1980年 代後半から2000年の前半にかけて、上場会社において行われたもので、会計 士事務所が粉飾決算に加担するというものであった。例えば、1992年の深圳 原野粉飾計算事件は、中国改革開放時代以後、最初に発生した粉飾決算事件 であった1)。これは、当該会社の

CEO

が、資本市場から資金を調達するた めに、深圳経済特区会計士事務所と結託し、1987年から1992年の5年間の財 務報告書及び資産報告書に記載しなければならない項目を改ざんしまたは不 正財産を隠したというものである。この事件に関して、1992年6月20日、人 民銀行深圳支店は、深圳原野の財務報告書を調査した。その調査の結果、同 社が、1億元(日本円で約16億円)の資産の不正運用、2億元(日本円で約 32億円)の国内負債及び300万ドル(日本円で約3億円)の海外負債といっ

1) Catherine Huirong Chen, Yunayuan Hu and Jason Zezhong Xiao, Corporate Accounting Scandals in China, in Michael J.Jones (ed)Creative Accounting, Fraud and International AccountingScandals (Wiley, 2011),p.165-166.

(3)

た情報を改ざんし、また不正財産を隠ぺいしていたことが判明した2)。この 事件に対して、中国登録会計士協会、広東省財政庁及び深圳市財政庁は、深 圳経済特区会計士事務所の倒産処理を命じた3)。その後、1998年の大庆联谊 粉飾計算事件(粉飾決算期間1994年から1997年まで)4)および1999年の蓝田 股份粉飾計算事件(粉飾決算期間1996年から1999年まで)5)などにおいて、

会計士事務所が、深圳原野粉飾計算事件と同様に、証券法により記載しなけ ればならない項目を改ざんしていたことが明らかとなった。

 もっとも、2000年代後半から、会計士事務所の法律遵守意識が徐々に高ま り、上記のような、違法行為に加担するような粉飾決算事件は減少した。し かしながら、その後、つぎのような粉飾決算が発生するようになった。これ は、登録会計士・会計士事務所が、被監査会社の経営陣が提出した財務報告 に対して、適切な監査を行わないというものである。(中国では、これを「見 抜け」という)。例えば、2014年对宝硕股份粉飾決算事件において6)、河北华 安会計士事務所は、2001年度から2005年度における会計監査を行った際に、

被監査会社の資産決算部門の財務報告をまったく監査しなかった。また、被 監査会社と銀行との間の長期ローンに関して監査しなかった。この事件にお いて、中国証券委員会は、当該会計士事務所に対して、927090元(日本円で 約1500万円)の違法収入没収を命じ、さらに、当該会計士事務所に同様の金 額の罰金処分を下した。この事件の後も、2013年の万福生科湖南农业发展有 限公司の粉飾決算事件7)(粉飾決算期間は、2008年から2010年まで)、2014年 の系河南莲花味精股份有限公司の粉飾決算事件8)(粉飾決算期間は2007年か

2) Finance.sina.com.cn/stock/s/2006117/10412282065.shtml 3) http://wenku.baidu.com/view/1c49d423aaea998fcc220e93.html 4) Catherina Huirong chen et, Fn (1) p.168.

5) Catherina Huirong chen et, Fn (1) p.170-172.

6) http://www.csrc.gov.cn/pub/zjhpublic/G00306212/201409/t20140919_260657.htm(中 国 证 券 监 督委员会行处罚决定书(河北华安会计师事务所有限公司,齐正花,李钰等5名负责人))(2014 年70号)

7) http://www.csrc.gov.cn/pub/zhjhpublic/G00306212/201311/t20131129_239000.htm(中国证券监 督管理委员会行政处罚决定书(中磊会计师事务所有限公司))(2013年52号)

8) http://www.csrc.gov.cn/pub/zjhpublic/G00306212/201408/t20140820_259415.htm(中 国 证 券 监

(4)

ら2008年まで)など对宝硕股份粉飾決算と類似した粉飾決算事件が明らかと なった。

2 日 本

 日本の上場会社においても、中国と同様に2つの種類の粉飾決算が発生し ている。

 第1は、会計士監査人が違法行為に加担していた事件の例として、2005年 のカネボウ粉飾決算事件がある9)。当該事件においては、中央青山監査法人 の4人の公認会計士が、カネボウ元社長と共謀して、2002年及び2003年3月 期の決算につきそれぞれ800億円を超える粉飾を知りながら、それを隠蔽す るための有価証券報告書の虚偽記載に加担した10)。このような違法行為を行 った公認会計士が所属していた中央青山監査法人は、信用を失い、その結果、

破綻に追い込まれた。

 日本において、このような会計監査人が粉飾決算に加担するケースは多く ない。日本の上場会社の粉飾決算事件で圧倒的に多いのは、第2の類型、す なわち、不適切な監査を行ったというものである。たとえば、2009年のオリ ンパス粉飾決算事件では11)、あずさ監査法人は、オリンパスの有価証券報告 書及び四半期報告書に記載された財務諸表が虚偽のものであったにもかかわ らず、これらについて無限定適正意見を表明していた12)。その後、2015年の

督管理委员会行政处罚决议书(亚太(集团)会计师事务所有限公司,秦喜胜,赵强等4名负责 人))(2014年52号)

9) 藤川祐輔「カネボウの粉飾決算と経営破綻―破綻の要因を中心に―」中村学園大学、69頁。

http://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180311201219.pdf?id=ART0008969888

10) 「カネボウ巨大粉飾事件―大型経済犯罪と会計・監査―」時事会計No.29 1頁。http://www.

komazawa-u.ac.jp/-ishikawa/ca29.pdf.認定された粉飾決算は2002年および2003年の3月期に関 するものであるが、カネボウは、1974年3月期の決算より継続して粉飾決算をしていたことが 指摘されている。

11) 高田 寛「会計監査人の独立性の限界とその解決策についての一考察」富大経済論集62巻2 号、2016年12月、178頁。

12) オリンパス株式会社 監査役等責任調査委員会「調査報告書オリンパス株式会社監査役等責 任委員会」2012年1月16日、109頁。https://www.olympus.co.jp/jp/common/pdf/nr20120117.

pdf.

(5)

東芝粉飾決算事件においても、新日本監査法人は、虚偽記載のあった財務報 告に関して、無限定の適正意見を表明していた13)。この事件に対して、金融 庁は新日本監査法人に20億7152万6400円の課徴金の納付命令を下した14)

3 ドイツ

 ドイツの上場会社の粉飾決算にも、上記の中国と日本と同様のものがみら れる。

 まず、違法行為に加担する粉飾決算としては、2001年の

ComRoad AG

事 件がある15)。当該会社は、株価を上昇させるために、監査法人

KPMG

と共 謀し、1998年から2001年までの財務報告書に虚偽の記載をし、さらに会計報 告書に、無限定適正意見を表明した。結果として、この事件における粉飾決 算の金額は最低でも約8億5000万ドイツマルック(日本円で約540億円)に 及ぶ16)

 また、適切な監査を実施しないという類型の粉飾決算の代表例は、1995年 の

Bremer Vulkan Verbund AG

粉飾決算事件である17)。当該事件において、

BVV AG

は、会社の経営状況が好転していると見せかけるために、監査法人 である

Coopers

&

Lybrand

18)に提出した財務報告書に複数の項目を改ざんし たが、監査法人は、これらの改ざんされた項目を適切に監査せず、またはあ る改ざんされた項目を完全に監査しなかった19)。この事件での粉飾決算の金 額は、約40億3000万ユーロ(日本円で約5000億円)であった。

13) 高田 寛「東芝第三者委員会報告書の検証と再発防止に向けての実務的対応」富大経済論集 61巻3号、2016年3月、175頁。

14) 「課徴金の納付等に伴う元役員に対する損害賠償請求訴訟に係る請求拡張の申立等について」

http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20160127_2/pdf 15) Hansrudi Lenz, Accounting Scandals in Germany, Fn (1), p.195-197 16) Lenz, Fn (15), p.199

17) Lenz, Fn (15), p.189

18) 当該監査法人は、現在、PricewaterhouseCoopersと名称を変更している。

19) Lenz,Fn (15),p.190.

(6)

第2節 会計監査機関の独立性確保の必要性

 上記の各国の粉飾決算事件に共通する原因に、会計監査機関(中国:登録 会計士・会計士事務所、日本:公認会計士・監査法人、ドイツ:決算監査人・

監査法人)の独立性の欠如を挙げることができる。それは、具体的に、以下 の2つの段階において、会計監査機関の独立性を害するというものである。

第1は、被会計監査会社が、会計監査機関を選任する段階である。すなわち、

会計監査機関との間で、人的・経済的な関連、もしくは一定な業務関係を有 する場合は、被会計監査会社と会計監査機関との間に緊密な依存関係が形成 される。その結果、会計監査機関の身分(欠格事由及び選任手続き)の独立 性の欠如により、将来の独立的な会計監査の前提条件がなくなることとなる。

第2に、会計監査機関が、会計監査業務を行う段階で独立性が害される。そ こでは、被監査会社が、当該会計監査機関の地位(任期・ローテーション、

解任及び報酬)への影響を有するために、当該会計監査機関が適切な監査を することができなくなるという問題が発生することとなる。

第3節 本稿の意義―日本法とドイツ法を比較対象とする意義―

 日本とドイツは、前述の不祥事の発生などを受けて、会計監査機関の独立 性の確保のための規制が整備されている。これに対して、同様に、不祥事を 経験しているはずの中国では、十分な法学上の議論がなされているとは言え ない。その原因は、会計監査機関の独立性に関する国内の法規制が少ないこ と、および海外の制度の紹介が足りないことにある。そこで、本稿では、日 本とドイツの規制を参考に、中国の制度の再検討を行いたいと考えている。

日本とドイツを比較法の対象とする理由は、つぎの2点にある。

 第1に、日本とドイツは、会社内部に監査機関を設置し、その上で、外部 の会計監査機関を選任するという制度を採用している(以下では、「二元制度」

という)。この点は、中国も同様の制度を採用している。日本とドイツでは、

後述するように、会社内部の監査機関を通じて外部の監査機関の独立性を図

(7)

るという手法が採用されている。なお、内部監査機関を通じた外部会計監査 機関の独立性確保は、内部監査機関自体が経営者側からの十分な独立性を有 しているものでなければ有効なものとはなり得ない。この点、中国では、日 本とドイツと比較して、内部監査機関の独立性が不十分と指摘されてきた。

そのため、筆者は、別稿で、中国の内部監査機関の独立性を確保する手段を 提言した20)。本稿では、このような制度改革を前提として、外部会計監査機 関の独立性の問題を論じることにしたい。

 第2に、外部会計監査機関の独立性の確保は、内部監査機関の独立性に比 べて、より高い次元のものが求められる。外部会計監査機関による監査は、

会社の財務内容の適切性を担保し、市場の信頼を確保するために不可決なた めである。そのため、外部の会計監査機関の独立性については、内部機関の 独立性を確保するものと別に、特別の規制が必要となる。中国においても、

登録会計士・会計士事務所に関して、このような観点からの特別の法規制が 存在している。しかし、後述するように、当該規定には重要な不備がある。

これに対して、日本とドイツには、これらの規制の整備が相対的に進んでい る。これらの動向は、中国の制度改正にとって、極めて参考になるものとい える。

 以下では、第2章において、中国の登録会計士・会計士事務所の制度の概 要を紹介し、これらの機関の独立性を確保するための方法と現状について検 討する。第3章では、日本の公認会計士・監査法人制度、第4章では、ドイ ツの決算監査人・監査法人について、同様の考察を行う。その上で、第5章 で、これらの比較法研究を踏まえて、中国法への示唆を明らかにすることに したい。

20) 中国内部における監査・監督機関(監事・監事会)の独立性の確保に関する検討は、張 達 恒「中国上場会社における監事会・監事の独立性の確保―日本とドイツの比較法研究―」、同 志社法学401号(2018)227-294頁を参照。

(8)

第2章 中国の登録会計士21)・会計士事務所制度

第1節 法 源

 中国の登録会計士(注册会计师)・会計士事務所(注册会计师事务所)制 度は、中国会社法および登録会計士法(注册会计师法)に規定がある。これ らは、強行規定である。また、登録会計士協会「中国登録会計士職業道徳遵 守原則第4号―会計監査及び確認業務に関する独立性の要求」(以下、職業 道徳遵守原則第4号)が自主規制として存在する。なお、「登録会計士」・「会 計士事務所」については、中国会社法と登録会計士法で同じ用語が使用され ている。

第2節 適用範囲

 中国会社法は、必要な場合には、会計士事務所等を招聘してその業務に協 力させることができると規定している(中国会社法54条2項後段)。すなわち、

会社法上、会社に当該制度を設けることは義務づけられていない。しかし、

証券法上、会社は、その証券上場申請する場合において、証券取引所に、会 計士事務所の会計監査を経た、会社の直近3年の財務報告書を報告・送付し なければならない(中国証券法52条5号)。また、上場会社は、各会計年度 の上半期終了日から2ヵ月以内に、あるいは、各会計年度終了日から4か月 以内に、国務院の証券監督・管理機構及び証券取引所に会社の財務会計報告 を送付し、また公告しなければならない(中国証券法65条1号及び66条2号)。

なお、会社の財務報告表22)の審査及び会計報告表23)の作成は、登録会計士

21) 登録会計士は、全国統一試験を合格し、登録会計士証書を取得する会計コンサルティング及 び会計サービス業務に従事する業務執行人員である(登録会計士法2条)。

22) 会社の財務報告表は、会社が、市場に一定期間の自分の財務状況を公表するものである。

23) 会計報告表は、登録会計士資格を有する者が、会社の経営陣から提出する会計報告書を監査 し、またそれに関する意見を表明するものである。

(9)

の職務に属する(登録会計士法14条1項)。そこで、上場会社は、登録会計士・

会計士事務所の会計監査を受けなければならないものとなっている。

第3節 登録会計士・会計士事務所の独立性に関する要件及び現状 1 登録会計士・会計士事務所の欠格事由=(著しい利害関係)

1)登録会計士・会計士事務所の欠格事由=(人的な関係と経済的な関係)

 登録会計士・会計士事務所には「欠格事由」が規定されている。これには、

まず、「人的な関係及び経済的な関係」に関する「兼任規制」がある。登録 会計士の独立性を害する可能性がある人的関係について、登録会計士法には 規定がないものの、職業道徳遵守原則第4号には、たとえば、以下の欠格事 由が定められている。

① 会計監査項目グループ24)の構成員が、被監査会社の董事、高級管理者、

または被監査会社の会計監査報告の作成に大きな影響を与える従業員(特定 従業員という)との間で、家庭関係または私人関係がある場合(64条1項及 び71条)。

② 会計監査項目グループの構成員の主要な近親者が、被監査会社の董事、

高級管理者あるいは特定従業員である、もしくは、当該者が会計監査業務を 執行している期間中に、または会計監査報告に含まれる部門に上記の職務を 担当したことがある場合(65条)。

③ 会計監査項目グループの構成員のほかの近親者が、被監査会社の董事、

高級管理者または特定従業員である場合(67条)。

④ 会計監査項目グループの構成員は、被監査会社の従業員との間で、緊 密な関係にある、または当該従業員が、被監査会社の董事、高級管理者また は特定従業員である場合(68条)。

⑤ 会計士事務所の会計監査項目グループ以外のパートナーまたは従業員 は、被監査会社の董事、高級管理者または特定従業員との間に、家庭または

24) 監査項目グループは、会計士事務所が、被会計監査会社を会計監査する場合に、任命される 2人以上の登録会計士により、構成される集団である。

(10)

私人関係がある場合(69条)。

 また、登録会計士・会計士事務所の独立性を害する経済的な関係について も、職業道徳遵守原則第4号に、以下の欠格事由が規定されている。

① 会計士事務所、会計監査項目グループの構成員もしくはその主要近親 者が、被監査会社の中に直接的な経済利益または重要な間接的な経済利益を 有する場合(41条)。

② 会計監査項目グループの構成員のほかの近親者が、被監査会社の中に、

直接的な経済利益または重要な間接経済利益を有する場合(42条)。

 このように、登録会計士・会計士事務所の独立性を確保するための欠格事 由が規定されているものの、以下の問題がある。第1に、職業道徳遵守原則 第4号そのものは強行規定ではなく自主規制であるため、会社は遵守する義 務を負わない。第2に、当該原則の内容について、上記のように、登録会計 士・会計士事務所の独立性を害する複数の可能性が指摘されているが、詳細 に分析すると、規定の内容には不明確な点がある。たとえば、「直接的な経 済利益」、「重要な間接的な経済利益」、「近親者」などの判断基準が明確では ない。そのため、被監査会社は、この規定を自己に都合よく解釈する可能性 が高い。

2)登録会計士・会計士事務所の欠格事由=(業務制限)

 法律上は、会計士事務所が会計監査業務以外に、非会計監査業務の提供を 行うことは禁止されていない。しかし、広範に非会計監査業務の提供が認め られた場合、その影響により、会計士事務所の独立性が害されるおそれがあ る。そのため、以下のような一部の非会計監査業務を行うことが禁止されて いる(職業道徳遵守原則第4号92条)。

① 会社の管理層に属する職務(98条)25)

25) 具体的に、(1)詐欺あるいは錯誤により、財務報告表に重大な虚偽記載が発生しないように するための財務報告書に関する内部のコントロールの設計、実施、維持及び編制、(2)会計仕 訳の編制及び変更、あるいは取引の鑑定分類の確定、(3)取引が発生することを証明できるよ うな電子の、あるいは他の形の原始証憑及び原始データの編制あるいは変更、(4)適切な会計

(11)

② 会計記録及び財務報告書の編成の行為(103条)26)

③ 財務サービス27)(117条)。

④ 内部会計監査サービス(130条)。

 これらの規制は、登録会計士・会計士事務所が、被監査会社に会計監査以 外のサービスを提供することにより、被監査会社の経営に参加する可能性を 懸念するものである。しかし、この目的を十分に果たすことができない理由 として以下の2点を指摘することができる。第1に、当該規定は、自主規制 であるために、強制力がないということである。第2に、中国では、一般の 会計士事務所が得る会計監査による報酬が少ないという現実がある。そのた め、会計士事務所を維持するために、会計監査以外の業務に携わる必然性が 高くならざるを得ない28)

2 登録会計士・会計士事務所の選任

 中国会社法では、「監事会に会計士事務所の招聘を協力させる」と規定さ れている(中国会社法54条2項後段)。しかし、ここにという「協力」の具 体的な内容は規定されていないため、登録会計士・会計士事務所の選任の独 立性は、以下の2つの要因により害される可能性がある。すなわち、第1に、

「大株主」からの影響がある。会社法には、登録会計士・会計士事務所の選 任について、明確な規定がないことから、実務では、当該選任の手続きが会 社の定款によって定めることが可能である。そのような場合、会社を設立す

政策の選択及び適用、(5)適切な会計の評価が規定されている(99条)。

26) 具体的に、(1)詐欺あるいは錯誤により、財務報告表に重大な虚偽記載が発生しないように するための財務報告書に関する内部のコントロールの設計、実施、維持及び編制、(2)会計仕 訳の編制及び変更、あるいは取引の鑑定分類の確定、(3)取引が発生することを証明できるよ うな電子の、あるいは他の形の原始証憑及び原始データの編制あるいは変更、(4)適切な会計 政策の選択及び適用、(5)適切な会計の評価が規定されている(103条)。

27) 具体的に、(1)財務申告表の編制、(2)会計仕訳を編制するための税額の計算、(3)財務計 画及び他の財務に関する諮問サービス、(4)財務に関する紛争の解決の協力が規定されている

(117条)。

28) その原因については、本稿の252頁の注(30)を参照。

(12)

る際に、出資者(大株主)は、自己に有利な登録会計士・会計士事務所を選 択することができる。また、会社を設立した後での株主は、会社の定款変更 により、自分に有利な登録会計士・会計士事務所を選任することも可能であ る。第2に、「董事会・董事」からの影響がある。董事会・董事の権限は、

会社法に規定されている以外に、定款に定められるものも含まれる(中国会 社法46条11号)。これにより、会社の定款には、「登録会計士・会計士事務所 の選任権限を董事会に授権する」という規定を書き込むことが可能である。

このような場合、董事会は、自己に有利な登録会計士・会計士事務所を選択 することが可能となる。なお、一時・補欠登録会計士・会計士事務所の選任 についても、上記と同様の問題が発生しうる。

3 登録会計士・会計士事務所の任期及びローテーション制度

⑴ 任期

 中国の会社法には、登録会計士・会計士事務所の任期についての規定はな い。そのため、被監査会社は、同じ登録会計士・会計士事務所を長期間任用 することができる。このような場合、被監査会社は、粉飾決算を行うために 登録会計士・会計士事務所と共謀し、その発覚を防ぐために、同じ登録会計 士・会計士事務所の任期を延長させることである。たとえば、2011年の緑大 地粉飾決算事件では29)。被監査会社である緑大地は、2011年に粉飾決算が発 覚するまで、同じ会計士事務所を採用しつづけ、とくに、2004から2007年の 間、会計士事務所と共謀し、会社の財務に粉飾決算を行っていた。

⑵ ローテーション制度

 中国の登録会計士・会計士事務所のローテーション制度は、2002年のアメ リカの

SOX

法の影響を受けたものである。すなわち、2002年7月1日に布 告された「中国登録会計士職業道徳規範指導意見」では、独立した会計監査

29) http://www/csrc.gov.cn/pub/zjhpublic/G00306212/201307/t2013076 231832.htm.(中国证监会,

财政部行政处罚决定书深圳市鹏城会计师事务所有限公司)(2013年26号)

(13)

を実行するために、定期的に会計監査グループの担当者のローテーション制 度を導入すべきと定められた(15条2項)。

 しかし、以下の理由で、当該規定は、その機能を果たしていない。第1に、

上記の職業道徳指導意見は、登録会計士協会の自主規制である。そのため、

当該規定は、被会計監査会社に対する強制力がない。第2に、当該規定は、

登録会計士のローテーションだけを定めている。中国の登録会計士が、その 業務を行うには、会計士事務所に加入しなければならない(登録会計士法3 条2項)。そのため、会社は、会計士事務所と監査契約を締結することとな るが、この場合、会計士事務所のローテーションまで要求されるわけではな い。登録会計士のローテーションのみを規定しても、会計士事務所における 登録会計士の間での人的関係のため、制度が骨抜きになる危険性が大きい。

第3に、当該規定には、具体的なローテーションに関する年数が規定されて いない。このため、各会社は、自由に規定することができる。例えば、「

A

会社の登録会計士は、15年ごとに交替され、また交替した登録会計士は前任 者と同じ会計士事務所に所属しても構わない」という規定が、会社の定款の 中に規定される可能性がある。以上の状況では、ローテーション制度の目的 を達成することができなくなる。

4 登録会計士・会計士事務所の解任

 登録会計士・会計士事務所の解任手続きについても、中国の会社法及び登 録会計法には規定されていない30)。前述のように、登録会計士・会計士事務 所の選任について、大株主が大きな影響力を有する危険性がある。このこと は、登録会計士・会計士事務所の解任にも妥当する。また、選任の場合と同

30) しかし、会社外部により、登録会計士・会計士事務所の解任については、以下のように規定 されている。すなわち、登録会計士・会計士事務所が、登録会計士法の第20条又は第21条の規 定に違反した場合には、省級以上の人民政府の財政部門が警告を与え、違法所得を没収し、違 法所得相当額以上で5倍以下の罰金を併科することができる(会計士事務所のみ)。事案が重 大である場合には、省級以上の人民政府の財政部門がその業務執行を暫定的に停止させ、又は これを取り消すこともできる(会計士事務所のみ)又は登録会計士証書を取り消すこともでき る(登録会計士のみ)(登録会計士法39条1項及び2項)。

(14)

様に、董事会・董事からの影響が懸念される。すなわち、登録会計士・会計 士事務所の選任の場合と同じく、董事会・董事に解任権限を与える可能性も ある。董事会・董事は、会社の業績により、自分の評価が決定される。その ため、究極的に、登録会計士・会計士事務所に解任の圧力をかけて、業績を 良く見せかけるために、不正な会計監査をさせることも否定できない。

5 登録会計士・会計士事務所の報酬 1)決定機関

 登録会計士・会計士事務所の報酬の決定機関について、中国会社法及び登 録会計士法には、明文の規定はない。そのため、登録会計士・会計士事務所 の選任及び解任と同様に、大株主及び董事会・董事が、その報酬の決定に関 与すれば、登録会計士・会計士事務所の独立性を害する結果になりかねない。

2)開示義務(会計士事務所による開示)

 中国の会社法、登録会計士法及びほかの関連規制には、登録会計士・会計 士事務所の報酬について、被監査会社による開示を義務がづける規定はない。

もっとも、自主規制により、会計士事務所による開示義務が定められている。

 第1に、会計士事務所が、2年連続で、被監査会社及びそれと関連する者 から獲得した報酬が、当該会計士事務所のすべての被監査会社から獲得した 報酬の15%以上を占める場合、当該会計士事務所は、被監査会社の経営陣に 当該事実を通知しなければならない(職業道徳遵守原則第4号156条)。さら に、会計士事務所は、被監査会社に対して客観的な会計監査ができるように、

以下の措置をとるかを検討すべきであるとされている(職業道徳遵守原則第 4号156条1項)。この検討項目として、⑴第2年度31)の財務に対して会計 監査意見を発表する前に、ほかの会計士事務所に、財務に係る項目を再監査

31) 第2年度について、登録会計士・会計士事務所は、選任された年に、15%以上の報酬が被会 計監査会社から取得した場合に、つぎの年(第2年度)の会計監査を客観的に行うことができ るかどうかという懸念がある。そのため、第2年度の財務をほかの会計士事務所により、再監 査を行う必要性がある。

(15)

させること(発表前の再監査)、⑵第2年度の財務に対して会計監査意見を 発表した後、第3年度の財務に対して会計監査意見を発表する前に、ほかの 会計士事務所に、第2年度の財務に対して再監査させること(発表後の再監 査)が規定されている(職業道徳遵守原則第4号156条1項1号及び2号)。

 これらの規定により、一定程度、登録会計士・会計士事務所の独立性を確 保することができるかもしれない。しかし、以下の課題が存在している。第 1に、当該規定が、自主規制であるので、会計士事務所は、遵守しなくても 何らの処分も受けない。第2に、会計士事務所の報酬の15%以上を占める被 監査会社は、当該会計士事務所にとって重要な顧客であるため、会計士事務 所の経済利益の維持の面から、通知のインセンティブが働かないのではない かという懸念がある。

6 中国特有の事情

 最後に、中国の登録会計士・会計士事務所の独立性の欠如について、以下 のような中国特有の事情もある。

 まず、中国の登録会計士制度は、1980年代の計画経済時代から市場経済に 移行する時代に創設された。そのため、例えば、1986年の国務院による「会 計士事務所管理条例」においては、「会計士事務所は政府または企業に依存 しなければならない」と規定された32)。当時、政府は、会計士事務所の規制 の必要性は認識していたものの、その独立性を確保するという意識はなかっ た。そのため、監査すべき会計士事務所が、監査される被監査会社に支配さ れるという事態を野放しにする結果となった。

 また、現在の中国の会計士事務所の規模は、相対的に小さい33)。会計士事 務所は、自分の経営の維持のために、重要な顧客との長期的な連携を重視す る傾向がある。このことが、会計監査における公正性を損なう大きな要因と

32) 朱红「注册会计师审计独立缺失的现状分析及其实现的制度安排」财会通讯学术版、2007年第 1期、73页。

33) 陈杉「对影响我国注册会计师审计独立原因及对策的思考」内控与审计Internal Control Auditing、 2012年12、43

(16)

なっている。

 そして、中国では、登録会計士・会計士事務所制度の採用を義務づけられ る会社には、国が会社の支配権を国で有するものとそれ以外のものがある。

前者の場合には、国もしくは政府からの政治的な圧力を受けて、独立した会 計監査を行うことができないのではないかという懸念がある。このような理 由から、諸外国と比較して、中国では、会計士事務所の需要は、相対的に小 さいものに止まっている34)

 以上の要因から、中国の会計監査あるいは登録会計士・会計士事務所制度 が、他の先進諸国のような健全な制度になるまでには、さらなる時間を要す ると考えられる。

第3章 日本の公認会計士・監査法人制度

第1節 法 源

 日本における公認会計士・監査法人制度は、会社法、会社法施行規則、公 認会計士法、公認会計士法施行令および公認会計士法施行規則によって定め られている。これらの法令に加えて、監査法人制度に関するソフト・ローと して、コーポレート・ガバナンス・コード(以下、日本版

CGC

)、監査法人 のみを規制対象とした監査法人ガバナンス・コード(以下、日本版監査法人

CGC

)、監査法人のみを規制対象とする監査法人ガバナンス・コード(以下、

日本版監査法人

CG

)および、公認会計士協会による自主規制としての倫理 規則がある。なお、日本の公認会計士・監査法人制度には、2つの用語があ る。すなわち、会社法における「会計監査人」および公認会計士法における

「公認会計士」である。会計監査人は、公認会計士または監査法人でなけれ ばならないと定められている(日本会社法337条)。なお、以下では、会社法 の条文に関連する記述を除いて、原則として、「公認会計士・監査法人」と

34) 陈杉・前掲注(33)42頁。

(17)

いう用語を使用する。

第2節 適用範囲

 日本の公認会計士・監査法人制度の設置は、すべての会社に義務づけられ ているわけではない(日本会社法326条2項)。もっとも、公開会社で大会社 である会社は、会計監査人を置かなければならない(日本会社法328条1項)。

その理由としては、規模および複雑な決算関係を考慮し、また、このような 会社にかかわる利害関係人の保護が必要であるところ、決算書類について独 立した会計に関する職業的専門家の監査を受ける必要である点が挙げられ る35)。また、金融商品取引法に基づく上場会社の有価証券報告書、四半期報 告書等に含まれる財務諸表等及び内部統制報告書等には、その者と特別利害 関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならない

(金融商品取引法193条の2の1項)。

第3節 公認会計士・監査法人の独立性に関する要件と学説 1 公認会計士・監査法人の欠格事由

1)公認会計士・監査法人の欠格事由=(著しい利害関係)

a)公認会計士の特別関係(人的な関係と経済的な関係)

 公認会計士法は、公認会計士の会社から独立性を確保するため、次の場合 において、公認会計士が財務諸表に関する監査または証明の業務に従事する ことを禁止する(公認会計士法24条1項)。

① 公認会計士又はその配偶者が、監査又は証明をしようとする財務書類 に係る会計期間の開始日からその終了後3月を経過する日までの期間内に当 該財務書類につき監査又は証明を受けようとする会社その他の者の役員、こ れに準ずるもの又は財務に関する事務の責任ある担当者であった場合。

② 公認会計士の配偶者が、当該公認会計士に係る被監査会社等の使用人 である場合又は過去1年以内にその使用人であった場合。

35) 岩原紳作『会社法コンメンタール(7)』(商事法務、2013年)〔近藤光男〕393頁。

(18)

③ 公認会計士の配偶者が、国家公務員若しくは地方公務員であり、又は これらの職にあった者でその退職後2年を経過していないものである場合に おいて、その在職し、又は退職前2年以内に在職していた職と当該公認会計 士に係る被監査会社等(営利企業に該当するものに限る)とが職務上密接な 関係にある場合。

④ 公認会計士又はその配偶者が、被監査会社等の株主、出資者、債権者 又は債務者である場合。ただし、株主又は出資者にあっては相続又は遺贈に より被監査会社等の株式又は出資の取得後1年を経過しない場合を、債権者 又は債務者にあってはその有する債権又は債務が被監査会社等のとの間の公 認会計士法2条1項又は2項の業務に関する契約に基づく場合、その有する 債権又は債務の額が100万円未満である場合(相続又は遺贈により被監査会 社等の債権の取得後1年を経過しない場合その他内閣府令で定める特別の事 情を有する債権または債務である場合を除く)。

 これらの規定の目的は、公認会計士の身分の独立性を確保するため、会社 との人間関係を制限することにある36)

b)監査法人の特別関係(人的関係と経済的な関係)

 監査法人は、以下の場合において、会計監査の業務を行ってはならない(公 認会計士法34条の11)。

① 監査法人が株式を所有し、又は出資している会社の場合。

② 監査法人の社員のうちに会社その他の者と第24条第1項1号(公認会 計士又はその配偶者)に規定する関係を有する者がある場合。

③ 会社その他の財務書類について監査法人の行う第2条第1項(報酬を 得る会計監査)の業務にその社員として関与した者が、当該財務書類に係る 会計期間又はその翌会計期間内に当該会社その他の者又はその連結会社等の 役員又はこれに準ずる者となった場合

36) 池田唯一ほか『新しい公認会計士・監査法人監査制度―公正な金融・資本市場の確保に向け て』(第一法規、2009年)80頁。

(19)

④ ①ないし③のほか、監査法人が著しい利害関係37)を有する会社の場合。

 上記の規定は、公認会計士・監査法人の独立性を害する可能性のある経済 的な関係を明確にする点で、その独立性を確保するために有用である。

2)公認会計士・監査法人の欠格事由―(大会社に関する業務制限)

 公認会計士・監査法人は、会社の監査証明業務を行う場合における独立性 に関する次のような規定も留意しなければならない。

a)公認会計士に係る業務制限

 公認会計士は、当該公認会計士、その配偶者又は当該公認会計士もしくは その配偶者が実質的に支配していると認められるものとして内閣府令で定め る関係を有する法人その他の団体が、非監査業務により継続的に報酬を受け ている場合には、当該大会社等の財務書類について、監査証明業務を同時に 提供してはならない(公認会計士法24条の2)。

 監査証明業務との同時提供が禁止される非監査証明業務は、内閣府令で定 めるものに限られている38)。ここでは、独立性確保の観点から、自己監査と

37) 監査法人又はその社員が会社の他の者との間にその者の営業、経理その他に関して有する関 係で、監査法人の行う第2項第1項(報酬を得る会計監査)の業務の公正を確保するため業務 の制限をすることが必要かつ適当であるとして政令で定めるものである(公認会計士法34条の 11の2項)。また、監査法人との著しい利害関係について、以下の状況も考慮する必要がある(公 認会計士施行令15条)。① 監査法人が、被監査会社等の債権者又は債務者である場合。②  監査法人が、被監査会社等から第7条第1項第5号に規定する利益の供与を受けている場合。

③ 監査法人が、被監査会社等の役員等又は過去1年以内若しくは監査関係期間内にこれらの 者であった者から第7条第1項第5号に規定する利益の供与を受けている場合。④ 監査法人 の社員のうちに被監査会社等の使用人である者がある場合。④の2 監査法人の社員のうちに 被監査会社等の親会社等又は子会社等の役員又は使用人である者がある場合。⑤ 監査法人の 社員のうちに被監査会社等から税理士業務により継続的な報酬を受けている者がある場合。⑥  前3号に該当する場合を除き、被監査会社等の財務書類について監査法人の行う監査証明業 務にその社員として関与した者・指定社員又はその配偶者は、法第24条第1項第2号又は第3 項に規定する関係、あるいは、第7条第1項から第8号までに規定する関係がある場合。⑦  第4号から前号までに該当する場合を除き、監査法人の社員の半数以上の者が、本人又はその 配偶者につき、前号の規定を該当する場合。

38) 内閣府令で定められる非監査証明業務については、以下のとおりである(公認会計士法施行 規則6条)。つまり、①会計帳簿の記帳の代行その他の財務書類の調製に関する業務、②財務

(20)

なる業務及び経営判断に実質的に関与する業務が対象とされている39)b)監査法人に係る業務制限

 監査法人は、当該監査法人又は当該監査法人が実質的に支配していると認 められるものとして内閣府令で定める関係を有する法人その他の団体が、大 会社等から非監査証明業務により、継続的な報酬を受けている場合には、当 該大会社等の財務書類について、監査証明業務を同時に提供してはならない

(公認会計士法34条の11の2の1項)。また、監査法人は、その社員が大会社 等から非監査証明業務の業務により、継続的に報酬を受けている場合には、

当該大会社の財務書類について、監査証明業務を提供してはならない(公認 会計士法34条の11の2の2項)。

 監査法人の社員が非監査証明業務を会社に提供する場合に、その所属する 監査法人の当該会社に対する監査証明業務は自己監査となるおそれがあ る40)。上記の規定は、監査法人の自己監査を防ぐためのものである。

 しかし、監査法人の非監査証明業務が完全に禁止されるわけではない。監 査法人は、法人の業務における非監査業務の位置づけに関する考え方を明ら かにすべきとされており(日本版監査法人

CGC

の1-5)。監査法人は、かか る考え方を明示できれば、被監査会社の非監査証明業務を行うことも可能で ある。

2 公認会計士・監査法人の選任 1)選任機関

 会計監査人の選任は株主総会の決議で行われる(日本会社法329条1項)。

 1974年制定の商法特例法では、会計監査人の選任は、取締役会の決議で行

又は会計に係る情報システムの整備又は管理に関する業務、③現物出資その他これに準ずる財 産の証明又は鑑定評価に関する業務、④保険数理に関する業務、⑤内部監査の外部委託に関す る業務、⑥前各号に掲げるもののほか、監査又は証明をしようとする財務書類を自らが作成し ていると認められる業務又は被監査会社等の経営判断に関与すると認められる業務である。

39) 池田ほか・前掲注(36)84頁。

40) 池田ほか・前掲注(36)85頁。

(21)

われるとされていた(1974年商法特例法(監査特例法)第3条1項)。しかし、

取締役は、その業務執行の結果である計算書類につき公認会計士・監査法人 の監査を受ける立場にあることから、会計監査人の独立性を確保するために、

1981年の商法特例法の改正により、会計監査人の選任は、株主総会の決議で 行われることになった(1981年商法特例法3条1項)41)。その後、商法特例 法が廃止された後も、会社法においてこの規定が維持されている。

2)選任の手続き a)議案の提出

 監査役会設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任に関 する議案の内容は、監査役会が決定する(日本会社法344条1項・3項)。

 当該規定は、2014年の会社法改正で設けられた。2014年の改正前は、監査 役に会計監査人の選任に関する議案に対する同意権のみを与えていた。この 改正の背景には、監査される立場にある取締役が株主総会への会計監査人の 選任議案を決定することは、会計監査人の経営者(取締役)に対する立場を 弱め、粉飾決算を防ぐことができない原因の1つになっているのではないか と批判があった42)。すなわち、会社法上、会計監査人は、株式会社の作成す る計算書類およびその付属明細書の監査を行う(日本会社法436条2項)。会 計監査人による監査の対象とされる計算書類や付属説明細書を作成するの は、会社の取締役(会)である。ところが、会計監査を行う会計監査人の選 任権限は、取締役会にある。取締役(会)が会計監査人の選任を行うものと されるため、会計監査人は取締役(会)に比べて、地位的な弱さにより、客 観的な会計監査を期待することができない(いわゆる、「インセンティブの ねじれ」)という問題が生じていた43)

41) 弥永真生『会計監査人論』(同文館出版、2015年)54頁。

42) 岩原紳作「会社法制の見直しに関する要綱案の解説〔Ⅱ〕」商事法務1976号、2012年9月、

4頁。

43) 三原秀哲『ここが変わった!改正会社法の要点がわかる本 法務省令対応版』(翔泳社、

2015年)131-132頁。

(22)

 公認会計士・監査法人の精神の独立性44)を担保するという観点から、監 査対象からの圧力を受けるべきではない。この点で、監査役(会)は、会計 監査人と同じ立場といえる。また、会社と会計監査人との間の契約の締結に は会社との交渉が必要となる45)。その際、選任権を有して監査報酬の支払い で優位に立つ被監査会社の取締役は、公認会計士・監査法人に、圧力をかけ ることも可能である。そこで以上のことから、会計監査人の選任に関する議 案の内容を監査役(会)にさせることが適切であると考えられた46)。  さらに、会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出するとき、株主 総会参考書類には、以下の内容を記載しなければならない。

① 監査役(会)が、当該候補者を会計監査人(公認会計士・監査法人)

の候補者とした理由(日本会社法施行規則77条3項)。

② 当該会社に親会社がある場合、当該株式会社、当該親会社又は当該親 会社の子会社若しくは関連会社から多額の金銭その他の財産上の利益を受け る予定があるとき又は過去2年間に受けていたときは、その内容(日本会社 法施行規則77条8項のイ)。

③ 当該株式会社に親会社がない場合、当該株式会社又は当該株式会社の 子会社若しくは関連会社から多額の金銭その他の財産上の利益を受ける予定 があるとき又は過去2年間に受けていたとき、その内容(日本会社法施行規 則77条8項ロ)。

 これらに加え、

CGC

は、①外部会計監査人候補を適切に選定し、外部会 計監査人を適切に評価するための基準の策定、および、②外部会計監査人に

44) 当該精神的な独立性とは、職業的専門家としての判断を危うくする影響を受けることなく、

結論を表明できる精神状態を持ち、誠実に行動し、公正性と職業的な懐疑心を堅持ができるこ とである。公認会計士協会「独立性に関する方針」2014年4月16日、2頁。

45) 当該契約は、実際に、委任契約である。それには、公認会計士・監査法人の監査内容を詳細 に規定されている。しかし、監査内容の対象は、会社内部の取締役(会)の仕事の範囲の一部 である。そのため、公認会計士・監査法人は、会計監査を行う際に、取締役(会)の協力が必 要である。それにしたがって、公認会計士・監査法人は、客観的な会計監査を施行するために、

事前に、取締役(会)との交渉が必要である。

46) 弥永・前掲注(41)62頁。

(23)

求められる独立性と専門性を有しているか否かについての確認を監査役会が 行うべきであるとする(日本版

CGC

補充原則3-2①)。これは、適切な会計 監査人の候補者を選任するために、候補者の選定基準も明確にすべきである という考えにもとづくものである。

b)選任の手続き

 上記のように、公認会計士・監査法人の選任機関は株主総会である。公認 会計士・監査法人の候補者の選任は、監査役会が決定する。これによって、

取締役(会)からの影響を切断することができるため、株主総会の普通決議 で足りるとされている。

3)一時公認会計士・監査法人の選任

 会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた員数が欠けた場合において、遅 滞なく会計監査人が選任されないとき、監査役は、一時会計監査人の職務を 行うべき者を選任しなければならない(日本会社法346条4項)。

 一時会計監査人の資格は、会計監査人の選任条件と同様である。そのため、

会計監査人の身分の独立性を確保することができる。会計監査人の選任と異 なるの点は、選任機関が株主総会ではなく、監査役(会)であるということ である47)。株主総会による選任手続きがなくても、経営陣から独立した立場 にある監査役(会)の関与により、一時会計監査人の選任手続きの独立性を 確保することができる。

3 公認会計士・監査法人の任期およびローテーション制度 1)公認会計士・監査法人の任期

 会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうちのものに 関する定時株主総会の終結までである(日本会社法338条1項)。また、会計 監査人は、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定 時株主総会において再任されたものとみなされる(日本会社法338条2項)。

47) 岩原・前掲注(35)〔石山卓磨〕346頁。

(24)

 この規定は、1981年改正商法特例法で定められた。このような規定が設け られた背景には、公認会計士・監査法人の独立性の確保が不十分であったと いう事情があった。1981年の商法特例法改正前は、公認会計士・監査法人の 選任権限は取締役会に与えられており、公認会計士・監査法人と被監査会社 との監査契約の締結は、代表取締役によって行われていた。そのため、公認 会計士・監査法人は取締役会の影響を受けやすい状況にあった。このような 状況に鑑み、公認会計士・監査法人による監査の実行性を向上させるために、

任期を長くして公認会計士・監査法人の地位の安定性を高め、経営者からの 独立性を確保することが必要であるとの認識が示された48)。その後、1981年 の商法特例法改正により、会計監査人(公認会計士・監査法人)の任期を就 任後1年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時までとした上 で、当該定時株主総会において別段の決議がなかったときは、その総会にお いて再任されたものとみなすこととした(1981年商法特例法5の2条1項と 2項)。

 公認会計士・監査法人の不再任を決定するためには、別段の決議を必要と する。この場合、監査役会設置会社において、取締役が会計監査人の不再任 を株主総会の目的とするには、監査役(監査役会の場合において、その過半 数)の同意を得なければならない(日本会社法344条1項2号)。実際には、

取締役が公認会計士・監査法人の不再任の決議を提出することは容易ではな い。したがって、公認会計士・監査法人の地位の安定性を確保することがで きる。

2)ローテーション制度

 公認会計士・監査法人は、定期株主総会において別段の決議がされないか ぎり、原則として再任されたものとみなされる(「当然再任制」日本会社法 338条2項)。これにより、公認会計士・監査法人の地位を安定させ、独立性 が確保されているが、このような当然再任制は、現在の公認会計士・監査法

48) 岩原・前掲注(35)〔山田純子〕509頁。

(25)

人を固定化し、被監査会社との癒着を生ずるおそれもある49)。たとえば、米 国のエンロン事件、ワールドコム事件では、監査契約期間が長期にわたった ため、登録会計士・監査法人と被監査会社の間に癒着が生じ、粉飾決算を防 止することができなかったことが指摘された。これらの事件は、SOX法に おいて、パートナー会計士のローテーション制度が導入される契機となった。

 このような

SOX

法の規定を参考に、日本でも、2003年6月6日、改正公 認会計士法が公布され、公認会計士・監査法人社員の継続監査期間の制限が 設けられた50)

a)公認会計士のローテーション制度(個人公認会計士)

 公認会計士は、大会社51)等の連続する7会計期間のすべての会計機関に 係る財務書類について監査関連業務を行った場合には、当該連続会計期間の 翌会計期間以後の2会計期間に係る当該大会社等の財務書類について監査関 連業務を行ってはならない(公認会計士法24条の3の1項、公認会計士法施 行令11条、同12条)。

 これは、同じ公認会計士を長期間連続して会計監査人として雇用すること の弊害に鑑み、一定の「冷却期間」を設けることで、会計監査人の独立性を 確保することを目的としている。しかし、同じ公認会計士を再任することは、

被監査会社にとって新しい会計監査人を選定するコストの削減にもつなが り、公認会計士にとっても、被監査会社の状況を迅速に把握することができ るというメリットがあることも否定できない。そのため、この規定は、公認 会計士の再任を完全に禁止するのではなく、2会計期間を経過すれば、その

49) 岸田雅雄「会社監査人」民商法雑誌85巻6号、1982年3月15日、955頁。

50) 井上俊剛「改正公認会計士法の解説〔上〕」商法法務1668号、2003年7月15日、6-7頁。

51) 公認会計士法における大会社とは、最終事業年度に係る賃借対照表に資本金として計上した 額が百億円未満であり、かつ、最終事業年度に係る賃借対照表の負債の部に計上した額の合計 額が千億円未満の株式を除くものである(公認会計士法施行令8条)。会社法における大会社 とは、最終事業年度に係る賃借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であり、最終事 業年度に係る賃借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である(日本会社法 2条6項)。ローテーション制度を適用する対象は、公認会計士法施行令および会社法に規定 されている会社である。

(26)

再任を認めるという立場をとっている。

b)監査法人の社員のローテーション制度(監査法人に属する公認会計士)

 一定規模以上の会社においては、1人の会計監査人が被監査会社の会計監 査を執行するというのは困難であるため、監査法人に依頼することが通常で ある。そのため、公認会計士法は、次のように、監査法人の社員(各会計監 査人)のローテーション制度を定めている。すなわち、当該監査法人の社員 が当該大会社等の7会計期間のすべての会計期間に係る財務書類について、

当該社員が監査関連業務を行った場合には、連続7会計期間の翌会計期間以 後の2会計期間に係る当該大会社等の財務書類について当該社員に関連監査 業務を行わせてはならない(公認会計士法34条の11の3、公認会計士法施行 令16条および17条)。さらに、大規模監査法人は、金融商品取引所に上場さ れている有価証券の発行者その他の政令で定める者の財務書類について監査 証明の業務を行う場合において、当該業務を執行する社員のうちその事情を 統括する者その他の内閣府令で定める者が上場有価証券発行者等の連続5会 計期間のすべての会計期間に係る財務書類について監査関連業務を行った場 合には、連続5会計期間の翌会計期間以後の2会計期間に係る当該上場有価 証券発行者等の財務書類について当該筆頭業務執行社員等に監査関連業務を 行わせてはならない(公認会計士法34条の11の4の1項、公認会計士執行令 19条および20条)。

c)監査法人のローテーション制度(監査法人の全体)

 大規模会社は、金商法上、内部統制報告制度・四半期報告制度が導入され ており、年度のうちの監査が実際に行われている時期が長く、監査法人と被 会社の関係(とくに、経済的な関係)が緊密なものとなるので、監査法人の 独立性についての懸念がないわけではないことが指摘されてきた52)。そのた め、日本では、カネボウの不正会計事案53)を契機として、2006年の金融審 議会公認会計士制度部会において、業務執行員や監査法人のローテーション

52) 池田ほか・前掲注(36)100頁。

53) この事件は、本論文の第1章第1節で参照。

(27)

制度の在り方について再度議論された。同年12月に、「公認会計士・監査法 人制度の充実・強化について」である報告書に、監査法人の強制ローテーシ ョン制度の導入について、言及がなされた54)、その後、東芝の粉飾決算事件 を背景として、2016年3月8日に金融庁に公表された「会計監査の在り方に 関する懇談会」により、被監査会社と監査法人との癒着を改善する1つの方 法として、監査法人の強制ローテーション制度の導入が提言された55)。さら に、2017年7月20日、金融庁による、「監査法人のローテーション制度に関 する調査報告(第一次報告)」でも、監査法人の強制的ローテーション制度 の必要性が再び提言された。しかし、強制的ローテーション制度の導入には 課題がある。

 以下の表1に示したように、上場の歴史が長い企業において長期間同じ監 査法人と監査契約を締結する傾向がみられる56)

表1 監査市場における監査契約の固定化状況57)

年度 2010年度における上場 企業が存在している数

(社)

2010年度と同じ監査法 人が会計監査を行って いた数(社)、比率(%)

2010年度と異なる監査 法人が会計監査を行っ ていた数(社)、比率(%)

2000 2450社 1500社(61%) 950社(39%)

1990 1079社 615社(57%) 464社(43%)

1980 784社 490社(63%) 294社(37%)

 さらに、表2によれば、日本の大企業では、監査法人の交代の割合が少な いという事実が明らかである58)

54) 金融庁『監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)』2017年7月20日、

4頁及び5頁。

55) 松本祥尚「監査事務所の強制的交代(ローテーション)制度」月刊監査役、2016年12月25日 通巻661号、21頁。

56) 金融庁・前掲注(54)、10頁。

57) 金融庁・前掲注(54)、11頁。

58) 金融庁・前掲注(54)、11頁。

(28)

 これらの表が示す実態の背景には、「大規模監査法人の市場独占」および「被 監査会社のコスト」という2つの事情がある。

 まず、小規模監査法人では、会計監査に関する経験を有している公認会計 士の数が少ないため、大規模会社は、大規模監査法人に監査を依頼しなけれ ばならないのが実態である。さらに、その大規模監査法人の数は多くはなく、

大手の公認会計士事務所(

Big

460))が監査市場を寡占している状態にあ る61)。そのため、仮に監査法人のローテーション制度を導入したとしても、

大規模監査法人の間でローテーションすることが予想される。さらに、被監 査会社が監査法人を変更する場合、新しい監査法人の社員は、被監査会社の 業務を把握するのに時間を要する。

 監査法人の独立性の確保は重要であるものの、上記の事情も十分に考慮に 入れる必要がある。以上のことから、現時点では、日本において、監査法人 のローテーション制度の法定化は実現していない。

4 公認会計士・監査法人の解任

1)株主総会による公認会計士・監査法人の解任

 会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる

59) 金融庁・前掲注(54)、11頁。

60) ビック4の公認会計士事務所は、以下のErnst&Young, Deloitte Touche Tohmatsu, KPMG, Pricewaterhousecoopersである。

61) 2015年の監査法人の数は、214所である。公認会計士・監査審査会「監査事務所検査結果事 例集参資料・監査事務所の概況(平成28年版モニタリングレポート)」、2016年7月、10頁。そ のため、上場会社の会計監査は、大規模の監査法人により、執行することは通常である。

表2 直近10年間に監査法人が交代した企業の割合59)

年度 2016年 度 に お け る

TOPIX

100社 が 存 在 し ていた数(社)(

a

a

)のうち、2016年度 と同じ監査法人が会計 監査を行っていた数

(社)、比率(%)

a

)のうち、2016年度 と異なる監査法人が会 計監査を行っていた数

(数)、比率(%)

2007 96社 91社(95%) 5社(5%)

(29)

(日本会社法339条1項)。また、解任された者は、その解任について正当な 理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害を請求す ることができる(日本会社法339条2項)。

 会社による一方的な解任は、公認会計士・監査法人の地位の安定性を害す るおそれがある。そのため、公認会計士・監査法人の地位の独立性を確保す るために、その解任には一定の手続きが必要とされている62)。たとえば、株 主総会に提出する会計監査人の解任の議案は、監査役会が決定する(日本会 社法344条1項)。正当な理由の範囲を拡大すると、ほとんどの場合に損害賠 償を請求できなくなり、公認会計士・監査法人の地位が不安定となる。その ため、学説では、正当な理由の範囲を狭く解釈し、その立証責任は会社側が 負うべきとしている63)

2)監査役(会)による公認会計士・監査法人の解任

 公認会計士・監査法人の解任は、原則として株主総会の普通決議で行われ る。特に大規模会社の場合、その解任を目的とする臨時株主総会を招集する には多大なコストがかかる64)。そのため、監査役(会)は、次のように一定 の事由がある場合にかぎり、会計監査人を解任することができるとされてい る(日本会社法340)。

①職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合。

②会計監査人としてふさわしくない非行があった場合。

③心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき とった場合と判断した場合。

 これらの3つの要件は、監査役(会)による公認会計士・監査法人の解任 権の濫用を防止し、その地位の安定性を確保することを目的としている。そ のため、これら3つの要件は、厳格に解釈されるべきであると考えられてい

62) 奥島孝康ほか『新基本法コンメンタール会社法2』(日本評論社、2016年)〔笠原武朗・潘阿 憲〕109頁。

63) 奥島ほか・前掲注(62)〔潘阿憲〕115-116頁。

64) 奥島ほか・前掲注(62)潘阿憲〕117頁。

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