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大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク事 件 の 教 訓

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(1)

大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク事 件 の 教 訓

橋 本 光 憲

目 次

は じめ に

1事 件 の概 要 と問題 点 2住 友 銀 行 との合 併 問題 3問 題 の ポ イ ン トの所 在 4大 和 銀 行 事 件 の本 質 お わ りに

は じ め に

1)

論 者 はか つ て大 和 銀 行 ニ ュー ヨー ク事 件 に つ い て以 下 の よ うな短 評 を加 え た こ とが あ る。

「さ る(1995年)9月26日,日 本 経 済 新 聞 夕刊 の 一 面 はつ ぎの ニ ュ ー ス を報 じ た。『大 和 銀,1100億 円 の損 失,米 国 債 投 資 の失 敗,NY支 店 責任 者 が 無 断 で穴 埋 め』 そ の後,こ の問 題 は連 日の よ うに報 道 され て い る。

事 実 関 係 の解 明 は,日 米,と くに米 国 司 直 の 手 に委 ね られ な け れ ば な らな い が,一 方,こ の 事 件 が 国 際 金 融 市 場 に は か り しれ な い 影 響 を与 え た こ とが 問 題 で あ ろ う。邦 銀 全 体 の信 用 が 揺 らぎ,ジ ャパ ン プ レ ミア ム に よ る資 金調 達 を強 い ら れ,ス プ レ ッ ドの 縮 小 を余 儀 な くされ て い る。

す で に,日 本 の銀 行 の不 良 債 権 問題 とその不 透 明性 か ら格 付 け機 関 の評 価 を下 47

(2)

げ て い る こ と と相 侯 って,邦 銀 は国 際 金 融 市 場 で一 段 と苦 境 に立 た され るに至 っ た の で あ る。 日本 の 金 融 シ ス テム 全 体 に対 す る信 任 を失 う よ う な重 大 事 で あ る。

こ とに,87年 当時 に信 託 子 会 社 で米 国債 の簿 外 取 引 で140億 円相 当 の 損 失 を出 しなが ら,こ れ を隠 蔽 した事 実 の経 緯 は長 く尾 を引 きそ うで あ る。

い ま,欧 州,米 国 の銀 行 が体 制 整 備 にや っ き とな って い る と き,日 本 の銀 行 が さ らに後 退 す る よ うな こ とに な った ら,問 題 は大 きい。」

(追記:渡 米 中 の11月4日,日 本 の新 聞 の国 際 衛 星 版 は,『 大 和 銀,住 銀 と合 併 へ』,『米,全 業務 停 止 を命令 』 と,一 斉 に報 じた。)

い ま,丸2年 が 経 過 し,大 和 銀 行 は米 国 か らの 撤 退 を 余 儀 な くさ れ た が, 当 初 の 信 用 不 安 に備 え た と思 わ れ る住 友 銀 行 と の 合 併 交 渉 は 実 質 的 に 頓 挫 の 様 相 を呈 し,大 和 銀 行 は 自 主 再 建 の 道 を模 索 し て い る よ う で あ る。

米 当 局 は大 和 銀 行 との 司 法 取 引 に 応 じ,事 件 の 当 事 者 の 井 口俊 英 被 告,当 時 の 津 田 昌 宏 前 支 店 長 共,禁 固 な ら び に罰 金 の 実 刑 判 決 を受 け た 。 ま た,井

口 被 告 は 獄 中 か ら 『告 白 』 な る事 件 の 内 幕 書 を刊 行 して 話 題 を 呼 ん だ 。 これ ら の 経 緯 を ジ ャ ー ナ リス テ ィ ッ ク に ま と め る こ と は,論 者 の 任 で は な い し,ま た そ の 能 力 もな い 。

2)

論 者 の 目指 す と ころ は,小 論 「銀 行 経 営 と内部 管 理 」 で述 べ た よ う に,銀 行 経 営 の 今 日的課 題 と して 内部 課 題 を重 視 す べ き こ とを主張 し,そ の一 環 と

して,大 和 銀 行 ニ ュー ヨー ク事 件 か ら どの よ うな 教 訓 を引 き出 せ るか を考 え るのが,本 論 文 の 主 旨で あ る。

以 下,極 力 推 論 を避 け,事 実 関係 の積 み 重 さね の 中 か ら問 題 の核 心 に迫 っ て み た い。

1事 件 の 概 要 と問 題 点

(1)当 初 の 報 道 か ら

1995年9月26日(火)日 本 経 済 新 聞(夕 刊)は,

「大 和 銀,1100億 円 の 損 失

(3)

一 米 国 債 投 資 に 失 敗 」

と題 し て,次 の 内 容 の 報 道 を行 っ た 。

大和 銀 行 の 藤 田彬 頭 取 は26日,大 阪 市 内 で 緊急 に記 者会 見 し,同 行 ニ ュー ヨー ク支店 の証 券 売 買 ・管 理 責 任 者 が 米 国債 投 資 の 失敗 に よ る損 失 を隠 蔽(い ん ぺ い) す るた め に保 有有 価 証 券 を無 断 で 売 却 し,約11億 ドル(約1100億 円)の 損 失 を被 っ た こ と を明 らか に した 。同 行 は これ を特 別 損 失 として95年9月 中間 期 で一 括 処 理 す るが,業 務 純 益 や 有 価 証 券,不 動 産 の 売 却 益 を計 上 す る こ とで 中間 期 の最 終 利 益 は 当初 予 想70億 円 を確 保 で きる と して い る。

損 失 は,同 行 ニ ュー ヨー ク支店 の エ グゼ ク テ ィブ ・バ イ ス ・プ レ ジデ ン トと し て米 国債 の 売 買 ・管 理 を統 括 して い た井 口俊 英氏 が84年 か ら11年 間 にわ た り,簿 外 で 無 断 売 買 して 生 じた 損 失 を同 行 保 有 の投 資 有 価 証 券 を売 却 す る こ とで 穴 埋 め して い た こ とが 原 因。井 口氏 は取 引 確 認 書 の隠 匿 や 有価 証 券残 高 証 明 の偽 造 に よ り,損 失 を隠 して い た 。

同 行 は現 在,事 件 の 全 容 解 明 を進 め て お り,事 態 が す べ て 明 らか に な った 時 点 で,経 営 陣 を含 め た 責 任 者 の処 分 と,井 口氏 の刑 事 告 発 な ど法 的 措 置 を検 討 す る。 井 口氏 は25日 付 で懲 戒 免 職 とした 。(『 日本 経済新聞』1995年9月26日 夕刊) 事 実 は,後 掲 図 表 「大 和 銀 行 事 件 の 経 緯 」 で 示 し て い る よ う に,同 年7月 24日 か ら9月26日 大 阪 で の 緊 急 記 者 会 見 ま で の 間 に,様 々 な 隠 蔽 工 作 が 行 わ れ た の で あ る。

金 融 専 門 週 刊 紙 『ニ ッ キ ン』1995年9月29日 号 は,邦 銀 の 最 近 の 失 敗 事 例 を 掲 げ て本 事 件 の 金 額 の 余 りの 大 き さ を 指 摘 す る と共 に,「 リス ク 管 理 の 基 本,逸 脱 」 と題 し て,専 門 紙 の 立 場 か ら解 説(下 記)を 加 え て い る。

邦銀の主 な取 引失敗例 発 覚 時 期

第 一 勧 銀 シ ンガ ポ ー ル支 店82年9月 富 士 銀 ニ ュ ー ヨ ー ク支 店84年11月 第 一勧 銀 ロサ ンゼ ル ス支 店91年12月 大 和銀 ニ ュー ヨー ク支 店95年9月

損 失 額 97億 円 115≫

30〃

1100〃

取引 内容 外 為取 引の為替差損 外為取 引の為替差損 外為取 引の為 替差損 米 国債売 買損

大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク 事 件 の 教 訓49

(4)

リ ス ク 管 理 の 基 本,逸 脱

解 説 ○ …大 蔵 省 で は,行 員 個 人 に よる不 祥 事 件 とは い え,住 専 処 理 な ど不 良 債 権 問 題 で 金 融 シス テ ム の信 頼 性 が 揺 らぎつ つ あ る だ け に,今 回の 事 件 で不 安 感 が 増 幅 す る懸 念 を重 大 に受 け止 めて い る。 蔵相 ・日銀 総 裁 談 話 で 内外 の市 場 関係 者 に冷 静 な対 応 を要請 した が,今 後再 発 防 止 と金 融 シス テ ム の信 頼 回復 に全 力 をあ げ て取 り組 む構 えだ 。

金 融機 関 で 増 大 す る デ リバ テ ィブ な どの簿 外 取 引 で は,リ ス ク管理 の組 織 ・体 制,フ ロ ン トとバ ックオ フ ィスの 相 互 牽 制,経 営 陣 の リス ク管 理 に対 す る認 識 が 極 め て重 要 と され る。大 蔵 省 は事 態 を重 視 して デ リバ テ ィブの リス ク管 理 に関 す

る通 達 を出 し,注 意 を喚 起 す る。

11年 間 の長 期 間 も不 正 が発 覚 しなか っ た の は,債 券 売 買 と保 管 業 務 を同一 人 物 に任 せ っ き りに して いた こ とが 最 大 の原 因 とい え る。 都 銀 レベ ル で は フ ロ ン ト・

バ ッ ク に ミ ドル を加 え,リ ア ル タ イ ム で デ ィー ラー の取 引 をチ ェ ックす る体 制 を 敷 いて い るが,同 行 の場 合 は「根本 的 な管 理 体 制 が お粗 末 の一 言 に つ き る」(大 蔵 省 幹 部)。 偽 造 に つ い て も 「取 引確 認 書(コ ン フ ァー メー シ ョ ン)は 証 券 会 社 に よ っ て紙 質 も体 裁 も違 い偽 造 で きな い 。単純 な コ ピー 用 紙 で 通 用 して い た とは通 常 の管 理 体 制 か ら は想 像 で きな い 」(都 銀 幹 部)と,同 行 の組 織 構 造 に疑 問 を投 げ か け る。 同行 で は 「米 国 債投 資 を他 に任 せ るデ ィー ラーが い な か った。 有 能 で信 頼 して い た 」とい うが,人 事 管 理 を含 め,今 後 実 態 の全 容 解 明 と とも に同行 の経 営 責 任 は厳 し く問 わ れ るの は避 け られ な い。

大蔵 省 は定 期 検 査 の一 環 で94年5月 に同行 の海 外 検 査 に着手 。ニ ュー ヨー ク支 店 の ほか ロ ス ア ンゼ ル ス支 店,サ ン フ ラ ン シス コ支 店 に検 査 官 を派 遣 した が 「簿 外 取 引で 隠 ぺ い工 作 が巧 妙 で発 見 で き なか った 」(大 蔵 省 幹 部)。 海 外 検 査 は本 体 へ の金 融 検 査 と合 わ せ て 支店,現 法 な ど複 数 拠 点 を検 査,支 店 長 な どに ヒア リン グ を実施 す るが,予 告 して 現地 に出 向 くシ ス テ ム。抜 き打 ち検 査 と違 い,予 告 の 場 合 は資 料 や帳 票 類 な どを事 前 に そ ろ え る た め検 査 す る側 も受 け る側 も 「緊張 感 に欠 け る」との 指摘 が あ る。 今 後,運 用 と内部 事 務 の相 互 牽 制 チ ェ ック に重 点 を 置 く意 向 だ が,検 査 シス テ ム の見 直 し も課 題 とな ろ う。

(『ニ ッキ・ン』1995年9月29日 号)

(5)

② 事件 の経緯

3)

こ こで は,論 者 が 改 め て作 成 す る よ りは久 原正 治氏 の近 著 の 図 表(下 記) 図表 大和 銀行事件の経緯

1983年 1984年 1986年

1987年

1992年11月 1993年1月 1993年11月 1994年 春

1994年8月 1995年

7月24日 7月26日 7月3ユ 日 8月8日 9月18日 9月26日 10月8日 10月9日

10月19日

11月2日

11月3日

NY支 店 で5万 ドル を こす 損 失 。 密 か に米 国債 を売 り穴 埋 め 開 始 。 大 和 信 託 簿 外 取 引 で3100万 ドル の 損 失 。 幹 部 ぐるみ で穴 埋 め。

(支店)債 券 保 管 業 務 ダ ウ ンタ ウ ン ・売 買業 務 ミッ ドタ ウ ン と分 離 。 井 口俊 英 被 告 はダ ウ ン タ ウ ンで 売 買続 け る。

(信 託)簿 外 取 引 の損 失 が9700万 ドル に膨 れ,ケ イ マ ン法 人 に損 失 飛 ば し。 グル ー プで 穴 埋 め開 始 。

(支店)NY連 銀 検 査 。ダ ウ ンタ ウ ンで の売 買 を偽 装(支 店 ぐるみ)。

連 銀 検 査終 了 。監 査 制 度 の不 備 で改 善命 令 。 (支店)擬 装 工 作 を連 銀 に報 告 。

連 銀 処 分 を検 討 す るが,大 和 銀 の対 応 を信 頼 し撤 回。 行 内 で は井 口被 告 と歴 代 支 店 長 を誼 責 処分 。

(信託)ケ イ マ ンで の損 失 穴 埋 め終 了 し法 人 解 散 。

井 口被 告 の 経 営 陣 向 け(頭 取 宛)告 白状 。11億 ドル の損 失 。 大和 銀500億 円 の第 三 者 割 り当 て増 資 実施 。

6月30日 現 在 の 連 銀 あ て虚 偽 の コー ル レポ ー ト提 出 。 藤 田彬 頭 取 が 西 村 吉 正 銀 行 局 長 に事 件 報 告 。

大 和 銀 はNY連 銀 に事 件 報 告 。

大 和 銀 は緊 急 記 者 会 見 で 損 失 公 表 。FBIが 井 口被 告 を逮 捕 。 (信託)銀 行 ぐるみ の穴 埋 め発 覚 。

緊急 取 締 役会 で,藤 田頭 取 退 任,安 倍 川 相 談 役 の来 年3月 をめ ど に した 退 任,海 保 副 頭 取 が 同 日付 で 頭 取 就 任 を発 表 。

NY連 邦 地 検 が井 口容 疑 者 を背 任 ・文 書 偽 造 容 疑 等 で略 式起 訴 。罪 状 認 否 で有 罪 認 め る。

銀 行 監 督 当局 は大 和 銀 に90日 以 内 に米 国 拠 点 を全 面 撤 退 す る か売 却 す る よ う命 令 。

NY連 邦 地 検 大 和 銀 を重 罪 隠 匿 ・詐 欺 な ど24の 罪 でNY連 邦 地 裁 に告 発。 津 田 昌宏 前NY支 店 長 を逮 捕。

大 蔵 省 大 和 銀 に た い し銀 行 法26条 に 基 づ く業 務 改 善 命 令 。 大 和 銀 と住 友 銀 は業務 提 携 発 表 。 安 倍 川 澄 夫 相 談 役辞 任 。

(資 料 『日本 経 済 新 聞 』 『朝 日新 聞 』 『週 刊 金 融 財 政 事 情 』 「週 刊 ニ ッ キ ン 』に よ り作 成) (久 原 正 治 『銀 行 経 営 の 革 新 』 学 文 社,1997年,129ペ ー ジ)

大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク 事 件 の 教 訓51

(6)

を借 りて,先 ず 一連 の 出 来 事 に注 目 して み よ う。

今 回 の事 件 発 生 以 前 の問 題 に つ い て は,別 に論 ず る必 要 が あ りそ うだ 。 ま た,連 銀 との関 係 に つ い て は更 に突 っ込 ん で議 論 して み た い 。

(3)事 件 の 問 題 点

事 件 表 面 化 か ら3週 間 後 の 日本 経 済 新 聞(95.10.s)は,「 損 失 事 件3つ の ナ ゾ 」 と題 し て下 記 記 事 を 掲 載 し た 。

本 稿 は 事 件 の 真 因 追 及 が 課 題 で あ り,ま た 本 記 事 に つ い て も更 に究 明 す べ き事 柄 が 多 い と思 わ れ るが,「事 件 発 生 直 後 に お け る 問 題 点 の 認 識 は どの よ う な もの で あ っ た か 」 を理 解 す る た め に,以 下 に 引 用 して お こ う。

損 失 事 件3つ の ナ ゾ

大 和 銀 行 の ニ ュー ヨー ク支店 と信 託 子会 社 で 起 こった2つ の 巨額 損 失 に は,日 本 の本 部 が どの程 度 まで 関与 して い た か な ど,疑 問点 や不 自然 な 点 が 多 い。大 和 銀 側 は 「わ か らな い」 あ る い は 「捜 査 との 関連 で まだ 言 え な い」 と説 明 を逃 れ て い る。米 捜 査 当局 や 日米 金 融 当局 の解 明 を待 つ しか な い 面 が あ るが,と りわ け不 可 解 な3つ の な ぞ につ い て ま とめ て み た。

その1お 粗 末 な調 査 本 部 も黙 認 か

【2つ の 巨額 損 へ の 日本 本 部 のか かわ り】 井 口容 疑 者 が 起 こ した 事 件 は単 独 犯 行 と説 明 され て きて い るが,損 失 額 が 大 き く手 口が 複 雑 で あ るた め に,外 部 また は内 部 に共 犯 者 が い るの で はな い か との見 方 は根 強 い 。そ の連 想 で,本 部 も不 正 を黙 認 し隠 蔽(い んぺ い)し よ う と して い た の で ない か,と 米 捜 査 当局 な どが 疑 っ て い るの は 間違 い な い 。

井 口容 疑 者 が事 件 を告 白 した後 の行 内 調査 が お粗 末 だ った こ と も,こ う した 疑 惑 に油 を注 い で い る。当初 の調 査 の た め に派遣 した の は,ニ ュ ー ヨー ク支 店 長 と

して長 年 にわ た って 井 口容疑 者 の 直i接の上 司 で あ り,発 覚 当時 も東 京 で国 際 部 門 を担 当 して いた 山 路 前 常 務 だ った 。 「黙 認 して い た か ら初 動 調 査 が 鈍 った の で は な いか 」 との 疑 いが 浮 上 して い る。

後 か ら表 面 化 した 米 信 託 子 会 社 ダ イ ワ ・バ ンク ・トラス トの簿 外 取 引 に よ る巨 額 損 失 に つ い て は,日 本 の 本部 の 関 与 が は っ き りして い る。84年 に内部 で発 覚 し た段 階 で東 京 の国 際 総 務 部 へ報 告 が届 き,本 部 の 黙認 の も とに トラ ス トの 当時 の

(7)

大 和 銀 行 の ニ ュ ー ヨー ク巨額 損 失 の 実態

監 督

大和銀行 国際 部門(東 京)

監督 大和銀行

r劇'ニ ュ ー ヨ ー ク 支 店 米 国 債 の 売 買 注 文

(11年 『昔i31了巨可上ユ」二)

井日容疑 者

月文弓1石崔謡忍書

証 券 会 社 30社 以L

偽造残 高 証 明書

証券管理担 当

有価 証券 の保管銀行

繭 ダ イ ワ ・バ ン ク ・ ト ラ ス ト 闇

損 失 を 移 転 (9700万 ドル) 曾

残 高 証 明 書

ニ ュ ー ホ ー プ ・イ ン タ ー

ナ シ ョ ナ ル87轍 立

(ケ イ マ ン)94年 解 散

1

運 用

1

u

A

運 出

用 融

益 資

保管銀行

大和 銀の海外 r会 社什 数社) 米証券 会社 ・企剰

(『日本経済新聞』1995年10月6日)

社 長 が簿 外 取 引 を続 け て損 を消 そ う と した 。

しか し損 は膨 らむ ばか りだ っ た た め,本 部 の 国 際部 門 の トップだ った 副 頭 取 の 指 示 の下,87年 に別 会社 に損 を移 して処 理 に入 った。 この とき安 部 川 会 長(当 時 頭 取)も 報 告 を受 けた が,簿 外 取 引 の件 は社 内 処 分 や 当局 へ の報 告 もな く,本 部

ぐる みで 水 面 下 で の処 理 を図 った の で はな いか との疑 いが 残 っ て い る。 その2な ぜ 頭 取 に 直訴

【井 口容 疑 者 の不 可 解 な行 動 】 井 口俊 英 容 疑 者 が とっ た行 動 に は疑 問 も多 い。

た と えば 「告 白文 」 を親 しい 関 係 に あ っ た安 井 健 二 前 副 頭 取 や 山路 弘 行 前 常 務 , ニ ュ ー ヨ ー ク前 支 店 長 ら直 属 の 上 司 に で は な く

,な じみ の な い 藤 田彬 前 頭 取 に

"頭 越 し"に 郵 送 した

。 また,過 去 の 巨額 損 失事 件 の よ うに逃 亡 を図 らな か った の も疑 問 だ 。

「(告白 文 で)銀 行 が 隠 蔽 す る よ うに仕 向 け,"免 罪 符"に 仕立 て るつ も りだ っ た の で は」 … …。 同行 幹 部 は告 白文 を読 ん だ感 想 を こ う漏 らす。

井 口容 疑 者 は告 白文 の 中 で,米 信 託 子会 社,ダ イ ワ ・バ ン ク ・トラス ト(ニ ュ 大和銀行ニューヨーク事件の教訓53

(8)

一 ヨー ク)の9700万 ドル に及 ぶ 損 失 が 別 会 社 に移 され た後,世 界 中 の大 和 銀 グ ル ー プ会 社 の 出 資 金 や 運 用 益 で 穴 埋 め され た経 緯 に言 及 して い る。

「自分 が 隠 して きた損 失 も"ト ラ ス ト方 式"で 穴 埋 め し,表 面 化 させ ない で 済 ま せ な い か。 そ こに一 屡(い ち る)の 望 み をつ な いだ 」 と見 る こ と もで きる。 逃 亡

しな か った こ と も,そ れ な ら説 明 が つ く。

しか しそ れ な ら,井 口容 疑 者 を良 く知 り昇 進 に も手 を貸 した とい う国際 部 門 ト ップの安 井 前 副 頭 取 に告 白状 を送 る方 が 自然 に も思 え る。 トラス トの処 理 は同部 門 主 導 で 実施 され た こ と もあ り,頭 取 へ の直 訴 はや や 不可 解 な面 が あ る。

一 部 の幹 部 しか 知 らな か った トラス トの損 失発 生 を,な ぜ 井 口容 疑 者 が知 って い た の か。関 係 者 の 話 を総 合 す る と,井 口容 疑 者 と トラ ス トで の 損 失 の 主 役 の 元 行 員Yは ほ ぼ 同年 代 。大 和 銀 で は人 材 が少 な い デ ィー リン グ分 野 で,互 い に ラ イ バ ル心 を抱 いて い た とい う。

「負 けた くな い」とい う競 争 心 が 強 ま るな か で,ラ イバ ル の手 の 内 を知 ろ う とす る。井 口容 疑 者 とYが 懇意 に して い た ブ ロー カー は同 一 人 物 で,こ の人 物 を通 じ て井 口容 疑 者 は トラ ス ト事 件 の概 要 を知 りえた との 見 方 もあ るが,は っ き りした

こ とは わか らな い。

その3「 飛 ば し」 処 理 税 務 問 題焦 点

【米 信 託 子 会 社 の損 失 飛 ば しの 実 態 は】大和 銀 行 の米 信 託 子 会 社,ダ イ ワ ・バ ン ク ・トラス トの9700万 ドル の 損 失 は,損 失 を別 会 社 に移 し替 え る 「飛 ば し」 の手 法 で 処 理 され た 。大 和 銀 と同行 の海 外 子 会 社 十 数社 が 処理 に関与 した模 様 で,損 失 の 隠 蔽(ぺ い)だ けで な く,税 務 上 で も問題 に な る可 能 性 を指 摘 す る向 き もあ る。

大 和 銀 の発 表 に よる と,ダ イ ワ ・バ ンク ・トラス トは84年,現 地 採 用 の元 行 員 が 権 限 外 の米 国 債 取 引 を簿 外 で実 施 し,3100万 ドル の損 失 を被 っ た のが 端 緒 。幹 部 も関 与 して,87年 に は損 失 額 が9700万 ドル に膨 らんだ 。

関 係 者 に よ る と,ダ イ ワ ・オ ーバ ー シー ズ ・フ ァイ ナ ン ス(香 港)な ど大和 銀 の海 外 子 会 社 十 数 社 は同 年,ケ イマ ン島 に 「ニ ュ ー ホ ー プ ・イ ンター ナ シ ョナ ル」

とい う受 け皿 会 社 を設 立 。

この会 社 は十 数 社 の 出資 金 や 融 資 資 金,合 わ せ て 約4億 ドル を運 用 し,運 用 益 を損 失 の穴埋 め に充 て た。 損 失 は94年 に解 消 した とい う。

大 和 銀 が 「飛 ば し」 を実 行 した 当時,日 本 で は大 手 銀 行 が 同様 の や り方 で不 良 債 権 を処 理 して い た の は確 か だ 。しか し,実 際 に は損 失 隠 し と同 じで あ り,"紛 飾 決 算"と み る こ と もで き る。

(9)

金融 筋 は 「受 け皿 会 社 に 出 資 した会 社 が 配 当金 を受 け取 らな か った場 合 は,寄 付 行 為 に 当た る可 能 性 が あ る」とみ て い る。 寄 付 が立 証 され れ ばy本 来 支 払 うべ

き税 金 が 支 払 わ れ な か った として,厳 しい追 徴 を受 け る こ とに な る とい う指 摘 だ 。 米 国 で は当 局 が 調 査 中 だ が,税 務 上 の 問 題 が 今 後 の 焦 点 の1つ に な りそ うだ。

(1「日本経済新 聞』1995年10月6日)

z住 友 銀 行 との合 併 問 題

大 和 銀 行 の不 祥 事 件 を複 雑 に した もの に,住 友 銀 行 との合 併 問題 が 急 浮 上 した こ とが 挙 げ られ る。

(1)合 併 報 道 の 発 端

1995年11月4日(土)y日 本 の4大 新 聞 各 紙 は一 面 トップ記 事 で,大 和 銀 行 と住 友 銀 行 の 合併 問題 が 浮 上 した こ とを報 じた。 大 和 ・ニ ュー ヨー ク の現 地 行 員 の不 祥 事 報 道(9.26)後,わ ず か40日 弱 の こ とで あ る。

なぜ,こ の よ うな事 態 に立 ち至 っ た の か。 当時,滞 米 中 の論 者 が 購 入 した 朝 日新 聞 国 際衛 星 版 は,次 の よ うな見 出 し を打 って い る。

「大和 銀,住 銀 と合 併 へ

97年 春 に も 金 融 不 安 解 消 狙 う

不 正 取 引事 件 撤 退 命 令 米 で の業 務 移 譲 」 そ して,次 の リー ド記事 を付 して い る。

米 国債 の不 正取 引 事 件 で米 金 融 当局 の追 及 を受 け て い る大 和 銀 行 は3日,将 来 の合 併 含 み で,都 市 銀 行 大 手 の住 友 銀 行 の経 営 支 援 をあ お ぐ こ とに な った,と 明 らか に した。1997年 春 に も合 併 す る見通 し。米 金 融 当局 が2日,不 正 取 引 に伴 う 損 失 を 隠 した こ と な ど を 理 由 に,大 和 銀 に対 し米 国 か ら全 面 的 に撤 退 す る よ う命 令 を出 した の に加 え,米 司 法 当局 も同 日,詐 欺,重 罪 隠 匿 な ど24の 罪 で 同 行 を起 訴 した。前 例 の な い厳 しい処 分 で,国 際部 門 が壊 滅 的 な打 撃 を被 る こ とに な った 大 和 銀 は,顧 客 へ の サ ー ビス維 持 な どの た め,同 じ関 西 に基 盤 を持 つ 住 友 に支 援

大和銀行ニューヨーク事件の教訓55

(10)

を要 請 し,住 友 も了承 した。住 友 側 は,大 和 銀 の持 つ都 銀 で 唯 一 の信 託部 門 な ど に魅 力 を感 じて お り,事 件 発 覚 前 の 今 年 春 ごろか ら,ひ そか に合併 を打診 して い た,と い う。 それ が 今 回 の事 件 を契 機 に,一 気 に実 現 に 向 けて動 き出 した。 実 現 す れ ば,来 年 春 に誕 生 す る東 京 三 菱 銀 行 を抜 い て,資 金 量 世 界 一 の 「スー パ ー バ

ンク」 になる。

そ して,関 連 記 事 として

「銀 行 本 体 を起 訴 米 地 裁 」

「国際 業 務 の改 善 を命 令 大蔵 省 」

「会 長 が辞 任 」

の3本 の 記事 を添 え て い る。

(『朝 日新 聞 国 際 衛 星 版 』1995年U月4日)

最 後 の 記事 は大 和 銀行 の 安 部 川 澄 夫 実 力 会 長 の こ とで,(11月)3日 付 で辞 任 し,相 談役 に退 いた こ とを報 じた もの で あ る。 この安 部 川 会 長 が住 銀 との 合 併 工 作 の推 進 者 で,米 国撤 退命 令 に際 して救 済 を申 し入 れ た とい わ れ る。

(2)そ の 後 の 論 評

そ の 後,大 和 ・住 友 の 合 併 問 題 は奇 妙 な 足 取 りを 辿 っ て い る。 こ の 詳 細 を 追 う こ と は,本 論 文 の 趣 旨 か ら外 れ る の で,11月4日 報 道 の 前 後 か ら始 め て 時 系 列 的 に各 種 の 論 評 を フ ォ ロ ー す る こ と に よ っ て 間 に 合 わ せ た い 。

95」0.5日 経

大 和 銀 頭 取 ・会 長 辞 任 へ

新 頭 取 に海 保氏 大 蔵 ・日銀OB迎 え入 れ 95.10.5日 経(夕)

安 部 川 大和 銀 会 長 公 職 か ら も退 く 大 商 副 会 頭 や 関 空 会 長

95.10.21週 刊 東洋 経 済

大 「野 村 銀 行 」 の 夢 は 遠 ざ か っ た か 95.10.28週 刊 ダ イヤ モ ン ド

さ さや

大 和 の 名 が 金 融 不 信 の 代 名 詞 と な っ て ウ ォ ー ル 街 で 曝 か れ 始 め た 早 期 合 併 95.11.9朝 日

56国 際 経 営 論 集No.141997

(11)

合併 へ 懸 案 だ らけ 大 和 銀 住 銀 容 易 で な い人 員 削 減

重 複 す る店 や取 引 先 丁〒員 らに強 い違 禾目感

・反 対 の署 名 も

・劣 る収 益 性

米 国 の15支 店 住 銀 に売 却 へ 2支 店 は閉 鎖

95.11.10ニ ッキ ン(日 本 金融 通 信) 金 融 再 編 一 気 に加 速 へ

住 友 銀,大 和 銀 の 米 業 務 を全 面 支i援 米 当 局,業 務停 止命 令 で

なぜ 住 友 銀 を選 ん だ の か

「支 援 しや す い 条件 」 決 め手 両行 会 長 の親 密 さ 米 国 で の 全 業 務 終 結 へ 大 和 銀

米 当局 が 厳 しい処 分 96年2月2日 まで 撤退 大 蔵 省 も業 務 改 善 命 令 95.11.13金 融 財 政 事 情

大 和 銀行 米 国 撤 退 の 波 紋

大 和 銀 行 ・住 友 銀 行 の記 者 会 見 要 旨 95.11.17ニ ッキ ン

大 和 銀 労 使 協 調 体 制 が カ ギ 80周 年 に向 け 自主 再 建

リス トラ具 体 策 着 手 へ 大 和 銀 グ ロー バ ル ・バ ン ク

住 友 銀,支 援 策 急 ぐ 大 和 銀 従 組

経 営 側 に意 見 書 提 出 頭 取 との協 議,早 期 に 大 輪 会(大 和 銀 取 引 先)の 声

大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク事 件 の 教 訓57

(12)

「関係 は変 わ らず 」

「合併 は混 乱 招 く」

95.12.1日 経 大 和 銀 頭 取 会 見

合 併 検 討,来 春 以 降 に

「米 で の裁 判 に全 力 」 96.4.13日 経

合 併 交 渉,長 期 化 へ 大 和 行 内 に反 対 論 住 友 「強 引 」避 け る 住 友 ・大 和 銀

合併 結論,秋 以 降 へ 96.7.9エ コ ノ ミス ト

ヤ メ タ じゃ す ま され な い 「住 友 」 「大和 」 の 合併

合 併 報 道 の根 拠/住 友 へ の反 発/大 和 の 「自主 独 立 」 気 風 96.ll.26エ コ ノ ミス ト

「ベ タ記事 で 明 らか に な った 『住 友=大 和 』合 併 騒 ぎの ウ ラの ウ ラ」 須 田慎 一郎(金 融 ジ ャー ナ リス ト)

タ イ で,住 友 銀 行 が 支 店 開 設 を認 可 さ れ た 。 他 の 有 力 邦 銀 を 押 し の け て, な ぜ 住 友 銀 行 が 選 ば れ た の か?の リー ドで 始 ま る こ の1996年11月26日 号 の 記 事(以 下 に略 記)に つ い て,著 者 の コ メ ン トを聞 こ う。

なぜs住 友 が …

〈タ イ政 府 は7日,日 本 興 業 銀行 な ど邦 銀3行 を含 む外 国 銀 行7行 に,現 地通 貨 バ ー ツ での 預 金 集 めや 融 資 な ど,す べ て の銀 行 業務 が で き る支 店(フ ル ブ ラ ンチ) の開 設 を認 可 した。 … …認 可 を受 けた邦 銀 は,興 銀 の ほか,第 一勧 業 銀 行 と住 友 銀 行 … …〉(1996年11月8日 付 『朝 日新 聞 』 朝刊)

筆 者 の確 認 して い る と ころ この 一 件 につ い て報 道 して い るの は,こ の 『朝 日』

の記 事 だ けの よ うで あ るが,こ の タ イ ・バ ン コ ク発 の1本 のベ タ記 事 が,報 じて い る内 容 は実 をい う と,昨 年 銀 行 業 界 を大 き く揺 るがせ た住 友 銀 行 と大 和 銀 行 と の 間 の"合 併 騒 動"と は い っ た い何 だ った の か,と い う こ とを大 き く示 唆 す る も

の だ った ので あ る。

(13)

そ もそ も,タ イ大 蔵 省 が タ イ 国 内 の邦 銀 の 支 店 に,フ ル ブ ラ ンチ 業 務 を認 可 し た の は,1952年 の三 井 銀 行(現 さ くら銀 行),62年 の 東 京 銀 行(現 東 京 三 菱 銀 行) 以 来 だ っ た。「大蔵 省 の 窓 口 とな っ た の は,国 際 金 融 局 。国 金局 が,タ イ大 蔵省 に 対 して リコ メン デ ー シ ョン を行 った 中 に,三 和 銀 行 の名 前 は なか った 。 そ もそ も 大 蔵 省 に与 え られ た推 薦 ワク は3行,つ ま り,大 蔵 省 は三 和 を落 と して住 友 を入

れ た 」(大 蔵 省 銀行 局 関 係 者)

そ の結 果,タ イ 大 蔵 省 は,日 本 の大 蔵 省 の意 向 を受 け る形 で,そ の3銀 行 に認 可 を与 えた の で あ る。

ギ ブ&テ ー ク

なぜ,大 蔵 省 は,三 和 を落 と して 住 友 を入 れ た の か?そ の 辺 の 事 情 に つ い て,大 蔵 省 銀 行 局 幹 部 はズバ リ,こ う断 言 す る。

「住 友 銀 行 は,例 の 大和 銀 行 事 件 の 処 理 にあ た って,大 蔵 省 に非 常 に協 力 的 だ っ た か ら」

そ して 大和 銀 行 が,こ の撤 退 に伴 う一 連 の作 業 の 協 力 を住 友 銀 行 に 要請 した こ とが き っか け に な っ て,こ の両 行 の合 併 話 が 急 浮上 して きた の で あ る。

「あ の 時点 で は,大 和 銀 行 の信 用 力 の 著 しい低 下 が,日 本 の 金 融 シ ス テ ム を根 底 か ら揺 さぶ りか ね な い状 況 に あ った,と 言 え る。 そ れ を食 い止 めた の は,住 友 銀 行 の英 断 だ っ た」(大 蔵 省 関 係 者)。

「今 回,住 友 が,タ イ にお い て フル ブ ラ ンチ業 務 が行 え る よ う にな った の は,大 蔵 省 との間 で の"ギ ブ&テ ー ク"的 な意 味 合 いが 強 い,と 考 えて もら って もい い」

(同)

そ うな っ て くる と,住 友 銀 行 と大 和 銀行 の合 併 は,一 つ の決 着 が つ け られ た, と考 え て い いだ ろ う。 つ ま り,住 友 銀 行 は,合 併 の 一 件 に関 す る上 で の借 りを返 して も らった 以 上,一 一 そ れが,た とえ一 部 で あ っ た と して も と りあ え ず, この 合併 は 白紙 に も どった,と 考 え て い い の で は な いだ ろ うか 。

誰 も手 を出 さ な い

「そ う した 点 で言 え ば,信 用 不 安 も起 きず,い くら結 果 オ ー ラ イ とは い え,大 蔵 省 の"意 向"に さか らった 大和 銀 行 に対 して は手 痛 い シ ッペ返 しが くる の で はな

い だ ろ う か 」(大 手 都 銀 首 脳)

事 実,今 回 の一 件 で,興 銀 や第 一 勧 銀 で は な く,三 和 銀 行 が 落 とされ た の も, それ な りの理 由が あ った か ら,と され て い る。

「木 津 信 組 処 理 や 住 専 の 日住 金 処 理 に関 して,三 和 銀行 は,極 め て大 蔵省 に非 協 大和銀行ニューヨー ク事件の教訓59

(14)

力 的 だ った 」(大 蔵 省 関 係 者)

とい った こ とが,今 回 の一 件 に大 き く影 響 して い る,と い うの で あ る。

「い ず れ に して も,タ イ の フル ブ ラ ンチ業 務 認 可 の 一 件 で住 友 一 大 和 の 合 併 は, 大蔵 省 の 意 向 が働 いた もの,と い う こ とが 銀 行 業 界 の 中 で は明 らか に な っ た。 そ

う した こ とか ら も,将 来 的 に,住 友 以 外 の銀 行 が 大 和 銀 行 に触 手 を伸 ば す こ と は,ち ょっ と,躇 躇 せ ざ る を得 な い だ ろ う」(大 手都 銀 首脳)

つ ま り,大 和 銀 行 は 自 らの 合 併 戦 略 に つ い て,将 来 的 に全 くの フ リーハ ン ドと い う こ とで は な い,と い う こ と も明 らか に な った よ うだ 。

(須 田慎 一 郎 「ベ タ記 事 で 明 らか に な った 『住 友=・大 和 』合 併 騒 ぎの ウラ の ウ ラ」

『エ コノ ミス ト』1996年11月26日 号)

ま こ とに,一 件 のベ タ記事 か ら これ だ け の こ とを推 論 した優 れ た論 評 で あ る。 論 者 と して も,こ の論 評 を もっ て大 和 銀 行 の住 友 銀 行 との合 併 問題 の の ま とめ に代 え させ て頂 きた い。

(3)ジ ャパ ン ・プ レ ミアム 再 燃 の 問 題

1995年9月28日,早 くも 日本 経 済 新 聞 は 「邦 銀 調 達 金利 一 段 と上 昇,ユ ー ロ市 場 『銀行 間 』0.25%程 度 上 乗 せ,大 和 銀 損 失 な ど響 く」 と報 じた 。

ジ ャパ ン ・プ レ ミア ム と は,邦 銀 が ユ ー ロ市 場 等 で 欧 米 の 銀行 あ る い は機 関 投 資 家 か ら外 貨 資 金 調 達 を行 う際 に,欧 米 一 流銀 行 の 調 達 金利 に付加 され る上 乗 せ 金 利 分(朝 日現 代 用 語 『知 恵 蔵 』1997年)で あ る。

石 油 危 機 当時 の1974年,ド ル不 足 の元 で邦 銀 は最 大 約2%の プ レ ミア ム を 要 求 され た。 当時 これ を ジ ャパ ン ・レー トと呼 ん だ 。

大 和 銀 シ ョッ ク は住 専 問題 と相 倹 っ て,信 用 度 の 低 い銀行 で は一 時1%に も及 ん だ とい わ れ る。 国際 金 融 市 場 の不 安 を早期 に解 消 す る必 要 に迫 られ て, 大 蔵 省 指 導 に よ る住 友 銀 行 ・大 和 銀行 合 併 策 が 企 図 され た こ とは,今 や 定 説

とな って い る。

この無 理 な 合併 工 作 が,後 に今 日の 実 質 的 破 談 に つ なが っ た こ とは想 像 に 難 くな い 。 しか し,昭 和40年 当 時 の寺 尾威 夫 頭 取 が 信 託 分 離 の 当局 指 導 に従

(15)

わ ず,信 託 併 営 を守 り抜 い た こ とに 対 す る後 遺 症 は ,今 また 「お 上 の ご意 向 に逆 う銀 行 」 と し て,厳 し い"い じ め"に 遭 う こ と を覚 悟 し な け れ ば な ら な い だ ろ う。

3問 題 の ポ イ ン トの 所 在

都 市銀 行3か 店 の支 店 長 を経 て,本 部 の 主任 検 査 役,そ して海 外 支 店 全13 か店 をイ ンタ ー ナ ル ・オ ー デ ィタ0と して2年 間 に亘 って 自 ら臨 店 指 導 して 来 た論 者 として は,一 連 の報 道 に的 確 さ を欠 く もの が少 な くな い こ とに,か

な りの 不 満 が あ る。

教 員 転 出 前 の総 研 在籍 中 は,や や 名 目的 な が ら国 際 業務 ア ドバ イ ザ ー の 肩 書 を貰 っ て い た が,専 任 教 員就 任 後 も毎 年1回 以 上 渡 米 してお り,昨 年11月 に はニ ュ ー ヨー ク を訪 問,若 干 の ヒア リング を行 っ て きた。

(1)米 金 融 監 督 当 局 の 懐 い た 疑 問

次 頁 の 表 は1995年10月5日 付 の 日 本 経 済 新 聞 記 事 で あ る 。 事 件 公 然 化 (9.26)後,10日 も経 た な い 時 点 の 記 事 で あ る。 新 聞 社 の 機 動 力 に つ い て は 流 石 と評 価 した い が,関 連 記 事(こ こ で は省 略)を 見 て も,「 何 を根 拠 に これ ら の 問 題 点 が 法 令 違 反 と さ れ る の か 」 の 具 体 的 説 明 は 全 くな い。

こ の 時 期,わ ず か に 見 られ た 的 確 な 論 評 に は次 の よ う な もの が あ る

。 Y(金 融 ア ナ リス ト)FRBの 制 度 規 定 の1つ にFBSEA(外 銀 監督 法)と い う 法 律 が あ って,そ の 中 に イ ンタ ー ナ シ ョナ ル ・バ ン キ ン グ ・オペ レー シ ョン に関

して レギ ュ レー シ ョ ンKと い う規 定 が あ る。

この規 定 は,マ ネ ー ロ ン ダ リ ング(資 金 洗 浄) ,ア ンセ ー フ・バ ン キ ン グ(非 安 全 取 引),ア ン サ ウ ン ド・バ ン キ ン グ(不 健 全 取 引)の3つ を 阻 止 す る た め に あ っ て,大 和 銀 行 の場 合,11億 ドル に及 ぶ 米 国債 の不 正 取 引 に つ い て,ア ンセ ー フ, ア ンサ ウ ン ドの2つ に抵 触 す る と命 令 書 で は っ き り言 及 され て い る。

(『週 刊東洋経済』1995年11月11日 号,匿 名座談会記 事,56〜57ペ ー ジ) 大和銀行ニューヨーク事件の教訓61

(16)

米 金 融 監 督 当局 が 問 題 視 して い る4つ の ポ イ ン ト

問題点

大和銀行 の説 明 米金融監督局 の見方

損失発生 の報 告 を95年9 全容 解明 に時間がかか っ 犯罪的行為 の報告 を迅速

月 まで し なか った 点 た に しな か った こ とは法 令

違 反

95年6月30日 付 の業 務 報 7月24日 に井 口元行 員 の 事件発生 を知 りなが ら不 告 書(7月 末 提 出)で 事 告 白文 が 届 い た 直 後 で, 正確 な報告書 をその まま 件 に触 れ な か った 点 正 確 な事 実 は つか め て い 提 出 したのは問題

な か っ た

証 券管理部門 と市場取引 93年11月 に 当局 の指 導 に 実質 的 に は分 離 して い な 部 門 の分離 基 づ い て分 離 した か っ た

井 口元行 員が最近 まで米 藤 田頭取 への告 白文が届 支店関係者が以前か ら知 国債取 引 を続 けて いた点 い て知 った っ て い た可 能 性 が あ る

(『日本経済新聞』1995年10月5日)

こ の 記 事 に して も,レ ギ ュ レ ー シ ョ ンKの 第 何 条 第 何 項 に 違 反 し て い る 云 々 な どの 注 記 が な い と理 解 し に くい 。

ま た,マ ネ ー ロ ン ダ リ ン グ の 問 題 は,「 史 上 最 悪 の 犯 罪 銀 行 」 とい わ れ た BCCI(BankofCreditandCommerceInternational)(1991年7月5日,

イ ン グ ラ ン ド銀 行 が 営 業 停 止 ・資 産 凍 結 を命 令)で 問 題 と な り,大 和 の 井 口 被 告 が 大 和 銀 行 か ら資 金 窃 取 を した 際 の 手 口 で も あ っ た よ うだ が,そ の 限 り の 問 題 に終 っ た 。

巨 額 の 資 金 異 動 を 伴 っ て い た だ け に,BCCI事 件 の 後 遺 症 で 問 題 と な っ た の だ ろ う。

レ ギ ュ レ ー シ ョ ンKの 内 容

手 元 に あ るBoardofGovernorsoftheFederalReserveSystem,Regula‑

tionK,InternationalBankingOperations,12CFR211,asamended

effectiveMay24,199!(い わ ゆ る レ ギ ュ レ ー シ ョ ンK,本 文 の み で28ペ ー ジ, StatutoryProvisionsを 含 め て55ペ ー ジ)に よ り,内 容 を 若 干 見 て み よ う 。

(17)

SubpartAと し て,InternationalOperationsofUnitedStatesBanking

Organizationsが あ る 。 こ の 中 に はEdgecorporationが 含 ま れ る

。(Section 211・4㎜EdgeandAgreementCorporationLs)AgreementCorporationsは

FRA(FederalReserveAct,連 邦 準 備 法)の 下 でFRB(FederalReserve Board,連 邦 準 備 制 度 理 事 会)の 合 意 を 得 た 会 社 で あ る

Edgecorporationsと はEdgeActCorporationsの こ と で あ る

従 っ て,邦 銀 の 子 会 社 で 米 国 で 設 立 を 認 め ら れ た 国 際 金 融 専 門 会 社(米

の 法 人)は,当 然 レ ギ ュ レ ー シ ョ ンKが 適 用 さ れ る 。

SubpartBは,ForeignBankingOrganizationに 対 す る も の で あ る

Section211.21Authority,Purpose ,Scopeで は,以 下 の よ う に 述 べ て い る 。

(a)Authority.ThissubpartisissuedbytheBoardofGく)vernorsofthe FederalReserveSystem{"Board")undertheauthorityoftheBankHolding CompanyActof1956("SHCF")andtheInternationalBankingActof1978 ("SSA"}.

1956年 銀 行 持 株 会 社 法 と は,次 の よ う な 内 容 で あ る

BankHoldingCompanyActof1956:appliedtoanycorporationcontrol ling25percentormoreofthevotingsharesofatleasttwobanks

,or otherwisecontrollingtheelectionofamajorityofthedirectorsoftwoor

morebanks.Thelawformulatedstandardsfortheformationofbankholding companies.Thesecompanieswerestrictlylimitedtothebusinessofbanking

, managingbanks,andprovidingservicestoaffiliatedbanks .

こ の 法 律 に は,1966年 改 正 法 と1970年 改 正 法 が 付 い て い る(下 記)

BankHoldingCompanyActAmendmentsof1996:establisheduniform

standardsforbankagenciesandthecourtinevaluatingthelegalityofbank

*EdgeActCo叩orationn .(米)エ ッ ジ 法 会 社:国 際 金 融 業 務 に 専 門 的 に 従 事 す る こ と を 目的 と し て 設 立 さ れ た 金 融 機 関 で,銀 行 系 の 子 会 社 。1] .919年 に エ ッジ上 院 議 員 の提 案 に よ る法 令 に 基 づ き,連 邦 準 備 制 度 理 事 会(FederalReserveBoard)に よ り設 立 許 可 を 受 け た も の で,レ ギ ュ レ ー シ ョ ンKの 規 制 は 受 け る が,国 内 銀 行 に 適 用 さ れ る 法 ・規 制 か ら免 除 され る。(『最 新 英 語 情 報 辞 典 』 小 学 館,1986年)

大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク事件 の 教 訓63

(18)

holdingcompanyacquisitions.

BankHoldingCompanyActAmendmentsof1970:endedtheexemption fromtheBankHoldingCompanyActthatone‑bankholdingcompanieshad enjoyedsince1956.Thislastamendmentclearlyregulatedtheownershipof banksharesandlimitedbankholdingcompanyentriesintoactivitiesrelated onlytothebusinessofbanking.

1978年 国 際 銀 行 法 と は 下 記 の 内 容 あ る 。

InternationalBankingActof1978:federallegislationdesignedtoremove manyofthecompetitiveadvantagesthatforeignbankshadovertheir domesticcounterparts.TheFederalReserveBankisnowauthorizedto

imposereserverequirementsonforeignbanks,forexample,andforthefirst timetherearerestrictionsontheirabiliytotakedepositsnationwide.Its basicpurposeistoapplytheMcFaddenActof1927,whichforbidsbranching byAmericanbanksacrossstatelines,toforeigrlbanks.Untilpassageofthis newact,foreignershavebeenfreetoopenbranchesinanystatewhich allowedthemin.

定 義 は い ず れ もJerryM.Rosenberg,DictionaryofBanking&Financial

Services,SecondEdition,JohnWiley&Sons,NewYork,1985に っ た 。

さ て,SubpartAのInternationalOperationsoftheUnitedStates

BankingOrganizationsに し て は ど の よ う な 義 務 が 課 ら れ て い る の で

う か 。

に 挙 げ たSection211.1の(b)、purposeで は 次 よ う に 規 定 し て い る 。

{b)Purpose.Thissubpartsetsoutrulesgoverningtheinternationaland foreignactivitiesofU.S.bankingorganizations,includingproceduresfor establishingforeignbranchesandEdgecorporationstoengagelnznterna‑

tionalbankingandforinvestmentsinforeignorganizations.

Section211,7のSupervisionandReportingの(c)Reportsで は 報 告 義 務 の み を述 べ て い る だ け で,問 題 の 事 故 の 報 告 に つ い て の 規 定 は見 当 らな い 。 あ る の は 各 四 半 期 末 後30日 以 内 に 株 式 の 異 動 と子 会 社 を 含 め た 活 動 を報 告 せ よ

(19)

と い う こ と だ け で あ る 。

レ ギ ュ レ ー シ ョ ンKに 付 随 す るStatuoryProvisions(制 定 規 定)を 見 て み る と ・FederalReserveActのSection25(a)Bankin£CorporatinsAutho . rizedtoDoForeignBankingBusinessの 中 で

,24,CriminalOffensesof Directors,OfficersandEmployeesと い う 規 定 が あ る が

,"beimprisoned fornotlessthantwoyearsnormorethantenyears

,andmayalsobefined

notmorethan$5,000,inthediscretionofthecourt・ と 示 し て い る だ け で あ る 。

そ の 他 の 個 所 で も 事 故 の 報 告 に 関 す る 規 定 は 見 当 ら な い

。 さ て,一 連 の 報 道 を2年 間 フ ォmし て 来 た 論 者 に と っ て

,や や 遅 れ は し た が,ま と も に 法 的 根 拠 を 裏 付 け と し た 議 論 に お 目 に 掛 か っ た の が

,水 野 隆 徳 氏(元 富 士 銀 行 勤 務,国 際 金 融 評 論 家)の 著 書 『ニ ュ ー一ヨ ー ク 発 大 和 銀 行 事 件 』で あ る(下 記 記 事 参 照)。 こ れ は,FRBの 告 発 状 を 引 用 し た も の で あ

り,当 然 な が ら 情 報 は 正 確 で あ る 。 1以 内 の 報 告 義 務 を 怠 っ た

「FRB規 則K211.24(f)は,ア メ リ カ で 業 務 を 行 う 外 国 銀 行

,な ら び に そ の 支

店,出 張所 に対 して,刑 事事 件容疑が発覚 してか ら30日以 内 に向法当島 お ま参 看

RBに 報 告 す る こ とを求 め て い る。 この規 定 が あ る に もか か わ らず

,大 和 銀行 本 店 お よび ニ ュー ヨー ク支 店 は適 切 な犯 罪 報 告 書 を提 出 せ ず ,司 法 当局 な らび に金 融 当局 に対 し,大 和 銀 行 本 店 とニ ュー ヨー ク支 店 の安 全性 と健 全性 に重 大 な影 響

の あ る事 件 に つ い て の 報 告 が遅 れ た 」(FRBの 告発 状。傍 点 筆 者)

大 和 銀 行 事 件 に つ い て取 材 す る過 程 で,ア メ リカが 最 も重 視 して い た 法 令 違 反 は,こ の 「刑 事 事 件 容 疑 が 発 覚 して か ら30日 以 内 に司 法 当局 お よび金 融 当局 に報 告 す る」 とい う義務 に対 す る違 反 で あ る。 注 意 す べ き は 「刑 事事 件 容 疑 」 が発 覚

して か ら,と い う部 分 で あ る。

日 本 で は 報 告 が 遅 れ た こ と に 関 して,大 和 銀 行 か ら も,大 蔵 省 か ら も,「報 告 は 事 件 の 調 査 が 済 ん でか ら」 と説 明 され て い た 。

(水野隆徳 『ニ ュー ヨー ク発 大和銀行事件』

ダイヤモ ン ド社,1996年,ll9〜120ペ ージ)

大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク 事 件 の 教 訓65

(20)

米 国 で 営 業 す る以 上,米 国 の法 律 に支 配 され る。「刑事 事 件 容 疑 が 発 覚 して か ら30日 以 内 に司法 当局 お よ びFRB(連 邦 準 備 制 度 理 事 会)に 報 告 す る こ と

を求 めて い る」 こ とは,全 く日本 の常 識 とはな って い な い の で あ る。

⑧30日 以 内 の 報 告 義 務

前 項 の 「レ ギ ュ レ ー シ ョ ンKの 内 容 」 で は 確 認 で き な か っ たX30日 以 内 の 報 告 義 務 」 に つ い て,末 尾 の 水 野 隆 徳 氏 の 著 書 を 参 考 に 再 度 外 部 調 査 を 試 み

た 。

RegulationKの211,24で は,BCCI事 件 等 を 契 機 に 外 銀 監 督 強 化 の た め に 新 た に 関 連 条 文 の 集 約 を 行 っ た 形 跡 が あ り,最 新 の 改 正 は1996年10月 で,24 (9)ま で 出 来 て い る 。 で は 問 題 の 条 文24(f)を 下 に 引 用 す る 。

(t)Reportsofcrimesandsuspectedcrimes.Exceptforafederalbranchor afederalagencyorastatebranchthatisinsuredbytheFederalDeposit InsuranceCorporation,abranchoragencyorarepresentativeofficeofa foreignbankoperatingintheUnitedStatesshallfileasuspiciousactivity reportinaccordancewiththeprovisionsofSec.208.20,0ftheBoard's

RegulationH,12CFR208.20.

す な わ ち,Reportsofcrimesandsuspectedcrimesと し て ・asusplclous activityreport(SAR)を 提 出 せ よ,と し て い る 。 そ し て,そ れ はFRBの

RegulationHのSec.208.20に 従 っ て 行 え,と あ る か ら,ま た 次 の 調 査 を し な け れ ば な ら な い 。

RegulationHと は 次 の 通 り で あ る 。

Part208‐MembershipofStateBankingInstitutionsintheFederalReserve System(RegurationH)

20820のSuspiciousActivityReportsと は,以 下 の 説 明 の 通 り で あ る 。

248.20SuspiciousActivityReports.

{a}Purpose.ThissectionensuresthatastatememberbankfilesaSuspi‑

ciousActivityReportwhenitdetectsaknownorsuspectedviolationof

(21)

Federallaw,orasuspicioustransactionrelatedtoamoneylaundering

activityoraviolationoftheBankSecrecyAct .Thissectionappliestoall statememberbanks.

そ し て,Timeforreporting(報 告 期 限)は,notlaterthan30calendar

daysafterthedateofinitialdetectionoffactsと 明 記 さ れ て い る

。 ま た, 容 疑 者 が 発 見 で き な い 場 合 は,さ ら に30日 間 の 猶 予 が 認 め ら れ る と し て い る

(d>Time/orreporting.AstatememberbankisrequiredtofileaSARno laterthan30calendardaysafterthedateofinitialdetectionoffactsthatmay

constituteabasisforfilingaSAR .Ifnosuspectwasidentifiedonthedateof detectionoftheincidentrequiringthefiling ,astatememberbankmaydelay

filingaSAKforanadditional30calendardaystoidentifyasuspect .Inno caseshallreportingbedelayedmorethan60calendardaysafterthedateor

initialdetectionofareportabletransaction .Insituationsinvolvingviolations requiringimmediateattention ,suchaswhenareportableviolationison‑

going,thefinancialinstitutionshallimmediatelynotify,bytelephone ,an appropriatelawenforcementauthorityandtheBoardinadditiontofilinga

timelySAR.

な か な か や や こ し い 法 律 の 構 成 で あ る 。 素 人 に は 理 解 し に く い

。 事 件 の 主 犯,井 口 俊 英 『告 白 』(後 述)に よ る と,大 和 銀 行 は 事 件 の 処 理 に 当 っ て 弁 護 士 を 使 っ て い た よ う だ が,も し 隠 蔽 を ア ド バ イ ス し て い た と し た ら 顧 問 弁 護 士 失 格 ど こ ろ か,弁 護 士 資 格 剥 奪 も の で あ っ た ろ う 。

こ れ ら 一 連 の 問 題 を ど う 理 解 す る の か 。 ニ ュ ー ヨ ー ク 州 弁 護 士 の 資 格 を 持 っ ブ ル ー ス ・A・ オ ー ト ワ イ ン 氏(住 友 信 託 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク 支 店 シ ニ ア ・バ

4)

イ ス ・プ レ ジ デ ン ト)の 説 明 を参 考 に し て み よ う。

連 邦 政 府 に対 す る報 告 義 務 不履 行 お よ び虚 偽 報 告

1978年 国 際 銀 行 法(IBA)に 基 づ き,外 銀 の支 店(エ ー ジ ェ ン シー を含 む)は 管轄 地域 内 の 連 邦 準 備 銀 行 に対 し,自 己 の銀 行 活 動 お よび財 務 状 態 を開示 す るた め の い くつ か の 定 期 的 報 告 書 を提 出 す る よ う義 務 付 け られ て い る。 そ の一 つ 「コ ー ル レポ ー ト」 と して知 られ る 「外 銀 の 米 国 支 店 の資 産 と負 債 に関 す る報 告 」

大和銀行ニューヨーク事件の教訓67

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は,四 半 期 ご とに提 出 され な けれ ば な らな い。これ とは別 に,外 銀 はIBAに 基 づ き,外 銀 を巻 き込 んだ犯 罪 や,疑 わ しい一 定 の行 動 に つ い て,最 初 の発 生 か ら30

日以 内 に 「疑 わ しい行 動 に関 す る報 告 」 を提 出 しな けれ ばな らない。

IBAは,外 銀 が 提 出 を義 務 付 け られ た報 告 書 を期 限 内 に提 出 しな か った り,虚 偽 また は誤 解 を招 くよ うな情 報 を含 む 報 告 書 を提 出 した 場 合,行 政 罰 お よび刑 事 罰 を科 して い る。外 銀 に科 され る罰 金 の額 は,内 部 管 理 が 適 正 で あ っ た か ど うか に よ るがi提 出 され た報 告書 が 虚 偽情 報 を含 んで いた 場 合 に は,そ れ が意 図 的 に な され た か 否 か に よっ て決 定 され る。本 来 な ら過 失 を防 止 で き る程 度 の 一 定 レベ ル を満 た す 内部 の チ ェ ッ ク体 制 を外 銀 が 有 して い た に もか か わ らず,過 失 の結 果 として,報 告 書 を期 限 内 に提 出 しな か っ た か,あ る い は虚 偽 また は誤 解 を招 く情 報 を含 む報 告 書 を提 出 した とFRBが 判 断 した場 合 に は,当 該 外 銀 は報 告 書 の提 出 遅 れ の 期 間 と虚 偽 また は誤 解 を招 く情 報 が 訂 正 さ れ る まで の期 間 の そ れ ぞ れ

1日 当 り2000ド ル を上 限 とす る金 額 の過 料 を支払 う こ とに な る。(後 略)

(ブルース ・A・ オー トワイン 「在米邦銀 を とりま くホワイ トカラー犯罪法」

『金融財政事情』1996年7月8日 号)

4大 和銀行事件の本 質

前項 で 「米 金融 監 督 当 局 が 問題 視 して い る4つ の ポ イ ン ト」 に全 て答 え ら れ た訳 で は な いが,こ の事 件 は様 々 な 広 が りを見 せ て い るだ け に,以 下 の 諸 点 で も解 明 を試 み て み た い 。

(1)「 大 蔵 省 と 大 和 銀 行 」 に よ る犯 罪

先 に 挙 げ た 『ニ ュ ー ヨ ー ク発 大 和 銀 行 事 件 』 の 中 で,水 野 隆 徳 氏 は こ の 歴 史 的 金 融 犯 罪 は,3つ の 部 分 か ら な っ て い る(は しが き),と 述 べ て い る 。 す な わ ち,

第 一 は,大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク 支 店 の ト レ ー ダ ー 井 口 俊 英 が1984年 か ら95年 ま で の11年 間 に わ た っ て,米 国 債 の 不 正 売 買 に よ っ て11億 ドル(約1100億 円)の 損 失 を 発 生 さ せ た と い う も の で あ る 。 事 件 は 井 口 の 藤 田 彬 頭 取(当 時)宛 て の 告

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白文 に よっ て発 覚,大 和 銀 行 の本 部 とニ ュ ー ヨー ク支 店 は事 実 を確 認 した 上 で そ の 隠 蔽 工 作 を図 った 。この事 件 で は,大 和 銀 行 がFRB(米 国 連 邦 準 備 制 度 理 事 会)

とニ ュー ヨー ク州 銀行 局 に よる監 督 当局 の検 査 の際,違 法行 為 に つ い て嘘 をつ い て きた事 実 も暴 露 され た。

第 二 の犯 罪 は,大 和 銀 行 の米 国現 地 法人 子 会 社 「大 和 銀 行 信 託 会 社(ダ イ ワ ・ バ ン ク ・トラ ス ト)」で,1984年 か ら87年 まで の 間 に9700万 ドル の損 失 が発 生 ,大 和 銀 行 の本 部 とニ ュー ヨー ク支 店 ・大 和 銀 行 信 託 会 社 の幹 部 が,ケ イ マ ン諸 島 や 香 港 な どの子 会 社 を使 って損 失 を隠 蔽 した 事 件 で あ る。

第 ㍉ 第 二 の い ずれ に お い て も,大 和 銀 行 は,法 律 で定 め られ た 「30日」以 内 に米 国 の監 督 局 に報 告 す べ し とい う義 務 を怠 った。

第 三 の犯 罪 は,11億 ドル損 失事 件 に つ い て大 和 銀 行 か ら報 告 を受 けた 日本 の大 蔵 省 が,そ れ を米 国 の監 督 当 局 に報 告 す る こ とを怠 った上 に,大 和 銀 行 か ら報 告 を受 けた 日につ い て大 和 銀 行 と口裏 を合 わ せ て 嘘 を つ い て いた 事 件 で あ る

。 (水野 隆徳,前 掲書) こ れ ら の 指 摘 は正 し い。 以 下,論 者 の 補 論 を 展 開 し よ う

第 一 の犯 罪 に つ い て は,本 人 の 『告 白 』 や 様 々 な 報 道 が な さ れ て い る現 在 , そ れ を集 約 して 見 て も あ ま り意 味 は な か ろ う。 た だ,犯 罪 の 枠 組 み の み は, こ こ で 確 認 て お き た い 。

1995年9月27日 の 日本 経 済 新 聞 で は,見 出 し と し て

「大 和 銀 の 巨 額 損 失 多 重 チ ェ ッ ク 不 備 リス ク管 理 基 本 な お ざ り

現 場 任 せ の 甘 さ露 呈 」

を掲 げ,次 頁 の 図 を 示 し て い る。

同 日 の 日経 夕 刊 で は,さ ら に 「大 和 銀 の 巨 額 損 失,無 断 取 引3万 回 ,FBI, 元 行 員 の 逮 捕 発 表 」 と報 じて い る 。 当 初 は 急 場 で 出 て 来 た 損 失 額11億 ドル の 全 額 す ら あ や し い と の 声 もあ っ た が,『 告 白 』の 中 で 数 年 間,再 三 告 白 の 機 会 を 窺 っ て 資 料 を整 理 して い た 事 情 が 述 べ ら れ て お り,当 らず と も遠 か ら ず の 数 字 な の で あ ろ う。

た だ し,司 法 取 引 に よ り事 件 の 幕 が 閉 じ られ た 現 在i事 件 の 正 確 な 内 容 は 大和銀行ニューヨーク事件の教訓69

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米国債 簿外取引の構図

取引 確認書

1■■1■1ゆ本 来 決 め られ た 証 書の 流 れ

■■■■レ 簿外 取 引 の 証 書 の流 れ

(『日本 経 済 新 聞 』1995年9月27日)

外 部 か ら窺 い 知 る こ と は 困 難 で あ る 。

な お,1995年10月13日 の 口本 経 済 新 聞 に よ る と,井 口被 告 は93年11月 の ニ ュ ー ヨ ー ク連 銀 検 査 で 米 国 債 の 売 買 業 務 と保 管 業 務 を分 離 して い な い こ とが 発 覚 し 当 時 の ニ ュ ー ヨ ー ク 支 店 長 ら を け ん 責 処 分 した 際,担 当 者 数 人 と共 に

け ん 責 処 分 さ れ て い る 。

『告 白』 の 中 か ら,問 題 に な り そ う な こ と を 拾 っ て お こ う。

〈p。17>安 井 健 二 副 頭 取 国 際 担 当(H7.724)「 機 密 を 守 ら な け れ ば な ら な い の は 君 の 言 う 通 り で,今 は 頭 取 と 海 保 孝 副 頭 取 と 我 々3人 し か こ の こ と を 知 ら な い 。 ア メ リ カ で の 問 題 に す る と大 変 な こ と に な る と い う の は,皆 同 意 見 で す 。 … 」

3人 は4人 の 誤 り か 。 海 保 現 頭 取 が 一 枚 噛 ん で い た?

〈p.36>8月13日 か ら 津 田 氏 が 一 時 帰 国 す る こ と に な っ た 。15日 に 頭 取 を 交 え て

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会 議 をす る ら しい 。この 時 点 で終 わ って い た検 証 作 業 はバ ンカ ー ズ トラス トの証 券 保 管 残 高 の照 合 の み で あ る。無 断取 引 の検 証 に は まだ手 をつ けて い な い。私 は 概 算 で 無 断 取 引 に よ る損 失 約7億 ドル と利 息 支 払 分 約4億 ドル を算 出 して津 田 氏 に手渡 した 。

損 失 額 に触 れ る。

〈p.62〜63>私 に あ てが わ れ た の は,ニ ュ ー ヨー ク連 邦 弁 護 人 サ ー ビスの チー フ で あ る レオ ナ ル ド・ジ ョイ弁 護 士 で あ った 。 日曜 日に もか か わ らず

,す ぐにニ ュ ー ジ ャー ジー の 自宅 か ら飛 ん で き て くれ た

。 長 身 で 白髪 の 年 配 の 弁 護 士 で あ る が,私 の話 を聞 い て こ う言 った 。

「君 に は本 来 で あ れ ば3つ の選 択 肢 が あ った 。 第 一 は無 罪 を主 張 して 裁 判 に持 ち込 み,公 判 で 陪審 院 の評 決 を受 け る こ と。第 二 は,政 府 と司 法 取 引(YleaAgree‑

ment)を して,起 訴 事 実 の一 部 を取 り下 げ させ て有 罪 を認 め る。 第 三 は,他 の犯 罪 人 を摘 発 す るた め検 察 に協 力 し,そ の代 償 として5Kレ ター を受 け る。協 力 取 引 (CooperationAgreement)の こ とだ 。 連 邦 犯 罪 に は量 刑 の ガ イ ドラ イ ン とい う もの が あ っ て,判 事 は この 基 準 に沿 っ て量 刑 を決 定 し な け れ ば な ら な い。 しか し,検 察 が5Kレ ター を判 事 に提 出 す れ ば,彼 は独 自 の 判 断 で ガ イ ドラ イ ン を 下 回 った量 刑 を言 い渡 す こ とが 出 来 る。 た だ,こ の場 合,被 告 は全 て の起 訴 事 実 に対 し有 罪 を認 め る と同 時 に,事 件 に関 連 した こ とに つ い て は包 み隠 さず 正 直 に

さ さい

陳 述 す る こ とが 要 求 され る。た とえ些 細 な こ とで も事 実 を故 意 に偽 っ た り,隠 し て い た こ とが 後 日判 明 す る と条 件 違 反 と して協 力取 引 は無 効 に な る1

聞 い て い るだ けで も汗 が 出 る。

「さて,君 の場 合,選 択 肢 の第 一 は,残 念 な が ら ア ウ ト。なぜ な ら罪 を全 面 的 に 認 めた 告 白状 を大 和 が検 察 に渡 して し まっ た こ と と,昨 日君 はそ の 告 白状 の筆 者 で あ る こ とを認 め て し ま った か らだ。検 察 が 容 易 に有 罪 を立 証 出来 る こ とか ら し て,第 二 の 司 法 取 引 も検 察 に と り何 の メ リ ッ トもな い の で ア ウ トだ。 とな る と, 第 三 の協 力 取 引 が 唯 一 の 選択 肢 とい う こ とにな る。検 察 は大 和 を摘 発 し よ う と し て君 の協 力 を こ とさ ら必 要 と して い る。連 邦 検 察 局 自身 が こん なニ ュ ー ジ ャー ジ ー の 山 奥 まで 来 て い る こ とか ら して

,彼 ら は 何 か 相 当 大 き な 獲 物 を追 っ て い る よ うだ。協 力 取 引 をせ ず有 罪 に なれ ば,ガ イ ドラ イ ンで 見 る限 り5〜6年 の懲 役 は まぬ が れ な い 」

あ れ だ け銀 行 の た め を考 え て行 動 して きた 私 を この よ うな状 況 に追 い詰 め た 大和銀行ニューヨーク事件の教訓71

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大 和 に復 讐 して 自分 の 刑 も軽 減 で き る,私 の方 針 は一 応 これ で 固 まっ た。

(井口俊英 『告 白』文藝 春秋,1997年) な お,本 人 は事 情 は ど う で あ れ5万 ドル の 横 領(1984年?,138ペ ー ジ), 次 に52万 ドル(1988年1月,166ペ ー ジ)の 横 領 を行 っ て い る 。

『告 白』執 筆 の 動 機 に は,大 和 首 脳 が 最 終 的 に 隠 蔽 工 作 に応 じ な か っ た こ と へ の う ら み と,出 版 に よ る生 活 費 稼 ぎ が あ っ た と思 わ れ る 。

井 口 被 告 は,1996年12月16日,禁 固4年,罰 金200万 ドル の 実 刑 判 決 を言 い 渡 さ れ,服 役 中 で あ る 。

【ニ ュ ー ヨ ー ク16日8小 仲 秀 幸 】 昨 年9月 に発 覚 した 大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク 支 店 の米 国 債 不 正 取 引 に よ る巨額 損 失 隠 ぺ い事 件 で,約11億 ドル の 損 失 を隠 して 詐 欺 の共 謀 罪 や 文書 偽 造罪 な どに問 わ れ,司 法 取 引 で 有 罪 が 確 定 した元 嘱 託 行 員 の 井 口俊 英 被 告(45)に 対 す る量 刑 言 い渡 し公 判 が16日 午 後,ニ ュー ヨー ク連 邦 地 裁 で 開 か れ た 。 ル イ ス ・キ ャプ ラ ン判 事 は 「歴 史 的 な犯 罪 」 と述 べ,同 被 告 に 対 して禁 固4年,罰 金200万 ドル の 実刑 判 決 を言 い渡 した 。また,横 領 した57万 ド ル を大 和 銀 行 に弁 済 す る よ う命 じた 。(『 日本経済新聞』1996年12月18日) 愛 知 学 院 大 学 教 授 後 藤 新 一 博 士 は,『 エ コ ノ ミス ト』97.3.11号 の 書 評 で,

「大 和 銀 行 巨 額 損 失 事 件 の 張 本 人 が 語 る 赤 裸 々 な 記 録 」に つ い て 論 じて お られ る。そ の 最 後 に,「 この 手 記 と時 を 同 じ く し て,シ ン ガ ポ ー ル の 金 融 市 場 で1300 億 円 の 損 失 を 出 した 英 国 ベ ア リ ン グ ズ 銀 行 の 花 形 トレ ー ダ ー,リ ー ソ ン が 獄 中 で 執 筆 した 『私 が ベ ア リ ン グ ズ 銀 行 を つ ぶ した 』(新 潮 社)が 刊 行 され た 。

い ず れ も金 融 犯 罪 の 張 本 人 が 不 正 取 引 の 全 貌 を 語 り,内 容 が あ ま り に似 て い る こ とに 驚 か さ れ る」 と コ メ ン ト して い る が,井 口 自 身 は,

ず さ ん

大 和 の幹 部 は私 が彼 らの 怠慢 な経 営,管 理 の も とに醸 成 され た杜 撰 な体 制 の 中 で,ど の よ うに12年 間 も苦 悩 の 日々 を送 っ て きた か を知 ろ う とも しな い。

それ こそ95年 の2月,日 経 の先 物 取 引 で 巨額 の損 失 を出 した英 国 ベ ア リン グ証 券 の ト レ ー ダ ー,ニ ッ ク ・リー ソ ン の よ う に 国 外 に 逃 亡 で も さ れ て は か な わ な い

と思 っ た の で あ ろ う。2年 間 で14億 ドル の損 を して逃 亡 した リー ソ ン と,12年 間 苦 悩 を耐 えた あ げ く銀行 に これ以 上 の 損 失 を もた ら さな い よ うに と,40ペ ー ジ の 告 白書 を持 って 事 件 を報 告 し,頭 取 の指 示 を仰 い だ私 との違 い が分 か らな い よ う

参照