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Ⅱ 謝教授のご報告について(コメント)

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Academic year: 2021

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Ⅱ 謝教授のご報告について(コメント)  131

1 .はじめに

 早稲田大学教授の稗田雅洋でございます。2017年3月まで30年間刑事裁 判官として勤務し,同年4月から本大学のロースクールで教えておりま す。昨年,一昨年と,台北で開催された裁判員制度に関するシンポジウム 等にお招きいただき,台湾の皆様とお話しする機会もございました。台湾 における制度改革の動きは,私どもにとっても大きな関心事であり,大変 勉強になりました。改めて御礼申し上げます。

 本日も,謝先生から,台湾の刑事再審制度に関する最近の動向に関し て,示唆に富んだご講演をいただき,大変勉強になりました。心から感謝 申し上げます。浅学の身であり,日本の再審事件についても,それほど多 くの経験は持ち合わせませんが,簡単にコメントさせていただきます。

2 .再審事由等に関する法改正について

 謝先生からは,台湾では,①再審事由としての「新証拠」について,従 来の実務が「原判決の時点で既に存在していたか,裁判所が故あって斟酌 するに至らず,判決後に裁判所又は当事者に発見された証拠でなければな らない」との考え方が定着していたのに対し,2015年の法改正により,

「新事実又は新証拠とは,判決が確定した前に存在し若しくは現われてい

Ⅱ 謝教授のご報告について(コメント)

稗 田 雅 洋

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132  早稲田大学法務研究論叢第5

たが,取調べ,斟酌されていなかった又は判決が確定した後に初めて存在 し若しくは現われていた事実又は証拠を指す」と明文化したこと,②「明 白性」の要件に関しても,従来の実務では極めて厳格な態度が取られ,総 合評価説は必ずしも採られておらず,「疑わしきは被告人の利益に」の原 則も再審請求の審理に適用することは認められていなかったのに対し,

2014年の最高法院決定が「疑わしきは被告人の利益に」の原則の適用を認 めるとともに総合評価説を採用し,法改正により「新事実又は新証拠を発 見したことにより,単独で又は前の証拠と総合判断した後,有罪の言渡し を受けた者に対して無罪若しくは免訴,刑の免除を言渡し,又は原判決に おいて認めた罪より軽い罪を認めるべきというに足りるとき」と定め,総 合評価が明文で規定されたことについて,ご報告がありました。

 日本においては,刑事訴訟法の規定としては,台湾と同様にドイツ法の 影響を受けた戦前の刑事訴訟法法の再審に関する規定が,戦後も改正され ることなく用いられていますが,「新証拠」については,皆様ご承知のと おり,証拠の発見が「あらた」なことをいい,その存在が原判決の以前よ り継続するとそれ以後に新たに発生したとを問わない趣旨と解するのが相 当であると解されており,また,「明白性」の要件に関しても,1975年の 白鳥事件決定以来の判例・実務により,明白性のある証拠とは,確定判決 の有罪認定に合理的な疑いを抱かせる証拠を意味するものであること,そ の明白性の有無を判断するに当たっては,新証拠と他の全証拠を併せて総 合的に評価し,その結果,「疑わしきは被告人(請求人)の利益に」の原 則の下で,確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じると認められるとき に当該新証拠の「明白性」が肯定され,再審開始決定に至ると解されてい ます。

 その意味では,台湾の最近の判例の動向と法改正によって,再審事由に 関する台湾と日本の考え方は,同じ出発点に立つことになったと思われ,

今後,両国の実際の運用を比較検討することが,それぞれの国の運用を考 える上でも,ますます有益になったといえるように思われます。

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3 .日本における最近の再審事件の動向について

 次に,日本の最近の状況について簡単に触れます。

 日本では,先程も述べたとおり,戦後の刑事訴訟法改正においても,再 審に関する規定は,不利益再審を廃止した以外は,基本的に戦前のものを 維持しており,2005年〜2009年にかけて司法制度改革により刑事訴訟法の 大改正と裁判員制度の創設が行われた際も,再審に関するの法改正は行わ れていません。

 ただ,その後,いくつかの著名な事件で再審開始決定が出され,再審公 判の結果無罪等の判決が出されており,その中には,司法制度改革により 通常の公判手続における検察官手持証拠の開示が大幅に広がった影響から か,再審請求事件において,裁判所の示唆の下,検察官が,証拠開示制度 が拡充される前に行われた確定審の審理で証拠請求や弁護側への証拠開示 がなされていなかった証拠を開示し,これが大きく影響して,再審開始が 認められたものがいくつかあり,また,著名な刑事裁判官の中からも,再 審請求審においても,「その事件において,公判審理の段階で,新法によ る公判前整理手続等が行われ,証拠開示が行われていたとすれば開示され たであろう証拠については,証拠開示がなされてしかるべきである」との 指摘が出ています(門野博「証拠開示に関する最近の最高裁判例と今後の課 題」原田國男判事退官記念159頁)。

 そして,こうした状況の中,弁護士会等から,再審請求審における証拠 開示制度の整備を求める意見が強く出され,法制審議会の新時代の刑事司 法制度特別部会でもこれに関する議論が行われましたが,他方で,日本の 再審請求審は,当事者主義の下で検察官と被告人側とが攻撃防御を繰り広 げ,検察官により合理的な疑いを超える証明がなされたかどうかが判断さ れる通常の公判審理とは異なり,裁判所が確定した有罪判決を前提として 職権的に再審開始を請求する側の主張に理由があるかどうかを判断するに

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当たり,必要があるときに事実の取調べを行う構造になっていることなど も指摘されており,法制審議会の部会も,通常の公判審理における証拠開 示の在り方とは異なる観点から慎重に検討されるべきとするに止めており ます。

 日本のこのような状況は,戦後,当事者主義訴訟構造を採用する中,検 察官手持証拠の開示が非常に限定されていたところから,司法制度改革に よりその開示が大幅に拡充されたという変更があったことに伴う,過渡的 な現象という面もあり,特に,台湾のように,職権主義訴訟を採用し,検 察官が起訴に際し一件記録を裁判所に提出する制度の下では,生じ得ない ことかもしれません。ただ,現在法案が審議されている国民参与制度に関 する法律が成立した場合には,国民参与の対象となる事件では,起訴状一 本主義が採用され,検察官手持証拠の開示もある程度制限されると聞いて います。そうなった場合に,公判審理において開示されなかった証拠を再 審事由との関係でどのように取り扱うかが問題となる可能性はあると思わ れます。私の理解が不十分なための誤解かもしれませんが,問題提起だけ させていただきたいと思います。

 以上,雑ぱくな内容で恐縮ですが,私のコメントとさせていただきま す。

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