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学生の生活観・人生観に関する一考察

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(1)

171

学生の生活観・人生観に関する一考察

森 重 敏

 今日の学生とは,どういうものであろうか.昔の学生と比べて,何かはっき りとした特徴が知られるであろうか.

 たしかに,われわれが経てきた戦前,もしくは戦中の時代と比較してみると,

現代の学生には,以前とは違った,現代特有のすがたがあらわれているように 思える.それと同時に,前とあまり変わらない,昔ながらの学生特有の性質を 備えたすがたも浮んでくる.敗戦後,今日まで約30年に及ぶ筆者の教員生活の 経験からしても,具体的な,数限りない学生のすがたがイメージとして描き出

されるのである.

 戦後間もない頃の旧制高等専門学校,たとえば師範学校や高等学校の生徒,

そして間もなく発足した新制大学の学生,急速な高度経済成長をとげた時代の 学生,その社会のひずみがあらわであった学園紛争の頃の学生,そして,この 紛争後から今日に至る最近の学生というように,時代の推移に伴う社会情勢の 特徴からみても,その時期に特有な学生が存在していた.それに,大学といっ ても,多種多様で,大きく別けても,国・公・私立の種類があり,とくに,私 大はそれぞれ特徴をもって多岐に亘っていた.さらに,地域別,性別などの差 異もからんで,特徴ある大学が数多く生まれた.それがまた,それぞれに,今

日の学生を特徴づけているわけである.

 したがって,簡単に,今日の学生像をとらえて,これを一口に表現すること はきわめてむずかしい.それに,学生像を描くものの立場もあるであろう.

 このように,多様化された現在の大学の特質にもとづき,多様な学生像が,

そこに結ばれるのである.

 そこで,今回,筆者は,最近の学生が,人の暮らし方についてどのように考

(2)

えているか,また,将来どのように生きることを理想としているか,といった,

いわば生活観ないし人生観に関する調査を通して,彼等の人間像を模索してみ た.以下に,その概要を述べてみたい.1)

 1. 目     的

 最近の学生における「人の暮らし方についての考え方」や「生き方の理想」

について調査し,その回答を通して,彼等の生活観ないし人生観を理解すると ともに,学生指導の基礎資料の一つにしようとする,

 2.方     法

 筆者が関係している大学の学生を対象に,所定の質問用紙に回答を求める質 問紙調査法を実施した.

 すなわち,国立大学としての岡山大学女子100名(教育学部・小学校教員養 成課程35名,同幼稚園教員養成課程65名), 公立大学としての都立大学121名

(A類:男子73名,女子13名,B類:男子20名,女子14名),および,私立大学 としてのN大学文学部100名(国文学科:男女各25名,中国文学科:男女各25 名),S大学教育学部70名(教育学科・児童教育学科:男子20名,女子50名)合 計391名が,被調査者の人数である.

 学年および年齢は,教養課程に相当する1,2年生を中心とした18〜22歳で あるが,大部分は,19歳と20歳であった.

 調査時期は1978年6月一7月.

 手続きとして,次のような質問項目を設け,多肢選択法並びに自由記述法に よって,授業時間中に無記名で回答してもらった.

 質問内容:

 (1) 「人のくらし方にはいろいろありましょうが,次にあげるようなものの   中でどれがいちばんあなたの気持ちに近いですか,1つだけ選んで答えて   下さい.」(番号に○印をつけること)

  1.一生けんめい働き,金持ちになること

  2. まじめに勉強して名を挙げること

(3)

173

 3.金や名声を考えずに,自分の趣味に合ったくらしをすること  4. その日その日をのんきに,くよくよしないでくらすこと

 5.世の中の正しくないことを押しのけて,どこまでも清く正しくくらす

   こと

  6. 自分一身のことを考えずに,社会のためにすべてを捧げてくらすこと  (2) 「あなたは,将来,どのように生きることを理想としていますか,簡単   に答えて下さい(下線に2〜3行位で回答のこと)

 以上の質問項目のうち,(1)は,すでに,1930年ごろ,わが国の青年に対して 調査されたことのある古い調査項目であるが,戦後においても,時代的変化の 傾向を知る上で,各方面の研究,とくに青年の意識調査など,参考とされたも のである.筆者も,1955(昭和30年)から3年間に亘り,九学会連合奄美大島 共同調査団における日本心理学会側からの一調査員として行った「奄美諸島住 民のパースナリティ」に関する調査研究で,現地奄美の住民および高校生並に 青年に対して試みた調査の項目である1).

 したがって,直接間接,本調査は学生像における時代的な比較をするのに好 都合といえよう.以下にその調査結果の概要を記してみる.

 3.結果と考察

 (1)暮らし方についての考え方

表1今日の学生の生活観(%)

(1)金   持

(2)名   声

(3)趣    味

(4)の ん き

(5)清く正しく

(6)社会のため

国・公立大

男(93)

11.83 12.90 51.61 12.90 4.30 6.45

女(228)

7.03 3.91 63.28 19.53 3.91 2.34

計(22D

9.05 7.69 58.37 16.74 4.07 4.07

私 立 大

男(70)

7.14 10.00 48.57 12.86 14.28 7.14

女(100)

2. 00

1.00 51.00 20.00 11.00 15.00

計(170)

4.12 4.71 50.00 17.06 12。35 11.76

ニゴロ

男(163)

9.82 11.66 50.31 12.88 8.95 6.75

女(228)

4.82 2.63

57. 89

19.74 7.02 7.89

計(391)

6.91

6.39

54.73

16.88

7.67

7.42

合 t lg9・ 991・・・…i99・・991・99・・9911・・・・・・・・・・・・・・…99・・・・・・…

(4)

 先ず,国公立,私立別および性別にみた結果を示すと,表1のようである.

 すなわち,国公・私立の学生を全体としてみた場合は,「金や名声を考えずに 自分の趣味に合った暮らし方をする」と答える者が最も多くて,過半数(55%)

を占めている.その次が「その日その日をのんきに,くよくよしないで暮らす」と 答えた者の割合(17%)となっているが,あまり多くはない.そして,その後に

「世の中の正しくないことを押しのけて,どこまでも清く正しく暮らすこと」

(8%),「自分一身のことを考えずに,社会のためにすべてを捧げて暮らすこと」

(7%),「一生けんめいに働き,金持ちになること」(7%),「まじめに勉強し て名を挙げること」(6%)という順に並んでいるが,これらの割合はいずれも 同じようにきわめて少ない.

 性別に見ると,全般的に,項目によっては男女の間で考え方の違いがうかが えるようである.すなわち,「趣味に合った暮らし方」および,「のんきな暮ら

し方」においては,女子学生の割合が高く,「金持ちになる」,「名声を挙げる」

といった暮らし方では,男子学生の方が高率となっている.そして,「清く正し く暮らす」,「社会のためすべてを捧げて暮らす」では,男女の差がほとんどみら

れない.

 次に,国公立・私立別に見てみると,やはり,項目によって,幾分,考え方 の違いが見られるようである.すなわち,「趣味に合った暮らし方」,「金持ちに なる」,「名声を挙げる」では,国公立大の方にやや割合が高く,「清く正しく暮 らす」,「社会のためにすべてを捧げて暮らす」では,私立大の方の割合が3倍前 後高くなっていることが注目される.ただ,「のんきな暮らし方」においては,

国公私間の違いは見られない.

 こうした結果から,国公・私立とも,全般的に,今日の学生の暮らし方とし て,個性的生活観を持つ傾向が強く,現実的な生活観も理想主義的な生活観も,

ともに,きわめて少ないことがうかがえる.ただ,性別にみた場合,男子の方 に現実的生活観を抱く者が多いといえよう.

 しかし,国公・私立別にみたときは,生活観に若干のずれがみられ,国公立

の方がやや現実的で個性的な生活観,私立の方が相当に理想主義的生活観を持

つものが,それぞれ多いように思われる.そして,私立の場合,個々の学校に

(5)

175 よっては,そうした傾向の強いところと弱いところとが推察される.たとえば,

S大では,「趣味」の生活観(35.7%o)に次いで,「社会のために捧げる」生活観

(27.1%),「清く正しく暮らす」生活観(20%)が相当に高い率で,「のんきに 暮らす」(15.7%)と.「名声」(1.4%)の生活観は相当に低い率であり,「金持 ちになる」生活観は皆無であった.これに対し,N大では,「趣味」(60%)が 圧倒的に高率であり,「のんきに暮らす」(18%),のほかは,「金持ち」,「名声」

「清く正しく」(各7%),さらに,「社会のために捧げる」(1%)といった生 活観はきわめて低率であった。

 それでは,戦後10年目に当たる1955(昭和30)年の頃の学生の考え方はどの ようであっただろうか.当時の大学生を対象にした調査資料がないため,20年 経過した今日の学生の生活観との比較は,厳密な意味ではできないが,大学1 年生と近い年齢段階にある高校3年生を対象にした資料によって,検討してみ

よう.

    表2高校生(3年)の生活観(1955)      先述のように,1955

高校(人数)

(1)金    持

(2)名    声

(3)趣    味

(4)の ん き

(5)清く正しく

(6)社会のため

(7)そ の 他

大 島

(42)

 0

7.1

47.6 16.7 16.7 2.4 9.5

甲 南

(81)

7.4 9.9 39.5 12.3 17.3 6.2 7.4

女 大 島

(28)

3.6 7.1

71.4 3.6 14.3

 0  0

甲 南

(67)

3.0

 0

49.3 6.0 35.5 1.6

4.2

合 計1・・・…11・・…11・・…1・・・…

年,7〜8月,筆者は,

奄美大島住民のパーソ ナリティに関する調査 研究を実施したのであ

るが,その研究の一環 として,現地(与論島)

および鹿児島市と市来 町における中学・高校

の生徒(1年生と3年

生)および現地と市来 町の一般住民(20歳以 上)に対して,生活観について調査した.表2と表3はその結果の一部である.

 これについてみると,20年前の生徒は,「趣味」の生活観に次いで,「清く正

しく暮らす」生活観の割合が比較的高く,「金持ちになる」生活観の割合が比較

的低いことが注目される.つまり,今日の学生の方が,より現実的,個性的生

(6)

表3奄美大島住民の生活観 (1955)

 項  目

金    持 名    声 趣    味

の  ん  き

清く正しく 社会のため

そ  の  他

与 論

男(90)

21.1 6.7 23.3 10.0 24.4 7.8 6.7

女(55)

14.5 7.3

23.6 23.6 20.0 3.6 7.3

計(145)

18.6 6.9 23.4 15.2 22.8 6.2 6.9

市 来

男(45)

4.4

 0

42.0 15.6 26.7 2.2 8.8

女(48)

8.3

 0

39.5 14.6 33.3 2.1 2.0

計(93)

6.5

 0

40.7 15.1 31.1 2.2 4.4

合 計「1・α・・1・・α・・11・α・・1・・α・…α・・1・・α・・

活観を抱いており,以前の生徒の方がより理想主義的であるということができ よう.一般住民の場合は,さらにこの傾向がうかがえる.

 なお,最近(昭53年7月),総理府青少年対策本部が実施した「世界青年意識 調査」の結果(中間報告)が発表されている3).人の暮らし方についての考え方

を調べてみると,「自分の好きなように暮らす」考え方(41. 2%)が最も高率で あることは,先の学生の場合と同様であるが,「経済的に豊かになる」生活観

表4世界青年の生活観(1978)*

経済的に豊 かになる 社会的な地 位を得る

自分の好き なように暮

らす

社会のため に尽す 無 回 答

日本

35.4

5.8

41.2

6.8

10.8

アメ リカ

6.2

5.1

77.3

9.5

1.8

イギ

リス

11.2

13.9

63.4

8.6

2.9

西ド イツ

9.0

17.3

60.6

5.5 7.5

フソ ラス

7.1

16. 4

62.2

10. 9

3.4

スイス

3.7

9.2

72.3

11.9

3.0

スウェ ーデソ

2.5

1.7

84.8

7.5 3.4

【ラ スリ オトア

6.7

5.1

76.0

10.5

1.6

イソド

22.3

33.3

16.2

26.3

1.8

フィリ ピソ

21.7

9.6

46.2

22. 0

0.5

ブラ ジル

7.7

16.7

63.2

11.9 0.5

*注:総理府青少年対策本部 世界青年意識調査(第2回)結果報告書 P.159より

(7)

      177

(35.4%)の割合が学生の場合よりはるかに高いことが注目される(表4参照).

 しかし,わが国の青年の場合,「自分の好きなように暮らす」と答えた者は,

各国と比べると,イソドに次いで低い.また,「経済的に豊かになる」考え方は,

わが国の場合,各国のなかで圧倒的に多いことが知られるのである.

 (2)生きることについての理想

 次に,生きることについての理想,つまり生活理想について尋ねてみた.簡 単な回答を通して見られる学生の人生観は多岐に亘っているが,それらを便宜 上次の10のカテゴリーに分けて,大学別コース別および性別に検討を行った.

 1 子供の教育中心の人生観  例:。子供を伸び伸び育てたい    。子供を良き社会人に育てたい

   。子供の養育に生き甲斐を見出したい  2 家庭作り中心の人生観

 例:。明るい家庭を作る    。幸せな家庭を作る    。暖かな家庭を作る    ・健康な家庭を作る    。安定した家庭を築く

 3 子供の教育と家庭作り中心の人生観  例:。子供の養育と家事に専念したい  4 職業・仕事中心の人生観

 例:。生き甲斐ある職につきたい    。理想的な仕事にとりくみたい

   。自分のすべてをかけて打込める仕事をもちたい    。ライフワークを究明したい

   。生涯追求して行ける仕事をもちたい    。独立した仕事をもちたい

   。興味のもてる職業につきたい

   。地道に働きたい

(8)

5 職業・仕事と家庭中心の人生観 例:。仕事と家庭との両立

ρ0ダ    {

7

生活中心の人生観

。自分らしい生活を営みたい

。目標ある生活を行いたい

。平凡な生活を行いたい

・平和な暮らしをもちたい

。家庭の楽しい暮らしをしたい

。心豊かな生活を送りたい

。充実した暮らしをしたい

。自由な暮らしをしたい

。余裕のある暮らしをしたい

。理想の生活を営みたい

。気ままな生活を行いたい

。趣味を生かした生活を営みたい

。遊んでいて金がはいるような生活をしたい

。心の張りのある生活を営みたい

。文化度の高い暮らしをしたい 自己・自我中心の人生観

例:。自分の気持に率直にありたい   。自分の心のままに生きたい   。自分に合った生き方をしたい   。自分を磨いていきたい

  。マイペースの暮らし方をしたい   。自分に正直に生きたい

  。自分なりに納得のいく人生を送りたい   ・自分を高めていきたい

  。自分の能力を社会へ貢献したい   。自分らしい生き方をしたい

  ・自分の趣味に合った生き方をしたい

(9)

  。自分の正しい主義主張に生きたい   。自分のやりたいことをやりたい   。自分のあり方の理想に近づきたい   。自分の信念に純粋に生きたい   。自分の夢をもって生きたい   ・高い自己形成

8 生き方中心の人生観 例:。明るく生きる   。豊かに生きる   。夢をもって現きる   ・のんびりと生きる   。楽しく生きる   ・悔なく生きる   。幸せに生きる   ・平和に生きる

  。希望をもって生きる   。意欲をもって生きる   。生き生きした生き方

  。張りのある毎日を送りたい   。のんきにくらす

  。素直に生きる

  。面白おかしく生きる   。おおらかに生きる   。一生懸命に生きる

  。友達を大切にして生きる   。出世を考えずに生きる

  。精いっぱいけんめいに生きる   。自分なりに生きる

  。趣味をもって生きる   。目的に向って生きる

179

(10)

  。存在価値ある生き方   。心的に安定した生き方   。最も価値的な生き方   。勇気ある生き方

  。人間としてすばらしい生き方   。充実した生き方

  。賢い生き方   。正しい生き方

  。生き甲斐ある生き方   。人間的な生き方   。満足の行く生き方   。堂々とした生き方   。平凡で平均的な生き方

  。信念を持ってそれを守り通す生き方

  。かけがえのない仕事に自分のすべてを燃やせる生き方   。一生独身

9 社会中心の人生観

例:。社会のためになることをしたい   。社会や人のためになる人になりたい   。人類の発展に貢献する

  。両親を大切に社会へ貢献したい   。社会参加

10人格性中心の人生観

例:。清く美しいことに素直に感激する人間   。人間的な成長

  。やさしさを持合せた人   。誠実に生きる

  。正義

以上の例を区分している10の分類項目は,人生観として抱いている考え方の

(11)

181

中心が主としてどこにおかれているかによって自由記述式の簡単な回答を便宜 的に分類したものである.したがって,多肢選択法によって調査した(1)の生活 観に関する調査の場合とは違って,被調査者の回答が,例えば,生活中心の人 生観に属するか,生き方中心の人生観に属するか,それとも,自己・自我中心

の人生観に属するか等を厳密に区別することは必ずしも容易ではない.

 ここでは,将来の生き方の理想としての人生観において,たとえば,「心豊か な生活を送りたい」と述べた回答は,その生き方の具体的な方法を主に指して いる点から,「生活中心の人生観」のカテゴリーに入れ,「豊かに生きる」とい

う回答は,ただばく然と生き方一般について言っている点から,「生き方中心の

表5 今日の学生の人生観(その1)(%)

大学種別

項 目

教育中心    人生観 家庭作り中心     〃 教育と家庭作

り中心 〃 職業・仕事中

心    〃

職業・仕事と 家庭中心〃

生活中心     〃

自己・自我中

心    〃

生き方中心     〃

社会中心     〃

人格性中心     〃

国公立大

 稚

 園程

ガ幼課

山ー

 学

岡校程  小課

1.67

6.67

0

11.67

0

23.33

20.0

35.0

1.67 0

2.78 15.28

1.39

9.72 2.78

29.17

19.44

18. 06

1.39

0

都立大**

男   女 0

2. 86

0

17,14

0

12.86

7.14

52.86

0

7.14

0 0 0

14.29 0

50. 0

7.14

21.43

7.14

0

私 立 大

N大***

男   女 0

11.90 0

16.67 0 23.81

23.81 19.05

4.76 0

3.57

3.57 0

17.86 0 21.43

3.57

46.43

3.57

0

S大****

男   女

0 0 0

10.0

0 0

30.0

30. 0

20.0 10.0

1.75

0 0

5.26

0

3.51 43.86

21.05

15.79

8。77

合計1・・・…11・・…1・・・…1・・・…1・・・…t・・・…1・・・…199…

注:*岡山大学の小学校教員養成課程(女子)35名,幼稚園教員養成課程65名,**都立

  大の人文学部男子73名,同女子13名,***N大の中国文学科男子,女子それぞれ25

  名,****S大の教育学科・児童教育学科男子20名,同女子50名が,それぞれ対象人

  員である.

(12)

表6今日の学生の人生観(その2)(%o)

    性別 人生観

教 育 中 心 家庭作くり中心 教育と家庭作り

    中心

職業・仕事中心 職業・仕事と

  庭家中心

生 活 中 心 自己・自我中心

生き方中心

社 会 中 心

人格性中心

量ロ

国公立大

男(73)

  0

2.86

 0

17.14

 0

12.86 7.14 52.86

 0

7.14

100.00

女(113)

2.05 10.27 0.69 10.96 1.37 28.77 18.49 25.34 2.05

 0

99.99

計(186)

1.39 7.87 0.46 12.96 0.93 23.61

14. 82

34.26 1.39 2.31

100.00

私 立 大

男(45)

  0

8,06

 0

14.52

 0

16.13 25.81 22.58 9.68 3.23

100.01

女(75)

2.35

L18

  0

9.41

  0

9.41 30.59

29.41 11.77 5.88

100.00

計(120)

1.36 4.08

  0

11.57

 0

12.25 28.57 26.53 10.88 4.76

100.00

曇肖

男(118)

  0

5.30

  0

15.91

  0

14.39 15.91 38.64 4.55 5.30

100.00

女(188)

2.16 6.93 0.43 10.39 0.87 21.65 22.94 26.84 5.63 2.16

100.00

計(306)

1.38 6.33 0.27 12.40 0.55 19.01 20.39 31.13 5.23 3.31

100.00

人生観」の方に入れてある.また,そうした人生観が,とくに自己ないし自我 に関したものである場合,たとえば,「自分に正直に生きたい」との回答は「自 己・自我中心の人生観」として分類されている.

 こうしてまとめた結果を示すのが表5,表6である.(数値は人生観項目に対 応する件数のパーセンテージであるが,その基礎となっている実数は,1人2 件以上について回答している場合も含まれるため,件数と被調査者の数とは一

致しない.)

 先ず,各大学学生の人生観を概観してみると,都立大男子学生における「生 き方中心の人生観」を挙げた者(53%)が最も高い割合を示し,次いで,同大女 子学生における「生活中心の人生観」の高割合(50%)の高いことが注目される.

 次に「自己・自我中心の人生観」では,私立大の女子学生における割合(44

%)と,同大男子学生における割合(30%o)とがともに高く,そして,「社会中

心の人生観」でも,S大男子学生における割合(20%o)と同大女子学生の割合

(13)

183

(16%)とがともに高いことが知られるのである.こうした結果は,さきの(1)の 調査で,S大における「社会のためにすべてを捧げてくらす」生活観が相当に 高率であったことと対応していることを示すもので,各大学の種別によって学 生の人生観も異ることが知られるのである.

 そのほかでは,「職業。仕事中心の人生観」で,N大の学生(男女平均)にお ける割合(17%)と都立大の学生(男女平均)における割合(16%)とが低率 で続いているが,その他の人生観については,各大学とも,きわめて低い割合

となっている.

 また,国公立・私立別に学生の人生観を見てみると,最も高率(男女計34%)

の「生き方中心の人生観」は国公立において見られ,次いで高い割合(男女計 29%)の「自己・自我中心の人生観」は私立の側に見られるのが注目される.

そして,それに続く割合(男女計24%)としての「生活中心の人生観」は国公 立の側に見られるが,この場合の私立の側においては,それより低率(男女計 12%)となっている.

 全大学を通じてみると,「生き方中心の人生観」の割合(31%)が最高を示し,

それに次いで「自己・自我中心の人生観」(20%)および「生活中心の人生観」

(19%)が相当な割合となっている.その他の人生観については,「職業。仕事 中心の人生観」の割合(12%)のほか,きわめて低率となっている.

 さらに,男女差については,全体的に見て,人生観における明確な相違は示 されないが,「生き方中心の人生観」においては男子の方(39%)が女子よりも,

また「生活中心の人生観」および「自己・自我中心の人生観」では女子の方

(それぞれ22%,23%)が男子よりもやや高率であるといえよう.

 4.要約と今後の問題

 筆者の関係している国公・私立の4大学の学生391名を対象に,「暮らし方に ついての考え方」および「生きることについての理想」について,今日の学生 における生活観ないし人生観に関する調査研究を試みた.

 その結果,大学の種別において,まだ男女別において,幾分特徴的な傾向が 示されたが,共通的な傾向も少なくない.

 本調査は,概観調査で,厳密な意味での推計的手法によるものでないから,

(14)

数値自体はそれほど統計的意味はないが,概観を知り,今後の発展的研究と指 導に対する基礎資料として生かされることが期待されよう.そのため,今後の 課題として,次のような点が挙げられる.

 (1)被調査者の数を全国の学校(大学)から,組織的な無作為抽出法で適切   に選出する.

 (2)本調査の(1)の質問(暮らし方)項目を改正する.

 ③ 本調査の(2)の質問(生きることについての理想)を,本研究結果に基づ   いて,選択法による質問紙法に改正する.

 (4)作文法や日記法など,他の有効な方法も併用して,総合的に検討する.

 (5)時代的な推移による考え方の変化を見出す方法についても注意する.

注:(1)本研究は,最近の拙論「生活観等を通してみた今日の学生像」 (東京都立大学    「学生相談室レポート」第6号,昭和53年)を,その後の資料によって発展させ    たものである.

  (2)森 重敏ほか:奄美大島住民のパーソナリティ 奄美一自然と文化一 九学会   連合共同調査委員会,1959

  (3)総理府青少年対策本部:世界青年意識調査(第2回)結果報告書(中間報告),

   1978

参照

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