箱庭で 「戦い」のプレイを繰 り返 した不登校男児の事例
The Process of Sandplay Therapy for a Boy with School Reisal who Repeated Play of Fight''
五十嵐哲也*・ ガヽ林朋子**
Tetsuya IGARASHI and Tomoko KOBAYASHI
1.はじめに
今 もなお、児童・生徒の不登校 に関する課題 は山積 している。平成17年度文部科学 自書 (文 部科学省
,2006)に
よれば、平成16年度間に不登校であつた小・ 中学生は12万3358人にのぼるとされ る。報告数だけを取 り上げれば減少傾 向にあるものの、心理臨床場面 においては、ス クールカウンセ リングをはじめ とする教育領域 はもちろんのこと、医療、福祉な ど複数の領域 において解決のための努力が 日々行われている。 さらに、五十嵐・萩原 (2004)に よれば、登 校 しなが らも学校 に行 きた くない とい う状態 (不登校傾向
)に
ある子 どもも相当数お り、その 心的構造 は複雑性を極めることが指摘 されている。こうした不登校 に対する心理臨床 においては、様々な立場か らのアプローチが試み られてい る。その中で、非言語的アプローチによる心理臨床 は、言語的成熟が十分でない子 どもに適 し ているとの考えか ら、子 どもを対象 とする多 くの相談機関において実践 されている。 とりわけ 箱庭療法に関 しては、小中学生の多様な不登校の事例 に適用 した研究報告が散見 される。例 え ば、谷山・西村 (1999)は 、抜毛症 と不登校 を主訴 に来談 した
8歳
男児 に箱庭療法を適用 し、箱庭上に攻撃性 を表現 した後 に症状が改善 した事例 を報告 している。 また、芳地・青山・ 岡田 (2003)は 、心因性腹痛 と不登校の状態にあった
6歳
女児 について、箱庭療法を中心 とする遊 戯療法を行い、 自己抑制的言動が減少 して健全な母子分離が進み、腹痛消失 とともに登校再開 に至った様相を述べている。 さらに杉浦・重村 (1995)は 、妹への攻撃行動がある不登校の10 歳男児 (帰国子女)に
対する箱庭療法 と母親面接 について報告 している。中学生に関する事例 としては、田中(2003)が
、スクールカウンセ リングにおける女子の事例 を報告 し、女性性の 受容 と母親 との内的繋が りの確認を通 して登校 を再開する様子 と、その心理療法を通 して学校 内の教育相談システムの変化 を促 した様相を示 している。このように、不登校事例 に対 して箱庭療法を適用することについては、一定の評価がなされ ている。 しか しなが ら、不登校臨床では現実生活の変化や改善 も重視 され、その状況に応 じた 対応が期待 されるにもかかわ らず、箱庭事例理解 はメタファーの解釈 による心的世界の理解が 主であ り、現実生活の展開過程が箱庭作品にどのように反映 されているかに主眼を置いた報告 は、極めて少ない。そこで本研究では、 この点を踏 まえ、箱庭事例 に投映され る 「′い的世界」
と「現実生活」 との両者の視点か ら解釈を行 う可能性を明 らかにしたい。事例 は、不登校 を主
*国
立精神・神経センター精神保健研究所 **静岡大学教育学部附属教育実践総合センター五十嵐哲也・小林朋子
訴 に来談 した男子児童が、箱庭 に対 して、作品製作 としてではな くプレイの一環 として取 り組 んだものである。全31回の面接の中で、24回の箱庭 によるプレイを行 つた。 しか しなが ら、そ こでは箱庭作品で しばしば認め られ る 「戦い」の主題 (河合
,1969)が
表現 されたほか、死 と 再生、再会な ども見 られた。 また、箱庭 と現実生活の接点 として考 えられ る、カウンセ ラー(以下、Co)のまきこみ行動が頻繁に見受 けられ、Coと の関係変化が箱庭 に与 える影響が観 察 された。 さらに、現実生活の状況は母親面接 も併行 して展開 し、その展開が箱庭 における遊 戯表現に反映されていると考えられた。なお、事例 については、複数の事例 を統合 した記述 に するな ど、事例理解に問題が生 じない程度 に、詳細な部分に関 して様々な改変を加 えている。
2.事例の概要
(1)ク
ライエン ト(以下、Cl):男
子、10歳、小学校4年
生(2)主訴 :不 登校
(3)家族 :父 親 (以下、Faと略記。41歳、会社員)、 母親 (以下、
Moと
略記。39歳、パ ー ト) ・(4)問題 とその経過
幼い頃より問題がな く、大 きな病気 もしたことがない。学校では、 リーダータイプではない ものの、明る く人を笑わせ ることが好 きな性格のため友達 も多 く、 クラスの人気者である。成 績 も優秀で、あまり学校の勉強はしないが点数が よ く、通信教育でまだ学校で習っていない範 囲の勉強を軽々 こな している。 これまで、学校 に行 きたが らなかった ことは一度 もなかった。
しか し、
X年 2学
期が始 ま り、 まもな く全 く登校 しな くなった。Moに
よれば、夏体み明け す く゛の席替えで、隣の席がよ くお しゃべ りをする子になった ことがきっかけとの ことだつた。
Clはまじめな性格なので、授業 をきちん と聞かないことが許せない と
Moに
訴 えていたが、そ うした不満 を直接 その子には言 つていないようであつた。 また、 この頃か ら、Clは次第にMoに対する言動が乱暴にな り、 自分が欲 しい物はた とえ高額であっても 「買え」 と要求するな ど、
理不尽な主張を通そうとして、暴れた り脅 した りすることが多 くなったb不登校 とともに、 こ の家族への過剰な要求への対応 にMo、 Faと もに疲れ果てている、 とのことだった。
(5)来談経路
知人 にClのことについて相談 した ところ、その知人の子 どもが以前 に当該機関で継続面接 を受けていたことを知 り、薦められた ということで、自発的に来談 した。 これまで、 自治体の 教育相談機関、および医療機関に相談を行い、いずれ も月
1回
のペースで継続中である。今回 の来談 は、 これ までの機関では面接間隔が長 いほか、面接の中でClが遊ぶだけであった こと か ら、 さらに相談機関を探 した ということだつた。(6)面接構造
2週
間に 1回 、50分とした。母子 ともに第二筆者が面接を担当 し、分離面接 を基本 とした。3.面接過程
(1)第
1期
「箱庭 に取 り組むための準備」(箱庭1〜
箱庭2)<XttH月〜X+1年 1月>インテークでは、利発そうな印象のClとMoが来談 した。以上の概要 について話 した後、限 界設定 を した上でClをプレイに誘 うと、「他 に通 っていた ところでは、 これはなかった」 と 言つて、箱庭 に興味を示 した。「これ、やってみる?」 と誘 うと、「うん」 と言って、様々な ミ ニチュアを取 り出 しては砂の上にばら撒いた。そして、高い ところか ら落 とした り、 ミニチュ ア同士を衝突 させた りした。 また、男性 と女性の ミニチュアを取 り出 し、「
2人
は仲良 し。付 き合っている。エ ッチなことする」 と言つて、 ミニチュアの下半身を密着させ る動きを示 した (箱庭1)。 その後、ボー ドゲームに興味を示 し、「これ も初めてや る」 と言つていたが、ルー ル理解が早 く、年齢不相応なほどに知的な印象を感 じさせた。一方で、箱庭の統合性のない印 象 とのギャップに困惑させ られ る印象であった。プレイ後、面接システムの説明などを行 うと ともに、複数の相談機関へ同時に通 うことの危険性 を説明すると、「クリニ ックは継続するつ もりはない、 ここでの面接 を始 めたい」 との ことで、継続面接の契約 を行 った。 この間、Cl、Moと
もに饒舌であ り、不安の高 さが感 じられた。翌回では、Clは前回のボー ドゲームを選択 してプレイを行 ったが、βOへ の気遣い行動を見 せ、対人関係能力の高 さが感 じられた。 また、 トランプを使ったマジックを披露 して自慢する 素振 りを見せ、
Coの
反応 を試 しているようであつた。Moからは、Clからの過剰 な要求は減 少 しているがくFaか
らMoの
対応 の甘 さを指摘 され るとの話がなされた。 また、「Moと
Clは 常に一緒 にいるが、Clと してはFaとの接触 を求めているように思える。だが、FaはClと接 しようせず、
M6と
してはどうした らよいかわか らない」 との ことだった。「継続中である自治 体の教育相談機関で も、Faの 問題が最優先 と言われている。ただ、そこではClのプレイを担 当者がメモするだけであ り、Clと しては不満なようだ」 とい うことだった。 ―3回
目のセ ッシ ョンでは、Moと
Clの間で、面接時間の使い方をめ く゛って トラブルが発生 した。Clは、「砂 をや りたい」 と訴えたが、
Moも
「今 日は私が先 に話 したい」 と主張 し、結局Moの
話が先 になった。Moが日常生活に関するClへの対応 に関する不安 を話 し、Clを入室 させ ると、
す く゛
に怒って
Moの
ことを殴 り、泣 き喚いてCoと
の接触 を拒んだ。そこで、#4で「時間の使い方 について考 えよう」 と提案 し、 1回ご とにClが50分、Moが10分の回
/Clが
30分、Moが30分の回を作 ることにす るとい う合意 に至 った。その話 し合いの後、Clは箱庭 を選択 し (箱 庭2)、 前回の箱庭 同様、次々に ミニチュアが持ち込 まれた。ただ し、今回は 「にぎやかな町 の中で恐竜や兵隊が暴れ、それを腕力の強いおばあさんが総理大臣になつて治める」 という、
ユーモアにあふれたス トー リーが展開 した。また、その中で、工事の人が車を埋めるという作 業 もなされた。 ・
(2)第
2期
「敵 と仲間の出現」(箱庭3〜
箱庭6)<X+1年2月
〜X+1年3月
>箱庭
3で
は、恐竜の ミニチュア と怪物の ミニチュアを戦わせ るというス トーリーが出現 した。その戦いに、 どん どん敵や味方が加わっていき、最後 には一見弱々 しそうに見える小さな猫が 力 を発揮 して怪物チームが勝利するというもので、箱庭 2と 同様、力動関係の逆転現象を意識 した構図が印象的であった。 また、箱庭
4で
は、 これ らの敵・ 味方関係が入 り乱れたほか、敵・味方関係な く攻撃する存在が出現 し、混乱 した様相を呈 した。箱庭
5で
も、同様 に恐竜 と 怪物の戦 いが繰 り広 げられたので、「2人
は どうして戦 っているの?」 と問 うと、「わか らな五十嵐哲也・小林朋子
い」 とい うことだつた。 しか し、直後 に
2人
がキスをす る場面が出現 したので、「本当は仲良 しなのかな?」 と聞 くと、2人
は兄弟だつた とい うス トー リー展開を示 した。箱庭6で
は、や は り恐竜 と怪物が戦 うが、マ リア像が戦いに参戦。 この ことを機 に、恐竜 と怪物は手を組み、右半分 を陣地 としてマ リア像 をやつつ けるス トー リーを展開 させた。
この時期、
Moか
らは、当初、「ここでの様子 に変化 はあるのか」「ここの部屋の時計 は見 に くい」 という批判的な言葉が認められた。 また、 自治体の教育相談機関での対応 についても、「元気に見えるためか相手にされていない」「ア ドバイスもな く、あやふやな気持ちになる」
と述べ るな どの批判が見 られた。 しか しなが ら、Clの過剰 な要求が消失す るにつれて 「教育 相談機関の担当者 に心を開けるようになってきた」 と述べ、
Mo自
ら「同年代の子 どもと触れ 合 う機会を持たせてあげたい」 と不登校の子 どもを対象にした塾 を探すようになった。 また、家では
Moに
対 して一緒に寝たい と述べ るようにな り、治療的退行が進んでいることが認めら れた。 さらに、Faが Moの対応 を批判す るため、Moが困っているこ とも繰 り返 し述べ られ る ようになった。
(3)第
3期
「仲間の確立」(箱庭7〜
箱庭10)<X+1年3月 〜X+1年5月 >この時期 になると、恐竜 と怪物 は仲間 として行動 し、悪者であるマ リア像 を倒す とい うパ ターンでス トー リーが展開す るようになった。ス トー リー としては、マ リア像が世界征服を企 んでお り、それを阻止す るために仲間で協力す るとい うものである。そ して、 これ以後 のス トー リーは基本的にこの形 を踏襲 し、最後 は必ず恐竜 と怪物およびその仲間たちが勝利する、
とい うパターンであった。仲間 としては、箱庭
1で
登場 したおばあさんに加 え、首だけの人形、象、サイ、 も出現 し、 これ らが固定メンバーになった。 また、攻撃の際にはロール・ プレイン グ・ ゲームの形式を取 り入れ、攻撃方法を
Coに
選択 させ るとい う方法が用い られた (箱庭9
以降)。 その中で、スカー トの中を覗 く(箱庭7)といつた性的な表現、首だけの人形が 自ら の血液を使つて攻撃をする (箱庭8以
降)と
い うグロテスクな表現が認められ るようにもなっ た。 さらに、死んで しまった仲間が生 き返 る一方で、敵であるマ リア像 も復活する (箱庭8)
というように、敵 も仲間 も容易にいな くなった り、出現 した りする様相が示 されるようになっ た。加 えて、箱庭
8か
らは、恐竜 と怪物の 「再会」か らス トー リーが展開され るようになったことも印象的であつた。
この ように、次第 にCoと の関係性が深 まる中で、Clの中にある攻撃性 とその表出方法 にお ける葛藤、知的水準の高 さに象徴 され る早熟 さと同年代集団の中における違和感が明 らかにな るにつれ、Clは落 ち着 きを取 り戻 し、用事 を見つ けて放課後 に担任 に会 いに登校す る とい う 出来事があつた。 しか し、その折 に担任か ら登校 を促 され、家に帰つてか ら「行 きた くなかっ た」 と泣 き喚 き、Moが「休んで もいいが目標を」 と述べて、家の手伝いや学習に関する約束 をするという現実的課題の取 り組みが認められた。同時に、 日常生活で も、近所 に住む低学年 の子 どもと知 り合い、頻繁に家を行 き来 して遊ぶ ようになった という報告がなされ、楽 しい生 活を送っているとい うことが認め られた。
一方、
Moと
の面接では、教育相談機関での担当者か ら、Moの
対応 について責 め られ ると い うことがあ り、それを機 にしばらく中断 し、後 にとうとう担当者変更を申 し出 るとい うこと があった。新 しい担当者 に対 し、Moは
良好 な印象 を持 ってお り、「今度 は落 ち着いて通 えそ う」 と述べ るようになつた。また、Faに 対す る怒 りの感情が表出され るようにな り、家で もClと ともにFaを 攻め立てるとい う事件が起 こった ことが報告 された。そして、Clが生 まれた 直後か らFaは 疾患 を患ってお り、現在 も治療 中である、 しか しその ことについてClは一切知 らない とい うことが伝えられた。そのため、
Moは
Clの問題 をFaの 問題 と結び付けられて指摘 され ることが非常 に多かった こと、Clのみな らずFaに も気 を遣 って生活 している状態である ことが述べ られた。そ して、「休みの 日には、キャッチボールをす ることもある。Clとの こと もFaな りに頑張って くれてい るが大変なんだろうと思 う。 よ くやって くれていると思 う。あ ま り多 くは求め られない」 と述べ、Faの 努力を認 めるようになった。加 えて、ClがFaの こと を慕 っている様子 も具体的に述べ られるようになった。(4)第
4期
「安定した基地からの出撃」(箱庭H〜
箱庭22)<X+1年 6月 〜X+1年H月
>箱庭
Hか
らは、仲間たちが暮 らすマンシ ョンが箱庭 に置かれ、一緒に暮 らしているとい う設 定が加わった。そして、首だけの人形 はアイ ドル として働いている (箱庭H)などのキャラク ター設定が加わ り、朝食 を買いに行 く (箱庭12)、 皆でWを見 る (箱庭14)、 戦 いに勝 つて給 料が支給 される (箱庭15)な
どの 日常生活の行動が表現 され るようになった。 しか しなが ら、マ リア像 との戦いは続いてお り、時には大地震 (箱庭H)や洪水 (箱庭
20)に
よって全ての登 場人物が死 にかけることや、死んで しまった仲間を埋める (箱庭18)と
いった出来事 も起 こっ た。 また、首だけの人形 によるグロテスクな攻撃方法 も、依然 として表現 されていた。 また、箱庭14では、戦いに参加 しようとして役 に立たなかった蛇を焼いて食べて しまうという表現、
箱庭18では、倒れているサイの生肉を兵士が食べ るという表現が、それぞれ見 られた。
ところが、カブ トムシ とい う新たな仲間の出現 (箱庭12)、 皆で移動する際のガソリン給油 の表現 (箱庭H)、 敵につか まった怪物 を仲間で協力 して助け出すス トー リー (箱庭19)、 壊れ たブル ドーザーを皆で直す作業 (箱庭20)、 怪物が事故にあったけれ どもリハ ビリを している 様子 (箱庭21)、 仲間を 「自己再生」の術で蘇 らせ る技 (箱庭
22)な
ども見 られ、エネルギー の高 まりや、新たな対処スキルの獲得が示唆 された。実際、「午後 は友達 と遊ぶか ら」 と午前 中へ予約 を変更するなど、箱庭 よりも現実生活の方を優先できることが増えていつた。Moに
よれば、実際に様々な変化が起 きているようであった。 まず、 クラスの友人か らメッ セージが届 けられ、それに対 して返事を返 した とい う出来事があった。それをきっかけに、自 発的に何人かの友人が家を訪ねて くることがあ り、会えなかったものの嬉 しそうだった、 とい う報告がなされた。 また、教育相談機関において小集団グループ活動が開始 され、そこで高学 年の児童 と親 しくなった こと、それに伴 つて今 まで頻繁に遊んでいた近所の低学年の子 とは遊 ばな くなったこと、が認められた。さらに、「野球チームに行つてみたい」 と言い出 して
1人
でボール投げの練習を始 めた り、遠 くか ら学校の運動会を見学 して大声で応援 した り、 といった様子が見 られ るようになった。
これ に対 し、
Coは
「担任の先生か ら、少 し接触 を取 つて もらっては」 とMoに
提案 した ところ、「今の状態で落ち着いていて、先生 も私 も安心 している気が しているが、 このままでいい のか と内心では焦っている。最近は、私自身 も先生 と会 う機会がない」 と述べ られた。そこで、
Moよ
り担任の先生へ連絡 を取 ってみては、 と再度提案。す ると、担任の先生 も同様の気持ち であ り、 これか らは頻繁に連絡を取 り合おうとい う確認がなされた。そして、その後の家庭訪 間の際、「クラスでマ ラソンを していて、グラウン ドを1週
走 るごとにシールを1個
貼 ってい るんだ よ」 とカー ドを渡 された ことをきっか けに、Cl自身 も近所 を走 ってシールを貼 ってい五十嵐哲也 0小 林朋子
く活動を行い始めた。その様子か ら、担任の先生が 「放課後、体育だけで もや りに来ない?」
と誘い、Clも喜んで
1週
間に1度
くらいのペースで通 うようになった。加 えて、家庭でのClの様子 も変化 していた。 まず、「食事 の食べ こぼ しな どが増 え、幼 く なった気がす る」 との ことで、Clの年齢不相応だった印象か ら、徐々に年齢相応の子 どもら しさが見 られ るようになつてきたようであつた。
Mo自
身 も 「考 えてみると前 は手のかか らな い子だつた」 と振 り返 り、Clが十分 に自己表現で きていなかった ことに気づか された、 と述 べ るようになった。 また、Moと 2人
で節約 に励み、「出費ゼ ロの 日」を作 ろうとしている、とい う様子が報告 された。当初、Clは、高額であつて も自分がほ しい と思つた物品は手に入 れない と気が済 まない、 とい う理不尽 な主張をしていたので、
Moに
とって もCoに
とって も、この変化 は非常 に大 きなもの と感 じられた。 さらに、Faに 対 しては 「肩車 して」 と身体接触 を要求す るようになったほか、「もっ と
Moの
ことを大事 に して」 と紙 に書 いて伝 えるとい う 出来事があった。加 えて、Moに
対 しては、「Faの ことで機嫌 が悪 いんで しょ」「またFaの こ とで怒っている。間に立っているClは大変 なんだ よ。そ うい うことはFaに 直接言 つた ら?」と述べ るようになった。 このClの変化 によって、
Moは
自分 とFaとの関係について考 え始め、Mo自
身 も大 きな変化を見せ始めた。この
Moの
変化 については、Faも 来談す るようになった ことも関与 していると考 えられ る。この時期のMo面接では、初 めてFaと ともに来談 し、その後 も時折 ともに来談することが認め られ るようになったのである。 ともに来談 した折には、
Moと Faで、長期体暇をClと どうやつ
て過 ごすか、な どの検討がなされ、Faの ことをMoが責める場面が しば しば見受けられた。 し
か し、Moの
みの来談の際には、「Faは どう接 していいかわか らないんだ と思 う」「FaもClの
こと考 えている様子がある。Clの要求 にも応 えていることもある」「他 の家で も父親 はあま り 育児には参加 していない。 ましてや、調子が万全ではないのだか ら、あま り求めて も大変なの かな」 と、Faの 対応を評価する発言が認められ るようになった。そ して、「私が うま く振舞 う ことで、Faも Clと楽 しく遊べ る」 ことに気づ き、Faの 体調 を気遣 いなが ら、Clの要求を満た してい く方法を考 え、実践 してい くようになった。さらに自らに対 して も、「いつ も家の手伝 いな ど、ClとFaに 強制 してや らせて きたが、たまに自分
1人
でやってみようと思ってやつて みた ところ、他の家事を知 らない間に手伝 って くれていて、 うれ しかつた。 こういう関係がベ ス トだ と思 う」 と内省を深めていた。(5)第
5期
「復興 と永遠」(箱庭23〜箱庭24)<X+1年12月〜X+2年3月
>箱庭23では、いきな り川を作つて、
2本
の橋 を架ける作業 を行い、様々な ミニチュアを乱雑 に置いた上で、「戦争が起 きて、メチャクチャになった町を建て直す」 とい う作業を行い始め る。 しか し、スムーズに事は運ばず、首だけの人形が皆のために用意 した復興費用 をマ リア像 に盗 まれ、攻撃の配置な どの初 めての 「作戦」を立ててか ら、皆でそれを取 り戻す とい うス トー リー展開を見せ る。 また、敵側 にユニークなキャラクターの警察官が登場。 さらに、首だ けの人形 は (やは り血液を使った)バリヤ攻撃 という新 しい技を編み出す。結局、箱庭の中に は登場 していない (棚の中にある)ミ
ニチュアが攻撃を加え、敵を倒す という方法で戦いは勝 利 したが、 この決着方法 も、 これ までには認め られないものであつた。そ して、 この後、町が復興する様子を作 り上げ、いつ もの仲間が暮 らしている様子を展開 し ている際、Moが「待っている間に寝て しまつて、 もう時間か と思って慌てて しまつて」 とド
アをノックする。Moが「入っていいかな」 とClに尋ね、入室する と、CIは調子が狂 った様子、
Moは
その様子 を察知 して 「恥ずか しいかな」 と述べ る。Clは時折Moの
様子 を見なが ら、そ れ まで とは違 うス トー リー展開を示す。 この会話か ら、Coは
、「Moに
とって も、Clにとって も、『ClとCoと
の箱庭』は特別なものであったんだな」 と実感 された。 また、Moの
入室 は、箱庭でのプレイの世界 に、
Moを
仲介役 として現実世界 とつながった感覚があるのではないか、と考 えられた。実際、 このセ ッシ ョンの最後、
Moか
ら「次回の予定の 日は、Clのクラスの授 業参観が入 っているので、できれば時間をず らしては しい」 と述べ、ClとMoの
間で学校の話 題 をしてか ら帰宅 していった。この ことをきっかけに、Clと
Moは
、家庭で も学校の話題 をす るようになった。Moに
よれ ば、「今 まで学校の話題 はタブーだ と思っていた。だけど、Clの方か ら『クラスの子 と遊んで もいいよ』 と言い出 した。そ して、『Moが学校の こと気遣 って言わないのわか る、それは う れ しいけど、そうさせている自分が嫌 なんだ』 と言つていた。 この機会 に、 もっ といろんな話 ができるようになればいい と思 う」 とのことだった。そして、その後には、実際にクラスの子 と家で遊ぶ ようになった ことが報告 されたほか、Clは「実は、ずっ とMoに
気 を遣っていたん だ。Moの
顔色 を見て、Moが楽 しくなるように気 を遣 っていた」 と言 うことを伝えた。 これ に対 しMoは
、「私 と立場が逆転ですね、Clに支 えられてい るんです。Faの ことで精一杯で、Faとの間で感 じていた苛立ちで、Clのことまでかまっていられなかった」 と述べた。そ して、
「私 自身 もかまえない という寂 しさがあった し、Clも寂 しかった と思 う」 と、内省の言葉が 認 め られた。そ して、 この箱庭23以降、Clは箱庭で プレイをす ることをやめて しまった。時 に、「チェスはないの
?将
棋 は?」 と言つてみた りして、 これ まで関心を示 さなかった様々な ゲームに取 り組み始めるようになったのである。しか し、 この時期 に
Coの
退任が決 ま り、Clとの面接が続 けられない とい うことになった。これ に対 し、Clも
Moも
、シ ョックな様子 は見せ るものの、「大丈夫です」 と述べ るに とど まった。引継ぎ等について、早急には決められない とのことで、2回
にわた り検討 した。 この 間、箱庭24を作成する。箱庭24は、「永遠の森」に迷い込んだ恐竜 と怪物およびその仲間が、怪物の恋人である女の 子 を救い出そうとするス トー リーであった。途中、兵士たちに襲われた り、マ リア像の企みで 抜 け出すために使用 した飛行機 を墜落 させ られた りする。 この墜落をきっかけに、ス トー リー 性のある展開は終了 し、飛行機や ブル ドーザー、神社、その他様々なものを箱庭の中に投入 し ては埋め尽 くす とい う作業を、延々 と繰 り返す ことに没頭するようにな り、箱庭の中で別れの 作業に取 り組んでいる様子が感 じられた。
結局、面接は継続せず、終結す ることになった。そして、現実生活で も起 こる別れ (担任の 変更、教育相談機関での友人の卒業な ど
)の
話 をす ることが多 くなった。また、担任の先生か ら、 さらに学校での課題 に誘われ、喜んで夕方頃に登校 して取 り組む様子 も語 られた。最後の 面接では、別れに直面化するのを避 けるためか、「話 は変わるけど」 と述べて、ペッ トの話や 家族の話な どを饒舌 に話 し、「あ〜、疲れた。すご く話 した後 は疲れちゃって、次の日は く゛つ た りするんだ」 と述べた。さらに、「話 に付 き合 つて くれてあ りが とう、さようなら」 と言っ て終結 となった。五十嵐哲也 0小 林朋子
4.考察
本事例 の箱庭面接過程の流れについて、主要 なテーマ、繰 り返 された事象な どをTable lに まとめた。
Clは、当初、知的水準の高 さ (プレイの様子や現実状況
)や
早熟 さ (箱庭の性的表現な ど)を背景 に、同年齢集団 との交流が極 めて困難な状況の中、適応 を試みて 「文旬 も言わず に」
「人を笑わせ る」対処方略を用い、言葉を抑圧 してきた と考えられる。またその状況は、Mo
がFaを 心配 して庇護す る気持 ちに由来す る、Clの自由な感情表現が抑 えら、れて きた事実 にも 起因 していた と考えられ る。 しか しなが ら、 自身 と極めて異質なクラスメイ トの存在 を契機 に そのバ ランスは崩れ、不登校 に至った もの と推察 される。箱庭 を用いたプレイセ ラピー過程は、
そ うしたClが抱 える様々な要因のために意識的に統制 されてきた感情表現 を、無意識 に引き 出す効果があつたもの と考えられ る。繰 り返 されたグロテスク表現 は、 まさにその感情表現そ の ものであ り、Clが抱 えていた攻撃性 と相侯 つて、行 き過 ぎた表現方法が箱庭の中で選択 さ れて表出 したのであろう。そして、その新たな自我 との直面、それまでの自我 との決別の統合 過程 は、河合
(1969)が
述べ るように、「埋 め る」「死ぬ」「復活す る」 といつた表現 に象徴 さ れ る、死 と再生の主題に表現 されていたもの と考えられ る。ところで、具体的に面接過程を見てみると、本事例の箱庭 において特徴的であるのは、第
2
期か ら最終箱庭 に至 るまでの間、全てにおいて 「戦い」のプレイが繰 り返 された ことである。小学校
6年
生の不登校男児に対 し、箱庭を用いた事例 を報告 した日浦・森 (2o02)は 、作品に おける 「対決」が親子関係の葛藤の様相 を表す手がか りとなる、 と述べている。本事例では、当初、敵 と仲間の混乱が何度か生 じたが、 その後 まもな くほぼ消失 した。 日浦・森 (2002)の 指摘 を踏 まえると、MoがClと十分 に接す ることがで きず にいた とい う「さみ しさ」のため、
またFaの 疾患について何 も知 らされていない とい う秘密の存在 のため、Clには 「甘 えたいが 甘 えられない」葛藤状況が生 じてお り、誰 を信 じてよいのかわか らない という心情が箱庭 に投 映されたのではないか と考えられる。 また、敵 と仲間の混乱がほぼ消失 した箱庭
6を
境 に、陣 地の形成や、Coの
まきこみ行動の出現が認め られ ることか ら、 こうした心情 はCoに
対 して も 向けられていたもの と推測 され、Coの
安定的態度 によって徐々 に敵 と味方の区別がつ けられ るようになったもの と考えられる。 これは、再会の主題が、箱庭8〜
箱庭10で認められたこと か らも示唆 され る。すなわち、味方であるCoと
また会 えた、 とい う喜びが投映 されていたの ではないか。そして、Coと 会 うことが当た り前 と感 じられ るようになった時か ら、再会の主 題 は消失 したのではないか、 と考 えられ る。 この安定感 については、第3期
に至って陣地が「皆で住むマンシ ョン」 という、 まさに安定 した場所になつた時期 とも符合する。
では、 こうした心的世界が投映 されていた箱庭作品の流れは、現実世界の転換過程 とどのよ うに対応 していたのであろうか。特徴的であるのは、第
4期
において、新たな仲間の出現やエ ネルギー補給、修復や再生の作業が箱庭で展開 され るに至 った際、Clが それ まで「文句 も言 わずに」我慢 してきたことをMoと
Faに 対 して直接的に言語化 したことである。 このようなCl 自身の変化を基盤 とした親子関係の変化過程が、本事例では的確 に箱庭表現 として表出 してい た、 と指摘することが出来 る。 また、それだけではな く、第2期
において、それ まで敵であつ た恐竜 と怪物が仲間になるに至 り、それまでMoがCoに
対 して向けていた攻撃性 (「Coに
も非 難 され るのではないか」 とい う防衛)が認め られな くなった。 また第3期
に、箱庭の中で仲間 が増 えて固定的になるに至っては、Moが
それ までCoに
語 らなかつたFaの 疾患について明 らTable l 箱庭面接過程の流れ 戦 いの構 図 敵 と仲間
の混乱 陣 地 死 と再生 再 会
グロテスク 表現
日常生 活表現
Coの ま
第1期 箱庭 1 × × × × X × × きこみ×
箱庭
2
× × × × × × × ×第2期
箱庭3 恐竜
VS怪
物 × × × × × × ×箱庭
4
恐竜VS怪
物 ○ × × × × × ×箱庭5 恐竜
VS怪
物 × × × × × × ×箱庭
6
恐竜・怪物VSマ
リア像 ○ ○ × × × × ×第3期
箱庭
7
恐竜・怪物・仲間VSマ
リア像 × × × × × × ×箱庭
8
恐竜・怪物・仲間VSマ
リア像 × ○仲間 と敵が
復活する ○ 血液で攻撃 × × 箱庭
9
恐竜・怪物・仲間VSマ
リア像 × ○ × ○ 血液で攻撃 × ○箱庭10 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × × × ○ 血液で攻撃 × ○第4期
箱庭H 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○大地震で仲間
が死にかける × 血液で攻撃 ○ × 箱庭12 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○ × × 血液で攻撃 ○ ○箱庭13 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○ × × 血液で攻撃 × ○箱庭14 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 ○ ○ 蛇 の死 ×血液で攻撃
蛇 を食べ る ○ × 箱庭15 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 ○ ○ × × 血液で攻撃 ○ ×箱庭16 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○ × × 血液で攻撃 × ○箱庭17 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○ × × 血液で攻撃 ○ ○箱庭18 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○死 ん だ仲 間 を埋 め る ×
血液で攻撃
生肉食べ る × ○ 箱庭19 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○ × × 血液で攻撃 × ○箱庭20 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○洪水で仲間が
死にかける × 血液で攻撃 × ×
五十嵐哲也・小林朋子
戦いの構図 敵と仲間
の混乱 陣地 死 と再生 再 会
グロテスク 表現
日常生 活表現
Coのま 第 きこみ
4期
⌒続 き︶
箱庭21 恐竜・怪物・仲 間
VSマ
リア像 × ○怪物 が リハ
ビリ × 血液で攻撃 ○ ×
箱庭22 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○自己再生の 術
× 血液で攻撃 ○ ×
第 5 期
箱庭23 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ○ × × 血液で攻撃 ○ ×箱庭24 恐竜・怪物・仲間
VSマ
リア像 × ×ミニ チ ュア
を埋 め る × ×
× ×
かに したほか、それ まで一方的に非難 していたFaのClに対す る対応 を認める発言が生 じて き た。 さらに、教育相談機関の担当者の変更を申 し出、Moがようや く落ち着いて通 えるように なったの も同時期であつた。 このように、
Mo側
の変化やMoを
取 り巻 く援助資源の存在 さえも、Clの箱庭 には表現 されていた可能性がある。
加 えて、Cl自身の生活 に目を転 じる と、 さらにい くつかの点が指摘で きる。第
3期
に箱庭 の中で仲間が確立 した際、実際 にClには低学年の子 どもと知 り合 うとい う出来事が起 こって いた。そして箱庭で新たな仲間が出現 した第4期
では、現実にクラスメイ トが家を訪ねて くる とい う出来事が起 こり、Cl自 ら「野球チームに入 りたい」 とい う発言が認 め られた。また教 育相談機関においては小集団グループ活動が開始 され、新たな高学年の友人を獲得 し、それま での近所の子 どもとの遊びか ら変化 した様子が見 られた。 このように、箱庭 における仲間の出 現 は、Clの現実世界 における仲間の出現 を示 していた可能性が高 く、 したが って 「敵」「味 方」を必要 とした 「戦い」の箱庭表現 は、Clにとって不可欠な ものであつた と示唆 され る。また、 こうした状況 に合わせて、Clは徐々 に部分的登校 を再開 し始 め るが、その時期 は第
4
期 に、箱庭の中で 日常生活表現 を始 めた頃に符合す る。Clは箱庭 の中で、Clにとっての 日常 生活=学
校への復帰の準備 を模擬的に行 つていたのではないか、 と示唆される。 これが端的に 表現 されているのが、第5期
の箱庭23である。箱庭23は復興がテーマであるほか、 しば しば統 合の象徴 とされ る (河合,1969)ト
リックスター的な役割を担つた 「警察官」 も登場 した。 ま た、川に橋 を架 けるとい う作業を行ったわけだが、偶然 にMoが初めて箱庭場面 に立ち会 うと いう出来事が生 じた。加えて、そこでは箱庭の中で新たな攻撃方法が示 され、新たな対処スキ ルの獲得が示唆された。そして、 このセ ッシ ョンを契機 にClとMoは
率直 に学校 について会話 をするようにな り、以後、箱庭 をプレイ として選択することはな くなって、学校への部分的登 校が拡大 した。 こうした自我の統合 と考 えられ る状況 と、現実的な登校行動の拡大、さらに箱 庭作品の中断は、相互に関連 しあって表出されたものであろうと推測 される。箱庭24に関 しては、「永遠の森」の表現 に象徴 されるように、
Coと
の別れを強 く意識 した作 品であると考 えられ る。 したがつて、Coの
退任 とい う外的事実が生 じなければ、 この箱庭作 品は出現 しなかった可能性 もある。 しか しなが ら、いずれにせ よ、Coの
退任 とい うClにとっ ての現実課題 と、それに伴 う別れの寂 しさという心的世界が双方 ともに表現 されたものであろ う。 このように、いずれの箱庭 において も、その解釈 にあたっては、メタフアーの解釈を基に した心的世界の理解の視点 と、現実世界の状況 との関連性を見て取 る視点の双方が不可欠であり、面接過程の展開に寄与 したことが指摘できる。
5.おわ りに
本研究では、箱庭 をプレイの一環 として繰 り返 し用い、その中で 「戦い」のプレイを繰 り返 し表現 した不登校男児の事例 を取 り上 げた。そこに表現 され る主題 や繰 り返 される事象は、
Clの心的世界 と現実状況の双方 を的確 に示す ものであった。今後 は、 ここで示 された視点が 他の臨床的課題 にも普遍的なものであるのか、 また発達的変化は認められるのかについて、検 討を重ね る必要がある。
引用文献
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芳地貴子・青山富貴子 ,岡 田弘司 2003 心因性腹痛、不登校 を呈 した
6歳
女児に対する箱庭 療法 心身医学,43,387.五十嵐哲也 0萩原久子 2004 中学生の不登校傾向 と幼少期の父親および母親への愛着 との関 連 教育心理学研究,52,264‐ 276.
河合隼雄 1969 箱庭療法入門 誠信書房
文部科学省 2006 平成17年度文部科学 自書 国立印刷局
杉浦京子・重村朋子 1995 妹への攻撃を伴 つた不登校児の箱庭療法の過程 と母親面接 日本 医科大学基礎科学紀要,19,33153.
田中慶江 2003 心因性頻尿か ら不登校 に至った中学生のスクールカウンセ リング 心理臨床 学研究,21,329‑340。
谷山純子・西村良二 1999 抜毛症 と不登校 を呈 した