• 検索結果がありません。

将来宇宙輸送ワークショップ報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "将来宇宙輸送ワークショップ報告書"

Copied!
52
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)
(3)

宇宙航空研究開発機構特別資料

JAXA Special Publication

将来宇宙輸送ワークショップ報告書

 

将来宇宙輸送ワークショップ事務局編

 

   

2 0 0 7 年 7 月

July 2007

宇宙航空研究開発機構

(4)
(5)

主 催:宇宙航空研究開発機構  角田宇宙センター 日 時:2007年3月10日9:30より13:00まで

場 所:仙台ホテル4F  萩の間(宮城県  仙台市  青葉区)

参加者:招待参加者6名,JAXA職員22名

(招待参加者 50音順)

  東京大学  河野  通方 教授   東京大学  長島  利夫 教授   北海道大学  永田  晴紀 教授*1   秋田県立大学  新岡   嵩 教授   東北大学  升谷  五郎 教授*1   慶應義塾大学  松尾  亜紀子 助教授*1

(JAXA参加者)

  角田宇宙センター所長  若松  義男

  総合技術研究本部  ロケットセンター長  志村   隆   総合技術研究本部  複合推進研究グループ長  苅田  丈士*1

  ロケットセンター(順不同)

    小野寺  卓郎,吉田   誠*1,佐藤  正喜,冨田  健夫*3,吉田  義樹,

    橋本  知之,高田  仁志,青木   宏,森谷  信一,岩崎  文哉   複合推進研究グループ(順不同)

    富岡  定毅*2,平岩  徹夫*1,植田  修一*2,齋藤  俊仁*3,谷  香一郎*3     加藤  周徳,伊藤  勝宏*1,丹野  英幸,佐藤   茂

  総合技術研究本部  プロジェクト研究協力室     高橋  政浩

  *1  関連話題提供   *2  司会

  *3  事務局

(6)
(7)

1.緒言 ………   1

2.本ワークショップの位置付け,テーマ,議事進行について ………   2

3.「2007年の宇宙輸送の姿」………   3

4.関連する話題の概要 ………   4

 4.1  新世紀のロケット開発に求められるもの ………   4

 4.2  複合推進等の新たな宇宙推進の方向性と展望 ………   4

 4.3  宇宙開発における高エンタルピ環境の研究の重要性とその展望 ………   5

5.主な討議内容 ………   6

 5.1  独自技術,優位技術の重要性について ………   6

 5.2  小型ロケットのメリット ………   7

 5.3  有人宇宙輸送についての考え方 ………   7

 5.4  宇宙研究開発の拠点を目指して ………   7

 5.5  JAXA角田の研究開発活動の在り方について ………   8

 5.6  積極的な成果の広報,利用者コミュニティの組織化について ………   8

6.今後の展開 − 結びに代えて ……… 10

(8)
(9)

1.緒言

 自在な宇宙での活動,開発を実現する上で,宇宙輸送システムはそのインフラの基本とい える。現在もまた将来も,我が国独自の輸送手段を持つことは,宇宙開発を行う上で必須と も言えるアドバンテージであり,重要な技術として広く認識されている。

 一方,現在世界に目を向けると,産業としての宇宙輸送,すなわち,年間20基前後で推 移する数少ない衛星打ち上げ市場は欧州のアリアンロケットが既に大きな領域を占めてお り,新たにこの市場に参入することは容易ではない。また,米国は国際宇宙ステーション以 後,常に独自の政策的方向性の下で計画を立て,推し進める考えに偏りつつある。こうした 中,我国の宇宙開発に係わる多くの研究者は,日本が宇宙輸送において進むべき方向性が見 失われているという危機感を抱いており,自信を失い研究の軸にもぶれが生じかねない状況 に追い込まれている。

 本ワークショップでは,将来の宇宙輸送の展望を開くことを目指し,あえて「将来あるべ き宇宙輸送系と期待されるエンジン技術 / 往還熱空力技術の進化 〜宇宙輸送の産業化と日 本による国際市場の寡占化の視点から,産学官の連携〜」という高い目標のテーマを掲げた。

宇宙開発の軸を定めるにあたり,これをJAXAだけの問題として捉えることは無意味であり,

日本全体として動きを作る事が肝要と考える。まずは本ワークショップを通して「学・官」

による議論を深め,日本の宇宙開発の行く末をリードしてゆく第一歩となることを目指す。

今後はさらに,「産」の意見を取り込み,より議論を深め,日本の宇宙輸送の在り方を広く 提案して行く。また,こうした取り組みを通して,宇宙輸送あるいは推進系の研究の在り方,

方向性について,今一度吟味を行い,JAXA角田センターとして,より一層,日本の宇宙開 発に資することのできる道筋を探る事を目指すものである。

(若松 義男)

(10)

2.本ワークショップの位置付け,テーマ,議事進行について

 本ワークショップは,JAXAにおける将来宇宙推進技術研究の拠点である,角田宇宙セン ターが主催し,2007年3月10日に仙台市にて開催した。2005年に公表されたJAXA長期ビジョ ンでは,2025年の宇宙開発の有り様に対して一定のイメージを与えている。しかしそこに 至る具体的な研究開発の道程は今だ明確にはなっておらず,また日本全体を巻き込んだ開発 への取り組みという点でも検討の余地を残している。こうした不明瞭な状況を打破するため,

角田宇宙センターでは新たな取り組みとして,センターが深く関わる宇宙輸送の研究開発が 歩むべき道筋,特に輸送系とその推進機関のあり方を考え,研究開発のあるべき方向・内容 について,産学官の連携した議論を深めることとした。

 本ワークショップでは,日本の将来の宇宙輸送を様々な局面から考える上で一つの統一的 なテーマとして,

 「将来あるべき宇宙輸送系と期待されるエンジン技術/往還熱空力技術の進化

   〜宇宙輸送の産業化と日本による国際市場の寡占化の視点から,産学官の連携〜」

 を掲げた。このテーマを念頭に,角田センターが独自性を発揮する三つの研究分野,すな わち,

 ・先進的なロケットエンジン研究開発

  小テーマ名:「新世紀のロケット開発に求められるもの」

 ・複合サイクルエンジンなどの新たな概念に基づく宇宙推進研究   同:「複合推進等の新たな宇宙推進の方向性と展望」

 ・宇宙からの帰還技術には欠かせない高エンタルピ環境の研究

  同:「宇宙開発における高エンタルピ環境の研究の重要性とその展望」

 の各分野について,現在,「学」を代表する先進的な研究活動を進めている大学関係者6名と,

角田センター研究員によるフリーディスカッション形式の議論を行った。

 三つのテーマに先立ち,「2007年の宇宙輸送の姿」(3章参照)と題して,世界的な規模で 俯瞰した現在の宇宙輸送の状況,研究開発活動の方向性についての分析結果を角田センター より報告し,以後の議論の一助とした。

 三つのテーマそれぞれについて,最初に大学関係者から,続いて角田センターから,それ ぞれ10分程度の関連する話題の提供を行った。(4章参照)この中で,大学における取り組み,

広く今後を展望した活動や考え方等を自由に発表し,その後,質疑,討議を行った。各テー マにつき1時間を目安に区切りをつけたが,最終的に約30分予定時間を越える活発な議論が 行われ,将来の宇宙輸送に関する展望,角田宇宙センターに対する要望など,様々な事項が 話し合われた。

(11)

3.「2007 年の宇宙輸送の姿」

 本ワークショップで議論を深めるにあたり,今一度,現在の世界における宇宙輸送の現状 を参加者全員で認識するため,JAXA角田での分析を行った結果を発表した。要旨を以下に まとめる。なお,発表に用いた資料を添付資料1として巻末に添付する。

 宇宙輸送は1988年の冷戦の枠組み崩壊のあと打ち上げ数が減少を続け,2000年には60機 を切るまでに低下していた。しかしこの年以降低下傾向はなくなり,一定の需要が見込める ようになった。商業衛星向け需要も同様で年間約20機程度ある。2006年ごろからは需要が 回復する可能性が指摘されるようになってきた。

 打ち上げ数の国際配分をみると,ロシアとアメリカ(ロシアなどとの合弁企業も含む)で 全体の八割を分け合っている。残りは日本,EU,中国などが打ち上げている。商業衛星の みで考えると,ロシア,アメリカ,EUでほぼ寡占状態にある。

 静止衛星の大型化トレンドもあり,打ち上げ機の開発は低軌道10−20トンクラスに集中 する傾向がある。しかし,打ち上げ機供給能力は年間100機程度あるといわれており,かな り過剰な状態が続いている。

 カスタマーからの打ち上げ機への要望はコスト低減は当然として,むしろ打ち上げの質,

すなわち即応性,柔軟性などにある。

 このような環境,需要に対して,日本を除く主要国は再使用もしくは部分再使用打ち上げ 機へシフトしつつある。特にEUは次期アリアンのための概念検討を大規模に行う中で,部 分もしくは完全再使用機へ力点を置くようになっている。急激に宇宙開発規模を拡大する中 国,インドも再使用へと動きつつある。1980−90年代の再使用機検討と違い,今回は一段 目からの再使用を検討する傾向にある。その中で空中発射が再度注目されており,今後数年 で第二世代の空中発射システムが実用化されるだろう。

(平岩 徹夫)

(12)

4.関連する話題の概要

 各テーマ毎に大学関係者および角田センター研究員よりそれぞれ関連する話題の発表を 行った。その要旨を以下にまとめる。なお,発表に用いた資料を巻末に資料として添付する。

4.1  新世紀のロケット開発に求められるもの

話題提供者:北海道大学 永田  晴紀 教授 (添付資料2-1)

 現在,宇宙開発はもはや日常化しており特別な存在ではなくなった。戦後,航空機開発再 開に際して,ジェットの先を目指してロケット研究が始まり,その後国際的な存在感を示す ために気象観測ロケットが最初の目標となった。ロケット開発が始まった当初は,「内発的 な衝動」と「国造りへの思い」が取り組みの原動力となっていたが,今は失われつつある。

ロケットは飽くまで輸送の手段であって,「何をやりたいのか」「それをどう進めるのか」「で は手段として何が必要か」という思考が重要である。日本ではロケットを次第に大型化させ ていったがため,開発に時間がかかるようになった。開発サイクルを短期間化して技術者を 育成する機会を作る事が必要であり,学,民としても国から自立した小型ロケットの開発を 通して人材を育成することが大事である。また細部化された研究だけではなく超小型無人宇 宙利用,弾道有人飛行などの事業を通して技術を鍛え,ロケットへの思いを深くする人材を 育成,継承することが必要である。

話題提供者:ロケットエンジン技術センター 吉田   誠 主幹研究員 (添付資料2-2)

 これまでのロケットエンジン開発は要素の研究を行い,システムに組上げる手法であった が,今後は使用する側の目的,要望に応じてエンジン機能を定める,品質機能展開等の手法 が肝要である。機能と要素研究の間を取り持つ機能システムの階層が重要と考え,この階層 を充実させることをアピールしたい。次世代ロケットの信頼性向上技術の開発戦略として,

故障許容・再使用システムを目指した小型のパイロットエンジンの開発により,開発サイク ルを短縮して人材育成,技術伝承を確実にすることを目指している。ロケットエンジン技術 は水素燃料の大衆化という観点で,保存や取り扱い方法などにロケット技術の展開が可能で あり,将来の社会の変化を促す可能性をも秘めているため,こうした取り組みも今後の課題 となる。また,日本のロケットは単なる低価格化ではなく,新たな発想の下にプレミアム性 を付加したエンジンの開発が望ましい。

4.2  複合推進等の新たな宇宙推進の方向性と展望

話題提供者:慶應義塾大学 松尾  亜紀子 助教授 (添付資料2-3)

 日本では最近デフレ傾向であり,宇宙産業でも価格競争力という面では好転しつつある。

とはいえ,現在の状況では大きな資金を宇宙産業につぎ込むことはできず,また,国として も,研究の継承ということだけでは,資金を提供してくれないだろう。しかし,今後とも宇 宙開発に関わる人材の確保は重要であり,日本が勝てる技術領域への集中は必要である。必

(13)

要なのは短期間で出てくる成功事例を積み上げ,また,複合推進のような将来夢のもてる技 術を育てることであり,優秀な人材が魅力を感じる分野・組織を作り上げ,アジアの将来輸 送の研究拠点となれるよう努力してほしい。

話題提供者:複合推進研究グループ 苅田  丈士 グループ長 (添付資料2-4)

 我々の研究活動の基本的なスタンスは,宇宙輸送の技術革新による低価格化,産業化をめ ざすことにある。宇宙輸送を航空機並の運用性まで高めるにはRLVが必要である。そのた めの技術革新のひとつとして複合エンジンを提案する。現在,米国で研究活動が停滞してお り,日本優位の技術とも言える。このエンジン開発を支えるRJTF/HIESTは世界的に例の 少ない設備であり,各方面より注目もされている。設備に限らず,これを運用する専門の研 究者の能力もアピールできる。複合エンジンはまだ問題もあり,今後も研究を継続し,その 中でロケットとの共通技術も高度化できる。また,その中から国際的に勝負できる技術を見 いだす。

4.3  宇宙開発における高エンタルピ環境の研究の重要性とその展望 話題提供者:東北大学 升谷  五郎 教授 (添付資料2-5)

 高エンタルピ環境を再現するためには,材料が持たない難しさがある。気体は自身のエン タルピが水素の発熱量を越える,相似則が適用できない特別な領域である。これを再現でき る設備は非常に重要であり,国際的な競争力がある。設備に加えて運用し,データを解析で きるスタッフが重要である。大学側からは幅広い知を提供できる。工学だけでなく,理学の 力も応用できる。 Project base learning として,インターンシップ充実を考えて欲しい。

話題提供者:複合推進研究グループ 伊藤  勝宏 主幹研究員 (添付資料2-6)

 高エンタルピ環境における化学非平衡性の効果は物体のサイズが10m前後で顕著となる。

このため模型試験による現象再現のためにはある程度大型模型が必要で,HIESTは世界唯一 の設備と認識している。また安全,低コスト試験が可能という利点も大きい。HOPE-Xのキャ ンセルで,高エンタルピ流れの難しさを認識する機会を失った。もしHOPE-Xで失敗してい るとダメージもあったであろうが,その失敗から立ち直る気力も養える。今後もHIEST試 験に加えて,小規模でも再突入実験が必要である。一つ一つの問題点を解決して,今後の展 望を開いてゆく。

※注  RLV  :Reusable Launch Vehicle 再使用型宇宙機

  RJTF  :Ramjet Engine Test Facility ラムジェットエンジン試験設備   HIEST :High Enthalpy Shock Tunnel 高温衝撃風洞

(14)

5.主な討議内容

 討議は小テーマ毎に実施されたが,全てのテーマを通して共通的な意見,提言も多かった。

これを踏まえ,本報告では,主な意見を集約して数項目に再整理した。

5.1  独自技術,優位技術の重要性について

 将来の宇宙輸送開発に向けて,現在持てる技術の価値を研究者自身が的確に把握し発信し てゆくことが一つの重要な課題となる。ワークショップにおけるJAXA側のプレゼンテーショ ンに対しても,「今後必要となる技術,良い技術の提案をもっと前に出して行く事が大事」

との意見が出された。これはとりもなおさず,角田センターにおける独自技術や優れた成果 が認められ,その有用性も十分に認められるにもかかわらず,未だよく説明されていないこ とへの警鐘と言える。

 JAXAにおいては,ともすれば推進システム全体の開発を広く推し進めたいと考え勝ちで あるが,「技術のプレミアム性を出し,明確にすることが肝要であり,システム全体を狙う よりも,応用を前提とした個々の技術の高度化を心掛ける」という意見が出された。一方で,

現在のJAXA内における研究開発に対する考えとして,「要素技術の高度化も重要だが,目 的を明らかにするために全体像を示すことも必要であり,全体像に沿って個々の技術の方向 性をそろえる」という考え方が支配的であるという情勢が反論として示された。いずれの意 見も角田センターにおける高い要素レベル技術およびその優れた成果をどのように生かして 行くかという議論であり,角田センターとしてはバランスの取れた研究開発の進め方を心が けたいと考える。

 角田センターの独自の技術として「『機能に応じた開発』(品質機能展開)による新たなロ ケット設計技術」や「米国に於いて停滞気味である,複合推進のキーテクノロジーであるエ ジェクタ技術」の研究を進めており,今後は世界的に見ても優位にあるという自負を持ちつ つ,さらに前進を続けることが重要と考えられる。

 また,日本総体として技術の優位性という視点に立ち,伝統的に「小型化は日本の得意と するところであり,小型のエンジンでマクロな応用を目指す」という意見や,「国際的に同 一の条件で戦うのではなく,日本の得意な技術,例えばロボット技術,を使って戦う」といっ た考えも示された。小型エンジン開発のメリットについては次節に譲る。

 宇宙開発の産業化という昨今の流れに沿って,輸送システムの国際的な低価格化,価格競 争という局面が議論された。付加価値の高い技術を売り出し,敢えて競争に乗らないという 意見の一方,「価格競争はデフレスパイラルに陥る可能性もあるが,角田センターを中心と する宇宙輸送用推進技術を考えると技術革新も十分に期待できる。価格競争という環境の中 で,新たなビジネスモデルの創出もある」との認識も示された。

(15)

5.2  小型ロケットのメリット

 奇しくも,大学側からもJAXA側からも小型ロケット開発に関する積極的な意見が示され た。そこには,大型化を進めて来た日本のロケット開発において人材育成が置き去りにされ てきたことへの反省があり,「同じエンジンを熟成させて行くことが重要だが,一方で短い サイクルの開発で技術者育成も重要である」という認識の一致が見られた。さらに,「実際 に打ち上げる事が大事であり,成功体験,必要な失敗を得る機会を増やすことが必要」であ り,そのためにも開発サイクルの早い,小型のエンジンを指向することには意味があるとの 意見が出された。大型の基幹ロケットを維持発展させるために大型のエンジンの必要性は認 識されているものの,次世代の輸送システム研究開発に携わる研究者のレベルでは技術の継 承が現実の問題となっていることを,今後広く訴えていくことも重要である。研究レベルに おける小型のエンジン設計とその実験は,開発レベルの大型エンジンと異なり,この人材育 成の面でも大いに活用できるとの意見をいただいた。

5.3  有人宇宙輸送についての考え方

 有人宇宙開発については,総合科学技術会議による2002年6月の「今後の宇宙開発利用に 関する取り組みの基本について」の中で今後10年間(2012年まで)我が国独自の有人計画 を持たない方針が決定されているが,その後のフォローアップ「我が国における宇宙開発利 用の基本戦略」(2004年9月)では,「長期的には独自の有人宇宙活動への着手を可能とする ことを視野に入れ」と謳っており,国として将来の有人活動に婉曲的ながら肯定的な表現が 見られるようになった。これに対して,将来輸送システム開発に実際に携わる立場の学官の 研究者としての率直な意見が幾つか述べられた。「有人は国策として残す必要があるが,産 業として戦う必要は無い」との意見や「ロボット技術を生かした無人化も検討」という意見 の様に有人開発の是非を含めて様々な考え方が示された。また方向性として,「開発の取り 掛かりとして弾道飛行も良い」との意見も出された。将来宇宙輸送を発展させるためには,「地 球と宇宙の間の物流を増やして行く事が必要であり,そのために人を宇宙に置くことも考え る。初期には国の関与も必要となる」との意見も出された。スペースシップワンの活躍等,

既に有人宇宙輸送は産業化に向けて具体的な動きが見える状態にあり,日本における有人の 位置付け,具体的な道筋は産学官を含めてより広く議論されるべき時期にさしかかっている と感じられる。

5.4  宇宙研究開発の拠点を目指して

 長期にわたる将来宇宙輸送の研究を進めるには,一定のリソースを常に確保し続ける事 が必須となる。特に人的な手当ては前述の技術の継承の観点からも重要であり,新たな人材 を大学等から得る事にも積極的であるべきであろう。一方で学からは「三機関統合により,

JAXAが航空宇宙唯一の研究機関である。工学系全体で(学生の人気が)落ち込みが起こる中,

研究に夢を持たせる機関であって欲しい。そのためにも,安定した人材受け入れを検討して 欲しい」という要望が幾つか出てきている事にも注目し反省すべきである。

(16)

 また先進的な研究,設備を生かして「注目される個々の技術を持ち」,「注目されるアジア の拠点化」を目指すべきとの意見が出た。そのためにもJAXAとして宇宙輸送系に十分な資 源を配分し,人材を育成して世界に先駆けた研究活動を行う必要性が指摘された。

5.5  JAXA 角田の研究開発活動の在り方について

 今後,角田センターが日本における航空宇宙の研究活動への係わり方についても議論がな された。「複合エンジンは輸送系としてアピールでき,HIESTは学問的なデータベースとし て重要」ではあるが,研究活動の方向性や中核的な機能を示す「JAXA角田の『顔』が見えない」

という意見が出た。学の側からは,「角田でしか取得できない学問的なデータを,外部から も利用可能な形でデータベースとして充実させること」を活動の中心にすえる案や,「複合 エンジンのような角田のオリジナルコンセプトらしいものをもっと『顔』として強く推進し,

既存ロケットの改良のようなサポート的業務を副次的に扱う様割り切る」という考え方も出 された。いずれにしても,宇宙輸送系に関する角田センターの先進性,先行性および高い技 術力が求められての外部から寄せられた期待である。宇宙輸送系の中核機関としての角田セ ンターとしての一体性を更に検討し推し進めると共に,一層の成果の充実を図りたい。

 また,角田を含めJAXAと産,学の共同研究の在り方について,「産学官の連携は同じレ ベルで考えてはいけない」,「JAXAは基礎から製品へ発展させてゆくTRL5, 6部分を担い,『産』

が製品のレベル,『学』は基礎的なレベルを受け持つ役割分担を意識」という意見が出された。

一方ではJAXAでは基礎研究部分を今後縮小する流れもあり,今後より一層,共同研究等を 通した産学官の補完的な研究開発体制を構築する必要がある。

5.6  積極的な成果の広報,利用者コミュニティの組織化について

 角田センターは前身の航空宇宙技術研究所時代から一貫して先進的な宇宙輸送推進系の研 究を行ってきたが,その間,その成果が一般に広く公表される機会は僅かであった。90年 代初頭には将来輸送系に対する世界的な関心の高まりがあったため,マスメディアの関心を 買う機会もあったが,21世紀に入ってからは殆どない。学会等における研究発表について はコンスタントに行っているものの,世間一般への認知度は非常に低い状況といわざるを得 ない。角田センターの研究をよく理解している学の代表からでさえ,「複合エンジンはseeds であり,20年seedsであり続けているように見える。もっと実績,進歩を表に出して世間に 知らしめることが大事」との意見が出る様に,角田センター側の研究進捗の意識と外部の見 方に差が現れているのが現実である。これは角田センターが有用性の高い,高レベルの研究 開発成果を挙げているにも係わらず,専門家からは理解されても一般の認知度が低いとの指 摘である。こうした状況を打破するためにも,「マスコミも巻き込んだ応援団を持つことが 必要」という考えや,「文科省が認知してくれるような,例えば『航空科学技術委員会』(科 学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会内に設置)の様な組織をもつこと」という具体 的な行動方策を検討する必要があろう。

 また,角田センターの保有する世界有数の設備群についても,「設備の利用実績をデータ

(17)

化して,ひろく公表することが大事。利用者の声,利用者のコミュニテイを組織し応援して もらうこと」により,設備の持つポテンシャルをより広く知らしめ,利用拡大につなげる方 策も検討する必要がある。国内有数の設備であるため,ロケットエンジン関係ではJAXA内部,

国内企業,その他によって設備が利用されている。ラム・スクラムおよび複合推進,高エン タルピー流関係では世界有数の設備であるため,国内ではなくむしろ海外からの設備使用に 関する問い合わせ,共同研究の打診が多く寄せられている。世界的な拠点を目指す上でこれ ら設備は,貴重な資産であるといえる。ワークショップに参加いただいた大学関係者から寄 せられた意見も,これらの設備によって生み出される貴重なデータの一層の有効な利用の検 討の要請であった。

 多くの研究者の集まる東京から地理的には離れ,人的交流という面ではやや不利な状況に あるだけに,今後は「角田のやるべき事,必要と考える事をメッセージとして発信すること が重要」との認識に立ち,積極的な成果流布活動が望まれる。

(18)

6.今後の展開 − 結びに代えて

 今回,大学から宇宙輸送系の先生方をお招きし,将来の宇宙輸送系の活動について検討す ることができました。共に議論する中で,国際社会の中においてJAXAの,また日本の独自 性や特徴を生かすべきであること,そのためにも今後の宇宙輸送系には技術革新を検討する べきであること,といった貴重なご意見をいただけました。議論においては現在の活動を高 く評価していただき,成果を広く知らしめるべし,という激励をいただけました。これらの 詳細は本編にまとめさせていただいたとおりです。

 輸送系とは直接には関係しませんが,積極的に宇宙の利用方法,宇宙での活動,産業化を 考え,提案すべきといったご意見もいただきました。まだ十分に有効に活用されているとは いえない宇宙の活用のためにも,また宇宙輸送系の研究開発における目標を定める上でも重 要な意見と認識いたしました。

 また教育機関としての立場から,必要とされる技術を創出するだけではなく,JAXAが日 本で唯一の宇宙輸送系の研究機関として研究員を育成すること,更にはそのためには短期間 の成果を積み上げて行くような活動が望ましいといった期待も表明されました。

 これら貴重な意見,提案をJAXA内に発信すると共に,JAXAにおける宇宙輸送系研究活 動に十二分に活用してゆきたいと思います。更に今後,「学・官」に加え「産」からの方々 を交えたワークショップを開催し,より広い観点からの宇宙輸送系の検討を進めたいと思い ます。

(19)

添付資料1

(20)
(21)
(22)
(23)
(24)

添付資料2-1

(25)
(26)
(27)

添付資料2-2

(28)
(29)
(30)
(31)
(32)
(33)

添付資料2-3

(34)
(35)
(36)
(37)
(38)

添付資料2-4

(39)
(40)
(41)
(42)
(43)

添付資料2-5

(44)
(45)
(46)
(47)

添付資料2-6

(48)
(49)
(50)
(51)
(52)

参照

関連したドキュメント

金沢大学は,去る3月23日に宝町地区の再開 発を象徴する附属病院病棟新営工事の起工式

化し、次期の需給関係が逆転する。 宇野学派の 「労働力価値上昇による利潤率低下」

医学部附属病院は1月10日,医療事故防止に 関する研修会の一環として,東京電力株式会社

本稿では , これらを , それぞれ Frobenius 的大域的実化テータフロベニオ イド (Frobenius-like global realified theta Frobenioid), Frobenius 的大域的実化

特に, “宇宙際 Teichm¨ uller 理論において遠 アーベル幾何学がどのような形で用いられるか ”, “ ある Diophantus 幾何学的帰結を得る

はじめに

2021年5月31日

白寿会は、2016年度開始の5か年経営計画において「将来を展望した法人