2010.4.16.
微分積分続論 (理学部数学科)
担当:原 隆(数理学研究院):伊都キャンパス数理研究教育棟
219
号室,phone: 092-802-4441,e-mail: [email protected],
http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/˜hara/lectures/lectures-j.html
Office hours:
月曜の午後5
時〜6時半頃,僕のオフィスにて(ただし,その前のセミナーが長引いた場合には少し待って頂くことになります).なお講義終了後にも質問を受け付けますし,これ以外でもお互いの都合の良い時間 にお相手します.
目標:「重積分」「面積分」「線積分」「ベクトル解析」について,基礎的なところを学ぶ.ただし,これだけで は時間が余る可能性もあるので,一年生の微積の基礎にも時折,触れることにする.これらを通して,微積・解析 に関する感覚を育むことを目指す.
概要:この講義は
3
部に分かれる.第1
部では「多重積分」を,第2
部では「線積分・面積分」,第3
部では「ベ クトル解析の初歩」を学ぶ.キーになる概念:極限の概念,多重積分,累次積分,線積分,面積分,ベクトル解析の初歩.
内容予定:(以下は大体の目安です.皆さんの理解の程度などにより,ある程度の変更はあり得ます.なおこ の講義の対象は,きちんと厳密にやるとなかなか大変で,泥沼に落ち込む危険性があります.そうならないように,
少し誤摩化すところも出てくるかもしれません...)
I.
多重積分:計算も大事だが,基礎の概念を理解しよう(4
〜5
回)1.
1変数関数の定積分——
定義,連続関数は可積分であること2.
多重積分の定義——
定義,他は1変数の場合に準ずる3.
多重積分を累次積分で計算すること,積分の順序交換4.
多重積分の変数変換とヤコビアン5.
広義積分II.
線積分と面積分:これらの概念を理解し,計算できるようになろう(4回程度)1.
曲線と曲面2.
線積分の定義とその意味,計算練習3.
面積分の定義とその意味,計算練習挿入
. II
の中間付近で中間試験!(日と範囲は後で決める)III.
ベクトル解析:概念を理解しよう(4回程度)1. grad, div, rot
の定義(と計算)2. grad, div, rot
およびラプラシアンの一般座標での表式3.
ガウスの定理,グリーンの定理,ストークスの定理合格(最低)基準:合格のための条件(A, Bがとれる条件ではない!)は,大体,以下の通りである.
•
重積分の定義がわかり,具体例では重積分を累次積分に直して計算できること.また,類似積分の順序を正し く交換できること.積分変数の変換なども,一般の座標系でできること.•
曲線の長さ,曲面の面積,線積分,面積分の定義がわかり,具体例を計算できること.•
ベクトル解析の初歩(grad, div, rot)が理解できていること.教科書:小林昭七「続 微分積分読本」(裳華房).皆さんが一年のときに用いたはずのものです.
参考書:
•
微分積分学の基礎については,以下の3冊を薦める:–
小林昭七「微分積分読本」(裳華房).皆さんの一年のときの教科書.–
高木貞治「解析概論」(岩波).今の学生さんには難しすぎる,とかスタイルが旧い,との意見もあるが,やはり名著だ.持っていて損はないぞ.
–
小平邦彦「解析入門I, II」
(岩波).上の解析概論を少しとっつきやすくした感じ.記述はおおむね平明 かつ直感的で,名著といえよう.•
「バークレー物理学2:電磁気学」(丸善)—
この講義後半のテーマの非常に良い応用例が力学・電磁気学・流体力学である.そもそも,ベクトル解析は純粋な数学的興味よりも,これらの物理系の学問とともに発展し て来た側面があるので,具体例を通して学んだ方がわかりやすいこともある.特に,「物理は良くわかってる つもりなんだけど数学はイマイチ」という人はこのバークレーの本を適宜参照すると良い.ついでに言えば,
バークレーのシリーズの中でもこの「電磁気」はすばらしい(特に,相対論と電場・磁場の関連の説明).こ の講義と無関係にでも一読の価値があるので,強く薦める.
•
これ以外に,講義ノートのようなものを作成し,皆さんがダウンロードできるようにする(講義で配布するこ ともある).評価方法:中間試験と期末試験の成績を総合して評価し,ボーダー付近ではレポートの成績も用いる.
•
最終成績は一旦,100点満点に換算してから,この大学の様式に従ってつける.•
その100点満点(最終素点)は,以下のように計算する.–
まず,「中間試験の点」「期末試験の点」をそれぞれ100
点満点で出す.–
次にこの2つを以下の式で「平均」し,一応の総合点A
を出す:(総合点
A) = 0.60 ×
(中間の点)+ 0.40 ×
(期末の点)–
ただし,上の計算式の重みを若干変更する可能性はあることを承知されたい(例えば,総合点A
で,中 間と期末の比を4 : 6
にするなど).–
最終素点は(最終素点)
= max {
(総合点A) ,
(期末の点)}
とする.つまり,(総合点A)と(期末の点)を比べて,良い方をとるのだ.
•
上の「最終素点」をよく見て,必要ならば全体に少し修正(例:全員に下駄をはかせるとか)を加えたものを つくり,更に次の項目の注意を考慮してこれをこの大学の基準と合わせて最終成績を出す.ただし,A
の付 け方については以下の「重要な例外」を参照.•
上の出し方では合格基準に少し足りない人は,それまでに出題したレポートがあるなら,その結果も参考にし て判断する.(期末一発逆転の可能性と例外について)
•
この講義では(上位10%
の人だけがわかるような)進んだ話題はあまり扱わない.そのため,「できる」人が 退屈することも考えられる.そのような人には自主的な学習を奨励する意味で,講義などに出なくても「期末 で一発逆転」も可能なようにした.•
ただし,「期末の一発勝負」がうまくいく人はそれほど多くないだろうと思われる(期末試験は中間試験やレ ポートよりは難しい)から,あくまで自己責任で やってくれ.期末の一発勝負に出て成績が悪くても,苦情は 一切受け付けないからね!(できる人が少ないだろうと思いつつもこの形式をとるのは,僕の美学にこだわっ ているからである.)•
(重要な例外)上のルールは最大限,尊重する.ただし,最終成績が90
点以上になりそうな人については,他のことも加味して考慮することがある.つまり,「期末の点は確かに良いのだが,本当にわかって書いてい るのか,どうも疑問だ.特に中間試験がこの成績では...」などの場合には,形式的に
90
点以上になっても最 終成績を90
未満に引きずり落とす事がありうる.(今までにそんなことをした事はないが,可能性はゼロでは ない.)もちろん,これをやった場合には反論の余地は与えます.また,難しいレポート問題を頑張って解いた人には,試験の成績が少々悪くても良いことがあるかもしれない.
「学習到達度再調査」(?)について:この大学には「学習到達度再調査」なる変な制度があるらしい.これに変に 期待する人がいるかもしれないので,ここではっきり宣言しておこう.
「再調査」は行わない可能性が高い.もし行うとしても,その権利を得るのはギリギリで不合格になった人だけで,誰を対 象とするかは,こちらの一存で(もちろん,公平に,しかし厳しく)決めさせていただく.もちろん,再調査をしてもダメ な人も出現しうる.(再調査とは独立に,正規の理由があれば追試験は行うのでご安心を.)
更に付言するならば,再調査をする方が,こちらとしては厳しく点を付けやすい(厳しく採点して,誰を助けるかは再調査で きちんと確かめれば良いから).だから,このようなものには頼らず,期末試験でちゃんと合格できるよう,しっかり学習して 下さい.期末試験までなら皆さんの学習を助ける努力は惜しまないつもりで,質問などにも忍耐強く相手することを保証する.
演習との連携について:
皆さんのほとんどは「基礎数学演習(数学基礎演習)
III
」をとっているはずだ.担当の先生方とはある程度の連 携をとる.その関係もあって,この講義ですべき演習内容をある程度,上記の演習にまかせてしまうかもしれない.特に一言:この講義に出てくるいろいろな概念は,ゆっくり考えればそれほど難しいものではありません.しか し,平面,空間の中の物事を扱うので,図形的な直感がないと苦しむことも考えられます.決して甘く見ずに,着 実に学習することをお奨めします.
この科目に関するルール:数学科のみなさんには必要ないかもしれませんが,念のために書いておき ます.
•
まず初めに,学生生活の最大の目的は勉強することであると確認する.•
講義中の私語,ケータイの使用はつつしむ.途中入室もできるだけ避ける(どうしても必要な場合は周囲の邪 魔にならないように).これらはいずれも講義に参加している他の学生さんへの最低限のエチケットです.•
僕の方では時間通りに講義をはじめ、時間通りに終わるよう心がける.•
重要な連絡・資料の配付は原則として講義を通して行う(補助として僕のホームページも使う——
アドレス は最初に載せた).「講義に欠席したから知らなかった」などの苦情は一切,受け付けない.•
レポートを課した場合,その期限は厳密に取り扱う.回答までには数日の余裕を見込んで下さい.なお,上の僕のアドレスを着信できるような設定にしておいて下 さい.また,メイルのタイトルには「数学科」とか「続論」とか,わかりやすい日本語を入れてください(ス パムと区別しやすいように).
重積分の練習問題
(2010.06.10)
過去に出したレポート問題,試験問題などから集めました.順序には深い意味はありません.似たような問題ば かりですし,試験にはこれとは異なった傾向のものも出します.だけど,以下の問題群は基本の基本ですから,す らすら出来るようになって下さいね.
問
1
:次の重積分の積分範囲をxy-平面で図示し,かつ,積分の順序を交換せよ(答えだけで良い).
a) Z 4
0
dy Z √ y
0
dx f (x, y) b)
Z 2 0
dx Z √ 8x
x
2dy f (x, y)
問
2
:次の重積分の積分範囲をxy-平面で図示し,かつ,積分の順序を交換せよ(答えだけで良い).もちろん,f
が与えられてないから,積分そのものを実行することはできない.a) Z 3
0
dx Z x
2/2
0
dy f (x, y) b)
Z 2 0
dy Z √ 32y
y
3dx f (x, y)
問
3
:次の重積分の 積分範囲をxy-
平面で図示 し,かつ,積分の順序を交換 せよ(答えだけで良い).もちろん,f
が与えられてないから,積分そのものを実行することはできない.また,結果は一つの重積分で書けるとは限ら ない.(b
のdx
の積分の上限は2 1/5
である.)a) Z 1
0
dy Z 2 − y
y
2dx f (x, y) b)
Z 2
1/50
dx Z √ 2x
x
3dy f (x, y)
問
4
:以下に与える領域A
とf (x, y)
について,重積分Z Z
A
f (x, y)dxdy
を求めよ.ただし,積分領域も図示すること
(1) A
はxy
平面内の,3直線x = − 2, y = 0, y = x
で囲まれた領域.f(x, y) = xy + y 2 (2) A
はxy
平面内の,曲線y = x 3
と直線y = x
で囲まれた領域.f (x, y) = x 3 y
(3) A
はxy
平面内の,以下の3点を頂点とする三角形:(0,0), (π, 0), (π, π).f (x, y) = y cos x x
問
5
:a > 0
を定数とする.A
は,xy-
平面内で,(0, a)
を中心とする半径a
の円で囲まれた領域とする.このとき,2重積分
ZZ
A
y 2 dxdy
を求めよ.問
6:
次の重積分ZZ
A
f (x, y)dxdy
を求めよ.その際,積分範囲も図示すること.a) A
は0 ≤ x ≤ 1, √
x ≤ y ≤ 1
を満たす領域,f (x, y) = x 2 y
.b) A
は0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1
を満たす領域,f (x, y) = x log(xy + 1).
問
7:
次の重積分ZZ
A
f (x, y)dxdy
を求めよ.その際,積分範囲も図示すること.a) A
はx ≤ 0, y ≥ 0, y ≤ x 3 + 1
を満たす範囲,f (x, y) = 2y + x.
b) A
はx ≤ 0, y ≤ 0, x 2 + y 2 ≤ 3
を満たす範囲,f (x, y) = xy.
問
8
:A
は,3本の直線x = 0, y = 0, x + y = 1
によって囲まれた領域とする.このとき,ZZ
A
sin
³ x x + y
´ dxdy
を,変数変換
x + y = u, x = uw
を用いて求めよ.この際,新しい変数(u, w)
での積分範囲も図示せよ.問
9
:A
は,x ≥ 0, x 2 ≤ y ≤ π − x 2
を満たす領域,関数f
はf (x, y) = x (y + x 2 ) sin(y + x 2 ) cos(y − x 2 )
と定義されている.変数変換x = √
u − v, y = u + v
を行うことにより,重積分ZZ
A
f (x, y) dxdy
を計算せよ.この際,新しい変数(u, v)
での積分範囲も図示せよ.(変 数変換なしでできた人にも部分点は与えるが,この問題の主眼は変数変換をちゃんとやることである.)問
10
:A
を| y | ≤ x ≤ 1
を満たすxy
平面上の領域とする.このとき,広義積分ZZ
A
p 1
x 2 − y 2 dxdy
を,以下の2通りの方法で計算せよ.いずれの場合も積分領域を図示すること.
(1)
適当な累次積分に直して計算する.(2)
変数変換u = x + y, w = x − y
により計算する(ちょっと難しいかも).問
11
:A
を3本の直線x = 0, y = 0, x + y = 1
で囲まれた領域とするとき,2重積分ZZ
A
| x − y |
x 2 + y 2 dxdy
を,以下 の2通りの変数変換を用いてそれぞれ求めよ(両者とも,新しい変数はu, v
である).a)
x = u − v y = u + v
b)
x + y = u xy = v
それぞれ,新しい変数
(u, v)
での積分範囲も図示せよ.(ヒント:b)
はちょっとした引っかけだ.a) と答えが合わ ない人は,その理由を考えてみよう.)問
12
:A
を| x | 2 + | y | 2 ≤ 1
の領域とする.また,α, βを正の定数とする(α≥ β).広義積分 ZZ
A
1
| x | α + | y | β dxdy
が収束するようなα, β
の範囲を求めよ.問
13
:xyz
の3次元空間での集合A ≡ n
(x, y, z) ¯¯ ¯ x 2 + y 2 + z 2 ≤ 1 o B ≡ n
(x, y, z) ¯¯ ¯ | x | ≤ 1
かつ| y | ≤ 1
かつ| z | ≤ 1 o
を定義する.
α, ϵ > 0
を定数とする.a)
3重積分ZZZ
A
1
(ϵ + x 2 + y 2 + z 2 ) α dxdydz
を考える.この積分がϵ → +0
でも有限にとどまるような,α
の 範囲を求めよ.b)
今度は,上の3重積分がϵ → +0
で発散するようなα
を考える.このとき,この3重積分の発散の形(主要 部分)はどのようなものか求めよ(以下の注を参照).c)
3重積分ZZZ
B
1
(ϵ + x 2 + y 2 + z 2 ) α dxdydz
についても上のa), b)
と同様の考察を行え.(注)
ϵ
の関数f (ϵ)
がϵ → +0
で発散する場合,その主要部分が何か,とはlim
ϵ → +0
f (ϵ)
g(ϵ) =
正の定数となるような,なるべく簡単な関数