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論文の内容の要旨 氏名:熊

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:熊 川 貴 大

専攻分野の名称:博士(医学)

論文題名:ラット脳挫傷モデルにおけるP2Y1受容体拮抗薬MRS2179の効果

本研究では、脳挫傷後に起こるカルシウムウェーブを拮抗することでマイクログリアの活性化を阻害し、

抗炎症効果が得られるか否かを検討した。カルシウムウェーブが伝達するうえで不可欠な P2Y1 受容体の 拮抗薬であるMRS2179を用い、その効果を検討した。

ラット cortical contusion injury モデルを作製した。脳挫傷直後から浸透圧ポンプを用い人工髄液

(artificial cerebrospinal fluid: aCSF)もしくはMRS2179を挫傷組織中心部に投与した。一般組織染色、

マイクログリアに対する免疫組織学的染色、マイクログリアの発現量定量のためのウェスタンブロッティ ング、炎症性サイトカインの発現観察のためのpolymerase chain reaction(PCR)、さらには行動学的評 価を行いMRS2179の効果を検討した。

マイクログリアのマーカーとして汎用されている抗 Iba-1 抗体と活性型のマイクログリアにのみ反応す ると示唆されている抗Galectin-3抗体で挫傷脳を免疫染色した。抗Iba-1抗体は静止型、活性型の両方の マイクログリアを、抗Galectin-3抗体は活性化したマイクログリアのみを検出することが明らかになった。

Galectin-3 抗体は、脳損傷後の活性化マイクログリアの最良の指標であると考えられた。そこで抗

Galectin-3 抗体を用いウェスタンブロッティングを行った。外傷翌日から挫傷組織周辺の大脳皮質には

Galectin-3の強い発現が観察された。この発現は外傷3 日後も継続していたが、7日目には正常に近い値

に戻った。MRS2179を外傷直後から投与した群では著明に Galectin-3の発現が抑制されており、外傷1 日後、3日後でaCSF投与群と比較して有意な低下を認めた(p<0.05)。外傷3日後の脳挫傷遠位部であ る頭蓋底近くの大脳皮質においても MRS2179 の投与により Galectin-3 の発現は有意に抑制された

(p<0.05)。このことからMRS2179の投与は外傷後のマイクログリアの活性化を抑制することが明らか となった。次に外傷 3 日後の挫傷組織周辺の大脳皮質検体を用いて炎症性サイトカインの発現を PCR で解析した。外傷後にはinterleukin-1beta(IL-1β)やtumor necrosis factor alphaの発現が認められた が、MRS2179の投与により IL-1βの発現上昇は抑制された。脳挫傷直後のMRS2179の投与はマイクロ グリアの活性化を抑制し、サイトカインの放出を抑制しているものと推察された。脳挫傷後に起こる二次 損傷の評価として外傷28日後の脳挫傷面積の評価を行った。MRS2179投与群ではaCSF投与群と比較し て有意に残存大脳皮質面積が大きかった(p<0.05)。この結果からMRS2179の投与により炎症などによ る二次損傷が抑制されていることが示唆された。最後に行動学的に MRS2179の有効性を検討するために 三種類の神経反射と、運動機能の指標としてビームウォーク試験を、また空間認知機能の指標として十字 迷路試験を外傷後28日間にわたり施行した。これらの試験の得点はすべて外傷により悪化し、徐々に改善 する傾向をみせた。しかしaCSF投与群とMRS2179投与群の間で改善の傾向に有意な差は認められなか った。

ラット脳挫傷モデルに対する MRS2179の投与はマイクログリアの活性化を抑制し、炎症性サイトカイ ンの分泌抑制効果を有すると考えられた。脳挫傷後のマイクログリアの活性化の抑制は二次損傷の抑制に 関与していることが明らかになった。アストロサイトを直接制御することにより、続発するマイクログリ アの活性化を抑制し二次性脳損傷を回避する治療戦略は有効である可能性が十分にあると考えられた。

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