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Academic year: 2021

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Title カール・バルト研究 : 絶対的逆説の神学 [論文内容及び審査の要旨]

Author(s) 宇都宮, 輝夫

Citation 北海道大学. 博士(文学) 乙第7126号

Issue Date 2021-03-25

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/81468

Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Type theses (doctoral - abstract and summary of review)

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File Information Teruo̲Utsunomiya̲abstract.pdf (論文内容の要旨)

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学位論文内容の要旨

博士の専攻分野の名称:博士(文学) 氏名:宇都宮輝夫

学位論文題名

カール・バルト研究 ―絶対的逆説の神学―

・本論文の観点と方法

本論文は、各方面に多大な影響を与えた20世紀の最も重要な神学者と言うべきカール・バルト

(Karl Barth, 1886-1968)の神学思想を、いくつかの著者独自の切り口から徹底的に検討すること によって、その核心を解明しようと試みたものである。宗教史においては、啓示宗教を標榜する宗 教が存在すが、キリスト教もその一例であり、人間自身の力では到達不能な真理を神自身が開示す ると主張する。しかし啓示理解に関してキリスト教史では種々の論争があり、歴史的類型で言えば、

一方には聖書を無視して神との直接的霊的な接近を図る熱狂主義があり、他方には聖書にしろこの 世の事物に固定化された啓示を奉じるカトリシズムがあったが、どちらも、神と神認識に人間が自 力で直接的に接近可能であると考える点では一致していた。これら両者に対して、カール・バルトは 徹底して「否」を突きつけている、という観点が本論文の出発点である。

宇都宮氏によれば、バルトの聖書解釈学および聖書論の根源は、人間にして神の啓示そのもので あるイエス・キリストにある。すなわち、イエス・キリストが人間であり、かつ神である、という 絶対的に異質な二性の自己同一という逆説にあるとされる。バルトが解釈学でも聖書論でも啓示論 でも固守しようとしたのは、この逆説性であるという観点から、バルトの膨大な文献を精緻に読解 し、その論理連関を明確に示すことが本論文の具体的な研究方法である。それによって、バルトの 解釈学方法論が浮き彫りにされると同時に、聖書論と啓示論の逆説性が明らかにされ、さらに、そ れらが最終的にはキリスト論に由来しているということを論証するのが本論文の狙いである。さら に、これと同じ思惟の構造ないし特質がバルト神学の全局面に貫かれており、本論文はそれを剔出 することで、彼の神学全体の論理的一体性を明らかにすることを目指している。

・本論文の内容

バルトは処女作『ローマ書』において自らの解釈学プログラムを展開したが、そこでは、一方で は歴史的批判的方法の不可欠性が主張され、他方では古来の霊感説がそれ以上の重要性をもつとい う論理矛盾と思われる発言がなされており、彼の解釈学的言述は全体として整合的に解釈されるこ とがなく、謎のまま放置されてきた。

本論文はまず、聖書解釈の方法として、バルトが一般解釈学以外のものは考えていないことを明 確に示した。解釈は、まずはテキストの言語的・文法的・文献的な文面と意味の確定と、次に個々の 表現から主題を推定し、翻って主題から表現の意味を確定する考察とからなる。バルトによれば、

キリスト教の神認識とは、聖書のこのような論理的意味連関の解明にほかならない。

ところがバルトの解釈作業には、このあとに「同化(Aneignung)」と呼ばれる作業が続く。ここ にこそ彼が「霊感」と呼ぶ事態が関わっている。それは、「追考(Nachdenken)」までで得られた 聖書の解釈内容を真理として受容する過程である。聖書という歴史文書を無視した神の直接的啓示 はなく、他方、霊感を欠けば人間的文書はただの紙とインクとなる。これによってバルトは、人間 の言辞が同時に神の言葉となるという逆説を固持しようとした、と主張されるのである。

バルトにとって、人間の文書にして神の啓示という聖書の逆説性は、根本をたどれば「人間イエ

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スが神キリストである」という逆説に遡る。しかし、理性には受容不可能なこの逆説を解消して、

人間と神とを直接接近させようとする見解がキリスト教史に種々現れてくる。カトリシズムの伝統 のように、超越的な啓示が何らかの地上的存在に固定化されるならば、神への直接的通路が確保さ れ、逆に、霊的熱狂主義ならば、人間の存在水準を神へと引き上げる形で直接的な神接近が企てら れるが、バルトが固執したのは、地上の事物を通した神認識の間接的伝達であり、直接的伝達の否 定であった。それを一般的な宗教類型の言葉で言えば、人間の自力救済性の排除であり、神によっ てのみ逆説の受容が可能になるという他力救済性の固持にほかならない。

本論文は、バルトの解釈学の解明を糸口として、彼の聖書論、啓示論、そして最終的にはキリス ト論の解明へと進み、その本質的特徴である逆説性を明らかにしている。本論文の第一章では、上 述のようなひと連なりの教義の論理連関が明らかにされているのである。

第二章は、バルトが神人の隔絶を強調する弁証法神学から神人の連続性を主張する類比の神学へ と転向した、という解釈に反証を突きつけ、それを論駁している。

弁証法と類比の両概念はキリスト論と一体であり、もし両概念の含意が異なるのであれば、キリ スト論と人間理解とに関してバルト神学に決定的な相違が生じたと考えざるをえない。しかし、後 期バルトでも、人間と神とを接近させる傾向は微塵も見られない、と本論文では主張される。存在 の次元で、創造者と被造物との無限の差違は固守されており、また罪人の自己義認=自己救済は認 められておらず、信仰義認の宗教改革的原理は固持されている。認識の次元でも、自然神学の方向 へと転換したかのような言説はまったく見られない。こうした変更がなされていたとするなら、そ の震源はキリスト論そのものにあるのでなければならないが、イエス・キリストが絶対異質の自己 同一であるという逆説性にはいささかの割引もなされていない。キリスト論上の二大異端類型であ る(人間を神格化する)エビオン主義も(神人の真の一致を否定する)仮現論も、バルトの神学思 想にはまったくその痕跡を見出し得ない。第二章では、こうした確認が精密な文献的裏づけをもっ て明確に示されているのである。

第三章は、近代プロテスタント神学の生成に関するバルトの見方を歴史学的・社会学的視点から 検討している。まずバルトは、近代神学を熱狂主義の系譜を引くものと捉えるが、彼によれば、両 者は近代的学問性と心霊主義という一見正反対に見えるものの、ともに人間を神に直接的に接近可 能な存在と捉える根本傾向をもっている。バルトによれば、こうした傾向はキリスト教の逆説性の 解消を目指す企てなのである。こうした近代神学史の流れを解釈するバルトの見方には、注目すべ き特徴があるとされる。バルトは、現実生活の営みにおける科学・技術・産業・経済などの進展を 最も根底の動きとしておさえ、それに呼応する形で政治的・制度的・文化的変動が生じ、その上で思 想史・観念史全般に対応した変化が起こり、それを後追いする形で神学の変化が起こると考えている、

とされる。これは社会史的な視点から見た周到なプロテスタント史と言っても過言ではないと、宇 都宮氏は結論づけている。

参照

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