審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 香取 庸一 審査論文
題 名:前十字靭帯再建術後の靭帯周囲滑膜被覆に影響を与える因子について
著 者:香取庸一 山藤崇 松永怜 山本謙吾
掲載誌:日本関節病学会誌(2014年掲載予定)
(審査論文要旨:日本語論文の場合1,000字以内・英語論文の場合500 words)
【背景と目的】膝前十字靭帯(以下 ACL)再建術はバイオメカニクスを中心とした基礎研究 や手術術式の進歩により、近年、安定した術後成績が報告されている。しかしながら、10 年 を超える長期成績は再断裂を含めた機能不全に至るものは少なからず存在し問題となってい る。長期成績や再断裂の要因を考えると、再建靭帯に部分断裂を認めず、良好に滑膜にて被 覆されることは非常に重要であると考えられる。本研究ではACL再建術後の再鏡視所見より、
滑膜被覆を中心に再建靭帯の評価を行い、再建靭帯の滑膜被覆に影響を与える因子・滑膜被 覆と臨床成績の関連ついて検討した。
【対象と方法】2003年4月〜2009年9月に施行した関節鏡視下一束ACL再建術133膝の中 で、再鏡視し得た97膝のうち、片側・単独ACL損傷例で再断裂例を除外した88例88膝(男 性46例・女性42例)、手術時平均年齢25.4歳(14〜46歳)を対象とした。移植腱は全例内 側膝屈筋腱を使用した。再鏡視は概ね再建術後 1 年以降(10〜47 ヵ月)の Staple 抜去時に 行い、滑膜被覆が80%以上かつ全く部分断裂を認めない症例をGood群、滑膜被覆が80%未 満もしくは少しでも部分断裂を認める症例をFair群と分けた。2群において、性別・手術時 年齢・Body Mass Index・Notch Width Index(以下NWI)・Tegner Activity Score・受傷か ら再建術までの期間・再建術から再鏡視までの期間、再鏡視時の Lysholm Score・KT-2000 前方移動量健患差・Femoral tunnel angle(以下FA)・Tibial tunnel position・移植腱の太 さを比較検討した。統計学的評価にはJMP(SAS Institute Japan、日本語版Ver.4)を使用 した。
【結果】症例を2群に分けるとGood群51例・Fair群37例で、各群における比較において 統計学的有意差を認めたものはNWIとFAのみであった。NWIはGood群では29.3%・Fair 群では28.2%であって、Good群で大きく、Fair群の方が有意に小さかった(P=0.029)。大 腿骨の骨孔角度を示すFAはGood群で平均56.0°、Fair群で平均59.1°とFair群で有意に 大きかった(P=0.049)。
【結論・考察】顆間窩の幅と大腿骨骨孔角度が滑膜被覆に影響しており、潜在的なインピン ジメントが滑膜被覆に影響を与えていると考えられた。より、良好な滑膜被覆の獲得には骨 孔位置の工夫や他の解剖学的な術式を選択することが必要となることが示唆された。
東 京 医 科 大 学