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自然言語に於ける時間表現の意味的機能

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(1)

自然言語に於ける時間表現の意味的機能

小 松   寿

     (ドイツ語学)

Abstmct

    In this paper, I analyze the semantic function of temporal expressions in English and German by means of symbolic logic, i. e. temporal expressions are translated into a logical formula, and this formula is interpreted with respect to a model which is constructed set−theoretically.

    In Chap. 2, I compare the two logical systems−tense logic and time logic

.,and argue that the latter is more powerful than the former, and more apPropriate for semantic analysis of temporal expressions.

    In excursus 1, I outline the event calculus−an alternative of the time logic, compare it with the time logic−, and conclude that, in spite of many advantages of the event calculus, the time logic is preferable to the event cal.

culus for purpose of this paper.

    In excursus 2, I examine McTaggart s argument against the reality of

time, and refute it.

    In Chap.3, the Aktionsarten, tenses, aspects, and temporal adverbs in

English and German are analyzed and compared by means of an augmented

version of the logic in Chap.2. And it s clarified that both English and

Ge㎝an have three categories of tenses−present, past, and future., but the

semantic function of German present is more flexible than English. English

has three aspects,.progressive, perfect, and predetermined future. But Ger.

(2)

man lacks the progressive. Further, English has three categories of temporal adverbs−tense adverbs, aspect adverbs, and perfect adverbs. But in Ger−

man, it s enough to assume only aspect adverbs. From this, it s clarified that the temporal expressions in English are more analytical than German. Con−

versely, the latter supplements the lack with pragmatic elements.

目  次

0.

1.モデル構造

2. 時制論理と時間論理    余論1 出来事の論理

   余論2 McTaggartによる時間の非存在証明

3. 時間表現とその意味的機能

3.1英語及びドイッ語の断片

3.2 動作態様

3.3時制及び時制副詞

3.4相,相副詞,完了副詞 3.4.1相の存在

3.4.2 進行相,確定未定相及び相副詞 3.4.3 完了相,完了副詞

3.4.4 規則の適用順序

3.4.5英語とドイツ語に於ける時間表現の意味的機能の比較

記号の説明 文献表

(3)

0.

 自然言語には,多様な時間表現があり,それらの意味的機能や相互関係は複 雑で,個別言語間でしばしば相違が見られる。しかし本論では,時間表現の主

要カテゴリーである次の4つ,即ち:1)動詞,2)相,3)時制,4)時間

を表す副詞,を取り上げ,その意味的機能を英語及びドイツ語について考察す る事にする。しかし,その詳細については第3章で述べる事にし,以下では先 ず,これらの表現の意味的機能を捉えるためのモデル構造及び論理体系につい

て考察する事にする。

1.モデル構造

 伝統的な時間構造として,(van Benthem,1983:14)に於ける次のような時 点構造があげられる。

 (1) 寛=ぐM,〈〉。

ここで,Mは空でない時点の集合,<はMの上の二項関係で,先行関係,即 ち「〜より早い」関係を表す。

 しかし,これと並んで次のような時間の区間集合も可能である(oゆ.¢π.:

59):

 (2)竃=<1,⊆,〈〉。

ここで,∫は時間の区間の空でない集合であり,⊆とくはそれぞれ1の上の 包含関係,及び完全先行関係である。

 しかし,自然言語の意味分析のためには,(1)よりも(2)の構造の方がより適

切である。この事は,次のような例から明らかである:

 (3)Er lauft von seiner Wohnung zum Bahnhof,

   (彼は,家から駅まで歩いて行く。)

 (4)  Inge stand auf und ging aus.

   (インゲは立ち上がると出て行った。)

(4)

(3)は,時点相関的にでなく,彼が家から駅まで歩くのに要する時間の区間相

関的に解釈されなければならない。又,(4)に於ける und は,連言 〈 とし

ての機能の他に,時間的な継起関係を表す。よって,(4)も立ち上がって出て 行くまでの時間を覆う区間相関的に解釈されなければならない。更に,(4)に

於ける aufstehen (「立ち上がる」)の様な動詞の意味を正確に分析するため にも区間が必要となる。と言うのも, Inge stand auf (『インゲは立ち上が った。』)と言う文は,彼女が或る時点に於いて座っており,次の時点に於ては

立っている事を意味するので,その解釈のためには少なくともこの二つの時点

を含む区間が必要となるからである。こうした理由から,第3章では「区間意 味論」を用いることにするが,本章と第2章では,そのための準備として,時

点構造を考察する事にする。

 (1)に於けるくに様々な条件を付け加えることによって,様々な時点集合が 成立する。

 自然言語の分析のためにく上に加えられる条件として先ず妥当と考えられ

るのは,van Benthem(15)によると次の二つである:

 (5)TRANS(推移性):

   ∀巧2(工く2<y→工く〃),

 (6)IRREF(反反射性):

   ∀「(工く工)。

(5),(6)の条件を伴う構造をvan Benthemは『厳密部分順序』(strict partial order, SPO)と呼んでいる(1bゴ4.)。時間が過去,及び未来に向かって無限に

延びている事も我々の直観と折り合うと思われるから,次の条件も付け加える

事にする:

 (7)SUCC(無限性):

   ∀エヨ〃(y〈工), ∀エヨy(工くy) (van Benthem:17)。

時間は離散的であろうか。稠密,或は更に連続であろうか。(これらはそれぞ

れ,整数,有理数,及び実数の集合と同型となる。)直観的には,或時点とそ

の1秒後の時点の間に中点があり,最初の時点とこの中点の間に更に中点があ

(5)

り…と言う事が無限に続くように見える。しかし,時間間隔が十分に密である 限り,自然言語を離散的時間構造で解釈する事に特に問題はないように思われ る。時間間隔の最小単位は,例えば,歴史の記述には1年,もしくは1日で十

分であり,日常生活には1分で十分である。(杉原,1974:51参照。)

 逆に,稠密な時間構造には次のような問題もある。van Benthemは,有理 数の集合INT(Q)の上に次のような区間構造を与えている(59):

 (8) INT(Q)=〈1,⊆,〈〉。

ここで,1は全ての空でない(4、,σ2)の集合とする。((4、,42)ニ{4∈Ql4、<4

<42}。Qは有理数全ての集合であり,41,42∈Q,4、<42とする。)⊆は,集合 論的な包含関係であり,(4、,42)〈(43,44)であるための必要十分条件は42<43

とする。

 さてここで,Hansは区間(4、,σ2)と(43,44)で眠っており,42と43の間では起 きている仮定する。すると,この間の区間は閉区間[4、,42](即ち,{4∈Qlg2

≦4≦43})となり,これは∫には属さない事になる。(van Benthem(229)参 照。)しかし,整数の集合上の区間構造

 (9) INT(Z)ニ〈1,⊆,〈〉  (van Benthem,60)

に於いてはこうした問題は生じない。ここで,1は全ての[〃2、,〃22]の集合とす

る。([〃21,〃22]ニ{〃2∈zl〃21≦吻≦〃22}。Zは全ての整数の集合とする。〃21,〃22∈

Z。〃2、≦〃 2。)⊆は集合論的な包含関係であり,[〃2、,〃22]<[〃23,〃24]であるため

の必要十分条件は〃22<〃23とする。(9)は,上例の相補区間(Hansの起きてい

る区間)に関して閉じている。即ち,この区間も1に属する。

 勿論,INT(Q)に於いても,∫の元に対して区間の両端の開閉の組合せをす        

べて認めれば,相補区間に関して閉じるようになる。実際Aquist/Guenthner

(1978)は,区間の両端の開閉を基準として,1回起的な事態σの起り方を14 の基本パターンに分類している(188)。即ち,区間の左(右)端の開(閉)を

(O),([(]))で表わし,(端がなく,無限に延びている場合には何も記さな い。)σの生じている区間にのみσを記すと,全部で次の14通りとなる:

 (10) 1.[σ],II.[σ), III.(σ], IV.(σ), V.σ], VI.σ), VII.[σ,

(6)

58       小松   寿

    VIIIご(L㌧IX.σ=M, X.σ=φ, XI.σ[]σ, XII.σ[)σ,

    XII.σ(]L㌧XIV.σ()L万

確かに,こうした区分には論理的な興味は存在するが,自然言語の動作態様等 の分析を考える場合,それを積極的に導入すべき理由を私は見出せない。

 こうした理由から,我々は,時間は離散的であると仮定する。形式的には,

離散性は次のように表現される(van Benthem:18):

 (11) DISC

   ∀巧(エ〈y→ヨ2伝く2〈「ヨμ伝くμ<2))),

   ∀エy(エ〈y→ヨ2(2<y〈「ヨμ(2<μ〈の))。

更に線形性の条件(op. cit.:16)

 (12)LIN

   ∀四(工=:y∨工く〃∨〃<工)

を付け加えればZと同型になる。しかし,自然言語を扱う上で妥当と思われる

他の可能性は,(12)の代わりに次のような左線形性(乃 4.)

 (13) L−LIN ∀Lτy2((y〈エ〈2〈エ)→(y〈エ〉〃ニ2>2<〃))

を付け加える事である。TRANS, IRREF, SUCC, DISC, L−LINを伴う時点構

造の一例を図示すると次のようになる:

 (14)      〃26  ,,

      〃25

        24        〃29 ,

      勿1  22  23    〃28

        27         〃210

       〃211    、、

      〃Zl2

(物が〃2,と同一のパス1内の右にあれば〃2,<物。)

 過去,現在,未来へのよく知られた3分類は決して対称的なものではない。

過去は,確定した事柄である。これに反して,未来には認識論的に不確定な要

素が入ってくる。それ故,未来時制は純粋に時間的な機能の他に,推量,予測

と言った様相性を表現することになる。(Lyons,1977:677参照。)こうした不

(7)

確定性を,(14)のような分岐構造で表す事ができる。

 しかし,こうした様相性を分岐構造で捉えようとする場合,何が分岐するの か,に関して次の三つを考える事ができる:

⑮i}藷㌻}…

このうち,c)が(14)のような構造を意味している。 a)は,(14)に於ける各々

のパスをある可能世界勘で置き換える事によって,そしてb)は,〃2,を出来 事の集合E で置き換える事によって得られる。民は,そこで成り立っている

全ての出来事の団塊もしくは全ての原子文の集合とする。このうちa)は Dowty(1979)が, b)はRescher/Urquhart(1971:70−74)が,そしてc)は

(Rescher/Urquhart(1函4.)によると)Priorが各々提唱している考え方であ

る。このうち,通常様相性と呼ばれているものはa)に当たる。

 ここで,a)℃)を同一視することが出来れば,その間の選択はどうでもよい 事になる。a)とb)の同一視はCarnapの状態記述(Carnap,21956:9)の拡

張であり,害がないように見える。b)とc)の同一視は,恐らくMcTaggart

(1927)の意図であると思われる。と言うのも彼は,『時間軸上のいかなる位置 に於ける内容も出来事を形成する。』(§306),或いは『如何なる物も変化しな いならば,時間も存在しないであろう。』(§308)と述べているからである。

確かに,時間の経過が世界の状態の何等かの変化一例えば時計一によっての み測られる,とするのは妥当な考えのように思える。しかし,自然言語に於い

ては次のような文が可能である:

 (16)Wenn ich dort gewesen ware, w5re ich jetzt tot

    (もし私がそこにいたら,私は今ごろ死んでいるだろう。)

この文の後件は,各々異なる可能世界%。,ω、に属する二つの異なった出来事の

集合E(この中では私は生きている。)とE1(この中では私は死んでいる。)

の同時性を主張している。この事は,異なる可能世界間での時間の比較が可能

である事を意味している。それ故,(14)のような構造に於ける同一パス内では

(8)

(15b)と(15c)を同一視できるが,様相性をこうした分岐構造で扱おうとする

限り,一方の時間と,他方の出来事及び可能世界が互いに異なる存在論的実体

である事を考慮しなければならない。PTQ(Montague,1973)に於いても

可能世界と時間は,表現の意味解釈のための照応点の中で互いに独立の指標と

して扱われている。即ち,時間はTRANS, IRREF, SUCC, DISC, LINを伴い,

整数の集合と同型であるような厳密線形順序をなす。そしてこうした時間の上

に,TRANS, IRREF, SUCC, DISC, L−LINを伴い(14)のような構造をなす出 来事の団塊の時間的経過が構築される事になる。可能世界の形で書いた(14)の 対応物は次のようになる:

 (17)

       1

%2

ω3

ω4

時間と可能世界に対するこうした捉えかたはDowty(1979)に於いて基本と なっている考え方であり,本論文の第3章もこの考え方に基づいている。

 我々は本章で(8),(9)に於けるように,時点構造からそれに対応する区間構 造を派生的に定義した。しかし,構造(1),(2)は本来,定義関係においては互

いに同等であり,van Benthem(1983)においては両者は互いに対称的に扱わ れている。しかし,区間構造から時点構造を定義する方法(Def。 H)はその

逆(Def.1)よりも少し複雑なので,ここでは後者を採用した。 Def Iの一般 形は次のような形になる(18):

 (18)次の条件を満たすXをMの連続的部分集合と称する:

  ∀吻1,勿2∈X∀初3∈Mについて勿1<勿2<勿3ならば勿3∈X。

      (妙.6 .:Def.1.4.1.1)

 (19)次の条件を満たすCONV(鋤=<∫,⊆,〈〉を,冗((1)の構造)から

(9)

  導かれる連結的区間構造と称する:

  a)1は,竃の空でない連結的部分集合全ての集合である。

  b)⊆は,集合論的存包含関係である。

  C)∀〃2、∈X∀〃22∈γについて〃2、<〃22であるとき,X<γ(X,γ∈1)。

      (ψ.τ紘:Def I.4.1.3.)

 Def. Hに関しては,アトムを用いた定義は同書85頁に,フィルターを用い

た定義はDef I.4.2.3.に示されている。又, Int(Z)に関する厳密線形順序等 の定義はTh.1.3.1.6.に示されているので,そちらを参照されたい。

2.時制論理と時間論理

 前章で考察した時点構造や区間構造の上で自然言語の表現が解釈される事に なる。しかし,こうした表現を意味解釈のために形式化するためには,いかな

る論理語を用いればよいであろう。

 ここでは,命題論理を出発点としてこれに時間表現を捉える道具建てを付加

し,それを時点構造の上で解釈する事にする。

 時制の意味論的機能を分析するために,Prior(1967)はH, P, G, Fとい

う4つの演算子を導入している。これは,時点構造の上で次のように解釈され

る。(沈,〃〆∈M):

 (20)llHρ1レ圭1であるための必要十分条件は,

    全ての〃〆<勿に対してllρll〆圭1である事である。

  llPヵ1レ≡1であるための必要十分条件は,

    或る〃〆〈吻に対してllヵ1レ≡1である事である。

  llGρ1レ圭1であるための必要十分条件は,

    全ての〃〆〉初に対して1ρll〆ま1である事である。

  llFρll栩≡1であるための必要十分条件は,

    或る〃〆〉吻に対して1ゆ1〆ま1である事である。

式の真理条件は常に発話時点初に依存している。それ故,この解釈は時制の

(10)

62       小松   寿

直示的性格を捉えている事になる。この論理を『時制論理』と呼ぶ事にする。更

に,様相演算子口,◇に於けると同様に,次の関係が成り立つ:

 (21) 励≡−1Prカ, 砂≡rF「♪。

 しかし,時点を直接対象言語的に表現し得る論理語を考えれば,時間表現を 捉える力は著しく増大する。ここでは,こうした論理のひとつである

Rescher/Urquha・t(1971)の(1〜/σ)計算を考察してみよう。

 この体系の,時間に関する道具建ては,次のような要素から成り立っている

:R(実現化)2,σ(先行関係),η(今),τ,τ0,τ1,…(時点変項),∀,ヨ(時点

変項の全称,及び存在量化子。ヨ幼≡「∀τ「ρが成り立つ。)

 これらの表現は,時点構造上で次のように解釈される。(oρ.碗.:45):

 (22)α,b∈〃。 gは,任意の に対してg(∫)∈〃であるような変項割当と   する。エ,〃はτもしくは〃とする。

   a)1川1。,、±9( ).

   b) llκIL,ρ圭α.

   c)ll1〜エ(ρ)llα,θ圭1gdw Ilρ1|11エllα,θ圭1.

   d)1σエyllα,θ圭1gdw llエllα,θ<ll〃llα,θ

   e)ll∀τ(ρ)ll。,σ±1gdwすべてのb∈Mに対してllρll。, g6≡1.

    (g;はg6(∫)=bである事を除いてgと同じであるような変項割当て。)

命題論理の部分に対する解釈は通常と同じとする。

σはMcTaggart(1927)のB列(〈早い・遅い〉関係)に対応し,〃はA列

(〈過去・現在・未来〉関係)を表示するのに用いられる。そしてこのκの意

味論的機能によって,直示的な時制論理を(R/θ計算で完全に書き表すこ

とが出来る。例えば,

 (23)励

 (24)  ∀ [σ κ一→』〜τ(ρ)]

で書き表わされる。

 更にこの計算に於いては,非直示的な文も表現することが出来る。と言うの

(11)

も,(22)によると 疏(ρ) の形の式の真理値は,照応点一それ故又発話点一

には依存しないからである。(ここで発話点とは,ある解釈に於いて当該表現

全体に対する最初の照応点を言う。)3

 我々は,この(1〜/σ)計算を『時間論理』と呼ぶ事にする。

 (22b)は自然言語に於ける 今 ( jetzt )の意味を完全に表す事が出来ない。

と言うのも, 1〜〃(ρ) が他の Rr の中に埋め込まれると,ヵは発話点相関的 にでなく,σ(『)相関的に解釈されるからである。これは自然言語に於いては,

直説話法の中に埋め込まれた に対応する。

 (25a)〈直説話法>

  Er hat gesagt: Ich muB jetzt bei dir bleiben.

  (彼は,『私は,今は君の所に留まっていなければいけない。』と言った。)

(25a)に於ける jetzt は,彼が引用文を発話した過去の時点を表しており,

(25a)の発話時を表しているのではない。即ちこの jetzt は真に直示的ではな く,アスペクト的な性格を持っている。(これについては,第3章も参照の

事。)我〉はこの jetzt をアスペクト的な jetzt (jetztA)と呼ぶ事にする。

 しかし,自然言語に於いては真に直示的な jetzt も存在する。それは間接

話法に於いて現れる:

 (25b)〈間接話法>

  Er hat gesagt, daB er jetzt bei ihr bleiben muB.

  (彼は,いま彼女の所に留まらなければならない,と言った。)

(25b)に於ける jetzt は副文中にあっても,主文の主語の発話時点ではなく,

(25b)の話者の発話時点を表している。この jetzt を直示的な jetzt (jetztD)

と呼ぶ事にする。jetztDの意味論的機能の論理的定式化は, Kamp(1971)や Bennett(1978)に見られる。しかしその定式化のためには,発話点を独立の

指標として照応点の中に導入する事が不可欠である。例えばKamp(1971:

290)に於いてはjetztDの機i能は,

(26)醐芝研,輪.。圭1gdw[♪]亘研,。。〉幼。±1

のように定式化される。ここでNは〈今〉一演算子であり,ヵは任意の式,〜£

(12)

は時点構造くM,〈〉とする。更に,〃20,勿∈ルf,〃2は照応点,〃2。は発話点,

頒は式の集合→(M→{0,1})であるような関数とし,[ρ]亘研,初。〉輪≡1gdw珊

(ρ)(〃2。)圭1とするき

 以上, Rτ(ρ) の形の式から明らかなように,時制論理の表現力は時間論理 のそれより小さい。(更にRescher/Urquhart(1974:122−124)を参照の事。)

 更に,時間論理は明らかに時点構造上の全ての一階の条件を表現し得る。即 ち,αをIRREF, SUCCのような時点構造上の任意の一階の条件とする時,

常に

 (27) 冗トα gdw 〜ε←ψ

となるような時間論理の式ψが存在する。

 こうした時点構造上の一階の条件の多くは,時制論理によっても表現し得る。

(即ち,ψを時制論理の式とした時(27)が成り立つ。)むしろ,こちらの方が一

般的な方法とも言える。と言うのも,時制論理は自然言語に近いが,時間論理 は自然言語から遠く,時点構造や区間構造に近いからである。この方法は,

Prior(1967:176−178),Rescher/Urquhart(1971:Chap.6−8),Uchida(1978:

Chap.2)等に見られる。例えば,

 (28) 9→GGρ

は推移性を表す。これは,次のようにして証明できる。llGρ1レ圭1と仮定する と,すべての〃〆〉勿に対してllρll〆±1。すると,すべての〃〆,〃〆に対して,

推移性勿く〃〆<〃2 →吻く〃2 によりllρll吻〃ま1。故に, llGGρll〆圭1。よって,

すべての勿に対してlk功→G砂1圭1。逆に,時点構造が推移的でないと仮定す ると,〃2〈勿 〈〃2 ではあるが吻く〃〆ではない勿 ,〃〆が存在する事になる。

即ち,II砂ll初≡1ではあるがllGGρ1レ≡1ではない時点構造が存在する。この構

造は,(28)を反証する。

 しかし,時点構造上の1階の条件の多くは時制論理では表現できない事が知

られている。(Prior(1967:45),Rescher/Urquhart(1971:66),van Benthem

(1983:158pp.))例えば反反射性は,時間論理では単純に rヨτ(σ胡 で表

現されるのに,時制論理では表現する事が出来ない。時点構造が反反射的であ

(13)

るとすると,現在は過去にも未来にも属さない。しかし,時点構造が反射的で あれば,現在は過去の最後の時点であり,未来の最初の時点である。多くの研 究者は,前者の立場をとっている。たとえばvan Benthem(1983)に於いては

(6)IRREFから明かであり, McTaggart(1927)に於いては, Past, present,

and future are incompatible determinations. (『過去,現在,未来は,互いに 非両立な規定である。』(§329)と述べている所から明かである。しかし,杉 原(1974:95£)のように後者の立場を採る者もある。時制論理は,このよう

に重要な性質も表現する事が出来ない。

 しかし,時制論理は更に次のような点でも,自然言語の意味分析には不十分 である。すなわちそれは,時点や時間の区間を直接表現する事が出来ない。又,

次のような文の非文法性も捉える事が出来ない:

 (29) *Er war jetzt Student.

    (*彼は,いま学生だった。)

(29)を時制論理の方法で分析する場合,

 (30)a)∧碑,b)Pハφ

のように演算子を重積させて表記せざるを得ない。(ここで,1Vは〈今〉一演 算子であり,ρは時制なしの Er ist Student. (『そ皮は学生だ。』)を表す。)し かし,(30a)は, Nが jetztA か jetztD かに無関係に Er war Student. (『彼

は学生だった。』)に等しい。又,(30b)はNが jetztA の意味であれば Er war Student (『彼は学生だった。』)を意味し, jetztD の意味であれば Er ist Student (『彼は学生だ。』)を意味する。いつれの場合も,(30)は(29)の 意味を正確に捉える事が出来ない。

 自然言語に於ける時間表現の多様な意味的機能を捉えるためには,もっと強 力な論理が必要である。Dowty(1979)の体系は,時間論理の一つの拡張であ る。即ち,時間論理中の命題論理の部分は述語論理によって置き換えられ,そ の全体がモンタギュー文法の形で定式化されている。そして自然言語の表現は,

時点相関的にではなく,時間の区間相関的に解釈される。この方法を我々は次

の章で見る事にするが,その前に,時間に関する興味あるテーマを二つ程,以

(14)

下に余論として考察する事にする。

余論1 出来事の論理

 上述の,時制論理から時間論理への,そして,時点意味論から区間意味論へ の拡張は妥当なものに見えるけれども,少し別の視点から,区間意味論への単

純な拡張に反対する立場も存在する。Galton(1984,1987),L6bner(1988)の

出来事の論理(event calculus)がそれである。彼らは,

 (31) The socks lay on the bed.

のような状態文の裸形文(時制や相を除いた文)と

 (32) John painted a picure.

のような非状態文の裸形文の間に本質的な差異を認める。5L6bnerによると,

前者は命題を指示し,後者は出来事を指示すると言う。命題は,各時点毎に真 理値の決まる状態を表すが,出来事は,各時点に於ける原子命題が有機的に組

み合わさって出来た「時間」個体を表わす。実際(32)は,絵筆のある動きが原

因となって,絵が出来る事を意味するが,絵筆の動きについては,各時点に於 ける絵筆の位置を表わす命題に,絵については,その存在,非存在を表わす命 題に迄分析する事が出来る。これは,Mourelatos(1981:202pp.),Galton(1984:

28)の指摘するように,通常の個体と,それを構成する材料の関係に似ている。

いつれにしろ,出来事も個体の一種であるから,それは真理値を持たない。に

も拘らず(32)が真理値を持つのは,過去時制がこうした出来事を,過去にあっ

た,として述語付けて,現時点に於ける状態を表わす命題としているからであ

る。

 こうした考察からGalton(1987:171)は,命題は時点相関的にのみ真理値

を持つとし,区間意味論に於けるように,命題が区間相関的に真である場合,

そこには,命題がある区間で(αの真である事と,ある区間に関して(㎡)真で

ある事の混同があり,区間に関しては,その裸形文の指示する出来事がその区

間に存在する,という意味で真であり得るものの,命題が区間で真である事は

(15)

あり得ず,もしあるとすれば,その区間内のすべての時点で真と解すべきであ ると言う。

 こうした観点からGaltonは,命題ヵに対する(20)のようなPrior式の時制 演算子とは別に,出来事Eに対して,

 (33)a)PθガE,

    b) PγogE,

    c)PγosE,

のような時制演算子を導入している。ここでPθげEはEが過去に存在した事

を,Pzos EはEが未来に存在する事を,そして.Pγog Eは, Eが現在進行中

である事を表わす。

 L6bner(1988)は, Galtonのように区間相関的な解釈を拒否してはいない

が,命題と出来事を峻別し,(31),(32)を

 (31 ) Z(t)&Past*(t),

 (32 ) E(e)&Past*(τ(e))

のように定式化している。ここで,Z, Eは(31),(32)の裸形文の指示対象で

ある状態(Zustand),出来事(Ereignis)をそれぞれ表わすが,これらは内包 的に解釈され,Zは靴下がベッドの上にある区間の集合を, Eは, Johnが絵 を描く,という出来事の個々の現われの集合を表わす。Past*は,発話の出 来事e*より過去の区間の集合でありτ(e)は,出来事eの現われる区間を示

す。よって(31 )は,靴下がベッドの上にある区間が過去にあった事を,そし て(32 )は,Johnが絵を描く,という出来事が過去にあった事を示す。

 こうした扱いは,命題と出来事の存在論的相違を明確に区別し得る点で有益 である。又,この区別を使って,Comrie(1976)に於ける完了(ρθφcr⑫の

と未完了(励♪θψc励のという基本的な相を定式化出来る。完了は,ある事 態の全体を完結したものとして見未完了は,ある事態を未完成の進行中のも

のとして見る相である。前者は(32)が,後者は(31),もしくは

 (34)John was painting a picure.

がその例となる。ここで,時制(や他の相)が設定する区間を丘,ある状態

(16)

が存在し,或いは,ある出来事が存在する区間を丘とすると,未完了相は,

丘⊆丘かつ丘のすべての部分区分でその状態が存在する事として,又完了相 は,ん⊆丘かつ丘のいかなる部分区間にもその出来事の全体が含まれない事 として定式化される。6実際この条件は,(31 ),(32 )から見て取る事が出来る。

 このように,出来事の論理は魅力的な方法ではあるが,決定的な欠陥もある。

それは,出来事が個体として扱われてしまうため,従来の論理でいう命題論理

のレベルを越えて述語論理のレベル迄分析する事が困難になる。又,(32)を従

来の方法に従って

 (32 ) ヨτ[Past( )〈AT(r,ヨェ[picture1伝)〈pitcure (元,エ)]]

のように定式化した場合,〈は命題picure(Dと出来事paint O, Dを結合する

事になり,〈には,命題と命題命題と出来事,出来事と出来事を連結する多

義牲が生じ,それに対する適正な解釈をどうするかも不明確である。これは,

二種の存在論的実体の導入によって生ずる二元意味論( ω0−SOγ ¢4 Sθ〃2α〃∫iCS)

の持つ一般的な困難である。

 以上,出来事の論理は,裸形文をアトムとして上述のような相の分析を行な うたり,Kowalski/Sergot(1986)のように,それを情報のモナドとしてデー タベースの更新を行ったりする際には有効な方法であるが,本論文では,裸形 文を更に分析して動作態様と相,時制との相互作用をも考察したいと考えてい

るので,第3章では,第1,2章で考察した方法の延長上で分析を行う事にす

る。

余論2 McTaggaπによる時間の非存在証明

McTagganの論証の輪郭

 McTaggartは,時間の非存在を示す驚くべき論証を展開した(1927:

§303−333)。彼は先ず,時点構造上に二つの順序関係,B列とA列を導入する。

B列は時点構造上の〈早い・遅い〉一関係であり,A列は,時点構造の過去・

(17)

現在・未来切断の列である。B列は恒久的であるが, A列はそうではない。と

言うのも,時点〃21,〃22の間に一旦〃Z、<〃22の関係があればこの関係は永久に真

であるが,或る事態ヵが今は現在に属していても,ある時には過去に属し,又 別の時には未来に属するからである。更に,A列は基本的であり, B列は派生

的である。と言うのも,我々は時間経過を常に自己中心的に一即ちA列によ

って一認知し,B列はそれから派生した物であるからである。

 さて,変化は時間にとって本質的である。変化がなければ時間はない。しか し,B列では変化を表現する事は出来ない。と言うのも,例えば『時点勿に於 いて火箸は熱い。』と言う文がB列に於いて一旦真なら,それは常に真だからで ある。それ故,B列に変化はない。よってそれは時間の記述には適さない。し かし,A列に於いては変化を促える事が出来る。と言うのも上記の文は,時点 勿に於いて現在に属しているが,初の前では未来に属しており,〃2の後では過

去に属するからである。

 しかし,A列は矛盾を含んでいる。過去,現在,未来は互いに非両立である。

即ち或る事態は,これらの内のどれか一つにだけ属する。しかし既に述べたよ うに,それはこれら全てに属する。この見掛け上の矛盾は簡単に解決できる。

即ちその事態は,未来に属していたが,現在に属しており,過去に属するだろ う,と言う事である。しかしこの定義は前より一つ余計に時制を含んでいる。

即ち,『それは現在に属している。』と言うのは『それは現在相関的に現在に属す る。』(最後の「する」は時制を含まないと考える。)と等しい。(他の2つも同

様に分析できる。)しかし,この「現在」も上と同様過去,現在,未来に属す る。この矛盾から逃れるために,更に過去,現在,未来を導入しなければなら ない。このようにして,この手続きは無限に続いて終る事がない。この矛盾の 故にA列は存在し得ない。それ故,A列より派生するB列も存在しない。更に,

A列に於ける変化は非現実的である。そ,して,A列とB列以外には妥当な時間 列は存在しないように見えるから,変化も非現実的である。よって時間は存在

しない。

(18)

McTaggaπの論証の再解釈と批判

 McTaggartは, A列が基本的でB列が派生的である事に関して,曖昧な認

知的根拠以外には何の根拠も示していない。しかし,彼の意図をここでは次の

ように定式化して見よう:

 (35)A列の定義

S(状態集合)を,命題の或る無限集合とする。M(時点集合)を, Sの無限

部分集合からなる或る無限集合とする。 ∫(=<V,{g},Z>)をM上の時制切断

とする。ここで,V,{σ},ZはMの分割である。 V, Zは無限集合であり, g∈

Mとする。τs〈Aτs であるための必要十分条件は,∫s=<V,{g},Z>,τSl(=∫s),

…, ∫s ,∫s輌+1,…,τsη(= s ), η≧2,  s獅=〈V,,{9 },Z 〉,  s +1=〈V8∪{9,},

{g +、},Z輌\{g、+、}〉,g,+1∈Z,となるような鎖が存在する事である。〜£6(時制

切断集合)を全ての時制切断からなる集合とする。A列W=<TS,<A>を

定6の或る部分集合TSから構成される厳密線形順序とする。((35)に於ける

無限とは,〜£6を除いて可算無限濃度の事とする。)

 (36)B列の定義

i8=<B,<B>をA列衷=<TS,〈A>から派生するB列とする。ここで, B=

VU{g}UZ(<V,{g},Z>はTSの任意の元)であり,〃21〈〃22であるための必

要十分条件は,〃2、∈Vu{g},〃22∈Zとなるような時制切断<V,{g},Z>が存在 する事である。別と磐の間には,明らかに順序同型が成り立つ。

 (35)の要点は,Mの元である全ての時点が,その瞬間に成り立っている状態

命題の集合一即ち世界の状態記述一として定義されている事である。事態

の集合と時点を同一視する事には,第1章で見たような問題がある。しかし,

時間の線形性を仮定する限りこれで問題はない。そして,この同一視こそが,

変化がなければ時間は存在しない,とするMcTaggartの論証の核心をなす前

提である。

 我々は逆に,B列からA列を定義する事もできる。そして,こちらの方が ずっと簡単である:

(19)

 (35 )磐=<B,〈B>をB列とする。ここで,B⊆Mであり,〈Bは,任意の

勿,〃〆∈Mについて,〃2〈B〃〆であるための必要十分条件が幼⊆〃〆であるよう

な厳密線形順序とする。この時,劉=〈TS,〈A>を賠から派生するA列とす

る。ここで,TS={〈V,{σ},Z>IVU{g}UZニB,V={ρ1ヵ〈g},Z={♪1σ<ρ}}と し,TSの任意の元rs=<V,{σ},Z>,∫s =〈V ,{σ },Z 〉について, ∫<W

であるための必要十分条件をV⊆V とする。

 そして,McTaggartは,これがA列が基本的であるとするRussellの見解に 当たるとしている。私見でも,(35 )の定義の方向のほうがより自然であるよ

うに思える。

 さて,時間論理に於いては,変化は次のように定式化できる:

 (37)厳密線形順序をなす時点構造定=<〃,〈〉に於いて,式sの指示す

  る命題は,

  (*) ヨ 1ヨ 2[1〜 1(S)〈R 2(rS)]

  が定で普遍妥当的(即ち,全ての勿∈Mに於いて真)である時,変化す

  ると言われる。

 ここで,ρを『その火箸は熱い。』(時制なし)を指すものとし,llρllρω≡1 1ヵllα±0(α〆g(τ))とする。そして,上記のMcTaggartの例に即して, B変化

が存在しない事を定式化すると

 (38)∀τ、∀∫、「ロ〜 1(1〜τ(ヵ))〈1〜τ、(一「1〜 (ヵ))]

のようになる。

 A変化の存在は

 (39)∀『1∀ 2[[σ 1 〈σ 『2]→口〜τ1(Fρ)〈R (ノVρ)〈、Rτ2(Pρ)]]

のように定式化される。(助は1〜η(ρ)と同じ。)

 しかしMcTaggartによると, Russellは(38)とは別の,次のようなB変化を

提示していると言う:

 (40) ヨ 1ヨ 2[1〜τ1(カ)〈1〜 2(一「カ)].

(40)をR変化と呼ぶことにしよう。これは(37*)に対応するものであり,我々

が通常変化と言っているものも,このR変化であるように思われる。

(20)

我々は,(38)を直ちに(37*)の否定形に変形する事が出来る。しかし,(37

*)の s に対応するのは ヵ ではなく, 1〜 (ρ) である。即ち,ρを永久文にす る事によってB変化が阻止されている。私見では,こうした不自然な形で変化

を定式化する事には根拠がないように思える。

一方,ρの意味論的定義を考慮すると,(39)から(37*)の例

 (41) ヨτ1ヨτ2[R『1(Fρ)〈』〜オ2(一一11「ρ)].

を導き出す事が出来る。それ故,A列に於いては変化が存在する。

 しかしMcTaggartは, A列には矛盾が存在しており,それが時間を否定す る事につながる,と主張している。これは次のように定式化し得る:

 (42)1.過去,現在,未来は互いに非両立である:

   Pρ◎ハφ◎玲。

   (⑰は,排他的選言を表す。)

  n.しかしρは同時にこれら三つに属し得る。即ち:

   勘く坤く乃。

   しかしこれは矛盾である。

  皿.しかし,これは真性の矛盾ではない。即ち,ρは同時にこれら三つに    属しているのではなく,時間的に前後して属している。例えば,ρが今    真だと言うのは,ゆは真であったが,今は助が真であり,やがて」%

   が真になるだろう,と言う事に等しい。即ち,

   P玲く」V∧φ〈F乃

   が成り立つ。

  n.しかし,この式の各連言肢の一番外側の演算子に対しては,前のnに

   於けると同様の問題が生ずる。即ち:

   P乃く2V励くF助く    P∧φ〈ハ碑くFW〈

   P砂くノv乃くF乃。

   これは矛盾である。

  皿.しかし,これは前の皿に於けると同様,真性の矛盾ではない。上式の

(21)

 各選言肢の内側の式砂,∧φ,」『ρは同時に過去,現在,未来に属している  のではなく,時間的に前後している。即ち,

   PF助く2VMウ〈FP玲く    PF吻く.Mv∧φ〈FP∧φ〈

   P刑くハW乃くFP玲。

このようにしてH,皿の循環が無限に続く。しかし,ここまでの説明から明ら かなように,これは矛盾ではなく,次の規則による回帰的な同値展開が行なわ

れているだけである。

 (43)  1フ) ⇒ 1「1『カ〈1)∧φ〈∧乙日り,

   .〈φ⇒P1ウ〈∧㎎〈F乃,

   ゆ⇒∧ゆく獅く卿。

以上の考察を要約すると,変化がなければ時間も存在しない,と言う仮定を認

めるとしても,B列に於いてもA列に於いても時間を矛盾なく記述できる。

よって,McTaggartの論証によっては時間の存在を否定できない,と言う事

になる。

3.時間表現とその意味的機能

 この章は,Dowty(1979)に基づいている。本章で扱われる時間表現は次の 通りである。

 (44)1)動詞: a)状態動詞, b)活動動詞, c)成就動詞,

   d)遂行動詞。

  2)時制: a)過去,b)現在, c)未来。

  3)相:  a)進行相,d)確定未来相, c)完了相。

  4)副詞: a)時制副詞,b)相副詞, c)完了副詞。

このうち,動詞と副詞は語彙的であり,時制と相は文法的である。又,動詞,

相,相副詞はアスペクト的であり,時制,時制副詞,完了副詞は直示的である。

 これらの表現の意味分析の前に,そのための規則系について述べる。

(22)

 3.1 英語とドイツ語の断片

 本章で用いられる英語及びドイッ語の断片はPTQの拡張であり,以下の部 門から成る:

自然言語(NS)

曖昧でない言葉(DS)

∫⊆〃 (翻訳)

内包論理の統語論(IL)

別,%,i,9 (解釈)

モデル(<別,<<醐ゴ〉,9>>)

自然言語を正規化した表現,即ちDSの元は,正確には本章3.3(46)に於け

るような分析樹の形で表現される。しかし(46)以外の例については,その構造

を容易に読み取る事が出来ると思われるので,通常の自然言語の形で示す事に

する。

 DSに於ける範疇記号の集合Catは,次の条件を満たす最小の集合である

:(1)¢, ,τ∈Cat,(2)もしA, B∈CatならA/B, A//B, A///B∈Cat。(ε,i,τ

はそれぞれ個体,時間の区間,及び文の範疇記号である。)範疇記号に対して は,次のような略記が用いられる:IV:〃θ, IAV:IV/IV, Tm:〃( /i),

TmAV: //( /i), PAV(英語の断片についてのみ): ///(r/i)。

 同様に,ILに於けるタイプの集合τは,次の条件を満たす最小の集合であ

る:(1)ε,i,τ∈℃ (2)もしα, b∈τなら〈α,b>∈τ (3)もしα∈τなら

(23)

〈s,α〉∈τ。(¢,i,τはそれぞれ実体,時間の区間,及び真理値のタイプで あり,〈s,α〉はタイプαの内包である。しかし,s自体はタイプではな

い。)

 DSの範疇記号は,タイプ割当∫によってILのタイプに次のように割り当

てられる:(1)∫(の=θ,∫(の= ,∫(∫)= ,(2)∫(∫/…/θ)=〈ε, 〉,∫(〃・・/の=

<i, >7,(3)もし〃…眉∈Cat\{ /・・/ε,∫〆・/ゴ}ならば,∫(A/…但)=

<<sぴ,(B)〉,∫(A)〉。(ここで,/…/はろ//もしくは///を表す。)

 BAは,範疇記号Aを伴うDSの基本表現の集合とする。 BAの各要素は,3.

3−4の最初に,そのIL一翻訳形と共に示される。一例を挙げると, John∈

BT,∫Oohn)∈ρ.P{」}のようになる。(ここでノは, D Sの基本表現をそのI

L一翻訳形に写像する関数である。)DSのフレーズPは, DSの基本表現の集 合B=UA。c、tBAに次の型の規則を回帰的に適用することによって生成され,

フレーゲの原理によってILに翻訳される:

 Sn.<F.,〈δり〉り〈μ,ε〉 (δ,ε∈Cat,りくμ) (統語規則)

 F.(〈αδ.〉。<μ)=β  (統語演算)

 〃(凡(〈αδ♪。<。))=b (翻訳)

ここで,りくμ,Pδ.を範疇記号δ.を伴うフレーズの集合,んをその定義域がD Sのフレーズの集合Pであるような∫の拡張であるとする時,凡は,αδ.∈Pδ.

であるような順序対くαδ♪。<、からβ∈Pを生成し,〃はF.(〈α。〉、<。)(即ちβ)

をb∈万㈲に翻訳する。我々はしばしば,Sn.の全体を統語規則と呼ぶ事にす る。Sn.及びF.は,それらが英語もしくはドイツ語のみに適用される時には,

それぞれEもしくはDのインデックスを持つ。

 S1. BA⊆PA (A∈Cat)

以外の統語規則は3.3−4の当該箇所に掲げてある。このDSの規則系は極め

て切り詰められたもので,時間表現のための操作を意図していないのはS2だ けである。

 ILとそのモデルは,範疇文法的な原則によって構成される。しかしここで は,要点を素描するに留める。正確な定式化についてはDowty(1979:351−354)

(24)

76       小松   寿

を参,照されたい。

 Dowtyは,次のような内包モデルを用いている:

 21ニ〈E,レγ,ノ1グ,<,1〜,∫72γ,$,F>。

ここで,Eは実体の集合, Wは可能世界の集合, Mは時点の集合であり,<は

〃の上の厳密線形順序とする。ここでMは時点の集合であって区間の集合では

ない。後者1は(18)の方法によって〃から構成される(19a)の主集合である。

よって,区間とはMの連結的部分集合と言う事になる。更に,MはINT(Z)

と同型であると仮定する。Rはル上に(16)に於けるような未来に向かって分岐

して行く構造を与える関数であり,∫〃γは進行相の解釈に於て必要となる。又,

$は因果関係の解釈に用いられる。タイプαの可能な指示対象の集合は,次の ように回帰的に定義される:(1)1)bニE,(2)1),={0,1},(3)1),=∫,(4)

D<。,b>ニDbDα, D〈、,。〉=D。 ×∫.5α(≡D〈、,。〉)はDαの内包の集合とする。 Dゴ

を導入した事の意図は,自然言語に於ける様々な時間表現をIL式の形で直接 表現できるようにする事であるが,これは他方で,D。とD,による二元意味論

(Zτθ0づ0τ彦θ4∫ε〃ταη力c∫)を用いる事を意味する。 FはILにおけるタイプαの

定項にS、の元を割り当てる関数である。

 ILの有意味表現は,照応点扱, ,ゴ,g相関的に解釈される。(ここで,衷 は内包モデルであり,%∈阪  ∈1,gは変項割当とする。)しかし,発話点 は常に理臥[沈],g(勿∈ルf)の形をしている。(ここで,[微,…,〃2。]は,

批(1≦ ≦η)そして〃2 のみを含む区間とする。)

 ILに於いては,特定のタイプを持つ次のような変項が用いられる:

エ・〃・2・エ1・エ2,…:θ,P, Q, P1, P2,…:〈S,〈θ,τ>>,田, Q,墾1,£↓2,…:,

〈s・∫(T)〉,r,τ1,τ2,…:i,P∫, Q,:〈s,< ,τ>>,田f, D,:〈s,∫(71勿)〉。

ILの有意味表現の解釈については,以下に一般的に必要な定義を幾つか挙

げるに留める。PTQの部分については省略する。 Dowtyが導入した演算子

に関しては,3.2−4を見られたい。

 MEαを, I Lに於けるタイプaの有意味表現の集合とする。

 ζ,ξ∈ME ならば,[ζ<ξ],[ζ≦ξ],[ζ⊆ξ]∈114E,。 ll[ζ<ξ]1』ω,,,、圭1gdw全

(25)

ての勿1∈llζll別, , i,σと初2∈llξllw,砂, ,θに対して勿、〈祝2。 ll[ζ≦ξ]1』砂, ,、ま1gdw

全ての〃21∈llζ』卿, i,、に対して〃21≦〃22となるような〃22∈llξ1』ω, ,、が存在す

る。ll[ζ⊆ξ]1』,紗, f,9≡1gdw lにll別,砂,ゴ,9⊆llξ1』,%, ,σ。

 φ∈.ME,,ζ∈ME輌ならば, AT(ζ,φ)∈〃,。 llAT(ζ,φ)‖班,ψ, ,、圭1gdw llζ1』旭9≡〆であってllφll釧,ω, i ,、≡1。

 η∈ME 。1〃llα,ω,言,θ≡ 。(即ち,ηはアスペクト的な「今」を表す。)

 以下に於いて,次のような省略が用いられる:α(β,γ)圭α(γ)(β),α{β}

       

圭[∀α](β),μφ圭λμφ,%φ≡^[λμφ]。

3.2 動作態様

 各々の動詞は,特定の動作態様,即ち事態の時間的経過の有様を表現する。

動作態様については,今まで色々な分類法が提案されている。例えばDuden の第4巻文法(31973:§122.)に於いては,blUhen, schlafen…未完了態,

besteigen, erfrieren…完了態, erblUhen, entbrennen…起動態, verblUhen,

ausklingen…結果態,等の分類がなされている。しかしここでは, Dowtyが Vendler(1967)に基づいて提案したVendler分類を採用する事にする。これは,

動詞を a)状態動詞,b)活動動詞, c)成就動詞, d)遂行動詞の4つに分類 するものである。Dowtyは,これらの動作態様を意味公準によって記述して いる(361ff.)が,それらの直観的意味は次のような図式によって示す事が出来

る:

 (45) a)状態動詞:s∂,liegen等。

f

b)活動動詞: 磁gぬ,laufen等。

(26)

78       小松   寿

                

      1

4      

c)成就動詞:吻μ∫o〃g,ein Gemalde malen等。

d)遂行動詞:4ゴθ,die Stadt verlassen等。

ここで,時間は左から右に流れており,垂直軸は状態の相違を表す。a)−d)は,

例えば次のような意味を持つ。状態動詞を伴う文(略して状態文と呼ぶ。他の

動作態様についても同じ。), John sits on the chair (『ジョンは椅子に 座っている。』)が或る区間ゴで真であるための必要十分条件は,この文がゴの 全ての部分区間で真である事である。活動文 Monika lauft. (『モニカが走

る。』)が或る区間ゴで真であれば,[〃刎,[〃2ゴ]⊆ゴ(批〆〃2∫)であるような

[〃2」,[〃2ヨがあって,或る命題ヵが[〃2」では真となり,[〃2∫]では偽となる。

この場合,ρは Der rechte FuB von Monika ist vorne. (『モニカの右足が前

に出ている。』)と言う命題であって,[〃2 ]σ=2η)で真であるとする。そし て,[〃2ゴ](元二2η+1)に於いてはこの命題は偽であり,代わって Der linke

FuB von Monika ist vorne. (『モニカの左足が前に出ている。』)と言う命題

が真であるとすればよい。それ故, Monika lauft. と言う文がiで真である

ためには, は少なくとも二つの時点を含まなければならない事になる。遂行

Bill dies. と言う文が或る区間 で真であるための必要十分条件は, i=

[〃2、],[〃22]であって命題ρが[〃21]では真であり,[〃22]では偽である事である。

(27)

この場合ρは, Bill is alive. (『ビルは生きている。』)と言う命題であるとす

ればよい。成就文 Hans malt ein Gemalde. (『ハンスは絵を描く。』)が或る 区間ゴで真であるための必要十分条件は,ゴ、⊆ で真である或る命題ρが原因

となって,他の遂行命題4がi2⊆iで真となる事である。ここで,ヵは活動文 Hans bewegt einen Pinsel. (『ハンスは絵筆を動かす。』)の表す命題であり,

4は Das Gemalde ist fertig. (『絵は出来上がっている。』)の表す命題である とすればよい。それ故,成就命題は通常,活動命題と遂行命題の組合わさった

ものと考える事が出来る。因みに(45b)の意味解釈は, c)やd)に於いても当て はまる。それ故,活動文に対する上記説明に於いては,「必要十分条件」ではな く「〜ならば」が用いられている。(45)は,表層に於いては原子的な動詞に対し

て,その意味分析を語彙の下のレベルまで拡張したものである。これは,言語

学に於いては「語彙分解」として知られている。こうした精密化は,例えば次の

ような疑問に答える事にも役立つ:van Benthemは,区間意味論と時点意味 論の関係を考察して,『ρが区間ゴ相関的に真であるための必要十分条件は,

ρが十分多くの勿∈ゴで真である事である。』とし,「十分に多くの勿」とは正 確には何を意味するかを問うている(1983:220)。しかし,こうした問いは,

動作態様の正確な分析なしには不十分である。我々はこの問いに対し,(45)の

分析に基づいて次のように答える事が出来よう:もしヵが状態命題であれば,

「十分に多くの吻」は「全ての勿」を意味する。これに反して,他の3種類の命題 についてはこのような関係は存在しない。と言うのもこれらは,卿(区間[川)

相関的には一意的に偽だからである。

 (45)の分析は他方では又,一種のアトミズムに基づいていると考えられる。

と言うのも,原子的な状態命題の各時点に於ける真理値を基にして,上例のよ

うな文の区間に於ける真理値を求めているからである。こうしたボトム・アッ

プ法は,本論文の他の表現に於いても用いられているフレーゲの原理の一例と

なる。(45)はそれ故,この原理の語彙の下のレベルへの拡張と言う事になる。

(28)

3.3 時制,及び時制副詞

 先ず最初に,時制,及び時制副詞を伴った文を生成するための統語規則を挙 げる:

 S2.〈F2,〈T, IV>,t>  (裸形文)

  F2(α,β)ニαγ。 γはβを平叙文の語順にしたもの。

       ム

  〃(凡(α,β))=AT(τ,(α1(β ))「r1)。

(α =ん(α),β =〃(β)。以下同様。φ「τ1はφの呼称形と称し,φがτの中 に現れるかも知れない事を表す。(Link(1979:97)参照。)

 S3.<凡,<t>,t>  (過去)

  F3(φ)=ψ.ψはφの過去形。

       ム

  〃(F』(φ))=ヨr[PAST(∫)〈rφ 「r1{r}].

 S4E.<F4E,<t>,t>  (現在)

  F4E(φ)ニψ. ψはφの現在形。

       ム

  ん(凡E(φ))=∫φ 「 1{η}.

 S4D.<凡D,<t>,t> (現在)

  F4D(φ)=ψ. ψはφの現在形。

      ム

  ん(1㌦D(φ))=ヨ [PRES(∫)〈 φ 「r1{r}].

 S5.<抗,<t>,t>  (未来)

  F5(φ)=ψ.ψはφの未来形。

       ム

  ん(F5(φ))=ヨ [FUT(『)〈『φ D 1{ }].

 S6.〈F6,〈TmAV, t>,t>

  F6E(α,φ)ニφα.

  F6D(α,φ)ニαψ. ψはφの定動詞を倒置したもの。

         ム

  〃(1司6(α,φ))=α (τφ 「τ1).

これらの規則の適用例を一つ次に示す。

(29)

(46)

     gestern reiste Hans ab, t,3

     (ハンスは昨日出発した。)

(ヨτ[Past(τ)〈τ⊆gestern 〈AT(φabreisen ⑭))])

  gestern reisen Hans ab, t,6

([τ⊆gestern 〈AT(τ, abreisen (ぬ))])

    gestern, TmAV       Hans reisen ab, t,2  (λP,[r⊆gestern 〈P,{τ}])      (AT(∫,abreisen (カ)))

      ∴

      Hans, T   abreisen, IV

      

      (PP仇})     (abreisen )

(46)の各節に於ける一番上の行にはDS表現が,その右にはそのDS表現の範 疇記号とそのDS表現を生成するのに用いられた統語規則が,下の行の括弧の 中にはそのIL翻訳形が示されている。裸形文(即ち,時制や相,時制副詞な しの文)の生成,及び時制副詞の導入に於いては,IL翻訳形の中に於ける は自由変項の形で保たれる。これはDSに於いては定動詞の不定形で表現され る。そして,時制の導入によって初めて が束縛される3

 Dowtyによると,英語に於いては時制の解釈に関して,現在時制とその他

の時制の間にある種の差異が存在すると言う。次の文

 (48) John is a boy.

のうち,(47a, c)のみが通常の読みを持っている。即ち,(47a)はJohnが過去

に於いて走った事を,(47c)はJohnが未来に於いて走るであろう事を表す。し

かし(47b)は通常の読みを持たず,確定未来相(3.4参照。)もしくは習慣的

参照

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