複数基準配賦法 と自家消費サー ビス
福 島 吉 春
1 序 看
原価計算のプロセスは一般 に費 目別計算,部門別計算,製品別計算の3段階 に分 け られ,部門別計算 はさらに①部門個別費の各部門‑の賦課 と部門共通費 の配賦,(卦補助部門費の製造部門への配賦,そ して③製造部門集計額の各製品 への配賦 とい う3つのプロセスか ら構成 されるO(参は各製品‑の配賦であるか ら,製品別計算の段階にあるともいえるが,部門別計算を採用する場合 には, 配賦が部門別あるいは工程別 にお こなわれ るという特徴を もっているので,一 般 に部門別計算のなかで も,その手続 きが論 じられる。
以上のプロセスの うち②補助部門費の各製造部門への配賦方法は各種の観点 か ら次のように分 けることができる1)0
1 単一基準配賦法 と複数基準配賦法
2 補助部門費を実際価格 と実際消費量に もとづいて集計す るか,それ とも 標準価格 と標準消費量 にもとづいて集計す るか
3 配賦の基準 として実際操業度を使 うか,それ とも予定ない し予算操業度 を使 うか
このはかに,補助部門相互間のサー ビスの授受関係をどのよ うに計算に反映
1)Cf.C.T,HorngrenandGeorgeFoster,CostAccozLnting:A Managerial Emphasis,7thed.,1991,p.464.
〔383〕
384 商 学 討 究 第42巻 第2・3号
させ るかによって,直接配賦法,階梯式配賦法,相互配賦法の区別 もある。
本稿 はこの うち1の単一基準配賦法 と複数基準配賦法の区別を検討す る。
単一基準配賦法 とは,補助部門 ごとにひとっの配賦基準を使 って補助部門費 を配賦す る方法であ って,今 日一般 に使われている。一方の複数基準配賦法 (dual‑ratemethod;double‑basemethod;dualdisributionbase) は,名称か らすれば補助部門費を配賦す るさい,ふたっ以上の基準を使 う方法 となるが,一般には特に,補助部門費を変動費 と固定費 とに分 け,それぞれを 別個の基準で配賦す る方法を意味 している2)0
本稿では主 として この複数基準配賦法の理論的特徴 について検討す る。 とり わけ,第3節で 自家消費サー ビス,すなわち補助部門の用役あるいは産出物の 一部を当該補助部門 自体が消費す る場合 には,通常説明されている複数基準配 賦法では計算が合わな くなることを例示す ることによって,複数基準配賦法 と 部門責任測定 との関係について検討す るものである。
2 複数基準配賦 と単一基準予定配賦率法
シュラックーおよびシュラックーの共著 によれば,複数基準配賦法の理論的 根拠 は次の とお りである。
「補助部門の固定費額 は当該部門に投下 された金額の関数である。・‑・・補助 部門に投下 された金額 は当該部門の規模およびキャパ シティの関数である。補 助部門の規模およびキ ャパ シテ ィは・・‑‑サー ビスを消費す るすべての部門の キャパ シティの関数である。 か くして補助部門の固定費額 はサー ビスを消費す る他の諸部門のキ ャパ シティの関数であ り, したが ってその実際消費量にかか わ りな く,消費部門の消費能力の比率で,分担 されるべ きである。
補助部門の変動費 は当該補助部門の活動の関数である。補助部門の活動 は消 費部門によるサー ビス実際消費量の関数である。か くして,補助部門の変動費
2)Horngrenの著書 6訂版で は変動費 を さ らに細分 して,別個 の基準で配賦す る方 法が示唆されている。Cf.Horngren,CostAccounting,6thed.,1987,p.418.
複数基準配賦法と自家消費サービス 385 は他の譜部門のサー ビス実際消費量の関数であ り, したが って実際消費量の比 率 にお うじて,消費部門によって分担 され るべ きである3)」(傍点 は原文イタ
リック,また省略は福島) と。
すなわち要約すれば,補助部門の固定費 はサー ビス消費部門の利用能力の関 数であるか ら実際消費量ではな く,消費能力の比率で配賦するのが正 しく,ま た補助部門の変動費 は消費部門の消費量の関数であるか ら,消費量を基準 に配 賦す るのが正 しいこととなる。
そ こで本節では,製造部門 として機械加工部門 と組立部門,補助部門 として 修繕部門を もつ工場を仮定 し, この もっとも単純な例にもとづいて,まず単一 基準配賦法 と複数基準配賦法 との相違を検討 したい。 ちなみに, この例では補 助部門がひとつだけなので補助部門相互間の用役授受は存在せず, したが って 直接配賦法,階梯式配賦法,相互配賦法の区別はない。
便宜上,部門共通費の配賦 は済んだ もの として,その配賦額を含む修繕部門 の変動予算 は次の とお りであったとす る。
固定費 (月次合計) 変動費 修繕部門変動予算 2,000円 3円/修繕時間
また複数基準配賦法による補助部門費配賦にさい しては,変動費 と固定費を それぞれ以下 の基準 を使 って配賦す る.なお単一基準配賦法 を採用す るさい は,今 日一般的な方法 に したが って,変動費の配賦基準を使 って補助部門費全 体を配賦す ることにする。
配賦基準 機械加工部 組立部 修繕部
固定費 最大修繕時間(単位 :時間) 500 500 変動費 実際修繕時間(単位 :時間)
1月の各製造部門での実際修繕時間が最大修繕時間 と同 じであ った とすれ ば,各製造部門に配賦 される修繕部門費は次の とお りとなる。
3)C.F.SchlatterandW.J.Schlatter,CostAccounting,2nded.,1957,p.363.
Cf.RonaldV.Hartley,CostandManagerialAccounting,1983,pp.280‑81.
386 商 学 討 究 第42巻 第2・3号 修繕部門費発生額 ‑ 2,000+3×1,000‑5,000
く単一基準配賦法〉
500
機械加工部門への配賦額 ‑ 5,000× ‑2,500 1,000
500
組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 5,000× ‑2,500 1,000
(複数基準配賦法〉
500
機械加工部門への配賦額 ‑ 2,000× ̲̲̲+3,000× 500
1,000 1,000 500 500
組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 2,000× +3,000×‑
1,000 1,000
‑ 2,500
‑ 2,500
次に,2月には,組立部への修繕時間が300時間に減少 したとす る。
修繕部門費発生額 ‑ 2,000+3×800‑2,000+2,400‑4,400
く単一基準配賦法)
500
機械加工部門への配賦額 ‑ 4,400×‑ ‑ 2,750 800
300
組 立 部 門への配賦額 ‑ 4,400×‑ ‑1,650 800
〈複数基準配賦法〉
500 500
機械加工部門への配賦額 ‑ 2,000× +2,400×‑ ‑2,500 1,000 800
500 300
組 立 部 門への配賦額 ‑ 2,000× +2,400×‑ ‑1,900 1,000 800
単一基準配賦法の欠点 は, この2月の配賦計算に示 されている。組立部門は 修繕サー ビスの利用度が低下 したのであるか ら,当該部門‑の配賦額が減少す
るのは当然であるとして も,機械加工部門は,修繕サー ビスの利用度が 1月 と 同 じであるに もかかわ らず,配賦額が2,500円か ら2,750円‑ と増加 している のである。 このように単一基準配賦法によれば,各部門への配賦額が他の部門 のサー ビス利用度 によって変わ って くる。 この結果 は機械加工部門にとって不 満であろうし,また配賦額が他の部門の活動 によって影響を受 けることは原価 能率測定上,好ま しいことではない。
さて,補助部門費を単一基準で実際配賦す ることか ら生 じる問題点 は,以上
複数基準配賦法 と自家消費サー ビス 387 のよ うに,ある部門のサー ビス消費量 の変動が他の部門への配賦額に影響を与 え ることのはかにもい くつかあるが,それ らについてはすでに岡本清教授によ る詳細 な考察があ るので 4),以下本稿 で は,解説 の順序 お よび生起す る事象 について は岡本教授の設例 にな らいなが ら,複数基準配賦法 と比較す る方法 と
しては,単一基準予定配賦率法 に絞 ることにす る。
まず最初 に,上述 した1月および2月の数値例 につ いて,予定配賦率法 によ る配賦額を示 してお く。
なお予定配賦率 としては (2,000+ 3×1,000)÷1,000‑ 5円/修繕時間を 使用す る。
く予定配賦率法〉
1月 機械加工部門への配賦額 ‑ 5× 500‑ 2,500 組 立 部 門への配賦額 ‑ 5× 500‑ 2,500 2月 機械加工部門へ の配賦額 ‑ 5× 500‑ 2,500 組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 5× 300‑1,500
2月の修繕部門費発生額4,400円 と配賦額4,000円との差額400円は修繕部の 操業度差異である。 ここでは以上のよ うに,予定配賦率を使 って も,組立部門 へのサー ビス利用度 によって機械加工部門への配賦額が影響を受 けるとい う実 際配賦法の欠点 は回避で きる点 に注 目してお きたい。
さて翌 3月,修繕時間は1月 と同 じであったが,修繕部門の実際変動費が変 動予算 よ りも200円余分 に発生 した とす る。
配賦額 は次のようになる。
修繕部門費発生額 ‑ 2,000+ 3×1,000+ 200‑ 5,200 く複数基準配賦法)
機械加工部門への配賦額 ‑ 2,000× .〈一500一十 3,200×て 500 1,000 1,000
500 500
組 立 部 門への配賦額 ‑ 2,000× + 3,200×‑
1,000 1,000
‑ 2,600
‑ 2,600
4)岡本清 『原価計算 (四訂版)』国元書房,1990年,245T50ペ‑ジ参照。
388 商 学 討 究 第42巻 第2・3号 く予定配賦率法)
機械加工部門への配賦額 ‑ 5×500‑2,500
組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 5×500‑2,500
ふたっの製造部門の修繕サー ビス消費量 は1月 と同 じなのに,複数基準配賦 法で は両部門への配賦額 は等 しく増加 してい る。 この配賦結果 は機械加工部 門,組立部門のいずれにとって も不満であろ う。 したが って,サー ビスの利用 度 に応 じて補助部門費を配賦す るには,複数基準配賦法を利用す るだけでは不 充分であることがわか る。 これを解決す るには,変動費の配賦 に予定配賦率 あ
るいは正常配賦率を使用すればよい。
この計算 は以下の とお りとなる。
〈複数基準配厳法 (変動費 の配賦 に予定配 賦率を使用)〉
予定変動費配賦率 ‑ 言霊 ‑ 3円/修繕 時間
500
機械加工部 門への配賦額 ‑ 2,000× +3×500‑2,500 1,000
500
組 立 部 門へ の配賦額 ‑2,000× +3×500‑2,500 1,000
修繕部門の原価発生額 は5,200円,配賦額 は5,000円なので,200円の差額が でているが, これ は修繕部門の予算差異があって,変動予算 に もとづ く許容額
(2,000+3×1,000‑5,000)と実際発生額 (5,200)との差額 に一致 してい る。 この原価差異 は,厳密 には差異発生原因によって違 って くるが,第一次的 には修繕部の責任 とされ る差異である。
なお ここで,配賦額および予算差異の金額が複数基準配賦法 と予定配賦率法 とで一致 していることに注 目したい。両計算を比較す ると,複数基準配賦法 に は固定費 と変動費の分解や配賦計算の繁雑 さなどの手間がかか るが,それに も かかわ らず, ここで両計算の結果が一致す ることは,複数基準配賦法の実務‑
の普及が進 まない原因のひ とつ と考え られ るか らである。
ともあれ4月,すべての条件 は1月 と同 じであったが,機械加工部門への修 繕時間500時間には,当該部門での修繕作業中,修繕工が機械の操作を誤 った
複数基準配賦法 と自家消費サー ビス 389 ために生 じた10時間の無駄が含 まれていた ことが判明 した とす る。
この場合,実際原価計算 によるか ぎり,ふたっの製造部門‑の修繕費配賦額 は1月 と同 じになる。つ ま り,機械加工部門は実質的に490時間の修繕サー ビ ス しか提供 されていないに もかかわ らず,500時間分 の修繕部門費 を配威 され る結果 になる。
この不合理な結果を避 けるためには変動費を標準配賦す るしかない0 く複数基準配賦法 (変動費 は標準配賦 による))
修繕部門費発生額 ‑ 2,000+3× 1,000‑5,000
標準変動費配賦率 ‑ 三豊 ‑3円/修繕 時間
500
機械加工部門への配賦額 ‑ 2,000× +3×490‑2,470 1,000
500
組 立 部 門への配賦額 ‑ 2,000× +3×500‑2,500 1,000
この結果,修繕部門の原価発生額 は5,000円で,配賦額 は,4,970円にな る。
差額の30円はい うまで もな く,第一次的には修繕部門に責任がある能率差異で あ る。
同 じ数値例を単一基準予定配賦率法で計算す ると,次の結果がえ られ る。
(予定配賦率法 (実 際配賦 の場合))
機械加工部門‑の配賦額 ‑ 5×500‑2,500
組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 5×500‑2,500
く予定配賦率法 (標準配賦の場合))
機械加工部門への配賦額 ‑ 5×490‑2,450
組 立 部 門への配賦額 ‑ 5×500‑2,500
修繕部門費 の発生額5,000円 と配賦額4,950円 とのあいだの差額50円は修繕 部門の能率差異である。
標準原価計算で比較す るか ぎり,両計算 ともに能率差異が計算 され,相違 は その金額を30円と評価す るか,それ とも50円と評価す るかにす ぎない。 これは 修繕部門の不能率10時間を変動費配賦率の1時間あた り3円で評価す るか,そ れ とも固定費の配賦率 もを含んだ1時間あた り5円で評価す るかの違 いに過 ぎ
390 商 学 討 究 第42巻 第2・3号
ず,評価方法がそのような ものであると認識 しているか ぎり,大 きな問題 とは いえない。不能率 はあ くまで も修繕工が修繕をお こなったさいの無駄な時間, 10時間だか らである。また, もし予定配賦率法における能率差異を 「標準修繕 時間にたいす る予算許容額 と実際修繕時間にたいす る予算許容額 との差異」 と
して計算すれば,結果 は30円で一致す ることになる。
なお,岡本教授 は4月の計算例について, 「注意すべ きは‑‑もはや実際原 価計算で はな く,標準原価計算 にな ってい ることであ る5)」 (省 略は福 島) と解説 している。部門 ごとの責任を考えるか ぎり,変動費の配賦は標準配賦法 によることが理論的には望ま しいのであるが,実際原価計算 として実施す る限 り,3月までの計算 にとどめざるをえないのである。また現実問題 として も, 標準原価方式を採用 しようとすれば,本例の場合,修繕がお こなわれ るつ ど, その修繕が どれだけの標準修繕時間に相当す るかを見積 もらなければな らず, いささかや っかいである。
以上が岡本教授が例示 している補助部門費変動 とその配賦計算の例である が,以上の出来事のはかに,固定費額が変動する場合が考え られる6)0
たとえば5月 に,会社が新たに火災保険契約を結んで,固定費額が2,500円 に増加 したとしよう。他の条件が 1月 と同 じとす ると,予定配賦率法 と複数基 準配厳法による配賦計算 はそれぞれ次のようになる。
修繕部門費発生額 ‑ 2,000+500+3×1,000‑5,500
く予定配賦率法)
機械加工部門への配賦額 ‑ 5×500‑2,500
組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 5×500‑2,500
く複数基準配賦法〉
500
機械加工部門‑の配賦額 ‑ 2,500× ̲A̲+3,000×「
5)同書,250ページ。
6)Cf.Hartley,op.cit.,p.291.
500
1,000 1,000‑2,750
複数基準配賦法 と自家消費サー ビス
組 立 部 門へ の配賦額 ‑ 2,500× ▲500̲̲A+3,000× 500
1,000 1,000‑ 2,750 391
複数基準配賦法では,修繕サー ビスの消費 は同 じあ るに もかかわ らず機械加 工部門 と組立部 門へ の配賦額 は増加 す る。 この不合理 な結果 を避 け るために
は,配賦対象であ る固定費額 と して予算額を使用すべ きである。
く複数基準配賦法 (固定費 には予算額 を使用))
機械加工部門‑ の配賦額 ‑ 2,000× .一500入̲+3,000× 500 1,000 1,000
500 500
組 立 部 門‑ の配賦額 ‑ 2,000× + 3,000×‑
1,000 1,000
‑ 2,500
‑ 2,500 なお予定配賦率法 と固定費 に予算額 を使用 した複数基準配賦法 における修繕 部 門費 の実際発生額5,500円 と配賦額5,000円 との差額500円は固定費 に発生 し た予算差異で あ って,修繕部 に責任を問 うべ き金額で はない。
このよ うに,複数基準配賦法で は,固定費配賦額 として予算額 を使用す るこ とによ って, よ うや く予定配賦率法 と同 じ配賦額 と予算差異がえ られ ることに なる。
以上 を要約すれば,複数基準配賦法 を使用す る場合 には,次の原則 に したが うことが有効 であるとい うことがで きる。
① 補助部門費を固定費 と変動費 に分 けて,固定費 は最大サー ビス要求量,変 動量 は実際サー ビス消費量を基準 に配賦す る7)0
② 変動費の配賦 には予定 あるいは正常配賦率を使用す る。
③ 固定費の配賦額 には予算額 を使用す る。
④ (標準原価計算を使 う場合)変動費の配賦基準 と して は標準配賦基準量 を 使用す る。
7)岡本清教授は,固定費の配賦基準 について,補助部門の能力が消費部門のフル操業 時のサービス消費能力に合わせて設定 されているときにはサービス消費能力を基準 に,また長期平均消費量に合わせて設定 されているときには長期平均操業度を基準 に配賦すべきであると指摘 している。岡本,前掲書,243ページ参照。
392 商 学 討 究 第42巻 第2・3号
以上の原則に したが った場合,本例の2月か ら5月までの変化が同時に発生 したとすれば,修繕部門の記入は次のようになる。
修繕部門 (複数基準配賦法) 変動費実際発生額 2,600
固定費実際発生額 2,500
変動費配賦額 2,370a)
固定費配賦額 2,000
能率差異 30b)
変動費予算差異 200C ) 固定費予算差異 500d)
なおa)は標準原価計算を使用す る場合の配賦額である。 もし実際原価計算 の枠内にとどまるな らば, この金額 は2,400円にな ってb)は分析 されない。
またd)は経営政策を反映 した修繕部に責任を問えない予算差異である。各勘 定か ら部門勘定‑の固定費振替額を実際発生額ではな く予算額によることとす れば,d)の固定費予算差異 は部門別勘定には表示 されず,補助部門勘定には b)能率差異C)変動費予算差異 という,いずれ も第一次的には修繕部門が責 任を負 う原価差異のみが表示 されることになる。 この方法のほうが合理的であ るが,本稿では簡略化のために,修繕部門勘定の借方 には一貫 して実際発生額 を振替える方法を とっている。
さて,複数基準配賦法 と比較す るために,以上q)2月か ら5月までの変化が すべて起 こった とした ときの修繕部門勘定の記入を,単一基準予定配賦率法
(実際には標準配賦法)によって示せば,次のようになる。
修繕部門 (単一基準予定配賦率法) 変動費実際発生額 2,600
固定費実際配賦額 2,500
修繕部 門費配賦額 能率差異
変動費予算差異 固定費予算差異 操業度差異
3,950 50 200 500 400d)
複数基準配賦法の結果 と比較す ると,配賦額が異なることのほかに,ふたっ の相違点がある。 その第 1は,能率差異の金額が異なることであるが, この点 は上述 したよ うに,重要ではない し,また同一金額を分析す る方法 もある。
いまひとつの相違点 は,操業度差異を表示 していることである。すなわち,
複数基準配賦法 と自家消費サー ビス 393 複数基準配賦法 と単一基準予定配賦率法 とを対比 していえば,一方 は,固定費
はサー ビス消費部門の利用能力を前提に発生 しているもの とみて能力基準で配 賦 して しまうのに対 し,他方 は現実に修繕部門に不動能力が生 じたことを重視 して稀助部門の操業度差異 として表示 しているのである。いうまで もな く,操 業度差異 として表示す る方法によれば,たとえばそのような不働能力が常 に存 在す ることが明 らかになった場合には,修繕部門を縮小す るなどの意思決定 に 利用で きる。ただ し操業度差異を財務数値で表示す ることにどれだけの意味が あるか とい う問題 は生 じる。複数基準配賦法を使用 した場合で も,修繕部門に 不動能力があることは,固定費の配賦基準量 (合計1,000時間) と変動費の配 賦基準量 (800時間あ るいは790時間) との差 によって表示 されているので, 操業度差異 としては,両者の差を知 るだけで充分だともいえるか らである。
ちなみに,本稿ではひ と月のデータだけを比較 したが,単一基準予定配賦率 法の場合,年間の平均配賦率を予定 し,操業度差異がプラスになる月 とマイナ スになる月を通算すれば年間の貸借差額が相殺 されるように設定す ることも可 能である。そのような方法を採用すれば,操業度差異は年間ではほとん ど発生 しない と考 え られ る。ただ しそのよ うな方法の場合,ある部門の操業不足に よって生 じた補助部門費配賦不足を他の部門に転嫁す る結果 になる。
ともあれ複数基準配賦法の利点は,以下 に述べ るように,その配賦額が補助 部門費のコス ト・ビヘイ ビアーを反映 していることか ら生 じると考えることが できる。
その第 1は,補助部門サービスを自製すべ きか外注すべ きかなどの意思決定 にデータを提供す ることである8)0
たとえば,外部の修繕業者が修繕時間1時間あた り4円で,修繕サー ビスの 提供を申 し入れたとしよう。 単一基準配賦法によれば,自製による原価 は 1時 間あた り5円となるか ら外部の業者 に委託 したほうが有利 と判断され るが,複 数基準配賦法によれば,一時間あた りの変動費 3円と外注による単価 4円との
8)Cf.Horngren,op.cit.,p.420.
394 商 学 討 究 第42巻 第2・3号
比較 によって,固定費額が避 けられないものであるか ぎり自製 したほうが有利 であるとい う結論がえ られる。
さらに複数基準配賦法の もうひとつの利点 としては,それが,同 じく補助部 門費を固定費 と変動費に分解す る変動予算 と敵蔭をきたさないデータを提供す る点があげ られ る。
上述 した2月か ら5月までの変化がすべて起 こったときの原価差異分析を示 す次の図 1を参照 されたい。
図1 複数基準配賦法 と単一基準予定配賦率法による原価差異分析の比較
複数基準 単一基準
000060変動費II32
固 定 費 2,000 2,500
配賦法 予定配賦率法
/ ↑ 変 動 費 番 差 異 変 動鼻 算 差 異
『 ‑ i‑ i:I
3円/時間 oo発去; 針賦 異額 賦SiB̲頂/異ge
一、‑」ー3〜、〜ヽヽ、㌔円/時間、、㌔㌔.㌔一9000 1,
、 ℡ン■i
、ー㌔ヽ 操 業 審 差 異一■ヽ
修繕部門に変動予算が編成 されていることを想定す ると,複数基準配賦法を 採用 しているときにだけ,修繕部費の配賦額 と予算許容額 はともに4,370円で一 致 し,これ と修繕部費の実際発生額5,100円との差730円が変動費予算差異200円 と固定費予算差異500円,そ して能率差異30円に分析 された と解釈す ることが できる。 これは,変動予算 と複数基準配賦法がいずれ も補助部門の原価構造を 反映 していることの結果 とみることがで きる。
これに対 して単一基準予定配賦率法による場合には,以上の差異のはかに,
複数基準配賦法 と自家消費サー ビス 395 修繕部門の責任 とはみな しえない400円の操業度差異が分析 され,変動予算 と
の食い違いが生 じるのである。
したが って,変動予算で補助部門の業績を評価す るか ぎり, これ と配賦計算 とが整合す る複数基準配賦法の採用が望ま しいと考え られる。
3 自家消章サー ビス原価
前節では,製造部門 として機械加工部門 と組立部門,そ して補助部門 として 修繕部門 という合計 3つの部門を仮設 しなが ら,修繕部門は修繕サー ビスを利 用 しないと仮定 していた。
この仮定 は現実的ではない。
修繕部門で使用す る機械が故障 したときにも,修繕工が修理をお こなうであ ろうし,それには他の部門‑のサー ビスと同様 に変動費が発生す る。 また修繕 部門にたい して も修繕活動が行われ るか ぎり,修繕部門の能力を決定す るさ い,修繕部門 自体への修繕サー ビスも,最大修繕時間に加えていると考えるの が現実的である。
各補助部門が 自部門にたい してお こな うサー ビスを自家消費サー ビスと呼ぶ が, これはもちろん修繕部門だけの問題ではない。人事部門は人事部門に所属 す る職員にも人事サー ビスを提供す るであろうし,動力部門は他の部門にだけ でな く,動力部門で使用す る機械装置にも動力を供給す る9)0
この自家消費サー ビスを考慮 した場合,本稿第2節で検討 した配賦方法 はう ま く機能す るか否かが本節の検討課題である。
第2節で検討 した計算例に,さ らに修繕部門自体の修繕サー ビス利用能力が
9)本稿のテーマ とは異なるが,自家消費サービスについて触れた文献 としては以下を 参照 されたい。Cf.RobertS.Kaplan,"VariableandSelfe‑ServiceCosts inReciprocalAllocationModels,''TheAccountingReuLew,Oct.1973, ps.738and745‑48;門田安弘 「数学的モデルによる部門別計算」 (神戸大学会計 学研究室編 『原価計算ハ ッ ドック』税務経理協会,1977年所収),248‑49ペー ジ ; 片岡洋一 「直接原価計算の もとでの補助部門費配布 について」 『原価計算』1989 年3月,24‑26ペー ジ。
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200時間であるとい う仮定を付 け加え る。すなわち,固定費の配賦基準である 最大修繕時間は次のようになる。
配賦基準 機械加工部門 組立部門 修繕部門 固定費 最大修繕時間 500 500 200
また1月の実際修繕時間 も同様 に,第2節で検討 した仮設例 に加えて,修繕 部門にたい して200時間の修繕サー ビスを行 った もの とす る。
配賦基準 機械加工部門 組立部門 修繕部門 変動費 実際修繕時間 500 500 200
以上のよ うに修繕部門自体 も修繕サー ビスを消費す ることを考慮す ると,倭 繕部門の変動予算 は次のようになる。
固定費 (月次合計) 変動費 修繕部門変動予算 2,400円 3円/修繕時間
さて,複数基準配賦法の適用にあたって,ふたっの考え方が生 じる。ひとつ は修繕部門にも修繕部門費を配賦す る方法であり, これを便宜上 <複数基準配 賦法‑ 1>と呼ぶ。いまひ とつ は修繕部門には修繕部門費を配賦 しない ‑ すなわち自家消費サー ビスを無視 して他の部門にだけ補助部門費を配賦す る方 法である。 これを<複数基準配賦法‑2>と呼ぶ ことにする。
以上のふたっの方法 と単一基準予定配賦率法 (配賦率 としては (2,400+3
×1,200)エ1,000‑6円/修繕時間を使用),それぞれの方法で 1月の計算例 を解 くと,結果 は次の とお りである。
修繕部門費実際発生額 ‑ 2,400+3×1,200‑6,000
<複数基準配賦法‑ 1>
機械加工部門‑の配賦額 ‑ 2,400×諾 +3,600×諾 ‑2,500
組 立 部 門‑の配賦額 ‑ 2,400×了意 +3,600× 修 繕 部 門への配賦額 ‑ 2,400×了芸 +3,600×
500 1,200 200 1,200
‑2,500
‑ 1,000
複数基準配魔法 と自家消費サー ビス
<複数基準配賦法‑2>
500 500 機械加工部門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,600×
1,000 1,000
500 500
組 立 部 門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,600×
1,000 1,000 修 繕 部 門への配賦額‑ 0
<予定配賦率法 >
機械加工部門への配賦額 ‑ 6× 500‑ 3,000 組 立 部 門への配賦額 ‑ 6× 500‑ 3,000 修 繕 部 門への配賦額 ‑
0
2月,組立部門にたいす る修繕時間が300時間にな ったとす る。
修繕部門費実際発生額 ‑ 2,400+ 3× 1,000‑ 5,400
<複数基準配賦法‑ 1>
500 500
機械加工部門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,000×
1,200 1,000 500 300 組 立 部 門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,000×
1,200 1,000
200 200
修 繕 部 門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,000×
1,200 1,000
‑ 3,000
‑ 3,000
‑ 2,500
‑ 1,900
‑ 1,000
397
<複数基準配賦法‑2>
500 500
機械加工部門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,000× ‑ 3,075 1,000 800
500 300
組 立 部 門への配賦額 ‑ 2,400× + 3,000× ‑ 2,325 1,000 800
修 繕 部 門への配賦額‑ 0
<予定配賦率法 >
機械加工部門‑の配賦額 ‑ 6× 500‑ 3,000 組 立 部 門への配賦額 ‑ 6× 300‑ 1,800 修 繕 部 門への配賦額 ‑ 0
修繕時間が同 じであるに もかかわ らず, <複数基準配厳法‑2>では機械加
工部門への配賦額が増加 している。すなわち補助部門費配賦額が他の部門の活 動 によって影響を受 けない という複数基準配賦法の利点が失われているのであ
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る。そこで第 2節 と同様,変動費配賦率 として予定配賦率(3.6円/修繕時間)を 使用すれば,機械加工部門への配賦額 は1,200+1,800で3,000円とな って,1月 と同額 になる。なおその場合の組立部門への配賦額 は1,200+1,080で, 2,280 円である。
さて,第 1節 と同様に以下 5月まで計算を紹介す るだけの紙面 はないので, 次に2月か ら5月までの変化がすべて起 こった ときの修繕部門の記入香,3つ の方法で示す。
修繕部門 (複数基準配賦法 ‑1) 変動費発生額 3,200
固定費発生額 2,900 修繕部門へ の変動費配賦額 600 修繕部門へ の固定費配賦額 400
機械加工部門への変動費配賦額 1,470 機械加工部門への固定費配賦額 1,000 組立部 門への変動費配賦額 900 組立部 門‑ の固定費配賦額 1,000 修繕部 門への変動費配賦額 600 修繕部 門‑の固定 費配賦額 400
能率差異 30
変動費予算差異 200
固定費予算差異 500
この計算では,借方合計が7,100円,貸方合計が6,100円で賃借が一致 して いない。その理由は,修繕部門の勘定であるにもかかわ らず,借方に修繕部門 への配賦額が記入 されているか らであるが, この点 については本節の最後で検 討す る。
なお この状況で変動予算許容額 を計算す ると,2,400+3×990‑5,370と なって, <複数基準配賦法‑1>の配賦額合計 と一致 していることに注 目して おきたい。
修繕部門 (複数基準配賦法‑2)
変動費発生額 固定費発生額
3,200 2,900
機械加工部門への変動費配賦額 1,764 機械加工部門への固定費配賦額 1,200 組立部 門へ の変動費配賦額 1,080 組立部 門へ の固定配賦額 1,200 能率差異
変動費予算差異 固定費予算差異
組立部 門 にた いす る修繕 時間
不足 による変動費差異 120a)
複数基準配賦法 と自家消費サー ビス
修繕部門 (単一基準予定配賦率法) 変動費発生額
固定費発生額
3,200 2,900
機械加工部 門への配賦額 2,940 組立部門への配賦額 1,800
能率差異 60
変動費予算差異 200 固定費予算差異 500 組立部門 にたいす る修繕時間
不足 による変動費差異 1208)
操業度差異 480
<予定配賦率法 >に もとづ く原価差異分析は図2のようになる。 図2 単一基準予定配賦法による原価差異分析
(自家消費サー ビスがある場合)
3,600 3,200
変 動 費
0 固 定 費 2,400
2,900
399
‑ 要一く‑
‑ \ \
3.6円/時間 ooo肇 捕ヽ\\舵書 謡
‑、上 空.ヽ、ヽ ヽ、、4円/時間ヽ ヽ〜 ヽヽTヽ00 18 , .ノ
ヽ ■■■
〜ヽヽ、ヽヽ 操 熟 ー覧差 異 一小
国 定 等 予 算 差 異
<複数基準配賦法‑2>に もとづ く原価差異分析 は,変動費の配賦 は<予定 配賦法 >と同 じであ り,固定費の配賦が機械加工部門 と組立部門それぞれ1,200 円になる点が異なるだけなので省略するが,両方法 とも,上記の勘定 にa)と
して示 したように,貸方 に120円の差異が生 じている。 これについては,いま
400 商 学 討 究 第42巻 第2・3号 ひとつの例題を解いてか ら検討す る。
さて,当然の ことなが ら, 自家消費サー ビスにも変動があることが考え られ る。
そ こで最後 に,修繕部門 自体の修繕サー ビス利用が,予定 されていた200時 間ではな く, 100時間になった場合の計算を示 してお く。
ただ し各月 につ いて配賦計算を解説す るだけの紙面 はないので,第 1節で 扱 った変動事象,すなわち(》組立部門への修繕サー ビスが300時間にな った,
②変動費発生額が変動予算許容額を200円超過 した,③機械加工部門での修繕 作業に10時間の不能率が含 まれていた,④固定費発生額 は予算を500円超過 し た ‑ 以上がすべて生 じた場合の修繕部門の記録を掲記す るにとどめる。
なお固定費の配賦対象 としては予算額を使い,また変動費の配賦 にさい して は標準配賦をお こな うが,配賦率 として修繕 1時間あたり,<複数基準配賦法
‑ 1>では3円, <複数基準配賦法‑ 2>では3.6円,そ して <単一基準配賦 法 >では固定費配賦率を含む6円を使用する。
修繕部門 (複数基準配賦法 ‑1) 変動 費発生 額 2,900
固定費発生 額 2,900 修繕 部 門‑ の変動費配賦額 300 修繕 部 門‑ の固定費配賦額 400
機械加工部門への変動費配賦額 1,470 機械加工部門への固定費配賦額 1,000 組立 部 門へ の変動 費配賦額 900 組 立部 門へ の固定費 配賦額 1,000 修繕 部 門‑ の変動 費 配賦額 300 修繕 部 門への固定 費配賦額 400 能 率差異
変動 費予算差 異 固定 費予 算差 異 修繕部門 (複数基準配賦法‑2)
変動 費発生額 2,900 固定 費発生額 2,900 組立部 門 にたいす る
修 繕 時間不 足 によ る
変動 費差異 1804)
機械加工部門への変動費配賦額 1,764 機械加工部門への固定費配賦額 1,200 組 立部 門‑ の変動 費配賦 額 1,080 組 立部 門‑ の固定 費配賦額 1,200
能率 差異 36
変動 費予算差 異 200 固定 費予算差 異 500