動的付着量の測定法について.く第1報)
谷 岡 守 藤 田 志・ 郎
On the method of measuring the kinetic Weight of the liquid sample adhered to the wire or to the film
Mamoru Tanioka and Shiro Fujita
Abstract
丑is well known that the weight of the solid二body or of七he liquid in vessel has been measured by七he baiar nee meehod up to一・now, howe 魔?秩@the kinetie weight as the weight o£ the liquid sample adhered to 旗6w玉re br七〇七he film in mo七ion has almost not been able七〇be measured by the balance.
Recently the motion o£ a balance was studied analytieally by the authors, and the rn ethod of measuringa七he such kinetic weight was found out from七he resul七s of七he above s七udy. In this paper,
tke prineiple o£ 狽?奄刀@method, the praetieal teehni 曹浮?@of the rneasurement and a few examples o£ the measured values are r.eported..
1. 1序 論
物質の質量の測定が現代科学特に定量化学の基礎を成して いるのは周知のごとくで毒るがプ..ここで質量の測定と言って いるのぽ.「主に固体片、容器に封入された液体などのよう.な 質量変化のない試料についてのもので南ってこの種の測定 には,天秤が最も普潭に利用されて鰹る。しかしながら,一 方質量変化のある試料に対するいわゆる動的な質量の測定に 関しては,未だ適当な測定法が見出されていない現状である が,科学技術の進歩発展に伴6て∴その必要性が生じて来て
いる。
著者らの内の一人は,.この数年来,ガラス融液のような,
高粘性で,粘度の温度変化の大きい試料に対する粘度測定装 置として,tt球引き上げ式天秤型粘度計を使用し,「アルカリ珪 酸塩融液の粘度の測定を行なっていたが,液体試料中で,金 属線で.吊した金属球を運動させ粘性力を測定する際金属線 に付着した液体試料が粘度測定の精度を左右する.ものである ことを確認したので,新たに,天秤並びに球などを含む系全 体についての,系全体に働く諸偶力と系の運動との関係を解 析的且つ詳細に検討し,その検討の諸結果並びに粘度測定に おける注意すべき諸点などを報告した1)。この検討の際,.金
属線へ付着して線と一・緒に引き上げられる液体の重量の測定 法をたまたま見出したのであるが,.その際には,まだこの新 方法を,粘度の測定精度を上げるための一つの操作または手 続のようなものとして取り扱って来たに過ぎtsかった貸 同報においてば粘度測定からこれを切り離して,精密天 秤を使用する場合の,動的な重量または質量の測定法,すな わち独立した物理量の測定法としてこの方法を取り扱い,よ り一般的な形でその測定原理を明らかにするとともに,種々 の検討の諸結果,動的付着量の具体的な測定法並びに油定操 作,さちにこの方法によって得られた測定値の実例などを述
べる.アとにする6
2. 測定 装、置
図一1に著者らが動的付着量の測定.に使用している装置の 概略を示した。体装置は,大別して,力並びに速度の測定器
としての特殊精密天秤部分(図T1,・Aんのと試料部分
(図一1, K〜0)とからなっているが,この外,力の測定 には,1血gから100gまでの分銅が,憲た平均速度の時間 的変化の測定には二個の.Stop wa七chが使用されている。
さて,図T1に示した天秤は,構造, 各部品の材質並びに 形状などの点で,従来質量測定に使用していたものとは異な
F, C2
rLl 一「:一} Z2
−m.一L一一
一一 o
一A
一,一一一 a D2
/
矛︾ゴ G 一NN
l馨菱工
3/i..,e
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一一.i一.一=一一bJi
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一一一一飼
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函
NO
t H
=一一一一一一一一一
Fig. 1 Schematic diagram of apparatus for me−
asuring the kinetic weight of the liquid sample adhered to the wire or to the film.
.A ; Seale division,
E; Spring,
1; Clapap,
K; Wire,
M; Beaker,
O; Liquid sample,
Ci, C2 ; Arm of balanee,
Gb G2; Weight,
B; Needle poiter,
H; Pan,
J; Milled head,
L ; Film supporter,
N; Film,
P; Beam stopper,
Db D2; Gravity bob,
Fe, Fi, F2; Knife edge,
Zi, Z2; Coordinate of gravity bob.
っているので,その特徴をはっきりさせるために,この二種 の天秤についての比較を行なう。
(1) まず,.原理的観点から見れば,この二種の天秤を使用 する場合の基礎となる天秤(三一1,:B,Cl, C2, Dl, D2,
=Fo)の運動状態が,それぞれについて異なり,従来の質量測 r定では,力の釣合下での静止状態,または減衰振動状態が測 定に利用されているが,一方動的付着量の測定では,等速度
:状態またはこれに比較的近い状態が測定に用いられている。
く測定原理の項参照)このため,天秤の受ける衝撃の程度は
当然後者の方がはるかに大きく,この衝撃に耐えうるために も,天秤の構造,部品の材質形状などの点で優れたものが要 求されている。
(2) どのような天秤においても,天秤(図一1,B, c1,
C2, D1, D2, Fo)の重心の位置を変化させるのに重心玉
(Gravity bob,図一1, D1,1)2)が用いられている。従来の 質量測定用の天秤では,重心玉の位置を一度設定すると天秤 の感度が決まってしまうので,一回重心玉の調節を行なった 後は,殆どこれに触れないのが普通である。このため重心玉 の位置を定量化する必要がなかった。しかしながら,動的付 着量の測定では,後で詳しく述べるように,重心玉の位置Zl,
Z2を変化させ,等速度状態を実現し,そのときの天秤の重 心の位置の値を測定に用いるので,重心玉の位置を定量化し,
天秤の重心の位置を精度よく調節することが,測定における 重要な手続の一つとなっている。
(3)図一1,Aに示した目盛板(Scale division)の持つ意 味は,この二種の天秤については全く異なり,従来の質量測 定用天秤では,目盛板は質量差の測定に使用されるが,一方 動的付着量測定用天秤では,目盛板は,平均速度の時間的変 化測定の一操作としての距離の測定に用いられている。
また,後者においては,目盛板の精度は速度測定精度を決 定する主要な因子であるので,目盛板として精度のよいもの を使用しなくてはならない。
ここに示した諸点と関連して注意すべきことは,従来の質 量測定では時聞を測定する必要は全くなかったが,動的付着 量の測定では,連続した時間の間隔を測定する必要があり,
このために二個のStop watchを使用していることである。
以上が,この二種の天秤の主要な差異であるが,その他の 点については,測定操作などの項で触れることにする。
3. 測 定 原 理
3.1天秤系の運動方程式とその解
動的付着量の測定原理を明らかにする前に,この測定法の 基礎をなす天秤系の運動についての検討の諸結果!)を図一2,
表一1,表一2に示す。
表一2, (1)式(天秤の運動方程式)は次の手続によっ て導かれたものである。まず,この天秤(図一1,B, C1,
C2, D1, D2, Fo)を,刃先(図一1,:Fo)の尖端を固定軸と
する剛体とみなし,これに図一2,表一1に示した意力が作 用するとして運動方程式を立て,さらに回転角θが小さい 場合の近似
一 276 一
谷岡 守・藤田志郎
x (Scale)
F−7
動的付着量の測定法について(第1報)
e嚇
匹d 馬 o.
^ 、 、 Flo
¢耐 @@〆D 「.
、
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、轣B\、 、 .! 馬 、 一 _〆 G @ ! r
@ ^!Qへ ︑︑lh!Qo
日。・
M2g + a.( sine 一sineo)fdi
+Ft+ Ft. Fe S Wg + .Mig
Mog
Fig. 2 Schematic diagram of. the. couples acting on a balance.
Table 1 0 (radian)
x (em)
Fo
F io, F20 Fie,, F2e,
Qo? Qer
a (em)
h (em)
Io (g・em2)
M, (g)
Mi(g)
M2 (g)
Explanation of Fig. 2
; Rotational angle of balanee,
; Coordihate of point F2, (xi= a・e),
; Fixed knife edge,
; Position of kni£e edge IF i, IF2 at e=::O,
; Position o£ kni£e edge Fi, F2 at 0 =6t,
; Position o£ the eenter o£ gravity of balance, a七 θ=O and θ=6 ,
; Length of an arm of balanee,
; Distanee between knife edge Fo and the eenter o£ gravity of balance,
; ]M:oエnent of inertia of balance, (cf.
Fig. 1, B, Ci, C2, Di, D2, Fo),
;@Mass of balanee, (ef・ Fig, 1, B,
C,, C,, D,, D,, F,),
;・ Mass QS .the part eonsisting o£ pan IE[
and knife edge Fi, (e£. Fig.1) ,
; Mass o£ the part eonsisting o£ weight G2, knif,e edge F2, wire K, film N
W (g)
g (em/see2)
ao (g/em)
Fn
Fy
Fp
K晃cdδV
(dyne) .; Foree depepdent
sample,
(dyne) ; Foree・ dependent 6n
o£ / sample,
(dyne) ; Foree dependent
sample,
F・一
Fv=r.e.d.eos 6,
;;;
.
i nd film supporter L, (e£・ Fig. 1),
Mass o£ weight Gi, (ef. Fig. 1・),
A.ccelera七ion of graマi七y,
Mass o{ the liquid sample adhered to
£ilm (or to wire) per a uhit length upward;
on viseosity of
surfaee tension
on b.uoyaney of
g−a(sins−sineo)OA−oKill−ddlllfg, (1>
(2>
F, := 一一 (v+e・d・.1.o)Pg+a(sine
一一sin. 一〇)e・d・pg, ・ (3>
(P・ise・cm/sec・9);Cell c・nstan七・f visc・us f・rce,
(cm) ; Length of £ilm .in liquid sample up−F ward,
(em)
(em)
(radian)
(Cm3)
xo, Oo, lee
・︐・︐︐︐.︐O︐
Width o£ film,
Thiekness o£ film,
Angle of eontaet,
Volume o£ film supporter in liquidi sample,
The values at t== O (see),(Xoi=ia・eo).
Table 2 Results of analytical consideration.
Equation of motion o£ balanee ;
霧+・k・澄+S(嬰・h+。a)一・(W−Wl.
+xoa) ==O ,〈1>一
Iniもial cond玉もion;
x=Xo, dx/dt == O, a七t=0 ,(2>
Solutions ;
器一三≡浮。){一・xp面魂(i+∀・一司
ナ・xp[一塁(!二V・一U)・}.・・u<斗β》
VMr,h/a2一.ViU=一=iir=iu−i
xsin(S−o・tVdi一 /2K), at U>1 Definition of non−dimensional parameter U ;
tdr 一 s(W ;一一 we) ・t・ exp(一一一 lllti/t ), aL u == i , (4)
堅_V9(W−W・.)gxp(一Sη七/2K:)、
d七
u一・s(瀞詳の一9(M・h/a2+・)
×(K/ e)2
Definitions of S, W6, Wo and o ;1 S:i1g ・ a2/lo
Wl≡M:2一:M1十γ・c・d・cosδノ9 一(v+e d leo)P
Wo…≡…W6十XoMoh/a2
σ≡σo十。。d・ρ一(∂K−1ノ∂1,)・η・dx/d七㌔
Approxima七e solu七ion, its adapもation condition and maximum error;
Adaptation eondition,
lUl〈1) Tmin〈t〈Tmax
T .i.Eiln( 100/£i ) 2K/S e 1/ ( 1 十 Vrf一 U)
T maxEiEV21ii7Miti6600 4K/Sv 1/ 1 U l
Approximate equation of eq. (3) in this table,
[ltF=5 (WLWo)(i+u/2){i一(a+Mo
一..i × h/a2) rr (K/ T,)・t}
]Y[aximum error, f (%),
£=f,十£,十100/8・U
INon・dimensional para皿e七ers corresponding td. t and dx/dt,
X=11 TIKr1.t,
Y1 eK i(W 一一 Wo) i dx/dt
,(5)
,(6)
, (7)
, (8)
,(9)
, (le)
, (11)
, a2)
, (13)
, (14).
, (15)
eのαq
どの座標と考えてもよく,・以後の取り扱いでは,膜支持錘最 下端の座標と考えることにする。ただし,xの値としては,
指針が目盛板(図一1,A)の中央目盛を指しているときの 膜支持回忌下端の位置を原点とし,上向に正の値を取ったも のを用いる。
また表一2,(1)に示した微分方程式は形式的には線形で あるが,表一2,(1),(11)式を見れば判るように,本来 の形はx・dx/d七項を含む非線形微分方程式である。ここで は,この方程式の厳密解を求めることよりも,間接測定量 η,aの測定で使用する理論式の導出が主眼であったため,』
x・dx/d七のdx/d七を定数のごとく取り扱いσ中に包括させ,
後でaを実験的に考察すると言う手続を取っている。
さてrt三一2,(1)式を,表一2,(2)に示した初期条 件のもとで解くと,表一2,(6)式で定義したUの値が,1 に等しいか,ユより大きいか,小さいかによって,三種の解,
表一2,(3),(4),(5)式が得られる。ただし,Uはこの微 分方程式を解く際に出て来たもので,面一2(1)式における xの係数をdx/d七の係数の自乗で割ったものである。また上 述の三種の解を,このままの形で, 統 :的に検討することは 殆ど出来ないので,天秤系の運動を総括するために,新たに,
表一2,(16),(17)式で定義され,時間七並びに速度dx/d七 に対応する無次元量X,Yを導入し,上述の三種の解をこれ ら鰍元早により.鱗恥し哨ら1 融の噌『ついて・
具体的にXζYとの関係を求め,これらの諸結果を図一βに
示した。
2 DO
1.5
Y 1.O
O.5
/IU i一一 O;1 o 7..ut
,u。耀.細
U==O.01一一一.
U Q L:k−N[こU=Q・05 U=t
u=一〇,oo u= o.o i
sinei=ie,.cose1=i l, et=ix/a at e<<1.. (1)
を行なび,これを刃先(図一1,F2).の尖端の座標に関する
脚方醐埴し峰の力俵τρ・(1≧式鱗多・この・
は,1ェ銅「G2(図一1. G2)または膜支持錘(図二1, L)な
Fig.
U= 2
rrTO 20 ,, 50 40 50 .60 ×
3 Su;vey of motion pf the system.
図一3において,な>1に相当ずる系の運動は,通常の質
量測定に使用されており] : 方. uくi,特に[ul<ゴに相 当する運動は,粘度の測定並びに動的付着量の測定に用いら れる。本報においては,特に後者ぷ問題であるので,IUK1 の場合の,、表一12,(3)式の近似式,その適用条件式,適用
一 278 一
谷岡 守・藤田志郎 動的付着量の測定法について(第1報)
時の最大誤差などを求め,表一2,(11),(12),(13),(14),
〈15)に示した。また,表一2,(14)式の,時間に関する適 用範囲の上限τ・ma、並びに下限τm圭・(表一2,(12)・ (!3)
式参照)に対応したXの値,Xma。, Xmi、を, 図一3に○印 並びに,●印で示した。
3.2 測定原理
前項で天秤系の運動に関する解析的検討の諸結果を述べた が,この中で,動的付着量の測定の基礎となるのは,表一2,
〈14)式である。これ は,初期過渡状態(図一3,0〜Xm正、
参照)を経た後の天秤系の運動の中で,適用条件lui《1,
すなわち,(σ+M:o・h/a2)・1/η2の値がS/4K2の値に比較し て非常に小さい場合に相当するものである。また,この式に よれば,(σ+Mo・h/a2)一〇と言う特殊な条件の下では, dx/d七 一Cons七,ドすなわち等速度運動が得られることが明らかにな る。動的付着量の測定は,このような性質と,測定装置の項 で述べた天秤の重心の位置hの随意可変性とに基づてい行
』なわれるもので,図心1,D1, D2に示した重心玉の位置Zl,
Z2を変化させることにより,天秤の重心の位置hを変え,
等速度状態を実現させ,このときのh値を後述の方法で読 み取り,次式によって,動的付着量σoを含む因子aを決定
する。
o=一Mo h/a2 , (2)
このσの定義式を表一2,(10)に示してあるが,これが 本報の中心問題であるのを含んでいるため,もう一度,(3)
式に示しておく。
σ三σQ十。・d・ρ一∂K−1/∂1e。η。dx/d七 , (3)
o(g/cm) は,膜が単位長さ上昇したときの広量の変化を 質量単位で表わしたもので,第一項σ0(g/C皿)は膜へ付着
した液体量,第二項σρ=c・d・ρ(g/cm)は膜上昇の際の浮力 変化,第三項σn=∂K−1/∂1。・η・dx/d七(g/c皿)は膜上昇の際 の粘性力変化をそれぞれ表わしているが,・ao, ap,ση,の内,
砺のみがdx/d七を陽に含んでいる点に着目し,次に示す手 続によって,σo+σpとanとを分離する。すなわち,種々の dx/d七値におけるσ値を後述するσ測定手続によって求め,
dx/d七一σ関係を図示し, dx/dt一σ曲線上の各点で,それぞれ の点を通る接線を引き,種々のdx/d七二に対応した接線のσ 里離辺から,それぞれの速度qx/d弓丈に対応したOo+apを 求めればよい。
さらに,Oe,σpの内l apは,液体の密度ρを測定すれば 決まる量であるので,.このσ・ρ値をσ〇+σρ値より差し引け ば,各dx/d七値に対応したσo値を求めることが出来る。
4 種々め予備実験
前項においてその概要を述べた測定原理に従って,動的付 着量の測定を行なうには,さらに,、次の諸点についての検討 をしておく必要がある。
4 1. 天秤の諸定数.
表一2に示した天秤の運動に関する解析的検討の諸結果を 見れば,天秤の運動を具体的に検討するためには,a, M。,
.loなどの諸量の値を知っておかねばならないことが判る。
三一3には著者らが使用している天秤についての諸定数を
示した。
Table 3 Characteristics of our apparatus.
Mass o£ balanee; Mo,
Mornent of inertia o£ balanee; lo,
Length of an amn o£ ba}anee; a)
4. 2.
Mo== 73. 95 g
Io=4268 g・em2
(h=o. oooo ern)
a=15. 20 em
天秤の重心に関する検討
天秤の重心の位置を表わす量hについては,測定装置並び に測定原理の項で若干触れたが,これが動的付着量の測定精 度を決定する重要な量であるので,ここでは重心の座標に関 する原理的な考察並びに予備的実験などの諸結果を示してお
く。
(1) 原理的考察 物体の重心の座標は,形式的には,
次の形で示される2)。
ΣmiRi
R・一k ,(4)
昇m・
いま,図一1,B, C], C2, Fo, D1, D2に示した:天秤を 三つの部分Do(図一1, B, C1, C2,:Fo), Dl, D2に分け,
各部の質量並びに重心の座標をそれぞれmoとRe, mlと
(Zl+RI), m2と(Z2−R2)で表わせば,天秤(三一1, B,
C1, C2, Fo, DI, D2の重心の座標hは,
meR6十mi(ZI十Rl)十皿2(z2−R2)
h=
(5)
Mo
で示される。ここで,各部分並びに天秤の重心の座標と呼ん でいるのは,刃先Foの尖端を原点とし, 刃先Foより下方
に正値を取った場合の天秤に固定した座標のことである。
(2) 予備実験 原理的考察の結果,hがZ1, Z2
の一・次函数,すなわち
h== Ao十Ai・Zi十A2・Z2 . (6)
で表わされることが判ったが,この量を動的付着量め測定に 利用するためには,さらに,(6)式の係数Ao, Al, A2を 何らかの方法で決めておかねばならない。もちろん,天秤の 材質の密度並びに具体的な幾何学的諸病数などを使用し,計 算によって(6)式のAo, A1, A2を求めることも出来る が,この手続を個々の天秤について行なうのは若干面倒なζ
とであるので,出来れば,hを実測してAo, Al, A2を決定 する方が,動的付着量の測定に対して都合がよい。とは言っ ても,hは直接物差しなどで測定出来る量ではないので,若 干の工夫を要する。
著者らは,通常の質量測定における天秤の感度φと天秤 の重心の位置を表わす量hとが
h=一a/Mo¢, ¢一一e(radian)/m(g) , (7)
で表わされる関係3)にあることに着目し,図一1,Dt, D2 に示した天秤の重心玉ゐ位置Zl, Z2を変化させ,種々の Z1, Z2値に対応した天秤の感度φを測定し,(7)式によ
ってh値を求めた。
O.6
Q4
O.2
h ,〈cm>
o.o
一〇.2
︾や/
/
一〇.41 /
Q5書%1鷲 σ5翫Oゑ解5
Fig.・4 Relation among Zi (cm), Z2 (cm) and h(cm) in our apparatus.
Q6
@Q4
@σ2
?C(cm)
@QO
│Q2
π、∋6c①
噤A・、マ2G①
Z硬
一〇4
1
ス訴6G①
闇
図一4は著者らが使用している天秤について,実測した Zl 一一 Z2−h関係を図示したものである。ただし,図一2, Q に示した天秤の重心の位置が刃先.:Foより上に来た場合,す なわちh<0の場合については,感度φを実測出来ないた め,ζの領域のZ1−Z2』h関係として, h>0での各直線を
hぐ0の領域まで外挿したものを使溢している。
この図一4に示した結果と(6)式とを用いれば,AOr Al, A2が具体的に決定され,次のように示される。
li・ ig 一i&・!・il cm / ,,,,
4.3 Fγ変化の除去
天秤の運動に関する解析的検:討においては,試料の表面張:
力γに起因する平すなわちFv(表一1,(2)式参照)を 系の運動に無関係に一定値を取る量であると仮定して,表一 2に示した諸結果を得たが,実際に,試料表面膜付近の形状 変化を調べてみると,運動初期に,図一5,A1, A2に示す ようなFγ変化が認められている。このようなFγ変化は天 秤系の運動状態に大きく影響し,特に初期過渡状態を経る時 間を長くする効果を持っているので,もはや,表一易(3).
(14)式などが厳密な意味で成り立たなくなる。
Surface tension
(at stqrting point)
癖
(in natural foMing)一口﹇ Pり
==〉
」 c,
︐
fiE l
(cf, Fig.1)
I t!
(in motion)
A2
(at starting point)
BI B2
(in rxlturu[ fuIIing) (at start ing point)
騒
1,轟朝,g
一Hμ
B3 1
Fig. 5 Surface tension.
Restoring spring
B4
A; Change o£ surfaee tension,
B; The teehnique avoiding the ehange o£ surfaee tension in the initial transitional state.
一 280 一
谷岡 守・藤田志郎 著者らはこのような不都合を除く弛めに一一5,:B1, B2,
B3, B4に示した手順によってFv変化の除去を行なってい
る。
動的付着量の測定法について(第1報)
4.4 粘性力に関する検討
粘性力に依存した力Fηを表一1,(3)式に示したが,
図一6に斜線で示した領域に膜重持錘(図一1,L)の表面 が入ると粘性力が急激に増大し,表一2,(3)式が成り立た
K
k一 i05cm
7777
_∠.∠_
f
2cm N O
一
L一一
σ5cm
金属線の長さを調節する。
5.2 平均速度変化の剥定と測定例
膜または線の引き上げに伴って引き上げられる液体試料の 勤的付着量を測定する際中心となる操作は,平均速度変化 の測定操作であり,この操作によって等速度状態の確認を行 なっている。
Scale ムx・轡x鞄醸轡。
(cf. Figり
Fig. 6 Movable region of the lower part of film supporter in the beaker.
starting point ×.N ,.X..1
Needle pointer 一
Gravity bob
/
Knife edge
Wlre
1,一./,,/
なくなるので,このような領域に膜支持錘表面が入らないよ うに注意すべきである。
また,粘性力は膜の引き上げ速度に依存して,0.08cm/sec 以上で急激に変化するので,膜の引き上げ速度を0.08cm/sec 以下に保つべきである。
5. 測定操作と測定結果の例
5.1 装置の調整
まず,膜(図一1,N)の上端並びに下端を膜支持錘(図 一1,L)でそれぞれ固定し,上部膜支持錘の鉤に,分銅 く図一1,G2)から釣り下げた金属線(図一1, K)を結び 付け,下部膜支持錘を液体試料中に浸漬する。この際膜が,
ビーカー(図一1,M)の中心軸に平行で,且つビーカーの 中心付近に来るようにビーカーの位置を調整する。また,こ のとき,下部支持錘が図一6に示した条件を満足するように
Ft lm supporter
匿=留
ム A﹁ ﹂4
oもヨαoあ
S 〈lllll>ptiM .
ムX6 £
購コ選
[=i凶一→ム†1(n
Ato 一一1:g=一Starting point
Fig. 7 Measurement of mean velocity of the system.
図一7にこの操作の概要を示した。
まず,液体試料中での下部膜支持錘の運動範囲を6〜8等
分し,各区間AXi, Ax2, Ax3,………, Ax6, Ax7, Ax8を通 過する時間∠tt, At2, dt3,………,∠t6, At7, dt8を二個 のStop watchを交互に使用して測定する。
これらの測定値を整理すると,平均速度の時間的変化,す なわち,(Abl/2, AXi/Atl),(dtl+At2/2, Ax2/At2),……,
2 8 4
(・@ぐε︒︶醗♀︵も\×で﹀
TW=2・032g
T 2027g h=ooooocm
!lt..1=t. i 2022g
2017g
,,,=.@..一.t2.O12g.
20. 07g
1
.40 .60. 80
t , (sec)
A
(1) 金属線(図一1,K)が歪むのを防ぐ意味で,支持 錘(図一1,:L)を自然落下で図一7,S七ar七ing pointに示.
した位置へ移動させ,桿押え(図一1,P)で天秤桿(図一 1,C2)を押えた後,分銅(図一1, Gl)を分銅皿(図一1.
H)に乗せる。
(2) 4.3項で述べた方法で表面張力に依存した力Fγの 変化を除去する。
} (3)引き上げ速度をO・・8・ni/・ec肝とする・
などが上げられる。
2 8 4.
(Q@の\∈o︶MO7︵↑ミ×℃︶
20
W=2.534g h=o.OOoocm
2,584g
!rt.=f= 一一1一.一;一2.284g
,tr一=一T.一一・ F=;一;=一L!=.1 2.185g
___Q085g一= =二}
1.934・9一一」一一トー一一
40 60 80
t,(sec)
B
5,3 σの速度変化の測定と測定例
σの測定はいわゆる間接測定で,まず,図一8に示したよ うな等速度状態を実現させ,そのときの重心玉の位置ZI,
Z2を測定し,これと図一4によってh値を求め,このh値 を(2)式に代入してσ・を算出すると言う手続を取る。
一方,(3)式からも判るように,aは引き上げ速度dx/d七・
に依存して変化する量である。この依存性を調べるために,
実測値を検討してみると,図一8に示したように,一つのh.
値に対して一つの等速早漏が対応しており,このh値と(2)
式とを用いれば,或る速度に対するa値が得られる。このよ うな操作並びに手続を,h値を変えて順次行ない,測定結果 を整理すれば,dx/dt一σ関係が得られる。
劃一9は前述のCastor oil重びにWa七er glassについての 実測例を示したものである。
go
Fig. 8
velocity.
Examples of the change of mean
A; Castor oil (23.95 OC, 7.15 poise. O.95 g/em3),
B ; W ater glass (250C; 244 poise, 1. 74 g/emS).
・・ i∠七t+nt2+……+∠七7+∠七8/2, Axs/A七8)が】得られる。
図一8に平均速度変化の実測例を示した。これらはCas七〇r oi1(23.950C,7.15 poise,0。959/cm3)並びにWa腰glass
(25。C,・244 poise,1.74 g/cm3)についての, hを一定と し,
Wを変化さした場合の実測値である。この場合膜の代りに半 径0.02cmの白金線を使用した。
この外,平均速度の測定と関連して,注意すべきこととし
ては,
5.4 aoの速度変化の算出と算出例
dx/d七一σ関係から.dx/d七一qo関係を求める手続牽,32環 で詳しく述べたので,ここでは,上述のCas七〇r oil並びに Water glassについての算出例を図一10に示すにとど誇ぐ。
6. 測 定 精 度
動的付着量の測定精度を左右する主なものとし℃は,等速 度状態を確認する際の誤差,−拉びにh値の測定誤差が上げら
れる。
(1) 等速度状態を確認する際の誤差.・ 動的付着量の 測定においては,今まで述べて来たように,等速壕状聾を実 現し,この状鯨に対応した速度を精度よく測定すξ必要があ る6このような際に生ずる誤差とレて信,.図一8.に示し牟種
々の運動状態,すなわち,加速状態等速摩状態並びに減速 状態などの中から,等連度状態を選び出す際の誤葦と速度の 測定誤差が上げられ,前者は,・4 3、4.4に示した条件が整墓 られている場合にに2:r》3%,tt後者は1%以下である。 .㌃.
一282一
津山高専紀要(第1画面第4弓う
し 5
t.. IO
g
×.5 鷲fo. o
−5b
(dx/dt)・102, (cm/sec)
A
6
4 2
?̲o︶ザ9(
1 ノ
2 4 6 8
(dx /dt)・lof, (cm /sec)
A
lo
5
ε
σ)〇隻二
・一T
b
(dx/dt)・ iO2, (cm/sec)
B
Fig. 9 Relation between (dx/dt) and o.
A; C astor oil, B; Water glass.
(2) h値の測定誤差 この種の誤差は,天秤の刃先 Foの接触条件がよい場合には,10−4cm程度であった。
動的付着量の測定誤差は,主に(1〕,(2)に示した誤差に よって決まり,おおよそ4%程度となる。ここに示した値は,
実測値の再現性を検討した結果とも一致している。
6. 結 論
これまで述べて来た動的付着量,すなわち,液体試料の中 から膜あるいは線を引き上げる際膜などに付着して一緒に 引き上げられる液体の量は,膜の引き上げ速度に依存して変 るので,その測定は殆ど不可能とされていた。
6
4︵∈︒\o︶ 2へ
絢○一.
2 4 6 8 IO
(dx/dt>・ 1 02, 〈cm/sec)
B
Fig. 10 Relation between 〈dx/dt) and ao.
A; Castor oil, B; XVater glass.
序論においても述べたように,著者らの内の一人が,天秤 の運動を利用した天秤型粘度計を用いて珪酸塩融液の粘度の 測定を行なっていたが,測定上種々の問題が生じたため,天 秤の運動を根本的に検討し直し,その際,たまたま上述の動 的付着量の測定原理を見出したわけである。著者らはさらに,
この動的付着量の測定に適した天秤を試作し,これによって 種々の予備実験を行なうとともに測定法を確立したので,本 報では,これらを測定装置,測定原理,測定操作,測定誤差 の各項に分け,2〜6項に示した。
しかしながら,本四で述べた装置並びに操作は未だ不充分 な点が多く,測定精度もあまり良いとは言えない。このよう な問題点を取り除き,精度よく動的付着量を測定するために は,さらに測定装置,測定操作などについての研究を重ねな
廿ればならないと思う。
終りに,本研究と関連して,終始,御懇切な御指導を賜っ た前岡山大学工学部長沢井郁太郎博士並びに岡山大学工学部 の高橋克明教授に深く謝意を表するとともに,多くの御助言 を賜った東京理科大学理学部,梅田魁教授に厚く御礼申し上
げる。
文 献
1) 高橋克明・谷岡守・河本昌男,窯協誌,72,C716(1964)
高橋克明・谷岡守・小林武志,窯協誌,73,c280(1965)
高橋克明・谷岡守,応用物理,35,786(1966)
2) 山内恭彦, 一般力学 ,岩波書店,P.r110(1941)
3)吉田卯三郎・武居文助, 物理学実験 ,三省堂,R 37(1947)
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