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当院における糖尿病運動療法の現状と課題

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Academic year: 2021

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(1)

30

鳥取赤十字医誌 第26巻,30−32,2017

(報  告)

当院における糖尿病運動療法の現状と課題

木原 和也1)  安東 史博2)  岩城 知子3)  大寺 弥1)

鳥取赤十字病院 リハビリテーション科部1)

       内科2)

      看護部3)

Key words:糖尿病運動療法,運動指導,退職年齢

は じ め に

 運動療法は食事療法・薬物療法と並んで糖尿病治療の 3本柱とされている.しかし,日本における糖尿病患者 の運動指導実施率・継続率はおおよそ40〜60%である といわれている

1)

.この運動指導実施率の低下と,継続 出来ていない原因について調査を行い,運動指導におけ る問題点や課題について検討したので報告する.

目     的

 当院における糖尿病患者の運動療法実施状況を調査

し,運動療法実施率低下の原因を分析・検証し,今後の 運動指導方法のあり方について考察することを目的とし た.

方     法

 当院の糖尿病外来受診患者に対して本調査の目的を説 明し,同意の得られた2型糖尿病患者156名に対し,紙 面にてチェックシート方式による運動療法継続状況の調 査を行った(図1).

図1 チェックシートの内容

(2)

31

結     果

 運動指導受診歴の質問に対し,総回答者156名中67 名から運動指導歴が「ある」との回答が得られた.ま た,運動指導受診歴が「ある」と回答された67名のう ち34名から糖尿病診療ガイドライン

2)

に沿った運動療 法が「出来ていない」との回答結果が得られた(図2).

 その34名に対し,「運動療法が行えていない理由(複 数回答可)」について回答者数および平均年齢を調査 した結果,忙しい:8名 56 . 1±13 . 2歳,やる気が起き ない:10名 59.2±12.7歳,体調が悪い:6名 65.3±

15 . 5歳,運動の方法が分からない:4名 72 . 3±6 . 6歳,

その他7名,無回答4名,以上の回答が得られた(図 3,4).

考     察

 運動療法が行えていない理由について「忙しい」,「や る気が起きない」と回答した回答者の平均年齢が65歳 以下であるのに対して,「体調が悪い」,「運動の方法が 分からない」と回答した回答者の平均年齢は65歳以上 であった.この結果より,継続雇用制度が終了する65 歳前後の退職年齢を機に,就労者と定年退職後の高齢者 との違いで運動療法を実施しにくい理由が変わってくる ことが予測される.

 まず,就労者の運動療法が継続できていない原因に ついて考察する.就労者の運動療法が継続出来ていな い「忙しい」という理由については,就労者は非就労者 より労働による拘束時間が多いことから,時間の制約に

90 . 0 80 . 0 70.0 60.0 50.0 40 . 0 30 . 0 20.0 10.0 0.0

年齢 (歳)

忙しい やる気が起きない 体調が悪い 方法が分からない

56 . 1±13 . 2

56 . 1±13 . 2 59 59 . . 2±12 2±12 . . 7 7

65 . 3±15 . 5 65 . 3±15 . 5

72.2±6.6 72.2±6.6 出来ている

33名

出来ていない 34名

ガイドライン通り 運動療法を 実施出来ているか 総回答者156名の

運動指導受診歴 67名 あり あり なし 67名

89名

やる気が起きない 10名

対象:結果①でガイドライン通り運動療法が 行えていないと回答した34名

未回答 4名 未回答 4名

その他 7名 その他 7名

体調が悪い 体調が悪い 6名

6名

忙しい 8名 忙しい 8名

方法が分からない 方法が分からない 6名

6名

図4 結果③:運動を行えていない各理由回答者群の平均年齢(その他・未回答を除く)

図2 結果①:運動療法実施状況 図3 結果②:運動療法を行えていない理由の内訳

(3)

32

よる運動実施困難が予測される.就労の有無は余暇時間 を強く規定する為,運動療法に費やす時間が少ないこと から,就労者は非就労者より運動頻度が低く,その差は 統計的にも有意であると言われている

3)

.また,「やる 気が起きない」という理由については,就労により多忙 になることから運動療法実施への意欲が低下しやすい事 が予測される.労働によるストレスは疲労物質を蓄積さ せ,神経性・中枢性疲労を引き起こし,意欲を減退させ る

4)

と言われている.これらの就労に関する特有の要因 が,運動実施時間の制約と意欲低下を招き,運動療法を 継続出来ていない理由となっていることが考えられる.

 次に,定年退職後の高齢者における運動療法が継続で きていない理由について考察する.「体調が悪い」とい う理由については,全身機能低下による運動実施困難が 予測される.高齢者は疾病や身体機能の低下などの理由 から活動性が低下する為,容易に廃用症候群を引き起こ し,さらなる機能低下を招く

5)

といわれている.また,

「方法が分からない」という理由については,認知機能 の低下による運動実施方法の理解力低下が予測される.

日本では65歳以上の15%に認知症が見られ,軽度認知 障害もほぼ同程度にみられており,すでに800万人以上 の認知障害を持つ高齢者が存在している.更に糖尿病患 者は高血糖,脳血管障害,高インスリン血症が促進的に 働き,認知症を合併しやすい

5)

と言われている.認知機 能が低下することにより運動実施の方法を把握し難くな っていることが予測される.以上の様な身体機能低下と 認知力低下という高齢者に特有の要因が,退職後の非就 労者が運動療法を継続出来ていない理由となっているこ

とが考えられる.

 以上の理由から運動療法が行えていない理由に,退職 前後の年齢で相違が出たことが考えられる.糖尿病の運 動指導は糖尿病診療ガイドラインの運動指導要綱に沿っ て行っているが,ガイドラインには年齢や就労の有無を 考慮した運動指導内容は含まれていない.今回の調査で は就労者と非就労者の正確な区別は行えていないが,今 後はガイドラインの運動指導内容に加え,就労者と退職 後の非就労者が抱える特有の問題点に考慮した運動指導 方法を検討する必要がある.糖尿病運動療法の継続方法 を更に検討していく為,就労者と非就労者を区分した上 で詳細な分析を行うことを今後の検討課題としたい.

文     献

1)日本糖尿病療養指導士認定機構 編:糖尿病療養指 導ガイドブック.99−110,メディカルレビュー社,

東京,2011.

2)日本糖尿病学会 編:科学的根拠に基づく糖尿病診 療ガイドライン.南江堂,41−47,2013 .

3)孫 郁雯:運動頻度を規定する要因.JGSSで見た 日本人の意識と行動,147−157,2007 .

4)南谷 晴之:疲労とストレス.バイオメカニズム学 会誌 21(2) : 58−64 , 1997 .

5) 島田 裕之:高齢者の日常生活内容と身体機能に 関する研究.日本老年医学会雑誌 39 : 197−203 , 2002

6)櫻井 孝:高齢者糖尿病と認知機能障害.Diabetes

Frontier 26(5) : 590−595 , 2015 .

参照

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