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「が」と「は 」★

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(1)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003

「が」 と 「は 」 ★

PartI

高野 泰邦

本題 (が」 と 「は)、 2つのPartか ら構成 され る。PartIPartIIである。本 稿 はPartI、PartIIは次号 の同紀 要 に掲載予定 であったが、急速本号 に続 けて掲載 す るこ とに した。

1

[キー ワー ド]:主語 をマー クす る 「が」、焦点 をマー クする 「が」、 トピックを マー クす る 「は」、総称 をマー クす る 「は」、対比 をマー クす る

「は」、強調 をマー クす る 「は」

1. は じめ に

日本語 の統語構造 において、最 も重要 な働 きを担 ってい る2つの助 詞、「が」

と 「はの問題 は、国語学、 日本語学、言語学 のいずれの分野 で も長 い間研 究 され続 けて きた永遠 のテーマ と言 えよう。本 テーマ について、上記 の各分野 の 研究者 は過去 に実 に様 々 な分析結果 を報告 してい る。 しか し、残念 な ことにそ れ らの分析結果 が必 ず しも満足 ので きる形 で報告 されてい る とは言 い切 れない 部分 が ある。問題 の核 心 は どうも2つの助詞 の機能 の深層 を流 れ る言語学的 な 原則 を どう捉 えるか とい うことに起 因 してい るようだ。

本稿 で は、 これ らの2つの助詞 の機能 について大胆 かつ魅力的 な仮 説 を言語 学的観点か ら提案 したい。提案 しようとしてい る仮説が大胆 な理 由は、 これ ら

2つの助 詞 の研究 の歴史 において本仮説 の ような大胆 な分析 を提供 してい る 分析報告 は過去 に例 を見 ない とい う事実が挙 げ られ る そ して、 この大胆 な仮 説 が魅力的 な理 由は、 これ らの2つの助 詞 を 日本語学習者 が あ る有 限の期 間内 に学習 し得 て、 それが なおかつ普遍的 な言語 の特徴 を的確 に捉 え られ てい る、

とい うことに起 因 してい るか らで ある。

仮 説 は、 その性質上、以下 の よ うに提示す る。

(2)

「が」 と 「は」PartI

が」 と 「は」 についての仮説

(a) が」 の基本 的な機能 は、文 の主語 をマー クす ること また、「はあ る種 の文 の主語 を含 めた句 をマークす る焦点 とい う機能 もある。 この焦点 をマークす る 「が」 は、句 の他 に、 ある複文の節 もマー クす る。

(b) これに対 し、「は」の基本的な機能 は、文 の トピックをマー クす ること。

総称 をマークす る 「は」お よび対比 をマークす る 「は」は、 トピックの 「は」

の特殊 なケースである。もう1つ認知 しなけれ ばな らい機能 は、強調 をマー クす る 「は」 である

上記(a)(b)か ら明 らかなように、本仮説 は大 き く2つの命題か ら構成 されて いる 1つは 「が」の機能 について、 そ して もう 1つ は 「は」の機能 について である 本稿 において、筆者 は本仮説が これ らの2つの助詞 を言語学的 に捉 え る方法 として最小限で、かつ経済性 を追求 し得 た仮説 である と主張 したい。以 下、PartI及 びPartIIにわた って本仮説 を主張す る根拠 を数多 くの文例 お よ

び言語学的用語 を媒介 として論証 してい く

本稿 では、仮説 に基づいて 「と 「は」の機能 の有効性、正 当性、及 び妥 当性 を検証 してい く。なお、PartIIで はこれ まで に言語学の分野 の研究 で築 き 上 げ られて きた専門的な知見や技術 を応用 して本仮説 の整合性 を言語学的な観 点か ら裏付 ける工夫 を試 みる

2.

「が」は、言語学 の分野 では少 な くとも2つの機能が あることが報告 されてい 1つ は主語 の 「が」 で あ り1)、 もう1つ は総記 の 「が」で あ る (Kuroda

[11]Kuno[8]を参照)。 しか し、筆者 はこの 「が」について以下の 2点 を本 稿 で主張 したい。 まず第一 に、基本 的な 「が」 の機能 は文 の主語 をマー クす る

ことであ り、第二 に、 これ まで総記 の 「が」 として記述 されて きた 「がは実 の ところ焦点 の 「が」 として扱われ るべ き ものであ り、 この焦点 の 「が」の機 能 はある種 の文型 の主語 を含 める句、 あるいはある複文 の節 をマー クす るもの である

2. 1.主語の 「

本小節では、「は じめに」で紹介 された 「が」についての仮説の第一 の命題 を

(3)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003 3

詳 し く検討 す る ことか ら始 め るこ とにす る。 その部分 を以下 の ように切 り離 し て考 えてみ よう

(a) 「が」 の基本 的 な機能 は、文 の主語 をマー クす る こと

上記仮説(a)に よって、 日本語 にお ける実 に多 くの主語 をマー クす る文型 が変 則 的 な条件 に縛 られ る ことな く極 自然 な説明が なされ る

まず最初 に、WH語 と呼 ばれ る語 が主語 の位置 に現れた文型 である。 この文 型 の主語 は義務 的 に 「がに よってマー クされ なければな らない。 その理 由 は、

WH語 は疑 問詞 で、話題化 (Topicalization)や対比化 (Comparison)を誘 発 しない とい う事実 に基 づいてい る。 この事実 を念頭 に、次 の例文 を検 討 された

い 。

(111) a.誰些 きますか。

b.鈴木 さん空 きます。

C. *誰旦 きますか。

(ト2) a.いつ些 (お)誕生 日ですか。

b. 74日 (卓二誕生 日) です。

C. *いつ旦 (お)誕生 日ですか。

(ト3) a.何語些 一番難 しいですか。

b.日本語些 一番難 しいで しょう。

C. *何語旦 一番難 しいですか。

第二 に、 しば しば 「現象文として言及 され る文型 であ る。現象文 とい うの は、発話者 が特定 の談話文脈 で見 た り、 あるいは観察 した りした ことを発話、

あ るいは報告す る文 の ことを言 う。2)

(2) a.雨些 降 ってい ます。

b.さっ き地震が あ りました。

C.松井が ホームラ ンを打 った。

(4)

4 「が」 と 「は」Part二 d.あ、 トンボが飛 んでい る

本稿 で は、これ らの例文 に現 れ る 「が」は全 て主語 の 「が」であ り、 また変則 的 な条件 に頼 る ことな く極 自然 に説 明が な され る文型 として捉 えることにす る。

第三 の文型 は、関係節 の中に現れ る主語 をマー クす る 「が」で ある 関係節 の中の主語 は 「が」 とな る。3)

(3) a.田中 さん些 買 った車

b.山田 さん些 書 いた論文

第 四の文型 は、従属節 を含 む複文 の中の主語 をマー クす る 「が」 であ る の文型 の主語 もや は り 「が」 に よってマー クされ なけれ ばな らない。

(4) a.田中 さん些 引 っ越 したので、寂 し くな りました。

b.田中 さん些 引 っ越 してか ら、寂 し くな りました。

C. 田中 さん些 引 っ越 したため、寂 し くな りました。

d.田中 さん些 引 っ越 した ら、寂 し くな りましたo e. 田中 さん些 引 っ越 す まで、寂 し くあ りませ ん。

第五 の文型 は、連続 す る2つの助 詞 「の」 と 「は」 によって従属節 (あ るい は前節) と主節 (あるい は後節) を繋 いで い る、 いわ ゆる分裂文 とい うもので あ る この文型 の主語 もまた 「が」 によってマー クされ なけれ ばな らない。

(5) a.新学期些 始 まるの は、 四月です。

b.コンピュー ターが よ く売れ るの は、NECです。

最後 の文型 は、 いわ ゆ る慣用的 に使 われ る文 で、 その主語 は 「がに よって マー クされ る。

○ヽ■ooIVabC

6

(5)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003 5

分類上 6種類 に分 けて例示 した文型 の主語 は、変則的 な条件 を立て ることな く、主語 をマー クす る 「が」 によって表 され る。 この観察 は過去の どの分析 に も見 ることので きない観察であ り、 よ り多 くの文型 の主語 が主語 をマークす る

「が」によって自然 な説明が施 され るので ある。 また、 これ らの例文の中に現れ る 「が」 は無標 の 「が」であると言 うことがで きる。

2. 2.連続 して現れ る 「が」

2. 1で は、総記 と呼 ばれ る 「は実 は主語 をマ一一クす る 「が」であ り、

それ に取 って代 わ られ るべ きであることを主張 した。本小節で は、 この主張が 実 に正論 である とい うことを各種 の実例 を基 に実証 してい く。

まず始 めに、用語 「総記」 は限定的 (特 に 日本語 とい う言語 に限定的)であ る とい う点 を指摘 したい。 それ に対 して、用語 「焦点」 はよ り一般的であ り、

事実、英語 な どの言語 で も通用す る用語 なので、強 いて言 えば普遍的で さえあ る と言 える。 この点 を考慮 に入れて以下 の例文 を検証 してみ よう。例文(7)は、

Kuno [8] に依 る。

(7) a.男性型平均寿命が短 い。

Itismalesu)hoselljTespanisshort. b.日本型 男性型 平均寿命が短 い。

ItisJapananditsmalesthatthelljTeanisshort.

上 の英訳 に も示 されてい るように、(7)aの 「男性型 」 と(7)bの 「日本型 」お よび 「男性型 」 は英語 の文型 の中の焦点 とい う場所 に位置 しているのがお分か りいただ けるだ ろうか。 この事実 は、 この ような文型 においての句 (1つある いはそれ以上) は これ まで長 い間研究者 の間で踏襲 して使 われて きた用語 「 ではな く、「焦点であ ることを裏付 けている。

焦点 をマークす る 「が」 によってマー クされた句 は何 もこれ らのタイプの例 だ けに止 まらない。 つ まり、「総記」よ りも 「焦点」の万が よ り適切 な用語 であ

る とい うことを裏付 ける例 は他 に も数多 く存在す る 例 えば、次の例文 を見 ら れたい。 (焦点化 と見 なされ る 「が」だ けを強調文字 お よびそれ に下線 を施 して 示す ことにす る。)

(6)

6 「が」 と 「は」PartI

8) a. これか ら些本番です。

b.10ペー ジまでが宿題 です。

Cd ビール は夏 の間些 一番 うまい。

えびは生で食べ るの些 一番おい しく感 じる。

上の例文 で示 そ うとしているのは、様々 な格 を持 った句、 あるいは複文 の節 までが焦点化 され る とい う事実であ る 句 あるいは節が焦点化 され る位置 にあ る時、 日本語 においては 「が」 によってマークされ るのであ る

2. 3.主語 をマークす る 「の特殊 なケース と しての焦点の 「が」

下記 の(9)に示 された 「がを見 られたい。

(9) ジ ョン些学生です。

例 えば、Kuno[8]は この 「が」の機能 を総記 の 「が」 として捉 え、論 を展 開 している 更 に、Kunoは上 の(9)の文 に次の ような英訳 を施 している。

(Ofallthepeopleunderthediscussion)(andonlyJohn)isastudent. (今話題 になっている人 たちの中で) ノ ヨン (だ け)些草生 です。

つ ま り、ここでのゼ旦之 は総記 の リス トの中か らただ 1人選 ばれた ジ ョンを 意味す る と言 うので ある この英訳 に関 してのKunoの直感 には同意で きるが、

本稿で はこの同一の 「が」 に対 して幾分違 った角度か ら観察 の手 を加 えたい。

つ ま り、 この「が」はKunoが主張す るような総記 の「が」で はな く、焦点 をマー クす る 「が」であ り、更 には この焦点 とい う機能 に主語 をマー クす る 「が 共起 している、 とい う観察である。従 って、 この特殊 な例文 は以下 の ようなイ

ンフォーマル な解釈 が施 され るべ きなので ある。

(9)'ジ ョン 些 学生です。

主 語 佳 占JLLl

(7)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003 7

これ をもっ と突 き詰 めて よ り精微 に述 べれ ば、 この 「が」 は2つの機能 ( まり、主語 お よび焦点) を同時 に持 ち合わせた 「が」 である と言 うべ きなので ある 更 に核心 を突 いた表現 にす る と、 この 「がの主 とす る機能 は主語 であ り、 その主語 とい う機能 に焦点 をマー クす る 「が」 の機能が融合 した形 になっ てい る と言 えるのである。

この種 の 「が」 と同 じ機能 を持 つ例文 を以下2つほ ど確認 してみ よう。

(10) a.今、長崎 あつい。

主 語 佳 占llIl

b.蟹 は、北海道 本場 だ。

主語

佳 占IlIl

本小節で論 じて きた 「がは、本小節 の始 めに示 した ように、 よ り一般的 な 命題 のある特殊 なケースであるい うことを再 び ここに確認 して本小節 を終 える ことにす る つ ま り、 これ らの例文で は本来 の主語 をマー クす る 「が」 に特殊 なケースの焦点 をマー クす る 「が」の機能が付 け加 えられ、新 しいタイプの主 語が創造 された、 と見 なすべ きなのであ る。

2.4.が」の嘩昧 さ

下記 に示す例文 の中の 「が」が2通 り (つ まり、「中立叙述」 と 「総記)に

解釈 で きる とい う指摘 を最初 に したのは、Kuroda[11]である。

(ll) ジ ョン 来た。

a ) 中立叙述 :Johncame.

b ) 記 :John (andonlyJohn)came.

本稿 では、Kurodaの この観察 (「が」が暖味 に解釈で きるとい う観察)は基 本的 に正 しい と判断す る。 しか し、同 じ例文 を本稿 の枠組 みの中で再分析 し、

その結果 を以下 に示 したい。 つ ま り、 この 「が」は、Kurodaの主張す る 「中立 叙述」や 「総記」で はな く、 それぞれ 「主語 をマークす る 「」と 「焦点 をマ‑

(8)

8 「が」 と 「は」PartI

クす る 「に改 めて提案 したい。

(12) ジ ョン 些 来 た。

a)主語 :Johncame.

b)焦点 :John(andonlyJohn)came.

上 の暖昧 さ とい う観察 に関連 して、2. 1で検討 した主要 な文型 (分裂文 と 慣 用的表現 は除 く) の主語 をマー クす る 「は これ らの2つの機能 (主語」

お よび 「焦点)の どち らの機能 の解釈 も可能 であ る とい うこ とを ここに記 して お きた い。

これ まで検討 して きた結果 は、 冒頭 に掲 げた 「が」 にたいす る仮 説が心理的 に も言語学的 に も真 であ り、従 って説得力 のあ る もので ある とい うことを本節 の結論 とし、時節 で は 「は」 についての論 を展開 してい くこ とにす る0

3.「は」

助詞 「はも、過去 の分析結果 に よる と、少 な くとも3つの異 なった機能 が あ る と見 な されてい る。 つ ま り、 トピックをマー クす る「は」、総称 をマー クす る 「は」、 そ して対比 をマー クす る 「は」 であ る。

本節 で は、 「は」の基本 的 な機能 はある文 の トピックをマー クす ることで、総 称 をマー クす る 「は」 お よび対比 をマー クす る 「はは トピックをマー クす る

「は」 の特殊 なケースであ る とい うことを主張 したい。 また、「は」 には これ ら 3つの機能 の他 に も 「強調」 をマー クす る 「は」が存在 し、 その存在 を認知

しな けれ ばな らない とい うことも主張 した い。

以下 、 トピックをマー クす る 「は」、総称 をマー クす る 「は」、対比 をマー ク す る 「は」、 そ して強調 をマー クす る 「はの順 で論 を展開 してい く

3. 1 トピックをマー クす る 「は」

まず、 冒頭 で提示 した以下 の 「はに対 す る仮説 を再確認 す る ことで本小節 を始 め ることにす る。

(b) これ に対 し、「は」 の基本 的 な機 能 は、文 の トピック をマー クす る こ と。総称 をマー クす る 「は」 お よび対比 をマー クす る 「はは、 トピ ッ

(9)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003 9

クの 「はの特殊 なケースである。 もう1つ認知 しなければな らい機能 は、強調 をマー クす る 「は」である

まず始 めに、上記仮説 の第一の命題 (つ ま り、「は」の基本的な機能 は文 の ト ピックをマー クす ること) についての議論か ら始 めることに しよう

世界中の多 くの言語 において、 ある文 のある要素が話題化 (つ ま り、 トビカ ライ ズ [Topicalize])され る とい うことはよ く知 られた事実で ある。 しか し、

言語 によって この話題化が どの ようになされ るのか とい うことに関 しては、諸 言語 の諸々の表現 の仕方 によって表面上異 なって くる とい うことも見逃 しては な らない事実である。 日本語 の話題化 において もこの ことは当てはまる と言 え る。 そ こで、 日本語 の話題化 の例 (特 に 「は」 によって話題化 され る文型) を い くつか観察 してみ よう。

(13) a. ジ ョンが ビル にメア リー を紹介 した (こと)0

b.ジ ョン旦 ビル にメア リー を紹介 した。

Cd メア リ一旦 ジ ョンが ビル に紹介 した。

ビルに旦 ジ ョンが メア リー を紹介 した。

(13)aの例 は無標 の文 であることに注意 されたい。つ ま り、 この文 に特別 な談 話 の文脈 を想定 しな くて もこの文 は文法的であ り、文意 は伝わ る とい うことで ある。(13)aの ような文 はしば しば生成文法で は与格文 (DativeSentence)とし て言及 されてい る。ところが、(13)b‑dの文 は、これ らの文が意味の通 じる文 と して認識 され るためにある適切 な談話 の文脈 の中で発話 されなければな らない とい うことを示 してい る。 つ まり、(13)b‑dの 「は」でマークされた句 はそれぞ れその文 の トピックになっているのである

更 に下記の他 の種類 の句が話題化 された例 を見てみ よう。

(14) a. そのバ スが長崎か ら福 岡 に行 く (こと)0

b.長崎か ら旦 そのバ スが福 岡 に行 く。

C.福 岡に旦 そのバ スが長崎か ら行 く。

(14)bは、起点格 (つ ま り、「か ら)の句が話題化 された ことを示 している。

(10)

10 が」 と 「は」PartI

一 方、(14)Cは、方向格 (つ ま り、「に)の句が話題化 された ことを示 している これ らの例 の他 に も、 「まで」、「で」あるいは 「と」でマー クされ る句 も話題 化 を誘発 す る。

(15) a.長崎 まで電車 で行 きます。

b.長崎 まで旦 電車 で行 きます。

(16) a.京都 で大 きな祭 りが あ ります。

b.京都 で旦 大 きな祭 りが あ ります。

(17) a. 田中 さん と3ヶ月前 に会 い ました。

b.田中 さん と旦 3ヶ月前 に会 い ました。

上 の各例 で示 され てい るように、様 々 な文法関係 を持 った句 (あ るい は格 を 持 った句)が話題化 され る ことが分 か った。

これ らの例 の他 に も、主語が話題化 を義務 的 に誘発 す る文型 が あ る。 その文 型 は、述部 にWH語 を含 む文型 であ る

(181) a.あなた旦 将来何 にな りた いですか。

b.わた し旦 弁護 士 にな りた いです。

C. *あなた些将来何 にな りたいですか。

(182) a.ホ ワイ トさん旦 (今) どこに住 んで い ますか。

b.ホ ワイ トさん旦 文教 町 に住 んでい ます。

C. *ホワイ トさん些 (今) どこに住 んでい ますか。

(183) a.銀行旦 何時 まで開いてい ますか。

b.(銀行旦 )4時 まで開いてい ます。

C. *銀行些 何時 まで開 いてい ますか。

最後 に、複文 の節 が話題化 され る例 を以下 に示 す。

(11)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003

19) a.バ ラが咲 くの旦 5月です。

b.クラスに来 なかったの旦病気だ ったか らです。

ll

この ように、種々の文法関係 を持 った句 (あ るいは格 を持 った句)、 あるいは 節が話題化 を誘発す る。話題化 されたそれ らの句 あるいは節 は、 ある適切 な談 話文脈 の中で発話者 によって発話 された ものであ り、 これ らの話題化 された句 あるいは節 に対応す る残 りの文 に対 しての最 も重要 な情報 として発話 されてい るのである。

3. 2.総称 をマークす る 「は

Kuno[8]は、「総称」と分類 す ることので きるある種 の名詞 (あるいは名詞 句)が存在 す る とい うことを報告 してい る。 そ して、 その総称名詞の例 として、

鯨」、「猫」、「人」、「アメ リカ人」、「太陽」、「言語学者」な どを挙 げている。Kuno によれば、 それ らの総称名詞 は永久的 に談話文脈 の中に組 み込 まれ ることので

きる名詞であ り、特別 な談話 の文脈が設定 されな くて も 「はによってマー ク され る名詞群 である と主張す る。次の例 を見 られたい。

(20) a.鯨 晴乳動物 である。

総称

b.人 間 旦 考 える葦 だ。

総称

C.太陽 旦 東か ら登 る。

総称

しか し、直感 的 に言 って この 「は」が前節 で論 じられた トピックをマー クす る 「は」 とどの ように違 うのかが はっき りしない。 もし トピックの 「は」 と総 称 の 「は」 に違 いが存在す るとすれば、 それ は前者 の 「は」が発話時点で談話 の文脈 を必要 とし、後者 の 「は」 は談話文脈 を必要 としない とい うところにあ る と言 える。つ ま り、 トピックの 「は」 は談話文脈 を必要 とし、総称 の 「は」

は談話文脈 を必要 としないで発話が可能 とい うことにな る この観察 は‑見 当 たってい るように も見 える

しか し、 この観察 (つ ま り、総称 の 「はは発話時点 で談話文脈 を必要 とし

(12)

12 「が」 と 「は」PartI

ない とい う観察) を もっ と注意深 く検 討す る必要が あ りそ うだ。本 当に総称 の

「は」は談話文脈 を必 要 としないので あろうか。確 か に、発話時点 を考慮 に入れ る と、 そ う言 えな くもない ように思 える しか し、発話者が これ らの文 を発話 した後 に聞 き手 あるいは読 み手 が現 れ る とい うこ とを想定 して これ らの文 を発 話 してい る とは考 え られ ないだ ろうか。 もし、 そ うで ある と仮定すれ ば談話文 脈 を必要 としてい る とい うことにな りそ うだ。結果的 に、や は り総称 をマー ク す る 「は」 は トピックをマー クす る 「は」 と統語論 的観点か ら非常 に類似 した 現 象で ある と言 えるので はないだ ろ うか。(この点 に関 して は、後節 で再 び取 り 上 げる ことにす る。)

あるいは、 これ らの文 の発話者 あ るいは書 き手 が全 く談話文脈無 しにただ単 に これ らの文 を頭 の中だ けで想像 す る とい う可能性 だ ってあ るわ けで、要す る に ここで問題 に した い ことは、総称 をマー クす る 「は」 を含 む文 は談話文脈 が 必 要か否かで あ る。 これ に対 す る解答 は 「否」 で ある。 なぜ な ら、総称 をマー クす る 「はを含 む文 は談話文脈 が あ ろうが なか ろうが現実 に発話 が可能 だか らであ る 従 って、想像 に対 しては次 の よ うに も言 えるので ある つ ま り、想 像 とは、談話文脈 を必要 としてい る文 の単 な る投影 された形 あるい は形而上学 上 の副産物 とで も言 うべ き もので あ る と言 える。 この議論 に関 して はPartII で更 に深 く検 討す る ことにす る。

3. 3.対比 をマークす る 「は」

本小節 で は対比 をマー クす る 「は」 について論 を展 開 してい く 対比 をマー クす る 「は」 を最 も端 的 に表 す例 には以下 の ような ものが あ る

(21) 雨 降 ってい るが、風 吹 いていない。

対比 対比

Kuno[8]は、(21)kあ るような 「は」には対比 (実際 には対照 とい う用語 を 用 いているが、 ここで は対比 とい う用語が 日本語研究者 の中で も広 く使 われて い る とい う理 由で この用語 に置 き換 えて議論 を進 め る) とい う機能 が あ る とい うことを主張 してい る。 もっ と具体 的 に言 う と、(21)kおいて前文 の 「雨」 とい う名詞 が後文 の 「風 」 とい う名詞 に、 そ して後文 の 「とい う名詞が前文 の

雨」とい う名詞 にそれぞれ対比 されてい る、 と言 うので ある。対比 をマー クす

(13)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003

る 「は」の例文 をもう2つ、3つ観察 してみ よう

13

(22) a.魚 旦 よ く食 べ ますが、肉 旦 あ まり食 べ ません。

対比 対比

b.日本語で 歌 えますが、英語 で 旦 歌 えません。

対比 対比

C.昨 日 旦 大学 に行 きましたが、明 日 旦 (大学 に)行 きませ ん。

対比 対比

(22)aでは、「魚」とい う名詞 と 「肉」とい う名詞が互 いに対比 された形で使 わ れている。互 いに対比 された これ らの2つの名詞 は文法関係上 目的語 である と い う事実 を確認 された い。(22)bで は、「日本語で」とい う様態 を表す副詞句 と「 語で」 とい うこれ も様 態 を表 す副詞句が互 いに対比 されている。最後 に、(22)C

についてであるが、「昨 日」とい う時 を表 す副詞 と 「明 日」とい う時 を表す副詞 が互 いに対比 されてい る。

これ らの句の他 に も様々な文法関係 を表す句が対比 され るようである。更 に 次の例文 を観察 されたい。

(23) a. ジ ョンはメア リー をマイクに 旦 紹介 したが、

対比 ジ ョーに 旦 紹介 しなか った。

対比

b.中か ら 旦 見 えますが、外か ら 旦 見 えませ ん。

対比 対比

C. 3月 まで 旦 待 て ますが、4月 まで 旦 待 て ません。

対比 対比

d.京都 に 旦 行 きたいですが、東京 に 旦 行 きた くあ りませ ん。

対比 対比

上 の例文 に も示 されているように、実 に多 くの格 (あるいは文法関係) を持 つ句 が対比 として使われてい る。(23)aで は与格名詞句が、(23)bでは起点格名詞 句が、(23)Cで は着点格名詞句が、 そ して(23)dでは方向格名詞句がそれぞれ対比

(14)

14 「が」 と 「は」PartI

されてい る

Kunoの上記 の 「対比 」 をマー クす る 「は」 についての観 察 に は同意 で きる が、果 た して対比 をマー クす る 「は」 と 「総称 」 をマー クす る 「はとには一 体 どの ような違 いが あ るのだ ろうか。 この疑 問が問いか けようとしてい る意 図

は下記 の例 を検討 すれ ばその糸 口がつめそ うだ。

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.4り

この例文 に現れ る 「は」は一体 どの機能 を持 つ 「は」なので あ ろ うか。 トピッ クをマー クす る 「は」なのであ ろうか。名詞 「男」は、Kunoが主張す るように 総称名 詞 として解釈 で きるようなので、総称 をマー クす る 「は」 なので あろ う か。 それ とも対比 をマー クす る 「は」 なのであ ろうか。 この疑 問 はす ぐに解答 を得 られ るような性質 の もので はない ようであ る なぜ な ら、 この例文 その も のが これ まで検討 して きた3つの 「は」 の どれ に も該 当 し得 る可能性 が高 いか

らで あ る。

まず、 この 「は」 を対比 をマー クす る 「は」 と仮定 して議論 を進 めてみ よう. 対比 をマー クす る 「は」 と総称 をマー クす る 「は」 の違 いは一体何 なのであ ろ

うか。 あ るい は、 この 「は」 を トピックをマー クす る 「は」 と比較 してみ よう 2つの 「はの違 いは何 であろ うか。や は りす ぐには答 え られ ない とい うのが 母語話者 の素直 な直感 で はないだ ろ うか。 しか し、 これ らの3つの機能 に共通 す る特徴 は見 出せ る。 それ は談話文脈 の中 にお ける統語論上 の 「強調」 で はな いだ ろ うか。 要す るに、 これ らの3つの機能 はいずれ も文 の最 も重要 な情報 を 提供 す る とい う働 きを持 ってい る と言 えは しまいか。 つ ま り、 それぞれ の文 の

中で最 も強調 され る情報 を提供 している と言 えないだ ろ うか。

3つの機能 を どう識別 す るか とい う疑 問 に対 す る解答 は この時点で は差 し控 え、後 の節 で もっ と詳 し く述べ る ことにす る。 しか し、 1つだ け ここで言 える ことは、 トピ ックをマー クす る 「は」 と対比 をマー クす る 「は」 はある構文 に お いて しっか りと区別 しなけれ ばな らない とい うことだ。 この点 をこのす ぐ後

に続 く節で取 り上 げる こ とにす る

(15)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003 15

3. 4.連続 して現れ る 「は

日本語 で はしば しばある文 中に 「は」 が連続 して現れ る文型が存在 す る ころが、往々 に してそれ らの文型 では文 の最初 に現れた「は」が トピックをマー クす る 「は」であ り、残 りの 「はは対比 をマー クす る 「は」であるようだ。4)

次の例文 を見 られたい。

(25) a.学生が教室で携帯電話 を使 っていない (こと)0

b.学生 は 教室では 携帯電話 は 使 っていない。

トピック 対比 対比

(25)bの中の最初 の名詞 「学生」 をマー クしている 「はは トピックで、それ

以外 の名詞 (教室」 お よび 「携帯電話)をマーク している 「は」 は対比であ る、 とい う筆者 の直感 を共有 していただ けるだ ろうか。や は り、文 中の最 も重 要な情報 を聞 き手 に伝 える方法 として 「トピック」が使 われ るので はないだ ろ

うか。

3. 5.強調 をマークす る 「は」

これ まで は、 トピックをマークす る 「は」、総称 をマー クす る 「は」、対比 を マー クす る 「は」 について概観 して きた。本小節で は これ らの3つの 「は」の 機能 の他 に別 の機能 を持 っている と考 え られ る 「は」 について論 を展開す るこ

とにす る。 まず、次の例文 を見 られたい。

(26) a.彼 は食べて旦寝、食 べて昼 寝 の生活 を送 っている.

?

b.平和 を祈 って旦 失望 に明 け暮れ る人

?

(27) a.その宝石 は百万 円旦 す る。

?

b.そ こまで は1時間旦 かか らない。

?

(16)

16 「が」 と 「は」PartI

c.全部旦 (とて も)食 べ られ ない。

?

(28) a.物事 は思 うよ うに旦 いか ない ものだ。

?

b.愛 さず にはい られ ない。

?

上 に示 され た例文 の中 の強調文字 の 「はは一体 どの ような機 能 を持 ってい るので あ ろ うか。恐 ら く日本語学研 究者 は この疑 問 に どう答 えれ ば良 いのか困 惑 して い るので はなか ろ うか。 その理 由 は、厳 密 に言 えば上 の 「は」が指 し示 そ う としてい る機能 を どう記述 す るか とい う観点 で は一見種 々 の機能 が存在 す るかの ような直感 が あ るか らで はなか ろ うか。従 って、 これ らの例文 に現 れ る

「はについて もう少 し詳 し く見 てい くこ とに しよ う。

まず、(26)aの例文 に現 れ る 「は」につ いてで あ るが、 この 「は」は動詞 の 「て 形 」に続 き、 そのす ぐ後 に動詞 「寝 」が続 いて現 れてい る (食 べ て旦 寝 )。 この 種 の 「は」 の用法 は 日本語 にお いて特異 な もの とは認 め難 い。 こ こで大切 な こ とは、 「食 べ て旦 寝 」 の中の動詞 「食 べ て」 と 「」が 「は」 に よって結 ばれ、

それ らが 1つ の大 きな動 詞句 を成 してお り、 この部分 が強調 され てい る と言 え るので はないだ ろ うか。(26)bの例文 も同 じよ うな趣 旨の こ とが言 える。 つ ま り、

(26)bで は2つの動詞句 が 「は」 に よって連 結 され てお り (平和 を祈 って旦 失望 に明 け暮 れ る) この部分 が強調 され てい る と解釈 で きるので はなか ろ うか。 こ こでの強調 とい う意 味 を もっ と具体 的 に述 べれ ば、(26)aで は 「食 べ ると 「

る」、(26)bで は 「平和 を祈 る」 と 「失望 に明 け暮 れ る」 の動作 (あ るい は状 態 ) が繰 り返 され る とい うこ とにな る

次 に、(27)aにつ いて検 討 してみ よ う この文 の 中の 「百万 円」 とい う数量詞 は、発話者 が宝石 は (絶対 に)百万 円以上 す る とい う こ とを認識 して この文 を 発話 した ことを暗示 して い る。従 って、 ここでの 「百万 円は発話 者 の観点 か ら見 れ ば 「少 な くとも百万 円 とい う意味合 いで発話 してい る こ とにな る。 つ ま り、 この 「百万 円とい う数量詞 は文 中 において強調 され てい る と見 るのが 妥 当なので はないだ ろ うか。 これ を もっ と別 の方法 で表現 すれ ば、発話 者 は こ の 「百万 円」 とい う数量 詞 を 「少 な くとも」 とい う限定 した意味合 い を込 めて

(17)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003 17

発話 してい る とい うこ とにな る。

(27)bの例文 は どうで あろうか。 この文 の発話者 はある目的地 まで行 く時間 に ついて発話 してい る。発話者 は自分 の過去 の経験 か らその 目的地 まで行 く時間 は 「1時間」以 内、つ ま り、 「どんなに長 くて も 1時間 はかか らない」とい うこ

とを知 っていて述 べている文 であ る。 つ ま り、「は」 には 「どんなに長 くて も」

とい う意味合 いが含 まれてい る と見 るのが妥 当なので はないだ ろうか0

さて、次 に、(27)Cの中の 「はは どうで あ ろうか。 この文 の 「は」 は副詞 的 表現 「全部をマー ク してい る。述語 「食 べ られない」 は否定 の形 で現れてい

る。 日本語 の場合、次 の ような ことが一般 的 な言語記述 として成 り立 つ ようだ。

つ ま り、述語が否定 の時、否定 され る対 象 (この文 の場合 は 「全部)は 「は

でマー クされ る。具体例 で示 す と、「食 べ られ ない」が否定辞 で、その対 象 は「 部」であ る。 「は」でマー クす るかマー ク しないか は多 くの場合発話者 の選択 に かか ってい る と言 えるが、マー クす る場合 にはマー クす る対象が発話者 によっ て強調 された と考 えるのが 自然 だ ろう。(この時、否定 された対 象 はその対象以 外 の対象 と対比 された形 で現 れ る こともある。 しか し、 この点 については本稿 で は これ以上深入 りしない ことにす る。)従 って、(27)Cの例文 で は 「全部」が強 調 されて述 べ られた文 である と解釈 す るのが妥 当で ある と考 え られ る。 この文 を更 に詳 し く分析 すれ ば、発話者 に次 の ような含意 が あった と考 え られ る ま り、 あ る食 べ物 を どれ くらい食 べ られ るのか とい うことが この文 を発話 す る 基 になってお り、「もし食べ物 が 「全部」であれ ば (とて も)食 べ られ ない。恐 ら く食 べ物 の90%、80%、 あ るい は70%な ら食 べ られ るが、全部 は (とて も) 食 べ られ ない。」とい うような発話者 の心的状況 を読 み取 る ことがで きるので は

なか ろ うか。

(28)aで は、副詞的表現 「ように」 が 「は」 によってマー クされてい る。結論 か ら先 に言 うと、 この文 で は 「思 うようにが、否定辞 「いか ない」 の否定 さ れ る対 象 となってお り、 この部分 が強調 されてい る とい うことにな る0(28)b 例文 の中の 「は」は どうであ ろ うか。 この文 で は、「愛 さず に」が 「い られ ない」

とい う否定辞 の対 象 になっている。従 って、「愛 さず に」が強調 されてい る と言 える。(28)a(28)bも共 にそれ ぞれ の否定辞 の対 象で あ る部分が強調 をマー クす る 「は」 に よってマー クされた例文 であ る と言 える

面 白い ことに、上 に示 された(26)(28)の例文全 ては 「は」を省略 して表現 して も それ らの文 の文法性 (文法的 であ る とい うこと)が維持 され る。以下 にそれ ら

(18)

18

の文 を見 られたい。

「が」 と 「は」PartI

(29) a.彼 は食 べて‑ 寝、食 べ て̲ 寝 の生活 を送 ってい る

b.平和 を祈 って̲ 失望 に明 け暮 れ る人

(30) a.その宝石 は百万 円A す る

b.そ こまで は1時間̲ かか らない。

C.全部ー 食 べ られ ない。

(31)a.物事 は思 うように̲ いかない ものだ。

b.愛 さず に̲ い られ ない。

この時点で、 これ らの例文 の中 に現 れ る 「はに共通 す る性質 (あ るいは特 徴 ) とは一体何 なのであ ろうか とい う疑 問が湧 いて くる その答 えは 「強調」

とい う機能 で あろ う 何故 な らば、(29)の中 に示 された例文 (つ ま り、 「は」

が省略 されてい る例文) で は 「強調」 とい う意味合 いが全 く感 じられない とい う事実 と、(26ト(28)の中の例文 (つ ま り、「は」 に よってマー クされた例文)で は

「強調とい う意味合 いが強 く感 じられ る とい う事実 に基 づ いて い るか らで あ 従 って、 これ らの例文 に現 れ る 「は」 は強調 をマー クす る 「は」で あ る と い う結論 を導 き出す ことがで きる(26)(28)の例 と(29)(31)の例 を比較 す る と、「強調」

をマー クす る 「は」とそれ以外 の機能 を持 つ 「は」 (つ ま り、 トピックをマー ク す る 「は」、総称 をマー クす る 「は」、 そ して対比 をマー クす る 「は)には統語 論 的観 点か ら大 きな違 いが存在 す る それ は、「強調」をマー クす る 「は」はそ れが文 中に現 れ な くて も文法性 が保 たれ るが、他 の機能 を もつ 「は」 は文 中の 主要 な文法関係 (主語 お よび 目的語 ) において は省略が許 され ないか らである

本小節 の議論 で明 らか になった こ と (つ ま り、(26ト(28)の中の例文 の 「は」は強 調 をマー クす る 「は」 で あ る とい うこと) を考慮 に入 れて、再 び それ らの例文

を以下 に示す ことにす る。

(26) a'.彼 は食 べて 旦 寝食 べて 昼 寝 の生活 を送 ってい る

強調 強調

(19)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 11 2003

b'.平和 を祈 って 旦 失望 に明 け暮れ る人 強調

19

(27) a'. その宝石 は百万 円 旦 す る 強調

b'. そ こまで は1時間 かか らない。

強調

C'.全部 (とて も)食べ られない。

強調

(28) a'.物事 は思 うように 旦 いかない ものだ。

強調 b'.愛 さず に い られない。

強調

強調 とい う用語 は、上 の例 で も確認 した ように 「は」のい くつかの機能の 1 つを表すために採用 した ものであ り、(26ト(28)(あるいは(26ト(28)')で示 した例文 の 中に現れ る 「は全 て を包括 す る一般的 な用語 であ るとい うこと、 そ して将来 これ らの一般的 な用語 の中に秘 め られているい くつかの精微化 された機能 につ いて更 なる詳細 な研究 をす る余地 を残 してい ること、の2点 をここに強調 して 本稿 を締 め括 りたい。

PartH では、本稿 の冒頭で掲 げた仮説 が実 に正論 である とい うことを更 な る 言語学的根拠 に基づいて論ず ることにす る。なお、参考文献 の一覧表 はPartII の最後の部分 に添 えることにす る。

本稿 の草稿 の段階で守 山恵子氏 よ り大変有益 な ご助言、 コメン ト等 をいた だいた。特 に、例文 の適切 さお よび提示の し方、本文の表現 の し方 において 貴重 な ご指摘 をいただいた。 ここに氏 に対 す る感謝の意 を表 したい。 なお、

本稿 の内容 における誤 り、最終 的判断 は全 て筆者 の ものであ り、氏 とは無縁 の ものであることをここに記 してお きたい。

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