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知能障害児の構成行為における探索機能の発達

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知能障害児の構成行為における探索機能の発達

大  庭  重  治ま

 (昭和63年10月31日受理)

要     旨

 本研究は,知能障害児の構成行為における探索機能の発達的状態を,構成要素の配置前と配 置後の両探索について検討し,構成行為の獲得を促していく際の教育的な手掛かりを得ること を目的として行われた。幼児・児童140名(CA314〜10:1),成人10名,知能障害児48名(CA 616〜1814,平均IQ51.9,SD9.1)に,触探索により8個の部分を配置して人の顔を構成す

る課題を与え,その構成過程にみられる触探索をVTRに記録し,分析した。

 その結果,健常児による構成行為の分析から次の事実が明らかにされた。(1)年齢の上昇とと もに構成結果は向上し,5歳後半にたると比較的まとまりのある構成が可能となり,さらに10 歳付近で成人の構成と同じほぼ完全な構成が可能とたる。(2)構成結果は構成過程における探索 の状態と関連があり,比較的まとまりのある構成が可能とたる5歳後半にたると配置前の適切 た探索が多くの配置で生起するようにたる。また,完全た構成が可能となる10歳にたると,配 置後の探索も活発にたる。すなわち,各構成要素の配置後に行われる確認のための探索は,配 置に先立つ探索に比べて4年以上も獲得が遅れる。

 また,知能障害児による構成行為の分析からは次の事実が明らかにされた。(1)MAが5歳後 半以上であっても構成が崩れる者が47%みられ,全般的た知的発達に比べて構成行為の獲得が 遅れている者がいる。(2)構成が崩れた者の中には,構成過程における探索の生起が悪く,位置 関係の把握を行わずに配置する場合が多い者と,探索部位と配置位置との位置関係の把握が不 十分であると考えられる者がいる。(3)健常児と同様に,配置前の探索に比べて配置後の探索の 獲得は遅く,構成が崩れても配置後の探索によってそれを修正することはたい。したがって,

知能障害児の構成行為の発達を促すためには,配置前の探索の獲得とともに,配置後の探索の 獲得を促す方法も合わせて検討していく必要がある。

KEY WORDS

constructional activity 構成行為      tactua1search      触探索

planning of action   行為のプランニング  menta11y retarded chi1dren 知能障害児

1.問題と目的

 構成行為は複数の構成要素を組み合わせてひとつのまとまりのある対象を作りあげていく行 為である。幼児の中心的な遊びである積木,粘土,描画などはこの…ような構成行為の一種とみ

‡障害児教育講座

(2)

170 大 庭 重 治

たすことができる。

 nHHcw舳962)は,積木を用いて一列に並んだ5つの丁字形を構成する課題を知能障害児に与 え,彼らの課題遂行の様子を観察した。その結果,知能障害児は与えられた課題に対する定位 が不十分であり,課題の条件や求められている課題内容を詳しく分析したり,あるいは行為の しかたを計画し,さらにその実現手段を選択するなどの作業を行わずに,いきなり課題の遂行 にとりかかる傾向があることを指摘した。Bortner&Birch(1960.1962),鼻地(1971),

Stratford(1980)は,構成行為を,課題として与えられる構成すべき対象の空間的な構造を把 握する 認知過程 と,認知過程で得られた構成対象のイメージに基づいて実際にひとつの構 成物を組み立てていく 構成過程 から成り立つ行為であるととらえている。このようなとら え方に従えば,知能障害児の構成が崩れる原因は,三れら認知過程と構成過程の両過程にある と考えることができるであろう。

 認知過程に関連して,no肌爪。B(1965)は,構成行為を行うためには,構成対象と他の対象の 弁別に利用されるようた対象の全体的なイメージを持つだけでは不十分であり,対象がどのよ うた部分から成り立ち,そしてそれらがどのようた位置関係にあるかも把握されたイメージが 必要であると述べた。

 このようた観点から,仲山(1984)は,認知過程では構成対象を形づくる要素を視覚的に取 り出し,要素間の空間関係を抽象する分節機能が必要であることを指摘した。また,積山・竹 村・福田・柿坂・石本(1984),小松(1985),近藤(1986)も,構成対象を要素に分ける分割 線を補助的に入れることによって構成が改善されることから,構成要素に対応した構成対象の 分析的た把握が必要であると指摘した。

 認知過程ではこのようた対象に対する能動的た分析により,構成対象を構成要素に分割した り,それらの要素に合わせて構成材料を選択するなどの操作が行われる。

 一方,構成過程に関しては,様々な補助的な働きかけを行うことによる課題遂行の変化から,

そこで必要とされる操作内容が検討されている。

 Luria&Tsvetkova(1964)は成人の脳損傷患者を対象にして,構成行為の改善にいかたる 外的支柱(extemal Support)が有効であるかを検討し,前頭葉疾患患者では,必要とされる動 作の順序を厳密に指定することが衝動的な操作やステレオタイプた再生の抑制に有効であるこ

と,頭頂一後頭葉疾患患者では,構成の過程で構成材料の基本的な空間関係を逐次確認させる ことが空間的な分析・総合の操作の補償につたがることを明らかにした。小松(1985)はこの Luria&Tsvetkova(1964)の考え方に基づき,構成行為における空間的認知・操作成分と企 画・制御成分の各々に対応する援助を知能障害児と健常児に与えて構成行為の改善効果を検討 した。その結果,知能障害児の中には,空間的認知・操作成分に加えて操作の順序を決定する 企画・制御成分への援助が有効である者が存在すると報告した。また舜地(1971)は,線や色 を組み合わせた9種類の背景図を構成を行う際の下敷として提示し,どのような背景図が構成 の改善に有効であるかを脳性マヒ児と健常児で検討した。その結果,脳性マヒ児では健常児ほ

どの効果は見られなかったものの,色だけ,あるいは色と線を組み合わせた背景では比較的大 きな促進効果がみられることを明らかにした。

 これらの研究により,構成過程においては,各構成要素を空間内にどのようた順序で,また

どのようた位置関係で配置していくかを決定する行為のプランニングが重要な役割を果たして

いることが示された。しかしながら,そのようたプランニングにもとづく位置関係を把握する

(3)

ための空間探索は課題遂行の変化から間接的に検討されているだけで,実際だ構成過程におい てどのような探索が行われていたのか,また構成過程ではどのような探索が必要とされるのか は明らかにされたかった。

 そこで大庭(1987)は,就学前の幼児を対象にして,眼隠しをして構成を行う際の触探索を 抽出することによって,構成過程における探索の発達的変化を検討した。その結果,5歳後半 にたると能動的な探索が生起し,しかも各構成要素を配置する時の基準としてふさわしい部位 を探索できるようにたり,比較的まとまりのある構成が可能になることを明らかにした。しか しこの研究では,各構成要素の配置に先立つ探索だけが検討されており,Luria (1973)や LaszIo&Bairstow(1985)などが目的指向的た行為の実現に欠かすことができないと指摘し ている行為の結果を確認し修正するための探索,すなわち,各構成要素を配置した後の探索は 検討されたかった。

 そこで本研究は,構成要素の抽出等認知過程で行われる操作を必要としたい課題を用いて,

構成過程における探索に焦点を絞り,以下の2点を明らかにすることを目的とした。

!、健常児の構成過程における探索の獲得状態を配置前と配置後に分けて検討し,それらの発   達豹変化と構成結果との関係を明らかにする。

2.その結果に基づいて,知能障害児の構成過程における探索の状態と構成結果との関係を検   試し,課題への定位・探索機能の獲得という側面から知能障害児の構成行為の特徴を明ら   かにする。

2.方     法

1.課     題

 Wede11(1973)が構成行為の検討に用いた課題を参考にして,一般に 福笑い と呼ばれて いる遊びに若干手を加えたものを課題として利用した。すたわち,一顔を構成する際の手探りを 手掛りにして,構成過程における探索の状態を検討した;このようた目隠しをして顔を構成す る課題は古くから遊びとして親しまれており,幼児にも教示が理解されやすく,実験に対する 動機づけも容易であると考えた。

2.実 験 材 料

 配置する部分は,顔の中の特徴的な部位である眉,眼,耳各2部分,鼻,口各1部分の5種 類,計8部分である。これらの構成材料は厚さ2㎜の磁石製で実物をまねて彩色されており,

各部分の左右(但し耳を除く)及び表裏の区別はたい。また,これらの部分を配置して顔を構 成する配置板は,縦横30㎝,厚さ6㎜の白色背景板の中央に,頭部正面の輪郭を型どり実物を

まねて彩色した厚さ3㎜の板を固定したものである。この配置板の髪の面は顔の面に比べてさ らに3㎜浮き出ている。したがって,構成を行う際に配置板を手で触ることにより,顔や髪の 輪郭を位置把握の手掛りとして利用することができる。なお,配置板の内部には全体にわ牟り ステンレスを張り,配置された部分が軽く触れた程度では動かたいようにした。目隠しにはゴー グルを使用した。

3.手  続  き

 まず構成に用いる部分を一種類ずつ提示し,その名称を尋ねた。呼称できない場合にはその

(4)

172 大 庭 重 治

名称を教えた。次に かっこいい顔をつくってください と教示し,目隠しをしないで顔を構 成させた。構成が可能であることを確認した後,続けて目隠しをして構成させた。したがって,

本研究では,構成すべき対象は言語教示を通して与え,視覚的には提示しなかった。以下では,

目隠しをして顔を構成する課題を 構成課題 と呼ぶ.構成課題では,部分を手渡す時に,同 時に手渡す部分の名称を告げた。鼻,眼,眼,眉,眉,口,耳,耳の順に1部分ずつ手渡して 配置させ,計8部分配置させた。すべての部分を配置したのち,目隠しをとらせた。このよう な手続きにより,被験者自身が構成要素を抽出したり,それに対応する構成材料を選択するた

どの認知過程における操作を行う必要がなく,構成の結果を構成過程の遂行状態とだけ関連さ せて検討することが可能とたった。たお,目隠しをせずに顔を構成する際には,実験者は被験 者の背後から課題遂行の様子を観察し,実験者の顔が構成のモデルにならたいように注意した。

構成中の被験者の手の動きや発話の内容を前方上方よりVTRに記録した。実験は個別に行っ

た。

4.構成結果の評価

 健常児の結果は,まず3名の評定者が個別に各被験者の構成結果を6段階に評定した。そし て3名の評定者のうちの2名以上において評定点が一致している場合にはその評定点を評価点

とし,3名の評定点がすべて異なる場合には(本研究では,このような場合でも,評定点は連 続していた)その中央の評定点を評価点とした。評定者間の評定点の相関係数はいずれも.99以 上であり,評定の信頼性は高い。このようにして得られた各評価点の具体例と特徴をFig.1に

示す。

 また,知能障害児の結果の評価は,評価の際にFig.1を参考にしたこと以外は健常児と同じ

である。

5.構成過程における探索状態の評価

 探索の状態は,各部分の配置前と配置後に分けて,触探索数と適切部位触探索数をそれぞれ カウントして評価した。触探索数とは,部分を配置する際に,部分の配置位置を決めるための

       評価占6

        すべての部分がほぼ正         しく配置されており、

        全体的にまとまりのあ         る顔になっている。

       評価占5

        部分的な崩れは多少み         られるが、全体的には         ほぼまとまリのある顔         になっている。

       評価占3

        一部に極端な崩れがみ         られ、顔としてはかな         り不自然な構成になっ         ている。

評価点2

 部分的に顔らしさがみ  られるだけで、全体的  に大きく崩れている。

        Fig.1構成課題における各評価点の具体例と特徴

(5)

手掛りとたりうる配置板 上の部位(配置板や顔の 輪郭,あるいは既に配置 されている他の部分のい ずれか)に指先が停留し ているか否かを各配置ご とに観察し,1配置中1 度もそれらの部位に触れ ていたい場合を0,一1度

配置部分

(酉己置岨頁)

適切部位

TabIe1

構成課題における触探索の適切部位

(成人10名の構成課題の結果より)

鼻唄眼眉肩口耳.耳

輪郭 輪郭 鼻 輪郭    鼻  眼  鼻         眼

鼻 輪郭 輪郭 輪郭 眼  鼻  眉  耳

以上触れている場合をすべて1とした時の8回の配置中の合計数である。また,適切部位触探 索数とは,配置直前あるいは配置直後に適切部位(成人10名による構成課題で,いずれかの被 験者が部分の配置直前あるいは配置直後に触れていた部位であり,配置する部分ごとにTab1e

1に示した)に指先が停留していた配置の数である。したがって,触探索数も適切部位触探索 数も最低がO,最高が8となる。これらは,実験終了後,VTRに基づいて手指の動きを観察,

記録することによってカウントした。

61被  験  者

1)健常児・者

 CAが3歳後半から6歳後半までの幼児100名と7歳から10歳までの小学生40名。成人10名。

年齢群毎の人数はTable2のとうりである。なお,いずれの被験者も,日常生活の観察から知 的機能や運動機能などの発達において特に問題とたる所見は認められたかった。また,これら の被験者はいずれも目隠しをしなければ評価点5以上の顔を構成できる者であり,人の顔にお ける部分間の位置関係は既に正しく把握していると判断された。

2)知能障害児

 知的な発達に遅れがみられる者48名。CAの範囲は6歳6か月から18歳4か月であり,平均

CAは!3歳5か月(SD2歳7か月)である。また,MAの範囲は3歳8か月から10歳9か月,

平均MAは6歳1!か月

(SD1歳9か月)であ      Table2健常被験者の生活年齢と人数

り,IQの範囲は34から

73,平均IQは51.9(SD 9.1)である。いずれの被 験者も日常的た言葉のや り取りは可能であり,。運 動機能の発達においても 構成行為を行う上で問題 となるほどの顕著な遅滞

が認められる者はいな

かった。また,目隠しを しなければいずれの被験 者も評価点4以上の顔を 構成できた。

3 4 4

5

5

6 6

7

8 9 10 成

CA      範囲

半 半 半 半 半 半 半

3:4−3:11 4:0−4:5 4=6−4:11 5:O−5=5 5:6−5:11 6:0−6:3 6:6−6:11 6:11−7:3 7:11−8:1 8:11−9:1 9:11−10=1 19=3−24=11

平均(SD)   人数

3:8(O:2)

4:2(O:2)

4:8(O:2)

5:2(0:2).

5:9(O:2)

6:2(O:1)

6:8(O:2)

7:1(O:1)

8:O(0:1)

9:0(0=1)

10:0(O:1)

21:8(1:7)

(6)

174 大 庭 重 治

3.結     果

1.健常児の結果

1)構成結果(評価点)の発達的変化

 構成課題の評価点を年齢群ごとに中央値でTable3に示す。10歳までについてみると,評価 点は年齢の上昇とともに高くたっていることがわかる(κ2=50.73,df=10,P<.01)。ただ し,5歳前半までの年令群ではいずれも評価点は3以下であり,顔として比較的まとまりのあ る評価点4以上の構成が可能となるのは5歳後半以降である。また,ほぼ完全な構成である評 価点6の構成は10歳以上にならなければ構成できない。

Table3健常児の構成課題における評価点の発達的変化(中央値)

CA  3歳 4歳 4歳 5歳 5歳 6歳 6歳 7歳 8歳 9歳10歳成人

    後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半

評価点 1.5 2 3 3 4.5 4 5 5 5 5 6 6

2)探索数の発達的変化

 配置前触探索数(以下,前触数と略す),配置前適切部位触探索数(同,前適数),配置後触 探索数(同,後触数),配置後適切部位触探索数(同,後適数)を年齢群ごとに中央値でTable 4に示す。

 配置前の探索をみると,前触数も前適数も年齢の上昇とともに増加し(κ2=63−25,κ2=

51,53,いずれもdf=10,p<.O1),前触数は一4歳後半から5歳前半にかけて,また前適数はそ れより約半年遅れて5歳前半から5歳後半にかけて半数の5以上に増加する。また,探索が生 起すれば,そのうちの80.8%から100%の割合で適切部位を探索しており,前触数と前適数に大

きな差はみられない。

 一方,配置後の探索は,配置前の探索に比べると触探索数,適切部位触探索数ともにいずれ の年齢群においても少なく,1O歳にたらなければ半数以上の配置で探索が生起するようにはな らない。また,配置後の探索も,探索が生起すればそのうちの71.4%から1OO%の割合で適切部 位を探索している。

       Table4健常児の構成課題における探索数の発達的変化(中央値)

CA  3歳 4歳 4歳5歳 5歳 6歳 6歳 7歳 8歳 9歳10歳成人

    後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半 前触数  2.5

前適数   2 後触数  O.5 後適数   O

5.5 5 1 1

7  7.5 6.5  7

2  1,5 2  1.5

8  8 7  7

3.5  5 3  4.5

3)評価点と探索状態の関係

(7)

 評価点(Tab1e3)と探索の状態(Table4)の関係をみると,ほぼまとまりのある構成が可 能になる5歳後半は,前適数が配置の半数以上でみられるようにたる年齢である。すなわち,

多くの配置において活発に探索を行い,しかも配置する部分に応じたふさわしい部位を探索で きるようになることにより構成が可能になっている。配置する部分によっては必ずしも探索が 必要ではない場合もあり,本研究で用いた構成課題の場合には,少なくとも5部分以上で適切 部位を探索できるようになることがまとまりのある構成が可能とたる目安であるといえる。

2.知能障害児の結果 1)構成結果(評価点)

 構成課題における評価点ごとの人数をTable5に示す。5歳前半までは10名中8名が評価点 3以下であり,健常児の場合と同様に構成が崩れる者が多い。一方5歳後半以降になると,評 価点4以上の者が38名中20名どたり,半数以上の者で比較的まとまりのある構成が可能とたる。

しかし,それ以外の18名は,MAにみられる全般的な知的発達に比べて構成行為の獲得が遅れ

ている。

Table5知能障害児の構成課題における評価点      (評価点ごとの人数で示す)

MA  3歳  4歳  4歳  5歳  5歳  6歳  6歳 7歳 8歳 9歳 10歳     後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半

評価点  1    2   1  2

 3  4

 5−

 6

1   2       2   3

   2 1   1   1

2      1      1

健常児  1.5  2  3  3  4.5  4  5  5  5  5  6 中央値

2)探 索 数

 個人ごとの前触数と前適数を比較すると,その数が同じ者が48名中37名,差が1の者が10名,

差が2の者が1名であった。このように,配置前の探索では,生起した探索の91.2%で適切部 位を探索していた。そこで,前触数についてのみその数をみるとTab1e6のようになっている。

健常児の場合,前触数の中央値は5歳前半以降にたればいずれの年齢群で一も半数の5以上で あった。しかし,MAがその年齢以上である知能障害児40名のうちの25名は前触数が4以下で

あった。

 一方,一配置後の探索数でも,後触数と後適数が同じ者が42名,差が1の者が6名であり,探

索が生起すれば88.7%セ適切部位を探索していた。そこで,ここでも後触数についてのみその

数をみるとTab1e7のようになっている。健常児と同様に前触数(Tab1e6)に比べると後触数

は少なく,たとえ配置に先立って探索しても,配置後にその結果を確認する探索が生起するわ

けではなかった。

(8)

!76

大 庭 重 治

Table6知能障害児の配置前触探索数(触探索数ごとの人数で示す)

MA  3歳  4歳  4歳  5歳  5歳  6歳  6歳 7歳 8歳 9歳 10歳     後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半

前触数  0    2  1  2  3  4  5  6  7  8

1

4

   2

      1

1

      1

1

3  3

2

2

健常児  2.5  2  3  5  5.5  6  7  7.5 7  8  8

中央値

Table7知能障害児の配置後触探索数(触探索数ごとの人数で示す)

MA  3歳 4歳 4歳 5歳 5歳 6歳 6歳 7歳 8歳 9歳10歳

    後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半 後触数

 0    2   1  1

 2  3  4  5  6  7  8

5

1   2   3   2    2   2 1       1

   1          1

6  2  2  1

4

1

3

1

健常児  0.5  0  0  1  1  2  2  1,5 2  3.5 5

中央値

3)評価点と探索状態の関係

 評価点と前触数の関係をTable8に示す。構成が崩れた評価点3以下の26名について前触数 をみると,半数の4以下であるものが23名みられる。これらの者は構成過程における探索の生 起が悪く,位置関係の把握を行わずに酉己置した部分が多かったことが構成が崩れた原因になっ ていたと考えられる。しかし,これ以外の3名の前触数は5であり,健常児の結果(Table3,

Table4参照)から,少なくとも評価点3の構成を行うために必要な数の探索は生起している。

しかも,前適数をみると4あるいは5であり,それ以上の評価点の構成も可能であるといえる。

(9)

したがって,この3名の場合には,探索が生起しなかった部分で大きく崩れたり,探索した部 位と部分を配置した位置との相互の方向や距離の把握が不十分であったことなどが考えられ る。また3名の後触数は2以下であり,崩れた配置を修正する機会も得られたかったといえる。

Table8知能障害児の構成課題における評価点と     前触数の関係(該当名数を示す)

前触数  0  1  2  3  4  5  6  7  8

評価点  1  2

 3         1  4

 5     1   2  6

2       3

2   2

1   2

4   1

4.考    察

1.健常児の構成行為の発達

 本研究では,8個の部分を配置することによって人の顔を構成する課題が,視覚系が関参し うる条件下と視覚系が関与しえたい条件下で実施された。その結果,5歳前半以前の子どもの 中には,視覚系が関与すればまとまりのある構成が可能であるにもかかわらず,目隠しにより 視覚系が制限されると構成が崩れる者が多数観察された。この原因は,後者の条件では触探索 により構成要素間の位置関係を把握したければならないが,その探索が構成過程において十分 行われなかったためである。rHHeBcRa兜(1948〕,Piaget&Inhelder(1967),BeHrep,3H削eHK0,

HPy3cK冊11967)の触知覚による形態把握の発達的研究によれば,対象を知覚する時の触探索が 能動的で組織的なものにたるのはほぼ6歳前後であるといわれているが,構成行為の配置に先 だって行われる触探索もほぼ同時期に獲得されるといえる。しかしながら,完全な構成に必要 である配置後の確認や修正のための触探索はそれよりさらに4年以上も獲得が遅れる。これは,

配置に先立つ探索では,部分の具体的た名称が告げられた直後に探索が行われたため,実験者

が告げるその言葉が探索する部位を決定する際の契機となりえたが,.配置後の探索では,どこ

を探索するかは全く被験者本人に委ねられたためだと考えられる。すなわち,このことは,部

位問の位置関係を把握して配置位置を決定するための配置に先行する探索に比べて,自分が既

に行った行為の結果を確認し,必要があればそれを修正するための探索はより高次なプラ1/に

基づく探索であることを示している。Bindra(1976)は,目的指向的な行為のプランを組み立

てるには,最終的な目標に到達するための下位目標に対応したプランをだセることが必要であ

ると述べている。特に構成行為のように各構成要素を配置するたびに結果の確認が必要となる

行為では,そのようた個々の要素に対応した下位プランにおいて,配置前の探索とともに確認

のための探索も同時にプランニングされたければならないといえる。

(10)

178 大 庭 重 治

2.知能障害児の構成行為の発達

 知能障害児の中にはMAが5歳後半以上であってもまとまりのある構成を行えない者が

47%みられた。その原因の多くは健常児と同様に配置前の探索が十分行われたいためであるが,

中には比較的多くの配置で探索しているにもかかわらず構成が崩れる者もみられた。また,配 置前の探索が十分に行われなかった場合,配置後に確認のための探索が生起することは極めて 稀であった。そのため,構成が進むにつれて崩れかたが徐々に大きくたっていった。すなわち,

知能障害児の中には,全般的た知的発達に比べて,配置前,配置後ともに探索を保証するプラ ンニングの獲得に遅れのある者が多くみられる。

 Luria&Tsvetkova(1964)は,脳損傷者の中に,必要とされる動作の順序を厳密に指定す ることが構成行為の改善に有効なタイプと,構成の過程で構成材料の基本的た空間関係を逐次 確認させることが有効なタイプを見いだした。本研究の場合も,一部に空間関係の把握に問題 があると推定される者もみられたが,構成が崩れた者の多くは探索手段の選択や動作の順序の 決定を含む探索のプランニングの獲得が遅れている者であると考えられる。したがって,特に 知能障害児の場合には,いかなる課題条件を設定することによってこのようたプランの獲得を 促すことができるのかを検討していくことが必要である。

 また,Mi11er,Galanter,&Pribram(1960)は,行為のプランは行為の目標であるイメージ に基づいて設定されると述べ,またNeisser(1976)も知覚的な探索はイメージによって方向づ けられると述べている。本研究の被験者は視覚系が関与しうる条件下であれば適切に対象を構 成できていたことから,構成の目標となる顔の全体的なイメージは既に獲得していたと判断さ れる。しかし,視覚系が制限された条件下では,配置前の探索数が少なく,また配置後の確認 の探索も配置前の探索を補足するほどには生起しなかったため,構成過程中の構成状態に関す るイメージの形成は不十分なものであったと考えられる。このような状況が,最終的た構成目 標である顔のイメージと構成中の結果との比較を不可能にし,続いて行われる配置の下位プラ ンの設定を妨げていたと考えられる。皿0M0B(1985〕,ハ0M0B,Be切HeBa H Hocy』eHK0(1986)は活動を 調節するイメージを多水準的にとらえることを提唱しているが,知能障害児において構成行為 の獲得を促す方法を考えていく場合には,構成行為におけるイメージの役割を少なくともこの

ような2つの側面からとらえることが必要であろう。

引 用 文 献

Bmdra,D 1976富田達彦(訳) 1980知的行動の脳モデル 誠信書房

Bortner,M.,&Birch,H.G.1960Perceptualandperceptual−motordissociationinbrain   −damaged patients.乃e∫omm〃げMemo㈱ma Mem〃D応eose,130,49−53,

Bortner,M.,&Birch,H.G.1962Perceptual and perceptua1−motor dissociation in   cerebral pa1sied chi1dren.不比e∫omγmαJρ戸Meγ〃。郷αma Mem切 jワゐeα∫e,134,103−108.

「州eBc肥日,T.O.1948Pa3BHTHe且BH淋eH械pyw□pH0cH3aHHH y且eTe尚且。I」」K0』1.H0r0B03PacTa.

 〃3BecT棚λπHPCφC只14,197−215.

小松秀茂 1985積木構成活動の発達とその障害 一知能障害児の一般的及び個別的特質につ

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謝    辞

本研究の実施にあたり,保育園,小学校,養護学校の先生方,園児,児童,生徒の皆さんか

ら多大だこ協力を頂きました.記して感謝の意を表します.

(12)

180

The Deve1opment of the Searching Function in

Constructiona1Activity in Menta11y Retarded

      and Norma1Chi1dren

Shigeji OHBA

ABSTRACT

   This study was undertaken to 丘nd out educationa1guideHnes to support the development of c(〕nstructiona1activity in menta11y retarded children.Searching functions in constructional activity were examined both before and after arrangements of constructional e1ements,respectively.One hundred forty normal children{form CA3:4 to CA1011),10normal adults and48mentally retarded children(from MA3:8to MA 1019)were given the task to construct a human face by arranging eight parts of a face only by means of tactual searches.The movements oftheir fingers were recorded by VTR and

alla1ized.

   The following facts were found from analyses of constructional activities.ωForty

・seven percent children in mentally retarded whose MAs were above the丘rst half of ive years old fai1ed to construct a face by tactua1searches.But normal children of this age collId construct a comparative1y well−arranged face.Consequently,the acquisition of constructional activities in these mentally retarded children was behind compared with their general intellectua1deve1opment.(2口n the chi1dren who failed in construction two types(〕f performances were observed.In one type searches to get positional relationships appeared only in a few arrangements,and in another type it seemed that the grasp of spatia1relationship between searched position and arranged position was inadequate一(3〕

Simi1ar to norma1children the acquisition of searches after arrangements was−ater than

the acquisition of searches before arrangements.These resuIts suggested that to support

the development of constructional activity in menta11y retarded children we must take into

account the searches both before and after arrangements.

参照

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