■弘前大学哲学会 (論文)
ロックの政治論 一抵抗権について‑
菊 地 慧
序章 市民革命 とは
我々人間は、誰 もが生まれなが らにして どこかの政治社会 に属 している。そ して歴史的 に見て、多少の例外はあるにせ よ、政治社会 とは階級社会であったため、被支配階級の人 民は支配階級である国家の統治者によって翻弄 されてきたO しか し、時 として歴史はその 階級を逆転 させ ることがある。それが革命である。革命 とい う言葉は元々、古代中国の儒 教思想の概念である 「易姓革命」に由来するものであるが、 ここでの意味は 「命が革ま り、
姓が易わる」すなわち、天命が改まって、君主の姓が変わるとい うことであ り、それは王 朝の交代を意味 し、被支配階級が支配階級 を打ち倒す とい うことではなかった。被支配階 級が支配階級を倒 して、国家権力を握 るとい う階級の逆転 とい う意味の革命つま り
r e vol u‑
t i on
は、1 7
世紀のイギ リスに始 まった市民革命であった。 この事実上の弱者 としての下層 階級が強者 としての上層階級 を打 ち倒す とい う、そのパワフルでダイナ ミックな発想は筆 者の心を捉 えて離 さないものである。そ して市民革命は、人民が圧政 をしく統治者 に対 し て抵抗 し、それを倒 した後、人民のための政府をつ くった出来事 として、民主的な意義を もって語 られてきた。だが、規範的に考えれば、本来 このような行為は、被支配階級 によ る支配階級 に対す る反逆 として許 されない行為 とされるはずである。では何故、市民革命 は正当化されるのか、その思想的源泉 について考察 してゆきたい。本論ではその市民革命 の代表的思想家 としてのジ ョン ・ロックJ ohnLoc ke
の政治論 について、抵抗権を中心 とし て論 じてゆきたい。第1章 ロックとホ ップズの政治論の違い
ロックは自身の政治論 において社会契約思想を用いた。 しか し、社会契約思想を用いて 政治論を展開 した思想家は他にもいる。その中でも、 ロックの一時代前の思想家である ト マス ・ホ ップズ
Tho masHobbe s
は 『リヴァイアサンLe vi at ha n』
において、社会契約思想 を用いた政治論 を展開 した。 もっ ともロックは 『市民政府論TwoTr e at i s e sofGo ve m‑
me nt
』においてホ ップズについて直接言及 してはいないが、その中にはホ ップズの政治論 を意識 した と思われる内容がい くつ もある。そのため、 ロックがホ ップズの影響 を受けた ことは否定できないだろ う。だが、両者の政治論は共に社会契約思想が用い られているが、社会契約が結ばれた理由、政治社会 における権力に対する見解な どの点で大きく異なって いる。そ こでまず初めに、両者の政治論における社会契約思想の違いを述べてゆ くことに
しよう。
‑ 4 5‑
両者は共に自身の政治論を、人々が社会契約を結んで政治社会 (国家)を結成す る前の 状態である自然状態か ら始めた。ホ ップズの想定 した 自然状態は、すべての人が 自身の生 命を維持するために、欲す るままに自分の力を行使で きる自由 としての 自然権 を有 してい る状態である。 自然状態 において人々は理性を持 っているのだが、その理性 は自己保存 と い う目的 にのみ働 くものであったため、すべての人がお互いの自然権 を主張 して相互に争
う戦争状態、いわ ゆ る 「万 人の万人 に村す る闘争Be
l l um Omni um Cont r aOmnes,War ofEve r y Managai nstEve r yMan」が行われ る ことになるO 一方、 ロックが想定 した 自
然状態はすべての人が理性を持ち、その理性の命令 としての 自然法の範囲内で、 自分の信 じるところに従 って、 自然権 (生命 ・健康 ・自由 ・財産に対す る所有権)を行使す ること ができ、誰 も他者の支配や命令 に従 う必要がない、 自由かつ平和な状態である。ホ ップズ の 自然状態では、すべての人は自らの自然権 を他人 によって侵害 され る危険 に常に晒 され ていた。ゆえに、人 々はその危険 によってお互いに破滅 して しま うのではないか とい う恐 怖か ら、理性が 「平和を求め よ」 と命ずる自然法の存在を認識 し、その自然法 によって、人々はお互いが生き残れ るよ うに、 自然権 を放棄する社会契約 を結ぶ。では何故、 ロック の 自然状態は平和状態であるにも関わ らず、社会契約 を結 ばなければな らないのか とい う 疑問が生まれ るQ この疑問に対 して ロックは こう答 える。確かに自然状態は自由かつ平和 な状態であるが、そ こにはすべての人の 自然権 を確実な ものにす るために必要なものがあ ま りにも欠けているので、人々は社会契約 を結 んで、それを実現するのだ、 と。 この部分 については第
4
章で詳述す ることにす る。 この ように両者は社会契約 によって人々を代表 する統治者 を置 くわけだが、 この社会契約 における統治者‑の権力の譲渡 において両者 に は大きな違いがある。ホ ップズの場合において、統治者 に与えられ る権 力は絶対主権であ り、人々は一度、統治者 に権 力を与えて しまえば、それ に対 して絶対的 に服従 しなければ な らず、統治者は 自ら法 を制定 し、自身は法を超越す ることができる とした。 しか し、ロッ クは権力の譲渡 について 「信託」 とい う概念を用いてホ ップズとは全 く異なる理論 を展開 す る。 ロックは統治者が行使す る権力は、すべての人が持つ 自然権の保全 を目的 として統 治者 に信託 された ものであるか ら、統治者が 自然権の保全 とい う目的 に反 して権力を行使 す る ときには、人々は統治者か ら権力を取 り上げることができる、 とい うのである。そ し て ロックの理論 における統治者か ら権力を取 り上げる権利 こそ抵抗権である。第2章 抵抗権 とは何か ?
ロックとホ ップズとの違いを踏 まえつつ、い よい よ本題 に入 ってい くことにしよ う。ま ず ロックにおける抵抗権 とは何か、簡単 に定義 してお くことにす る。『市民政府論』 によ ると、抵抗権 とは 「すべての人民が 自然権 として持つ生命 ・自由 ・財産な どの私的所有権 を統治者が侵害 した ときに、人民が統治者か ら統治の権限を取 り上げ、それを再び人民の 手 に取 り戻す ことができる権利」の ことである。 これは裏を返せば 「統治者は人民の福祉 の追求ではな く、私利私欲のために権 力を行使すると、人民か ら思わぬ しっぺ返 しを喰 ら
うことになるか ら、 くれ ぐれ も慎重 に行動 しな さい。」 とい う、統治者 に対す る忠告で も
ある。つま り、抵抗権は権力者に対す る善政の誠め、自制の要望の手段であるとも云 える 1。 また これは人民が統治者か ら権 力を奪い、政府を破壊す る行為を正 当化す る権利である。
この よ うに権力を持たない者が権 力を持つ者か ら権 力を奪取 して しま う行為は一般的 に
「革命」 と云 うので、 ロックの抵抗権は しば しば革命権 と呼ばれ る。 しか し筆者は、 ロッ クの抵抗権 を革命権 と同一の もの とす る見解 には否定的である。何散な らロックが想定 し た抵抗権の 「抵抗」の意味 と一般的な 「革命」の意味 との間にはかな りの違いがあるか ら である。では次章では、 ロックにおける抵抗権 と革命権 とは どこが違 うのか述べ ることに しよう0
第
3
章 抵抗権 と革命権 との違 い抵抗権 と革命権 とは何が違 うのか。「保守」と 「革新」をキーワー ドとして考 えてみ よ うD 一般的 に抵抗権 とは、本来あるべ きもの として想定 されている伝統的秩序を (反動的 に) 変革 しよ うとす る権力に対 して、権利 ・自由を伝統的な意味 において擁護 しようとす る保 守的性格のものであるのに対 して、革命権 とはまさにその伝統的秩序 を変革 しよ うとす る 革新的性格の ものである2。 ロックの立場 はまさに前者の方であった。 ロックにとっては 抵抗権 を行使す る人民の行為は、あ くまで秩序の保護 ・修復であ り、人民の権利 を侵害 し ている統治者の行為 こそが秩序の破壊 ・変革を目論む革命であ り、 もしそれが権利 として 認め られているのな らば (そんな ことはあ りえないわ けだが)、それ を こそ革命権 と云 う ことができるのである。それでは ロックの抵抗権は何 を根拠 に正 当化 され るのか、次章で 述べ ることにしよ う。
第
4
章 抵抗権は何 を根拠に正当化 されるのか ?ロックにおける抵抗権は何 を根拠 に正 当化 されるのか。そのためには彼が想定 した権力 の源泉は何であるかか ら始めなければな らないO ロックは 『市民政府論』の中で、政治権 力の起源 を求めるためには、「すべての人間が天然 自然 には どうい う状態 に置かれているの かを考察 しなけれ ばな らない3」 とし、その状態 を 自然状態 と呼んだ。彼 は、 自然状態で は 「自然法の範囲内で、 自らの適 当と信ず るところにしたがって、 自分の行動 を規律 し、
その財産 と一身 とを処置す ることができ、他人の許 可も、他人の意志に依存す ることもい らないのである.それはまた、平等の状態で もあるOそ こでは、一切の権力 と権限 とは相 互的であ り、何人も他人 よ り以上のものはもたない4
。
」と述べた。 ここで注意を要するの は、 自然状態 は自由かつ平等な状態だが、決 して 「放縦の状態5
」ではなかった とい うこ とである。 自然状態 において、 自然法がすべての人の行動 を制限するか らである。その内 容について、 ロックの記述 を引用 してみ ることにしよ う。 「この法たる理性 は、それ に聞 こうとしさえす るな らば、すべての人類 に、一切は平等かつ独立であるか ら、何 人も他人 の生命、健康、 自由または財産 を傷つ けるべ きではない、 とい うことを教 えるのである。人間はすべて、唯一人の全知全能なる創造主の作品であ り、すべて、唯一人の主なる神の 僕であって、その命 によ り、またその事業のため、 この世 に送 られた ものである。彼 らは
‑ 4 7‑
その送 り主な る神の所有物であ り、ただ神の欲す る限 りにおいてのみ、 (中略)生存 し得 るように作 られているのである。そ うして、同様の能力を賦与せ られているわれわれすべ ては、皆同 じ自然 を共有財産 として持 っている。そ こで は、 (中略)互い に他の者 に使用
され るために作 られているかのよ うに、相互に他を破壊す ることがで きるといった よ うな、
そ うい う上下服従 の関係 は、考 え られないのである。各人は自分 自身を維持すべ きであ り、
また 自己の持物 を勝手 に放棄すべ きではない。 同 じ理 由か らして、彼 は 自分 自身の存続が 危 うくされないかぎ りで きるだけ他の人間をも維持すべ きであ り、そ うして、侵害者 に報 復す る場合 を除いては、他人の生命ない し生命の維持 に役立つ もの、他人の 自由、健康、
肢体、もしくは財貨 を奪い もしくは傷つ けてはな らないのである6
C
」 この よ うに、人間は 理性 の命ず る自然法 によって拘束 されてお り、他者の権利 を侵害せず、 平和 と全人類の安 全を願 うよ う定め られている。 もし自然法を犯す者がいれば、その者 を自然法 にもとづい て処 罰す る権力を各 自が持 ってい るのであ る7。逆 に云えば、 自然法 の内容 または理性の 命ず るところは、正 当防衛または自然法違反 に対す る制裁の場合 を除いて、何人も他者の 生命、健康、 自由そ して所有物 を侵害 してはな らない とい うことで もある。加 えて、 ロックの 自然状態 においては、各人は 自らの生命 に対す る権利を持つのみな ら ず、 自然の共有財産 の中か ら私有財産 を獲得す る権利 さえ持つ とした。彼は、共有財産か ら私 有財産 を区別す るものは各人の 「労働」であ るとした。その根拠 は、労働は労働 をす る人固有の所有物なので、その労働が加 えられた物質 は間違いな く彼の所有物 になるか ら とい うものである8。 もっ とも、 この よ うな所有権概念 は、共有財産が労働を加 える者の 前 に均等 に与 えられている、つ ま り、ゼ ロサム構造 をな していない とい う前提の下でのみ 成立す るものであるC しか し、 これ については本論 の主題か らはずれ るので これ以上は触 れない ことにする。
この 自然法 によって、 自然状態は 自由かつ平和 な状態であった とすれ ば、何故人々はそ の 自然状態 における権利を放棄 してまで政治社会 を作 らな ければな らなかったのだろ うか。
この疑問に対 して ロックは次の よ うに答 える。まず 「自然状態 においてはなるほ ど彼はそ うい う権利をもっているけれ ども、 しかもその享受ははなはだ不確実であ り、絶 えず他 の 者の侵害 にさらされている。 この状態 においては、彼の所有権の享受は、はなはだ不安心 であ り,不安定である。それ故 に彼 はた とえ自由であって も恐れ と不断の危険 とに満ちて い る状態 を進 んで離れ よ うとす るので ある
9
。」 と云い、 「それ故 、人々が国家 として結合 し、政府の もとに服す る大 きなまた主たる目的は、その所有の維持 にある。このためには、自 然状態 にあっては、多 くの ことが欠 けているのであ る1 0 。
」と結論す る。つ ま り政府が存在 す るのは、すべての人間 に対 して生命 ・健康 ・自由 ・財産 に対す る所有権 を保障す るため なのであ る110 自然状態 において所有権 を維持す るために欠けてい るもの として ロックは3
つの欠点を挙 げている。第1
の点は、正邪の基準 として、人々の間 に起 こる紛争 を裁決 す る、確立 され、安定 した、共通の法がないことである1 2
。第2
の点は、確立 された法 に 従 って、権威 を以 ってその紛争 を判定す る、公平な裁判官が存在 しない ことであ る13。 第3
の点は、その裁判官の判決 に従 って、それ を執行す る権 力が存在 しない ことである14。こうした欠点を克服す るために、まず明確な各個人の同意 によって・共通の法 と共通権力 を形成す るために共同社会が構成 され る150 各人が行な うこの 仁一つの共同体 に加入 し結 合す る
」
「他人 との合意」が ロックの考 える社会契約なのである1 6
。社会契約 によって 自然 状態における各個人は政治社会 に属す る人民 となった。その際彼 らは 自らが持 っていた2 つの権力を放棄 し、それを共同社会 に委ねる ことになる。1つは 自然法の範囲内で 自分お よび他者のために適 当と考 えるあ らゆることを行 う権 力17・も う1つ はその自然法 に違反 した人間を個人 として処 罰す る権力である180 ロックは人々が代表者 に権 力を委任す るこ とを 「信託」 とい う言葉で表現 したo信託 によってまず立法権力が立法機関に委任 され、最高権力 (主権 を持つ 人民 に従属す る)を保持するもの とな り、さらに従属的権力 として 執行権が委任 されるが、それは権力分立原理 によって立法機関 とは異なる機関でなければ ならないo ここで注 目したいのが、 ロックの権力分 立原理は、現在の民主政治のよ うな三 権分立ではな く二権分立だった とい うことである。 しか も執行権 は立法権 に従属す るもの とされた。それは ロックが所有を平穏安全 に維持す るための最善の手段 をその社会で立て られた法であ る とし、そのため 立法権 を国家の最高権であ る と考 えていた ことに由来す る190 これ らの権力が信託 に違反す る明白な権力乱用 の場合 には、その権力 (立法権 と執 行権)は人民 に復帰す ることになるo立法権力の場合、人民か ら安ん じて寄せ られた信頼 に反す る行動を とっていることが人民の 目に見出 された ときは、人民の中に、立法権 を解 任ない し更迭せ しめる最高権が残 るO執行権力の場合、 自己と他の人々 と協 力して作った ところの法の最高執行者 として、公共の意志を放棄 し、 自分一個の私的な意志によって行 動するとき、 自らの地位 を失い・権力もなければ、意志 もない一個の私人にす ぎぬもの と な り、服従 を要求す る何の権利 もな くなって しま う20。人民は、以上の よ うな権力乱用 の 場合、各機関 に対 して権力を取戻すため抵抗権 を行使す る ことがで きる21。人民が代表者 に信託 している権力の源泉は、人々が 自然状態 において保持 していた他な らぬ自然権の擁 護です0人民が信託 に違反 した代表者か ら権力を取 り戻す ことができる権利 を持つのは、
元々その権力を持 っているのが人民だか らである。現代民主政治 に生きる人民主権の理念、
これ こそ抵抗権が正当化 される根拠なのである。
終章 ロックの政治論の後世への影響 と現代的意義
ロックが 『市民政府論 』を書いた理 由は、 当時のイギ リスで起 きた名誉革命 を正当化す るためであった と云われている。だが、その中で主張 された彼の社会契約思想 に基づ く政 治論は、後代に多 くの思想的影響をもた らした。 中で もア メリカの独立革命 はま さにロッ クの社会契約思想を具現 化 した ものであ り、アメ リカ住民 を革命‑ と駆 り立てた とされ る トーマス ・ペイ ン
ThomasPai ne ( 1 7 3 7‑1 8 0 9)
の 『コモ ン ・セ ンスComm。nSe ns e
』 に はロックの影響 を色濃 く受けた と思われる主張がな されているQペインは、当時のイギ リ ス体制 を徹底的 に批判 し、それは三つの要素が混 ざり合った ものであるとす る。第一 に国 王 と君主専制政治の遺物、第二 に上院 とい う貴族専制政治の遺物、第 三に下院 とい う新 し い共和政治の要素である。最初の二つ は世襲であるか ら、人民 とは無関係であ り、憲法的‑ 49‑
な意味 においては国の 自由に何 の貢献 もしていない と述べ22、 ロックの人民主権理論 に基 づ いてアメ リカの独立 を主張 している。そ して トーマス ・ジェファー ソン
ThomasJ e f f e r ‑ s on ( 1743 ‑1 8 2 6 )
らが起草 した とされ る 『独立宣言De c l ar at i onofl nde pe nde nc e
』 には自然権 ・社会契約 ・人民 の同意 ・抵抗権 とい うロック政治論 の主要概念が うたわれているo また、 この独立宣言 か らお よそ
1 0
年後 にフ ランス革 命が起 こった。その とき公布 され た『フランス人権 宣言
De c l ar at i 。nd。 SDr oi t sdel ' Hommee tduCi t o ye n
』はアメ リカの独 立宣言お よび諸州の憲法 にお ける権利宣言 を典拠 としている。 アメ リカの独立宣言が ロッ クの社会契約思想 の影響 を受 けている以上、 このフランス人権宣言 もロックの思想の流れ を汲む もの と云 えよ う。以上の よ うに、 ロックの社会契約思想 に基づ く政治論 は時代 を越 え、国家 を越 え、多 く の思想 に影響 を与えた。彼の政治論の近代的意義 は次の三点である。
第一の点は、政治や統治の 目的、また人々が政府 を設 けた理 由は、人間の生命 ・自由 ・ 財産 の保障 にある ことを理論化 した点である。 これは、今 日の基本的人権思想の原理 を定 式化 した もの と云 えよ う230
第二の点は、政治 において、真の意味での 「法の支配
」( Rul eofLaw)
が実現 され るた めには、多数 の人々が政治 に参加できる議会政治 によらなけれ ばな らない ことを理論化 し た ことであるO これは今 日の民主的な政治制度の原理 (代議政治 ・権力分立主義) を定式 化 した もの と云 え よ う2 4 。
最後 に第三の点 として、本論の メインテーマである抵抗権 について指摘で きる。確か に 現代 において政府 に対す る力の抵抗 は存在 しない。 しか し、選挙制度 、 これは彼 の抵抗権 の理念である、 「現政 府が人民 の信託 に背いた行為 を した場合 に、人民が、 自らが よい と 信ず る ところに したがって、その主権 を代表者 に与 える」 ことを合法的 に制度化 した もの と云 えよ う。 こ うして、我々が生 きる現代の民主政治 にも、 ロックの政治論 は脈々 と受 け 継がれているのである。
1 山崎時彦 「ロックの政治権力論一抵抗権思想をめぐって
‑
」(以下山崎)( p. 23 6)
田中正司 ・平野秋編 『イギ リス思想研究叢書 ・ ジョン ・ロック研究』より( 1 98 0)
御茶の水書房2 山崎
( p p, 227‑228)
3 ロック著/鵜飼信成訳 『市民政府論』(以下ロック)
( 1 9 97 )
岩波書店 (四.p. 1 0)
4 ロック (四.p. 10)
5 ロック (六
. p.1 2)
6 ロック (六.pp. 1 2‑1 3)
7 山脇直司 『ヨーロッパ社会思想史
』 ( 2 00 4)
東京大学出版会( p. 84)
8 ジョン ・ダン著/加藤節訳 『ジョン ・ロック信仰 ・哲学 ・政治』(以下ダン)
( 1 987)
岩波書店 ( p. 6 4)
9
ロック (一二三.p. 1 27 )
1 0
ロック (一二臥p. 1 2 8)
11
ダ
ン( p
p.69‑70) 12ロ
ック (
一二四 . p. 1 28)
13ロ
ック (
一二五 . p. 1 28)
14ロ
ック (
一二六. p. 1 28)
15山
崎 (p. 2 1 0 )
16
菅
野 (p.
323)17
ロ
ック (
一二八 . p. 1 30)
18ロ
ック (
一二八 . p. 1 30)
19ロ
ック (
一三四. p. 1 35)
20山
崎 (p.219)21
山
崎 (p.2 1 0 )
22
ト
ーマス ・ペイ ン著/′
ト松春
雄 訳 『コモン ・セ
ンス 他三篇』(20 0 5)岩波書店 (p.22)
23田
中浩
・浜林正夫 ・平
井俊彦
・鎌井敏和共 著 『
人と思想13 ロック』(
p.42)24 『人と思想13
ロック』
(pp .
42‑ 43)・参 考 文献
1 ロック著/鵜飼信成訳 『市民政府論
』
(1997)岩波書店2 田中正司 ・平野秋編 『イギ リス思想研究叢書 ・ ジ ョン ・ロック研究
』
(1980) 御茶 の水書房3 菅野喜 八郎 『国権 の限界問題
』
(1978)木鐸社4 山脇直司 『ヨー ロッパ社会思想史』 (2004)東京大学出版会
5 ジ ョン ・ダン著/加藤節訳 『ジ ョン ・ロック信仰 ・哲学 ・政治
』
(1987)岩波書店 6 藤原保信 ・白石正樹 ・渋谷浩編 『政治思想史講義 [新装版] 』
(1998)早稲 田大学出版部 7 城塚登 『近代社会思想史』 (1981)東京大学出版会8 荒川幾男編
『
(名著 入門 ライブ ラ リー)社会思 想の名著12選』
(1976)学陽書房 9 浜林正夫 『イギ リス思想叢書 ・ ロック』(1996)研究者出版10 松下圭一 『岩波セ ミナーブ ックス22 ロック 「市民政府論 」 を読む
』
(1987) 岩波書店11 名古忠行 『イギ リス人の国家観 ・自由観』 (2005)丸善 ライブラ リー
(弘 前 大 学 大 学 院 人 文 社 会 科 学 研 究 科 修 了 )
‑ 51‑