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蒲池 祐紀 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 かまち ゆうき

蒲池 祐紀

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第

1862

学位授与の日付

令和

3

3

16

学位授与の要件

学位規則第

4

条第

1

項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

Radial T2 Mapping Magnetic Resonance Imaging Evaluation of Acetabular Cartilage for Hip Dysplasia

(放射状 T2 Mapping Magnetic Resonance Imaging を用いた寛 骨臼形成不全症における寛骨臼軟骨評価)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

長町 茂樹

(副 査) 福岡大学 教授

安元 佐和

福岡大学 講師

フェリル,ロリト

内 容 の 要 旨

【目的】

寛骨臼形成不全症は、寛骨臼被覆の狭さや関節不安定性により、関節軟骨への機械的ス トレスが増加し、軟骨の変性や摩耗を引き起こす。その結果、変形性股関節症へと進行す る。骨盤骨切り術などの関節温存手術は寛骨臼形成不全症患者における寛骨臼への力学を 修正し、変形性関節症への進行を遅らせる有用な治療法である。しかしながら、関節温存 手術術後の結果は術前の軟骨変性の状態に影響される。そのため、関節軟骨変性の早期発 見は寛骨臼形成不全患者にとって重要である。

Magnetic resonance imaging (MRI)は関節軟骨を評価する有用な検査方法である。従来 法のMRIは関節軟骨の形態変化を検出するには有用だが、形態変化のない軟骨変性での診 断能力は制限される。それに対して、T2 mappingは関節軟骨の形態変化が起こる前の軟骨 変性を評価できる質的MRI検査方法である。

T2 mappingを用いた寛骨臼形成不全症における軟骨の質的評価のいくつかの報告があ る。しかしながら、放射状T2 mapping MRIを用いて寛骨臼軟骨を全般的及び細分化し評価 した報告はない。

本研究の目的は、放射状T2 mapping MRIを用いて⑴症候性寛骨臼形成不全症における寛 骨臼辺縁部の軟骨変性部位と⑵寛骨臼形成不全症の重症度と軟骨変性の程度の関連性を 明らかにすることである。

【対象と方法】

2014 年 3 月から 2016 年 9 月に症候性寛骨臼形成不全症に対して放射状 T2 mapping MRI を行った 45 例 48 股を対象とした。

人口統計学的データとして、患者の性別、年齢、body mass index を調査した。

臨床評価項目は Harris hip score を調査した。

X 線学的評価項目として、単純 X 線前後像で変形性股関節症の重症度を表す Tönnis

(2)

grade を評価し、寛骨臼形成不全症の重症度を表す Lateral center-edge angle (LCEA)を 計測した。

MRI 検査は 3.0-T MRI を用いて行った。始めに three-plane localizer 画像を基に、寛 骨臼辺縁に沿った傍矢状断スライスを作成し、骨頭中心を基準に 30°毎に 7 つの放射状 断面を作成し、各放射状断面の T2 mapping の撮影を行った。

T2 mapping プリセット画像を構築し、関心領域の設定と T2 値の測定を行った。放射状 T2 mapping MRI で得られた 7 つの放射状断面を anterior、anterosuperior、 superoanterior、

superior、superoposterior、posterosuperior、posterior と定義した。寛骨臼軟骨は寛 骨臼縁と寛骨臼窩の間の領域と定義し、二等分線で分割した辺縁側を関心領域に設定し、

各放射状断面の関心領域の T2 値の計測を行った。全体 T2 値は7つの放射状断面の平均と して計算を行った。

統計学的手法として、Tukey’s honestly significant difference test を用いて各放 射状断面の T2 値の比較を行った。Pearson’s correlation coefficient を用いて LCEA と 各放射状断面の T2 値の相関を計算した。

【結果】

対象患者の性別は男性 3 股と女性 45 股、平均年齢は 33.9 ± 12.7 歳、平均 body mass index は 22.7 ± 3.9 kg/m

2

、平均 Harris hip score は 75.8 ± 9.3 点、平均 LCEA は 14.0

± 5.8°であった。Tönnis grade は grade 0 が 23 股と grade 1 が 25 股であった。

寛 骨 臼 辺 縁 部 の T2 値 は anterior と posterior に 比 べ 、 superoanterior か ら posterosuperior で高かった (P < 0.01)。

LCEA と全体 T2 値の間に中等度の相関関係を認めた (r = –0.425, P = 0.003)。また、

中等度の相関関係を LCEA と superoanterior (r = –0.419, P = 0.003)及び superior (r

= –0.438, P = 0.002)の T2 値の間にも認めた。

【結論】

本 研 究 で は 、 症 候 性 寛 骨 臼 形 成 不 全 症 に お け る 寛 骨 臼 辺 縁 軟 骨 の T2 値 は superoanterior から posterosuperior で高かった。更に、寛骨臼形成不全症の重症度は、

特に superoanteiror から superior において、軟骨変性の程度と相関すること示した。こ れらの結果は、LCEA が小さい寛骨臼形成不全症患者では、より進行した軟骨変性を有する 可能性を示唆しており、寛骨臼形成不全症患者に対する関節温存手術を推奨する根拠とな り得ると考える。

審査の結果の要旨

本論文は、寛骨臼形成不全症における寛骨臼軟骨の変性をT2 mapping magnetic resonance imaging(MRI)を用いて評価した研究である。

寛骨臼形成不全症は、本邦において変形性股関節症の原因の70%以上を占める。その狭

い股関節の関節面におけるコンタクトストレスの増大と関節の不安定性から、変形性股

関節症を進行させる。寛骨臼形成不全症の治療法には、関節温存手術として骨盤骨切り

術が選択されるが、術前の関節軟骨変性は術後成績に影響を与えるため、早期軟骨変性

(3)

の検出は重要である。この関節軟骨評価においてMRIが有用であるが、従来の撮像法では 形態変化を伴わない軟骨変性の検出は困難である。それに対して本研究に使用したT2 mapping法は軟骨変性の検出に優れた評価法である。また今回解析に用いた放射状撮影は 従来法に比べ、関節軟骨に対して垂直な平面が得られるため、正確かつ細分化した寛骨 臼軟骨評価が可能である。

本論文では、これまでは報告されていない、放射状T2 mapping MRIを用いた寛骨臼形 成不全症における寛骨臼軟骨の変性を評価した。寛骨臼形成不全症では、放射状T2 mapping MRIで得られた7つの放射状断面のうち、寛骨臼辺縁部のsuperoanterior、

superior、posterosuperiorに高いT2値を認めた。またsuperoanterior及びsuperiorのT2 値と寛骨臼形成不全症の重症度に相関関係を認めた。本結果から寛骨臼形成不全症では 寛骨臼辺縁部のsuperoanteriorからsuperiorに軟骨変性が起きていることが示唆され た。

本論文の斬新さ、重要性、研究方法の正確性、表現の明確さ、審査委員との質疑応答 は 以下の通りである。

1. 斬新さ

寛骨臼形成不全症の診療において早期軟骨変性の検出は重要であるが、放射状 T2 mapping MRI を用いて寛骨臼軟骨を評価した報告はなく、本研究が最初の報告である。

2. 重要性

本論文では、寛骨臼形成不全症において、寛骨臼辺縁部の superoanterior から superior に軟骨変性が起こっていること、また寛骨臼形成不全症の重症度と superoanterior から superior の軟骨変性の相関関係があることを明らかにした。この結果は、より重症な寛骨 臼形成不全患者に骨盤骨切り術を推奨する上で一助となる。

3. 研究方法の正確性

放射状 T2 mapping MRI における各放射状平面の T2 値測定の検者内における再現性は良 好で、正確な検討がなされていると考えられる。

4. 表現の明確さ

明確かつ簡潔な英文で表記されており論旨も的確である。専門的用語も適切に使用され ている。本論文は福岡大学医学紀要に受理されている。

(4)

5. 主な質疑応答

Q:T2 mapping 法の撮影条件で、TE が 8 つに設定されている理由は?

A:T2 mapping 法は multiple spin-echo にて撮影し、複数の条件の違う echo での信号 差により T2 値を測定する。今回は 8 つの違う echo にて撮影し、8 つの画像よりソフ トウェアでプリセット画像を作成し、T2 値の測定を行なった。

Q:今回の画像は 2D であるが 3D は出来ないのか?

A:本研究は過去に撮影した画像を用いた後ろ向き研究であり、画像処理が 2D で行われ ている。他の論文では 3D の画像を提示しているものもあり、ソフトウェアによっては 3D 画像も可能と考えられる。

Q:T2 値の測定は 3 回したとあるがどの様に行ったのか?

A:各患者の 8 つ放射状平面の ROI の設定及びに T2 値測定は 3 日に分け、3 回ずつ行っ た。

Q:検者内信頼性はどうだったのか?

A:各放射状平面によって違いはあるが、検者内相関係数(ICC)は 0.748 から 0.956 の範 囲であった。

Q:患者の年齢と T2 値の相関関係は検討しなかったのか?年齢による相関関係を示すこ とができればより良い論文になると思われる。

A:本研究では患者年齢と T2 値との相関関係については検討していない。今後の研究テ ーマとしたい。

Q:Limitation に無症候性寛骨臼形成不全患者との比較を行えなかったことと書いてい ますが、なぜ行えなかったのか?

A:本研究の対象は、すべて Curved periacetabular osteotomy(CPO)術前に放射状 T2 mapping MRI を施行した患者である。CPO の手術適応基準は、5 ヶ月以上の股関節痛が 続いていることであり、本研究の対象はすべて症候性寛骨臼形成不全となっており、

無症候性寛骨臼形成不全患者は存在せず、比較が行えなかった。

Q:対象は女性が多いが寛骨臼形成不全症は女性に多いのか?多いならば理由はなに か?

A:理由は明らかにされていないが、寛骨臼形成不全症は女性に多い疾患である。

Q:患者さんの罹病期間に関しては検討しなかったか?

A:寛骨臼形成不全症の患者の自然経過として、多くは若い頃より疼痛などの症状を認め

る時期と改善する時期を繰り返しながら、最終的に疼痛が持続する様になり、手術と

なる。そのため、罹病時期を定めるのは困難であり、罹病期間の検討は行えなかった。

(5)

Q:無症候性寛骨臼形成不全の患者さんを実際に検査することは可能か?

A:寛骨臼形成不全症患者の中には無症候性患者もおられる。実際の臨床現場でも骨盤や 腰椎 X 線を撮影した際に股関節が一部映るため、症状はないが寛骨臼形成不全症を有 する患者を診ることがある。今回は無症候性寛骨臼不全患者に放射状 T2 mapping MRI の撮影に協力してもらっていないが、協力が得られれば可能である。

Q:股関節の軟骨は薄いため難しいとは思われる。今回 ROI として設定した軟骨内での T2 値の違いは認めたか?

A:過去の論文では寛骨臼軟骨を浅層と深層に分けて検討し、変形性股関節症が進行した 症例では浅層の T2 値が高かったと報告した論文がある。本研究では軟骨の厚みや画 像の解像度の問題から分けて検討することは出来なかった。

Q:軟骨の摩耗が進んでいる進行した変形性股関節症では T2 値はどうか?

A:本研究は早期軟骨変性の評価を目的としているため、対象から Tönnis grade 2 以上 の進行した変形性股関節症は除外し、進行した変形性股関節症の T2 値測定は行なわ なかった。T2 mapping 法の様に軟骨変性の評価方法として、軟骨内の CAG を捉える遅 延相ガドリニウム造影 MRI 検査(dGEMRIC)がある。dGEMRIC を用いた過去の報告では、

変形性股関節症が進行する程 T1Gd 値は低下したとの報告があり、進行した変形性股 関節症では T2 値が更に上昇する可能性がある。

Q:過去の報告で posterosuperior の T2 値は正常股関節でも高かったため、今回の研究 の posterosuperior の高い T2 値はもともと高い T2 値が原因であると述べている。

Posterosuperior の数値は過去の報告と比べてどうか?

A:過去の報告では本研究の posterosuperior に対応する部位の T2 値は平均 50.1 ms で あった。本研究の posterosuperior の T2 値は平均 48.2 ms であり大きな差は無かっ た。

Q:過去の関節鏡の論文で後方には軟骨病変が少なく、前方に軟骨病変が多かったと述べ てあるが、関節鏡では後方がよく見えないため軟骨病変が少なかった可能性はない か?

A:股関節鏡は前方ポータルよりカメラを挿入するため、後方に比べ前方がより観察し易 いが、斜視鏡を用いるため十分に後方も観察が可能である。股関節鏡の研究では、後 方が関節できないことにより軟骨病変が少なかったということはないと考える。

Q:大腿骨頭の軟骨の評価は行わなかったか?

A:大腿骨頭の放射状平面は股関節の肢位に影響を受ける。MRI 撮影は可能な限り股関節 中間位にて行った。今回の対象はすべて痛みを伴う様な症候性寛骨臼形成不全であり、

股関節の内旋や伸展が出来なかった患者が含まれている可能性がある。大腿骨頭に関

しては症例毎に同一部位を評価出来ない可能性を考慮し、検討は行なっていない。

(6)

Q:T2 値と CPO 術後の予後の関連性はどうだったのか?

A: CPO 術後の予後の検討は行なわなかった。今後の検討課題としたい。

Q:T2 mapping 法を用いて、無症候性寛骨臼形成不全患者の軟骨変性を早期に発見し、早 期に治療介入を行うことで軟骨変性の進行を防ぐことが出来れば、患者さんに非常に 有益であるが、今後はどの様な臨床的活用を考えているのか?

A:T2 値自体は軟骨変性が進行していると判断する基準値が明らかになっておらず、地 理的な数値のばらつきも認めるため、現時点では T2 値の結果のみで軟骨変性が進行 していると判断は困難である。今後の研究で軟骨変性の基準値が明らかにすることが 出来れば、手術介入時期の判断の一つの指標となると考えられる。

Q:寛骨臼形成不全症は片側性が多い疾患なのか?

A:両側性に認めることが多い。

Q:対側の結果を用いて比較はできなかったのか?

A:対側の正常股関節や無症候性寛骨臼形成不全を用いて比較を試みたが対側がすでに CPO を施行されている症例や症候性寛骨臼形成不全の症例が大部分であり、比較は行 えなかった。

Q:本研究では T2 値は一時点での評価となっている。自然経過として経時的に T2 値はど の様に変化していくのか?

A:今回は一時点での評価のみで、経時的な T2 値の変化の検討はしていない。また、寛 骨臼形成不全の自然経過の中で経時的な T2 値の変化を報告した論文はない。今後検 討する上で参考としたい。

Q:寛骨臼が狭い患者では ROI の測定範囲は狭かったのか?

A:ROI の測定面積の検討は行なっていないが、LCEA が小さい様な重度の寛骨臼形成不全 症の患者では ROI の測定面積は小さくなると考える。

Q:手術介入時期を決定する T2 値の絶対値が分かれば望ましいが、困難ならば、手術介 入時期と判断する T2 値の分布のパターン等が分かれば臨床的意義が高いと思われる。

A:今後検討する上での参考とさせて頂きたい。

本論文は、内容の斬新さ、重要性、研究方法の正確性、表現の明確さ、及び質疑応答の

結果を踏まえ、審査員で討議の結果、学位論文に値すると評価された。

参照

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