• 検索結果がありません。

ナンタをイメージした韓国音楽の指導

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ナンタをイメージした韓国音楽の指導"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

ナンタをイメージした韓国音楽の指導

著者 川合 利幸

雑誌名 教育実践開発研究センター研究紀要

巻 21

ページ 155‑158

発行年 2012‑03‑31

その他のタイトル Teaching plan of Imaging NANTA URL http://hdl.handle.net/10105/8437

(2)

奈良教育大学 教育実践開発研究センター研究紀要 第21号 抜刷 2012年 3 月

ナンタをイメージした韓国音楽の指導

川合 利幸

(奈良教育大学附属中学校)

Teaching plan of Imaging NANTA

(3)

₁.スクールナンタ

今回の発表はESDの理念による音楽科の取り組み として、韓国音楽の教材化を新しい観点で試行してみ た。韓国の伝統音楽の指導において、指導後の課題と してよく問題提起されるひとつに、その指導の結果が どのように他の取り組みや、教材とのつながりを持た せて、また、どのようにそれらの指導が持続的ESD を理念として教材化しようと思えばまずこの単発的に 終わる指導であってはならないということである。そ のような事を配慮して韓国音楽の指導を試みた。

具体的には民族音楽の範囲を少し広めてワールド ミュージック(世界音楽)の視点に立ち、継続性、持 続性のある教材をさがしてみた。その結果リズムを取 り上げて教材化することにした。リズム教材は単発的 な投げ込み的な指導に終わらないで、その後の多くの 音楽活動の場面で持続的に教材を学んだ経験が生かさ れるからである。また、あまり日常の音楽活動や生活 からかけ離れたものを取り扱うのもESDの理念から

遠ざかるのではないかと考えた。その結果、以前に何 度か取り扱った韓国の「サムルノリ」を取り上げるこ とにした(注1)。しかし従来の単なる民族音楽を取 り入れた指導ではESDにならないので、「サムルノリ」

に物語性を持たせて、台所で使うアイティムをリズム 楽器にしたノンバーバル パフォーマンス「ナンタ」

を参考にした方法を考え「スクールナンタ」と名前を 付け教材化して試行してみた(注2)。これがタイト ルにあるスクールナンタである。

₂.スクール・ナンタについて

ここ数年韓国でヒットしているノンバーバル・パ フォーマンスがある。ナンタ(乱打)と名づけられた このパフォーマンスは、キッチンで使用されるものを、

リズム楽器として使われる。簡単なストーリーがあり、

そのストー リーにあわせて、キッチン楽器によるリ ズムが演奏される。このリズムは韓国の農楽の一つで あるサムルノリである。このサムルノリは四半世紀近

ナンタをイメージした韓国音楽の指導

川合 利幸

(奈良教育大学附属中学校)

Teaching plan of Imaging NANTA

Toshiyuki Kawai

(Junior High School attached to Nara University of Education)

要旨:本発表ではESDの理念にもとづいて、ワールドミュージックの視点に立った民族音楽の指導を試みてみた。

韓国の音楽に興味を持たせ、持続可能な指導をめざす取り組みを考えた。その結果、現在韓国でとても人気を博して いる「ナンタ」を題材として取り上げた。「ナンタ(乱打)」は韓国の伝統音楽の一つである「サムルノリ」のリズム を変化させながら、6時までに結婚式の料理を作るというノンヴァーヴァル、パフォーマンスである。この「ナンタ」

をヒントにして、「ナンタをイメージした韓国音楽の指導」を考え「スクール・ナンタ」と名付けた。具体的には、

ナイフ以外のキッチン道具を使い、リズム変奏をつくらせた。次に何らかの簡単な物語を考えさせ、物語に合うよう にリズム変奏を試みるという内容である。これらの過程の中で、韓国の音楽に興味を持たせ、また持続的に韓国音楽 への関心を高めさせることを第一に考え指導した。韓国の農楽で使用される打楽器ではなく、簡単に揃えられる台所 用品を使用した。このことはいつでも揃えられる物を使うことにより、持続可能な取り組みを目指したからである。

オリジナル楽器を使えば韓国の民族音楽の指導としては理想的ではあるが、ESDの理念に沿い今回中学生を対象に スクール・ナンタの指導を試行した。

キーワード:サムルノリ(SAMURUNORI)、ノンヴァーバァル(Non-Verbal)、ナンタ(NANTA)

(4)

く前、金徳寿氏により世界的に紹介され、その後多く の国々で多く取上げられるようになり、音楽教育の分 野でも様々な方法で教材として取上げられることも見 受けられるようになっている。今回の試行は学校での リズム指導の教材として、ナンタ(乱打)を取上げて みた。ナンタのリズムはサムルノリそのものである。

過去には西洋音楽で使われるリズム楽器を使用した実 践や、オリジナル楽器であるケンガリ、チン、プク、

チャンゴを子どもたちに持たせて簡単なサムルノリを 行ったような事例も紹介されたこともある。しかし今 回は ESD という視点で韓国のサムルノリを音楽の教 材化を考えてみた。

本校では昨年からESDにもとづく学校づくりの ヴィジョンを考えて、日々の教育活動を行っている。

音楽においてもこの ESD を考えながらすすめている。

このような経過の中で今までにあまり取り組まれたこ とがなくしかもESDの理念にもとづいて、持続的に指 導できる内容を考えた一つの例として今回取上げたの がスクール・ナンタである。普段使いなじんでいる打 楽器を使用したサムルノリは面白くないし、かといっ てオリジナル楽器を使えばアジアの民族音楽の指導と しては理想的であるが、ESD を考え持続可能な?と いえば疑問が残る。このようなことを考え、今回ス クー・ナルンタとして生徒たちには自分の家の台所で 使うもので、何かルズム楽器になるようなものを持っ てこさせて、サムルノリの基本リズムをもとに、バリ エイションをさせた。またナンタには簡単な物語と簡 単なダンスが必要となってくる。グループで何らかの ストーリーを考えさせた。そしてそのストーリーに マッチするような振り付けも考えさせた。しかし、もっ とも大切なことは楽器の選び方、使い方である。まず サムルノリの基本リズムを何回も繰り返してマスター させて楽器の使いかたを考えさせ幾度となく試行させ る中でリズムを決めさせる(注3)。そして何種類か のキッチン道具ならぬ楽器の組み合わせを決めさせ て、リスムバリエイションの練習にうつる。基本的に は、伝統的なサムルノリのリズムをもとに考えさせる。

具体的にはどの楽器でチンのような役割をさせ、何 を使ってプク(福)に見立てるか。またチャンゴに最 も近いような表現にはキッチン用具の何を使えばいい のか?などである。

このようにあえてナンタ風にキッチン道具を使うの かは、さまざまな理由があるが、最大の理由は先ほど ふれたようにESDである。比較的簡単にリズム楽器 に代用できること、取り組む生徒たちが楽しく意欲的 に参加できることが持続の可能性を飛躍的に高めると 考えられる。

もうひとつ生徒たちの意欲が高い理由の一つとして 韓国音楽への高い関心が考えられる。ここ数年音楽だ けでなく多くの韓国文化が紹介され、年齢を問わず多

くの人たちに支持されている。1992年韓国ソウル で ISME(国際音楽教育シンポジューム)の大会が開 催されたが、当時と比べると、今、日本社会では、韓 国文化を受け入れ共有できる環境が大きく変化し、と ても良い状態になっていることも忘れてはならない要 因の一つであることは間違いないと思われる。このよ うな社会の現状を考えても今こそ韓国の音楽文化を指 導する最もよい時期であろう。

3.音楽教育におけるリズム指導と ESD 音楽の諸要素の中で特に大切なものは、リズム、メ ロディー、ハーモニーである。特にリズムは初等教育 の段階から教材として指導されている。しかし子ども たちの現状としてあまり興味を示さないこともありが ちである。この音楽の要素として大切なリズムの指導 を韓国の伝統音楽であるサムルノリの手法で指導する ことにより、過去においても多くの生徒たちが興味を 示した。またサムルノリに出会ったことがきっかけ で他の民族音楽にも興味を示した例も数多くあった。

今 ESD コンセプトで音楽の教材を考えるとき、音楽 において大切なメロディー、リズム、ハーモニー(注 4)の中で生徒たちの一番不得意なリズムを取り扱う ことが理念に合うように考えた。先にも書いたように、

他の多くの音楽経験や、表現活動とのつながりがある ように思われる。昨年はサオンドスケープからハーモ ニーへの音楽的経験の継続を考えたが、今回はサムル ノリのリズムを使って、ふだん台所で使うものでリズ ム変奏を行うスクールナンタの試行で、音楽の大切な 要素の一つを継続可能な指導を試みた。

また、今回の教材の参考にした「ナンタ」は現在韓 国ソウル市内の貞洞劇場と江南ナンタ専用劇場で毎日 2回以上公演されている。2000 年以降では最もヒッ トしたノンバーバルパフォーマンスである。「キッチ ン」というタイトルで海外公演も何度か行われ、2003 年ブロードウエイでも行われ、大阪でも同年に公演さ れた現在韓国を代表する音楽パフォーマンスである。

ESD を考えたとき、ワールドミュージックの一つと して民族音楽の枠をこえたタイムリーな教材として

「ナンタ」使えると考えた。

₄.スクールナンタの実施

₄.₁.指導の概要

指導の概略としては次のような方法で行った。

 ・韓国の伝統音楽としての「サムルノリ」を音と 映像を通じて鑑賞させる。

 ・「ナンタ」について理解させる。

 ・「ナンタ」を参考にした台所用品で打楽器アン サンブルをイメージさせる。

川合 利幸 ナンタをイメージした韓国音楽の指導

(5)

(楽器に関して)

今回の台所用品を使ったリズム指導(スクール ナンタ)においてどのようなものを楽器代わりに 使用させるかを事前に考えてみた。台所用品を使 用してどのような音をイメージできるか。音の高 さはどのようになるだろうか。音の出し方をどう するか、などいろいろと思いをめぐらせた。また オリジナルの「ナンタ」では包丁とまな板が活躍 している場合が多いが、学校ではこれは使っては ならない。その代わりに同じような効果を期待で きる代用品はないかも考えてみた。それから生徒 たちにも楽器を家から待ってくる前にどのような 台所用品を使えばどんな音が出て、一般の打楽器 に置き換えるとどうなるかなどを考えさせた。

リズムに関して

(基本リズム)

 リズムに関しては、前の段階として以下に示 すようなリズムを取り上げて指導した。その後、

伝統的なサムルノリのリズムを習得させ、そのリ ズムを自分の使うキッチン道具の特性を考えて、

変奏させるようにした。変奏に関しては次第にリ ズムを細かくし、テンポを上げるほうが好ましい ということをつたえた

(物語性)

今回の試行で創作したリズム変奏は台所用品を 使い、表現することに加えて簡単なストーリーを 作らせることを想定している。このストーリーに ついては長い物語を考えさせるのではなく、自分 たちが考えた台所用品を使ったリズム変奏で何を 表現しているかを、ソネットのような短い文章で 表現させることを試みた。多くのグループは自然 を題材にしたものであり、また心情を表現したグ ループもいからか見うけられた。そしてリズム変 奏をしながらマイクを使って簡単なストーリーを 説明する方法をとるのが一番効果的であった。

 ・具体的な楽器として使う台所用品を持ちより、

音の出し方を工夫させる。

 ・自分たちで物語を考え、それに合った「サムル ノリ」を参考にしたルズムをかんがえさせる。

 ・練習  ・発表

以上のような概要で、平成 23 年5月 11 日、18 日、

6月1日に第2学年を対象にして実施した。

₄.₂ 指導展開

(リズム変奏編) 下にリズム実際に行った、リズム 練習と創作に関する学習展開を示す。グループは事前 に決めさせている。

学 習 内 容 基本リズム の習得

リズムパタ ーン練習

グループに よる創作

リズム譜の 作成

演奏練習

サムルノリ のリズムの 確認

さまざまな 基本リズム の練習

グループに よるリズム 変奏の創作

変奏に基づ きリズム譜 のスコアを 作成させる

グループ別 練習

ワ ー ク シート 台所用品

五線紙 ゆっくりした

テンポで習得 させる

あ ら か じ め ワークシート で簡単な基本 リズムとなり 得るものを紹 介してリズム 打ちをささせ

徐々に短い音 符のリズムへ と指導し、適 時速度も上げ

使用する楽器

( 台 所 用 品 ) の個性を考え 音符の長さや リズム譜のテ ンポを考えさ せる。

グループのメ ンバーの音楽 経験も考慮さ せる

楽器(台所用 品)の音の高 指 導

事 項

指   導

留 意 点 準備物等

低や音質も考 えさせてリズ ム変奏を作ら せる

音符の長さの 長いものから 短いものへ、

またゆっくり した速さから 速い速度へと なるように助 言等を行う

川合 利幸 ナンタをイメージした韓国音楽の指導

(6)

生徒たちの感想

 ・キッチッン用品を楽器代わりに使って音楽にな るのかと思ったけれど、かえって新鮮な音の合 奏になった。 (男子)

 ・韓国のリズムを使った変奏はのりが良くて楽し かった。 (男子)

 ・ リズムだけの曲に簡単なストーリーをつける のに苦労したがが、音を出せば楽しかった。

(女子)

 ・スコアをグリープで作るに時間がかかったが、

何か達成感が感じられた。 (女子)

₅.韓国音楽の指導と興味の変化、ESD との関連 今回の試行後対象生158名にアンケートを実施し た。結果は以下のようであった。

韓国音楽に以前より興味がわいてきたかどうか?

サムルノリが好きになったか?

ナンタは普段の授業より楽しかったか?

今回の「スクール・ナンタ」のよう指導も持続性を 考えた韓国音楽へのアプローチの方法の一つとして考 えられる。

注釈

(注1) 韓国の伝統音楽の中で農楽に分類される打楽 器アンサンブルである。チン、プク、チャンゴ、

ケンガリの4種類の打楽器が使用される。基本リ ズムを次第にテンポアップし即興的にリズムを発 展させてゆく。

(注2) ナンタ(乱打)はサムルノリのリズムを取り 入れた非言語パフォーマンスである。包丁を主に 台所用品を使い現代風のリズムと物語を組み合わ

せた一種の劇である。英語名は Kichen と呼ばれ 日本でも公演されたこともある。

(注3) 農楽のサムルノリの基本リズムは単純であり、

誰でも容易にリズム打ちが可能である。

(注4) 現在は音楽の諸要素といわれることが多いが その中でも大切な、音楽を構成する3つの要素を とりあげた。

興味がわいた

132名  83.5%

わかない 26 名 16.5%

とても好きになった

98 名  62%

まあ好きにな った  

  21 名  13%

わからない

39 名 25%

とても楽しかった 

122 名  77%

楽しかった

21 名  13%

わか らな 15 名 10%

川合 利幸

参照

関連したドキュメント

当社グループにおきましては、コロナ禍において取り組んでまいりましたコスト削減を継続するとともに、収益

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

それでは資料 2 ご覧いただきまして、1 の要旨でございます。前回皆様にお集まりいただ きました、昨年 11

であり、 今日 までの日 本の 民族精神 の形 成におい て大

○安井会長 ありがとうございました。.

前ページに示した CO 2 実質ゼロの持続可能なプラスチッ ク利用の姿を 2050 年までに実現することを目指して、これ

にちなんでいる。夢の中で考えたことが続いていて、眠気がいつまでも続く。早朝に出かけ

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場