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傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について

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(1)

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について

活   阿 憲

1 はじめに

n 傷害事故における外来性の意義

皿 外来性の存否をめぐる事例とその検討

W 傷害事故の外来性の立証責任

V 終わりに

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六−二︶ 二〇九

(2)

二一〇

1 はじめに

 傷害保険契約における保険事故︑すなわち傷害とは︑被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によって身体に傷害を

被ることである︵傷害保険普通保険約款一条一項参照︶︒この傷害の定義からすれば︑傷害保険契約における傷害事        ⌒← 故の構成要件としては︑急激性︑偶然性および外来性の.二つが必要とされる︒

 他方︑生命保険契約に付帯する災害関係特約︵傷害特約や災害割増特約など︶においては︑保険金給付の対象とな

る保険事故は︑不慮の事故を直接の原因とする死亡または身体障害と定められており︑この不慮の事故とは︑急激か

つ偶発的な外来の事故とされているので︵生命保険会社の傷害特約等参照︶︑不慮の事故の成立要件としても︑急激        ︵2︶ 性︑偶発︵偶然︶性および外来性が要求されているわけである︒

 このように︑傷害保険契約における傷害事故および生命保険契約の災害関係特約における不慮の事故のいずれにつ

いても︑急激性︑偶然性および外来性という三要件が要求されているが︑これまでは︑このうちの偶然性の要件に関       ︵3︶ して︑その立証責任の所在などをめぐり判例・学説上激しく争われてきたことは︑周知の通りである︒

 しかし︑外来性の要件に関しても︑外来性の有無についての判断基準や立証責任の所在といった問題が存在してお

り︑裁判上争われることも少なくない︒特に︑外来性の判断に関しては︑傷害の発生を招来しやすいような素因を身

体内部に抱えている被保険者が︑何らかの外部的な作用によって素因が現実化し︑傷害が発生するに至る場合におい

て︑外来性の有無をどのように判断すべきかが問題となる︒

 そこで︑本稿では︑傷害事故および不慮の事故における外来性の問題を取りあげ︑その具体的な判断基準や立証責

(3)

任の所在などについて検討してみたい︒

︵1︶ 大森忠夫﹁商法における傷害保険契約の地位﹂保険契約法の研究九七頁︵昭和四四年︑有斐閣︶︑西島梅治・保険法︹第

  三版︺三八〇頁︵平成一〇年︑悠々社︶︑石田満・商法W︵保険法︶︹改訂版︺三四七頁︵平成九年︑青林書院︶︑田辺康平.

  新版現代保険法二七四頁︵平成七年︑文眞堂︶︑坂口光男・保険法三六二頁︵平成三年︑文眞堂︶︑山下友信・保険法四四八

  頁︵平成一七年︑有斐閣︶︑山下丈﹁傷害保険契約における傷害概念︵一︶﹂民商法雑誌七五巻五号七七〇頁︵昭和五二年︶︒

︵2︶ このように︑損害保険会社の行っている傷害保険では︑傷害事故による身体の傷害の発生が保険事故とされているのに対

  し︑生命保険会社の行っている傷害保険︵災害関係特約︶では︑不慮の事故による傷害を直接の原因として死亡︑身体障害

  等が発生したことが保険事故とされており︑保険事故としての傷害の定義に関して︑両者間に相違が見られるが︵具体的に

  は︑損害保険会社の傷害保険の場合には︑傷害の原因となる事故が保険期間内に発生している限り︑それによる死亡等の結

  果の発生が保険期間経過後であっても︑事故の日からその日を含めて一八〇日以内であれば保険金が支払われる︵傷害保険

  普通保険約款第五条一項︑第六条一項参照︶のに対し︑災害関係特約の場合においては︑不慮の事故を直接の原因とする死

  亡等が特約の定める保険期間中で︑かつ事故の日からその日を含めて一八〇日以内に生じていなければ︑保険金は支払われ

  ないことになる︶︑急激かつ偶然な外来の事故による身体傷害という点では共通する︒山下・前掲書四四九頁︒

︵3︶ 偶然性の立証責任に関しては︑これまでの裁判例の立場が分かれていた中で︑最判平成二二・四・二〇民集五五巻三号六

  八二頁は︑︵傷害保険普通保険約款等の︶﹁本件各約款に基づき︑保険者に対して死亡保険金の支払を請求する者は︑発生し

  た事故が偶然な事故であることについて主張︑立証すべき責任を負うものと解するのが相当である﹂と判示し︑最高裁とし

  て初めて︑保険契約者が立証責任を負うべきものであるとの判断を示したが︑故意免責規定が設けられている約款の下で保

  険契約者側に偶然性の立証責任を負わせるのが果たして妥当であるかなどの点について︑なお多くの疑問が呈示されてい

  る︒この問題について詳しくは︑石田満﹁傷害保険契約における立証責任﹂保険契約法の論理と現実二九六頁︵平成七年︑

  有斐閣︶︑拙稿﹁傷害保険および生命保険の災害関係特約における偶然性の立証責任ー立法論的検討﹂文研論集一二四号二

  〇三頁︵平成一〇年︶︑山野嘉朗﹁傷害保険における﹃偶然性﹄の立証責任と最高裁判例−問題点と今後の課題﹂生命保険

  論集一三七号︵第一分冊︶一五頁︵平成一三年︶︑同﹁保険事故−偶然性﹂傷害保険の法理一〇一頁︵平成一二年︑損害保

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 一二﹈

(4)

      二一二

険事業総合研究所︶︑笹本幸祐﹁人保険における自殺免責条項と証明責任︵四︶﹂文研論集二二一号二〇三頁︵平成一二年︶︑

堀田佳文﹁判批﹂法学協会雑誌一.九巻一二号一一九頁︵平成一四年︶︑小林登﹁不慮の事故の立証責任﹂保険事例研究会

レポート一七六号一頁︵平成一五年︶︑岡田豊基﹁傷害保険契約における偶然性の立証責任﹂損害保険研究六五巻一・二号

合併号三三五頁︵平成一五年︶など参照︒

n 傷害事故における外来性の意義

 一般的に︑傷害事故または不慮の事故︵以下︑単に傷害事故という︶における外来性とは︑傷害を引き起こす原因        ︵← が外部からの被保険者の身体への作用を意味するものと理解されている︒すなわち︑傷害事故の外来性は︑被保険者       ︵2︶ の身体の疾患などの内部的原因によって生じた傷害を保険金給付の対象から除外するために認められた要件である︒

言い換えれば︑傷害はもっぱら外来の事故によってもたらされたものでなければならないわけである︒そして︑傷害

の原因が外来のものであれば︑傷害自体の外在は必要ではなく︑被保険者の身体の内部に傷害が生じた場合であって

も︑傷害事故の外来性は認められる︒例えば︑重い物を持ち上げたときに背骨やビザ関節︑腰などを痛めた場合︑ま       ︵3︶ たは打撲などにより骨折した場合においても︑傷害事故の外来性が肯定される︒

 以上のような傷害事故の外来性の概念に関しては︑ドイツ法においてもほぼ同じような理解がなされている︒現行

ドイツ保険契約法においては︑傷害保険に関して八箇条の規定︵同法一七九条から一八五条まで︶が設けられている

が︑傷害ないし傷害事故の概念に関する規定は置かれていない︒しかし︑二〇〇〇年に改定された傷害保険約款︵以

下﹁AUB﹂という︶一条三項は︑﹁被保険者が︑急激に外部から身体に作用する事故︵傷害事故9註=自9︒︒ロ﹇°・︶に

よって︑意思によらずに︵巨富署巨σq︶健康傷害︵O︒°・きσq庁Q﹂巨︒富島︒q已白︒q︶を被ったときは︑傷害︵ごコ拾芭があるも

(5)

      ︵4︶ のとする﹂と定めて︑傷害保険契約における傷害および傷害事故の概念を明らかにしている︒また︑二〇〇四年四月

に公表され︑近く立法化される見通しとなる保険契約法改正案も︑この約款規定とほぼ同様の規定を設けている︒す

なわち︑同改正案一七一条はその第一項で︑﹁傷害保険では︑保険者は︑被保険者の傷害または契約上これと同等に

定められた事故について︑約束した給付を履行する義務を負う﹂と定めるとともに︑その第二項において︑﹁被保険

者が︑急激に外部から身体に作用する事故によって︑意思によらずに健康傷害を被ったときは︑傷害があるものとす       ︵5︶︵6︶ る︒意思によらないことは︑反対の証明があるまで存在するものと推定する﹂と定めている︒

 すなわち︑これらの規定によれば︑傷害とは︑急激に外部から被保険者の身体に作用する傷害事故によって︑被保

険者が意思によらずに健康の殿損を被ることである︒ここから明らかなように︑傷害保険における保険金給付の対象

となる傷害を構成するためには︑傷害事故の構成要件としての﹁急激性︵コo吟注゜芹警︶﹂と﹁外来性︵<oo芦ロ8

≦﹈井9︶﹂︑および傷害事故の結果である健康傷害︵すなわち身体傷害︶についての﹁非自由意思性︵d目陣゜﹂急巨㏄−

︵7︶ 冨巳﹂という三つの要件が存在しなければならないわけである︒

 そして︑AUBの前記規定の中に括弧付きの﹁傷害事故﹂という文言が入っているが︑これは一九八八年の約款改

定の際に新たに追加されたものであり︑その趣旨は︑これによって傷害の概念を︑外部から作用する出来事︵健康傷

害または運動自由︵Cロo≦Φσq巨︒q°・埣①芦①巳の損傷を生じさせるメカニズム︶とそれによってもたらされる健康傷害との

二つの部分に明確に区別するためだと説明されて疑・このように・傷害の概念は・傷害事故とそれによる健康傷害

との二つの構成部分に区別することができるが︑事故の作用の過程において健康傷害または運動自由の損傷が生じな

ければならず︑急激に外部から作用する出来事であっても︑それによって健康傷害または運動自由の損傷が惹起され        ︵9︶ なければ︑傷害事故には当たらない︒したがって︑前記AUBの規定の下では︑健康傷害または運動自由の損傷を生

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 二二二

(6)

二一四

じさせるメカニズムは傷害事故︵ご口琶百窪oq巳゜・︶であり︑そしてそれによる健康傷害または運動自由の損傷は傷害事

故の結果︵ご昌宣百巴oq巳゜・宣oq︒︶︑この健康傷害による健康障害︵O︒°︒旨合①旨゜︒n冨匹窪︶は傷害の結果︵ごo討=宣σq︒︶であ

る︒傷害保険における保険事故は︑傷害事故と傷害事故の結果︑すなわち傷害それ自体であり︑傷害の結果ではない︒        ︵10︶ 傷害の結果︵死亡︑後遺障害等︶は︑単に保険者の給付義務の内容を決定するものである︒

 ところで︑前記の傷害の三要件のうち︑傷害事故の急激性とは︑事故が極めて短い時間のうちに発生し被保険者の

身体に作用することを意味するものであり︑事故が突発的に発生して︑そしてそれが即座に身体に作用して健康の殿        ︵11︶ 損を引き起こした場合には︑急激性の要件は満たされることになる︒ただ︑急激性の要件の判断に際しては︑必ずし

も時間の長さという客観的要素のみが重視されるわけではなく︑むしろこのほかに︑被保険者の傷害事故の発生に対

する予見不能︵ご口O§§0︷6口︶︑または事故による作用に対する回避不能︵⊂ロ①昌﹇﹃日菩碧①目︶といった主観的メルクマー         ︵12︶ ルも考慮されている︒

 また︑健康傷害の非泊由意思性という要件における非自由意思性は︑﹁故意でない﹂ことと同義であり︑したがっ

て︑被保険者が故意によらずに事故およびそれによる健康傷害に身をさらした場合は︑非自由意思性の要件は満たさ

 ︵13︶ れる︒しかし︑故意に事故を招来した場合はもちろんのこと︑被保険者が︑その意思による関与なしに︑またはその

意思に反して生じた事故に遭遇し︑これを回避することができたにもかかわらず回避しなかった場合にも︑非自由意       ︵14︶ 思性の要件の充足は認められない︒逆に︑傷害事故が被保険者自身の意図的な行動によって引き起こされた場合に        ︵15︶ も︑当該行為に伴う危険性が認識されていなかったときは︑非自由意思の要件が満たされることになる︒

 以上に対し︑傷害事故の外来性とは︑被保険者の健康傷害をもたらす事故が外部から被保険者の身体に作用するも

のであることを意味するもので︑外部に明確に示されるような被保険者の身体に対する外界︵人または物︶の作用が

(7)

        前提とされており︑この作用自体は力学的︑電気的︑化学的またはその他の性質のものであってもよいとされる︒ま

た︑外来の事故が身体に対しどのような形で作用したのか︑例えば︑それが感覚を通して知覚させたのか︑それとも        び 精神的なショックを与えたのか︑もしくは身体に物理的な力を加えたのかといったことも︑原則として問わない︒被

保険者の身体への外来の作用の典型的な事例としては︑道路交通における衝突︑落下物による受傷︑氷や雪等の路面

での転倒などが挙げら紅棚・有毒ガスを吸い込んだ場合発煙による酸素欠乏で呼吸困難が生じ竃禦食べ物が         喉を詰まらせて窒息した場合なども外部から作用する出来事として認められ︑治療措置を施す際に︑医療器具または        な 治療薬品の取り違えもしくは取扱いの誤り︑器具の滑り落ちなどの予想外の外的作用により健康傷害が生じた場合

も︑傷害事故が認められる︒また︑被保険者の身体への作用がいわゆる自己運動︵①品︒宕o︒︒≦o︒q旨︒q9︶︑すなわち被

保険者自身の行動によって引き起こされた場合にも︑外来性の要件が満たされることがある︒例えば︑走っている間

に適時に発見することのできなった障害物にぶつかった場合︑縁石につまずいて転倒し足を骨折した場合︑仕事中に

うっかりしてナイフで切り傷を負った場合︑重い物体を持ち上げようとしたところ︑足が滑って椎間板を傷めたと

いった場合においては︑当該具体的な行動の過程ではもはや自らの意思によってコントロールすることができず︑ま        び たそれが外部からの作用とともに健康傷害を招来したのであるから︑傷害が存在するものと認められる︒そして︑あ

る外来の出来事によって直接的には身体の損傷を受けなかったものの︑それによって被保険者の運動自由が奪われ︑

この結果︑健康傷害を被った場合︑例えば︑被保険者が山歩きの途中に岩の割れ目に転落し︑怪我はなかったものの︑

そこから抜け出すことができず︑飢えと寒さもしくは暑さから逃れられない場合には︑当該出来事は傷害事故に該当       お  し︑それによって餓死または凍死したときは︑傷害が存在するものと解される︒

 しかし︑被保険者の身体への作用は︑必ず外部からの作用でなければならず︑身体内の病的な出来事による健康傷

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六⊥一︶ 一二五

(8)

一二六

害は除外され︑また︑既にある期間身体内に存在していた生体にとって異質の物質︵一∧O壱①時①∋△60乃﹇O蒙︶によって

引き起こされた作用も︑外来的なものとはみなされず︑したがって︑例えばそれが炎症や潰瘍の穿孔︑閉塞症︑血管       ︵24︶ 狭窄等を生じさせ︑健康傷害をもたらしたとしても︑それは傷害とは認められない︒また︑肉体的な疲労︵民o弓旦庁

︒冨﹀曇お藷9︒q9︶自体は外来の作用とは言えず︑馬術︑陸上競技などのようなスポーツによる疲労も約款にいう傷       ︵25︶ 害には当たらず︑過労および不慣れな生活による疲労も同様であると解される︒

 他方︑被保険者の身体に作用して直接に健康傷害をもたらした出来事が外部からのものである限り︑それを引き起

こした原因が何であるかについては︑この外来性の判断においては特に重要性を有せず︑当該原因はもっぱらAUB        ︵26︶ 第二条所定の保険者の免責事由の有無を決定する場合においてのみ意義を有するものと解されている︒すなわち︑ド

イツの支配的な見解によれば︑あらゆる傷害事故は因果連鎖の環をなしており︑傷害の前提条件が存在しているか否

かの判断に際しては︑もっぱら被保険者の身体に直接に作用する出来事のみを重視すべきであって︑この出来事に先

行する因果連鎖の環は単に︑それが傷害保険約款所定の免責事由に該当するか否か︑すなわち保険者の免責事由の有

無を判断するときにのみ意味を有し︑また現行AUB第二条︵八八年AUB第八条︶により︑傷害事故によっても

たらされる健康傷害またはその結果について被保険者の病気または疾患が協働作用したと認められる場合には︑保険        ︵27︶ 金が減額されることになるとされている︒したがって︑例えば︑歩行中に突然転倒した場合においては︑地面または

水面への衝突が被保険者の身体への外部からの作用に当たるので︑傷害事故の成立は常に肯定され︑当該転倒を招来

した原因が何であるか︑それがAUB第二条所定の免責事由に当たるかは︑保険者の給付義務の存否を決める際に判

断されることになり︑突然の転倒をもたらした原因が免責事由に当たらなければ︑仮に転倒によって心筋梗塞をもた

らす血行不全が生じたとしても︑傷害は存在することになり︑また︑転倒がAUB第二条所定の免責事由である卒中

(9)

発作︵切昌訂oqき日巳またはてんかんの発作︵Φ唱声庁嘗゜︒合窪﹀⇒日巳によって生じたことを保険者が証明した場合でも︑

このような発作が当該保険契約によってカバーされるべき傷害事故によって生じたときは︑傷害は肯定されることに

﹄縫︒また・例えば・被保険者が溺死︵↓oC°合烏合団巨昆雲︑直接溺死と呼ばれるもの︶した場合においては︑口頭

への水の侵入が外来の事故に当たるため︑傷害事故として認められるが︑当該事故を招来した原因︑すなわち被保険

者が如何なる原因により水中に沈んだかは︑外来性の判断に関しては問題とならず︑それはもっぱら保険者免責の可

否を決める意味しか有し轟・この点に関して・ドイッ連邦裁判所一九七七年六月二二日判決は︑油送船の船長であ

る被保険者が航海中に行方不明となり︑区裁判所から死亡宣告を受けた後に︑その未亡人である原告が傷害保険金の

支払を求めた事案について︑﹁溺死は常に︑傷害保険約款の意味での傷害死亡に当たり︑その溺死の原因は重要では

ない﹂と判示し︑本件では仮に被保険者が卒中発作︑失神または飲酒により船から海に転落して溺死したとしても︑

傷害の成立は妨げられず︑ただ約款上の免責規定により保険保護を受けられないが︑この場合には原告は溺死の原因

と経過を立証する必要はなく︑免責事由の存在については被告である保険者が立証すべきであるところ︑本件におい        てこのような立証がなかったとして︑保険者の保険金支払義務を認めた︒

 そして︑水浴中に被保険者の身体内部の原因によって溺死した場合︑すなわちいわゆる水浴死︵cd邑Φ8巳︑間接溺

死と呼ばれるもの︶の場合においては︑当該水浴死が傷害に当たるか否かの判断は極めて難しいが︑前記有力説によ

れば︑水浴死をめぐる判断は二段階に分かれ︑まず最初に︑傷害事故の構成要件が存在するか否かについての判断が

行われ︑そして傷害事故が成立すると認められる場合には︑さらに当該傷害事故を引き起こした原因が保険者の免責

事由に該当するか否かの判断が行われることになる︒そこで︑例えば︑冷たい水の中に飛び込んだ被保険者が︑冷水

の作用により心臓卒中を起こして死亡したような事例においては︑被保険者の死亡は︑冷たい水が急激に外部から被

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 二一七

(10)

︑二八

保険者の身体に作用した結果発生したものであるため︑現行AUB第一条三項の定める傷害の要件は満たされるが︑

一九六﹈年AUB二条三項C号三文は温度の影響による健康傷害を保険者の免責事由として掲げているため︑この場       ロ  合の被保険者の死亡については保険保護が与えられないとの結論に達することになる︒また︑被保険者が失神

︵O書日①9﹇︶または眩量︵°り合忌区旦によって水中に転落し溺れた場合︑または水泳中に失神により溺れた場合に

も︑事故の外来性が認められ︑またこれらの事由による健康傷害は︑.九六︒年改正前のAUBの下では保険者免責

とされていたが︑同年の改正によって保険者の免責事由から除外されたため︑現行AUBの下では保険保護を受けら           れると解される︒さらに︑外部から被保険者の身体に作用する事故︵喉頭への水の侵入︶が被保険者の内部の出来事

である過度の疲労︵出﹃Q◎O庁O唱﹃⊂⇒σq︶︑心不全︵口︒﹃N<①﹃°・①︒︒窪︶または腓返り︵≦置9ζ①∋廿﹃︶によって引き起こされた場

合にも︑傷害事故の成立が認められ︑かつ現行AUBがこれらの事由を保険者免責として掲げていないため︑これら        へ  の事由による健康傷害については保険保護が与えられると解される︒これに対し︑現行AUB第二条一項a号︵八八

年AUB第一項一号︑六一年AUB第三条四項︶は︑精神障害︵○︒巨︒°・°・8日口oq︶または意識障害︵dd2昌︷°・︒﹇房゜・8日ロ︒q︶

による傷害を保険者の免責事由として定めているため︑被保険者がこれらの事由により水浴死となった場合には︑保       タ 険保護を受けられない︒また︑被保険者が水泳中に卒中発作に見舞われ溺れた場合にも︑この間接溺死は︑保険保護

の対象とはならないと解される︒なぜならば︑現行AUB第二条一項a号︵八八年AUB第一項一号︑六一年AUB        お  第三条四項︶が卒中発作を保険者の免責事由として掲げているからである︒

 以上見てきたように︑ドイツでは︑外部から被保険者の身体に作用して直接に健康傷害をもたらした出来事と当該

出来事を引き起こした原因とを区別して︑後者の原因については︑もっぱら保険者の免責事由の有無を判断する際の

考慮要素とするという判断枠組みが用いられているが︑このような判断枠組みは︑傷害事故と当該事故を招来する諸

(11)

要因とを明確に限界づけることができ︑傷害事故の存否についての判断基準の明確化を図ることができると考えられ

る︒

︵1︶ 西島梅治・保険法︹第三版︺三八一頁︵平成一〇年︑悠々社︶︑石田満.商法W︵保険法︶︹改訂版︺三四八頁︵平成九年︑

  青林書院︶︑坂口光男・保険法三六三頁︵平成三年︑文眞堂︶︑山下友信・保険法四五四頁︵平成一七年︑有斐閣︶︒

︵2︶ 江頭憲治郎・商取引法︹第四版︺四七五頁︵平成一七年︑弘文堂︶︑西島.前掲注ω三八一頁︑山下︵友︶.前掲注ω四五   四頁︑田辺康平・新版現代保険法二七五頁︵平成七年︑文眞堂︶︑山下丈﹁傷害保険契約における傷害概念︵二.完︶﹂民商

  法雑誌七五巻六号九一一頁︵昭和五二年︶︑古瀬政敏﹁生保の傷害特約における保険事故概念をめぐる一考察−損保の損害

  保険および英米のe°°己゜葺ぎ゜︒ξ呂8との対比においてー﹂保険学雑誌四九六号一二八頁︵昭和五七年︶︒

︵3︶ 西島・前掲注ω三八一頁︑石田・前掲注ω三四八頁︑田辺・前掲注②二七五頁︑坂口・前掲注ω三六三頁︑山下︵友︶.

  前掲注ω四五四頁︒

︵4︶ 訳語は︑山下丈﹁傷害保険契約における傷害概念︵一︶﹂民商法雑誌75巻5号m頁を参照させて頂いた︒この定義規定は

  直接的には私的傷害保険について定めたものであるが︑生命保険契約に付加して締結される傷害特約︵¢5巨汀自︒・陪N<︒﹃︒・+

  °冨ヨ5︒qN烏ピ゜ぴ05<°邑︒庁︒目50q︶についても同じく妥当するとされている︒<ロ一.勺臼゜臣8Φこ︶窒ζ゜井∋巴△6﹃..コO⇔N自○穿①詳.︑目

  ご目合=ぴ゜σq口月︿°諺声⑦゜︒﹈﹀°り゜一﹂◆なお︑このAUB第一条三項は︑二〇〇〇年改定に際し︑﹁正当防衛または人命救助もしく

  は財物救出の行為によって生じる傷害も同時に付保される﹂という一文が追加された︒また︑同一条四項は︑﹁次のような

  場合も傷害があるものとみなす︒①手足または脊柱への強すぎた努力︵g9庁8寄昌彗︒・冨日§oq︶によって関節が脱臼し︑ま

  たは筋肉︑アキレス腱︑靱帯もしくは嚢が傷められまたは引き裂かれた場合︑②潜水事故の際に生ずる潜函病または鼓膜損

  傷などの潜水に特有の健康傷害︒水中での溺死または窒息死も同様である﹂と定めて︑いわゆる擬制傷害︵d目壁田古︷8︑約

  款一条三項の意味での傷害には当たらないが︑傷害として擬制されるもの︶を認めている︒Oユ日戸ごロ合=<°邑合゜日謡゜民oヨー

  日o巨曽N已臼g>=口o日o日oo己昌合=<巽ψ︒村9目藷︒・げ9一漏已晶Φ只>dod︶日詳oりoao許o象⇒σq旨o︒①戸ω・﹀已コNOOρ﹀白旨い〒芯N已日吻一・

︵5︶ この保険契約法改正案︵団巨≦ζ匡︒巨9∩︒°・︒﹇NgN烏戸︒甘∋二9<・日︒冨目ロσq°・<︒葺①σ︒°・﹃Φ9邑は︑連邦司法省の下で設置され

  た保険契約法改正検討委員会︵合︒民o日巨゜・°・日oN旨閃︒♂目二︒°・<6邑各︒日梶゜・<︒苔9︒︒°・﹃87邑が四年間にわたる検討の結果まと

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 一二九

(12)

二二〇

     めたものである︒傷害保険における傷害事故の概念および保険金請求の実質的な要件については︑現行法は何ら規定してお

     らず︑もっぱら普通保険約款および個々の保険契約に委ねられてきたが︑これでは近時発展が著しい私的傷害保険の現状に

     は対応できないことから︑顧客の理解を助けるためにも︑傷害保険普通保険約款︵AUB︶と判例において用いられてきた

     傷害の概念に対応した傷害事故の概念を定めることが望ましいとの理由で︑傷害事故の概念に関する規定が新設された︑と

   説明されている︵>O°・︒巨5°・σ゜ユ○宮工2×o∋邑゜・°︒δコN⊆﹁カ①ま﹃∋エ9<°邑合゜目編゜・<°巨田o︒°︒目゜庁ロ︿o日這﹀唱巳N⇔宕゜<o朋6三餌oqo宮﹃

     ①声口白20︒・<o邑合o日旨σq°・<Φ口日oq°・目oげ二゜ω゜N.﹈︶︒

   ︵6︶ 保険契約法改正案一七一条︑一項後段の規定は︑一九六七年の保険契約法改正の際に導入された現行保険契約法一八〇a条

     一項の推定規定を受け継いだものである︵>O°・°巨5°・σ゜ユ゜宮合﹃民O日巨゜・°・δ目Nξカ6a∋三6°・<①邑゜冨日コσq°・<①旨①σq°︒﹁6合冨<O目一ρ

     ﹀苫﹈NOO古bd︒σq日邑呂σq合゜・O①゜・9N︒°・N琴閃゜♂日二6°・<°2°ゴ゜巳梶゜︒<①葺①σq°・﹃o︒庁ロω﹈N=吻ミ一︶︒これは︑被保険者の健康傷害が意

     思によらずに生じたか否かについて疑いがある場合には︑この非自由意思性は反対の証明があるまで推定されるとして︑保

     険者が被保険者の故意による健康傷害の招致について立証責任を負うべきことを定めたものである︒拙稿﹁傷害保険および

     生命保険の災害関係特約における偶然性の立証責任−立法論的検討﹂文研論集一二四号二三三頁︵平成一〇年︶以下参照︒

   ︵7︶ 傷害概念についてのAUB規定の文言から︑非自由意思性の要件は傷害事故それ自体ではなく︑その結果である健康傷害

     にかかっていると解されている︒㊥邑゜・°・\呂§貫く︒邑o汀ヨロσ︒°・︿①巨﹁①σq°・鵯゜・①︷〒×o日日⑳旦彗Nひ゜﹀邑﹂一⇔O︒︒違>o日﹂↓巨日巴>dOd

     ︒︒︒︒⁚∩口日見pρρ︵市ロ゜や∵﹀ロ日ω②巨日ゆごヒd目o戸⊥≦O一一〇T≦①σqg﹃°民o∋日o邑碧Nロヨ<o日o庁①巳已゜︒︿o苔①σq°︒σqo°・o艮゜︒◆﹀已P∨≦切吾

     ﹂O∨o◎り>5日ひoo°

   ︵8︶綱5°・o宅\㊥臼゜穿芦o烈>dロol民○日日①巨貝◎﹀邑ス一⇔Oρ﹀ロ日゜ωN昌ヨ吻﹈目⁝Oユ∋βρPO︵問ロ﹄y>コ日s﹈司゜なお︑一九六一

     年改定前の普通傷害保険約款第二条二項二号bは︑﹁光︑温度と天候の影響による健康傷害は傷害とはみなされない︒ただ

     し︑被保険者が保険事故の結果としてこれらの影響を受けた場合は除く﹂と定めて︑光や温度︑天候の影響といったいわゆ

     る消極的な限界事例︵白︒︒q豊く8ρ︒ぼ壁﹃︶を原則として傷害から排除していたが︑この但書の規定の意味については必ず

     しも明確な解釈が示されてこなかった︒そこで︑匡自汀は︑この但書にいう保険事故の意味を検討し︑もし保険事故を広い

     意味で保険者の給付義務の発生としてとらえるとすれば︑およそ保険事故が発生した場合にはそのすべての傷害の結果につ

     いて保険金が給付されるべきであるから︑これを定めた但書も意味を持たなくなるとして︑ここにいう保険事故をむしろ﹁傷

     害事故︵d5邑︒邑︒︒呂︶﹂︑すなわち急激に外部から身体に作用する出来事として理解すべきである︑との解釈を展開した︒

(13)

 彼によれば︑例えば︑谷に転落した被保険者が︑怪我はなかったものの︑そこから抜け出すことができず︑飢餓または寒冷

  のため死亡した場合や︑凍った川を渡ろうとした被保険者が︑氷が割れて水中に墜落し︑凍死した場合においては︑傷害は

  二段階の経過からなっており︑被保険者がまず最初に発生した傷害事故︵谷への転落および水中への墜落︶によって行動の

 自由が奪われ︑そしてその結果として光や温度︑天候による不利な作用を回避することができず︑健康傷害︵餓死・凍死又

  は溺死︶を受けることになる︒口︒昆︒は︑このような場合に生ずる傷害︵死亡︶を間接的傷害︵目詩ピ昌︒白゜り合匿窪︶と位置

  づけ︑それが最初の傷害事故の結果として生ずるものである限り︑保険保護の対象となるとする︒このように国︒昆︒によれ

  ば︑この但書に該当する事例は︑保険事故という用語の代わりに傷害事故という概念が用いられて初めて正しく理解するこ

  とができることになる︒出︒笑P﹈︶苫﹀已゜︒°・︒巨旨゜・︒已巳9①自壁庁日臼隅d口宣一<o日︒冨目o@一②いρ゜力゜芯隅このような出o昆・の主

 張を受けて︑一九六一年の﹀ごo︒改定の際に︑傷害の概念は傷害事故と健康傷害に区分され︑前記規定は﹁光︑温度および

  天候の影響による健康傷害は保険保護の対象とはならない︒ただしそれが保険の対象となる傷害事故の結果として生じた場

  合には︑保険保護が与えられる﹂︵一九六一年﹀ご゜U第二条三項0号三文四文︶という文言になった︒<σqピ0︒日声1ζO已丁綱謂

 昌Φ口P靭○︵市目゜司︶寸﹀白日○ごρ゜忌編曽↓°︒9巨据゜︒o︒9︒巨各﹇︒合﹃﹀⊂c︒<8一②ひご一⇔ひ心゜︒﹂Nそして︑それが︑一九八八年の

 ﹀ごヒ︒第一条三項および二〇〇〇年の﹀ごc︒第一条三項に受け継がれている︒

︵9︶綱已゜・°・2\田﹃︒臣き︒おPρO︵市P︒︒︶5・日゜ωω゜

︵10︶≦5°・°≦\勺葺゜臣きoおP讐O°︵昌゜°︒ピ︾︒日ωFωひ⁝Qユ目目曽PPO︵穿ト∵﹀ロ日一S傷害の結果は︑それが契約上所定の一定の

  要件を満たすものである限り︑保険給付がなされるのであるから︵≦ロ゜︒°︒o≦\田﹃︒穿呂oヨppρ︵穿.︒︒︶﹀田日゜ωや︶︑ドイツ法上

  の傷害保険の保険事故の概念は基本的に日本の損害保険会社の行っている傷害保険の保険事故の概念に対応していると言え

  る︒なお︑山下︵丈︶・前掲注④七七〇頁参照︒

︵11︶ ㊥a﹃\ζ§貝①三ΨO°︵穿゜∨︶∨﹀問日﹂ωN已目吻一﹀巴ヒo︒︒︒︒⁝≦5°・o綱\田叶o穿芦o炉PPρ︵曽゜︒︒︶>o目゜ω︒︒引Oユ日5PPρ︵曽゜心︶遠

 ﹀ロ日゜巴N已旨ゆご勺障○穿巨6﹃ヨppO°︵市口鼻ピ切﹈一隣∴o力o庁≦芦8≦°・﹈︵rodo庄昌9囚o日旨o旦自N已日くo臣︷oロΩ已5σQ°︒<o葺①σq°・σqo°・臼N寸一②O︒︒°

  ﹀ロ日゜②N已日㊨ミ⇔.

︵12︶ 勺8言こ≦§﹂PP靭○°︵穿.□吉﹀白日﹈﹄N⊆日ゆ一>C切︒︒︒︒⁝Od日o犀⊥≦O=oT写辞σqR□PPO︵市o.9︶﹀目日゜Oいゆ⁚≦5°・o≦\

 勺障o穿きoおppO°︵市po◎︶㊨>o§°﹈⇔⁝勺葺o臣き①炉騨゜pO°︵市p心︶°oり﹈ごシリo庁≦﹇巨o≦°︒匹曽ppρ︵市p=︶﹀コ目゜O昌目●ミ⇔⁝ロd自江g−

 O︒且・ヨN烏﹀已゜︒庁oqきoq合o°︒d白宣臣Φo︒ユぽ゜・巨惚>Cロ︒<︒﹁°︒閃⑦葦切N=でO︒O工ひN﹂ゆい古くΦ冨勾6いや=伊︒り゜=合したがっ

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 二二一

(14)

二二二

  て︑このようなアプローチをとれば︑事故が発生した後︑それによって生ずる作用が比較的に長く持続していた場合︵例え

  ばガス漏れによりある一定時間にわたってガスを吸入していた等の場合︶にも︑急激性の要件が認められることがあるが︑

  事故が直接的な効果を引き起こさない場合︑または長時間にわたって反復的に身体に作用する場合には︑急激性は認められ

  ない︒≦已゜・°・o≦\勺葺o臣きo炉ppO°︵曽゜°︒∵﹀ロ日゜ω゜︒°

︵13︶ Oは目βPPO︵市Pや︶∨﹀ロ日゜﹈②゜なお︑山下︵丈︶・前掲注②八九七頁参照︒

︵14︶ 零巳゜・°・\ζ§戸騨゜PO°︵穿゜司y>ロ日﹂S

︵15︶勺巨︒︒︒・\ζ§亘PPO・︵穿\︶°﹀昌日口⁝綱已︒・︒︒o宅\田﹁︒×ぎ=︒﹁予PO°︵市ロ︒︒︶°﹀コヨ゜いひい○ユ日貝PPρ︵市ロや︶﹀白日ωO°なお︑危険

  なスポーツをする場合のように︑被保険者が健康傷害を招来する可能性のあることを知りつつも︑恐らく発生しないのだろ

  うと信じて︑または自ら事故の作用による結果を回避できると思いこんで︑自分の身を危険にさらした場合にも︑意思によ

  らずに健康傷害を受けたものと認められることがある︵写O房\ζ§戸pρ○°︵哨・°べy>=日﹈や⁝≦5°・︒≦\勺=月穿き︒炉☆﹄°O°

  ︵司p◎c︶Ψ﹀口日゜いひ゜︶︒つまり︑非自由意思性の要件を判断する場合においては︑被保険者の過失の有無は問題とならず︑重大な

  過失を免責事由として定めているドイツ保険契約法六一条はその限りにおいて適用されないものと解されている︒写O言\

  ﹈≦呂日靭pO◆︵市p︿シ﹀ロ日﹂<⁝○ユ日日9ppO°︵市pや︶w>昌日゜ω②N=ヨ●一゜

︵16︶ 勺巨︒︒︒・\ζ§亘PPO三曽゜<︶w>口日ひNロ日●一﹀⊂ロ︒°︒°︒⁚≦5°・o≦\霊﹁︒江窪o﹁三恥○°︵穿゜°︒︶曽﹀ロ日゜ま⁝冒︒⊇︒×1ζO=︒T≦旬oqロ︒戸

  ppO°︵市pN︶>o日゜ON﹈°ONい⁚Oユ日日wppO令︵市コ゜﹄︶°>o∋°N°︒N=ヨ●一゜

︵17︶ もちろん︑これについて約款上免責事由が定められている場合には別である︒≦5°・︒≦\田﹃︒呑巨6古PPO°︵市P︒︒︶9>づ日ま⁝

  Oユ日βPPO三増ロ鼻︶Ψ﹀コ日゜N︒︒N已日砲一.なお︑現行AUB第二条四項は︑原因を問わず︑精神的な反応による病的な障害を免

  責事由として掲げている︒この規定は︑六一年AUB二条三項b号︵精神的影響による罹病を免責事由とする規定︶と同A

  UB一〇条五項︵傷害の後に生ずる精神的・神経的障害を免責事由とする規定︶を統合して出来たものである︒前記六一年

  AUB二項三項b号の免責事由は︑人間が外部の出来事に驚愕し︑衝撃を受ける形での精神的反応を除外するものである

  が︑判例はこれを制限的に解釈して︑精神的な影響が因果連鎖の最初の環をなしている場合に限り︑精神的な影響による罹

  病は担保されないが︑傷害事故が精神的ショックを引き起こし︑それが死亡をもたらした場合には︑この罹病は担保され︑

  例えば︑近くに雷が落ちてショック死を起こした事例や︑自転車に乗っている人と衝突してショックを起こし死亡した事

  例︑吹き出る炎に驚愕して死亡した事例︑喧曄の後に激高して死亡した事例︑飛んできた石がフロントガラスを割ってしまっ

(15)

     たことに驚愕して死亡した事例などにおいては︑傷害が認められていたが︵巳oQ=一②.タ一薯ド<o諺声鳶U°︒Nなど︶︑これについ

     ては学説は︑外部の事故に対する精神的反応は外来性の要件を満たさないなどとして判例の立場に反対していた︒<讐

     ∩ユ日βppO︵穿⊆∵﹀白日﹂宝⊥OいN已日吻ド現行AUB二条四項は︑原因を問わず︑すべての精神的な反応による病的障害

     を免責事由としているので︑事故の発生によって精神的ショックや驚愕を引き起こし︑健康傷害を被った場合でも︑担保さ

     れない︒Oユ目目㊨PpO︵害⊆∵﹀白ヨLO°︒N已日惚⁝≦已゜︒°・o≦\勺茸︒江窪o炉PロO︵闇目゜°︒ぷ︾ロ日②゜︒1一〇<N已旨惚司゜しかし︑精神的

     反応によって傷害事故を招来し︑健康傷害を被った場合︑例えば︑自動車運転手が過度の怒りまたは不安などから速度を出

     し過ぎて︑もしくは運転に集中できず︑事故を引き起こして傷害を被った場合には︑担保され︑また︑外部から身体に作用

     する出来事が発生し︑それが精神的反応を引き起こし︑健康傷害を被った場合にも担保されると解される︒≦5°・︒綱\

     田﹃o穿芦9ppρ︵市口o◎︶°>5日゜ゆ︒︒二〇P一自目日芯司゜

   ︵18︶ 写窪゜・°・\ζ§5PPO°︵穿゜∨︶°﹀ロ日ひN已日巴﹀⊂Oo︒︒︒︒︹○ユ日日三゜☆°O︵日゜与︶㊨>o目﹄︒︒占ON已白吻一⁝≦5°・o≦\勺葺o穿きo﹃三゜

     pO°︵剴ロ◎c︶﹀口日輪◎宝N已日巴白.

   ︵19︶ Oユ日自pPO︵穿ムシ﹀目日ω一巨日●ご≦5︒・o≦\勺葺︒臣きβPPO°︵穿会︒︒︶°﹀ロ日゜ひく占O巨日巴目゜もっとも︑被保険者が

     長時間︑有毒ガスの出ている場所で作業に従事し︑繰り返し有毒ガスを吸引していなどの場合には︑傷害は認められない︒

     ≦5°・o≦\勺障o臣巨6古p①゜○°︵市po︒︶寸︾⇒日◆ひ司N已日●一目゜

﹀   ︵20︶ 勺昼゜・°・\ζ§亘PPρ︵市P∨︶Ψ﹀目日ON已日●一﹀ごロ︒︒︒︒︒⁝≦5︒・o≦這日︒穿芦︒炉PPO三穿゜︒︒︶>o日なN已日ゆ一白⁝Oユ日5PP

     O︵市昌゜や︶﹀巨日゜﹈NN已日吻一゜

   ︵21︶ もちろん︑医療処置︵餌﹃N法合90︒①庁芦合巨oq︶は︑事前の治療計画に従い患者の了解のもとで行われるのが普通であるので︑

      一般的には︑たとえ外部からの作用があったとしても︑急激性の要件を欠くため︑傷害事故は成立しないと解されている︒

     ≦5°・o≦\霊8臣巨o炉ppO°︵市口o︒︶﹀コ日゜︒︒〒︒︒一N白日●一目゜

   ︵22︶ 印巳゜・°・\ζ§﹄見PPO︵穿゜や︶り﹀昌目゜刈N已日●﹂>dOd︒︒︒︒⁝≦5°・o≦\田﹃o臣S①炉PPO°︵市P︒︒︶>oヨ゜ミーや︒︒⁝bd日o下ζO已oT≦お−

     器﹃軸PO°︵増⇒°□︶9>ロ日゜O食−桧⁝0ユ自戸PPO.︵市コム︶w>5目゜ωO昌日巴⁝o力合忌邑Oま亘①﹄°O︵昌゜=︶w>O日゜o◎﹂昌日巴∨②゜もつ

     とも︑健康傷害を来す不器用な身体運動または通常の自己運動は︑身体への外来からの作用とはいえず︑たとえそれによつ

     て︑例えば心筋梗塞︑脳出血︑鼠径ヘルニアなどのような身体内の出来事に基づぐ健康傷害が生じたとしても︑それは傷害

     とは認められないと解される︒Oユ日β①.PO.︵市ロド∵﹀問日゜ωO昌日●一゜なお︑山下︵丈︶・前掲注②九一二頁︒

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 二二三

(16)

二二四

︵23︶ これは出︒昆︒がいうところの間接的傷害である︒=°戻PpPO︵穿゜°︒y°リムO司同旨︑o︒目︒下ζO陪〒≦知oQ器戸PPO.︵市o°司︶

 >o日゜○ひ⁝綱5°・o宅\田﹃o呑き①﹃曽ppρ︵市ロ◎︒∵﹀昌ヨ゜お⁚O一日βppO︵﹁ロ刈︶㊨﹀ロ日N◎︒⁝○ユ日∋三゜pO°︵市p﹄︶寸﹀∋日ω◎︒巨日

  ●一゜また︑連邦裁判所一九六二年五月二日判決は︑登山家がクライミングロープを間違った場所に掛けてしまったため︑身

  動きがとれなくなり凍死したという事案について︑たとえ外来の事故によって直接的な損傷を受けなくても︑このような外

  来の事故による運動能力の喪失は一般的な解釈として︑約款がいうところの身体への作用と同列に扱われるべきであると判

  示している︒切O出一い﹄﹂②ひ心<︒易声ひN田ωふ一゜もっとも︑田﹃︒穿巨自は︑このような事例を間接的傷害としてとらえることに

  は疑問を呈しており︑このような事例において傷害が認められるか否かは︑もっぱら事故の急激性および事故と運動能力の

  損傷によってもたらされる健康傷害との間の因果関係で判断すべきであると主張している︒≦g°︒°・oを\田叶︒穿碧①5ppO°

  ︵市目゜◎︒︶噂>o日本O°

︵24︶ 勺邑の゜・\ζ§亘餌゜PO︵市昌゜司︶9>ロ日゜ひN已日ゆ一﹀已﹈°︒°︒⁚綱ロ゜︒°︒o乞\田﹁o穿巨o﹃三﹄°O︵市P°︒γ﹀口日゜芯⁝OユヨβPPO°

  ︵市戸﹄︶﹀目日N︒︒巨日巴⁝切︒7忌口8≦°・亘PPO︵穿ヒ︶∨﹀コヨ゜↓N已日警這゜もっとも︑この生体にとって異質の物質が傷害事故

  によって身体に入り︑健康傷害をもたらした場合は︑傷害は認められ︑また身体切開︵民8︒﹁o穿旨︒q雪︶の際にこの異質の

  物質が身体に侵入し︑直接に身体内部の反応を引き起こした場合も︑外部から身体に作用したことになる︒≦ζ゜︒°・︒≦\

 ㊥茸○臣呂o□P知゜○°︵市po◎︶﹀目日゜やや゜

︵25︶ ℃邑゜・°︒\忌§︹P①﹄°ρ︵昌゜司γ﹀白日﹈NNロ目●一﹀ごoロ゜︒°︒⁝≦58綱〜霊﹃6穿きo﹃三゜①゜○°︵曽゜°︒︶>o目゜よ゜︒⁝○ユ日戸①﹄ψO

  ︵市口や︶9>白旨゜﹈ON已日吻﹂°

︵26︶ AUB第二条は︑保険者免責を定めた規定であり︑その掲げる主な免責事由は次の通りである︒すなわち︑一︑①精神障

  害または意識障害による傷害︒意識障害が︑被保険者が原動機付車両の運転手として血液中のアルコール含有度が︑一゜ω%を

 超える酒酔いによる場合︑化学製剤︑麻薬および錠剤の摂取による場合︑卒中発作︑てんかん発作または被保険者の身体全

 体を襲う痙攣発作による場合も同様である︒ただし︑このような意識障害または発作が当該保険契約の範囲に含まれる傷害

 事故によって引き起こされた場合は︑保険保護が与えられる︒②故意に犯罪行為を実行または企図することによって被保険

 者に生ずる傷害︒③直接または間接的に戦争または内乱によって生ずる傷害︒被保険者が国外旅行中に戦争に遭遇した場合

  は︑戦闘行為が始まった日の夜一二時から最大一四日間保険保護が受けられる︒戦闘または内乱に起因し︑戦争を遂行する

 当事者の領土外で行われるテロ攻撃による傷害も付保される︒ただし︑戦争や内乱に積極的に参加した場合は保険保護が除

(17)

  外される︒④被保険者が︑ドイッ法により免許が必要とされる航空機操縦士およびその他航空機の乗組員として被る傷害︒

 ⑤被保険者が原動機付車両の運転者︑運転助手または乗客として走行中および最高速度の到達を目標とする練習走行中に被

  る傷害︒⑥直接または間接的に原子力によってもたらされた傷害︒二︑①放射線による健康傷害︒②医療措置または手術に

  よる健康傷害︒ただし︑手術または医療措置が当該契約の範囲に含まれる傷害が原因で行われる場合は保険保護が与えられ

  る︒③感染︒ただし︑病原体が当該保険契約の範囲に含まれる事故による負傷により体内に侵入した場合は保険保護が与え

  られる︒④食道経由の固体または液体物の摂取による中毒︒三︑腹部または下腹部ヘルニア︒①それが当該保険契約の範囲

  に含まれる外部からの激し作用によって生じた場合は保険保護が与えられる︒②椎間板の損傷︑内部器官の出血および脳出

  血︒ただし︑それらが︑当該保険契約の範囲に含まれ約款1条3項に該当する傷害事故を主たる原因として生じた場合は保

  険保護が与えられる︒四原因を問わず︑精神的な反応による病的な障害︒

︵27︶ ≦ζ゜︒°︒o宅\㊥巳⇔臣きo﹃㌔岱゜O°︵闇ロ︒︒︶∨>o日◆ωN已目●一白い厚巳゜︒°︒\家§声見PPO°︵穿゜∨︶w>目目.◎⇔N已目●一﹀ζeo︒︒︒︒⁝巨o庁o冒き見﹈︶巽

  ↓oCσO日ヒo且oロ一日力各日8エo﹃ごロ合=<自゜︒村ゴ①日日一ゆ芯くo冨声±﹂曽oり゜±N開∴odO=一〇﹈一②いS<2︒・勾⑦いS②ρoり゜⇔ご綱已゜︒°︒o≦\

  ㊥葺゜臣き買PρO︵増口o︒︶w>°琴阜ひ゜なお︑現行AUB第二条︵八八年AUB第八条︶は︑﹁病気または疾患が︑傷害事故に

  よって招来された健康傷害またはその結果に協働作用︵ヨ一再≦︷﹃オ0コ︶した場合には︑給付は病気または疾患の寄与分に応じて

  減額される︒寄与率がNい%より少ないときは︑減額は行われない﹂と定めている︒病気または疾患が傷害事故と協働して健

  康傷害またはその結果を招来し︑両方の原因のいずれもそれだけでは既に発生した結果を生じさせない場合には︑病気また

  は疾患が寄与したと判断される︒○ユ日βP①゜O右︵闇ロや︶>5日゜昏N已日ゆ゜︒°

︵28︶ 現行AUB二条一項a号参照︒≦5°・o≦︑勺茸︒江ぎ9p①゜〇三穿゜°︒︶∨﹀ロ日゜宝N已日巴日⁝即O一゜・°・\ζ§日ppO三9°<︶°︾コ日゜

  ひN已日警︾己ロ︒°︒°︒る臣日βPpO°︵市o°や︶﹀°日ま昌き吻ドなお︑山下︵丈︶・前掲注②九一二頁︒

︵29︶ 犀巳゜・°・\ζ胃戸①゜洋○°︵市昌゜︿シ﹀目日bN已日巴﹀ご自o°︒°︒⁝Oユ日β①﹄右ρ︵穿゜よ︶∀﹀口日゜ωω巨日巴゜

︵30︶ ﹈﹈O出昌゜ひ﹈⇔くS<Φ冨男一薯ぷ品◎°力゜<ωS本件では︑原告は被告保険会社との間で3口の傷害死亡倍増特約付きの生命保険

  契約を締結しており︑被保険者の死亡宣告後︑被告は原告に契約通りの生命保険金を支払ったが︑傷害死亡特約に基づく傷

  害死亡保険金の支払を拒否したため︑原告は保険金支払請求の訴えを提起した︒

︵31︶ 0︒目︒TζO=oT≦台零□PPO°︵穿゜司︶°>o日∩ω三匡合︒旨き見ρPρ︵市PS︶㊨︒り゜よ一ω⁚Od旨丙日①目ま゜・9︒一臣︒●一ぽ器o﹇邑象①σ・−

  目o°・け﹇°︒冨ヒ目o≦9旨oq<8団昌民目オg已邑ロd巳Φ8匹日02廿ユく讐gごロひ=<o呂⇔ゴ6日田σ︒㊨No旨o庁ユ津日﹃合①○霧①目o<o宣o庁o日ooq°・忌゜・°・6〒

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について      ︵都法四十六ー二︶ 二二五

(18)

二二六

 ゜・︒書戸⑦゜︒ω∨一ωM°︒﹂ω②⁚Oユ日貝p①゜ρ︵問ロや∵﹀白日ωやN已日●一なお︑一九八八年の約款改正に際して︑温度と天候の影響

  による健康傷害を免責事由として定めた六一年AUB二条三項c号は︑二条四項の免責事由である﹁精神的反応による病的

 障害﹂の中に併合された︒<σq一゜≦5°・o宅這茸゜江S°﹁∨①﹄°O°︵市P°︒ア゜り゜□S

︵32︶ ヒo巨︒〒忌O o了≦①oq宕おCb°︵市P<ソ>o日bω゜︒寸○さ⁝︒力ε日廿π室△自oo巳990日⊂コ宣=ヨ︒リヨ器09≧信Q目o日8⊂昌皆⁝Φ﹃︒︒㌣

 o庁9己昌oq°︒ひo合ロoq已ロσqo具﹀⊂ロロ︶メピoげΦロ︒・<6﹃︒・﹇9Q目ロσq︒・∋①合N﹇昌一⇔やメOo◎uoり﹂O一゜

︵33︶ ≦已゜︒°・o≦這葺o苔き巾おP旬゜○令︵市5°°︒ソ﹀コ日゜書⁝Ou己臭−室O=o﹃1≦高コoでPPO°︵市o°ロン﹀白∋°O台⁚Oユ日βρPO°︵市Pやソ﹀白日゜

  ぱN已日芦もっとも︑腓返りのような部分的な痙攣発作は約款ヒ免責事由とされていないが︑全身の痙攣発作については︑

  現行約款上免責事由として掲げられているため︵AUB二条一項a号参照︶︑被保険者が全身の痙攣発作により溺れた場合

  には︑保険保護を受けられないことになる︒切目︒下ζo=︒T≦①唱︒﹁﹀°pO°︵市P∨ソ﹀・日b﹄一.

︵34︶ bo目o汁1ζO=oT≦①σqロo炉①゜o°O°︵市Pや︶⇒﹀白ヨ゜Oやご≦5°︒oジ這葺否穿きΦ﹁PPO°︵市戸︒︒ア﹀昌ヨ∨ω⁝Oユ日β知﹄令O°︵市P心︶曽﹀ロ日

  UやN已日㊨﹂°

︵35︶ 意識障害とはどのような状態を指すものかについては議論があるが︑リーディングケースであるライヒ裁判所一九四〇年

  五月一〇日判決は︑意識障害は意識喪失と同視されるべきものではなく︑また感覚作用の完全な停止と理解されるべきもの

  でもなく︑それは︑認識力と反応力の本質的な損傷を伴う感覚機能の障害であって︑危険を認識し制御する能力を喪失せし

  める意識の障害または意識の朦朧であると判示している︒問ON一9二P°り゜い一゜この判決によって示された意識障害の解釈基準

  は︑その後の判例によって踏襲され︑現在︑意識障害は︑被保険者が自分の置かれている危険な状況に対処することができ

  ないほどの︑疾病またはアルコール︑麻薬︑薬物等に起因する認識力と反応力の損傷だと一般的に理解されている︒≦5°・o≦

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皿 外来性の存否をめぐる事例とその検討

︑第H節で検討してきたように︑傷害事故ないし不慮の事故の外来性とは︑傷害の原因が被保険者の身体の外部から

(19)

の作用であることをいうものであり︑したがって︑傷害がもっぱら被保険者の身体の外部からの作用によって生じた

ものであることが明らかである場合には︑外来性の要件の存在︵すなわち外来の事故であったこと︶は当然認められ

ることになり︑また逆に︑被保険者の死亡などの身体傷害が疾病のみを原因とすることが明らかである場合には︑外

来性の要件が満たされないのは︑言うまでもない︒

 しかし︑傷害の発生を招来しやすいような素因を身体内部に抱えている被保険者が︑何らかの外部的な作用によっ

て素因が現実化し︑傷害が発生するに至った場合においては︑外来性の有無をどのように判断するかが問題となる︒

この場合には︑一方では外部からの身体への作用という意味での事故の発生は認められるが︑他方では当該事故およ

びそれによる身体傷害が被保険者の身体の疾患等に起因するとも考えられるため︑外来性の要件の存否についての判

断は容易ではない︒

 これまで︑傷害保険における傷害事故の外来性の存否をめぐって争われた裁判例は︑数多く存在しているが︑ここ        ︵1︶ では便宜上︑これらの裁判例を﹁外来原因先行型﹂と﹁疾病先行型﹂の二類型に区分けしたうえで︑さらに︑医療過

誤に関する裁判例も取りあげて︑検討することにする︒

 なお︑傷害保険普通保険約款一〇条一項は︑﹁被保険者が第一条︵当会社の支払責任︶の傷害を被ったときすでに

存在していた身体の傷害もしくは疾病の影響により︑または同条の傷害を被った後にその原因となった事故と関係な

く発生した傷害もしくは疾病の影響により同条の傷害が重大となったときは︑当会社は︑その影響がなかった場合に

相当する金額を決定してこれを支払います﹂と定めている︵限定支払条項と呼ばれる︶︒これは︑傷害事故と無関係

な疾病等により傷害事故の結果としての身体傷害が加重された場合に疾病等の影響がなかった場合の身体傷害の程度

を判断して保険金を支払うとするものであり︑外来の事故と疾病とが競合して傷害が発生する場合にまで当然に適用

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について       ︵都法四十六ー二︶ 一二一七

(20)

二二八

されるものではないが︑これまでの裁判例の中には︑この規定に基づいて︑被保険者の死亡が外来の事故と身体内部        の原因とが協働して生じたものであるとして︑割合的認定をするものもある︒学説においては︑定額給付型傷害保険       ︵3︶ が定額保険であることから︑割合的認定をすることについて疑問ないし反対の見解もないわけではないが︑事故と疾

病が協働原因となっていると認定できるような場合については︑オール・オア・ナッシング的な処理よりも割合的因

果関係理論を採用したほうが衡平に合致すると考えられるので︑このような解決法も極めて妥当なものだと言えよ

ハ  

う︒もっとも︑生命保険の災害関係特約や生命共済約款においては︑既存の身体障害または疾病の影響がある場合の        ︵5︶ 限定支払条項が設けられていないので︑因果関係の割合的認定をするのは難しいとされている︒

皿−一 外来原因先行型の裁判例

 皿−一−一 裁判例の紹介

 まず︑第一類型は︑被保険者の直接の死因は急性心不全などの発作性の疾病であるが︑当該疾病の発作が何らかの

外部的な原因によって生じたものと認められる場合である︒

 この類型の裁判例には︑外部からの何らの作用があったことを認めたうえで︑このような外部からの作用が具体的

に被保険者の死亡または後遺障害等を招来するような不慮の事故に当たるか否か︑すなわち外来性の要件が存在する

か否かを判断するものと︑一応外来性の要件を満たす事故に当たるとしたうえで︑この外来の事故が疾病の発作を引

き起こし︑ひいては被保険者の死亡等を招来したか︑すなわち︑事故と被保険者の身体傷害ないしその結果としての        死亡等との間の相当因果関係の有無を問題にするものとがある︒

 前者の裁判例としては︑①大阪地判平成四年一二月一︑一日判例時報一四七四号一四三頁︑②大阪地判平成五年八月

(21)

三〇日判例時報一四七四号一四五頁︑同控訴審判決である大阪高判平成六年四月二二日判例時報一五〇五号一四六

頁︑③東京地判平成八年六月七日判例タイムズ九二七号二四二頁が挙げられる︒

 このうち︑①判決は︑港湾労働に従事してきた被保険者が︑外気温二・九度という低温の環境で船内作業中に急性

心不全を起こして死亡したとして︑保険金受取人が生命保険契約に附帯する災害割増特約に基づき給付金の支払を求

めた事案であるが︑裁判所は︑解剖所見や被保険者の年齢︑従前の健康状態︑当日の気象状況および労働内容を総合

考慮すると︑同人は︑従前からの高血圧のために冠動脈硬化が進んでおり︑急性心臓死の素因を有していたところ︑

当日の低温の環境での労働が引き金となって︑急性心不全を招来したものと認められるとしたうえで︑﹁死亡を招来

するような素因を身体内部に抱えている人が︑何らかの外部的なきっかけがあって素因が現実化し︑死亡するに至っ

た場合︑そのようなきっかけが︑日常生活上普通に起こり︑通常人であればおよそ死亡には結びつかないものである

場合にまで︑それを外部性を有するものとして︑不慮の事故の中に含めるのは相当でない﹂と判示し︑本件では︑低

温気象条件下での労働が引き金となって急性心不全が生じたことからすると︑被保険者の死亡の原因が身体の外から

の作用によるものと言えなくもないが︑外気温二度程度というのは冬季であれば稀なことではないこと︑被保険者が

作業をした船槍内が外気に比べて低温であるとは考えられないこと︑作業内容も普通と大差がなかったこと︑同人は

少なくとも昭和五九年二月以降は高血圧状態にあり︑また冠動脈硬化が見られ︑これが同人の死亡に重大な影響を与

えていると考えられることなどを総合すると︑同人の死亡当時の低温の気象は︑日常生活上普通に起き︑通常人であ        ︵7︶ ればおよそ死亡には結びつかない事象であったとして︑不慮の事故の外来性を否定した︒

 また︑②の大阪地裁平成五年判決は︑被保険者が夏日の午前八時ころから地下一階コンクリート打設作業を開始

し︑昼の休憩後︑午後一時から右打設作業を再開したところ︑約一時間半後に︑突然床にうつくまり︑同僚らが同人

傷害保険契約における傷害事故の外来性の要件について       ︵都法四十六⊥一︶ 二二九

(22)

二三〇

を日影に運び救急酸素を吸入させ︑救急車で病院へ搬入したが︑まもなく日射病による急性心不全により死亡したと

して︑保険金受取人が不慮の事故を理由に災害割増特約および傷害特約に基づき給付金の支払を求めた事案である

が︑裁判所は︑災害割増特約等にいう不慮の事故とは︑偶発的な外来の事故で︑かつ︑昭和四二年一二月二八日行政

管理庁告示第一五二号に定められた分類項目に該当するものとし︑分類項目の内容については︑﹁厚生大臣官房統計

調査部編︑疾病︑傷害及び死因統計分類提要︑昭和四三年版﹂によるものとされ︑その分類項目12には﹁自然及び環

境要因﹂による不慮の事故と記載されているが︑﹁過度の高温﹂が不慮の事故から除外されているところ︑この﹁過

度の高温﹂とは︑気象条件などの自然的要因か人為的要因を問わず︑何らかの原因で外気または体温が急激に高温化

した場合を指すものとしたうえで︑﹁日射病は︑頭部や頸部に日光の反射を受けて発病する病気であり︑日光の反射

による外気または体温の急激な高温化という状況が存在しないと発病は考えにくいことを考慮すれば︑被保険者の死

亡は︑それが人為的要因に基づくものをも含むか否かを問わず︑﹃過度の高温﹄によるものであることは明らかであ﹂       ︵8︶ ると判示し︑本件死亡が不慮の事故に該当しないとした︒これに対し︑同控訴審判決である大阪高裁平成六年判決

は︑前記除外事由である﹁過度の高温﹂が︑全べての要因に基づく﹁過度の高温﹂ではなく︑﹁過度の高温中の気象

条件によるもの﹂に限定されると制限的に解釈したうえで︑﹁本件作業所には作業現場と外部を区切る鉄板矢板が設

置されていてその反射熱があり︑さらにコンクリートの凝固熱︵気温が高いほどその進行が著しい︒︶の発生により

劣悪な作業環境となっていて︑それに当日の気象条件が相乗した結果︑被保険者が日射病にかかり死亡したと認める

のが相当であり︑直射日光による外気又は体温の高温化のみによって発病したとは認めがたい﹂と判示し︑原審とは       ︵9︶ 逆に不慮の事故の成立を認め︑保険金請求を認容した︒

 さらに︑③判決は︑被保険者が白血病治療のため放射線療法と全身化学療法等を受けていたところ︑神経症状が出

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