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論 文 の 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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論 文 の 内 容 の 要 旨

安全保障には、非伝統的安全保障の分野があり、非国家主体によって作為的につくら れる危険や脅威を非伝統的脅威という。テロは、非伝統的脅威の代表として挙げられる ことが多い。そのテロの中でも、CBRN(化学・生物・放射性物質・核)テロは、無差 別大量殺傷テロの代名詞と位置づけられている。なお、CBRNは、テロリズム研究の中 では、一般に「シーバーン」と発音されている。

このようなテロを行う組織について、一般には、カルト団体を含めた新興の宗教的組 織が行うものであり、伝統的な政治的組織(右翼・左翼・分離主義組織等)は着手しな いものだと言われてきた。これは、宗教的組織にいわば狂信性を、政治的組織には合理 性をイメージする者にとって受け入れられやすい見方であった。しかし、統計上では、

宗教的組織に限らず政治的組織も含めてあらゆる組織がこのテロに関与している。

本研究では、「テロ組織はどのような要因によりCBRNテロに関与するのか」という 問いを設定し、一定の分析枠組に基づく事例研究を通してこれを解明していく。最終的 には、その結果を踏まえて、CBRNテロの将来の可能性について議論するための指標を 提示する。これが本研究の目的である。

本研究の特色は3つある。第一は、研究の目的に適した既存の分析枠組が存在しない ため、独自の枠組を提示したことである。具体的には、CBRNテロを促進する要因と抑 制する要因の2つの側面から分析する枠組を構築した。第二に、CBRNテロの特性を考 慮したことである。CBRNは通常兵器に比して、使用せずとも保有していることを示す、

あるいは保有していると思わせるだけで、政府を恫喝し、民衆に恐怖やパニックを引き 起こすことが可能である。そのため、CBRNテロは取得や保有である「CBRNの追求」

と実際の使用である「CBRNテロの実行」を区分して考える必要がある。第三は、CBRN テロに着手したことのない組織を事例研究に加えたことである。ややもすれば、このよ うな研究は、CBRNテロを行った組織ばかりを分析する傾向にあるが、要因を解明する のであれば、逆に CBRN テロに着手しなかった組織を加えた方が、関与した組織との 差異が明確になるであろう。

事例は、CBRNテロを実行した組織としてハマスとタミル・イーラム解放の虎(LTTE)

を、CBRNを追求した組織としてアイルランド共和軍(IRA)を、CBRNテロに着手し なかった組織としてイスラム集団の合計4組織を分析した。

分析の結果、4つのケースに限って言えば、CBRNを追求し、テロの実行に至るには、

促進要因としてCBRNテロの意図、能力、CBRNテロに踏み切らせるトリガーの3つ の要因が全て揃っているという共通項を見出すことができた。また、抑制要因の分析で は、テロ組織の組織環境によって差異はあるが、CBRNテロにあたって、それぞれの組 織が内外の支持者などへの配慮と政府のテロ対策により、何らかの抑制を受けているこ とが明らかになった。

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さらに、事例研究の結果を踏まえて、組織環境を通じた CBRN テロの将来の可能性 の高低を判断する指標を提示した。これは、テロ組織と支持者との関係並びにテロ対策 の効果からの評価である。支持者もなく、政府の法執行力が及ばないような地域に所在 するテロ組織は CBRN テロに最も関与しやすい。他方で、支持者との関係が緊密で、

さらに政府の法執行力が全土に及んでいるような地域に所在する組織は、CBRNテロへ の関与は最も低くなる。CBRNテロとテロ組織の関係についてのこのような指標は、今 後のCBRNテロ研究の進展に寄与するものであると思料する。

参照

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