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過冷却促進ポリフェノールと氷核タンパク質の相互作用

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,201927

過冷却促進ポリフェノールと氷核タンパク質の相互作用

共生基盤学専攻 バイオマス転換学講座 資源植物創成学 出原 信大

1.緒言

近年,樹木の木部細胞に含まれる数種類のポリフェノールによって氷核活性が阻害され,

凍結温度が低下することが明らかにされた。これらは過冷却促進ポリフェノールと呼ばれ,

氷核細菌などの氷核形成物質の存在下で水溶液の凍結温度を低下させる効果を持つが,そ のメカニズムは十分には明らかにされていない。特に,氷核活性を阻害するメカニズムの 解明には,過冷却促進ポリフェノールと氷核形成物質との相互作用について精査すること が必要である。しかし,氷核細菌の場合は菌体のまま利用されてきたため,このような研 究には不向きである。そこで,活性本体である氷核タンパク質を利用できれば,両者の相 互作用の検証に用いることができると考えた。そこで本研究では,氷核細菌由来の氷核タ ンパク質を組換えタンパク質として調製し,これが氷核形成物質として過冷却促進ポリ フェノールとの相互作用の研究に利用可能であることを明らかにしようと試みた。

2.方法

本研究では,氷核細菌Erwinia ananasの氷核活性の本体である氷核タンパク質inaAを組 換えタンパク質として調製することにした。まず,Hisタグを付加したタンパク質発現用 プラスミドベクターに E. ananas由来の氷核遺伝子inaAを挿入して,それを用いて形質転 換した大腸菌を LB培地中で振盪培養し,目的の組換え氷核タンパク質(His-inaA)の発現を 誘導した。また,対照区として,inaAの代わりにβ-ガラクトシダーゼをコードする lacZ 遺伝子を用いた組換えタンパク質(His-lacZ)を同様の手順で発現誘導した。これらの菌体に バッファー[20 mM sodium phosphate buffer (pH 7.4), 500 mM NaCl, 20 mM imidazole]を加え て超音波処理を行った後,9,000×g20分間遠心分離した。そのうち,上清はさらに100,000

×g1時間超遠心し,得られた上清を可溶性画分とした。次に,可溶性画分はニッケル イオンを利用した金属アフィニティー精製に供試して精製画分を得た。一方,封入体回収 のため,菌体破砕後の沈殿に4%(w/v) Triton X-100を含む洗浄バッファー[10 mM potassium phosphate buffer, 1 mM EDTA, 5 mM K2S2O5 (pH 7.0)]を加えて懸濁し,室温で30分間振盪し

た後,9,000×g20分間遠心分離する洗浄操作を2回繰り返した。その沈殿に超純水を加

えて懸濁し,遠心分離する洗浄操作を 3回繰り返して得られた沈殿を封入体画分とした。

3.結果と考察

アフィニティー精製で得られた組換えタンパク質画分の純度をSDS-PAGEで調べると,

夾雑物の混入がみられたものの高度に精製されていた。この精製画分の凍結温度は,バッ ファーのみの対照区と比べて15℃程度高くなったため,氷核活性が検出された。さらに,

His-inaA存在下で過冷却促進ポリフェノールのEpigallocatechin gallate(EGCG)を添加する と,EGCG無添加の対照区と比べて凍結温度が最大8℃程度低下したため,His-inaAに対 する氷核形成阻害活性も検出された。さらに,EGCGの濃度を相対的に高めると氷核形成 阻害活性も高まった。今後,過冷却促進ポリフェノールとHis-inaAとの結合の有無を調べ るために,さらに純度を高めたHis-inaA画分の調製を試みている。

参照

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