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初めて基礎看護技術演習に参加した臨地実習指導者の学び

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに

近年、疾病構造の変化や在院日数の短縮などに伴 う訪問看護の広がり、急速な高齢化の進行と核家族 化による介護サービスを提供する場の多様化、生活 習慣病対策・健康増進における教育・指導など看護 職の役割は社会の要請に応じて変化し、期待はます ます拡大してきている。平成23年2月厚生労働省

「看護教育の内容と方法に関する検討会報告書」に よると、看護師教育における教育方法として、演習 において実習施設から招いた専門家の指導を受ける ことにより臨床で用いている新しい技術を学ぶこと ができ、また臨地実習の際に既知の指導者がいるこ とで学生が実習に取り組みやすくなる効果が考えら れる1)と明記している。このような背景を受け、教 育機関の中には、臨床現場との連携を図る為に病院 と教育機関のユニフィケーションを行っているとこ ろもある。

先行研究では、基礎看護技術演習に実習指導者が 参加することによる実習効果の向上として、学生と 実習指導者、教員との人間関係の構築や実習指導者 の指導意欲に効果的に働く2)と報告しているもの や、実習前の学習の確認や学内での学習方法の理 解、技術演習の内容を知るといった学習状況の把握 が出来る3)と報告しているものがあるが詳細な報告 は少ない。

そこで、基礎看護技術演習に実習指導者が参加 し、「お互いの顔が分かる関係」作りをすることで、

学生にとっては学習効果の向上、実習指導者にとっ

ては学生の看護レディネスの把握をすることがで き、実習指導に活かす事が可能になるのではないか と考えた。本研究レポートでは、実習指導者に焦点 をあて、基礎看護技術演習に参加することによる学 びについて検討する。

Ⅱ.研究目的

初めて基礎看護技術演習に参加した臨地実習指導 者の学びを明らかにする。

Ⅲ.研究方法 1.研究デザイン

Type 1:因子探索研究のなかでの質的帰納的研究

2.研究対象者

研究者所属大学の基礎看護学実習の施設で、看護 部長の推薦があり研究協力の承諾が得られた指導者 2名。

3.基礎看護技術演習の内容

実習指導者が参加した基礎看護技術演習は、臥床 患者のリネン交換、体位変換、車椅子への移乗・移 送、バイタルサイン測定の演習であった。演習期間 は、6月~7月であった。

1)事前打ち合わせ目的と内容

事前打ち合わせの目的は、基礎看護技術の演習内 容と学生の看護レディネスを理解する。演習ごとの 教授方法の特徴や工夫点、課題を共通認識する。学

初めて基礎看護技術演習に参加した臨地実習指導者の学び

1 志田久美子  1 小薬祐子  1 佐藤亜月子  1 吉田千鶴  2 城野美幸

1帝京科学大学医療科学部看護学科 2前帝京科学大学医療科学部看護学科

Learning of the clinical practical instructor who participated in the basic nursing technique exercise for the first time

1

Kumiko SHIDA 

1

Yuko KOGUSURI 

1

Atsuko SATOU 

1

Chizuru YOSHIDA 

2

Miyuki JONO

要旨

 本研究は、初めて基礎看護技術演習に参加した臨地実習指導者(以下、実習指導者とする)の学びを明らかにすることを目的 に、実習指導者2名に半構造化面接を実施した。その結果、【学生の看護レディネス把握】、【指導者としての喜び】、【演習での 学生との関わり方】、【実習指導への示唆】、【教員との関係構築】の5つカテゴリーが抽出された。実習指導者が演習に参加する ことは、学生との関わり方や指導のあり方を考える学生の臨地実習効果向上の機会となることが示唆された。

キーワード:臨地実習指導者、基礎看護技術演習、実習指導

(2)

生とのコミュニケーションをはかり、お互いの理解 を深めるチャンスにする。実習指導者は、学生に対 し看護師の役割モデルをとり、職業アイディンティ ティを高める。臨床指導者と良好な協働関係を構築 することである。

事前の打ち合わせ内容は、演習ごとに2回に分け て行った。1回目は基礎看護技術演習を担当する教 員で、学習内容、目標、手順、演習の流れについて 打ち合わせを行った。2回目は実習指導者を含め て、学習内容、目標、手順の確認を行い、学生の看 護レディネスについて情報共有、演習の担当学生を 確認した。教員と実習指導者の指導内容を統一する ために、指導のポイントを確認し、原則は科目責任 者の提示した手順にそって実施してもらうように調 整した。

2)当日の基礎看護技術演習

演習は1コマ90分、2コマ続きで演習を行った。

学生95名を1クラスで行い、1コマの演習に参加 した教員は6名で、教員1名が1グループ4~5人 のグループを2~3グループを担当した。実習指導 者2人は教員と一緒に2~3グループを担当した。

なるべく多くの学生と関わることができるように毎 回担当グループを変更した。演習中は、学生からの 質問や気になる場面に対応した。

3)演習終了後の「振り返り」

演習終了後は、学生の演習状況、目標の到達度に ついて確認した。また、実施において臨床からの視 点で意見交換を行った。

4.データ収集期間

2017年6月4日~10月4日

5.データ収集方法

1)半構造化面接による聞取り調査

面接はプライバシーの保てる個室で個別に行い、

面接回数は1回、面接時間は30分~60分である。

面接内容は対象者の同意を得て録音し、逐語録を作 成した。

2)聞き取り調査の内容

(1) これまで学生の実習指導の経験はあるか。あ る場合はどの領域の実習であったか。

(2) 1年生初期の学生のイメージはどのようなも のであったか。

(3) 演習に関わったことで学生のイメージに変化 はあったか。どのような場面で変化したか。

(4) 技術演習に参加することで、実習指導に役立

つことはあったか。

(5) 演習に参加することはどのような意味がある と思うか。

6.分析方法

作成した逐語録をもとに、類似した意味内容

(コード)ごとにカテゴリー化(サブカテゴリー)

し、さらに上位概念のカテゴリー化を行った。

7.倫理的配慮

研究対象者に文書と口頭で研究目的・方法、面接 内容の録音と逐語録の作成、個人情報保護、自由意 志による協力と拒否権、研究に協力することの利益 と不利益、データの管理、結果の公表方法等を説明 し、同意を得てから実施した。本研究は、帝京科学 大学の倫理審査委員会の承認を得ている(受付番号 第17040号)。

Ⅳ.結果

分析の結果、以下のことが明らかとなった。カテ ゴリーは【 】、サブカテゴリーは[ ]で表す。

実習指導者が基礎看護技術演習に参加することに よる学びの内容(表1)として【学生の看護レディ ネス把握】、【指導者としての喜び】、【演習での学生 との関わり方】、【実習指導への示唆】、【教員との関 係構築】の5つのカテゴリーに分類された。以下、

それぞれのカテゴリーについて説明する。

1.【学生の看護レディネス把握】には、[自分の 学生時代を想起させる学生]、[学生の特徴]、[事前 学習を行っている学生と行っていない学生の存在]、

[考えながら演習を行う学生]、[患者役への言葉使 い]、[学生への先入観]、[授業内容の把握]という 7つのサブカテゴリーがあった。

[自分の学生時代を想起させる学生]では、演習 に参加してみて、演習中、現役学生が喧騒の中で演 習を行っていることに、自身の学生時代を想起し た。

[学生の特徴]では、演習に参加してみてずるが しこい学生や寂しがりやの学生が多いと感じてい た。

[事前学習を行っている学生と行っていない学生 の存在]では、演習の課題として事前学習を行うこ とになっているが、きちんと行っている学生と行っ ていない学生がいるという学生の状況を捉えてい た。

[考えながら演習を行う学生]では、要点を教示

(3)

すると、内容を正確に実行できるようになった学生 は考えながら演習を行っていると実習指導者は捉え ていた。

[患者役への言葉使い]では、看護師役の学生は 患者役の学生に敬語で「声かけ」を行っていたの で、学生は患者という相手の立場を考えながら演習 していると捉えていた。

[学生への先入観]では、自分の学生時代を想起 し、現役学生は何も考えていないのではないかとい う先入観があったが、実際はきちんと考えているこ とに気がついていた。

[授業内容の把握]では、授業を聴講したのちに 演習へ参加したので、学生がどのような内容を学習 したかを理解でき、そのため演習での指導は平易で 表1 実習指導者の演習参加による学びの内容

カテゴリー サブカテゴリー コード

学生の看護 レディネス

把握

自分の学生時代を想起させる学生 ・1年生の演習に入ってみて、うるさい感じはあったが、自分たちも そうだったなっていうのを思い出す感じでした。

学生の特徴 ・学生はちょっとずるがしこい所もありますし、寂しがりやな所もあ る子が多い気がしました。

事前学習を行っている学生と行ってい ない学生の存在

・(学生は演習前に)事前学習をして参加していると聞いていたけれ どその感じはあまりしなかった。中にはちゃんと調べている学生も いた。

・演習は個人差があり、事前学習をやってきている学生とやってきて いない学生がいた。

考えながら演習を行う学生

・流れのやり方の質問が多いので紙面上で書いてあるのと実際にやる のではちょっと分からないところもあると思うので、実際にコツと か教えてあげることで出来ていたのでちゃんと考えてやっていると 思います。

患者役への言葉使い ・患者さんへの声かけは敬語でやっていました。

学生への先入観 ・自分の中に学生は何も考えていないんじゃないかという先入観が あったんだと思います。

授業内容の把握 ・授業に参加してから演習にはいったので、授業でどんなことを学生 が学んでいるのか分かって教えやすかった。

指導者とし

ての喜び 指導する喜び ・(学生が)脈を見つけられた時とかは、教えていて嬉しいです。

演習での 学生との 関わり方

学生が演習で成功した部分を褒める ・スムーズにできていると思ったので、もっと自信持ってやっていい よと言ったら、ありがとうございますと言ってきたので、やっぱり そういうことに気づいてあげられるようにしたいと思います。

学生の考えを引き出す関わり方 ・(学生が)考えていることをどんどん引き出していかないといけな いのかなと思いました。

理由を聞く ・事前学習をやってこない学生には、理由があると思うので何でやら ないのか聞いてみたいと思います。

継続的な関わり ・自分に自信がない学生は継続的に関わるとよいと思った

実習指導へ の示唆

実習指導者が演習から学生に関わるこ とによる実習での緊張緩和

・演習から学生に関われると、学生が病棟に(実習に)来たときに 知っている看護師さんがいるというだけで緊張しないのかなと思い ます。

学習内容の把握による指導のしやすさ ・実習指導に役立つ部分は、どういう授業を受けてきたかがわかって関わるほうが指導しやすいと思います。

学生理解が指導に活きる ・その学生の個人的なところをちょっと理解していたほうが、かける 言葉、勉強してきた内容、アドバイスの入れ方とかもちょっと変わ るかなと思います。

常識のある態度を教える

・人としての常識、話している人の目をみるとか手を止めてちゃんと 聞くとか改善していってほしいと思います。

・人として失礼がないようにということは、はっきりと言っていこう かなと思います。

学生に期待しすぎない ・期待しすぎずに一緒に(実習を)やっていけたらなと思います。

教員との

関係構築 教員との話しやすさ ・教員とも話しやすくなってくる気がします

(4)

あった。

2.【指導者としての喜び】には、[指導する喜 び]というサブカテゴリーがあった。学生に脈拍測 定の要点を指導することで現役学生が測定部位を発 見できて喜ぶ姿をみて教える喜びを感じていた。

3.【演習での学生との関わり方】には、[学生が 演習で成功した部分を褒める]、[学生の考えを引き 出す関わり方]、[理由を聞く]、[継続的な関わり]

という4つのサブカテゴリーがあった。

[学生が演習で成功した部分を褒める]では、演 習を見て感じたことを学生に伝えることで学生の意 欲が高まるということを体験し、演習で成功した部 分を褒めることの大切さを学んでいた。

[学生の考えを引き出す関わり方]では、学生の 演習を観察した結果、学生は考察したうえで演習を 行っており、学生の考えを引き出していく関わり方 の必要性を感じていた。

[理由を聞く]では、事前学習を行わない学生が いたが、行わない理由があるはずであり、その理由 を聞くことの大切さを確信していた。

[継続的な関わり]では、継続して関わることで、

その学生の思いを理解してアプローチでき効果的な 指導ができると感じていた。

4.【実習指導への示唆】には、[実習指導者が演 習から学生に関わることによる実習での緊張緩和]、

[学習内容の把握による指導のしやすさ]、[学生理 解が指導に活きる]、[常識のある態度を教える]、

[学生に期待しすぎない]という5つのサブカテゴ リーがあった。

[実習指導者が演習から学生に関わることによる 実習での緊張緩和]では、演習から実習指導者が学 生に関わることができれば、実習で学生が緊張しな いのではないかと感じていた。

[学習内容の把握による指導のしやすさ]では、

学生がどのような授業を受けて実習に臨んでいるの かを理解して関わるほうが指導しやすいと感じてい た。

[学生理解が指導に活きる]では、個々の学生を 理解することでかける言葉やアドバイスの仕方も工 夫できると考えていた。

[常識のある態度を教える]では、学生は人とし ての常識がないので実習で指導していこうと考えて いた。

[学生に期待しすぎない]では、学校で演習して も実習で完璧にはできないことがわかり、期待しな いで一緒にやっていけたらよいと思えるようになっ

ていた。

5.【教員との関係構築】には、[教員との話しや すさ]とういうサブカテゴリーがあった。実習指導 者は教員と一緒に演習に参加することで、教員との 距離が縮まり話しやすさを感じていた。

Ⅴ.考察

初めて基礎看護技術演習に参加した実習指導者の 学びの内容として、【学生の看護レディネス把握】、

【指導者としての喜び】、【演習での学生との関わり 方】、【実習指導への示唆】、【教員との関係構築】の 5つのカテゴリーが抽出され、指導者は学生の看護 レディネスを把握することで、演習での関わり方を 考察したうえで実習指導への示唆を得ていた。神宮 寺ら4)は、基礎看護技術演習に臨床指導者が参加す ることによる指導者への効果として、学生の状況を 把握するだけでなく、学生の指導についてどのよう にするべきかを考察し、学生を受け入れようとする 意欲につながると述べているが、本研究レポートに おいても学生の看護レディネス把握と演習における 関わり方、実習指導への示唆を得ており類似した結 果であった。今回の研究対象者は、実習指導者講習 会を受講はしているが、実習で学生に関わった体験 が少ない実習指導者であった。実習指導者は、演習 で学生と関わる中で行動を変えるには理由を探らな いといけないという実習指導者講習会で学んだこと の大切さが確信に変わったと述べており、このこと は、理論と実践が繋がった瞬間であったといえる。

この体験を通して学生の行動が良い方向に変化する と実習指導者自身の達成感と喜びに繋がり、実習指 導者としてさらに成長できると考えられる。

先行研究では、実習指導者講習会を修了した指導 者が、学生指導上の困難を感じた場合、指導方法を 模索したうえで、学生が実習場所に受け入れられて いるという安心感がもてるように環境を整えること が大切であると述べている5)。実習指導者が実習で 学生指導をする前に演習に参加することにより、学 生の緊張緩和と学生の状況を把握することによって 指導がしやすくなると考えられる。また矢野ら6)

は、学生の実習満足感は実習指導者との関係が影響 するが、学生ひとりひとりの特徴を理解し、学生が 力を発揮できるような指導は臨地実習の場では難し いと述べている。実習前に実習指導者が演習で学生 に関わることで、学生の特徴や授業内容を把握した 上で実習指導を行い、効果的な指導が期待でき、学 生にとっても満足感の高い実習になると考えられ

(5)

る。

今後は、実習指導者が演習に関わることで、実習 にどのような影響があるのかを検討していく必要が ある。

Ⅵ.結論

実習指導者が演習に参加することによる学びの内 容として、【学生の看護レディネス把握】、【指導者 としての喜び】、【演習での学生との関わり方】、【実 習指導への示唆】、【教員との関係構築】の5つのカ テゴリーが抽出され、実習指導者が演習に参加する ことは、学生との関わり方や指導のあり方を考える 学生の臨地実習効果向上の機会となることが示唆さ れた。

引用文献

1)厚生労働省:看護教育の内容と方法に関する検 討会報告書,https://www.mhlw.go.jp/stf/

shingi/2r98520000013l6y-att/2r98520000013lbh.

pdf,入手年月日2018年8月28日.

2)神宮寺陽子・横山なぎさ・蛭田真澄:基礎看護 技術演習に臨床指導者が参加することの効果-

学生の学びと臨床指導者の反応から-,

看護教 育研究学会誌

,9(2),13-21,2017.

3)河野恵子・藤原敏恵・茅原路代:技術演習の授 業に臨床指導者が参加することによる効果,

看 護人材教育

,9(3)87-93,2012.

4)前掲2).

5)志田久美子・袖山悦子・望月紀子:実習指導者 が指導者としての役割を遂行していく過程とそ の影響要因,

新潟医療福祉学会誌

,10(2),

18-23,2010.

6)矢野順子・藤本ニ三代:基礎看護学実習生の実 習満足度調査,日本看護学会論文集,

看護教

,37,434-436,2007.

参照

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