自発的対称性の破れ
ゲージ不変性はゲージ場の質量項があると壊れてしまうために、ラグランジアンにゲージ場の質量項を入れるこ とができません。しかし、質量を持つベクトル場(ゲージ場)が必要になるのでどうにかしてゲージ不変性を壊す ことなく質量を持たせる必要性が出てきます(電弱相互作用を考えるときとか)。ここではどうやってゲージ不変 性を壊さずに質量を持たせられるのか見ていきます。
最初は簡単な場合を用いてどのような方法を使うのか見ていき、最後に可換なゲージ場(電磁場)を見ます。ここ での話が重要になってくるのは非可換ゲージ場での場合なんですが、ここでは触れません。また、対称性の自発 的破れの話題は、なんでパイオンの質量が異様に軽いのかといった問題にも絡んでいます。
ここではラグランジアンで行っていきますが、ハミルトニアンでも同様にできます。
古典的な実数スカラー場でのϕ4理論のラグランジアンは
L= 1
2(∂µϕ(x))2−1
2m2ϕ2(x)− λ 4!ϕ4(x)
これは非連続な変換ϕ→ −ϕに対して対称になっています。今から使うラグランジアンはこれではなく、mを質 量だと考えずに適当なパラメータと思ってしまいm2→ −µ2(µ2>0)のように変えたものを使うことにします
L=1
2(∂µϕ)2+1
2µ2ϕ2− λ
4!ϕ4 (1)
第二項は質量項っぽいですが、符号が逆なので質量項にはなれません。なので、このラグランジアンは質量0の スカラー場が相互作用しているものになっていて、これもϕ→ −ϕ対称性を持っています。µ2を質量だと思わな いので第二項もポテンシャルの中に入れてしまい
L= 1
2(∂µϕ)2−V(ϕ)
V(ϕ) =−1
2µ2ϕ2+ λ 4!ϕ4
まず知りたいのは非線形のポテンシャルV(ϕ)の形がどうなっているのかということです。このポテンシャルの最 小値は
∂V
∂ϕ =−µ2ϕ+ λ 3!ϕ3= 0 このときのϕは
ϕ= 0 もしくは
ϕ2= 6 λµ2
ϕ= ±
√6
λµ= ±v
という、3つの地点で極値を持つことになります。ϕ= 0でなくϕ0=±vでの2つが最小値(基底状態)になりま
す(ポテンシャルの最小値を基底状態と呼んでいきます)。+m2では極値としてϕ= 0しかもたなく、そこが最小
値となっています。−µ2でもϕ= 0で極値を持っていますが最小値にはなっていません。図にすれば
右側が−µ2の図ですが、これはワインボトル型とか呼ばれます。量子論的に考えれば基底状態は真空期待値によっ て表されるので
⟨0|ϕ|0⟩=⟨ϕ⟩0=±v
このように真空期待値が0にならないことを表します(下の補足も見てください)。これは真空の定義をしなおし たと言う事が出来ます。このとき重要なのは、±vに対応する真空は
⟨0+|ϕ|0+⟩=v , ⟨0−|ϕ|0−⟩=−v
というように異なった真空として与えられる(真空が縮退している)点です。|0+⟩と|0−⟩は直交させます(⟨0−|0+⟩= 0)。特に、演算子としてのϕの変換をZ−1ϕZ=−ϕとしたとき
⟨0+|Z−1ϕZ|0+⟩=−⟨0+|ϕ|0+⟩=−v̸=⟨0+|ϕ|0+⟩
もしくは、Zが片方の最小値の位置をもう片方にする変換の生成子なのでZ|0+⟩=|0−⟩となることから
⟨0+|Z−1ϕZ|0+⟩=⟨0−|ϕ|0−⟩=−v
となっているのが重要です(Zはユニタリー演算子)。この真空期待値⟨0+|ϕ|0+⟩はラグランジアンが持っている ϕ→ −ϕの対称性を持っていません。
これによって何がどうなっているのか見るために、この最小値周りで考えることにします(+vの方でやってい
きます)。ここからは、基底状態のvは真空期待値を指しているとします。ここからのズレ(ゆらぎ)を摂動的(基
底状態を基準に考える)に加えて
ϕ(x) =v+σ(x)
基底状態の値vに足しているので、量子論的に言えば、σ(x)は古典的な量から励起した状態への変化を表す物理 的な場、もしくは量子効果による揺らぎと見れます(ようはただの実数スカラー場による準古典近似)。ちなみに、
⟨ϕ⟩0=vの真空に対しては、演算子化したときのσ(x)の真空期待値は0です。
これを(1)のラグランジアンに代入すれば、基底状態付近でのラグランジアンになって
L = 1 2
(∂µ(v+σ(x)))2
+1
2µ2(v+σ(x))2− λ
4!(v+σ(x))4
= 1
2(∂µσ)2+1
2µ2(v2+σ2+ 2vσ)− λ
4!(v4+ 6v2σ2+σ4+ 4vσ3+ 4v3σ)
= 1
2(∂µσ)2+1
2µ2(v2+σ2+ 2vσ)2− λ 4!
( (6
λ)2µ4+ 66
λµ2σ2+σ4+ 4
√6
λµσ3+ 46 λ
√6 λµ3σ
)
= 1
2(∂µσ)2+1
2µ2(σ2+ 2
√6
λµσ)− λ 4!
(36
λµ2σ2+σ4+ 4
√6
λµσ3+ 46 λ
√6 λµ3σ
)
+const
= 1
2(∂µσ)2+1 2µ2σ2+
√6
λµ3σ−(36
24µ2σ2+ λ 24σ4+λ
6
√6 λµσ3+
√6 λµ3σ
)
+const
= 1
2(∂µσ)2−µ2σ2−
√λ
6µσ3− λ
4!σ4+const
constはvのみの項のことで、σ3以上の項は相互作用項です。これから第二項が質量項になっていることがわかり (場σの2乗があるため)、尚且つ符号も正しくなっていることがわかります。つまり、基底まわりで考えること で質量を持つスカラー場が現れたことになります。そして、このラグランジアンは変換としてはϕ(x) =v+σ(x) しかしていないので、元の質量mでのラグランジアンと物理的に同等なものです。さらに似させるために書き換 えれば
L=1
2(∂µσ)2−1
2(2µ2)σ2−
√λ
6µσ3− λ
24σ4+const なので、場σは外から何かを加えなくても質量を獲得し、質量√
2µ2を持つようになっていることがわかりま す。しかし、このラグランジアンは元のラグランジアンでの場の変換ϕ→ −ϕ(ここではσ→ −σ)に対する対称 性を持っていません。このように元々持っていた対称性がなくなる(見えなくなる)ことを、自発的対称性の破れ (spontaneous symmetry breaking)と呼んでおり、それによって質量が生成されます。自発的対称性の破れは超伝 導でのマイスナー効果に対する発想から始まっていて、ここでの話はそれの相対論的な場合です。
このような基底状態で対称性が破れる例はよくあり、例えば強磁性体なんかがそうなっています。これは高温で はスピンが任意の方向を向いているために回転対称性を持ちますが、基底状態ではスピンの方向が揃ってしまう ために回転対称性がなくなってしまうというものです。ただし、スピンの方向が異なっている基底状態へは回転に よっていけるために、見かけ上破れていると言えます。これは今みてきた話では±vという2つの基底があること に対応します(言い換えれば基底状態が縮退しているということで、その中から特別な状態を選んだせいで対称性 が破れて見えるということです)。こういったことから破れた対称性のことを隠された対称性と表現する場合もあ り、そちらのほうが的確な表現です。
磁性体の例だと分かりづらいかもしれないので、もっと直感的に分かりやすい例として使われるものを言って おきます。例えば、ボールペンのペン先を下にして机の上にがんばって立てたとします。これは横から見ると360
度同じ形をしているはずです(細かい形状は無視)。なので、回転不変性を持っているといえます。しかし、この 状態は相当不安定です。もっと安定した状態にするためにボールペンを倒してしまいます。そうすると、この倒れ た状態は安定しますが、回転不変性はなくなっています(倒れたボールペンは見る方向によって形が変わる)。こ れが自発的対称性の破れと同じようなものです(安定な状態というのが真空に対応します。このことは、状態はエ ネルギーの低い安定な状態へ向かっていくということからも想像しやすいものだと思います)。
次に連続的な対称性である大局的ゲージ不変の場合でみていきます。場は複素スカラー場ϕ(x)を使うことにし
L= (∂µϕ(x))(∂µϕ∗(x))−m2ϕ∗(x)ϕ(x)−λ(ϕ∗(x)ϕ(x))2
複素平面(ϕ1, ϕ2)で考えることにして、ϕ(x)を
ϕ(x) = 1
√2(ϕ1(x) +iϕ2(x))
と分解します(下の補足2で別の形で行っています)。ϕ1, ϕ2は実数場(√
2がつくのは計算上の理由です)。このラ グランジアンは大局的ゲージ変換
ϕ ⇒ eiαϕ
に対して不変になっています。上と同じように質量をパラメータ扱いして、−µ2におきかえて
L = (
∂µϕ(x))(
∂µϕ∗(x))
+µ2ϕ∗(x)ϕ(x)−λ(
ϕ∗(x)ϕ(x))2
= 1
2(∂µϕ(x))(∂µϕ∗(x))−V(ϕ∗ϕ) (2) とします。で、ポテンシャルの最小値は
∂V
∂ϕ =−µ2ϕ∗+ 2λϕ∗(ϕ∗ϕ) = 0 より
|ϕ0|2= 1
2(ϕ21+ϕ22) = µ2 2λ なので
ϕ21+ϕ22= µ2 λ =v2 これに対して、ϕを複素数の極形式にすると、ポテンシャルの最小値は
ϕ0= 1
√2veiθ (|ϕ0|2= 1 2v2=1
2(ϕ21+ϕ22))
で与えられます(θは複素平面の任意の角度)。これは最初の例と同じように考えれば、真空期待値を
⟨0θ|ϕ|0θ⟩= 1
√2veiθ
と選べることになります。つまり、今度は連続的な数であるθによって真空は区別され、θ1̸=θ2なら⟨0θ1|0θ2⟩= 0 となります(真空が無限個に縮退している)。なので、基底状態はポテンシャルの底の半径vの円に沿って無限に 存在しています。
基底状態の位置をϕ1 = +v, ϕ2 = 0と選んでやり、そこからのズレを2つの実数場η(x), ξ(x)として加えるこ とで
ϕ(x) = 1
√2
(v+η(x) +iξ(x))
η(x)とξ(x)を物理的な場として扱います。これをラグランジアン(2)に代入して
L=(
∂µϕ(x))(
∂µϕ∗(x))
+µ2ϕ∗(x)ϕ(x)−λ(
ϕ∗(x)ϕ(x))2
=1 2
(∂µ(v+η(x) +iξ(x)))(
∂µ(v+η(x)−iξ(x))) +µ2
2
(v+η(x)−iξ(x))(
v+η(x) +iξ(x))
−λ 4
((v+η(x)−iξ(x))(v+η(x) +iξ(x)))2
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+µ2 2
((v+η)2+ξ2)
−λ 4
((v+η)2+ξ2)2
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+µ2
2 (v2+η2+ 2vη+ξ2)−λ
4(v2+η2+ 2vη+ξ2)2
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+µ2
2 (η2+ 2vη+ξ2)
−λ
4(6v2η2+η4+ 4vη3+ 4v3η+ 2ξ2(v2+η2+ 2vη) +ξ4) +const
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+µ2
2 (η2+ 2vη+ξ2)
−λ 4 (
6µ2
λη2+η4+ 4vη3+ 4µ3 λ
√1
λη+ 2ξ2(µ2
λ +η2+ 2vη) +ξ4 )
+const
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+µ2
.2(η2+ 2vη+ξ2)
−(3
2µ2η2+λ 4η4+λ
√1
λµη3+µ3
√1 λη+1
2ξ2µ2+1
2λξ2η2+λ
√1
λµηξ2+λ 4ξ4
)
+const
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2−µ2η2−(λ 4η4+λ
√1
λµη3+1
2λξ2η2+λ
√1
λµηξ2+λ 4ξ4
)
+const
=1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2−1
2(2µ2)η2−1
2λξ2η2−λ
√1
λµηξ2−λ
√1
λµη3−λ 4η4−λ
4ξ4+const そうすると、ここでも手で何かを加えなくても場ηは正しい符号で質量√
2µ2を持つことになり、場ξはξ2のみ の項がない(ηと混ざった項しかない)ので質量を持ちません。つまり、質量を持つ場と質量を持たない場が作ら れたことになり、その質量0のスカラー場のことをゴールドストーンボソン(Goldstone boson)と呼びます。この ことは、場ηによる変化にはエネルギーが必要なのに対して(動径方向へ動かすため)、場ξによる変化はポテン シャルの底の円を動くだけなのでエネルギーが必要ないことを反映しています(基底状態の縮退)。そして、ラグ ランジアンから大局的ゲージ不変性もなくなっています。つまり、連続的な対称性が自発的対称性の破れを起こす
ときには質量0のスカラー場、ゴールドストーンボソンが作られるということです。このことをゴールドストー ンの定理と言います。
ついでにもう一つ、ワインボトル型のポテンシャルでの構造に触れておきます。<0|ϕ|0≯= 0では見てきたよう に、場が質量を獲得し、質量なしゴールドストーンボソンが現われます。これに対してもう一つの極値<0|ϕ|0>= 0 となる地点では質量は−µ2に対応します、つまり、虚数質量を持つので、これはタキオン(tachyon)です(虚数質 量を持つものをタキオンと呼んでいる)。そして、ポテンシャルの形を見ると、この地点は明らかに不安定になっ ているので、タキオンは安定な真の基底へ向かって落ちていきます。
今見てきたことをもう少し一般化して
L=1
2(∂µϕi)2−1
2m2(ϕi)2−λ
4((ϕi)2)2
というのを簡単に扱っておきます。これはN個の場(i= 1,2,· · ·N)が相互作用しているもので、(ϕi)2に対して 和をとります。この手の形をしたラグランジアンによるものを線形シグマモデル(linear sigma model)と言います
(名前の由来は真空期待値をσとしてシグマメソンを当てたことからです。「線形シグマモデル」参照)。同様に扱
うとポテンシャルは
V(ϕi) =−1
2µ2(ϕi)2+λ
4((ϕi)2)2 となり、最小値は
(ϕi)2= (ϕ1)2+ (ϕ2)2+· · ·(ϕN)2= µ2 λ =v2 そうすると、最小値の場所を
ϕ1= 0, ϕ2= 0,· · ·, ϕN =v
と選べることになります(これは(ϕi)2の式を見て分かるように、決められているのが内部空間でのベクトルの長 さだけになっており、尚且つ回転させても不変であることから任意の方向にベクトルを向けられるということで す)。後は同じ手続きを踏んでいけばよく、ズレを
ϕ1(x) =η1(x), ϕ2(x) =η2(x),· · · , ϕN(x) =v+σ(x) とすれば
L=1
2(∂µηj)2+1
2(∂µσ)2−1
2(2µ2)σ2+· · · (j= 1,2,· · ·N−1) となるので、1個の質量を持つ場σと、N−1個の質量0の場ηjが出てくることになります。
ここで起きたやっかいな問題は質量0のゴールドストーンボソンというよくわからない粒子が出てきたことで、
こいつをどうにかしないといくら質量を持たせられたからと言っても理論として成立しません。なので、ゴール ドストーンボソンに意味のある解釈を与えます。
本題のゲージ場について見ていきますが、電磁場として扱っていきます。ラグランジアンは局所的ゲージ変換に 対して不変なものを選ぶので、電磁場と相互作用する複素スカラー場を表すラグランジアンは電磁場のところで やったように共変微分によって
L= (Dµϕ(x))(Dµϕ(x))∗−m2ϕ∗(x)ϕ(x)−λ(ϕ∗(x)ϕ(x))2−1
4FµνFµν
ϕ(x) = 1
√2(ϕ1(x) +iϕ2(x))
Dµϕ= (∂µ+ieAµ)ϕ , Fµν =∂µAν−∂νAµ
このように書くことができます。ここで電磁場と相互作用させている複素スカラー場ϕのことをヒッグス場(Higgs
field)と呼び、これは背景のように存在するものです。ラグランジアンは局所的ゲージ変換
ϕ ⇒ eiα(x)ϕ Aµ ⇒ Aµ−1
e∂µα(x) に対して不変になっています。m2→ −µ2として
L = (Dµϕ)(Dµϕ)∗+µ2ϕ∗ϕ−λ(ϕ∗ϕ)2−1
4FµνFµν
= (Dµϕ)(Dµϕ)∗−1
4FµνFµν−V(ϕ∗ϕ) (3)
ポテンシャルの最小値は
∂V
∂ϕ =−µ2ϕ∗+ 2λϕ∗(ϕ∗ϕ) = 0 より、基底でのϕ(x)の値ϕ0は
|ϕ0|2= µ2 2λ =v2
2 ⇒ ϕ21+ϕ22= µ2 λ =v2 となります。基底からのズレを
ϕ(x) = 1
√2(v+η(x) +iξ(x))
これを(3)に代入して
L= 1 2
(Dµ(v+η(x) +iξ(x)))(
Dµ∗(v+η(x)−iξ(x))) +1
2µ2(v+η(x)−iξ(x))(v+η(x) +iξ(x))
−λ 4 (
(v+η(x)−iξ(x))(v+η(x) +iξ(x)) )2
−1
4FµνFµν
=−1
4FµνFµν +1 2
((∂µ+ieAµ)(v+η(x) +iξ(x)))(
(∂µ−ieAµ)(v+η(x)−iξ(x)))
−1
2(2µ2)η2−1
2λξ2η2−λ
√1
λµηξ2−λ
√1
λµη3−λ 4η4−λ
4ξ4+const
第2項は
(∂µ(η+iξ) +ieAµ(v+η+iξ))(
∂µ(η−iξ)−ieAµ(v+η−iξ))
=∂µ(η+iξ)∂µ(η−iξ)−ieAµ(v+η−iξ))∂µ(η+iξ) +ieAµ(v+η+iξ)∂µ(η−iξ) +e2AµAµ(
(v+η)2+ξ2)
=∂µ(η+iξ)∂µ(η−iξ)−ieAµ(v+η−iξ)(∂µη+i∂µξ) +ieAµ(v+η+iξ)(∂µη−i∂µξ) +e2AµAµ(
(v+η)2+ξ2)
=∂µ(η+iξ)∂µ(η−iξ)−ieAµ(v∂µη+η∂µη−iξ∂µη+iv∂µξ+iη∂µξ+ξ∂µξ) +ieAµ(v∂µη+η∂µη+iξ∂µη−iv∂µξ−iη∂µξ+ξ∂µξ) +e2AµAµ(
(v+η)2+ξ2)
=∂µ(η+iξ)∂µ(η−iξ) + 2eAµ(v+η)∂µξ+e2AµAµ(
(v+η)2+ξ2)
= (∂µη)2+ (∂µξ)2+ 2eAµ(v+η)∂µξ+e2AµAµ(
(v+η)2+ξ2)
よって
L=−1
4FµνFµν+1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+eAµ(v+η)∂µξ+1
2e2AµAµ(
(v+η)2+ξ2)
−1
2(2µ2)η2−1
2λξ2η2−λ
√1
λµηξ2−λ
√1
λµη3−λ 4η4−λ
4ξ4+const
=−1
4FµνFµν+1
2(∂µη)2+1
2(∂µξ)2+ 2e (µ2
λ +η )
Aµ∂µξ+1 2e2
(µ2
λ +η2+ 2
√µ2 λη+ξ2
) AµAµ
−1
2(2µ2)η2−1
2λξ2η2−λ
√1
λµηξ2−λ
√1
λµη3−λ 4η4−λ
4ξ4+const (4)
なので、質量項は
1 2
e2µ2
λ AµAµ , −1
2(2µ2)η2
となり、ベクトル場場Aµ,スカラー場ηが質量を持つことになり、ξは質量を持ちません
mA=ev=e
õ2
λ , mη =√
2µ2, mξ = 0
ベクトル場Aµは質量を持つことが出来ましたが、ここでも質量0のスカラー粒子である、ゴールドストーンボソ ンが出てきてしまっています。そもそも現在考えられている質量0の粒子は、ニュートリノも質量0だとすれば、
スピン1/2のニュートリノ、スピン1の光子とグルーオン、スピン2の重力子です。なので、スピン0の質量0粒 子というのは理論の中でも考えられてませんし、観測もされてません。なので、今求められたラグランジアン(4) に現われている全ての場が本当に物理的に意味があるのかということになります。ϕ(x)は
ϕ= 1
√2(v+η+iξ)
でしたがこれは近似的にη, ξ≪vならξの最低次で
ϕ≃ 1
√2(v+η)(1 +iξ v)≃ 1
√2(v+η)eiξ/v
なので、ξを消すようにゲージ変換を行うことができて、そのゲージ変換として
ϕ ⇒ eiα(x)ϕ= 1
√2(v+η)e−iξ/veiξ/v= 1
√2(v+η) (α(x) =−ξ(x) v ) Aµ ⇒ Aµ− 1
ev∂µξ(x)
というのを選ぶことで(このゲージのことをユニタリーゲージと呼びます)、ξを除去することができます。そうす ると(3)は
L=1 2
((∂µ+ieAµ)(v+η)(∂µ−ieAµ)(v+η)) +1
2µ2(v+η)2−λ
4(v+η)4−1
4FµνFµν
=1 2
(∂µη+ieAµ(v+η))(
∂µη−ieAµ(v+η)) +1
2µ2(v+η)2−λ
4(v+η)4−1
4FµνFµν
=1
2(∂µη)2+1
2e2(v+η)2AµAµ+1
2µ2(v+η)2−λ
4(v+η)4−1
4FµνFµν
=1
2(∂µη)2+1
2e2(v2+η2+ 2vη)AµAµ+1
2µ2(v2+η2+ 2vη)
−λ
4(v4+η4+ 6v2η2+ 4vη3+ 4v3η)−1
4FµνFµν
=1
2(∂µη)2+1
2e2(v2+η2+ 2vη)AµAµ+1
2µ2v2+1
2µ2η2+µ2vη
−λ
4(v4+η4+ 6v2η2+ 4vη3+ 4v3η)−1
4FµνFµν
=1
2(∂µη)2+1
2e2(v2+η2+ 2vη)AµAµ+1
2µ2η2+µ2vη
−λ
4η4−3λ
2 v2η2−λvη3−λv3η−1
4FµνFµν+const
=1
2(∂µη)2+1
2e2(v2+η2+ 2vη)AµAµ+1
2µ2η2+µ2
õ2
λη
−λ
4η4−3µ2
2 η2−λvη3−µ2
√µ2 λη−1
4FµνFµν+const
=1
2(∂µη)2+1
2e2(v2+η2+ 2vη)AµAµ−1
2(2µ2)η2−λvη3−λ 4η4−1
4FµνFµν +const よって質量項は
1
2e2v2AµAµ , −1
2(2µ2)η2 となり、ベクトル場Aµとスカラー場ηは質量は
mA=ev , mη =√ 2µ2
ちゃんとベクトル場が質量を持つことになり、そして質量0の場ゴールドストーンボソンは出てきません。つまり、
ゴールドストーンボソンはゲージ変換によって消せてしまえるので、物理的に意味のある場ではないことになり ます。しかし、何の影響も残さずに消えるものかというとそうではないです。このことを自由度で考えてみると、
最初は複素スカラー場による2つの質量を持ったスカラー粒子と、質量0の光子がいたので、自由度は2 + 2 = 4
です(光子は偏極の自由度2を持つ)。で、出来上がったものは1つの質量を持ったスカラー粒子と、質量を持った
光子なので自由度は1 + 3 = 4(質量のある光子は縦波の自由度も持てるので3になる)となり、自由度の数はあっ ています。このことより、ゴールドストーンボソンの自由度を光子が食べる(eat)ことで縦偏極の自由度を得て質 量を作り出していると考えられます。このようにしてベクトル場(ゲージ場)が質量を得る仕組みのことをヒッグ
ス機構(Higgs mechanism)と呼んでいます。また、ここで質量を持ったスカラー場ηのことをヒッグス粒子と呼
び、こいつが本当に観測されるかどうかが問題で、観測されなければ理論を作り直さなければならなくなります。
2012年にLHCの実験で質量が約126GeVの新しい粒子が見つかり、それは2013年にボソンであることまで確認 されたようです。なので、この新しい粒子はヒッグス粒子だろうと思われていますが、確定にはなっていないよう
です(2013年)。これはヒッグス粒子が絡む崩壊過程の検証がまだ終わってないからです。
ここでの話ではヒッグス粒子の質量の式が出ているので、実験値を予想できそうに見えますが予想できません。
なぜかというと、現在観測できるものはベクトル場の質量mAの方で(W ボソンとか)、これの値を入れたとして も理論側では
mA=ev=e
õ2
λ
このようになっているためにmAが分かるだけではµとλを決定することはできません。
ちなみに、自発的対称性の破れにも種類があって、一つは今見てきたヒッグス場(秩序パラメーター(order
parameter)となるもの)をラグランジアンに入れることで対称性が破れるものと、ヒッグス場のようなものを加
えなくても対称性が破れるものとがあります。後者のことを力学的対称性の破れ(dynamical symmetry breaking) と呼んでいます。
また、ここでは大局的ゲージ変換の不変性について構成してきましたが、QCDではカイラル対称性と呼ばれる ものによる話が重要になっています。このとき、ゴールドストーンボソンはパイオンの理想状態だと考えられてい ます。さらに、こいつは二段構造になっていて、基底状態(真空)のカイラル対称性の破れによって質量0のパイ オンが作られ、さらにQCDラグランジアンに含まれているクォーク質量項によるカイラル対称性の破れによって パイオンは質量を獲得することになると考えられています。ここら辺は現在でもグチャグチャしている領域です。
最後に対称性の破れについての補足的な話と注意をしておきます。まず古典的な対称性の破れの話をします。最 初の例を古典的に言い直します。まず、場でなく粒子が、空間反転x→ −xで不変な運動方程式に従いながらワイ ンボトル型のポテンシャル内にいるとし、ポテンシャルの最小値の位置をx0,−x0とします。ここで、x0と−x0 の間には無限大のポテンシャルがあるとします(もしくは粒子が間のポテンシャルを超える運動量を持っていな い)。そうすると、粒子はx0から−x0に行くことが出来なくなります。言い換えれば、運動方程式の解としてx0
から−x0にいくものが存在しなくなります。この意味において、対称性は破れています。つまり、たとえ運動方 程式に対称性があったとしても、可能な運動において対称性が実現しなければ、その対称性は破れているという ことです。これは上のスピンの例と同じ話です。もっと状況を限定的に言えば、変換に対して対称になっているよ うに見える2つの状態が物理的に区別されるべき異なった状態であるとき、対称性は破れます。今の例で言えば x0と−x0は空間反転で繋がっているように見えますが、初期値をx0に選んだ運動方程式の解として空間反転を 持ったものは存在しないので、区別すべき状態だということです。
量子論においては、物理的に異なった状態は異なった真空(基底状態)によって与えられるので、対称性の変換 に対して縮退している真空があればいいということになります。これは上で見てきた例から分かることです。しか し、注意すべきなのは、ここでは何の断りもなしに話を進めてきていましたが、体積を無限大にしなければいけ ないという点です(例えば場ϕ(x)の展開が和でなく積分)。具体的に示しませんが、体積を無限大にとることで真 空の縮退が起きます。これは重要なことで、有限の体積では真空の縮退がないために、対称性の破れはおきませ
ん(ただし、運動量に制限をかければ真空の縮退をおこすことが出来ます)。言い換えると、対称性の破れを起こ
すには無限大の自由度が必要ということです。
・補足
真空の対称性がどうなるのかを示しておきます。複素スカラー場のラグランジアンで考えることにします。面倒 だったので、演算子との区別をしていませんが、多分分かると思います(交換関係や真空に作用している場合は演 算子)。
複素スカラー場での大局的変換eiαは
ϕ(x) ⇒ ϕ′(x) =eiαϕ(x) この変換は微小なαの1次で
ϕ′(x) =ϕ(x) +iαϕ(x) =ϕ(x) +δϕ(x) ϕ′†(x) =ϕ(x)−iαϕ†(x) =ϕ(x) +δϕ†(x)
変換に対するネーターカレントは
Jµ(x) =iα(ϕ(x)∂µϕ†(x)−ϕ†(x)∂µϕ(x))
となって(「クライン・ゴルドン場〜複素スカラー場〜」参照)、保存電荷Qは
Q=
∫
d3xJ0=iα
∫
d3x(ϕϕ˙†−ϕ†ϕ)˙ Qと場の交換関係は
[Q, ϕ(x)] =αϕ(x) =−iδϕ(x) [Q, ϕ†(x)] =−αϕ†(x) =−iδϕ†(x)
これが場の演算子の変化を表す式になり(「生成子・ポアンカレ群」参照)、Qは変換に対する変化分を作る生成 子になっています(マイナスがつくのが気持ち悪かったらQの符号を反転して定義すればいいです)。
場を上と同じように実部と虚部に
ϕ(x) = 1
√2(ϕ1(x) +iϕ2(x))
と分解したときを考えます。ϕ1,2に対する変換は
ϕ(x) +δϕ=ϕ(x) +iαϕ(x) と
ϕ(x) +δϕ= 1
√2(ϕ1(x) +δϕ1+i(ϕ2(x) +δϕ2))
から
iαϕ= 1
√2(δϕ1+iδϕ2)
こうなっていればいいので
√1
2(δϕ1+iδϕ2) = 1
√2(−α′ϕ2+iα′ϕ1) = iα′
√2(ϕ1+iϕ2)
よって
δϕ1=−αϕ2 , δϕ2=αϕ1
カレントと保存電荷は
Jµ=iα1
2[(ϕ1+iϕ2)∂µ(ϕ1−iϕ2)−(ϕ1−iϕ2)∂µ(ϕ1+iϕ2))
=iα1
2[−iϕ1∂µϕ2+iϕ2∂µϕ1−iϕ1∂µϕ2+iϕ2∂µϕ1)
=α[ϕ1∂µϕ2−ϕ2∂µϕ1) Q=α
∫
d3x(ϕ1ϕ˙2−ϕ2ϕ˙1)
ラグランジアンが
L= (∂µϕ†(x))(∂µϕ(x))−m2ϕ†(x)ϕ(x)−λ(ϕ†(x)ϕ(x))2
= 1
2(∂µϕ1(x))2+1
2(∂µϕ2(x))2−m2
2 (ϕ21(x) +ϕ22(x))−λ
4(ϕ21(x) +ϕ22(x))2 となってϕ1, ϕ2による実数スカラー場の形になることから、共役な場π1,2= ˙ϕ1,2との交換関係は
[ϕ1(t,x), π1(t,y)] =iδ3(x−y), [ϕ2(t,x), π2(t,y)] =iδ3(x−y) [ϕ1(t,x), π2(t,y)] = 0
だと分かるので、Qとの交換関係は
[Q, ϕ1(x)] =iαϕ2=−iδϕ1(x) [Q, ϕ2(x)] =−iδϕ2(x)
これらを真空に適用してみます。ϕの真空期待値が
⟨0|ϕ|0⟩= 0 だとすれば
⟨0|[Q, ϕ]|0⟩=−i⟨0|δϕ|0⟩=α⟨0|ϕ|0⟩= 0 このことからQが真空へ作用すると
Q|0⟩= 0 これに対して、
⟨0|ϕ|0⟩=v ⇒ ⟨0|ϕ1|0⟩=v , ⟨0|ϕ2|0⟩= 0 となっていると
⟨0|[Q, ϕ2]|0⟩=−i⟨0|δϕ2|0⟩=−iα⟨0|ϕ1|0⟩ ̸= 0 よってQの真空への作用は
Q|0⟩ ̸= 0
このように真空期待値が0でないとQの真空への作用の仕方が変わります。
Qは対称性に対する生成子なので、これは真空でQの対称性(大局的変換に対する不変性)がなくなっている ことを意味します。例えば、古典的な場の変換eiαに対応する場の演算子の変換(αをQの外に出しています)
ϕ′(x) =ϕ(x) +δϕ
=ϕ(x)−iα[Q, ϕ(x)]
=e−iαQϕ(x)eiαQ (eABe−A=B+ [A, B] +1
2[A,[A, B]] +· · ·) に対して真空が不変なら
eiαQ|0⟩=|0⟩ となっているはずなので
eiαQ|0⟩=|0⟩+iαQ|0⟩ から、Q|0⟩= 0となる必要があるためです。
このように、ポテンシャルの最小値のときと同様に、ラグランジアンで成立していた対称性が真空で成立しな くなっています。
・補足2
複素スカラー場の場合をϕに別の形を与えて計算します。ラグランジアンは同じで
L= (∂µϕ(x))(∂µϕ∗(x)) +µ2ϕ∗(x)ϕ(x)−λ(ϕ∗(x)ϕ(x))2
ϕを2つの実数場α, θによって
ϕ(x) = 1
√2α(x)eiθ(x)/v (ϕ0=⟨ϕ⟩0 , |ϕ0|2= µ2 2λ =v2
2 ) と与えます(複素数の極形式)。これをラグランジアンに入れれば、第一項は
∂µϕ(x) = 1
√2eiθ(x)/v∂µα+ i
√2 1
vα(x)eiθ(x)/v∂µθ
∂µϕ∗(x) = 1
√2e−iθ(x)/v∂µα− i
√2 1
vα(x)e−iθ(x)/v∂µθ
から
(∂µϕ(x))(∂µϕ∗(x)) = 1
2(∂µα)2+ 1
2v2α2(∂µθ)2 となるので
L= 1
2(∂µα)2+ 1
2v2α2(∂µθ)2+1
2µ2α2−λ 4α4
α(x) =v+η(x)として虚数方向にはズラさないことにすれば(ηの質量項がどうなっているのかだけを見るため)
L= 1
2(∂µη)2+ 1
2v2(v+η)2(∂µθ)2+1
2µ2(v+η)2−λ
4(v+η)4
= 1
2(∂µη)2+1
2(∂µθ)2+ 1
2v2(η2+ 2vη)(∂µθ)2+1
2µ2(v+η)2−λ
4(v+η)4 第四項と第五項は
1
2µ2(v+η)2−λ
4(v+η)4
= 1
2µ2η2+1
2µ2(v2+ 2vη)−λ
4(v4+η4+ 4v3η+ 4vη3+ 6v2η2)
= 1
2µ2η2+1
2µ2(v2+ 2vη)−λ
4(v4+η4+ 4µ2
λvη+ 4vη3+ 6µ2
λη2) (v2= µ2 λ)
= 1
2µ2η2−3
2µ2η2+1
2µ2v2+µ2vη−µ2vη−λ
4(v4+η4+ 4vη3)
= −µ2η2+1
2µ2v2−λ
4(v4+η4+ 4vη3)
= −1
2(2µ2)η2+1
2µ2v2−λ
4(v4+η4+ 4vη3) となって、ηの質量が√
2µ2となります。θ= 0 +ξとしてηとξの1次まで取り出せばαeiθ/v=≃v+η+iξと なり、ϕ=ϕ1+iϕ2と同じ形になります(ξ≃αθ/v)。