帝京科学大学教育・教職研究第3巻第2号
実習施設と大学の連携に向けた臨地実習委員会の取り組みについて
-実習指導者連絡会報告-
Initiatives of the Practical Training Committee towards Collaboration between Training Facilities and Universities:
Report of the Practice Leaders Liaison Conference
富岡由美,吉田一子,糸井和佳,小薬祐子,岡潤子,福井郁子,
堀之内若名,岡村千鶴(帝京科学大学)
Yumi TOMIOKA,Ichiko YOSHIDA, Waka ITOI, Yuko KOGUSURI, Junko OKA, Ikuko FUKUI, Wakana HORINOUCHI,Chizuru OKAMURA(Teikyo University of cience)
要約: 帝京科学大学医療科学部看護学科は,臨地実習を効果的かつ円滑にすすめるために,「臨 地実習委員会」を設置している.活動は多岐にわたるが,本稿では2017年2月に開催した「実習指 導者連絡会」(以下「連絡会」とする)について報告する.「連絡会」は実習施設関係者と看護学科 教員のコミュニケーションを通して,互いの連携基盤を築くと同時に,双方の課題解決に臨み,臨 地での教育の充実を図る目的で行われる.参加者は77名の施設関係者(参加施設44施設)と,看護 学科全教員であり,2部構成の計90 分の予定で実施された.
第1部は全体会として学部・学科の理念と教育の現状報告を行うために,学部長・学科長の挨拶,
臨地実習の報告を行った.第2部は分科会として,8つの看護専門領域に別れ,施設関係者と教員 でミーティングを行い,良好なコミュニケーションを通して課題解決に臨んだ.
この後の運営に当たり,2017年度からの新カリキュラムへの対応や,双方が協働して質の高い臨 地教育を行うための「連絡会」づくりが必要と考える.
Ⅰ.はじめに
当看護学科における臨地実習の構成を図1に示 す.「看護の基礎」(1.2年次の病院実習),「看護 専門領域における地域の看護・臨床看護」(3年次 の地域包括センターや高齢者施設で行う実習・病 院で行う各論実習),「看護の発展」(4年次の統合 実習)と大きく3段階で構成され,看護実践能力 の基礎を学ぶための学外での一連の実習科目とな る.臨地実習とは,看護のフィールドが臨床だけで なく,地域社会も含むことを意味する.当臨地実 習の目的は,知識・技術・態度を統合し,あらゆ る健康段階にある対象に応じて,根拠のある看護 実践力を養うことである.具体的には学生が看護 の方法について,「知る」「わかる」レベルから「使 う」「実践できる」レベルへ成長することである
(文部科学省,2002).また,看護実践に不可欠な援
必要がある.
当学科では,臨地実習を効果的かつ円滑に行う ために,実習全般に関する事項を協議する目的で
「臨地実習委員会」を設置している.活動内容は,
実習グループの編成・実習オリエンテーションの 運営,実習共通要項の編集,実習中のインシデン ト・アクシデント等情報収集及び管理,各実習現 状の共有やその対応,毎年2月に実施される「実 習指導者連絡会」の開催などである.委員会とし ての活動は多岐にわたるが,中でも「実習指導者 連絡会」(以下「連絡会」とする)は,施設側と大 学側における課題解決の一翼を担うと同時に,双 方の連携基盤を築き,臨地での教育の充実を図る ために学科全教員の協力を得て開催している.
臨地実習の運営においては,まず,実習運営に対 する調整,受持ち対象者(学生が見学やケアを行 う対象者)からの同意の確保が双方の重要な課題
のねらい・実習方法を協議・共有する必要があり,
「連絡会」は円滑で効果的な実習を行うための一助 となっている.本稿では,2017年2月17日に開催 した「連絡会」について報告する.
Ⅱ.第 1 部について(全体会)
1.プログラム及び学部長・学科長挨拶について プログラムを表1に示す.「連絡会」は,2部構 成で行われ、第1部は全体会として臨地実習にお ける報告を中心に行い,第2部は分科会として各 領域に別れて教員と施設関係者との協議の機会と した.参加者は , 基礎看護学領域,成人看護学領 域,老年看護学領域,在宅看護学領域,地域看護学 領域,小児看護学領域,精神看護学領域,母性看護 学領域における実習受入れ施設70施設のうち44施 設77名と,学科全教員29名であった.各施設の参 加人数は1名から6名で,「実習指導者」42名,「施 設管理者」18名,「施設教育担当者(実習指導者以 外で教育を担当するスタッフ)」9名,その他2
名,無回答3名であった.また,40分の予定で進 行されたが,15分程度の延長となった.
第1部では,学部・学科の理念や現状を報告し た.まず,学部長挨拶として,各実習受入れ施設 に対して感謝の意を述べた後,看護師国家試験に ついての報告をした.学生の学習態度や基礎学力 に対する課題があるとして,オーダーメイドの教 育の必要性を述べた.
また,より良い教育のためには,実習受入れ施 設との連携の重要性について述べた.
続いて、学科長挨拶として、看護系大学数など 看護大学教育の現状,当大学・学科の紹介,2017 年度から保健師課程の開設など,看護学科の特色 や教育のねらいなどを述べた.また,看護教育に とっての臨地実習の意味づけ,看護師国家試験合 格率や,SNS 利用に伴う情報管理教育の大切さ,
新カリキュラムに伴う継続的な実習受入れへの協 力要請などについて述べた.
図1臨地実習構成図
富岡由美 吉田一子 糸井和佳 小薬祐子 岡 潤子 福井郁子 堀之内若名 岡村千鶴 実習施設と大学の連携に向けた臨地実習委員会の取り組みについて
2.平成28年度 第2期生実習の報告
4年次前期に開講する統合実習について科目責 任者より、シラバスに沿って目的や実習内容,成 果について簡潔に報告をした.
続いて,臨地実習の結果報告を,臨地実習委員 長より行った.前年度実施した第1回実習指導者 連絡会の報告,臨地実習のねらいや,評価結果に ついて述べた.
また,統合実習終了時に実施した厚生労働省作 成の「看護師教育の技術項目の卒業時の到達度」
調査の報告を行った.結果に関しては別途本紀要 で報告されている(小薬ら,2018).
Ⅲ . 第2部について(分科会)
第2部は,第1部が延長したことで30分程度の 予定で8つの看護専門領域に別れ,1教室に1~
3領域が集った.施設関係者と教員、または、施 設関係者間で情報交換を行い良好なコミュニケー ションの場となることをねらいとした.まず,実 習において共通認識が必要となる,各領域の実習 目標や実習方法,実習成果や評価,それに伴う課 題について教員より説明があった.その後,教員・
Ⅳ. 連絡会運営についてのアンケート結果につい て
1.施設関係者へのアンケート結果
「連絡会」運営に対してのアンケートを施設関係 者に依頼した.アンケート内容を表2に示す。
①開催時期・会場については,ほぼ全員が適切で あると回答した.②第1部の内容について図2に示 すように,97.2%が今後の実習指導への「参考に なった」とし,参考になった内容としては,「看護 教育の視点を改めて知ることができた」また,「学 生の現状を知ることができた」とする回答があっ た.
表2 施設関係者へのアンケート項目 第1部(全体会)について
・開催時期と時間について ・役職など
・第1部の内容について ・課題の検討について 第2部(分科会)について
・課題の検討について ・第2部の内容について
・今後取り上げたい企画 ・テーマについて
グラフ タイトル
参考にならなかった 0%
とても参考に なった47.9%
少し参考に なった49.3%
あまり参考にならな かった2.8%
図2 第1部について(n=70)
平成28年度 帝京科学大学医療科学部看護学科 実習指導者連絡会プログラム
日時:平成29年2月17日(金)14:30~16:00 場所:帝京科学大学千住キャンパス2号館
14:00 受付
<第1部>
14:30 開会の辞 14:30 学部長挨拶 14:35 学科長挨拶 14:40 施設代表者紹介
14:50 平成28年度 第2期生実習の振り返りについて
・統合実習報告
・臨地実習結果報告
15:10 第1部閉会の辞 第2部開催について 15:15 第2部へ移動
<第2部>
15:20 領域別分科会
16:00 第2部終了(連絡会議終了)
表1 「連絡会」プログラム
③第2部分科会について,今後の実習指導につ いて「とても参考になった」は55.7%で,「少し参 考になった」と合計すると,98.6%が「参考になっ た」と回答した(図3参照).自由記載には,「他施 設での実習方法,実習の様子を聞く事ができて参
グラフ タイトル
参考になら なかった0%
とても参考に なった55.7%
少し参考に なった42.9%
あまり参考にならな かった1.4%
図3 第2部について(n=70)
グラフ タイトル
できなかった0%
充分できた 33.8%
少しできた63.2%
あまりできなかった2.9%
図4 第2部課題の検討について(n=69)
参照).「あまりできなかった」と答えた理由とし て,「検討する時間が短かった」とする意見があ り,次回への検討課題となった.⑤今後の「連絡 会」で希望する企画やテーマについて表3に示す
(自由記載).「受入施設の基本的な環境の検討」
「学習効果・実習満足度の高い実習環境に関する情 報」など,施設側より効果的な実習指導を行うた めの積極的な要望があった.
2. 教員のアンケート結果
教員へのアンケートでは,主に開催運営や接遇
が必要である.
Ⅴ. 「連絡会」の今後の課題と方向性について アンケート結果より「連絡会」に対して,施設関 係者・教員ともに,今後の教育の「参考になった」
とする意見が多くあった.しかし,第1部の予定時 間超過による課題検討の時間が短かったことは,
次年度開催に向け調整が必要である.また,充分 ではなかった課題検討は実習打合せや実習中に解 決していく必要がある.今後希望する企画やテーマ は,施設関係者・教員ともに,「効果的な臨地教 育」を挙げており,今後取り上げていきたい.
臨地と大学との連携の試みの一つとして「連絡 会」があるが,医療施設と大学の連携強化に対す る取り組みに「看護連携型ユニフィケーション」
がある.変化する社会のニーズや看護上の課題に 応えていくために,実習における様々な共有に留 まらず,看護の実践・教育・研究において連携し,
看護教育ならびに臨地でのケアの質の向上を図っ ていこうとするものである(吉村ら,2008).実際 の活動は,ワークショップをはじめとする様々な 研修会や共同研究・交流会を通して,互いに研鑽 し,看護実践や教育に生かしていくものであ る.「連絡会」も,臨地実習における課題の共有に 留まることなく,互いの発展・成長に結びつく企画 運営に取り組む必要性がある.具体的には広く看護 の人材を育成するための教育についての講演など を今後企画したいと考える.
看護学科は平成29年度より新カリキュラムが始 動している実習期間の変更に伴う施設側との調整 や科目の再編成による実習内容の見直しなどを 行っており新カリキュラムを軌道に乗せる「連絡
・受入施設の基本的な環境の検討について
・学習効果・実習満足度の高い実習環境に関する情報
・指導者と大学との教育方針や内容について共有 する機会をつくってもらいたい
・「看護師になりたい」と思えるような実習体験
・教員、学校側が病院に臨むこと、学生の実習の 学び
・若者気質について
表3 今後希望する企画・テーマについて
について質問した.接遇は,8割以上が「適切だっ た」と回答した一方,会場への誘導がスムーズで はなかったとする意見があった.開催運営に関し て,プログラムに準じた時間管理を望むものや,
第2部の領域ごとのミーティングスペースは1領域 1教室を望む声が多くあった.第2部の課題検討 については,「時間が短かった」とする意見もあっ たが,85.7% が「課題検討はできた」と答え,今 後の企画への希望は,教育や医療に関するトピッ クスの講演があげられた.教員からのアンケート の回収率は半数と少なく,回収方法などの見直し
会」づくりも課題のひとつと言える質の高い教育 を維持させるためには実習施設と大学双方の協力 と理解が必要でありその一助を「連絡会」が担え るよう努力したいと考える.
参考文献
小薬裕子,吉田一子,富岡由美他(2018).「看護 学士課程における卒業時看護技術到達度調査 -2015年度,2016年度の看護技術到達度の現状と 課題-」『帝京科学大学教育・教職研究紀要』.
文部科学省(2002).「大学における看護実践能力 の育成の充実に向けて:看護学教育の在り方に 関する検討会 報告,3 臨地実習指導体制と新卒 者の支援,1.臨地実習の在り方」.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/
koutou/018/gaiyou/ 02401c.htm
吉村利律子, 梶本市子(2008).「看護連携型ユニ フィケーション」,「OJT…ガイド−実践! 21の 教育プログラム-(ナーシングビジネス2008 年 冬季増刊)」,任和子編, pp122-127,メディカ出 版.
富岡由美 吉田一子 糸井和佳 小薬祐子 岡 潤子 福井郁子 堀之内若名 岡村千鶴 実習施設と大学の連携に向けた臨地実習委員会の取り組みについて