• 検索結果がありません。

文字基盤整備と東アジア共同体 -- 漢字の共用と経済を巡る戦略的思考の試み (トレンド・リポート)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "文字基盤整備と東アジア共同体 -- 漢字の共用と経済を巡る戦略的思考の試み (トレンド・リポート)"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

文字基盤整備と東アジア共同体 -- 漢字の共用と経

済を巡る戦略的思考の試み (トレンド・リポート)

著者

山中 龍太郎

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

129

ページ

48-51

発行年

2006-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00005464

(2)

文字基盤整備と東アジア共同体|漢字の共用と経済をめぐる戦略的思考の試み

Trend Report

文字基盤整備と東アジア共同体

̶

漢字の共用と経済をめぐる戦略的思考の試み

山中龍太郎

Trend Report

トレンド・リポート

変 転 め ま ぐ る し い 現 代 国 際 社 会 に あ っ て 、 と り わ け 大 き な 変 革 の 波 が 押 し 寄 せ て い る の が 、 ア ジ ア だ 。 政 治 的 不 安 定 要 素 を は ら み な が ら 、 経 済 を 基 軸 に 大 き く 前 進 を 見 せ る 東 ア ジ ア 。 こ の 東 ア ジ ア で 今 、 共 同 体 形 成 に 向 け た 議 論 が 進 行 中 で あ る 。 そ れ に 対 し 、 今 ま さ に 世 界 同 時 進 行 で 進 ん で い る ウ ェ ブ 次 世 代 へ の 進 化 。 こ の 二 つ の 、 レ イ ヤ ー の 異 な る 変 革 が 化 学 反 応 を 起 こ し 、 漢 字 と い う 使 い 古 さ れ た ツ ー ル に 、 新 し い 光 を 当 て 始 め て い る 。 ア ジ ア 標 準 漢 字 策 定 を と り ま く 経 済 と ウ ェ ブ の 観 点 か ら 、 ア ジ ア の 未 来 、 と り わ け 経 済 圏 と し て の ア ジ ア に つ い て 考 察 す る 。

2.0

来 る べ き 時 が 来 た 、 と い う べ き か 。 二 ○ ○ 六 年 四 月 、 中 国 人 民 銀 行 の 外 貨 準 備 高 が 二 カ 月 連 続 で 日 銀 の そ れ を 上 回 っ た こ と が 報 道 さ れ 、 数 日 を お い て 、 中 国 の 一 ∼ 三 月 期 G D P 実 質 成 長 率 が 政 府 目 標 を 上 回 る 一 ○ ・ 二 % に 達 し た と の 報 道 が 後 に 続 い た 。 二 ○ ○ 八 年 の 北 京 五 輪 を 控 え 、 中 国 の 経 済 成 長 は そ の 足 取 り を 速 め て い る 。 し か し そ の こ と が 、 イ コ ー ル 中 国 の 経 済 的 覇 権 を 意 味 し な い と こ ろ が 現 在 の ア ジ ア 経 済 の 一 つ の ポ イ ン ト だ 。 成 長 の 原 動 力 の 一 つ で あ る 資 本 に 関 し て は 、 外 資 の 導 入 著 し く 、 輸 出 関 連 企 業 の 実 に 六 ○ % 近 く が 外 資 系 で あ り ︵ 参 考 文 献 ⑤ ︶、 金 額 的 に も 世 界 一 の 外 資 導 入 国 と な っ て い る 。 し か し な が ら 、 世 界 銀 行 の 購 買 力 平 価 を 用 い て 計 算 す る と 、 中 国 市 場 は す で に 日 本 経 済 を 超 え 世 界 ナ ン バ ー 2 と な っ て い る ︵ 参 考 文 献 ② ︶。 世 界 の 工 場 で あ る と 同 時 に 世 界 の 消 費 地 と な っ て き た 中 国 を 軸 に ア ジ ア 経 済 は 大 き く 再 編 に 動 い て お り 、 日 本 企 業 に と っ て も 、 他 の ア ジ ア 諸 国 に と っ て も 、 経 済 戦 略 の 見 直 し が 迫 ら れ て い る 。 そ の 一 方 で 、 コ ン ピ ュ ー タ の 普 及 と ウ ェ ブ 接 続 の 急 速 な 広 が り は ア ジ ア 諸 国 に お い て も 驚 異 的 だ 。 富 裕 層 を 中 心 に 拡 大 し て い る 中 国 を は じ め 、 日 本 以 上 に ブ ロ ー ド バ ン ド イ ン フ ラ 整 備 の 速 か っ た 韓 国 な ど 等 比 級 数 的 な 拡 大 を 見 せ て い る 。 ウ ェ ブ 2.0と 呼 ば れ る ウ ェ ブ 進 化 の 第 二 波 は 、 こ う し た 状 況 を 背 景 に 、 一 気 に ア ジ ア も 含 む 世 界 的 な ス タ ン ダ ー ド へ と 進 む 可 能 性 が 高 い 。 こ う し た ア ジ ア 政 治 ・ 経 済 状 況 の 変 化 と ウ ェ ブ を め ぐ る 状 況 の 変 化 は 、 東 ア ジ ア 共 同 体 、 言 い 換 え れ ば 東 ア ジ ア 商 圏 に お け る 新 し い ツ ー ル の 可 能 性 と 需 要 を 呼 び 起 こ し て い る 。 そ の 一 つ が 、 ア ジ ア 標 準 漢 字 だ 。

ア ジ ア 標 準 漢 字 に つ い て 論 を 進 め る 前 に 確 認 し て お か な け れ ば な ら な い の は 、 マ ハ テ ィ ー ル 元 首 相 の 提 唱 に 端 を 発 す る 東 ア ジ ア 共 同 体 構 想 が 現 実 的 な 流 れ と し て 浮 上 し た の は 、 政 治 や 理 念 で は な く 、 経 済 の 力 、 と り わ け 市 場 の 力 だ っ た こ と だ 。 一 九 八 ○ 年 代 か ら 金 融 危 機 前 夜 ま で 、 日 本 を は じ め と す る ア ジ ア 各 国 の 企 業 が 、 東 ア ジ ア 全 体 を 舞 台 に 展 開 し た 結 果 、 東 ア ジ ア 経 済 圏 と で も 言 う べ き 一 つ の 商 圏 が 形 成 さ れ た 。 そ し て 、 そ の 後 に 襲 っ た ア ジ ア 金 融 危 機 を 乗 り 越 え た こ と と 、 中 国 が 、 ア ジ ア 諸 国 を 競 争 相 手 で は な く 戦 略 的 パ ー ト ナ ー と し て 共 栄 を 図 る こ と で 経 済 発 展 を 維 持 す る 戦 略 へ 方 針 転 換 し た こ と が 、 政 治 的 な 枠 組 み の 進 化 を 促 し た 側 面 は 否 定 で き な い 。 大 規 模 か

(3)

文字基盤整備と東アジア共同体|漢字の共用と経済をめぐる戦略的思考の試み

Trend Report

つ 構 造 的 な 経 済 圏 形 成 を 行 っ た E U の 域 内 貿 易 比 率 が 輸 出 六 一 ・ 四 % 、 輸 入 六 三 ・ 五 % で あ る の に 対 し 、 東 ア ジ ア に お け る 域 内 貿 易 比 率 が 輸 出 五 ○ ・ 五 % 、 輸 入 五 九 ・ 七 % と い う 事 実 を 見 れ ば 、 す で に 東 ア ジ ア 地 域 が 統 合 さ れ た 経 済 圏 と し て 成 立 し て い る と 言 え る ︵ 参 考 文 献 ④ ︶。 こ の 東 ア ジ ア 経 済 圏 の 成 立 が 、 政 治 に 対 し て 枠 組 み の 構 築 を 求 め る 原 動 力 と な り 、 A S E A N + 3 、 E A V G 、 E A S G 等 へ と 繋 が っ て い く わ け だ が 、 こ こ で 注 意 し な く て は な ら な い の が 、 東 ア ジ ア 共 同 体 を 要 請 す る 政 治 的 な 動 き は 、 し か し あ く ま で 経 済 分 野 へ の 還 元 に お い て 有 効 性 を 発 揮 し て い る 点 だ 。 様 々 な フ ェ イ ズ で 政 治 的 な 取 り 組 み が 進 め ら れ て い な が ら 、 頻 発 し て い る 国 境 問 題 、 北 朝 鮮 、 台 湾 を め ぐ る 安 全 保 障 問 題 な ど に 対 し 、 経 済 面 で の 成 果 に 比 す る だ け の 明 確 な ま と ま り を 打 ち 出 す に は 至 っ て い な い 。 そ の 大 き な 理 由 の 一 つ が 、 共 有 の 価 値 観 、 言 い 換 え れ ば 東 ア ジ ア 共 同 体 と し て の 共 有 理 念 の 欠 如 で は な い だ ろ う か 。 で は 東 ア ジ ア 共 同 体 に 共 有 の 価 値 観 を 生 み 出 す ベ ー ス は ど こ に 求 め れ ば よ い の だ ろ う か 。 そ の 答 え の 一 つ が 、 文 字 基 盤 整 備 だ 。

東 ア ジ ア 共 同 体 を 考 え る 上 で 重 要 な 多 く の 国 で 、 漢 字 文 化 は ま だ 強 い 根 を 持 ち 、 あ る い は 再 評 価 の 気 運 が 高 ま っ て い る 。 漢 字 文 化 の 地 域 的 現 況 は 五 つ に 大 別 で き る 。 一 つ は 、 古 来 の 漢 字 文 化 を ほ ぼ 維 持 し て い る グ ル ー プ 。 繁 体 字 と 呼 ば れ る 旧 字 を 今 も 使 用 し 続 け る 、 台 湾 や 香 港 が そ う だ 。 二 つ め は 、 国 力 の 急 速 な 発 展 の た め 簡 体 字 化 を 推 し 進 め た グ ル ー プ 。 日 本 や 中 国 で あ る 。 活 字 離 れ が 指 摘 さ れ る 日 本 だ が 、 二 ○ ○ 五 年 に は 漢 字 検 定 受 験 者 が 二 四 ○ 万 人 を 突 破 す る ︵ 参 考 文 献 ③ ︶ な ど 漢 字 の 再 評 価 が 進 ん で い る 。 積 極 的 に 推 進 さ れ た 中 国 の 簡 体 字 は 、 大 衆 の 支 持 で 急 速 に 浸 透 し た 。 三 つ め は 、 漢 字 使 用 を い っ た ん 制 限 ま た は ほ と ん ど 放 棄 し た グ ル ー プ で 、 韓 国 、 北 朝 鮮 、 ヴ ェ ト ナ ム な ど が 該 当 す る 。 韓 国 は 日 本 同 様 表 音 文 字 と 漢 字 の 組 み 合 わ せ 表 現 を 行 う 国 だ が 、 国 策 で ハ ン グ ル 専 用 を 進 め た 結 果 、 古 典 文 化 と の 断 裂 や 漢 字 文 化 圏 で の 孤 立 が 指 摘 さ れ 、 近 年 漢 字 の 再 評 価 が 進 む 。 北 朝 鮮 も ハ ン グ ル 専 用 を 推 進 し た が 、 韓 国 同 様 、 漢 字 併 用 が 推 奨 さ れ 始 め た 。 ヴ ェ ト ナ ム は ク ォ ッ ク ・ グ ー と い う ロ ー マ 字 表 記 の み と な っ て 一 世 紀 が 経 つ が 、 ヴ ェ ト ナ ム 語 が 漢 語 古 来 の 発 音 を 強 く 残 す こ と も あ り 、 若 者 で も 文 中 の 漢 語 由 来 語 を 判 別 で き る と い う 。 近 年 書 道 的 な 漢 字 デ ザ イ ン が 流 行 す る な ど 漢 字 見 直 し 気 運 も 高 ま っ て い る ︵﹃ 朝 日 新 聞 ﹄ 二 ○ ○ 一 年 一 二 月 一 六 日 ︶。 四 つ め は 漢 語 文 化 が 民 衆 の 一 部 に 根 強 く 残 る グ ル ー プ で 、 シ ン ガ ポ ー ル や マ レ ー シ ア が 含 ま れ る 。 シ ン ガ ポ ー ル の 華 人 社 会 に は 、 英 語 で 読 み 書 き し 中 国 語 で 暮 ら す 状 況 が あ る と い う 。 中 華 社 会 の 裾 野 の 広 い マ レ ー シ ア も 、 漢 字 文 化 は 根 強 い 。 五 つ め に 、 漢 字 文 化 が す た れ た 、 あ る い は 元 来 希 薄 な グ ル ー プ が あ り 、 タ イ 、 フ ィ リ ピ ン 、 イ ン ド ネ シ ア な ど が そ う だ が 、 そ れ と て も 全 く 漢 字 と 無 縁 で は な い 。

こ の よ う に 、 ア ジ ア 圏 に お い て 重 要 な 文 化 的 紐 帯 に な り う る 潜 在 的 可 能 性 を 漢 字 は 持 っ て い る 。 換 言 す れ ば 、 漢 字 を 共 用 で き る 状 況 が 、 東 ア ジ ア 共 同 体 に 文 化 的 基 盤 を 与 え る 可 能 性 を も っ て い る 。 現 実 に 標 準 漢 字 を め ぐ る 議 論 は 少 な く な い 。 日 中 国 交 正 常 化 を 受 け て 日 中 友 好 議 連 を 中 心 に 簡 体 字 共 有 化 の 論 議 が 出 た り 、 様 々 な シ ン ポ ジ ウ ム が 開 催 さ れ て い る 。 特 に 、 日 中 韓 台 の 研 究 者 が 一 九 九 一 年 に 設 立 し た 国 際 漢 字 振 興 協 議 会 は 重 要 だ 。 二 ○ ○ 一 年 に は 共 通 常 用 漢 字 の 早 期 制 定 に 合 意 す る な ど 、 近 年 議 論 を 深 め て い る ︵﹃ 朝 日 新 聞 ﹄ 二 ○ ○ 一 年 一 二 月 二 三 日 ︶。 一 方 、 コ ン ピ ュ ー タ 分 野 に お け る 漢 字 を め ぐ る 議 論 は 、 国 際 交 流 分 野 と 流 れ を 異 に す る 。 文 字 標 準 化 規 格 U nic od e は 、 米 国 を 中 心 と す る コ ン ピ ュ ー タ ソ フ ト 関 連 企 業 の 連 合 、 U nic od e C on so rtiu m に よ っ て 作 ら れ た 。 文 字 化 け 防 止 の た め 各 文 字 に 共 通 コ ー ド 番 号 を つ け る 文 字 の 記 号 化 分 類 を 発 想 の 母 体 と し て い る た め 、 文 字 の 整 理 識 別 に 力 点 が あ る 。 今 後 の 標 準 漢 字 策 定 は 、 経 済 的 な 活 用 の 側 面 か ら も 、 U nic od e 対 応 の 再 編

(4)

文字基盤整備と東アジア共同体|漢字の共用と経済をめぐる戦略的思考の試み

Trend Report

︵ C J K コ ー ド の 深 化 ︶ を 基 盤 と し た ウ ェ ブ の 視 点 が 重 要 で あ る と 同 時 に 、 現 状 の U nic od e の 思 想 か ら は 位 相 を ず ら す 努 力 が 必 要 に な る 。 標 準 漢 字 の 策 定 に は 、﹁ 読 み 書 き の た め の 漢 字 ﹂ と い う 視 点 に 、 コ ン ピ ュ ー タ / ウ ェ ブ で の 利 便 性 を 加 味 す る こ と で は じ め て 、 文 化 と 経 済 の 主 柱 の 一 つ と し て の 地 位 が 見 え て く る 。

貿

文 化 圏 と し て の 緊 密 化 と い う 理 念 の 基 盤 整 備 の み な ら ず 、 標 準 漢 字 を 策 定 す る こ と に は 、 経 済 的 に 見 て 直 接 的 メ リ ッ ト も 多 い 。 た と え ば 、 固 有 名 詞 、 つ ま り 個 人 名 、 企 業 名 、 商 品 名 、 住 所 等 が ウ ェ ブ 上 で も 旅 先 で も 書 籍 上 で も 混 乱 な く 共 有 で き る こ と の 波 及 効 果 は 大 き い は ず だ 。 今 後 ウ ェ ブ が さ ら に 浸 透 し た 場 合 、 い わ ゆ る ロ ン グ テ ー ル 市 場 ︵ 小 規 模 ・ 部 分 的 な 市 場 の 集 合 体 ︶ の 開 拓 が 進 む と 考 え ら れ る が 、 シ ル ク ロ ー ド の 奥 か ら で も 、 東 南 ア ジ ア の 島 嶼 部 か ら で も 、 ウ ェ ブ シ ョ ッ ピ ン グ の 形 で 注 文 を 受 け ら れ る よ う に な っ た と き 、 お 互 い に 理 解 し 合 え る 商 品 名 を 、 お 互 い に 理 解 し 合 え る 個 人 と 法 人 の 名 前 で 取 引 し 、 お 互 い に 理 解 し 合 え る 住 所 に 送 る こ と が で き る 状 況 が 、 域 内 貿 易 の 活 性 化 に 与 え る メ リ ッ ト は 計 り 知 れ な い 。 発 展 途 上 国 、 小 規 模 国 家 ほ ど そ の 恩 恵 を 受 け る だ ろ う 。 さ ら に 、 そ う し た 辺 縁 部 か ら 都 市 部 に 至 る ア ジ ア 人 が 、 い わ ゆ る 筆 談 の 延 長 線 上 で 、 チ ャ ッ ト や 掲 示 板 、 S N S な ど を 利 用 で き る よ う に な り 、 草 の 根 レ ベ ル の 交 流 が 増 え る な ら 、 新 し い マ ー ケ ッ ト の 開 拓 に と ど ま ら ず 、 ア ジ ア 諸 国 と の 関 係 改 善 、 あ る い は 悪 化 防 止 の 役 割 も 期 待 で き る だ ろ う 。 実 際 、 経 済 圏 を 総 体 で 捉 え た と き の 、 共 通 言 語 、 共 通 文 字 の 力 の 強 さ は 、 イ ギ リ ス を 見 れ ば 一 目 瞭 然 だ 。 通 貨 統 合 に 参 加 せ ず 、 常 に E U の 中 に あ っ て 孤 高 を 旨 と し な が ら 、 域 内 諸 国 に 比 べ 良 好 な 経 済 状 況 と 影 響 力 を 維 持 で き て い る 一 つ の 理 由 に 、 国 民 の 末 端 に 至 る ま で 言 語 イ ン フ ラ 整 備 が 不 要 な こ と が あ る 。 共 通 語 が 母 国 語 で あ る こ と は 、 こ と ほ ど さ よ う に 高 い ア ド バ ン テ ー ジ と な る 。 日 本 国 内 で の み 通 じ る 漢 字 で は な く 、 域 内 全 体 で 通 用 す る 漢 字 を 持 つ こ と は 同 じ よ う な 強 み だ 。 ち な み に 日 本 の 対 外 貿 易 を 総 額 で 見 る と 、 対 米 は す で に 二 ○ % を 切 る 一 方 で 、 対 ア ジ ア が 五 ○ % に 迫 る 勢 い だ 。 ア ジ ア は 既 に 日 本 に と っ て 経 済 に お け る メ イ ン ス ト リ ー ム で あ り 、 ア ジ ア 域 内 貿 易 へ の ア ド バ ン テ ー ジ の 確 保 は 最 重 要 課 題 だ 。 移 動 の 容 易 化 に よ る 経 済 効 果 の 拡 大 も 見 逃 せ な い 。 地 図 も 、 標 識 ・ 表 示 も 、 お 互 い に 読 め る 地 域 同 士 の 人 の 移 動 は よ り 活 発 に な り 、 そ れ だ け の 経 済 効 果 を 生 む 。 デ メ リ ッ ト も あ る 。 必 要 な 初 期 投 資 は 少 な く な い 。 感 覚 的 違 和 感 も あ る 。 だ が 、 現 実 的 な 視 点 か ら の 変 革 は 常 に 混 乱 を 伴 う も の で あ り 、 元 来 輸 入 品 で あ っ た 漢 字 を 消 化 し て き た 日 本 の 歴 史 を 考 え れ ば 、 メ リ ッ ト の 方 が 大 き い と 言 え る の で は な い か 。 ま た 、 グ ー グ ル な ど の ウ ェ ブ 検 索 は 、 リ ン ク 数 や ア ク セ ス 数 、 語 彙 を も と に 検 索 結 果 を ラ ン キ ン グ 表 示 す る 点 で 、 き わ め て 平 等 な 情 報 再 編 成 と い う 側 面 も 持 つ 。 自 国 の 漢 字 ・ 文 字 の み で 構 成 さ れ た 閉 鎖 的 ウ ェ ブ 社 会 ︵ 巨 大 な S N S と 言 え る か も し れ な い ︶ を 保 持 す る 場 合 、 情 報 化 社 会 の 中 で 孤 立 す る 可 能 性 が 高 い 。 逆 に 、 文 字 が 共 通 す る な ら 、 中 国 の サ イ ト も 日 本 の サ イ ト も 平 等 に 検 索 さ れ 表 示 さ れ る こ と に な る 。 情 報 格 差 社 会 と は I T リ テ ラ シ ー の 問 題 と 考 え ら れ が ち だ が 、 そ の 先 に 言 語 の 壁 が あ る こ と も 指 摘 さ れ な け れ ば な ら な い 。 ウ ェ ブ 上 で 英 語 を 使 え な い と 、 膨 大 な 情 報 の 一 部 に し か ア ク セ ス で き な い か ら だ 。 マ レ ー 半 島 を 中 心 に 英 語 ・ 中 国 語 ・ 現 地 語 を 操 る ト ラ イ リ ン ガ ル の 華 人 商 人 が 活 躍 す る 現 状 を 見 て も 、 ア ジ ア 圏 の 多 く の 人 々 に と っ て 共 用 で き る 言 語 ・ 文 字 の 存 在 は 利 便 性 が 高 い 。

標 準 漢 字 を 策 定 す る に は 、 現 実 的 な 問 題 点 も あ る 。 た と え ば 、﹁ 同 じ 字 ﹂ に ど こ ま で を 含 め る か 、 と い う 包 摂 調 整 な ど が そ う だ 。 簡 体 字 化 を 進 め た 日 中 間 の 調 整 は 特 に 重 要 で あ り 、 プ ラ ク テ ィ カ ル な 解 決 を 図 る の が 大 切 だ 。 目 安 と し て 、 日 中 の 常 用 漢 字 を 大 枠 に と り 、 康 煕 字 典 体 を ベ ー ス に 、 簡 体 字 に つ い て は 、 ① 日 中 共 通 の 約 四 ○ 字 は そ れ を 正 字 と す る 、 ② 異 な る 簡 体 字 、 中 国

(5)

文字基盤整備と東アジア共同体|漢字の共用と経済をめぐる戦略的思考の試み

Trend Report

の み の 簡 体 字 計 約 一 五 ○ 字 は 中 国 の 簡 体 字 を 用 い る 、 ③ 日 本 の み の 簡 体 字 約 三 ○ 字 は そ れ を 用 い る 、 ④ 人 名 や 地 名 な ど に 用 い ら れ る 異 体 字 、 国 字 ︵ 和 製 漢 字 ︶ は 原 則 と し て 包 摂 せ ず に デ ー タ ベ ー ス 化 す る 、 と い っ た 考 え 方 で 進 め る の が 妥 当 だ ろ う 。 標 準 漢 字 を 考 え る 上 で 、 ウ ェ ブ が 新 た な 変 革 期 に 入 っ た 現 在 の タ イ ミ ン グ も 重 要 だ 。 ウ ェ ブ 2.0と は 、 ウ ェ ブ の 向 こ う の 発 信 者 と こ ち ら の 受 け 手 と い う 主 従 関 係 を 脱 却 し 、 誰 も が 参 加 す る こ と で 変 化 し 続 け る ウ ェ ブ の 、 オ ー プ ン ソ ー ス 化 に よ る 民 主 化 的 深 化 を 意 味 す る ︵ 詳 し く は 参 考 文 献 ① 参 照 ︶。 今 後 こ の 傾 向 が 強 ま れ ば 、 孤 立 言 語 の 日 本 人 は 特 に 苦 し い 。 そ れ だ け に 、 英 語 が 無 理 で も 、 漢 字 の 共 用 は 大 き な メ リ ッ ト だ 。 ま た 、 中 国 の ウ ェ ブ 管 理 の 実 態 は 、 視 点 を 変 え れ ば 、 ビ ッ グ ウ ェ イ ブ と も 言 え る 。 中 国 政 府 は 複 数 の ウ ェ ブ 規 制 法 を 制 定 し 一 一 の 政 府 機 関 で サ イ ト を 取 り 締 ま る と 同 時 に 、 米 企 業 な ど の 技 術 提 供 の 下 、 強 い 検 索 規 制 を か け て い る 。 国 内 販 売 の ソ フ ト に 関 す る 規 制 も 強 い 。 こ う し た 状 況 に 国 際 社 会 、 特 に 米 政 府 の 圧 力 が 高 ま っ て お り 、 二 ○ ○ 六 年 二 月 、 米 下 院 で 公 聴 会 が 開 か れ た 。 た だ 、 ウ ェ ブ の 特 質 か ら 見 て 、 そ も そ も 中 国 の ウ ェ ブ 統 制 は 長 く は も た な い だ ろ う 。 だ か ら こ そ 、 ア ジ ア で 、 ウ ェ ブ 上 の 新 し い 統 一 基 準 を 策 定 し 定 着 さ せ る た め 中 国 を 動 か す な ら 今 が チ ャ ン ス だ 。 中 国 政 府 は 北 京 五 輪 を 国 際 的 地 位 向 上 の タ ー ニ ン グ ポ イ ン ト に 位 置 づ け て お り 、 中 国 に と っ て も 国 際 化 へ の 大 き な 援 軍 と な る 漢 字 文 化 圏 の 再 編 成 は 魅 力 的 な は ず だ 。 中 国 の 現 状 は 国 際 的 に 見 て 是 正 を 要 す る 大 き な 問 題 を 抱 え て い る が 、 ア ジ ア 標 準 漢 字 策 定 を 迅 速 に 達 成 し う る エ ン ジ ン と し て の 役 割 を 期 待 す る な ら 、 大 き な チ ャ ン ス と 見 る こ と が で き る だ ろ う 。

国 際 的 批 判 を 浴 び て い る 中 国 の ウ ェ ブ 管 理 が そ の シ ス テ ム を 維 持 し 、 国 際 化 に 積 極 的 な 五 輪 目 前 の 今 、 そ う し た 現 状 を 冷 静 に 判 断 し 、 国 際 漢 字 振 興 協 議 会 な ど の 成 果 と U nic od e 対 応 の 議 論 を ふ ま え た ウ ェ ブ 前 提 の 漢 字 を 組 み 合 わ せ る 発 想 で 標 準 漢 字 問 題 を 取 り 上 げ る こ と は 、 現 実 的 ・ 戦 略 的 判 断 と し て 一 つ の 有 益 な 選 択 肢 で あ る 。 ア ジ ア 諸 国 と の 関 係 を 民 衆 レ ベ ル か ら 改 善 で き 、 ダ イ レ ク ト な ミ ク ロ 経 済 の 活 性 化 と 域 内 貿 易 の 発 展 に 貢 献 し 、 将 来 的 に は 日 本 が 工 業 製 品 立 国 か ら ソ フ ト 立 国 へ と シ フ ト し て い く こ と で ア ジ ア 経 済 の 中 で 主 導 的 地 位 を 保 ち 続 け る 布 石 と も な り う る 。 国 境 を 越 え た 標 準 漢 字 の 策 定 は 、 そ の 発 想 自 体 の 是 非 を 歴 史 的 ・ 文 化 論 的 に 幅 広 く 論 ず べ き 重 要 な 事 案 な こ と は 間 違 い な い 。 だ が 、 導 入 さ れ た 共 通 通 貨 ユ ー ロ の よ う に 、 建 設 的 発 展 と し て 伝 統 に 変 革 を 加 え る こ と を い と わ な い な ら 、 今 と い う タ イ ミ ン グ を 活 か す か ど う か は 今 後 の 分 岐 点 と な る だ ろ う 。 通 商 的 視 点 と ア ジ ア 全 体 の 文 化 的 な 基 盤 と い う 視 点 か ら 、 政 府 が ア ジ ア 標 準 漢 字 の 策 定 に 主 体 的 に 動 け ば 、 将 来 に わ た る ア ジ ア 全 体 の 資 産 を 生 み 出 す 大 き な 国 際 協 力 事 業 と し て 成 果 を 期 待 で き る 。 拡 大 す る 中 国 経 済 に 飲 み 込 ま れ ず 、 緩 や か に し か し 緊 密 に 連 繋 す る 経 済 関 係 を 築 く た め に 、 ア ジ ア 漢 字 商 圏 の 形 成 と 深 化 は 重 要 な 意 味 を 持 つ 。 農 業 輸 出 国 か ら 工 業 輸 出 国 へ と 急 速 な 変 貌 を 遂 げ る 中 国 と 競 合 せ ず 共 存 す る た め の 中 長 期 的 な 方 策 を 必 要 と し て い る 日 本 や ア ジ ア 諸 国 に と っ て 、 ウ ェ ブ 次 世 代 を 生 き 抜 く 上 で の 大 き な ツ ー ル と も な る 。 構 想 に と ど ま っ て い る 東 ア ジ ア 共 同 体 実 現 の た め に も 早 急 な 検 討 が 望 ま れ る 。 ︵ や ま な か  り ん た ろ う / I G I グ ロ ー バ ル イ シ ュ ー ズ 研 究 所 代 表 ︶ ︽ 参 考 文 献 ︾ ① 梅 田 望 夫 ﹃ ウ ェ ブ 進 化 論 ﹄ 筑 摩 書 房 、 二 ○ ○ 六 年 。 ② 黒 岩 達 也 ﹁ そ れ で も 膨 張 し 続 け る 中 国 巨 大 市 場 ﹂︵ ﹃ 経 済 研 究 ﹄ 一 八 号 、 大 東 文 化 大 学 経 済 研 究 所 、 二 ○ ○ 五 年 ︶。 ③ 財 団 法 人 日 本 漢 字 検 定 協 会 公 式 サ イ ト  ︵ htt p:// w w w .ka nk en .or .jp ︶。 ④ 白 石 隆 ﹁ 東 ア ジ ア 共 同 体 の 構 築 は 可 能 か ﹂︵ ﹃ 中 央 公 論 ﹄ 二 ○ ○ 六 年 一 月 ︶。 ⑤ 範 建 亭 ﹁ 中 国 経 済 に お け る 外 資 系 企 業 の 役 割 ﹂︵ ﹃ 一 橋 ビ ジ ネ ス レ ビ ュ ー ﹄ 五 二 巻 四 号 、 東 洋 経 済 新 報 社 、 二 ○ ○ 五 年 ︶。

参照

関連したドキュメント

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

[r]

端を示すものである。 これは漸江省杭州市野下人 民公社に関する 1958

[r]

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

[r]

国際図書館連盟の障害者の情報アクセスに関する取