兵庫教育大学 教育実践学論集 第15号 2014年 3 月 pp.235-242 1.はじめに 平成 22 年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査報 告書(1)によると中学生の体力は,昭和 60 年のピーク時 と比較して依然低い水準であることや運動を積極的に行 う者とそうでない者の二極化が顕著になっていることが 報告されている。体力の中でも,持久走や 20m シャト ルランで評価される呼吸循環器系の体力指標は,健康関 連体力とも呼ばれ,成人だけでなく子どもにおいても, その体力水準が高いほど生活習慣病のリスクが低いこ とが報告されている(2, 3)。これらの背景も踏まえながら, 小学校,中学校,高等学校の学習指導要領解説(4, 5, 6)では, 体力の向上をより重視し,「体つくり運動」の充実を図っ ている。「体つくり運動」の内容には「体力を高める運 動」があり「体の柔らかさ」,「巧みな動き」,「力強い動 き」,「動きを持続する能力」を高める運動が示されてい る。中学校では「調和のとれた体力を高めることに留意 すること」としているが,この時期は全身持久力の発達 の至適年齢に相当する(7)ため,「動きを持続する能力を 高めるための運動」に重点を置いて指導することができ ると示されている。しかし,中学生を含め学齢期におけ る児童・生徒の持久走に対する態度は否定的であり,小 学 4,5,6 年生を対象とした大友らの報告(8)では,持 久走に対して肯定的に受け止めている児童が少ないこと を報告している。また,小学 1 年生から高校 3 年生まで を対象とした森村らの報告(9)においても,全体の約半 数の者が持久走に対して「嫌い」と回答していることを 報告している。このように,児童・生徒が持久走に対し て否定的な態度であるため,これまでに様々な持久走あ るいは長距離走に関する教材や実践が報告されてきた。 中学生を対象とした研究も多く報告(10 ~ 21)されており, どのような強度を目安に運動するのかという点に着目 すると,これらの研究はおおよそ 3 分類することができる。 一つは主観的な運動強度を目安に行う場合で,「気持ち よく走れるペース」といった主観的な感覚や主観的運動 強度(RPE)を目安に行う場合である。二つ目は,心拍 数を目安に行う場合であり,運動中あるいは運動後に心 拍数を測定し,それを目安にする方法である。三つ目は, 速度(時間)を目安に行う場合で,持久走や長距離走の 自己記録から速度や 100m あたりの時間を計算し,でき るだけ一定のペースで走る方法である。いずれの方法を 目安に走る場合も,どのような強度で行うかによって, 持久走に対する態度が異なると考えられる。近年では「に こにこペース」(22)と言われるような最大酸素摂取量の およそ 40% ~ 70% の運動強度で走るといった無理のな
* 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科学生(Doctoral program student of the Joint Graduate School in Science of School Education, Hyogo University of Teacher Education)
** 岡山大学教育学部附属中学校(Junior High School Attached to Faculty of Education, Okayama University) *** 岡山大学 (Okayama University)
持久走の授業における体力水準が異なる生徒の態度変化について
笹 山 健 作
*
,尾 川 登太郎
**
,足 立 稔
***
(平成25年 6 月18日受付,平成25年12月 3 日受理)
Change in attitudes toward endurance running in students with different
physical fitness levels
SASAYAMA Kensaku
*,
OGAWA Toutarou
**,
ADACHI Minoru
***
This study examined changes in attitudes toward endurance running through course unit in physical education class. The participants consisted of 146 junior high school students (68 males and 78 females). Endurance running was practiced at a slow pace (NIKO NIKO pace, 40-70%V・O2max). Attitudes toward endurance running were assessed before and after the unit through a
questionnaire. The results were as follows. (1) Positive feeling score was significantly increased as a progress in class for females. (2) Negative feeling score was significantly decreased as a progress in class for both males and females. (3) Cognitive score of the unit was significantly increased as a progress in class for both males and females. These results suggested that the slow pace took the positive attitude toward the endurance running as a progress in class.
いペースでゆっくり走る授業実践がいくつか報告されて いる。足立ら(12, 14),細井ら(19),小磯ら(20)の中学生男女 を対象とした,にこにこペースに相当する授業実践の報 告では,単元前と比べ単元後には持久走に対して肯定的 に捉える生徒が増加することを報告している。にこにこ ペースの運動強度は,RPE の 11(楽である)から 13(や やきつい)に相当し,疲労の指標である血中乳酸が急激 に上昇する直前のペースであることが報告(22)されてい る。すなわち,乳酸が安静レベルで保たれる上限のペー スで走れば,身体的負担が軽減され,それが持久走に対 する肯定的な態度につながると考えられる。このような にこにこペースの持久走は,体力が低い生徒にも有効で あると考えられ,特に現在の体力の二極化や持久走に対 する生徒の否定的な態度を踏まえると,体力の低い生徒 に着目する重要性がより一層高まってくると考えられ る。しかし,にこにこペースに相当する運動強度での授 業実践は,いくつか散見されるが,ほとんど報告されて いないのが現状である。また,体力の低い生徒に着目し て検討を行っているのは小磯ら(20)のみである。この報 告では,体力の低い生徒のみを抽出して検討しており, 体力水準の違いが持久走に対する態度へどのように影響 を及ぼすのかは検討されていない。実際の体育授業では 様々な体力水準の生徒が存在し,体力の高い生徒にとっ てゆっくり走ることは,つまらないと感じる可能性も考 えられる。このことから,体力の低い生徒とともに,体 力の高い生徒の態度変化を検討することが重要であると 考えられる。 そこで本研究では,中学 1 年生を対象に,にこにこペー スの持久走の授業実践において体力が低い生徒と体力が 高い生徒の単元前後の態度変化を検討することを目的と した。 2.方法 (1)対象 対象者は A 中学校 1 年生 146 人(男子 68 人,女子 78 人) とした。対象者の身体的特徴お よび新体力テストの結果 を表 1 に示した。身長,体重,体力の結果は平成 24 年 度の学校保健統計調査(23),平成 23 年度体力・運動能力 調査(24)の結果と比較すると男女ともにほぼ同等の値で あった。 (2)単元計画 単元の概要を表 2 に示した。2012 年度の 3 学期中に, 保健(1 時間)と体育(4 時間)を組み合わせた 5 時間 の単元で授業を構成した。体育の授業は体つくり運動の 単元として実践を行った。1 時間目は簡易スタミナテス ト(10)(全身持久力の測定と目標心拍数での走行スピー ドの決定)を行い,2 時間目は保健の授業で「呼吸器官・ 循環器官の発育・発達」と「運動やスポーツが体にあた える効果」について学習した。3,4,5 時間目は体育の 授業において,それぞれ 15 分間,20 分間,30 分間の持 久走を実施した。保健と体育のすべての授業は 1 名の教 諭が実施した。 (3)測定項目 1)心拍数および主観的運動強度(RPE) 各授業における心拍数と RPE は,生徒自身が運動中ま たは運動後に測定し,記録用紙に記入した。心拍数は手 首からの触診法により 15 秒間の脈拍を測定した。RPE は Borg(25),小野寺ら(26)によって作成された主観的運動強 度に対応した 6 から 20 までの数字を選択し,運動中ま たは運動直後に記録用紙へ記入した。3 時間目は 5 分後, 10 分後,15 分後の 3 回,4 時間目は 10 分後,20 分後の 2 回,5 時間目は 15 分後,30 分後の 2 回それぞれ心拍 数および RPE を測定した。各授業で測定した数値の平 均値を各個人の代表値とした。 2)持久走に対する態度 徳永ら(27, 28)の「運動についての調査票」 を用いた。 この調査票では,態度を構成する要素である感情的成 分,認知的成分を評価でき,感情的成分は運動すること が好き・嫌い,楽しい・楽しくないといった感情や情動 的側面であり,認知的成分は運動に対して持つ評価・価 値などの信念を評価できる(29)。先行研究ではこの調査 票に基づいて,小学生(30)や大学生(31)を対象に体育の授 業における持久走に対する態度が検討されている。本研 究でも,徳永ら(27, 28)が作成した調査票の「運動」を「持 久走」として体育の授業における持久走に対する感情的 成分と認知的成分を評価した。感情的成分のうち,快適 感情に関する設問を 4 問,不快適感情に関する設問を 5 問,認知的成分に関する設問を 9 問設定し得点化した。 調査票の回答は「賛成」,「どちらともいえない」,「反対」 の 3 段階を用いて,持久走に対して肯定的な回答に 1 点, 「どちらともいえない」の回答に 0 点,否定的な回答に 表 1 対象者の身体的特徴と新体力テストの結果
- 1 点を与え,持久走に対する態度得点を算出した。快 適感情および認知的成分は,得点が高いほど持久走に対 して肯定的な態度を示す。一方,不快適感情は得点が低 いほど持久走に対して肯定的な態度を示す。なお,調査 は単元のはじめと単元後に実施した。 (4)統計処理 すべての分析は男女別に行い,3,4,5 時間目の心拍 数および RPE の変化は,対応のある 1 要因の分散分析 を行った。単元前後の態度得点の比較は,対応のある t 検定を行った。 また,対象者を 20m シャトルランの平均値によって 2 分類し,平均値未満の生徒を低体力群,平均値以上の生 徒を高体力群とした。低体力群と高体力群の単元前後 の態度得点の比較は対応のある 2 要因の分散分析を行っ た。 数値は平均値±標準偏差で表し,有意水準は 5% 未満 とした。統計処理は,IBM SPSS Statistics Version 20 を用 いて分析を行った。 3.結果 (1)3,4,5 時間目の心拍数,RPE の結果 3,4,5 時 間 目 の 心 拍 数( 拍 /15 秒 ),RPE の 結 果 を 表 3 に示した。一元配置分散分析の結果,男子の心拍数 では授業時間による有意な主効果(F(2,134)=7.54, p<0.001)が認められた。Bonferroni の方法による多重比 較の結果,5 時間目の心拍数は 3,4 時間目の心拍数と 比較して有意に高かった。男子の RPE では授業時間に よ る 有 意 な 主 効 果(F(2,134)=13.76,p<0.001)が認 められた。Bonferroni の方法による多重比較の結果,4, 5 時間目の RPE は 3 時間目と比較して有意に高かった。 女子の心拍数では授業時間による有意な主効果(F(2, 154)=6.56,p<0.01) が 認 め ら れ た。Bonferroni の 方 法 による多重比較の結果,3 時間目が 4 時間目と比較して 有意に低かった。女子の RPE では授業時間による有意 な主効果(F(2,152)=21.07,p<0.001)が認められた。 Bonferroni の方法による多重比較の結果,4,5 時間目の RPE は 3 時間目と比較して有意に高かった。 (2)単元前後の態度得点の結果 男女の単元前後の態度得点を比較した結果を表 4 に示 した。その結果,男子では快適感情は単元前と単元後に 有意な差は認められなかったが,不快適感情は単元前と 比べ単元後は有意に低かった。認知的成分は単元前と比 べ単元後が有意に高かった。女子では,快適感情が単元 前と比べ単元後は有意に高く,不快適感情は単元前と比 べ単元後が有意に低かった。認知的成分は単元前に比べ 単元後が有意に高かった。 表 2 持久走の単元計画
(3)20m シャトルランで分類した対象者の身体的特徴, 体力,心拍数,RPE の結果 表 5 には 20m シャトルランで分類した対象者の身体 的特徴および体力, 心拍数,RPE の結果を示した。男 子の身体的特徴の項目では,身長で高体力群が有意に高 く,肥満度では低体力群が有意に高かった。体力の項目 では,握力,上体起こし,反復横跳び,20m シャトルラ ン,立ち幅跳び,ハンドボール投げ,総合得点は高体力 群が有意に高く,50m 走は低体力群が有意に高かった。 心拍数,RPE は 5 時間目 RPE のみで低体力群が有意に 高かった。女子の身体的特徴の項目では,体重,肥満度 において低低体力群が有意に高かった。体力との項目で は,20m シャトルラン,立ち幅跳び,ハンドボール投げ, 表 3 3,4,5 時間目の心拍数,RPE の結果 表 4 単元前後の態度得点 表5 20m シャトルランで分類した対象者の身体的特徴および体力,心拍数,RPE の結果
総合得点において高体力群が有意に高く,50m 走は低体 力群が有意に高かった。 心拍数,RPE は 3 時間目 RPE のみ低体力群が有意に高かった。 (4)低体力群および高体力群の単元前後の態度得点の結果 男女における低体力群および高体力群の単元前後の態 度得点を表 6-1,6-2 に示した。同様に,男女における 低体力群および高体力群の単元前後の態度得点の変化を 図 1-1,1-2,1-3,図 2-1,2-2,2-3 に示した。二元配置 分散分析の結果,男子の快適感情,不快適感情,認知的 成分では有意な交互作用は認められなかった。また認知 的成分で有意な群の主効果が認められ,不快適感情およ 表 6-1 低体力群および高体力群の単元前後の態度得点(男子) 表 6-2 低体力群および高体力群の単元前後の態度得点(女子) 図 1-1 快適感情(男子) 図 2-1 快適感情(女子) 図 1-2 不快適感情(男子) 図 2-2 不快適感情(女子) 図 1-3 認知的成分(男子) 図 2-3 認知的成分(女子)
び認知的成分で単元前後の有意な主効果が認められた。 女子では,快適感情,不快適感情,認知的成分のいずれ も有意な交互作用は認められなかった。また,不快適感 情では有意な群の主効果が認められ,快適感情,不快適 感情,認知的成分のいずれも単元前後の有意な主効果が 認められた。 4.考察 本研究では,無理なくゆっくり走るにこにこペースの 持久走を行い,単元前後の態度変化を比較検討した。そ の結果,男子の快適感情以外の項目で男女とも単元後 に,持久走に対して肯定的な態度変化が認められた。次 に,体力水準が異なる生徒においても,単元前後の態度 変化を検討した。その結果,男子の快適感情以外の項目 において,低体力群と高体力群の両群ともに単元後には 持久走に対し肯定的な態度変化が認められた。本研究の 結果から,にこにこペースの持久走は男女ともに,体力 が低い生徒だけでなく体力が高い生徒においても肯定的 な態度変化を示すことが明らかとな った。 3,4,5 時 間 目 の 心 拍 数,RPE の 結 果( 表 3) か ら, 心拍数は男女ともに目標心拍数である 30 ~ 35(拍 /15 秒) より 3 拍~ 5 拍程度高い結果であった。RPE に関しては, 目標の 11 ~ 13 の範囲であった。これらのことから,本 研究の授業における走行中の運動強度は目標とするにこ にこペースの心拍数より高い結果となったが,RPE を踏 まえるとおおむねにこにこペースによる持久走を実践で きたと考えられた。 次に,単元前後の態度得点(表 4)から,男子の快適 感情を除くすべての態度項目で単元前と単元後の得点に 有意な差が認められた。このことから,本研究の授業実 践により男女ともに持久走に対する肯定的な態度変容が 示唆された。先行研究においても同様の報告がなされて おり,足立ら(12, 14)は,中学 1 年生の男女を対象に,に こにこペースでの持久走を行った結果,単元前に比べて 単元後は,持久走の授業が「楽しい」または「気持ちい い」という質問に対して,男女ともに「とてもそう思う」 または「ややそう思う」と肯定的に捉えている生徒が有 意に増えたことを報告している。また,連続走行可能で あると認識している時間が単元前と比べて単元後に長く なっていることを報告している。また,細井ら(19)の報 告では,中学 2 年生男女を対象とし,スロージョギング (おおよそにこにこペースに相当する運動強度)を実施 した結果,「ジョギングは好きですか」という質問に対 して,単元後には女子において「好き」と答えた割合が 有意に増加し,「ジョギングは楽だと思いますか」とい う質問に対しては,男女ともに単元後に「楽だ」と答え る割合が有意に増加したことを報告している。これらの 報告は本研究と同様の方法を用いて態度評価を行ってい ないため,単純には比較できないが,持久走を肯定的に 捉えるという意味では本研究と一致していた。 本研究において,男子の快適感情は単元前(0.32)と 比べて単元後(0.62)に数値は増加する傾向がみられた が,統計的には単元前後に有意な差は認められなかっ た。この原因としては,快適感情(単元前)の男女差が 影響したのかもしれない。細井ら(19)の先行研究におい ても,単元前の「ジョギングが好きですか」という質問 に対して,「好き」と答える生徒は男女それぞれ 37.3%, 19.4% と男子の方が高く,単元前の「ジョギングが楽だ と思いますか」という質問に対して,「楽だ」と答える 生徒は男女それぞれ 23.5%,8.1% と男子の方が高いこと を報告している。このように,女子に比べて男子では, もともと持久走に対する肯定的な態度が高いことから, 本研究において単元前後に統計的な差が認められなかっ た可能性が考えられる。さらに,細井ら(19)は授業内で 男子は「もっとスピードを上げて走りたい」という発言 があったことを報告しており,持久走に対して男女の特 性が本研究において態度変化に影響を及ぼしている可能 性が示唆された。 次に,本研究は体力の低い生徒の態度に着目するた め,対象者を 20m シャトルランの記録によって体力の 低い生徒と体力の高い生徒に 2 分類し,単元前後の態 度得点を比較した。その結果,男子の快適感情以外の 態度項目で男女ともに,加えて低体力群および高体力 群ともに単元前と比べて単元後には有意な差が認めら れた。小磯ら(20)の先行研究でも体力の低い生徒に着目 し,単元前後の態度変化を報告している。小磯ら(20)は 中学 1 年生の男女を対象とし,持久走(男子 1500m,女 子 1000m)の記録によって低体力の生徒を抽出し,イー ブンペースでの授業(運動強度はにこにこペースに相 当)における単元前後の態度を検討している。その結 果,高橋ら(32)による形成的体育授業診断法と小磯ら(33) による長距離走に関する意識調査によって抽出された楽 しさ因子,運動の成果因子,社会的行動因子,仲間関係 因子の得点が単元後には有意に高かったことを報告して いる。この報告は体力の高い生徒に関して検討されてい ないが,体力の低い生徒において,にこにこペースの持 久走が肯定的な態度変化に効果的であり,本研究の結果 と類似していた。また,本研究では体力が高い生徒にお いても持久走に対する肯定的な態度変化がみられた。ま た,対象者数が少ないため統計的な分析は行っていない が,持久走に対する肯定的な態度変化は,体力が非常に 低い集団(20m シャトルランの数値が平均値- 1.5 標準 偏差である対象者:男子 n=5,女子 n=4)でも同様の傾 向であった。これらのことから,最大酸素摂取量のおよ そ 40% ~ 70% に相当するにこにこペースの持久走が相 対的に体力の高い生徒だけでなく体力の低い生徒にとっ
ても,持久走に対して肯定的な態度にさせることが示唆 された。このことは,本研究の低体力群と高体力群にお ける身体的特徴や体力,授業中の心拍数,RPE の結果(表 5)を踏まえると非常に重要な知見であると考える。す なわち,本研究の結果から,低体力群の生徒は 20m シャ トルランだけではなく他の多くの項目においても高体力 群に比べ低く,総合的に体力の劣る生徒であることに加 え,身体的には肥満度が高いことが推察される。しかし, 授業中の心拍数,RPE は低体力群と高体力群にほとんど 差はみられない。このように,身体的,体力的な水準が 異なる生徒にとっても本研究の実践は,心拍数,RPE に 差がほとんどなく,そのことが持久走に対する肯定的な 態度につながったことが推察された。 本研究における課題として,対象とした学校が中学校 1 校の 1 年生のみを対象としたことである。今後,にこ にこペースの持久走における態度変化を男女の特性を 含 めて,さらに明確にしていくためには,学校数および対 象者数を増やすことや他の学年においても検討する必要 がある。その他,今回の持久走はグラウンドにある 1 周 200m のコースを周回して走る方法をとったが,それ以 外のコースによる実践も必要であろう。すなわち,グラ ウンド以外の校内,または校外の周回コースといった, いわゆるロードで持久走を行った場合は,生徒の走行ス ピードや態度変化に影響を及ぼす可能性がある。また, そのようなコースでの持久走は,走ることに対してより 快適に感じる可能性に加え,事故防止にもつながること が考えられ,今後さらなる検討が必要であろう。以上よ り,小学校,中学校そして高等学校の系統的な指導を踏 まえながら様々な持久走の授業実践を行い,持久走を肯 定的に捉えることができるような実践方法を検討してい く必要があると考えられる。 -文 献- (1) 文部科学省「平成 22 年度全国体力・運動能力,運 動習慣等調査報 告書」2010
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