主観的幸福感と親の養育態度・記憶との関連
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(2) 序. 心理学研究は問題や病理の発見にばかり集中してい る,という批判的な見方がある.問題や病理を発見し,. 解決したり治療したりすることも,精神的健康を“回 復”させるためには必要なことである.しかし,精神 的健康を“維持”したり“増進”したりするためには,. そのようなネガティブなものだけに目を向けるのでは なく,ポジティブな側面について研究することが重要 であると考えられる.「ポジティブ心理学」はそういっ た考え方から提唱されている心理学研究の新しい動き である.人間の健康的な面に注目し,それらを伸ばし ていこうという考え方は,それ自体が非常に健康的な ものだと考えられる.. rポジティブ心理学」の課題は,主観的幸福感をも たらす個人特性や,それを獲得・育成するための要因 を示すことにあるという.どうしたら幸せになれるの か,どうしたら幸せな人々を増やすことができるのか, ということを解明するのが「ポジティブ心理学」の目 的だということができるだろう.その発展が期待され ているrポジティブ心理学」の取り組みは始まったば かりで,課題とされる主観的幸福感についても,より 多くの研究が必要であると考えられる. 人間のポジティブな側面に目を向けようというrポ ジティブ心理学」の考え方に共感し,幸せだと感じる ことや幸せだと感じる人を増やすために必要な主観的 幸福感の獲得・育成要因を探りたいと考えたところか ら,本研究は開始された.主観的幸福感の獲得・育成 要因を探るに当たり,筆者は,親の養育態度による影 響から示唆が得られるのではないかと考えた.重要な 対人関係の一つであると共に,対人関係の基礎となる ・1・.
(3) と考えられる親子関係をどのように受け止めているか 調査し,主観的幸福感との関連を考察することで獲 得・育成の要因が見出せるのではないかと考えたので ある.. 一2一.
(4) 第1章 問題 第1節 主観的幸福感 1.定義 2.獲得・育成要因. 第2節 養育態度 1.子どもの問題と. 親の養育態度 2.望ましい養育態度 3.主観的幸福感との関連. 一3一.
(5) 第1節 主観的幸福感 1.定義. 「主観的幸福感(SublectiveWe11・Being)」とは, Larson(1978)によって提唱された,幸福感を様々な 側面を持つ幅広い概念として捉える考え方である. Diener(1984)によって,幸福感の定義には主観的, つまり,個人が内的に感じ,判断するものであること, 肯定的感情や肯定的認知の測定法が含まれていること 人生すべての面にかかわる幅広い評価であることとい う3つの特徴があることが述べられている.しかし, 主観的幸福感の定義は研究者によって様々であり,人 生に対する肯定的認知であるとする定義,肯定的感情 であるとする定義,肯定的認知と肯定的感情を合わせ たものであるとする定義など,様々な定義のもとで主 観的幸福感の研究が進められてきた.島井ら(2004) によれば,主観的幸福感は自分の人生への認知的評価 とその評価に基づく感情という両面を持つもので,こ れらは幸福感の主観的経験としては不可分のものと考 えられるという.. 本研究においては,主観的幸福感をr満足感を含む 肯定的認知と肯定的感情」と定義し,研究を進めるこ ととした.. 2.獲得,育成要因. 根建・田上(1995)は,人が幸福感を抱きやすい人 格を獲得していく過程はどのようなものかといった研 究の必要性を示唆している.主観的幸福感は人が生き ていくために必要なもので,生得的なものであるとい う考え方もできる,しかし,心理臨床的アプローチに ・4・.
(6) よって主観的幸福感が上昇するという結果が得られた 研究もあり (根建・田上,1995;牧野・田上,1998),. 主観的幸福感は変容するもの,つまり獲得・育成され うるものだと考えられる.これまでの研究で,親密な 人間関係は,主観的幸福感に影響を及ぼす可能性のあ る要因として大きいものであることが示されている (牧野・田上,1998).Seidlitz&Diener(1993)は 幸福感の高低と出来事の記憶との関連を報告しており 牧野・田上(1998)によって主観的幸福感の高低と肯 定的出来事・否定的出来事の帰属に違いがあることが 見出されている.. 根建・田上(1995)は,幸福感の変容には自己受容,. 論理的柔軟的認知,問題処理行動,自己実現目標,他 者接触行動という5つの構成要素があると考えている. 過去や他者と比較せず,ありのままの自分を受け入れ ていくこと,出来事を合理的で相対的で多様にとらえ ていくこと,ストレス事態を解決し環境を統制してい くために自ら行動していくこと,意味ある目標を見つ けていくこと,親密な人間関係を築いていけるよう活 動していくこと,ということである.心理的well・being は,自己の人生や生活に対する有意味さの感覚を指し, 人格的成長・人生における目的・自律性・環境制御力・. 自己受容・積極的な他者関係からなる人生全般にわた るポジティブな心理的機能であるといわれている.心 理的well・beingの人格的成長・人生における目的と「自 己実現目標」,自律性・環境制御力と「問題処理行動」・ 「論理的柔軟的認知」,自己受容と「自己受容」,積極. 的な他者関係と「他者接触行動」とが対応すると考え られ,心理的well・beingの6次元は主観的幸福感変容 の構成要素に近いものであると考えられる.また,心 理的well・beingは発達的に変化し,成人期全般にわた る多様な心理的変化を捉えるのに適していると考えら 一5・.
(7) れている(西田,2000).この心理的wel1・beingと主 観的幸福感との関連を明らかにすることで,主観的幸 福感の発達的変化や獲得・育成モデルヘの示唆が得ら れるのではないだろうか.. 第2節 養育態度. 1.子どもの問題と親の養育態度. 小西(1987)は,親からの子どもへの働きかけとし て子どもの世話・養育と保護,子どもの社会化の2つ を挙げ,その愛情の関係と権威の関係という2つの関 係から,子どもに対する親の態度の影響を見ている. 愛情に関連した親の態度については,暖かさや関心, 受容などさまざまな用語が使われており,どのような ものを愛情的行動とするかやその具体的な親の行動は 研究者によっても対象となる子どもの発達によっても 異なる.しかし,どの行動でも揺るがない永続的愛情 が重要な要素となっていると考えられる。そのような 愛情ある態度で接してもらえなかった子どもは,発達 のさまざまな領域で好ましくない影響を受けたり,発 達が妨げられたりすることがあり得る。 小西(1987)によれば,愛情が欠けている,子ども が拒否されたと感じるような親の養育態度は,依存や 反抗,劣等感,衝動的,情緒不安などの不適応的性格 を形成し,様々な問題行動を引き起こすとされている. 拒否されたと感じた子どもは,愛情を得ようとし,問 題行動という形で関心を引こうとしたり,危機を知ら せたりするのだと考えられる.拒否されるのは自分が だめな子だからだと考える子どももいるだろうし,愛 情が得られないことで安心感が得られないということ もあるだろう. ・6・.
(8) 愛情に関しては,溺愛や過保護というような愛情の いきすぎという問題もある.溺愛された子どもや過保 護に養育された子どもは,依存的,自己統制力・自主 性・創造性・責任感の欠如,社会性の未熟さなどの特 徴が見られ,好ましくない行動特性を示す(小西,1987). という.また,過保護・溺愛の環境に安住し,さらな る保護を求めて依存的になり,自発性や自主性が育た ない(松本,1988)とも言われている.溺愛や過保護 といった環境では,親がなんでもしてくれる.親がや るべきでないことまでしてくれることもあるだろう. 親は子どものため,と思ってしていることも,実は子 どもの適切な発達を妨げていることがある.親がなん でもしてくれれば,当然依存的になるだろうし,いや なことからは逃げ,忍耐力が育たずわがままになるこ とも考えられる。自分で何かをすることが少なくなれ ば自立・自律も妨げられる.溺愛や過保護は間違った 愛情のかけ方であり,それが引き起こす問題も多いと 考えられる.. 親の権威とは子どもの社会化を促すもので,愛情あ る世話養育から自然に発生すると考えられる(小西, 1987).国谷(1988)は,パワーという言葉であらわし ているが,同様のことであると言って良いだろう. Baumrind,D.(1967)は,高い統制とともに子どもの 成長に暖かく積極的な励ましを行う親を「権威ある親」 と呼び,統制が強く,暖かさに欠ける親を「独裁的な 親」,統制に欠けていて,子どもに成長を求めず,やや 暖かい親をr甘やかしの親」と呼んでいる.いきすぎ た権威,っまり一方的な厳しい養育による子どもは, 自主性に欠け,劣等感や逃避傾向が見られ,権威が欠 けた親の子どもは,非社会的,攻撃的などの傾向を示 す(小西,1987), Baumrind,D.(1967)によれば,. 独裁的な親の子どもは,不平・不満が多く,消極的で ・7・.
(9) 他者への依存や不信感が強く,甘やかしの親の子ども は自己統制や探求心が少なく,自信が低いという.つ まり,独裁的な親の子どもは,満足感が低く,目的性 や自己決定力に欠けると考えられ,甘やかしの親の子 どもは,環境制御力や自己受容の感覚を持っていない と考えられる.. 権威のいきすぎた独裁的な親は,子どもを自分の思 い通りにしようとする.そのような親だと,子どもは 親に行動を決められてしまい,自分で考えたり判断し たりする機会が奪われてしまう.それが続けば子ども は多くを他人任せにするようになってしまうかもしれ ない.そのため自主性に欠け,他者への依存が強くな るのだと考えられる.また,親が思い通りにしたいと 思っても,全て思い通りになる子どもはいないだろう。 しかし思い通りにならない子どもに対して親が不満を 感じれば,子どもは劣等感つまり自分への不満を抱い てしまうかもしれない.さらに,暖かさに欠けるとい うことは愛情に欠けるということだとも言え,他者へ の信頼の基礎が確立されていないことが考えられる. 子どもが,自分が愛されないのは自分が親の思い通り にできないだめな子だからだ,と考えてしまうことも あり得るだろう.. 権威の欠けた甘やかしの親は,子どもを社会化しな い,できない親である.親が子どもを正しい方向に導 くことができず,未学習・誤学習のため,子どもは非 社会的,攻撃的などの傾向を示すだろう.また,親か らの子どもの成長への要求が低いと,言葉かけや働き かけのなさ,またはそれらの不適切さといったことに 現れ,子どもの成長する可能性が限定されてしまうか もしれない,そうして子どもが自分にはできないと考 えてしまえば,自分に自信を持てなくなってしまった り,満足感が低まってしまったりするのではないだろ 一8・.
(10) うか.. 溺愛する養育態度では,愛情のいきすぎだけでなく, 親の権威の欠如も指摘される.溺愛という養育態度と 関連すると言われる子どもの問題は,権威の欠如によ る問題とも言えるのである.また,独裁的な親は,暖 かさに欠けており,権威がいきすぎているだけでなく, 愛情が欠けていると考えられる.権威の過不足と愛情 の過不足は相互に関連し合う問題なのではないだろう か.. 沢崎・真仁田・小玉(1982)によると,勉強・課題 に対して,否定的自己認知が成立したとき,それを受 容する傾向と支配的・理解なし・感情的・変動的・冷 たいという,望ましくないと考えられる養育態度が関 連することがわかっている.また,その時の受容反応 は,無力感を伴った現状肯定感とでも言うべきもので あり,不安,自己不全感を秘めながら意欲を喪失して いる現状を表わしている(沢崎・真仁田・小玉,1982) という.子どもの勉強・課題について,これをやりな さいとか,どのくらいやりなさいといった押し付ける 態度,努力した過程を見ずに,結果だけ気にして自分 の話を真剣に受け止めてくれないといった態度,冷静 になれずに一喜一憂して,ころころ変わる態度,愛情 のない冷たい態度.そのような態度は,子どもが自分 を否定的にとらえたり,それを改善しようとする意欲 を失わせたりするのである. 2.望ましい養育態度. 小西(1987)によると,親の愛情ある態度は,どの 発達段階にある子どもに対しても,発達のすべての領 域で好ましい影響を与えると言われており,不快な感 情場面でも適応できるようにする,独立行動を発達さ ・9一.
(11) せる,自己評価が高く愛他主義的な子どもを育てると いう.つまり,愛情ある態度によって,環境適応が高 く,自律的で,自己肯定や満足感が高く,積極的に人 間関係を築けるようになると考えられる. また,小西(1987)によれば,権威の関係として最 も適当なのは民主的な態度とされている.民主的な態 度とは,子どもを理解し,自律を尊重し,感情的にな らないというものである。親の民主的な態度は,知的 好奇心・創造性に優れた子ども,積極的行動とに関連 があるという(小西,1987).国谷(1988)は,パワー 構造が明確で,親と子の境界線がはっきりしているが, 正しい主張は聞き入れてもらえ,個人の自律性が確立 されて互いに尊重されるという,民主的な態度と同様 のものを望ましい親子関係として挙げている.松本 (1988)は,子どもの自然な欲求を親が可能なかぎり 受容することが大切だとしており,そのためには親と 子のコミュニケーションが重要であると述べている. 3.主観的幸福感との関連. 先述したが,親密な人間関係は,主観的幸福感に影響 を及ぼす可能性のある要因として大きいものであるこ とが示されている、親子関係は重要な対人関係の一つ であると共に,対人関係の基礎となると考えられ,主 観的幸福感にも影響するのではないかと考えられる. しかし,親の養育態度による子どもへの影響について は多くの研究がなされてきているにもかかわらず,主 観的幸福感と親子関係・養育態度との関連については, 両親のことが好きであり,仲が良ければよいほど主観 的幸福感が高まることが明らかにされている(西隅, 2002)程度である,主観的幸福感と親の養育態度や親 子関係との関連にっいての研究は非常に少ないのが現 ・10一.
(12) 状なのである.また,西隅(2002)によって他者との 関係性の質が影響することは明らかになったが,具体 的にどのような「養育態度」が影響するのか調査され てはいない.. しかし,親の養育態度による子どもへの影響について の研究を主観的幸福感や心理的well・beingに当てはめ て考えてみると,望ましいとされる養育態度による影 響は満足感を高めたり,心理的well・beingの高さにつ ながったりすると考えられる.また逆に,望ましくな いと考えられる養育態度は,満足感を低めたり,心理 的wel1−beingの低さにつながったりすると考えられる しかしこれは推測に過ぎず,実証的研究が必要である.. ・11・.
(13) -. 2 -.
(14) 本研究では,主観的幸福感の高低と親の養育態度との 関連を明らかにすること,想起された記憶と主観的幸福 感との関連を明らかにすること,主観的幸福感の2側面 (認知的側面・感情的側面)と心理的 we11・beingの各因子. との関連を明らかにし,主観的幸福感変容の要素につい て検討することを目的とした. また,主観的幸福感と親の養育態度・記憶との関連に っいて,先行研究の結果から以下の仮説を立て,検討す ることとした.. 主観的幸福感と親の養育態度との関連について,受容 的な養育態度・自律を支持する養育態度と主観的幸福感 には正の関連があり,拒否的な養育態度・統制の強い養 育態度と主観的幸福感には負の関連があるのではないか と考えた(仮説1).主観的幸福感と記憶との関連につい ては,主観的幸福感の高い人は肯定的出来事を想起しや すく,主観的幸福感の低い人は否定的出来事を想起しや すいのではないかと考えた(仮説2).主観的幸福感と心 理的well−beingとの関連にっいては,心理的we11・being の各因子は主観的幸福感の認知的側面と関連があるので はないかと考えた(仮説3)。. 主観的幸福感の高低と親の養育態度,過去の記憶との 関連が明らかになり,主観的幸福感獲得・育成について の示唆が得られれば,主観的幸福感を高める要素が見え てくるだろう.そこから,主観的幸福感を高めるにはど うしたら良いか,臨床的に応用する,子育て・教育の現 場に生かす方法を考えたい.. 一13一.
(15) 第3章 方法. ・14・. 第1節. 手続き. 第2節. 質問紙構成.
(16) 第1節 手続き 質問紙を授業時間内及び課外活動時問内に配布し, 筆者が教示を行い,一斉に回答する集団実施形式で質 問紙調査を実施した.調査対象は大学生148名(男性61 名,女性87名,平均年齢20.7歳)であった. 調査時期は2005年9月下旬から11月上旬であった。. 第2節 質問紙構成 質問紙構成は以下のとおりであった. 主観的幸福感(認知的側面)を測定するものとして「人 生に対する満足感尺度(寺崎ら,1999)」を用い,全 28項目について“全く一致しない”から‘‘完全に一致. する”までの4件法で回答を求めた. 主観的幸福感(感情的側面)を測定するものとしてr多. 面的感情状態尺度・短縮版(寺崎ら1991,1992)」よ り,抑欝・不安,敵意,倦怠,活動的快,非活動的快,. 親和領域の6領域を用い,各5項目ずつ,計30項目に ついて“全く感じていない”から“はっきり感じてい る”までの4件法で回答を求めた. 親の養育態度を測定するものとして「親子関係診断 尺度EICA(辻岡・山本,1976)」を用い,全40項目に ついて“全くそうでない”から“非常にそうである” まで4件法で回答を求めた.養育者全体の印象を測定 できるよう,教示を変更して用いた. r心理的wel1・being尺度(西田,2000)」を用い・ 全43項目にっいて“全くあてはまらない”から“非常 にあてはまる”までの6件法で回答を求めた. 現在の自分の考え方に影響を与えたと思う記憶につ いて,自由記述で回答を求め,その記憶について“肯 定的(良い)”から“否定的(悪い)”までの3件法で回答 ・15・.
(17) を求め,さらにその原因帰属について自由記述で回答 を求めた.. 本研究で用いた質問紙を資料に示した.. 一16・.
(18) 第4章 結果 第1節. 因子分析. 第2節. 性差の検定. 第3節. 相関分析. 第4節 t検定 第5節. ・17・. 重回帰分析.
(19) 第1節 因子分析. 「人生に対する満足感尺度」全28項目について因子 分析を行った結果,3因子が抽出された.因子負荷量 が.40未満の項目は分析から除外し,Cronbachのα係 数を算出した.Table1に回転後の因子負荷量を質問項 目毎に示した,第1因子は,過去を振り返って感じる 満足・人生に対する評価を表していると解釈でき「過 去満足」(αニ.88),第2因子は,将来への期待・希望 を表してると解釈でき「未来期待」(α=.79),第3因. 子は現在の生活に対する満足を表していると解釈でき 「現在満足」(α=.79)と命名した.. 「多面的感情状態尺度・短縮版」30項目について因 子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,2 因子が抽出された.因子負荷量が.40未満の項目は分析. から除外し,Cronbachのα係数を算出した.Table2 に回転後の因子負荷量を質問項目毎に示した.第1因 子は活動的快,非活動的快,親和の3領域の項目で構 成されておりr肯定的感情」(αニ.93),第2因子は抑. 欝・不安,敵意,倦怠の3領域の項目で構成されており 「否定的感情」(α=.88)と命名した.. 「親子関係診断尺度EICA」全40項目について因子 分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,4因 子が抽出された.因子負荷量が.40未満の項目は分析か. ら除外し,Cronbachのα係数を算出した.Table3に 回転後の因子負荷量を質問項目毎に示した.第1因子 は,子どもの自由や意見を尊重するような養育態度を 表していると解釈できr自律支持」(α=.88),第2因 子は,子どもを理解したり情緒的に支えたりするよう な養育態度を表していると解釈でき「情緒的支援」(α =.88),第3因子は,子どもをコントロールしようとす る養育態度を表していると解釈でき,「統制」(αニ.90), ・18・.
(20) 第4因子は,子どもと一緒に過ごしたがったり直接的 に愛情表現したりする養育態度を表していると解釈で き「一体感的愛情」(αニ.80)と命名した.. r心理的well・being尺度」全43項目について因子分 析(主因子法,バリマックス回転)を行った結果,5因子 が抽出された.因子負荷量が.40未満の項目は分析から. 除外し,Cronbachのα係数を算出した.Table4に回 転後の因子負荷量を質問項目毎に示した.第1因子は, 人生における目的を含め,自分で決定することを表し ていると解釈でき「自己決定」(α=.88),第2因子は,. 周囲の環境に適応したり出来事に柔軟に対応したりす ることを表していると解釈できr環境適応」(α=.88),. 第3因子は,ありのままの自分に対する肯定的な見方 を表していると解釈でき「自己受容」(α=.84),第4. 因子は,新しい経験や自分の成長に対して開かれてい ることを表していると解釈でき「人格的成長」(αニ.70),. 第5因子は,他者とのあたたかい,親密な関係を築い ていることを表していると解釈できr積極的他者関係」 (α=.74)と命名した.. 第2節 性差の検定 因子分析で得られた各因子について合成得点を算出 し,被験者全体及び男女別の平均値と標準偏差を算出 した(Table5).性差の検定を行った結果,「否定的感情」 (t(148)=一2.79,p<.01)では女性が有意に高く,「自己 決定」(t(148)ニ2.24,p<.05)・「自己受容」(t(148)ニ3.06,. p<.01)では男性が有意に高かった.. 第3節 相関分析 「人生に対する満足感尺度」,「多面的感情状態尺度」, 一19・.
(21) TabIe1人生に対する満足感尺度因子分析結果 過去満足. No,. 22私の人生は順調であった. 11私の今後の人生は順調であろう. 7私の人生は順調でなかった.(一) 4私の人生は幸運なほうである.. .76. 3私の人生は不運なほうである.(一). ,67. 現在満足. 未来.凋、. .72 .71. .69. 19私の人生は悪い方へ向かっている.(一). .77. 15これから先,楽しいことなどない.(一). .76. 18将来に希望が持てない.(一) 9これから先,楽しいことがあるだろう.. .59. 20将来の目標がある.. .55. .57. 1現在の生活に満足している. 17今が人生で一番良いときである. 14現在の生活に不満である.(一) 5現在,順調な生活を送っている.. .86 .69. .63 .62. 01 1 42 7. 一20一. 6.78 27.41. 6∩∠. 因子寄与(自乗和) 寄与率(%). 61 49. 10以前より,物 がよく思えるようになった.. .61.
(22) TabIe2多面的感情状態尺度(短縮版)因子分析結果 肯定的感情 否定的感情. No.. 30陽気な. .83. 25はつらつとした 9 元気いっぱいの. .75. 14すてきな 23のんきな 5 活気のある. .69. .74. .69 .68. 4 おっとりした. .68. 7 気力に満ちた. .68. 24のんびりした. .66. 1愛らしい. .65. 16だるい 17疲れた. .71. .70. 6気がかりな. .69. 12自信がない. .66. 28むっとした. .65. 8 くよくよした. .63. 26不安な 27無気力な. .60 .57. 18つまらない 20悩んでいる. .55 .53. 因子寄与(自乗和) 寄与率(%). ・21・. 7.32 24.39. 5.31 17.71.
(23) Ta目e3親子関係診断尺度日GA因子分析結果 自律 寺. 南. 25夜や週末は私の好きなようにすごさせてくれた. 21学校が終わった後は,私の好きなことをさせてくれた.. 糸制. 本感白・愚情. .71. 1なんでもしたいようにさせてくれた.. ,71. 4私の言うことに耳を傾けてくれた.. ,70. 恰私がしたいことはどんなことでもさせてくれた.. 情糸的援. .78. ,68. 12私が困っている時には元気付けてくれた, 7いっも私を喜ばすことを考えていた. 36心配事をじっくり聞いてくれたので,気持ちが楽になった. 28私がどんな物の見方をしているのか理解しようとした、 葡私が喜ぶ物を買ってくれたり,役立つ事を教えてくれたりした,. ,73 ,69. 、68 .66 .63. 図凶. 38私が学校の勉強や家での雑用を怠けると, 私を罰するのを当然だと思っていた.. ,窃. 34私が悪いことをすれば,全て何らかの方法で 罰しなければならないと思っていた.. .鋤. 26私に何か言いつけると,それを守るまでやかましく雷って聞かせた. 30私のために沢山のきまりや規則を作り,家の秩序を守ろうとした. 蒋私が何をすべきかいっも注意したがった、. .78 .78 .66. 23暇さえあれば,私に話しかけたり私と一緒に居たがった. 27私の暇な時はたいてい,一緒に過ごして欲しいと思っていた. 11他の誰かどよりも,私ど一緒に居たがった, 35私のことが好きだということを態度で表すべきだと思っている. 15私にたびたびほほえみかけた.. .76 、75. ,64 .55. 11,04. ヰ珠. 804. 27,31. ︷︸6. 844. 寄与率(%). 4 5 6δ. 因子.与(自乗租. ,54. 56. 2.
(24) Table4心理的We餐1−Ed㎎尺度因子分析結果 自己決定. No,. 認自分の行 は 分で決める、 鍵私の人生にはほとんど目的炉なく,. 環境適応. 人格的成長 積極的他者関係. 自己受容. .72、. 進むべき道を見出せない.(一). .フ1. 舳習慣にとらわれず,自分自身の考えに基づいて行動している, 詑本当に自分のやりたいことがなんなのか,昆出せない.(一). .71. 稔 現在,目的なしにさまようているような気がす’る,(一). .日1. 、白2. 8うまく周囲の環境に適応して,自分を生かすことができる. 18周囲の状混にうまく折り合いをつけ捻がら,. .76. 自分らしく生きていると思う. 38 周りで起こうた問題に,…柔軟に対応rすることができる,. ,69. 37これまでの入生において成し遂げてきたことに満足している. 餌状洩をより良くするために,周りにi柔軟に対応すること削できる.. ,63. ,6ア. 朋. 41良い面も悪い面も含め,自分自身の ありのままの姿を受け入れることができる,. 、68. 図Go. 30何かを決める時,世間の人から どう見られているかとても気になる,(一) 24自分の性格についてよく1悩むことがある.(一). .6ア. 31自分に対して肯定的である、 40自分の生き方や性格をそのまま受け入れることがでぎる.. .65. .66. .63. 侶私の能力は,もう限界だと思う.(一). .65. 23私の人生は,学んだり変化したり成長したりする 連続した過程である. 4これ以上,自分自身を高めることはできないと思う、(一) 2$これまでに,あまり信頼できる人間関係を繁いてこなかった.(一) 憐これからも,私はいろいろな面で成長し続けたいと思う.. .56 ,56 .55 ,52. 15自分の時間を他者と共有するのはうれしいことだと思う. 3g他者との親密な関係を維持するのは,. .フβ. 面倒くさいことだと思う.(一). .61. 3自分が生きていることの意昧が見出せない.(一) 憶他者と居ると愛情や親密さを感じる.. ,52. 凸∠3 0ハ∪ 弓口7. つU臼. 21 2 9. 駈.24. 12,19. Oハ︾ ハU3. 5.go 13.7呂. 発9. 大 可 Φ 寄与率(%). ,50.
(25) Table5合成得点平均値・標準偏差. N. 過去満足. 性女生. 全体. 未来期待. 性女性. 全体. 性女生. 全体. 現在満足. 性女生. 全体. 肯定的感情. 性女. 全体. 否定的感情 自律支持. 性女生. 全体. 情緒的支援. 性女生. 全体. 性女生. 全体. 統制. 性女. 全体. 一体感的愛情. 性女. 全体. 自己決定. 環境適応. 性女. 全体. 自己受容. 性女. 全体. 性女生. 全体. 人格的成長. 性女性. 全体. 積極的他者関係. M 148. 187187187187187187187187187187187187187187187. 満足感全体. 性女生. 全体. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. 148. ・24・. SD. 76.01. 5.93 6.07 35.71. 5.49 5.86 26.84. 6.62 7.00 13.46. 9.44 1.56 .70. 5.91 .06. .99. 3.17 .94 .51. 2.63. 3.82. .67. 3.21. .59. 44.24. 4.57 4.00 30.22. 8.48 1.45 34.84. 6.25 3.86 33.72. 3.38 3.97 14.47. 5.13 4.00 14.16. 4.25 4.10 49.71. 1.75 8.28 36.87. 8.07 6.03 21.89. 8.66 .99. .70. 6.49 .50 .24. 6.97 .83 .02. 5.98 .56 .81. 4.58 .64 .51. 3.46 .05. .74. 9.16 .89. .36. 7.24 .87. .68. 5.67. 3.51. .07. 0.76. .81. 42.20. 2.25 2.17 23.28. 3.28 3.28. 4.93 .92 .96. 3.70 .82 .23.
(26) 「親子関係診断尺度」,「心理的well・being尺度」各因. 子の合成得点と「人生に対する満足感尺度」全体の合 成得点(「満足感全体」),「記憶」についてPearsonの 相関係数を算出し,分析を行った(Table6).. その結果,「満足感全体」と養育態度の4因子では, 「自律支持」「情緒的支援」「一体感的愛情表現」との 間にrニ.18∼.33の有意な弱い正の相関が見られ,「統 制」との間に有意な弱い負の相関が見られた(rニー.23, p〈.01).また,心理的wel1・beingの5因子との間では r=.41∼.59の有意な中程度の相関が見られた.記憶と の間には有意な弱い正の相関が見られた(r=.31,p <.01).. r過去満足」と養育態度の4因子ではr自律支持」r情 緒的支援」「一体感的愛情表現」との間にrニ.19∼.38. の有意な弱い正の相関が見られ,r統制」との間に有意 な弱い負の相関が見られた(r=一.22,p<.Ol).また,. 心理的well・beingの5因子との問ではr=.41∼.56の有 意な中程度の相関が見られた.. 「未来期待」と養育態度の「統制」との間に有意な 弱い負の相関が(r=一.21,p<.01),「一体感的愛情」と の間に有意な弱い正の相関が見られた(r=.22,p<.01)。. また,心理的wel1・beingのr自己決定」r人格的成長」 r積極的他者関係」との問ではrニ.44∼.56の有意な中 程度の相関が,r環境適応」(r=.32,p<.Ol),r自己受 容」(r=.36,p<.01)との間では有意な弱い正の相関が 見られた.. 「現在満足」と養育態度の4因子では,「自律支持」 (r=.28,p<.01)との間に有意な弱い正の相関が,心理 的well・beingの5因子との問ではrニ.20∼.32の有意な. 弱い正の相関が見られた.また,「記憶」との間に有意 な弱い正の相関が見られた(r=.34,P<.Ol).. 「肯定的感情」と養育態度の4因子では,「自律支持」 ・25・.
(27) Table6主観的幸福感と養育態度・心理的Weli−beingの相関. −凶①−. 人格的成長. 積極的他者関係. ** 53. 宰* 55. 41**. 、41**. 串* 56. ** 48. ** 27. ** 50. 申寧 36. ** 32. *寧 56. ,44*宰. rO6. ** 26. *卓 28. .25**. .20*. .32**. ,14. .34**. .15. ** 55. ** 48. *牢 33. ** 28. ,01. .21**. r46**. 自律支持. 情緒的支持. 統制. 一体感的愛情. 自己決定. 環境適応. 満足感全体. ** 33. ** 32. ** 23. .18宰. ** 59. ** 46. 過去満足. 串* 38. 、34**. ** 22. * 19. 串串 56. 朱来期待. ,06. .15. .21**. ** 22. 現在満足. ** 28. * 20. ρ7. 肯定的感情. ** 34. ** 46. 否定的感情. *一.21. 一.02. 串*一,25. 自己受容一. r46**. **一.34. r16* 帥1%水準で有意 *5%水準で有意.
(28) (rニ.34,p<.Ol),「一体感的愛情表現」(rニ.34,p<.01). との間に有意な弱い正の相関が,「情緒的支援」との間 に有意な中程度の正の相関が見られた(r=.46,P<.01).. さらに心理的well・beingの5因子との間では,r環境 適応」(r=.55,p<,Ol)及びr自己受容」(r=.48,P<.Ol). との間に有意な中程度の正の相関が,「人格的成長」 (r=.33,p<.01)及び「積極的他者関係」(r=,28,p〈。01). との間に有意な弱い正の相関が見られた. r否定的感情」と養育態度の4因子では,「自律支持」 との間に有意な弱い負の相関が(r=一.21,p<.05),r一. 体感的愛情表現」との問に有意な弱い正の相関が見ら れた(r=.21,p<.01).さらに,心理的well・beingの5 因子との問では,r環境適応」(r=一.25,p<。01)及びr人 格的成長」(r=一.34,p<.01)との間に有意な弱い負の 相関が見られ,「自己受容」(r=一.46,p<.01)及び「自 己決定」(r=一.46,p<.01)との間に有意な中程度の負. の相関が見られた.r記憶」との間では有意な弱い負の 相関が見られた(rニー.31,p<.Ol).. 第4節 t検定 記憶について回答のあった97名(男性25名,女性 72名)のうち肯定的な記憶を回答した群(肯定群,64 名),否定的な記憶を回答した群(否定群,29名)に 分けた.どちらとも言えないと回答したのは4名だけ であったため,分析からは除外した.r満足感全体」r過 去満足」「未来期待」「現在満足」「肯定的感情」「否定. 的感情」についてt検定を行った.結果をFigurelに 示した.その結果,r満足感全体」(tニ3.11,p<.Ol), r過去満足」(t=2.37,p<.05),r現在満足」(t=3.46, p<.01)は肯定群が有意に高く,「否定的感情」(t=・2。93 p<.01)は肯定群が有意に低かった。. ・28一.
(29) 90. 去索 モ. 80 70. 60. 畑 ■記憶肯定群. 50. * 大 肉. 四記憶否定群. 40. 30. **. 20 10 z_. 否定的感情. 肯定的感情. z_ %_. 感 現在満足 福 幸 的 未来期待 観 主. 過去満足. 満足感全体. 0. Figure1想起記憶群別にみた主観的幸福感. ・29・.
(30) 第5節 重回帰分析 まず,心理的wel1・beingの「自己決定」「環境適応」 「自己受容」「人格的成長」「積極的他者関係」5因子の. 合成得点を基準変数,養育態度のr自律支持」r情緒的 支援」「統制」「一体感的愛情」4因子の合成得点を説明 変数に重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.その結 果,「自己決定」では「自律支持」(βニ.54,p<.Ol), 「一体感的愛情」(β=.31,p<.Ol),「情緒的支援」(β ニー.32,p<.01)が選択された(r2=.18).「環境適応」 ではr自律支持」(βニ.54,p<.Ol),「統制」(β=。43, p<.01),「一体感的愛情」(βニ.30,p<.01)が選択さ れ(r2=.30),r自己受容」でも「自律支持」(β=.61, p<.01),「統制」(β=.33,p<.01),「一体感的愛情」 (βニ.19,p<。Ol)が選択された(r2=.28)。「人格的成. 長」とr積極的他者関係」ではr情緒的支援」のみが 選択された(β=.33,p<.01,r2ニ。10,β=.26,p<。Ol, r2=.06).. 次に「人、生に対する満足感尺度」の「満足感全体」お よび「過去満足」「未来期待」「現在満足」3因子,「肯. 定的感情」r否定的感情」の合成得点を基準変数に,養 育態度のr自律支持」r情緒的支援」r統制」r一体感的 愛情」4因子,心理的wel1・beingのr自己決定」r環境 適応」「自己受容」「人格的成長」「積極的他者関係」5. 因子の合成得点を説明変数に重回帰分析(ステップワ イズ法)を行った.その結果,「満足感全体」では「自 己決定」(β=.29,p<。01),「人格的成長」(β=,21,p <.01),「自己受容」(β=.29,p<.01),「統制」(β= 一.17,p<.01),「積極的他者関係」(β=.15,P<.05). が選択された(r2=.53).「過去満足」では「自己決定」 (β=.27,p<.01),「自己受容」(β=.36,p<.01),「人 格的成長」(β=.22,p<.01),「統制」(βニー。16,p<.01) ・30・.
(31) が選択された(r2ニ.48).r未来期待」ではr人格的成長」 (β=.37,P<.01),r自己決定」(β=.22,p<,Ol),r統 制」(βニー.45,P<.Ol),r自律支持」(β=一.50,p<.Ol), 「自己受容」(β=.21,P<.01),「環境適応」(β=.23,. p〈.Ol)が選択された(r2=.51).r現在満足」ではr積 極的他者関係」(βニ。31,p<.01),「自律支持」(β=.27,. p<.01)が選択された(r2=.16).「肯定的感情」では「環 境適応」(β=.50,p<.01),「情緒的支援」(βニ.21,p <.01),r自己受容」(β=.30,p<.01),r自己決定」(β ニー. 27,p<.01),「統制」(βニー.15,p<.05)が選択さ. れた(r2=.47).r否定的感情」ではr自己決定」(β= 一.37,p<.01),「一体感的愛情」(β=.36,P<.01), r自己受容」(β=一.36,p<.01)が選択された(r2=.40).. ・31・.
(32) 第5章 考察 第1節. 仮説の検証. 第2節. 主観的幸福感と 親の養育態度. 第3節. 主観的幸福感と 記憶との関連. 第4節. 主観的幸福感と 心理的we11−being との関連. 一32・.
(33) 第1節 仮説の検証 仮説1は,受容的な養育態度・自律を支持する養育態 度と主観的幸福感には正の関連があり,拒否的な養育態 度・統制の強い養育態度と主観的幸福感には負の関連が ある,というものであった.本研究で見出された養育態 度の因子は「自律支持」「情緒的支援」「統制」「一体感的 愛情表現」であった.「自律支持」はr満足感全体」「過. 去満足」r現在満足jr肯定的感情」と有意な低い正の相 関が,「否定的感情」と有意な低い負の相関が見られた. 親が子どもの自由や意見を尊重する自律支持的な養育態 度であると,主観的幸福感が高いといえる.また,r情緒 的支援」も「満足感全体」「過去満足」「現在満足」と有 意な低い正の相関が,r肯定的感情」と有意な中程度の正 の相関が見られた.子どもを理解したり情緒的に支えた りする,受容的な養育態度であると,主観的幸福感が高 いといえる.「統制」は「満足感全体」「過去満足」「未来 期待」と有意な低い負の相関が見られた.親が子どもを コントロールしようとする,統制の強い養育態度であっ た人は,主観的幸福感が低いといえるのではないだろう. か.これらの結果から,仮説1はほぼ支持されたと考え られる.. 仮説2は,主観的幸福感の高い人は肯定的出来事を想 起しやすく,主観的幸福感の低い人は否定的出来事を想 起しやすい,というものであった.肯定的な記憶を想起 した人は「満足感全体」「過去満足」「現在満足」が有意 に高く,r否定的感情」が有意に低かった.この結果から, 肯定的出来事を想起した人は認知的側面の主観的幸福感 が高く,逆に否定的な出来事を想起した人は,認知的側 面の主観的幸福感が低いと考えられる.また,否定的感 情の低さを相対的な肯定的感情の高さと考えると,感情. 的側面も同様に考えられ,仮説2を支持する結果が得ら 一33一.
(34) れたといえる.. 仮説3は,心理的we11・beingの各因子は主観的幸福感 の認知的側面と関連がある,というものであった.相関 分析の結果,心理的well・beingの各因子と主観的幸福感 の認知的側面・感情的側面両方が関連するという結果が 得られた.中程度以上の相関に限定しても,「自己決定」 は「満足感全体」「過去満足」「未来期待」と正の相関が, 「否定的感情」と負の相関が見られ,「環境適応」は「満. 足感全体」「過去満足」「肯定的感情」と正の相関が見ら れ,「自己受容」は「満足感全体」「過去満足」「肯定的感 情」と正の相関が,「否定的感情」と負の相関が見られた.. 重回帰分析の結果から,「自己決定jと「自己受容」は 主観的幸福感の両側面全てに関連していることが明らか になった.また「環境適応」は「未来期待」と「肯定的 感情」に関連することが明らかになった. これらの結果から,心理的well・beingの各因子は,主 観的幸福感の認知的側面だけでなく,感情的側面にも関 連すると考えられ,仮説3は支持されなかった.. 第2節 主観的幸福感と親の養育態度 主観的幸福感の各因子と親の養育態度の各因子との 関連を詳しく検討した.. 親が自律支持的で,情緒的支援があり,統制的でな い養育態度であったと受け止めている人は,「過去満 足」が高いと言える.大学生にとって,特に別居して いる場合,親による養育は過去のものとして考えられ ることが多いのではないだろうか.本研究での調査対 象は,親元を離れ一人暮らしをしている学生の多い大 学の学生であった.過去のものである養育態度が,過 去に対する満足と関連があるというのは,自然な結果 といえるだろう.自分の自由や意見を尊重してくれた, 一34一.
(35) 自分を理解し情緒的に支えてくれた,というように親 の養育態度を良かったものとして受け止めることは, 過去に対する満足を形成する要因の一部と捉えること もできるのではないだろうか.「一体感的愛情」とは有 意な相関が見られなかったが,一体感的愛情は,高す ぎると過保護や過干渉になってしまうのではないかと 考えられる.そのため,過去に対する満足感にはつな がらなかったのではないだろうか.. 親が統制的でなく,一体感的愛情を示す養育態度で あったと受け止めている人は,「未来期待」が高いと言 える.. 楽観性研究の方向のひとつとして,一般化された結 果の期待としての楽観性研究がある.それらの研究に おいては,楽観性とは好ましい結果を期待する傾向で ある(Scheier & Carver,1985)とされる.また, 結果の期待は,現実と基準との距離を縮めることがで きるかどうかについての主観的感情である(Rotter, 1954)と言え,目常生活の全般にわたるさまざまな経 験から形成されると考えられている.未来への期待は, 一般化された結果の期待に近いものだと考えられ, 目 常生活のさまざまな経験から形成されていると考えら れる.. 統制的でない養育態度は,自律支持的態度の前提と なるものと考えられる.一体感的愛情のある養育態度 は,子どもと一緒に居たがったり,直接的に愛情表現 したりする態度であり,その表現は,単純でわかりや すいものであると考えられる.このような基本的な態 度が日常生活の全般にわたるさまざまな経験を可能に し,そこから結果の期待や未来に対する期待が形成さ れているのではないだろうか.. 親が自律支持的,情緒的支援がある養育態度であっ たと受け止めている人は,「現在満足」が高いと言える. 一35・.
(36) 自律支持的態度と情緒的支援はともに,子どもの意見 を聞く,理解するという“理解”を共通点としている.. 親に自分の意見を聞いてもらい理解してもらっていた と感じることは,その後の対人関係で,理解してもら えているという感覚を抱くのに重要な経験であろう。 親の愛情ある態度は,子どもの自律性を高め,満足感 を高めると考えられる.自律支持的態度や情緒的支援 は,“理解”という形で愛情を示す養育態度であると考 えられ,現在の生活に対する満足感を高めるのではな いかと考えられる.. 親が自律支持的,情緒的支援のある,一体感的な愛 情を示す養育態度であったと受け止めている人は,「肯 定的感情」を多く感じていると言える.情緒的支援や 愛情表現は肯定的感情に直接つながるものであると考 えられる.また,自律支持的態度は,理解によって肯 定的感情に直接つながるとも考えられるし,自由や意 思を尊重される,つまり自分を肯定される感覚は,自 己肯定感から肯定的感情につながるのではないだろう か,. 親が自律支持的な養育態度であったと受け止めてい る人は,r否定的感情」をあまり感じておらず,一体感 的愛情を示す養育態度であったと受け止めている人は, 「否定的感情」を多く感じていると言える.先述のよ うに一体感的愛情が高すぎると過保護・過干渉など望 ましくないと考えられる養育態度になりうる.そのた め,否定的感情を多く感じるようになってしまうとも 考えられる.. 「一体感的愛情表現」は「肯定的感情」「否定的感情」. 双方と正の相関が見られた.これは矛盾する結果にも 思える. しかし,基本的・直接的な愛情表現は,多様 な感情体験を可能にしたり,目常における感受性を高 めると考えることもできるのではないだろうか. ・36・.
(37) 主観的幸福感は自由や自律の尊重,理解・情緒的支 援,直接的な愛情表現などによって高められうること が明らかになった.これは,Baumrind,D。(1967)の満足. 感があり,好奇心旺盛で,自己統制がある子どもの親 は,統制や成長への期待が高いとともに,暖かく,子 どものコミュニケーションに対し受容的であったとい う結果に合致すると考えられる.また,好奇心や自己 統制は,心理的well−beingの人格的成長や環境適応, 自己決定などに関連すると考えられ,主観的幸福感変 容にもつながるのではないだろうか.逆に,自由や自 律の尊重,理解・情緒的支援,直接的な愛情表現のな い養育態度,つまり統制が強く,愛情に欠ける養育態 度であると,主観的幸福感は低いといえる.不平や不 満が多く,引っ込み思案で他者への不信や依存が高い 子どもの親は,統制が強く,冷たい(Baumrind,D.,1967). という結果とも合致する.また,引っ込み思案で他者 への不信や依存が高いということは,積極的他者関係 の感覚や自己決定の感覚が低いと考えられる. 沢崎・真仁田・小玉(1982)によれば,無力感を伴っ た現状肯定感,つまり,不安や自己不全感を感じ意欲 喪失している状態と,親の冷たく,変動的な養育態度 が関連することが明らかになっている。本研究では「否 定的感情」と自由や意思を尊重しない養育態度,一体 感的愛情表現が関連するという結果が得られた.一体 感的愛情表現が高いことは,親が自分自身と子どもを 同一化し,連動したものと認知していることを示す. 子どもの一挙手一投足や成績などで一喜一憂するよう な変動的な養育態度と,一体感的愛情は共通するとも 思われ,不安・自己不全感・意欲喪失という「否定的 感情」と冷たく変動的な養育態度が関連するという結 果と合致すると考えられる,. 本研究では,養育された側の認知する“養育態度” ・37一.
(38) と主観的幸福感との関連を調査した.今後は実際の育 児場面や教育場面でそのような態度をとることで実際 に子どもが成長した後,主観的幸福感が高いといえる のか,実証的研究が必要であろう。また,教育現場に おいてこのような態度で教師や保育士が接することで も子どもの主観的幸福感を高めうるのか,親子関係に 特有の態度であるのか,など,明らかにしなければな らない問題は多い.さらに,本研究では関連を明らか にしただけであり,因果関係は推測に過ぎない.どの 程度ということも含め,養育によって獲得されるのか, 生得的なものが大きいのか,主観的幸福感の高さをも たらすのは何か,因果関係を明らかにする研究が求め られる.. また,本研究では親子関係が重要なのではないかと 考え,主観的幸福感と親の養育態度との関連に焦点を 当てた. しかし,主観的幸福感の獲得・育成にかかわ ると考えられる要因は親密な対人関係だけでも友人関 係や恋人・夫婦などの異性関係等,数多くある.記憶 に関する自由記述の回答からも,友人関係・恋人との 関係・大学生活など,要因になりうると思われるもの が得られた.そのほかにもパーソナリティ特性が影響 するとしている研究もあり,獲得・育成モデルの生成,. 検証が必要であると考えられる.主観的幸福感の認知 的側面と感情的側面はどのように関連・作用しあって いるのかなど,研究によって結果が異なるということ もあり,検証主観的幸福感そのものの構造について改 めて検討する必要性もある.. 第3節 主観的幸福感と記憶との関連 結果から, 起しやすく,. 主観的幸福感が高い人は肯定的記憶を想 主観的幸福感の低い人は否定的出来事を ・38・.
(39) 想起しやすいと考えられた.Seidhtz&Diener(1993) は幸福感の高い人は,出来事を肯定的な感情を伴って 記憶しやすく,肯定的な出来事を再生しやすい.また,. 幸福感の低い人は,出来事を否定的な感情を伴って記 憶しやすく,否定的な出来事を再生しやすい,と報告 している,本研究でもこのことが再確認されたといえ る.主観的幸福感が高いと,出来事を肯定的に受け止 めやすく,肯定的な体験が多くなると考えられる.そ のため,肯定的出来事を想起しやすくなるのではない だろうか.. 本研究における記憶に関する質問では,肯定的出来 事を想起した人が比較的多かった.調査であったため, 否定的な出来事を書きづらいということがあり,結果 にはバイアスがかかっているということも考えられる しかし,自由記述の内容を見ると,客観的には否定的 な出来事ではないかと考えられるようなエピソードが いくつか見られたのが印象的であった.例えば“友人 とケンカした”,“浪人した”といったものである.客 観的には否定的,または中立的と思われる出来事の記 憶を肯定的なものだと感じ,評価できるのは,主観的 幸福感の高さによるものなのではないか,と考えられ た.今後はそれを証明する研究が必要であると考えら れた。. 本研究では出来事の記憶について客観的な判定をせ ず,本人がどう受け止めているかによって分析を行っ た.今後の研究では,出来事の記憶についての客観的 な判定と主観的な受け止め方の差異と,主観的幸福感 の関連を調査する必要があると考えられる.. 第4節 主観的幸福感と心理的we11・beingとの関連 主観的幸福感と心理的wel1・being・養育態度につい 一39一.
(40) て重回帰分析を行った結果,養育態度からの直接的な 影響と,心理的we11・beingを介した間接的な影響の双 方が見られた.つまり,主観的幸福感は養育態度の影 響を受けて獲得・育成される側面と,養育態度から心 理的we11・beingを介した影響を受けて獲得・育成され る側面があると考えられた.しかし,因果関係は養育 が時間軸上で先に経験されていると考えられる点から の推測であり,因果関係については更なる研究が必要 である.. 一40・.
(41) 文献 Baumrind, D. 1971 Child care practices anteceding three patterns of preschool behavior. 」Pθ70カoノ.ノ匠oη08■., 75, 43−88. Diener,E. 1984 Subjective We11・Being 2D370ゐo/0810∂ノ」θ々ノノθ孟117 95, 3, 542−575. 小西勝一郎 1987 親とは何か一親子関係の理論 堀 真一郎(編). 現代の親子関係と家庭教育 文化書房博文社 Pp128−152 国谷誠朗 1988 親子関係の心理学的健康性とその病 理性. 国谷誠朗 (編) 講座家族心理学第3巻 親と子一 その発達と病理 金子書房 Pp3−23 L翫rson, R. 1978 Thirty years of research. on the subujective wel1・being of ol(ler Americans. ♂o々■刀∂ノ o/ θθ■o一η孟o/o■7, 33, 109 −125.. 牧野由美子・田上不二夫 1998 主観的幸福感と社会 的相互作用の関係 教育心理学研究 46, 52−57 松本良枝 1988 家出・問題行動・非行と親子関係 国. (編) 講座家族心理学第3巻 親と子一 その発達と病理 金子書房 Ppl97−215 森田琢美 1988 登校拒否と親子関係 国谷誠朗 (編) 講座家族心理学第3巻 親と子一その発達 谷誠朗 . と病理 金子書房 Pp71−91 根建由美子・田上不二夫 1995(a) 主観的幸福感に関. する展望 カウンセリング研究 28, 203−211 根建由美子・田上不二夫 1995(b) ハピネストレーニ. ングプログラムが主観的幸福感の変容に及ぼす効果 教育心理学研究 43, 177−184 −41・.
(42) 西隅良子 2002 他者との関係性において形成される 主観的幸福感 一rこの人が幸せなら私は幸せ」か? 一 目本教育心理学会総会発表論文集 44, 91 西田裕紀子 2000 成人女性の多様なライフスタイル と心理的well・beingに関する研究 教育心理学研究 48, 433−443 Ryff,C.D. 1989 Happiness is everything,or is it?. Explorations on the meaning of psychological wel1・being. Jo〃■.η3/ o/ Pθ■θo.η∂ノ1‘7 ∂11ゴ 30013/ Pθ70Z∼o/08㌧v, 57, 1069}. 1081. 沢崎達夫・真仁田昭・小玉正博 1982 青年期におけ る自己認知と自己受容に関する研究(3)一自己受容 と性格・父母の養育態度との関係について一 教育相 談研究 20, 59−73 Scheier,M.F. and Carver,C.S. 1985 0ptimism, coping, and health : Assessment and implications of generalize〔l outcome expectancies. ∬θ∂ノ坊 P570カ01087, 4, 219−. 247 Seidhtz, L. & Diener, E. 1993 Memory for positive versus negative life events: theories for. the differences between happy an(i unhappy persons。 ♂o〃■刀∂1 0/Pθ■30η∂ノ1砂 ∂ηゴ Soo1∂1 P570Z∼o/08㌧v, 64, 654−664. 島井哲志・大竹恵子・宇津木成介・池見陽・Sonja Lyubomirsky 2004 目本版主観的幸福感尺度 (SubjectiveHappinessScale:SHS)の信頼性と妥 当性の検討 日本公衆衛生誌 51, 10, 845−853 寺崎正治・岸本陽一・古賀愛人 1991 多面的感情状 態尺度・短縮版の作成 日本心理学会第58回大会発 表論文集 435. 寺崎正治・綱島啓司・西村智代 1999 主観的幸福感 ・42・.
(43) の構造 川崎医療福祉学会誌 9, 1, 43−48. 辻岡美延・山本吉廣 1978 親子関係の類型一親子関 係診断尺度 EICA一 教育心理学研究 26, 2, 84 −93. 一43一.
(44) 要約 r主観的幸福感(Subjective Well・Being)」 とは,. Larson(1978)によって提唱された,幸福感を様々な 側面を持つ幅広い概念として捉える考え方である.し かし,主観的幸福感の定義は研究者によって異なり, 様々な定義のもとで主観的幸福感の研究が進められて きた.島井ら(2004)によれば,主観的幸福感は自分 の人生への認知的評価とその評価に基づく感情という 両面を持つもので,これらは幸福感の主観的経験とし ては不可分のものと考えられるという.本研究におい ては,主観的幸福感を「満足感を含む肯定的認知と肯 定的感情」と定義し,研究を進めることとした. 根建・田上(1995)は,人が幸福感を抱きやすい人 格を獲得していく過程はどのようなものかといった研 究の必要性を示唆している.これまでの研究で,主観 的幸福感に影響を及ぼす可能性のある要因として親密 な人問関係,出来事の記憶との関連,肯定的出来事・ 否定的出来事の帰属の違いが報告されている.幸福感 の変容には自己受容,論理的柔軟的認知,問題処理行 動,自己実現目標,他者接触行動という 5つの構成要 素があると考えられている.心理的well・beingは,自 己の人生や生活に対する有意味さの感覚を指し,人格 的成長・人生における目的・自律性・環境制御力・自 己受容・積極的な他者関係からなる人生全般にわたる ポジティブな心理的機能であるといわれている.親子 関係は重要な対人関係の一つであると共に,対人関係 の基礎となると考えられ,主観的幸福感にも影響する のではないかと考えられる.しかし,親の養育態度に よる子どもへの影響については多くの研究がなされて きているにもかかわらず,主観的幸福感と親子関係・ 養育態度との関連については,両親のことが好きであ ・44・.
(45) り,仲が良ければよいほど主観的幸福感が高まること が明らかにされている(西隅,2002)程度で,主観的 幸福感と親の養育態度や親子関係との関連についての 研究は非常に少ないのが現状である.また,西隅(2002). によって他者との関係性の質が影響することは明らか になったが,具体的にどのような「養育態度」が影響 するのか調査されてはいない。 本研究では,主観的幸福感の高低と親の養育態度との 関連を明らかにすること,想起された記憶と主観的幸福. 感との関連を明らかにすること,主観的幸福感の2側面 (認知的側面・感情的側面)と心理的 we11−beingの各因子. との関連を明らかにし,主観的幸福感変容の要素にっい て検討することを目的とした.また,主観的幸福感と親 の養育態度・記憶との関連にっいて,先行研究の結果か ら以下の仮説を立て,検討することとした。受容的な養 育態度・自律を支持する養育態度と主観的幸福感には正 の関連があり,拒否的な養育態度・統制の強い養育態度 と主観的幸福感には負の関連がある(仮説1),主観的幸 福感の高い人は肯定的出来事を想起しやすく,主観的幸 福感の低い人は否定的出来事を想起しやすい(仮説2), 心理的well・beingの各因子は主観的幸福感の認知的側 面と関連がある(仮説3). 本研究では,質問紙調査を授業時間内・課外活動中に 集団実施した.調査対象は大学生148名(男性61名,女 性87名),調査時期は2005年9.月∼11月であった.質 問紙構成は以下のとおりであった. ①人生に対する満足感尺度(寺崎ら,1999),28項目, 4件法.. ②多面的感情状態尺度・短縮版(寺崎ら1991,1992) より,抑鶴・不安,敵意,倦怠,活動的快,非活動的 快,親和領域30項目,4件法. ③心理的wel1・being尺度(西田,2000),43項目,4 −45・.
(46) 件法.. ④親子関係診断尺度EICA(辻岡・山本,1976),40 項目,3件法。 ⑤体験・記憶についての質問,自由記述. 因子分析,相関分析,t検定,重回帰分析を行った結 果,子どもを理解したり情緒的に支えたりする,受容的 な養育態度であると,主観的幸福感が高いといえ仮説1 はほぼ支持されたと考えられる. 肯定的な記憶を想起した人は「満足感全体」「過去満足j r現在満足」が有意に高く,r否定的感情」が有意に低か った.この結果から,主観的幸福感の高い人は肯定的出 来事を想起しやすく,主観的幸福感の低い人は否定的出. 来事を想起しやすいといえ,仮説2は支持されたと考え られる。相関分析の結果,心理的we11・beingの各因子と 主観的幸福感の認知的側面・感情的側面両方が関連する という結果が得られ,重回帰分析の結果からも,r自己決 定」と「自己受容」は主観的幸福感の両側面全てに関連. し,r環境適応」はr未来期待」とr肯定的感情」に関連 することが明らかになった.これらの結果から,心理的 we11−beingの各因子は,主観的幸福感の認知的側面だけ. でなく感情的側面にも関連すると考えられ,仮説3は支 持されなかった.. 主観的幸福感は自由や自律の尊重,理解・情緒的支 援,直接的な愛情表現などによって高められうること が明らかになった。今後は実証的研究,因果関係を明 らかにする研究が求められる.また,教育現場におい ても同様のことが言えるのか,獲得・育成モデルの生 成,検証主観的幸福感そのものの構造について改めて 検討する必要性・出来事の記憶についての客観的な判 定と主観的な受け止め方の差異と主観的幸福感の関連 を調査する必要があると考えられる. 一46一.
(47) 謝辞. この研究を行うにあたって,何かと心配が多く,手 のかかる私に,的確な助言や暖かい励ましをしてくだ さり,最後まで指導してくださった細澤仁先生に心か ら感謝いたします.また,ともにがんばったゼミの皆 様に心から感謝いたします.先生のご指導や助言,ゼ ミの皆様からの指摘からさまざまなヒントを得て,こ の研究が出来上がりました.本当にありがとうござい ました.. 質問紙調査にご協力くださった筑波大学・神戸大学 の皆様に心から感謝いたします.貴重なご意見は,今 後の研究に役立てたいと思います.本当にありがとう ございました.. 遠い福島の地で,応援してくれた家族,特に母に感 謝いたします.忙しく,なかなか顔を見せに帰省する こともできない私に不満はあったようですが,電話で 励ましてくれたり,健康を気にしていろいろなものを 送ってくれてありがとうございました. サテライトで共にがんばってきた5期生の皆様,お 互いに進行具合を探りあいながら,安心したり焦った りして,励ましあえたことを心からうれしく思います. またその他のすべての友人たちに感謝いたします.励 まし,気晴らしという名の誘惑,心配など,本当にあ りがとうございました.. この研究は,私だけのカではなく,たくさんの方々 の力添えによって出来上がったということは,疑いよ うがありません.みなさま,本当にありがとうござい ました.. ・47・.
(48) 資料. ものごとや自分についての見方・感じ方に関する調査. 兵庫教育大学大学院 教育研究科 修士2年. 大橋 美子. この調査は、大学生がものごとや自分についてどのような見方・感じ方をしているかに関する 調査です。. 回答に正しいとか問違っているとかいうことはありませんので、あまり深く考え込まず、思っ たとおりにお答えください。. この調査によって得られたデータは統計的に処理され、個人が特定されることや、誰がどのよ うな回答をしたのか明らかにされることはありません。また、研究目的以外で利用することも ありません。. 記入漏れがありますと、ご協力いただいたデータが無駄になってしまうことがあります。お手 数ですが、回答が終わりましたら、記入漏れがないかご確認ください。 ご協力、よろしくお願いいたします。. 回答例 もっともあてはまると思う数字に○をつけてください。. 1 バランスのとれた食生活は大切だ。. そうでない. どちらともいえない. 1. 2 2. 3. ④. 3. 2 バラエティ番組はほとんど見ない。 3 スポーツは見るだけでもおもしろいと思う。. 1. そうである. ⑤.
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