社会
系教科教育学会
『社会
系教科教
育学研究』第19
号 2007
(pp.
19-28)
社会認識教育
−
「差異の産業的生産」を視点にした単元の開発−
と
しての消費者教育の創造
Consumers Education fk
r Social Recognition:
〕
Developing the Consumer Education Unit Plan on the point of
“Ostentatious
C
o
ns
u
m
pt
i
o
n
”
渡
部
竜 也
(東京
学
芸
大
学
)
宇
津
剛
(崇徳
学
園
中
・高
等
学校
)
0。消費者教育の必要性
現代の消費社会ぱ 次世代”
,つま
り
「 ̄
官僚
・
企業主導
」を脱
して匚
消費者主導の時代」に突入
した
といった主張が
なされる
ことがある
。ここに
は大き
く二つの根拠
を見ることが
できる
。その
一
つは
,パソコンやインターネ
ッ
トが普及
し,消費
者同士が直接商談
を成立させる時代が到来
した
こ
とを根拠とする考
え方である
O
。
この言い分は確かにある程度は真理か
も
しれ
な
い
。
しか
し,ネ
ッ
ト・オークシ
ョンで限定発売品
をメ
ー
カー
希望小売価格の数倍で購入す
る消費者
がいる
と耳に
した
とき
,この消費者が本当に企業
の戦略などに踊らされずその商品を購入
している
のであろうか
と疑問を持
つのは筆者だけであろう
か
。近年やた
ら目にす
るこの匚
限定品」は,メー
カ
ーがその
ブラン
ドイメージ
を植えつけるために
意図的に生産量を減
らし
,小売価格の段階である
程度値段
を高めに設定
しているのではないか
。そ
してネ
ッ
トはそのイメ
ージ作
りに一役
買っている
のでは
ないか
,などと筆者には感
じられ
る。
消費者主導を主張する上での
二つ
目は
,消費者
の実態の変化が引き金
とな
り多品種少量生産社会
が到来
したことを根拠
とする考え方である
。つま
り
,消費者の購
買動機が
,匚
欠乏動機」か
ら個性
をア
ピ
ール
した
いという匚
差異動機
(自己実現の
動機)
」に変移
し,消費者の嗜好は
多様化
したた
め
,何の
工夫もない商品は売れ
な
くな
り,メー
カー
は
,個々の消費者の欲求に応
じて商品の機能,品
質
,デザイン等の
「 ̄
多様化」を図った結果,匚
多
品種少量生産体制
」が
生
じ,消費者は
自己の意思
に基づいてその
多様な商品の中か
ら自由に取捨選
択
・購入することが可能となる
「消費者主導の時
代
」が到来
した
と彼らは主張す
るのである2
)
。
この
言い分も
一見もっともなように思う。しか
し
,この
点について社会経済学者松原隆一郎は大
変興味深い指摘
をしている
。松原に
よれ
ば,90
年
代に入ってメ
ー
カーは
,個々の消費者の
ニーズに
合わせて多様
な商品を開発するの
ではな
く
,ある
特定商
品を匚
限定品
」厂
プレミア商品」などと銘
打って購
買意欲
を
一気に喚起
し短期勝負で売
り上
げ
,消費者に商品が全て行き渡
らないうちに新製
品を登場させるという戦略に転換
しているため
,
長期的にみれ
ば実に
多様な商品が登場
し
一見匚
多
品種少量生産社会
」に突入
したかの
ように見
える
が
,短期的に見れば社会の実態ぱ 少品種大量生
産社会”であ
り
,短期間でみ
ると消費者の嗜好は
70年代よりずっと均
一化していると言うのであ
る几その結果
,流行のサ
イクル
は短期化するが
,
短期的な売
り上げは爆発的なもの
となる
。
現代社会が消費者
主導の社会である
,または今
後
,消費者主導が達成
される
ことが確実
であるな
らば
,我々は学校現場で特に
“消費者教育”をす
る必要はない
。なぜ
なら,消費者教育の最大の
目
標は
,
「 ̄
企業
・官僚
主導の消費社会か
ら脱却
し,
消費者主導社会
を達成させ
る
」4
)
ことだからであ
る
。
しか
し松原の指摘
を踏ま
えると,多品種少量
生産や消費者の購
買動機が多様化
したという事実
す
ら疑わ
しく
,そのため現代社会が
,メー
カー
が
個々の消費者の
ニ
ーズに合わせて商
品を生産
して
いる匚
消費者主導社会」である
と断定す
ることは
で
きな
い
し
,また
今
後そ
う
した社
会
が確
実
に
来る
と楽観す
る
だ
けの根
拠
に
も
欠け
て
いる
と言わ
ざる
を
えな
い
。 21
世
紀
に入
った
今
日でも
我
々は
学校
現
場
で消
費者
教育
が
求め
られ
続
け
る
と言
え
よ
う。
I。問題の所在−
「社会認識教
育としての消費者
教育」の視
点の欠如−
わが
国では80
年代
ごろか
ら
,消費者教育は
,消
費者主権の確立と消費者主導社会の
達成
を教育
目
標と
して
,小
・中
・高の幅広い段階で実践が求め
られ
,幾つかの実践例が提案
・開発され
てきた。
その提案
・開発され
てきた消費者教
育の授
業実践
例は大き
く四つのタイ
プを見る
ことができる
。
第
一のタイ
プは
,農薬の
恐さを共感
させた
り,
JIS
マ
ークの有無や,商品の成分,生産日などに
注意
を持ち
,よ
り新鮮で健康によく安全な食品
・
商
品の購入
をするように啓発するア
プロ
ー
チであ
る几第二のタイ
プは
,リサイクル
可能な商品で
あるかに関心を持ち
,環境にやさ
しい商品を購入
して循環型社会
を築
くよう啓発するア
プロ
ー
チで
ある‰これ
らは
一定の成果を挙げているように
思
う
。近年の
生協の
普及
,健
康食品
ブーム
,エ
コ
・
ブ
ーム
はそう
した成果の現れ
であろう。
第
三の
タイ
プは
,押
し売
り,マル
チ商
法,キャ
ッ
チセ
ールス
,その他詐欺商法などの悪質商法に遭
遇
した被害者の体験
を共感
させた
り
,悪質商法の
被害に遭わ
ないための情報や
,被害の
対応策に関
する情報を啓発するア
プロ
ー
チである7
)
。悪質商
法は次々新
しい手法が生み出
され
,その被害は絶
えない
。このタイ
プの教育はこれ
からますます重
点化することが求め
られるであろう
。実際
,消費
者教
育と
して開発
され
る授業実践の
中では
,この
第三のタイ
プに属
した
ものが最も
多く見られ
る
。
ただ
,この第三のタイ
プに対
しては
,次のよ
うな
批判かおる
。この
授業実践
を通
して子どもたちは
,
匚
甘い話には裏が
あるか
ら疑ってかからなくては
ならない
」といった教訓を学ぶ
ことになるが
,同
時に
,厂
悪質商法にひっかからないように警戒
し
ておけば
,自分は日常社会で誰か
らも踊
らされず
自由に商品を購入
し
,
『賢い消費者』でいられ
る」
といった意識も
,子
どもたちの心の
中に生み
出す
ことになるのではないか,というものである8
)
。
本当に我々は
,心が
けさえ
しっか
りしていれ
ば,
匚
賢い消費者
」でいられるのだろうか。こうした
問題意識か
ら
,日常の消費行動に
おいて企業が消
費者の購
買意欲
を喚起
し
,消費者
を踊らせ
ていく
戦略を分析
しようとするア
プロ
ー
チが第四のタイ
プであ
り
,近年特に研究
・開発が求め
られ
ている
ところである
。このタイ
プに見
られる
主な授
業は
,
企
業の戦略を分析
させるために
,煙草業界
などの
C
Mや広告を具体的に示し
,これ
を批判的に分析
させ
るな
どかおる‰
しか
し筆者は
,こうした
C
Mの具体的事例の分
析を通
した企業戦略の分析
をさせ
る第四のタイ
プ
にも
,次の二点の課題があると考えている
。第一
は
,個別の広告及び
C
Mの特質や
,そこにおける
企業戦略
など個別の企
業戦略の理解はできるが
,
現代消費社会に
おける消費者
一般の購買意欲
・消
費行動と企
業戦略の
一般的
・全体
的な関係構造が
なかなか見えてこないため
,マク
ロな
レベル
での
消費社会の
実態の認識ができないことである
。第
二は
,現代消費社会のマク
ロな認識が
できなかっ
たため
,子どもたちは自らが一消費者
として,消
費社会に
どの
ように位置付けられ
ているのか
を対
象化
して捉えることができず
,この
ことが
,なぜ
企業の広告戦略を知っていなが
らも多くの消費者
が
その商品を購入
して
しまうのか
,という事実に
関する理解
を妨げて
しま
うことである
。
これ
らの課題を克服するべ
く
,筆者は特に,モ
ノの象徴的機能に注
目
し
,現代の消費社会の
一般
的全体的構造を解き明か
したJ
・ボー
ドリヤール
(J.
Baudrillard)
の消費社会論lo
)
や
,その視点か
ら日本の現代消費社会
をマク
ロに捉え直そうと試
みた最近の研究者の消費社会論に注
目
し
,この
理
論をベ
ース
と
した教材
開発を試みた
。
ボ
ー
ドリヤールは
,現代社会の市
民は一見豊か
な物
品に囲まれ
,それ
らを自由に選択できる環境
の
下で生活
しているように見
えるが
,それ
は厂
み
せかけ
」であると指摘する。そ
して
,現代社会で
は実は
,マス
メディアやその他
文化戦略などを通
して売
り手が築き上げだ 人とは違
う自分の特別
性
を
,よ
りア
ピールすることの
できる者はカッコ
イイ”といったイメ
ージ戦略
(=
「 ̄
自分が他者と
は違う
“選
ばれた存在”であることをより明示で
−20−
きた者を勝者とする
」といった暗黙のゲーム
)の
下,消費者は商品の
差異化
・差別化
・限定化を図
ることで売り手が生み出
した
ブラン
ドイメ
ージ
,
希少性といった
「商品の象徴性
(記号と
してのモ
ノ)
」の側面を重視
して,同じく売
り手が築き上
げた 特
別性をア
ピ
ールできている理想的な生活
者像
(
=より多くの
そうした商品を購入
したゲー
ム
の勝者)
”
を追い求める競争の場で
「踊らされ
ている
」
こと
を指摘
した
(差異の産
業的生産
論)11
)
。
従来の消費者教育は
,こう
した現代社会の普段
の
消費活動に働
く
匚
見えない囲い」厂
見
えない
力」
や
,それに拘束され
る市
民の実態
を解明す
る授業
の
開発にあま
りにも無関心ではなかったか
。それ
は我々がこれ
まで消費者教育を
,社会認識教育と
してより啓発教育として捉えられ
一因かおる。これ
を克服するには
,ボー
てきたことにも
ドリヤー
ルらの消費社会論を参考に
,子どもたちが自己の
消費活動
を
,企業の利潤追求を究極の是とする資
本主義社会全体の位置付
けからマクロに捉えるこ
とができるような匚
教育」の開発が求め
られ
社会認識教
るであろうI
育としての
几
消費者
H。最近の消
費社会論の傾
向
−
「差異の産業的生産論」の再評価一
筆者らがボ
ー
ドリヤール
らの消
費社会論
を取
り
上げる理由には次の
二つが
ある
。第一に,前述の
ように
,現代社会において消費者主導社会が達成
されたとする
「 ̄
消費者
主権確立説
」を前提とす
る
場合
,消費者教育そのものの存在意義が否定され
ることがある
。つま
り,匚
消費者主権確立説
」に
基づいた匚
社会認識教育
としての消費者教育」に
は
,教育的意義が見えてこないの
である。
第二に
,最近の社会経済学では,現代消費社会
の解釈について
,従来の
主流
であった
「消費者主
導社会論
」匚
消費者主権確立説」に疑問がもたれ
るようにな
り
,ボー
ドリヤールの匚
差異の産
業的
生産論
」を参考
・修正
しなが
ら,再解釈が行われ
るようになってきたことがある
(これ
らを総称
し
て厂
消費者主権不確立説)と
しよう)
。
では
,ここで近年の消費社会論の
変遷
を簡単に
触れ
ておこう
。そもそも匚
消費社会論」というの
は
,消費者は原子的個人と
して他人か
ら影響を受
けることなく確固たる欲
望
(効用)を持ち
,それ
が商品
を需要す
るとした古典派経済学が設定する
消費者檬を否定し
,厂
消費は消費者が
自らを社会
の中に定位
し
,周囲に承認
されるための行為」と
して消費活動
を見
る考え方である
。経済学者
J
・
ガルブレイス(j.Galbraith)
は
この
「他人を意識
する消費者像
」に厂
企業が宣伝効果で需要を創造
している
」といった観
点を加
える。ただ彼の
説は
,
消費者の他者への意識
を
,匚
他人との
同調」匚
集団
適応に
よる没個匪
」と同一視す
るきらいがある。
これに対
して
,消費者の他者への意識
を匚
自己
の特別匪の承認
(誇示的行為)
」として展開
した
のがボ
ー
ドリヤール
で
ある
。彼は匚
特
別匪
をア
ピー
ル
した
い
」消費者に対
して,企
業は商品を購入
し
て使うことが
,あたかも個
人の特別匪
をア
ピール
して
くれるかの
ように宣伝
して需要
を剔出するそ
のメカ
ニズム
を実にうま
く説明
した。
しか
しボ
ー
ドリヤールの理論に課題がなかった
わ
けではない
。と言うのも,彼の考
え方には匚
企
業が
『
一方的に』宣伝効
果で需要
を創造
して
いる
」
とい
った観
点があったか
らで
ある。
この
ことか
ら,
80
年代後半に彼は
「法
人悪人説
」の代表格
として
批判
されることになった1
几そ
してその
後匚
消費
者主権確立説
」が優
勢になる中で,彼の理論は過
去
のもの
とさえ扱われるようになる。
しか
し
「消費者
主権確立説
」を疑問視する見解
が頻繁に
示され
るよ
うになった昨今
,ボー
ドリヤー
ルの再評価が見られ
るようになった
。前述の松原
はその
一例で,消費者の欲求は時代とともに変化
することをマズ
ロ
ーの欲
望段階説
を応用
した
「 ̄
消
費資本主義における欲
望三段階
(この三段階は
,
「 ̄
への欲求」匚
生理的
(苦役からの解放)欲求
誇示的欲求」に分け
られる)
」
,匚
安全
」から説
・安定
明
し
,ボー
ドリヤールの
「 ̄
差異の産業的生産論」
が日本の消費社会説明と
して適応できるのは
,一
般の
人々がブラン
ド品等の嗜好品に特に興味
を示
し始めた1970
年代頃からであ
り
,80
年代に特に顕
著に見
られ
ると指摘す
る
。ただ,こう
した近年の
消費社会論は
匚
企
業が
『一方的』に宣伝効果で需
要
を創造する
」と
した従
来の観
点を修
正
し厂
現代
社会における消費者の需要や欲
求は
,消費者本来
が持っていたものと,余剰生産物を処理するため
に メ デ ィ アを 使 っ て 企 業 が 作 り 出 し た 欲 求 と の 融
合 で あ る 」 と し た見 方 を 採 用 す る こ と が 多 い14)
。
Ⅲ。 単元 開発 の実 際
1.「 需要 剔 出の 自己 組 織的 シ ステ ム の段階 的
変 遷」理論 の 内容
筆者 は前章で 示 した二つ の理由 か ら, 意図的 ・
戦 略的 に消費者 主権 不確立説, 特 に松原 の段 階別
消費社会 (需要 剔 出の自己 組織的 システ ムの段 階
的 変遷) 論を採 用 し, こ の論を蚰 とし た単元 の開
発 を行 う。 本単 元で理 解 目標と して設定 す る 厂
需
要 剔出 の自己 組織的 システ ムの段 階的変 遷」理 論
の内容 とこ れを 図化 した ものを次頁 に提示 す る。
2.単 元の展 開
−「 見えな い力」 =消費 社会を 形作 る “ゲ ー
ム”の存 在を暴 く授業 の作 成 一
今回筆 者が 開発 した単元 匚
商品 購入 に働 く見え
ない力を 見つ けよ う」 は,約 6∼ 7時間 程度を計
画 してい る。単 元 の構成 は以 下 のよう にな って い
る。 なお, 単元 は 厂
教授書」 形式 で開発 し た( 巻
末 で は導入 部 と展 開3 , 終 結 部を 示 し た)。 表 1
はそ の概 略案で あ る。
表1 単元の概略案
導 入 「 子 ど も の素 朴 理論 を 引 き 出 す」
⇒MQ ・SQ
1・2 提 示
「 素 朴 理 論 へ の 揺 さ ぶ り 」
展 開 1 匚1960年 代 の消 費 行 動 の分 析 」
SQ1
の 探 求
「1960 年 代 の企 業 戦 略 の分 析」
展 開 2 「1970 年 代 の消 費 行 動 の分 析」
「1970 年 代 の企 業 戦 略 の 分析」
展 開 3 匚1980年 代 の消 費 行 動 の分 析 」
SQ2
の 探 求
「1980 年 代 の企 業 戦 略 の 分析」
展 開 4 「 現代 の消費 行動 ・ 企業 戦 略 の分 析」
終 結 「 ま と め」
⇒MA
本 単 元 のMQ
は「 ̄
現 代 社 会 に 生 き る 我 々 消 費 者
は, 商 品 の 何 に 価 値 を 見 出 し て 購 入 し よ う と す る
の だ ろ う か 。 な ぜ そ の よ う な 行 動 を と る の だ ろ う
か」 で あ る。 最 終 的 に 現 代 社 会 の 消 費 者 の 購 買 動
機 は 匚誇 示 的 欲 求 」 か ら く る と こ ろ が大 き い こ と ,
そ し て 企 業 や 社 会 も そ の動 機 を 喚 起 す る よ う な 雰
囲 気 作 り を し て い る こ と を 最 終 的 に 子 ど も た ち に
発 見 さ せ る こ と を 本 単 元 は 目 的 と し て い る 。
筆 者 は, 上 記 の 目的 を 達 成 さ せ る た め に は, こ
の 導 入 部 で , こ のMQ を 教 師 側 の 問 題 意 識 で 終 わ
ら せ る の で は な く , 子 ど も た ち に 強 い 意 識 を 持 っ
て 厂な ぜ」 を 芽 生 え さ せ る必 要 が あ る と考 え る。
さ もな け れ ば 匚探 求 学 習 」 と は名 ば か り に な る か
ら で あ る。 そ こ で 筆 者 は, 子 ど も の 素 朴 理 論 を 授
業 前 半 で は っ き り 確 認 し , 後 半 で そ の 素 朴 理 論 で
説 明 で き な い 事 例 を 出 し て 認 知 的 不 協 和 を 生 じ さ
せ る こ と か ら子 ど も の 「 な ぜ」 意 識 を 喚 起 し よ う
と考 え て い る。 そ の た め導 入 部 は2 段 階 に分 け た。
導 入 部 に お け る 授 業 の 具 体 的 な 展 開 は, 匚現 代
は昔 よ り も 消 費 者 が 買 い た い 商 品 を 買 う こ と がで
き る 社 会 か ?」 と 問 い, 商 品 の 数 が 増 え た こ と な
ど を 根 拠 に , 匚現 代 の 方 が 自 由 に 商 品 が 買 え る社
会 」 で あ る と し た 考 え を 引 き 出 さ せ る 。 更 に は,
匚現 代 社 会 で は, 同 じ 値 段 , 同 じ 品 質 , 同 じ デ ザ
イ ンの商 品 で あ れば , 高 い 商 品 は 売 れ な い の か ?」
と 問 い , 需 要 ・ 供 給 の 法 則 を 思 い 出 さ せ る。 こ う
し た 日 常 で 常 識 と さ れ る 考 え 方 を 引 き 出 し た 子 ど
も に, 現 代 の 消 費 者 は, 外 国 製 ブ ラ ンド 品 が 時 に
は 消 費 者 が 国 産 よ り 質 が 落 ち る わ り に 値 段 が 高 い
こ と な ど を 知 って い て も , あえ て そ ち らを 選 択 す
る行 動 を と る傾 向 が あ る こ と を 示 す。 こ う す る こ
と で , 子 ど も た ち は自 ら の 知 識 で は説 明 で き な い
認 知 的 不 協 和 の状 態 が発 生 す る こ と に な る。 さ ら
に は, こ う し た ブ ラ ン ド 品 な ど の 嗜 好 品 を 日 本 の
消 費 者 が 積 極 的 に 購 入 す る 傾 向 を 持 つ よ う に な っ
た の は, つ い 最 近 で あ る こ と を 示 し , MQ の 「 現
代 の人 々 の 価 値 観 」 だ け で な く, 過去 の人 間 の 価
値 観, さ ら に は そ れを 喚 起 す る 企 業 戦 略 へ と 興 味
を 拡 大 さ せ る ので あ る(SQ
1・SQ2
の 喚 起 )
。
展 開 1 ∼ 2 は, SQ1
匚な ぜ 昔 (80 年 代 以 前 ) の
人 は ブ ラ ンド な ど の 嗜好 品 を 購 入 す る よ う な 消 費
行 動 を あ ま り と ら な か っ た の か。 当 時 の人 々 は 何
に 価 値 を 見 出 し た の か。 そ れ は な ぜ か 。」 を 探 求
す るO 展 開 1で は50 年 代 ∼60 年 代 の 産 業 構 造 , 展
開 2 で は70 年 代 の 社 会 構 造 を 分 析 す る 。 分 析 の 過
程 は 大 き く は「 ̄
消 費 行 動 の分 析 」 と 匚企 業 戦 略 の
分 析 」 の 二 つ か ら な る が , 細 か く は, 右 表 3 匚分
22【「需要剔出 の自己組織的 シス テムの段階的変 遷」 の理 解目標( 説 明的知識)】
シ 需
ス 要
テ 創
ム 出
͡
の
一 自
般 己
゛ 組
織
的
・ 資 本 主 義 シ ス テ ムは , 売 り 手 ( 企 業 ) が 売 り た い と 考 え る 商 品 が あ る場 合 , そ の 商 品 を 購 入 す る こ と が 理 想 的
生 活 で あ る とい っ た 雰 囲気 ( ゲ ー ム ) を , マ ス メ デ ィ アを 始 め , 様 々 な 手 段 を 使 っ て 剔 出 し , 需 要 の 無 限 の自
己 剔 出 を は か ろ う と す る 自 己 組 織 的 な シ ス テ ムで あ る 。
・ 売 り 手 は 何 で も 商 品 を 開 発 す れば よ い 訳 で は な い 。 そ の時 代 の消 費 者 の 欲 求 を 加 味 し , そ の 欲 求 に応 え る と 思
わ れ る 商 品 を 開 発 し , ま たCM や広 告 で は そ の 欲 求 に そ の 商 品 が 応 え る こ と を 強 調 し て 消 費 者 の 購買 意 欲 を よ
り 刺 激 す る 。
・ 雰 囲 気 作 り に 参 加 す る も の は, 企業 が 直 接 手 が け るCM や 広 告 , テ レ ビ 番 組 ば か り で は な い 。 そ の時 代 の 教 育
方 針, 政 策 , 文 学 作 品 , 漫 画 , 流 行 歌 な ど , 様 々 な も の が 参 加 す る。
・ 企 業 の 奥 底 に あ る 価 値 観 は 「 最 大 利 潤 の 追 求 」 で あ る 。
各
時
代
別
の
自
己
組
織
的
シ
う
ア
ム
ら
60
年
代
S
現
代
W
全
体
・ 消 費 者 の欲 求 は時 代 時 代 で 変 化 す る。 日本 の場 合 ,50 ∼60 年 代 は 「生 理 的 欲 求 (苦 役 か ら脱 却 し た い 欲 求 )
」
,
70年 代 に は「 安 全 ・ 安 定 の 欲 求 」
,80 年 代 か ら 現 代 は 匚誇 示 的 欲 求 」 が 顕 著 に 見 ら れ る。
60
年
代
・50 ∼60 年 代 , 企 業 は 消 費 者 の 「 生 理 的 欲 求 ( 苦 役 か ら の脱 却 )」 を 踏 ま え , 電 化 製 品 や こ れ を 満 た す と 思 わ
れ る 商 品 の 開 発 に 励 ん だ 。 さ ら に は ア メ リ カ の テ レ ビ ド ラ マを 流 す な ど し て 「 よ り ア メ リ カ 式 科 学 的 生 活
は カ ッ コ イ イ ( ア メ リ カ社 会 の よ う に , よ り 多 く の 電 化 製 品 , シ ス テ ム キ ッ チ ンな ど 「 科 学 的 」 と思 わ せ
る 商 品 を 購 入 し た 者 が 勝 ち)」 の 雰 囲 気 ( ゲ ー ム) を 作 り 出 し , 消 費 者 は こ ぞ っ て 電 化 製 品 な ど の 購 入 に 走
る よ う な 戦 略を 立 て た 。
70
年
代
・70 年 代 , 家 電 の普 及 な ど で 庶 民 の 匚生 理 的 欲 求 」 は満 た さ れつ つ あ っ た が , 科 学 的 生 活 を 追 い 求 め た こ と
に よ る 公 害 の 発 生 や, オ イ ル シ ョ ッ ク の 発 生 に よ っ て , 将 来 へ の 不 安 が 高 ま り , 人 々 は 貯 蓄 に 走 っ た り ,
資 産 価 値 の あ る 不 動 産 の購 入 な ど に 走 り 始 め て い た 。 こ う し た 社 会 背 景 を 踏 ま え て 当 時 の企 業 は , 庶 民 の
匚安 心 ・ 安 定 の 欲 求 」 に 応 え る べ く , 商 品 の安 心 感 や省 エ ネ , 資 産 価 値 を ア ピ ー ル し た CM を 流 す な ど し て
厂長 い 目 で 見 る と 得 を す る よ う な商 品 を 購 入 し た も の が 勝 者 」 と い う 雰 囲 気 ( ゲ ー ム) を 作 り 出 し , 商 品 の
購 入 を 喚 起 し た。
80
年
代
・80 年 代 , 企業 は こ の 時 期 顕 著 に な り 始 め た 消 費 者 の 匚
誇 示 的 欲 求 」 を 踏 ま え , こ れ を 満 た す た め に商 品 の
「 ̄
多 様 化 」「 差 別 化 」「 格差 化 」 に よ る ブ ラ ン ド 化 を 進 め た。 さ ら に は ト レ ン デ ィ ド ラ マ や 雑誌 な ど を 媒 介 に
し て 匚よ り 多 く の 嗜 好 品 に 囲 ま れ た 生 活 は, 自 分 の 特 別 歐を 上 手 に 表 現 で き た生 活 者 ( ブ ラ ン ド 商 品 な ど
の購 入 で, よ り 自 分 の「 特 別 性 」を ア ピ ー ルで き た 者 が 勝 ち)」の 雰 囲 気( ゲ ー ム)を 作 り 出 し,消 費 者 は こ
ぞ って ブ ラ ンド 品 な ど の 嗜好 品 の 購 入 に 走 る よ う な 戦 略 を 立 て た。 教 育 界 や 芸 能 界 な ど も「 特 別 性 の ア ピ ー
ル」 を 賛 美 し , 消 費 者 は企 業 の 作 ら れ た 「 個 性 」 を 賛 美 す る 雰 囲 気 つ く り に 一 役 賈 っ た 。【差 異 の 産業 的 生
産 論 】
現
代
・90 年 代 , バ ブ ルが 崩 壊 し て 消 費 者 は 必 ず し もブ ラ ンド な ど の嗜 好 品 を 買 う 余 力 が な く な っ て き た 。 と は い
え 「 誇 示 的 欲 求 」 は 温 存 し て い た 。 そ こ で 企 業 は, 従 来 の戦 略 に 加 え て, 商 品 の 匚限 定 化 」 に力 を 入 れ た。
そ し て 「 よ り 早 く限 定 品 を 手 に 入 れ た 生 活 者 は 自 分 の特 別 性 を 上 手 に表 現 で き た 生 活 者 ( 限 定 品 を い ち 早
く 購 入 し て 自 分 の「 特 別 性 」 を ア ピ ー ルで き た 者 が 勝 ち)」 の 雰 囲 気 ( ゲ ー ム) を 作 り 出 し , 消 費 者 は こ ぞ っ
て 限 定 品, プ レ ミ ア 商 品 の 購入 に 走 るよ う な 戦 略 を 立 て た。 こ こ で は 厂特 別 性 」 の 意 味 が , 匚階 層 差 」 と い
う 意 味 か ら 「 体 験差 」 とい う 意 味 に 置 き 換 え ら れ て い る 。
暗 黙 の ル ー ル の設 定 より科 学的 な 生活をす るものが勝 者 より節 約できる商 品を使うものが勝者 自 分が他 者とは 異なる「 選 ばれ た存 在」ゲ ームの勝者 になるための商品を提 供
【「需 要 剔 出 の 自 己 組 織 的 シ ス テ ム の段 階 的 変 遷」 図 】
析 的 フ レ ー ムワ ー ク」 に あ る10 段 階 か ら 分 析 を 進
め るO ま ず 厂消 費 行 動 の分 析 」 の 段 階 を 通 し て ,
60 年 代 に 顕 著 に 消 費 が 目 立 つ 商 品 が 電 気 洗 濯 機 な
ど の家 電 で あ る こ と,70 年 代 は不 動 産 や 貯 蓄 で あ
る こ と か ら , 消 費 者 が60 年 代 は 匚生 理 的 欲 求 」を ,
70 年 代 は 匚安 全 ・ 安 定 の 欲 求 」 を も っ て い た こ と
を 確 認 す る。 後 半 の 匚企 業 戦 略 の 分 析 」 の段 階 で
は , そ う し た 消 費 者 の 欲 求 に対 し て60 年 代 の 企 業
は, 匚冷 た い 水 も苦 に な り ませ ん」 と い っ た 広 告 ・
CM を 制 作 し て 商 品 の 機 能 性 ・ 利 便 性 を ア ピ ー ル
す る と と も に, イ ン ス タ ント 食 品 な ど 利 便 性 を 追
求 し た 商 品 の 開 発 が 進 め ら れ, こ れ ら も大 き な 利
益 を 上 げ た こ と,70 年 代 の企 業 は, 匚ゆ っ く り ロ ー
レ ル」 と い っ た 広 告 ・CM を 制 作 し て , 商 品 が 何
ら か の 安 心 感 を 与 え る か の よ う な イ メ ー ジ 作 り を
す る と と も に, 環 境 にや さ し い 製 品 , 燃 費 の良 い
車 な ど 匚長 い 目 で 見 て 得 を す る」 よ う な 商 品 の開
発 が 進 め ら れ た こ と を 確 認 す る。 そ し て 更 に 企 業
は,60 年 代 は ア メ リ カ の ホ ー ムド ラ マ を 流 す な ど
し て 匚ア メ リ カ 的 科 学 的 生 活 」 を ,70 年 代 は 厂安
全 ・ 健 康 な 暮 らし ] を 理 想 化 し て , こ れ に 向 け て
消 費 者 を 走 ら せ る 雰 囲 気 作 り を さ せ た こ と な ど を
踏 まえ て , こ こ か ら ,60 年 代 は 匚よ り ア メ リ カ 的
科 学 的 生 活 を 送 る た め, よ り 多 く の電 化 製 品 な ど
を 持 っ た も の が 勝 者 」 と す る ゲ ー ム が,70 年 代 は
冂今来 得 を す る 商 品 を 使 う 者 が 勝 者 」 と す る ゲ ー
ム が 行 わ れ て い た こ とを 掴 む。 そ し て こ の 探 求 結
果 を 踏 まえ て, SQ1 に 対 し 「 ブ ラ ンド 品 は必 ず し
も当 時 の 消費 者 の持 つ 欲 求 を満 た す商 品 で はな か っ
た 。 ま た, 当 時 の 企 業 戦 略 も ブ ラ ン ド 品 に 消 費 者
の 目 が 向 か う よ う な 戦 略 を80 年 代 ほ ど 積 極 的 に は
と っ て こ な か っ た た め に, そ の 売 れ 行 き は一 部 に
留 ま っ た」 と い う 解 答 を 導 き 出 す こ と に な る 。
展 開 3 ∼ 4 は, SQ2
厂な ぜ 現 代 (80 年 代 以 降 )
の人 は ブ ラ ンド な ど の 嗜 好 品 を 購 入 す る よ う な 消
費 行 動 を と る の か 」 を 探 求 す る。 こ こで の 分 析 手
順 は , 展 開1 ∼2 と 大 き く は 代 わ ら な い ( ① が
匚ブ ラ ンド 品 以 外 に 何 か 売 れ て い た の か ) に 変 更
に な る )
O 展 開 3 で は ,80 年 代 の 社 会 構 造 の 分 析
が 試 み ら れ る。 こ の分 析 を 通 し て ,80 年 代 の 消 費
者 は 匚誇 示 的 欲 求 」 を 顕 著 に す る よ う に な り , 企
業 は こ う し た動 向 を 踏 ま え て , 従 来 あ っ た 商 品 の
差 異 化 ・ 差 別 化 ( ブ ラ ンド 化 ) を 推 し 進 め る一 方 ,
厂S席 に ど う ぞ 」 の よ う に, そ う し た 製 品 が 自 己
の 特 別 性 を 喚 起 す る か の よ う な イ メ ー ジを 植 え つ
け るCM や 広 告 を 忤 っ た り , ト レ ン デ ィ ド ラ マ を
流 し た り す る な ど し て , そ う し た 商 品 に 囲 ま れ た
生 活 を 冂固性 的 な 生 活 」 と し て 理 想 化 す る な ど ,
人 工 的 に ブ ラ ンド 化 さ れ た 商 品 に 向 け て 消 費 者 を
走 ら せ る 雰 囲 気, つ ま り 厂高 級 ブ ラ ン ド 品 を 購 入
す る こ とで , 自分 が他 と は異 な る “選 ば れ た存 在”
で あ る こ と を 示 し た も の が 勝 ち」 と し た ゲ ー ムを
作 り 出 し た こ と を 掴 む ( 差 異 の 産 業 的 生 産 論 )。
表 3 分 析 的 フ レ ー ム ワ ー ク
消
回1
言
岔
①ブ ラ ン ド 品 で は な く, 当 時 何 か売 れ て い た の かo
②当 時売 れて い た 商 品 に共 通 す る 特 質 は 何 か 。
③ ど のよ う な 動 機 ( 欲 求 ) か ら 消 費 者 は そ の 商 品
を 求 め た の か。
企
業
戦
略
の
分
析
④ 企業 は 消 費 者 の 動 機 ( 欲 求 ) に 基 づ い て ど ん な
新 商 品 の 開 発 を し , 従 来 の商 品 を い か に 修 正 し
た の か 。
⑤ 企業 は商 品 の売 り 上 げ を 伸 ば す た め に , ど の よ
う なCM や広 告 戦 略 を と っ た の か。
⑥CM や 広 告 以 外 で 企 業 が 雰 囲 気 作 り に 使 っ た 手
段 は 何 か。 ど の よ う な 雰 囲 気 を 生 み 出 そ う と し
た の か 。
⑦ 社 会 が こ う し た 雰 囲 気 作 り に一 役 買 っ て し ま っ
た も の はあ る か 。
⑧ そ の当 時 の 企 業 戦 略 と, そ こ に 見 ら れ る 「 見 え
な い力 ( = ゲ ー ム)」 は何 か。
⑨ 雰 囲 気 に 飲 み込 ま れ た ( 企 業 の戦 略 に 踊 ら さ れ
た ) 消 費 者 は, ど の よ う な こ とを し た の か。
⑩ ま と め(sQ ・ ssQ へ の 解 答 )
展 開 4 は, 現 代 社 会 は80 年 代 の戦 略 が ど の よ う
に変 化 し た の かを 分 析 す る 。 こ こで は , 企 業 の二
つ の 戦 略 に 注 目 さ せ る。 一 つ は ブ ラ ンド の 価 値 を
維 持 す る た め に , 匚信 用 創 造 」 に 力 を 入 れ る よ う
に な っ た こ と , そ し て もう 一 つ は, 企 業 は 短 期 少
品 種 大 量 生 産 戦 略 に シ フ ト し, 同 時 に 商 品 も「
“差
別 化 」 か ら 厂限 定 化 」 に 方 向 修 正 し , 匚特 別 匪」
の意 味 を 匚階 層 差」 か ら 匚体 験 差 」 に 変 更 す る こ
と で , 匚人 よ り 早 く 限 定 品 を 手 に 入 れて 自 分 が 他
と は 異 な る “ 選 ば れ た 存 在 ” で あ る こ と を 示 し た
者 が 勝 ち」 の ゲ ー ム を し て い る こ と を 掴 む。 そ し
て 展 開 3∼ 4 の 探 求 結 果 を 踏 まえ, SQ2 に答 え る。
終 結 は, こ れ ま で の 学 習 を 踏 まえ ,50 年 代 か ら
24現
代
ま
での
消費
者の
購
買意
欲の
変化
と
,それ
に
応
じた
企
業戦略
の
変
化
(需
要剔
出の
自己組
織
的シス
テム
の
段階
的
変遷
)をま
とめ
,MQ
に答
える
。そ
して
,50
年
代か
ら現代
ま
での
企
業戦略
の
一般化
を
は
か
り
,資本
主義シス
テム
下
での
企
業
と消
費者
と
の
メ
カニズ
ム
,つ
ま
り
「需
要
剔
出の
自己組織
的シ
ス
テム
」
を把握
させ
る
。
IV.本
研究の特質と意義
本研究の特質と意義は次の二点に収斂
される
。
特質と意義の第
一点目は
,従来の啓発
的消費者教
育とは別の匚
社会認識教
育と
しての消費者教育
」
の具体的事例
を
,子
どもたちが自己の消費活動
を,
企業の利潤追求
を究極の是とす
る資本
主義社会全
体からマク
ロに捉える授
業をボ
ー
ドリヤール
らの
消費社会論をベ
ースに
して開発
・提示できた
こと
である
。これによ
り,子どもたちは自らが一消費
者と
して
,消費社会にどのよ
うに位置付けられ
て
いるのか
を対象化
して捉えることができる
。
特質と意義の第二点目は
,本単元は
,匚
世界は
人間が作った言語ゲ
ーム
によって支配
され
,我々
の行動は
,意識す
る,意識
しないに関係なくこれ
の影響
を受け
,そのゲーム
の枠内での行動を余儀
なくされ
ているJ15
)
とした社会構築主義の考え方
に基づいて
,経済分野の授業化を図った
ことであ
る
。経済現象
と言えども,自然科学法則とは異な
り
,あくまで社会制度が生み
出
したものである
。
ここで取
り扱った匚
差異の産業的生産
」も,匚
需
要剔出の
自己組織
的システムの段階的変遷
」も
,
現代資本主義体制
,自由主義経済体制かおるか
ら
こそ成立するの
である
。全ての経済現象は社会的
歴史的な構築物であ
り
,努
力を要す
るかも
しれ
な
いが変革も可能である
。このことを自覚
させるた
めの
フ
レ
ーム
ワー
ク
を本単元は子
どもに提供する
ことができる
。この
ことは
,子
どもたち
を消費社
会の静観者ではなく
,消費者主導の社会の
形成者
として育てる
ことの土台となる
。
最後に
,匚
社会認識教育としての消費者教育」
が
,消費者教育であるが故の限界
点に
ついても述
べておきたい
。それは,消費者教育が
「消費者主
権不確立説
」を前提
としないと成立
しえないが故
に
,実際専門家の間では
,確立説
と不確立説が論
争
を
して
お
り
,不
確
立説
が現
在の
優
勢
とは
い
えそ
の
決
着
をみ
な
いに
も
関わ
らず
,一
方の
学説
を採用
せ
ざる
を得
な
い
こ
とで
ある
。企
業
・市
場への
警
戒
よ
り
,開かれ
た
社
会
認識
形
成
・多角
的
な社
会
認識
形成が
優
先
され
る
社会
科教
育か
ら見れ
ば
,
この
こ
とは
看過
できぬ
問題
なの
では
なか
ろ
うか
。
【註】
1)林
鉱一郎(1995)
「ITS
資本
主義に
おける米国の優位
」
『季刊アス
ティオン』第36
号
。
2)例
えば
,今田高俊(1987)
『モダンの脱構築一産業
社会のゆ
くえ』中央公論社
。
3)松原隆一郎
(2000
)
『消費資本主義のゆ
くえー
コン
ビ
ニから見た
日本経済』筑摩書房,
150-152
頁。
4)山根栄次(1999)
rr
経済の仕組み
」がわか
る社会科
授業』明治図書,
119
頁
。また,学習指導要領も消費
者保護の観点か
ら消費者教育の必
要性
を唱えている。
5)例
えば
,有田和正(1991)
「賢明な消費者が生産の
あり方を変える
一
消費者教育の徹底
をー
」
『社会科教
育』明治図書,
No.355,
112-117
頁
。
6)例
えば
,武田寿博(1998)
匚
合理的意志決定能
力の
育成と消費者教
育
」
『社会
系教科教育学研究』第10
号
。
7)例
えば
,新井宏昌(1991)
匚
消費者教育に関する一
考察
」
『社会
系教科教育学研究』第3号
。
8)武田
,前掲6,
83
頁。
9)例
えば,大友秀明(1996)
「 ̄
消費者の行動や意識の
変化を
」
『社会科教
育』
明治図書,
No.428,
28-29
頁。
10)
J
・ボ
ー
ドリヤール著/今村仁
司他訳(1979)
『消
費社会の神話と構造』紀伊国屋書店
。
11)前掲10,
48-132
頁
。た
だ
し厂
ゲーム
」は
,
「言語ゲー
ム
」を意識
して筆者が独自に使用
した表現
である。
12)なお
,大杉昭英(1990)
叩個別化」を導入
した探
求と
しての社会科一
高校現代社会
「消費者問題」の
授業構成
一
」
『社会科研
究』第38
号は
,筆者が目指す
厂
社会認識教育と
しての消費者教
育」の
先駆けと見る
ことができる。ただ
し大杉の授業は
,60
∼70
年代を
対象と
している。
13)今田,前掲2,
33-42
頁。
14)例
えば
,佐伯啓思(1993)。
『
「欲望」と資本主義一
終
り無き拡大の
論理』講談社
。
15)橋
爪大三郎(1985)
『言語ゲーム
と社会理論』勁草
書房。
単 元 「 商 品 購 入 に 働 く 見 え な い力 を 見 つ け よ う 」 の 教 授 書
パ ー ト 教 師 の 発 問 資 料 子 ど も か ら 引 き 出 し た い知 識 ・ 発 言 導 入 部 プン も の j2ミ 活 乱 ぶ す ・ あ な た は商 品 を賈 う と き, ど の よ う な こ と に 注 意 して い ま す か。 ・ 同 じ 品 質 , 同 じ デ ザイ ン, 同 じ 機 能 の商 品 で あ れ ば , あ な た は 値 段 が 高 い 物 と 安 い 物 , ど ち らを 購 入 し ま す か 。 そ れ は常 に で す か。 な ぜ で す か 。 ・ 現 代 の よ う な 市 場 経 済 の も と で は, 我 々 消 費 者 は値 段 に 関 し て 主 導 を 持 っ て お り , 自 由 意 志 に 基づ い て 買 い た い 商 品 を 適 切 な 値 段 で 購 入 で き る よ う に な っ た と 考 え る人 も い ま す 。 あ な た は昔 と今 と で は, ど ち ら の 消 費 者 が 買 い た い 商 品 を 買 い た い 値 段 で 購 入 で き る世 の 中 で あ る と 思 い ま す か。 例) ・ 価 格 が 適 正 か ど うか 。 ・ 品 質 が良 い か ど う か。 ・ そ れが 本当 に 必 要 か ど う か 。 な ど ・ 同 じ品 質 で あ れ ば, 当 然 安 い 方 を 選択 す るで あ ろ う。 〔素 朴 理 論 〕 現 代 社 会 は 昔 よ り も 商 品 の 種 類 が 増 え , メ ー カ ー も よ り 低 価 格 で よ り 高 性 能 な 商 品 の 開 発 に 励 ん で い る た め に, ま た ネ ッ ト な ど で 情 報 を 集 め る こ と が で き る の で , 消 費 者 は以 前 よ り も 自 ら の 意 思 に 基 づ き, 欲 し い も のを 適 切 な 価 格 で買 う こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 従 っ て , 現 代 社 会 の 消 費 者 は同 じ 品 質 , 同 じ 機 能 , 同 じ デ ザ イ ン な ら ば , 必 ず よ り 安 い 商 品 を 選 択 で き る 消 費 者 優 位 社 会 で あ る と 考 え られ る。 素 朴 理 論 を 揺 さ ぶ り 認 知 的 不 協 和 を 生 み 出 す ・ こ の A 社 の 鞄 を 知 って い ま すか ? ・ で は こ ち ら の 鞄 は知 って い ます か ? ・ 模 倣 製 品 は 限 り な くA 社 の鞄 に 近 い も ので , 使 って い る 素 材 や 鞄 と し て 果 たす 機 能 も 似 て い ま す。 で も価 格 は お よ そ 半 分 以 下 で す 。 先 ほ ど の 例 に従 って , 今 回 も安 い 方 ( 模 倣 製 品 ) の 方 が よ く売 れ る ので し ょ う か。 ・ 多 く の人 が こ う し たブ ラ ンド 品 のよ う な, 商 品 の値 段 や 性質 , デザ イ ン以 外 の側 面 に 価値 を 見 出 し 購 入 す る とい っ た 行 動 が 見 ら れ るよ う に な っ た の は昔 か ら で し ょ う か ? ( お よ そ 全 て の生 徒 が 聞 い た こ と の あ る よ う な 有 名 プ ラ ン ド バ ッ クと そ の模 倣 品 を 提 示 す る。 こ こで 言 う ブ ラ ンド 品 と は, 有 名 デ ザ イ ナ ー( 特 に 海 外 ) の製 作 物 の意 味) ・ 現 代 の 私 た ち 消費 者 は 時 と して , 商 品 の性 質 や 値 段 , デ ザ イ ンと い っ た製 品 が 持 つ 性 質 や 機 能 以 外 の 側 面 にな ん ら か の 価 値 を 見 出 す こ と が あ る 。 ( 生 徒 の 素 朴 理 論 に 揺 さ ぶ り を か け る) ・ 昔 の 人 に も 見 ら れ た 現 象 だ が,70 年 代 後 半 ∼80 年 代 以 降 に 特 に 顕 著 に な っ た と 言 わ れて い る。 Mq: 現 代 社 会 に生 き る 我 々消 費 者 は, 商 品 の 何 に価 値 を 見 出 して 購 入 する のだ ろ うか 。 な ぜ そう した 行 動を とる の だろ う か ? SQ.1 : な ぜ 高 度 経 済 成 長 期 や そ れ 以 前 の消 費 者 は, ブ ラ ン ド 品 を 買 う と い う 行 為 を 積 極的 に 行 な わ な か っ た の だ ろ う か 。 SQ2 : な ぜ80 年 代 以 降 の 消費 者 は, 品 質 や 機 能 が ほぼ 同 じで あ るこ と が 分 か つ て い な が ら , あ え て ブ ラ ン ド な ど の 嗜好 品 を 買 う と い う 行 為 を 積 極 的 に行 な う よう に な っ た の だ ろ う か ? 展 開 1 こ 心心W SQ1 : な ぜ 高 度 経 済 成 長 期 や そ れ 以 前 の 消 費 者 は, プ ラ ン ド な ど の嗜 好 品 を買 う とい う 行 為を 積 極 的 に 行な わな か っ た の だ ろ う か 。 SSQ.1 二な ぜ50 ∼60 年 代 の 消 費 者 は , ブ ラ ン ドな ど の 嗜 好 品 の 購入 と い う 行 為を あ まり とら な か っ た の だろ う か ? 展 ほわ ・
( 本 時 の 課 題 を 提 示 す る) ( 予 想 さ せ る) 省略展
開
2
こ
SSQ2 : な ぜ70 年 代 の消 費 者 は,80 年 代 以 降 に 比 べ て, な ぜ あ ま りブ ラ ン ドな ど の 嗜 好 品 を 積 極 的 に購 入 を し な か っ た の だろ う か ? 厠; | ( 本 時 の 課 題 を 提 示 す る) ( 予 想 さ せ る) 12・ 省 略 Sq2: な ぜ80 年 代以 降 の消 費 者 は, 品 質 や 機 能が ほぼ 同 じ で あ る こ とが分 か つて いな が ら,あ え てブ ラ ンド な どの 嗜好 品 を 買う という行 為を積 極的 に行なうよう にな った のだろうか ? SSQ.3 : な ぜ80 年 代 の 消費 者 は, 以 前 よ り も ブ ラ ン ド品 嗜 好 が 強 ま っ た のか 。 ・80 年 代以 前 にお い て 頻 繁 に ブ ラ ンド な ど の 嗜好 品 を 賈 う こ と がで き る人 は ど のよ う な人 だ と考 え ら れ るか。 ・ こ う し た高 級 ブ ラ ンド 品を80 年 代 以 降, 多 く の人 が 購 人 す る よ う に な っ たと い う こ と は, 当 時 の 人 々 に経 済 的 ゆ と り が で き た のだ ろ う か。 ・ 「 バ ブ ル」 と は何 か。 工 ( 本 時 の課 題 を 提 示 す る) ( 予 想 さ せ る) ・ 極 めて 高 額 で あ っ た た め , 一 部 の 裕 福 な 人 々 に 限 られ て い た。 (予 想 さ せ る) (子 ど もか ら「 バ ブ ル」 と 言 う単 語 が 出 て く る と思 わ れ る) ・70 年 代 頃 か ら多 く の 人 々 が 不 動 産 購 入 や 株式 投 資 に走 っ た結 果 , こ れ ら の 価 格 が80 年 代 に入 り 急 激 に上 昇 し た。 26贔 ? へ 80 年 岱 芸 茲 の 岔 丶、ノ