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本書はミネルヴァ書房の「やわらかアカデミ
ズム・〈わかる〉シリーズ」の1冊として出版
されている。ただし、初学者に向けた家族社会
学の教科書や入門書という位置づけではなく、
家族社会学に属する領域やテーマをこれまでの
蓄積と理論に基づいて説明することに重点を置
く。編者は「家族社会学が何をどのようにとり
あげてきたかを網羅」することを試みており、
読者は家族社会学で得られた成果を本書から再
確認することができる。
全
14
章で構成されており、第1章では家族社
会学で用いられる理論及び視角の説明、第2章
から第
11
章までは社会の現状、理論に基づく説
明、そして、さらなる研究の展開可能性という
ポイントで家族研究のメインストリームのト
ピックスをとりあげている。第
12
章から第
14
章
までは、家族と社会の他領域との関連、家族社
会学の隣接領域、現代家族をめぐる諸問題への
アプローチについての言及がなされている。具
体的には、第2章から
11
章では「結婚」、「子の
養育」、「高齢期のケア」、「夫婦間の情緒的関係」
等が、第
12
章から第
14
章では「家族と職業・仕
事」、「福祉社会学」、「フェミニズム」、「子ども
の貧困」等が触れられている。
家族社会学の研究者が本書を開けば、自身の
研究と関連の深いトピックスを必ず見つけるこ
とができると思われる。本書でも、家族システ
ム論が家族研究の理論、分析視角としてとりあ
げられているが、家族にまつわる何らかの事象
は決してそれ単独で存在しているわけではな
く、それらを取り囲む別の要素との相互性を考
慮する必要がある。例えば、本書の第
13
章では
現代家族をめぐる諸問題として「孤立」をとり
あげているが、それに関連する「ネットワーク
論」、「家族の個人化」、「中期親子関係」、「きょ
うだい関係」等も同書のなかで参照することが
でき、研究の概観をとらえたり、全体構想を
練ったりするのに大いに役立つはずである。
特徴的なのは、家族研究のメインストリーム
のトピックスを扱う章では、必ず「さらなる理
論展開の可能性」が示されている点である。例
えば、きょうだい関係の理論展開の可能性とし
ては、ステップファミリーがきょうだい関係に
与える影響、高齢期きょうだいのサポート源や
参照基準、マルチレベル分析の応用について説
明がなされている。どのトピックスにおいて
も、さらなる理論展開の可能性は今日の「近代
家族」の揺らぎと密接に関係しているように読
み取れる。
本稿を執筆している間の世界的なコロナウィ
ルスの感染拡大は、家族関係にも顕著な影響を
もたらしている。在宅勤務はコロナ禍を契機に
かなりの速さで浸透し、夫婦間の家事や育児の
分担について論争を招いている。また、学校や
職場が閉鎖され、地域コミュニティのつながり
も弱まることにより、児童虐待や
DV
のリスク
が高まっていることも問題視されている。編者
が展望していた通りと言ってもいいだろうか、
コロナ禍で表出する新たな家族社会学の課題に
ついても本書はきっと何らかの手掛かりを与え
てくれるはずである。
【文献紹介】
西野理子・米村千代編著
よくわかる家族社会学
(2019年12月、ミネルヴァ書房、本体2,400円+税、ISBN 978-4-623-08551-4)
岡 村 利 恵