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アルゴンの体積の揺らぎから求めた臨界点

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Academic year: 2021

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法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.35 36

法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.35 (2020)

原稿受付 2020 年 3 月 17 日

発行   2020 年 8 月 25 日 Copyright © 2020 Hosei University

1.はじめに

 体積と温度一定の分子動力学シミュレーション (NTV-MD)におけるポテンシャルエネルギーの揺ら ぎから Spinodal 線と臨界点を求める方法がある.  この論文では,圧力一定の MD[1]から体積とポテ ンシャルエネルギーの揺らぎを求め,それらの温度 変化から臨界温度を定める.ポテンシャルエネル ギーの揺らぎだけではなく,臨界点付近において重 要な体積の揺らぎの情報を利用するので,より的確 に臨界温度を定めることができると期待される.  具体的な計算はアルゴンについておこなった.使 用したアルゴンの Lennard-Jones パラメータは表 1 に 示した[2].ポテンシャル関数 u(r) は次の式(1)に示 した.分子動力学シミュレーションの条件は表 2 に 示した.

u r

r

r

( ) =





− 





4

ε σ

12

σ

6 (1)

アルゴンの体積の揺らぎから求めた臨界点

Critical Point of Argon from Fluctuation of Volume

片岡 洋右1)2) Yosuke Kataoka

1)法政大学情報メディア教育研究センター 2)法政大学生命科学部環境応用化学科

Critical point of argon was estimated from fluctuation of volume. Lennard-Jones potential was assumed in molecular dynamic simulations. Ensemble was canonical and constant pressure. Critical temperature was obtained from the temperature-dependence of the fluctuation of volume and potential energy. The results were compared with the reported equation of state.

Keywords : Critical Point, Fluctuation of Volume and Potential Energy, Molecular Dynamic Simulations, Argon,

Len-nard-Jones Potential  Lennard-Jones ポテンシャルで多くの液体−気体系 を表すことができるので,具体的な計算はアルゴン について実行するが,この論文の方法は多くの液 体−気体系に適用できる. 表 1 アルゴンの Lennard-Jones パラメータ[2] Table 1 Lennard-Jones Parameters for Argon[2]

ε/J ε/m

1.7258E-21 3.4282E-10

表 2 分子動力学シミュレーションの条件 Table 2 Conditions in Molecular Dynamic Simulation

item value

initial configuration FCC

number of molecules 864

ensemble NTV & NTP

velocity control velocity scaling

boundary condition periodic

cut-off distance half of cell length

time step dt 1 fs

number of steps 1,000,000

potential function Lennard-Jones

(2)

法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.35 37

2.体積と温度一定条件での MD

 先の論文で Spinodal 線から臨界密度は dc=0.5 g/ cm3 と知られたのでこの密度で NTV-MD によりポ テンシャルエネルギー (Ep) と圧力 (p) の温度依存性 を求めた.その結果を図 1 に示した.またそれらの 標準偏差 MSD(Ep) と MSD(p) を図 2 に示した.  ポテンシャルエネルギーは 160 K 付近で折れ曲 がっているが圧力にはそうした際立った変化は無い. 標準偏差 MSD(Ep) は 140 K 付近に極大があるが MSD(p) は大きな変化は無い.

3.圧力と温度が一定の MD

 図 1 の圧力の値を指定して NTP-MD を行った.得 られた体積 <V(NTP)> とポテンシャルエネルギー <Ep(NTP)> を図 3 と図 4 に示した.  図 3 と図 4 から V も Ep も温度低下に伴い,170 K 付近から分布は広がり始め,165 K 以下では 2 通り の値をとるように見える.これは気体的構造と液体 的構造に対応する.  MD シミュレーションの経過に伴う V と Ep の値 の変化の例を図 5 に示した.  図 5 からこの MD ランにおいては,気体的構造と 液体的構造が繰り返し入れ替わって表れている.  図 6 に図 5 の構造変化の例の原子配置の一部を示 す.時刻 t=405 ps では気体的構造であるのに対し, t=502 ps では液体的構造をとっている.  図 7 と図 8 には体積 V と Ep の標準偏差の温度依 存性を示した.  図 7 と図 8 から体積とポテンシャルエネルギーは 温度 165 K 付近で大きく揺らぐことがわかる.  図 9 と図 10 には平均値で規格化された標準偏差値 図 1 密度が 0.5 g/cm3におけるポテンシャルエネルギー の平均値 <Ep> と圧力 p の温度変化 Fig. 1 <Ep> and p vs. T Plot at d=0.5 g/cm3

図 2 密度が 0.5 g/cm3における標準偏差 MSD(Ep) と

MSD(p) の温度変化

Fig. 2 MSD(Ep) and MSD(p) vs. T Plot at d=0.5 g/cm3

図 3 図 1 の p を指定した <V(NTP)> の温度変化 Fig. 3 <V(NTP)> vs. T Plot. P is Given in Fig. 1

-5

-4.5

-4

-3.5

-3

-2.5

-2

160

165

170

175

180

<Ep(NTP)/1e-18)/J

<

E

p

(N

T

P

)/

1

e

-1

8

)/

J

T/K

図 4 図 1 の p を指定した <Ep(NTP)> の温度変化 Fig. 4 <Ep(NTP)> vs. T plot. P is Given in Fig. 1

(3)

法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.35 38

図 5 図 1 の p を指定した V(NTP) と Ep(NTP) の時間経過 Fig. 5 V(NTP) and Ep(NTP) vs. t Plot

図 6 原子配置の時間経過例

Fig. 6 Examples of Atomic Configurations at Different Time

図 7 標準偏差 MSD(V(NTP)) の温度変化 Fig. 7 MSD(V(NTP)) vs. T Plot

図 8 標準偏差 MSD(Ep(NTP)) の温度変化 Fig. 8 MSD(Ep(NTP)) vs. T Plot

図 9 MSD(V(NTP))/<V(NTP)> の温度変化 Fig. 9 MSD(V(NTP))/<V(NTP)> vs. T Plot

図 10 –MSD(Ep(NTP))/<Ep(NTP)> の温度変化 Fig. 10 –MSD(Ep(NTP))/<Ep(NTP)> vs. T Plot

を体積とポテンシャルエネルギーについてそれぞれ 示した.規格化された標準偏差値からは温度 T =165 K 付近で極大をなることがより明瞭に見える.  そこで,この温度を臨界温度と定めることができ る.得られた臨界定数を表 3 に示した.この結果は 状態式の結果と良い一致を示している.

(4)

法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.35 39

4.まとめ

 臨界密度における体積一定の MD から圧力の温度 依存性を求め,その圧力を指定した NTP-MD から体 積とポテンシャルエネルギーの標準偏差の温度依存 性を計算した.これらの標準偏差はそれぞれの平均 値で規格化すると,その温度変化がより明瞭となり, 合理的な臨界温度を定めることができた.

参考文献

[1] Allen, M. P.; Tildesley, D. J. Computer Simulation of Liquids. Clarendon Press, Oxford, 1989

[2] SCIGRESS-ME . 富士通 . http://www.fujitsu.com/jp/ solutions/business-technology/tc/sol/sgme/summary/, (参照 2020-06-22).

[3] Kolafa, J.; Nezbeda, I. The Lennard-Jones fluid: an accurate analytic and theoretically-based equation of state. Fluid Phase Equilibria. 1994, vol. 100, p. 1-34. [4] Lofti, A.; Vrabec, J.; Fischer, J. Vapour liquid equilibria

of the Lennard-Jones fluid from the NpT plus test parti-cle method. Molecular Physics. 1992, vol. 76, p. 1319-1333.

表 3 アルゴンの臨界定数 Table 3 Critical Constants of Argon

MD Kolafa & Nezbeda[3] Lofti et al[4]

Tc/K 165 167 163

dc/(g/cm3) 0.5 0.51 0.5

Table 1  Lennard-Jones Parameters for Argon [2]
図 3 図 1 の p を指定した &lt;V(NTP)&gt; の温度変化 Fig. 3  &lt;V(NTP)&gt; vs. T Plot. P is Given in Fig
表 3 アルゴンの臨界定数

参照

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