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体育・スポーツの学習権:に関する研究(Ⅳ)
−スポーツの知的探求の自由と権利−
辻田‥宏
(人文学部保健体育教室)
A Study on the Right to Learn in Physical Activity and Sport (IV)
― The Freedom and the Right of 四∇intellectual Inquiry into Sports ―
Hiroshi TsUJITA ト
Laborator-y(-if HeaLth,and Ph:ysicalEducation,Faculりof HummaTiities
は じめに <目次> ニ 1.は七めに \ 2.人間の知的探求の自由と権利 剛 人間の「探求心」汀学習意欲丁「知力」 (2)人間の知的探求 十十 \ ③ 知的探求の自由と権利し 3.スポーツの知的探求の自由と権利 剛 スポーツ:を科学する自由と権利 し (2レスポー・ツの知的自治の自由と権利 (3)スポーツ政策立案への権利 っ 4にスポーツの知的探求の自由と権利の法的根拠 5.おわりに ト 体育・スポーツの学習権の権利性は,人間の 学習の本質が自由な能動的で創造的な知的探求 にあるという点て,知的探求を中核とした自由 権性をその基礎にしているのではないかと述べ たが1),なお,体育・スポ・-ツの学習権の権利 内容とその権利性をより具体的に明らかにする という課題が残された。ダ 犬 本研究では,体育・スポーツの学習権の中心 的な内容を「スポーツの知的探求の自由と権利」 としてとらえ,その自由と権利の具体的な内容 と法的根拠を明らかにする試みを通しで,ぞの 課題に迫るものとする。 そこでまず,「知的探求」の概念と内容を類 似的な概念の検討を通して明らかにし,人間の 知的探求の自由と権利の諸相と諸内容を究明し てみたい。そしてそのうえで,「スポーツの知 的探求の自由と権利」の諸内容を人間のスポー ツ活動に即してより具体的に検討・整理して, それらの法的根拠づけと構造化を試みるごとに する。またそこでは,「スポーツの知的探求の 自由と権利」と「スポーツ権」の権利性と法的 根拠づけの相違にっいてもふれてみたいレなお, 法的根拠づけにおいては,本来であれば,教育 基本法や社会教育法も必要:なのであるが,本研 究においては憲法条項に限るものとする。
2.人間の知的探求の自由と権利∧ 巾 人問の寸探求心」「学習意欲丁「矢IT力」 堀尾ば,寸人間はレ.人世]的環境のもヶとて,\文ト………1=.:,1・・.・ 化どの接触のなかで,∧学習=を通七で発達する」……=yljl・.・=・. IW∼−JふへZ』・4・− '・゛`-7・ . J ・ l一一・=心W.∼ノLJlfK2.丿 WL」..・.・パ・:ノ..・jU ものであ力√「.学習とは本来レ人附にと☆で基……=ムユ」万一」.一一芯・.・ム・J・ I SI・ ¶ミ・・S・ 1・r ●.〃-fsr一 ・・ ・ I・.ゝゝ.、・ .ゝ 1 ・ 、、 .I .・:..・・・・● 本的な探求的活動そのレもの」町である]としにまた……万一サjダ1.==・..: 子供におレけるレ学習を例にしながら,T学習は創……=I・j;・.=.=・.万.一一J 造力を媒介とする創造め過程である」サとも述ぺ………:1プノ,・..: ている.この指摘を待づま懲レもなく√人間は,………J・:.=:.・1・.:・1.11 自然や社会や文化との相互作用仰中ノで√トぞごで\∧jレ,:= の学習活動を通しで成長:4発達しにそれらを支∧:ノナ.=,J:.・こ・jに・と= 配1統治する諸能力を身にっけていノぐのこある………:.j .:・.・:=・.一万・右,・.:・.4.・ま.・I が,〉ここでの指摘で肝要なこと凪\探求的七い十ノ……11万.万.なj万七`'1万 う\こjとであ力,その言葉:には人間し∩ミ体)十の側………==万.l:・・=.=jで。 I一一6・.ま.= の能動性,ト創造性が学習においでは決定的に重………万1===.j]゛……t一 要である古いう意味あいが含まれでいると理解\/l=ソ:・:1=4 七なければならない。‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥ ‥‥‥ そこで√レ探求的活動。としでの学習,すな/わちノ 人間の丁知的探求甘分意味を人胆力能力七いう 視点か/ら,\類似的な表現や概念の検討を通しす√ 少し掘り下げて考えてみ七い。……… ……… 尚まず,「探求心」犬という言葉かおるが,坂野ぺ は√[探求心にはさまニざこ末な水準があるふそダの∧レ]………=.・ もっとも基本的な七のが探求反射である」ヤと.し………I:……… パブロフの叙述を引用しながら,しその探求反射………J・1.一一.宍万万万一 は「生まれつき備拉っ友反射としての無条件反……=Jl」=Jy 射に属するものと,ト生後生活のなか懲の経験を………ソ……j・jイ 通して生じた条件反射に属するもjの唐に区別でレ\四方 ぎるが√変化する環境に適応するた万めに=必要な もめは,いうまでもなく条件反射によしる探求反 射であ石」ヤ‥と説明する。\これ:は,犬人阻には生来 的に探求的性質が備わづているこ万とと=√その性 質憾「生活のなかでしだいに変化し複雑な甘め 1 ヤ … … … … 伏 屋 ? ク ゙ … … ノ : は 。 / J : になってい。くプ)ものであるこ才とごを示七てjいる。]\∧ そして人間は√この探求反射を基礎としながら,………=,.ト=乙フ:=に.・;Jj 探求心を低次なものからよ寸=‥高次なダものへと変……==j=七==41万ま↓1 化・成長ダさ廿ていくので=あ\るよ・=いう△なれば,尚人\……=1万=・・.う.・= Iな:..一一,:= 間の探求心はその成長と発達にともなっ七生物ノノ 学的・生理学的なものか=石レ心理的的4=意識的ダンケ………求・.宍.: なものぺにさらには科学的(芸術的なもしのへと よ墜高次なものとなっでいくノとトえ谷。………万一 さトら\に√ 語的ト・非言語的な探 │題などの点に 求心内特徴は, [的で=あるとい \の首あるとす な探求活動 る丿。,またi :求活動におい ば多yいほどよ や賃が用意さ ,みやごう.め1込みがよ ○一l ・::: ・ 心/よノうレな……ことを意 検汁してみた.いが,・ に述べている。 ぞれぽT学習し ぐるがレ。『学習の ようjと=する心』・ のく意欲ノとレいう場合 欲求と\関係した目 ニを診してい 良には,]欲求 りしあノげ`,十意識 回択的な行動− j………=簡単にいえ 順」’①と。意 習意欲は探求 ∧ら意識的, も]含むもしのであ 関係につ\い か道具]とくかレというよ 欲求)トとご遊 よ二=だ/いする欲 」申=とすゾる。そ七で, :かで獲得 いったと
体育・スポーツの学習権に関する研究(IV)(辻田) ころに」本来起因すべきで,学習あるいはそこ における課題解決それ自体のなかに,動機づけ があるように(内発的動機づけ)条件づけられ ることが望ましいと指摘する1‥≒ 波多野と稲垣は,これまで検討してきたよう な丁探求心土や「学習意欲」に近い人間の能力 を「知力」という概念を用いて説明している13)。 それによると,知能と意欲は密接に結びついて いるとして,知的意欲を重視する立場から知能 と意欲を総合的にとらえることの重要性を指摘 し,広い範囲に応用しうる問題解決の手順=知 能と知的意欲とが統一されたものを「知力」と とらえている6そして,その知的意欲や「知力」 の発達において留意すべき重要な事柄をいくつ か言及している。 1 まずその一つは,「思考などの知的活動をひ きだし,ひいては知力を高めるこごとになる経験 は,決して事物や与えられた『問題』とのかか わりのなかのみにあるのではない。他の人々と のやりとりもまた,こうした機会を提供する丿) と述べているように,それらの発達には,対人 的・集団的な相互作用が重要であるということ。 二つには,特に年長の子供,青年,大人の場合, 「その問題の解決が社会的に有用な効果をもた らすとか,獲得される能力が社会的に有用性を 持つ+5)とき,その知的活動は活発になり,能 力は伸びていくどするが,見方を変えれば,人 間の個々の知的活動は,文化や科学,ひいては 社会の発展につながっているという側面を常に 持うているということ6三つには。「何か意味 かおり,どういう問いが考えるに値するかは, それぞれの文化のなかで少しずつちがっている。 その文化のなかで意味をもつ問題√つまりレ文 化的に関連性,適切さをもつ問題でないと,人々 の力が十分に発揮できない]6)といわれるよう に,その知的活動が行なわれている社会や文化, あるいは知的対象の文化既にたいする洞察が必 要であるということ。四つには,個性に見合っ た活動(指導)が重要であるということ1 7)。そ れは,課題の適切さという意味だけでなく,知 的活動が「個々の学習者の発達していく権利を 拡大し,その潜在的可能性をひきだすという意 49 味での自己実現化を助ける形で行なわなければ な=らない」!8)こと意味しており,「自己選択の能 力士を高めることに通じるものである。 ノ (2)人間の知的探求 前節において,「探求心」,「学習意欲」,「知 力」の検討を通して人間の「知的探求」への接 近を試みてみたわけであるが。ここでは,その 検討を踏まえて「知的探求」とは何かを改めて 明らかにし整理したい。 まず第一にいえることは,それは生得的・生 物学的な欲求や反射を基礎にしており,発達に トともないよ肛高次なものへと発達・発展してい くものだということである。そしてその発達の ためには,何らかの手助け(教育的働きかけ) が必要であること,その際に留意すべきことは, ①学習者に「無駄」や「余裕」を保障すること, ②集団的・組織的な相互作用の機会を保障する ごと√③個性に見合った活動を保障によって個々 :の学習者の発達(自己実現)及び自己選択の機 会と余地を保障すること,④対象の文化性,文 化的背景を考慮することなどである。なかでも ・重要なことは,集団的・組織的な活動の保障で あJる。なぜならば,その相互作用が知的探求を 促進・援助するというだけでなく,=集団的・組 織的でなければ成立しない知的探求活動が存在 するからである。 し 第二に,人間の能力における知的探求の本質 尚的側面は,それが,未来志向(予測)的や意識 的・計画的なものであるということである。だ からこそ人間は,問題解決のための手順や方法 を考案すること,仮説を立てて実験したりする /ことが可能なのであり,また希望や夢を持っこ ともあれば,ト絶望することもあるのである。 第三に,知的探求は本来内発的な動機にもと づくそれ自体に歓びを見いだすような自発的活 動であり,それは,真理と真実の追求と発見の 歓びにも通じるものであり,学習者の自己実現 や人間的な歓び=幸福追求の活動であるという ことがいえるレ 第四に,個々の人間の知的探求は,その社会 犬の文化や科学,ひいてはその社会全体の発展に
つながっでいるとい=う側面を常に有しでいる占 いうことがいえる。そ詣意味セ,二個々の人間的\,……万一宍あ万;'・る 歓び・幸福jは,尚自己のためにあトるだレけ\でなく,∇ ト 万人の,社会全体の幸福につなかってい=るもの だという関係認識古理解が必要になづ首くるレj (3)知的探求の自=j由と権利 \ コ……… さ乙前=節1で検討したよ\うな人間の知的探求 の諸相,\諸内容儒ノ人間jのどのよう力自由\と権 利としてどら〕えJるしことができるのであろうかレ あるヤは,=どのような:自由や権科と:関連づけら・ れる\のであろ∇うか。 ‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥ ‥‥‥ まず,一知的探求の自由は,\その自生が人間の 本性的な欲求に根ざ七ているという点からy,……j.人 間が生来的に有七ている誰仁も奪うにとができ ない自然権とセての自由権としで捉えられなけ ればならない七 …………j……:1= …………=プ= 次に知的探求は,し人間と土で成長・溌達じて いく\ための学習というレ側面を強工持づてjいるた・ めに,レそlめ自由逝権利は発達権レ教育を受サる 権利=学習権としてとらえ\られるで=あろう。そ して,とjりわ廿発達の未熟な子供に=あっては, 知的探求を「驚き=と喜びを伴テ発見の過程ユレと して組織し,……「・発見の驚きをつぎの探求へ向け て励ま七,十その選訳に方向づ計を与:え,る」19) (堀尾)よTうぱ援助七万ダくしれる存在て教師レや親) や働きかけ=(教育)が不可欠である。ト 十六▽ また,犬知的探求の自由と権利はに真理とソ真実………:・ をT知る権利上として捉えられなければレなら・な…………J。・・= られ:る入卜きもので y・=レ:::・釘1・・.的探求として 壮,く………":国民の学 │的……・T;組織的で ソないゲものもあ レφノ自由七権利 ノれ凪………憲・法的 追求め自由 そゲの:ものが なトうしもぐのである jよる人間と 幸福を追求 心が犬るとい た√\知的探 ゾき:た:いノ…………= =ない\ごとはレ今日 Jで函ノる△よ/う:に,大知 いであ万う o▽真実を「知る権利土は,丁『国民の……エ…………=公jj的ニニエ万万Jヤニj社套的女諸条件めノ整倫)………保障≠社会権的 知る権利』\とは,犬政府に,政洽的公ニ的刄/情報を……j………なj保障Jうりj叉=な宍ニ=ぐニプ=1れ=jニ4まj,=万=エ゜=ニ現=実化七=jなケい側面を有七て 国民\に知らせる義務を負わせ,▽々ス=7ミにレ>積……\………い本ご仁すサあゾるレよ……ノ…………\j.づ……j……万………=\………万……… 極的にその情報に近づき国民1に必要な情報を正………J………=yケ∧………=ニ万………ニj……=<尚ノ:……万……犬∧………>ノJ……ニ…………\=ニノ………レ;………\………1… ……… 確に報迫する責任を負わサるものとレいうヘことか………∧……… エ日3。I万;=。jj――:―IズI.―ボjII=i÷j万Iツj――:.!I―こお.ニエ゜【ニす.I.`1る―万知的探求めゾ自由ど権利 こに丁知る権利」の核心が見いだ1ぜTるのであるノ が,それだけでなくに個人の人格の発展と/自己 実現を可能にするための個人権于しと七七\も把 握されるノま衰,「学問の‥自由はに▽もはや大学 人の特権でぱない,そ=れぱなによトり∧も国民ひと りひと力の知的探求め自由,真実を知る権利・ 人間の能 こスソ探求活 )・√ぐぞ]れはブまヶだレズポーツ a求し=享受する自由 と………し.・=だ上丿ご,以j 自ノ由しと権利の諸内:容
について検討を深めたい。 体育・スポーツの学習権に関する研究(IV)(辻田) 剛 スポーツを科学する自由と権利 スポーツの真理を追求しその本質に迫る自由 と権利を総じて「スポーツを科学する自由と権 利」と表現したい。それは国民の「スポーツを 学問する自由」であり,スポーツの文化と科学 の成果を享受しそれを発展させていく自由と権 利である。それでは,その具体的な中味はなん であろうか。 まず一つには,スポーツの技術の構造や法則 の探求であろう。この探求は,スポーツ活動に おいて普遍的な意味を持っている。なぜならば, 人はどのような目的のスポーツ活動においても 好むと好まずにかかわらず,スポーツの技術を 追求し技能的向上を志向しているからである。 例えば,町のテニスコートで友人同志が,主観 的には全くの遊びで技能の向上など考えもしな いでプレー(ゲーム)をしているとしても,ど うすれば早く正確なストロークが打てるか,あ =るいはボレーを決めることができるかを絶えず し考えながらプレーをしているわけで,この点で はトップアスリートも同じなのである。ただ, 知的探求の本来的なあり方からすれば,スポー ツ技術は意図的に追求されるべきであろうし, そしてなによりも意図的・計画的に追求すると いう点において,町のテニスコートに立つ選手 もウィンブルドンのテニスコートに立つ選手も 同じスポーツを科学する自由と権利を具現化し ているのである。 二つには,技能的な習熟や技術認識の追求の ための科学的なトレーニングや練習方法の考案 と計画化,試合に勝つための戦術・戦略の研究 などかおる。この典型的な事例が,オリンピッ クなどの国際大会での競技力向上のために結成 されるプロジェクトチームや委員会である。過 去には,水泳やマラソンの高地トレーニングの 研究と実践などが有名であるが,スポーツの自 然科学的側面に関する知的探求ということもで きる。また,この知的探求の活動は集団的・組 織的に行なわれるのであるから(もちろん個人 的になされる場合もある),その自治的・自立 51 的なあり方も問題になるであろうが,そのこと については詳しく後述する。 三つには,スポーツの人文・社会科学的な側 面についての探求である。この点は,国民のス ポーツを科学し学問する自由のなかで最も軽視 されその能力としても最も弱点の部分である。 それは内容的には,スポーツの歴史や思想,ス ポーツと政治・国際関係の問題,スポーツ産業 やスポーツの商業主義化,プロスポーツを含む スポーツ選手の権利や生活の問題など実にさま ざまで難解なもので満ち溢れているが,なかで も国や地方自治体のスポーツ政策・行政に関す る探求は,国民(市民)のスポーツ活動の充実 にとって重要であろう。また今日,特に話題に なり解明や解決が求められていることをいくつ か例示すると,プロ野球のフリーエイジェント 制導人の論議にみられるようなプロスポーツ選 手の人権問題,リゾート・ゴルフ場開発におけ る自然・環境破壊と地域住民の問題,スポーツ 商業施設の増加とそれにともなう住民の受益者 負担の問題,プロサッカーや野球のゲーム場面 における暴力行為や学校のクラブにおける体罰 やしごき等,スポーツのフェアープレーと民主 主義にかかわる問題などがある。 (2)スポーツめ知的自治の自由と権利 スポーツの知的探求への欲求や要求を基礎と して,そしてそれを目標にして結集し編成され た集団・組織の自治的な権利を「スポーツの知 的自治の自由と権利」と表現したい。その意味 からすると,この自由と権利は,知的探求を第 一義的とするような集団・組織,たとえば前述 した水泳のプロジェクトチームや大学等のスポー ツ科学研究機関,スポーツに関する学会などに おいては最もよく保障されなければならないと 考えるが,どのようなスポーツ集団・組織にも, この自由と権利は保障されなければならないも のである。なぜならば,たとえそのことを第一 義的に追求していないような集団・組織でも知 的探求の部分と要素を必ず有しているからであ る。それは,たとえば,先述したテニスの例で もわかるように,プレーすること自体が探求的
であることを必然化しており,学校や入学のク ラブではそのことはより必要になるであろうし, プロ・スポーツ集団においても勝利のためには 知的探求活動が不可欠であることは言うまでも ない。またそのような小さな集団・組織だけで なく,巨大な組織である国際オリンピック委員 会や各種国際競技連盟においても,単に大会を 開催したり運営したりするだけでなく,どのよ うにすればオリンピックやスポユツを発展させ ることができるかを絶えず探求しなければなら ないはずである。 ところで,この知的自治の自由と権利の内容 と核心はなんであろうか。 づ それは,ひとことでいえば,スポーツの知的 探求の集団・組織への国家をはじめとする社会 的諸権力の介入の排除・拒否の自由と権利であ ろう。具体的な例でいうならば,大学・研究機 関のスポーツ科学研究の目的,内容や方法につ いて国家や企業などが□を出したり,またその 結果を勝手に流用したりするようなことを許さ ないようなものであり,あらゆる権力的介入か らスポーツ集団;組織の知的探求の自発性と創 造性,民主的な管理運営を守る自由と権利であ るといえる。もちろん,憲法で保障される「集 会・結社の自由」に基づくそれらの集団・組織 を結成する自由も含まれなければならない。 また最後に指摘しておきたいことは,このス ポーツの知的自治の自由と権利は,スポーツ集 団・組織に限るものではないということである。 すなわち,地域にあっては住民自冶として,教 育・研究機関においではいわゆる教育の自治や 大学の自治としてその重要な構成要素となるも のである。 (3)スポーツ政策立案への参加の権利 じ これまでに述べてきたスポーツの知的探求の 自由と権利は,現代的人権のほとんどがそうで あるように,その権利の充足と実現を果たすた めの社会権的な内容を介している。すなわち, 先述したようなスポーツの知的探求の削]し比権 利を保障するためめ社会的諸条件の整備や充実 を田家にたいして要求していく権利を内包して いるのである。換言すれば,スポーツの知的探 求を保障する諸政策に参加する権利であり,知 的探求といレうことに即していえば,万それらの政 策の立案万に参加・関与す右権利といえる。 それは具休的には,各政党や候補者のスポー ツ・教育政策を分析・検討して選挙権を行使す ることであうたり,あるいはさまざまな地域の 自治的組織や機能をとおナして行政に働きかけた りすると言亡あるが,ごれは,剛で検討したよ うなスポ二ツの社会科学的・政治的な認識と自 治的・統治的な能力の獲得=スポーツ政策の知 的探求と不可分である。その意味で,スポーツ 政策に関する知的探求ぱ↓……万j.・。=・・ス・・ポーツ政策の研究 考の学問の自由や立法・行政担当者の立案や計 画化としでのみあるのではなく,まさしくそれ は,汀{又│民ノの学習権は,とりわけ市民の学習権 として,才子ノの主権者とし七の自覚と,それを裏 づける政治的学習を中心にするといってよい。 それはレ主権者田民としてのその主体性を支え る教養への権利,政治的あるいは公的情報に近 づき,それ菅知る権利を含んでいる」と指摘さ れるよう枇I,……匡│民としでのあるいは市民として のスポープjを学開する自由,スポーツの学習権 の中心的な内容をなすものである。また同時に, その権利はスポーツ政策・行政に関する情報を 公開申右寸土を要求する)権利でもある。 4。スポーツの知的探求の \ 自由と権利の法的根拠 ことでは,……=・:蚕法条項に限定してスポーツの知 的探求の自由と権利の法的根拠づけとその構造 化を試みて√スポーツ権との相違を検討してみ たい。 ………Iゾノ,‥‥‥‥‥‥ \そこサさ=まし:・・ず!JlIlTToj「f本育ノ=・スポーツの学習権 に関する研究イn」−スギ=−ツ権の法的根拠と スポーツの本質一」23)でのスポーツ権の権利内 容とその法的根拠の構造化の試論を図示してみ ると図↓……0・・=。よ。う・6こなる寸あろう。 ト 図卜にうノいて改めて若干の説明をしておくと, スポーツ条理に即して解すれば,スポーツ権の 法的根拠の中核を形成するのは,スポーツの白
体育・スポーツの学習権に関する研究(Ⅳ)(辻田) スポーツをする自由,スポーツの人 間的歓び,幸福を追求する自由
憲法第13条
- ■ ¶ ■ ■ ■ ■ ¶ ■ ¶ - ■ ■ ■ 還 ■ ■ ■ 』 = ■ J a 還 』 ■ - 曹 - = - - - ¶ ス ポ ー ツ 条 件 整 備 請 求 の 権 利 、 ス ポ ー ツ 政 策 関 与 の 権 利 W ¶ ¶ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 還 ■ 還 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 還 ■ 還 ■ & 遍 』 = = - 』 - - ■ - 還 ■ 』 ス ポ ー ツ の 自 治 的 権 利 、 ス ポ ー ツ の 組 織 と 管 理 ・ 運 営 の 自 由 図1.スポーツ権の法的根拠の構造試案 由とその歓びや幸福を追求する自由を保障する 第13条であり,そしてそれを支えるかたちでか つ一体不可分のものとして,スポーツの条件整 備を請求する権利を保障する第25条とスポーツ の自治的権利を保障する第21条が構造化される のである。 それでは,スポーツの知的探求の自由と権利 の法的根拠はどのように構造化されるであろう か。その試案が,図2.である。 図2.について説明すると,スポーツの知的探 求の自由は,本来,人間の自発的で創造的な活 動であり,それが保障されるためには総体とし スポーツの知的探求の自由,スポー ツの知的探求の歓びや幸福を追求する 自由と権利憲法第13条
……… ………1……… スポーツの知的 スポーツを科学 探求のための教育 する自由と権利、 を受ける権利、そ スポーツの真理と の能力の発達への 真実を知る自由と 権利 権利 スポーツの知的自治の自由と権利、 知的探求活動の集団・組織の管理・運 営の自由憲法第21条
53 = ¶ ¶ ¶ ¬ ¶ - - - - 警 警 = ■ 警 ¶ ■ ■ ■ ■ ■ ■ - ■ ■ ■ ¶ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 還 ■ 還 還 還 晶 還 還 ■ 還 還 一 還 還 還 - = - - = - - = - - - ■ ¶ - ¶ ¶ ¶ ¶ ¶ 一 警 - ■ ■ - ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ス ポ ー ツ の 知 的 探 求 の 条 件 整 備 を 請 求 す る 権 利 、 そ の 政 策 に 関 与 す る 権 利 ( 政 策 立 案 に 参 加 す る 権 利 ) ての人間の自由が保障されていなければならな 図2. いこと,そしてその自由な自発的で創造的な活 動は究極的には人間としての歓びや幸福を追求 すること・懲あることから,やはり第13条をその 中心に据えなければならないと考える。 この点 てスポーツ権と同様な権利性を有すると解釈す ることができるであろう。 そして,その自由と権利が保障されるために は,知的探求活動そのものの自由(=国民の学 問の自由)や真理・真実を知る権利が保障され憲法第25条
スポーツの知的探求の自由と権利の法的 根拠の構造試案 なければならないこと,またそのための諸能力 の発達が保障されなければならないことから, それぞれ23条と26条が相互に補完し一体となり ながら13条を支えるように構造化されねばなら ないと考える。 さらにそれらの自由と権利は,知的探求活動 をすすめるあらゆるレベルの集団や組織の知的自治の保障とその社会的諸条件の整備によって 実現するものであるから,第21条と第25条が基 底的に支えていなければならないであろう。 このようにみてくると,スポーツ権とスポー ツの知的探求の権利(自由)は,自由な自発的 で創造的な活動の保障とそれが人間としての歓 びや幸福につながるのだという点での共通な自 由権性を有しているが,知的探求活動が,まさ に知的探求を自覚的・意図的にそして優先的に 行なうという点て,スポーツ活動とはその性質 を異にしており,その相違を根拠づけにおける 第23条と26条の構造化として現わしたつもりで ある。 5 おわりに いわゆる大学設置基準の大綱化以降,全国の 大学で一般体育の必修制度をめぐっての検討が なされている。筆者の勤務する大学においては, すでに体育実技が選択制となることが決定され たが,この間,その件について学生にアンケー トをとる機会があった。その際に次のような意 見があった。「選択制になれば,やはり履修し ない人が出てくると思う。大学はいろいろな勉 強をする場所であるが,体にいちばんよいのは やはりスポーツであり,また,気分も楽になっ て勉強もはかどると思う。そのためにも勉強も よいが,スポーツもまた必要である」。 このように,スポーツを何かの手段としてと らえたり(この場合は,心身のリフレッシュ), スポーツを勉強や学問と対置して知的探求の対 象とみなさない考え方は,どちらかといえば国 民の間で一般的なのではないだろうか。 この学 生の意見は,心身の二元論や労働と遊びの二元 論と通じるものがあるが,このような思考の転 換のためにも,またこのような思考を形成して きた歴史的・社会的制約を克服するために乱 「スポーツの知的探求」の試みが,体育・スポー ツのあらゆる分野とレベルで展開されねばなら ない。そのことによってのみ,スポーツを真に 人間的文化として楽しむことも,またスポーツ の文化と科学を発展させるととも,さらには学 校体育をより教育的に絹織することも可能にな るのではないだjろうかノ 引用文献\……=・:・.万.・・:・=・.・.= ………1・j・ ▽ D拙稿「体育・スポーツの学習権に関する研究(Ⅲ) ニ学校体育乙子‥どもの学習権一」,高知大学学術研 究報告第41巻社会科学, 1992 2)堀尾輝久,『人権としての教育』, p. 5,岩波書店, 1991 ∧‥‥‥‥ ‥‥‥ ‥ 3)同上書, p. 6∧:‥j ト 〉 ■ 4)坂野登,『fどものこころ重読む』, p. 142,青木 書店,∩988づ \ 5)同上書,紅旧町万……… 犬上 6)同上書, p. 14マニ j 7)同上書,ppン↓73-178 8) m上書,\pレ戸=町十 ……… ……… 9)同上書,p.斑oレ……… ]O)坂野登,『脳のはたらきと子どもの教育』, p. 155。 青木書店,1洲2‥‥‥‥‥∧ LI)同上書, p.117 ……1 1 12)同上 ニ 13)波多野誼余夫y稲垣佳世子,『知力の発達』, p. 34, 岩波新書,△1=9卵白 14)同上書, p. 109 15)同上書,p丿25 16)同上書, p.130 ………… !7)同上書,p八3卜 1 / 18)同士書, p.137 1・ 19)堀尾輝久,前掲書,p.図工\ \ 20卜同上書, p. 26∧し ………:j・ ……: 2D同上 22)同上書, pp. 29-30 / 23)高知大学学術研究報告第39巻社会科学, 1990 \平成5年(1993) 9月30日受理 \平成5年(1993)!2月27日発行