<論文>地域就労支援事業と自治体財政の改善
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(2) 人権問題研究所紀要. 図1地. 域 就 労 支 援 事 業 にお け る雇 用 ・就 労 実 現 まで の フ ロー. 個別ケース検討会議 髄い 、. ・. 買、 レ、.幡r. 個別支援 メニュー. 実難裏鶯謬 与 a. 就 労 支 援 ケー ス 藍 連絡 協議 会. C-STEP etc. (2)地. 域 就 労 支援 事 業 の経 緯 と 目的. 地 域 就 労 支 援 事 業 の ベ ー ス と な っ た の は、 同和 行 政 と し て展 開 さ れ て き た 職 業 相 談 活動 で あ る。 「部 落 差 別 は地 区 の 入 び と に対 して 失 業 者 に な る市 民 的権 利 さえ 奪 っ て い る」 と指 摘 さ れ て きた。 事 実 、失 業 保 険(雇 用保 険)や 労 働 協 約 な どな い 一2一.
(3) 地域就労支援事業 と自治体財政の改善. 不 安 定 な就 労 に追 いや られ て き た多 くの 同和 地 区 の 人 々 に とっ て、 職 業 安 定 所 は無 縁 な存 在 で あ り、 離 職 票 す ら手 にす る こ との な い こ う した 人 び と は、 「労働 行 政 認 定 の失 業 者 」 に な る こ とさ え拒 まれ た。 特 別 職 業 相 談 員 を配 置 し、 同和 地 区の 現 場 で職 業 相 談 活 動 をお こ な う 同和 対 策 事 業 は こ う した状 況 の 中か ら生 み 出 され た。 し か し取 り組 み を支 え て きた 同 和 対 策 事 業 に関 わ る法 律 が2002年3月. 末 日で 期 限 切. れ を迎 え た。 同和 地 区 に 限定 した特 別 対 策 事 業 方 式 で は な く、 人権 行 政 の視 点 か ら部 落 問 題 の 解 決 にせ ま る とい う新 しい 状 況 は、 「失 業 者 に もな れ な い 失 業 者 」 が 同和 地 区 以 外 に もた く さん放 置 され て い る こ とを発 見 させ た。 働 い た経 験 の な い障 害 者 や 家 事 専 業 だ っ た 母 子 家 庭 の母 親 な ど、 「失 業 者 」 と認 定 され ない 「求 職 者 」 は 国 の 雇 用 対 策 の将 外 にお か れ て きた 。 こ う した 人 び と を対 象 に、 同和 行 政 の 経 験 を活 か して 、 生 活 現 場 にお け る就 労 支 援 事 業 が 構 想 され た。 そ れ が、 地域 就 労 支 援 事 業 で あ る。 「働 く」 こ とへ の 支 援 は、 経 済 的 自立 へ の道 で あ る だ けで は な く、 自己 実 現 や 社 会 参 加 と深 く結 びつ い た 人権 政 策 その もの で あ っ た。 分 権 と 自 治 の 流 れ は、 この 取 り組 み に拍 車 をか け た。2000年4月. の地 方 分 権 推. 進一 一括 法 や 改 正 雇 用 対 策 法 に よ り、 地 方 公 共 団体 が 雇 用 行 政 に と り くむ努 力 義 務 規 定 が 設 け られ た。 市 町 村 に、 国 の職 業 安 定 行 政 とあ い まっ て、 そ の総 合 力 を活 か し た市 民 の就 労 支 援 方 策 が 求 め られ た。 地 域 就 労 支 援 事 業 は そ の具 体 策 で もあ っ た。. (3)地. 域 就 労支 援 事業 の実 績. 2002年 度 に18の 市 町 村 で ス ター トし た地 域 就 労 支 援 事 業 は、2004年 度 にお い て 大 阪 府 内 の全 ての 市 町 村 に広 が っ た。 事 業 開始 以 来 の実 績 は表1の 通 りで あ る。 相 談 延 べ 件 数 は2003年. 度 以 降1万 件 を超 え て お り、相 談 者 実 人 数 も年 聞4500人. を上 回 っ て い る。 就 労 と結 び つ い た実 績 は2005年 は相 談 者 実 人 数 の21.9%と. 度 にお い て999人. で あ り、 そ れ. な っ て い る 。 まだ まだ 十 分 と は い え な い が 、 就 職 困 難. 者 と され て きた 人 び とが 対 象 者 で あ る こ と を考 えれ ば、 就 労 実 現 率 だ け で は な く、 一3一.
(4) 人権問題研 究所紀要. 相 談 件 数 や 相 談 者 数 そ れ 自体 の もつ 意 味 は大 きい とい え よ う。 実 績 は これ 以 外 に も、 地域 就 労 支援 事 業 の 一環 と して市 町村 が 企 画 した 「パ ソ コ ン講 座 」 や 「ホ ー ム ヘ ル パ ー 養 成 講座 」、 「医療 事 務 講座 」 「フ ォー ク リ フ ト講 習 会 」 「日商 簿 記 講 座 」 「履 歴 書 の書 き方 ・面接 の 受 け方 講 習 」 「ビ ジ ネ ス マ ナ ー 教 室 」 な どの 様 々 な 能 力 開 発 講 座 の修 了 者 を 生 み 出 して い る。 しか し も う一 つ 、 この事 業 は市 町村 に とっ て注 目すべ き大 きな成 果 を築 き始 め て い る 。 取 り組 み の 実績 が 、 自治体 財 政へ の うれ しい影 響 を 及 ぼ し始 め て い る の で あ る。. 表1地. 域 就労 支援事業 の実績 相談延 べ件数. 2002年. 相談者実人数 若年者. 就 労者 中高年 齢者. 母子家庭 の母親 等. 障害者. その他. 正 規雇 用. 非正規 雇用. その他. 度. 5559. 2278. b82. 1085. 292. 153. 603. 432. 180. 192. 60. 2003年 度. 10695. 4624. フ85. 2233. 609. 408. 100フ. 846. 414. 372. 60. 2004年 度. 10962. 4959. 1071. 27フ7. 631. 580. 958. 988. 399. ss2. 27. 2005年 度. 10672. 4552. 679. 1867. 613. s11. 782. 999. 419. 580. ・. 8202. 3166. 341. 1262. 463. 384. 716. 715. 433. zs2. ・. 2006年 度(中. 間). 1翻llll雛認齢 繁禦叢 翻欝 麟 編 棄罐 。 。. [2]地 (1)大. 域就 労支援 事 業の財 政 効果 阪 府 和 泉 市 に お け る地 域 就 労 支 援 事 業. 和 泉 市 は、 大 阪 府 内 にあ って も、 最 も意 欲 的 に地 域 就 労 支 援 事 業 を推 進 して きた 自治 体 で あ る 。 この 事 業 が 府 にお い て ま だ 政 策 研 究 の段 階 に あ っ た2000年. に 「自. 立 ・就 労 支 援 市 町村 モ デ ル事 業 」 の 指 定 を受 諾 し、 就 職 困 難 者 就 労 実 態 調 査(2000 年12月)の. 実 施 や 就 労 支 援 計 画 書 の策 定 へ と取 り組 み は急 発 進 した。. 当 時 の 市 町村 にお け る労 働 政 策 は 事 実 上労 働 福 祉 の 分 野 に限 られ て お り、都 市 産 業 部 商 工 課 労働 対 策係 に係 長1名 、係 員1名 が 配 置 され て い た和 泉市 にお い て も状 況 は 同 じで あ っ た。 こ う した 中 で 、地 域 就 労 支 援 事 業 の取 り組 み は 、和 泉 市 が本 格 一4一. '双 炉.
(5) 地域 就労 支援事 業 と自治体財政 の改 善. 的 に 市 民 の 雇 用 対 策 に乗 り出す 契 機 とな っ た 。 そ の 発 展 の 様 子 は 、2001年 度 の 商 工 課 内 に労 働 政 策 室 の 設 置 、2002年 度 に は労 働 政 策 課 の独 立 、 あ わせ て 就 労 支援 セ ン タ ー を1箇 所 か ら3箇 所 へ 増 設 、2004年 度 に は無 料 職 業 紹 介 セ ン ター の 開 設 な ど、 取 り組 み体 制 の拡 充 か ら も うか が え る。2006年 度 の 労 働 政 策 課 は労 働 政 策 係 と就 労 支援 係 の 二 つ の係 を擁 し、 職 員5名 、 非 常 勤 職 員3名 、 臨 時 職 員3名 の 合 計11名 体 制 と な って い る。. (2)弾. み を つ けた 財 政 の 視 点 か らの 説 明. こ う した 和 泉 市 に あ っ て も、 取 り組 み を推 進 して い く上 で 大 きな 課 題 とな った の は 、 事 業 推 進 の た め の 予算 確 保 で あ っ た 。 つ ま りは、 市 の 財 政 部 局 に対 して 、 い か に して 就 労 支援 の た め の 予 算 を認 め させ るの か とい う こ とで あ る。 この 点 につ い て 、和 泉 市 に お け る 雇 用 政 策 の 立 案 者 で あ り取 り組 み を牽 引 して き た 竹 田竜 彦 さん(2007年. 度 よ り和 泉 市都 市 デ ザ イ ン部 次 長)は 筆 者 の ヒ ア リ ン グ. に 次 の よ う に語 っ て くれ た 。 「地 域 就 労 支 援 事 業 を推 進 し よ う とす る と、 市 の 予 算 を も らわ な け れ ば な り ませ ん 。 と ころ が 財 政 事情 は 『 厳 しい』 の 一 言 。 こ う した 状 況 に拍 車 をか けて い るの が 近 年 の 雇 用情 勢 の 悪 化 で す 。 厳 しい 雇 用 状 況 は税 収 の 低 下 を導 き、 そ の 一 方 で 生 活 保 護 な どの扶 助 費 の 高騰 を招 い て い る 。 そ ん な 中 で 新 規 の 事 業 や 既 存 事 業 の 拡 大 の た め の 予算 確 保 は正 直 至 難 の わ ざで した 」 「社 会 福 祉 の 部 局 で は扶 助 費 の 抑 制 が 課 題 と な り、 市 民 との トラ ブ ルが 絶 え な い 状 態 で した 。 そ こ で福 祉 の ケ ー ス ワ ー カー と連 携 す る中 で 、 就 業 指 導 適 用 者 の 就 労 支援 メニ ュ ー を作 成 し、 あ る者 は就 労 意 欲 助 長 講座 へ 、 また 職 業 能 力 開発 講 習 へ 、 職 場 体 験 訓練 へ 、 緊急 地域 雇 用 創 出事 業へ 、 そ して 就 職 へ と支援 策 を組 ん で い き ま した。 就 職 まで の 道 の りは もち ろ ん簡 単 な こ とで は あ りませ ん が 、 実 績 が 生 まれ て きま した 」 「私 は、 予 算 ヒア リ ン グで 財 政 当 局 に よ く言 い ます 。 生 活 保 護 の 適 用 は1年 で は 一5一.
(6) 人権 問題研究所紀要. す まな い が 、 そ の1年 分 の予 算 を就 労 支援 に 見積 もっ て くれ れ ば納 税 者 を つ く りま す 。 だ か ら地 域 就 労 支 援 事 業 の 予 算 は 市 の た め の先 行 投 資 と して 考 え て ほ しい と。 この 理 屈 と実績 が財 政 当 局 に対 す る殺 し文 句 とな りま した(笑)」 竹 田 さん が何 度 も強調 して い た の は 、 地域 就 労 支援 事 業 は 決 して 生 活保 護 者 対 策 で もな け れ ば 、 財 政 改 善 を 目的 と した 事 業 で は な い こ とで あ る 。 この事 業 は あ く ま で も、 就 職 困 難 者 と して さ ま ざ まな社 会 的 困 難 を強 い られ て い る 市 民 が 、働 く とい う こ と を通 じて 「社 会 参加 」 「生 きが いの 獲 得 」 「自己 実 現 」 を 追 求 す る た め の もの で あ り、 そ う した取 り組 み の持 つ も う一 つ の側 面 と して 、 財 政 効 果 の 問題 を捉 え て ほ しい とい う こ とで あ っ た 。. (3)和. 泉 市 にお ける 取 り組 み の 実 績. 図2は 、 こ う した 就労 支援 策 の 一 環 と して 実 施 され て い る 生 活 保 護 受 給 者 を想 定 した 「自立促 進 事 業 」 の フロ ー チ ャー トで あ る 。 労 働 政 策 課 と人事 課 が 臨 時 職 員 採 用 計 画 を企 画 し(図 の① ②)、 市 の無 料 職 業 紹 介 セ ンタ ー に求 人 を 出す(③)。. セン. ター は これ を社 会福 祉 課 に提 供 し(④)、 就 労 可 能 な生 活 保 護 受 給 者 との マ ッチ ン グ を はか る(⑤ ⑥ ⑦ ⑧)。 人事 課 は採 用 され た 人 を原 課 に 配属(⑨)す 員 の 給 与 は お よそ 月12万. る。 臨 時 職. 円 で、 そ の8割 程 度 が 収 入 認 定 さ れ、 そ の 分 が 保 護 費 か. ら控 除 され る 。 就 労期 間 中 も保 護 受 給 中 で あ る こ とや この取 り組 み が 職 業 訓練 、 職 場 体験 と して 位 置 づ け られ て い る こ と もあ り、 就 業 者 の状 況把 握 と支援 が 就労 期 間 中 も継 続 され る(⑩ ⑪)。 雇 用 期 間 は6ヶ 月 で あ るが 、 最 長1年. で2年. を 限度 に 延. 長 で きる 。 期 間終 了後 は再 び 無料 職業 紹 介 セ ン ター に 求 人登 録 され民 聞 企 業へ の 就 職 が 追 求 され る 。和 泉市 に は 臨 時 職 員 が 全体 で200人. く らい い る が 、 そ の うち の5. 人 が こ う して市 自 らが行 う就労 支援 策 と して 活 用 され て い る。 表2は 、和 泉市 に お け る2006年. 度 の 取 り組 み 実 績 で あ る。 「自立 促 進 事 業 」 の 成. 果 も含 め て 、 就労 支援 の取 り組 み が大 きな 成 果 を 残 して お り、 そ の財 政効 果 が類 推 され る 。 一6一.
(7) 地域就労支援事業 と自治体財政 の改 善. 図2自. 立促進事業 のフローチャー ト 一一. 一..湘. 一魑一 冒 一.ノ. :G. 自 立 促 進 事 業 醒 会参加 漕 己額 逆 活安定2 生 涯深護 世静の就 労 フ ローチ ャー ト(案 ♪ 7. 口. ︿⇔ ④求人情報 ︺. 事業の流れ 〔==碑 O. 鋤 PI. O. ③. レ ④. ⑤. 隔指 l琳 1齢 護 糾 甥 策報 祉導 画 頼. ⑥. ⑦. 饗 福該幡 阯当 者. 策録. 一7一. ⑧. 中麟 択. U. ⑩. ⑪. 会勧 1琳 屡鞘 壌 深練 曝. ② ゜9. 姫.
(8) 人権問題研究所紀要. 表22006年. 度 の和 泉 市 に お け る 就労 支援 相 談 ・無 料 職 業 紹 介 セ ン ター 実 績 就労支援相談. 無 料職業紹介 センター. 一. 129. 理 求 件 人 数 受. 一. 571. 511. 一. 640. 640. デ ク ノ ステ ー ジ 一般. 計. 35. 33. 68. 911. フ5. 186 58b. 中高年. 482. 903. 求職. 若年者. cos. 55. 164. 登 録数. その他. 213. 120. 333. ・. テ クノ希望者 計. 0. 50. 50. 950. 441. 1391. 0. b. 5. 母子家庭. 20. 47. 6フ. 紹 介件. 中高年. 31. 51. 82. 若年者. 13. 2フ. 40. 数. その他. 30. 31. 61. 0. 908. 108 363. 障害者. テ クノ希望者 計. 94. 269. 障害者. 0. 2. 2. 母子家庭. 6. 22. 2s. 就 職件. 中高年. 12. is. 2$. 若年者. 6. 10. 16. 数. その他. 6. 74. 20. テクノ希望者. 0. 95. 75. 30. 79. 909. 計 (注)テ. [3]取. 129. 母子家庭. 障害者 相談. 合計. ク ノ ステ ー ジ と は大 阪 府 が 推 進 して い る産 業 団 地 の こ とを 指 す. り組 み に 派 手 さ は な い が …. 就 職 困難 者 へ の就 労 支 援 は、 確 か に市 の財 政 改 善 へ と結 びつ く もの で あ る。 しか し実 際 の取 り組 み は、 一 覧 表 の 数 値 で 表 現 しきれ る ほ どの 簡 単 な も の で は な い。 そ れ ぞ れ の 入 が 就 職 困 難 者 とな っ て い か ざ る を 得 な か っ た社 会 的 事 情 を解 きほ ぐ し、 本 人 の頑 張 りと周 囲 の協 力 を促 し、 試 行 錯 誤 を繰 り返 しなが ら創 りあ げ られ て い く 実 に地 道 な 取 り組 み の積 み重 ね で あ る。 「福 祉 と労 働 の架 橋 」 に はそ れ だ け の エ ネ ル ギ ー が 求 め られ る の で あ り、 「生 活 保 護 の 機 械 的 な切 捨 て 」 と は対 極 に 位 置 し て い る。 結 果 と して 得 られ る財 政 へ の 好 影 響 は、 こ う した 努 力 を惜 しま なか っ た 自治 一g一.
(9) 地域就労支援事業 と自治体財政の改善. 体 へ の ご褒 美 か も しれ ない 。 実 例 を通 じて 少 しで もそ の 実 際 の 姿 が 伝 わ っ て ほ しい。 そ ん な思 い で 、 八 尾 市 の 地 域 就 労 支 援 コー デ ィ ネー ター で あ る藤 本 高 美 さ ん に、 取 り組 み の 一 例 を語 って も ら った 。. 1さ ん は 、 今 ま で の 相 談 者 の 中 で 忘 れ る こ と の 出 来 な い 一 人 で す 。 あ る 日 の こ と 私 の 所 に1さ. ん が や っ て き て 、 「な ん か 、 え え 仕 事 な い か な 、 働 き. た い ね ん 」 「い ま 、 保 護 受 け て る ね ん 」 っ て こ ん な 話 を す る よ う に な り、 そ れ か ら も ち ょ こ ち ょ こ 姿 を み せ る よ う に な り ま し た 。1さ. ん は プ ラス チ ッ ク製 造 業 の 仕事. を し て い た の で す が リ ス ト ラ に あ っ た の で す 。 そ の 月 の 職 業 相 談 に 案 の 定1さ. んが. や っ て き ま した 。 「1さ ん 、 少 し時 問 を か け て 生 活 や 仕 事 に つ い て の 話 を 聞 か せ て も ら え ま せ ん か 」 と切 り出 す と 、 い つ も通 り に 「仕 事 が し た い 、 何 か 仕 事 が な い か 」 と い う 。 「ど ん な 仕 事 が し た い の 」 と 聞 く と 「前 、 や っ て い た や つ 」。 「ど ん な こ と な ら 出 来 る の 」 と 聞 く と 「工 場 の 仕 事 」。 「給 料 は ど れ ぐ ら い 欲 し い?」 、 「い っ ぱ い 」。 「通 勤 範 囲 は?」 、 「自 転 車 で 行 け る と こ ろ 」。 「わ か っ た 、 い ろ い ろ あ た っ て み て1さ と こ ろ で1さ. ん が 喜 ん で 働 け る と こ ろ探 し て み る わ 。. ん、 生 活 保 護 っ て、 月 い く ら ぐ らい あ る の 」. 「10万 ち ょ っ と か な 」 「1さ ん の 家 賃 い く ら 」 「6万5千. 円」. 「そ れ や っ た ら 、 生 活 し ん ど い ね 」 「う ん 。 前 は(働. い て い た と き)28万. も ら っ て た ん で そ の ま ま住 ん で るね ん 。 前. み た い に働 い て 保 護 や め た い ね ん 」 「そ れ と、1さ. ん 識 字 教 室(日. 本 語 読 み 書 き教 室)に. 一9一. 通 っ て る ね ん な」.
(10) 人権 問題研究所紀要. 「そ うや 、夜 間 中学 校 も 出た ん や 。 ぼ く、パ ソ コ ン も して み た い ね ん 、パ ソ コ ン っ て なん ぼ ぐ らい す るね や ろ 」 この よ う な話 を何 回 も繰 り返 し聞 き ま した 。 50歳 代 の 一 人暮 ら しの 男 性 。 中 学 卒 業 時 に 新 卒 採 用 され るが 、 数 年 後 に突 然 解 雇 され る。 識 字 教 室 の 講 師 の 紹 介 で 二 回 目の 就 職 をす る も経 営 悪 化 を理 由 に リス ト ラ され る。 同 和 地 区 住 民 の 非 識 字 者 で 、 就 労 意 欲 は 高 い が 資 格 不 足 な どが 考 え られ る。 他 者 との 関係 もう ま く築 け な い とこ ろが あ る。 そ こで 関係 者 が 寄 って1さ ん へ の 支 援 方 策 を考 え る 「ケ ー ス検 討 会 議 」 を何 回 か 開 催 す る も進 展 が み られ な い 。 つ らい 状 況 が し ば ら く続 くうち に 、 公 立 保 育所 の 安 全 受付 員(緊 急 雇 用)の 求 人 情 報 が 届 き ま した 。 さっ そ く本 人 を含 め て 関 係 者 で 話 し合 う と、 本 人 は 自信 な ざそ う に 「や って み よ うか な 」 と言 う。勤 務 先 は 私 の い る 地域 就 労 支援 セ ン ター か らす ぐの と こ ろ で、 保 護 者 会 の役 員 さ ん に も知 り合 い が 多 い の で 支 援 体 制 に問 題 は な い 。 まず は 働 くこ とで 自信 を取 り戻 し、 生 きて い くモ チ ベ ー シ ョンア ップ に つ な が れ ば と思 い ま した 。 普 通 は こ こ まで くれ ば 後 は な ん とか っ て 感 じで す が 、 実 は こ こか らが 地域 就 労 支 援 事 業 の 領域 に な っ て き ます。 まず は、 履 歴 書 の作 成 。夜 間 中学 や 識 字教 室 で学 ん だ だ け あ っ て 、 字 が う まい とは い え ませ ん が 、左 手 で 一字 一字 丁 寧 に辞 書(電 子 辞 書)を 使 い な が ら書 く文 字 に、 人生 が 現 れ て い る か の よ うに私 に は 見 え 、胸 が熱 く な りま した 。 見事 に完 成 させ 、 あ とは警 備 法 の 関係 か らの二 名 の 身元 保 証 人(連 絡 のつ く人)が 揃 え ば書 類 は完 成 とな るが 、 な か な か書 類 を持 っ て き ませ ん。 そ ん な 時1さ ん担 当 の識 字 教 室 の先 生 か ら 「1さ ん 身元 保 証 人 で 困 っ て い る の で私 が そ の 一 人 に な る の で、 もう一 人 をあ な た にや っ て も らえ な いか 」 と依 頼 さ れ ます 。 そ れ を引 き受 け、 書 類 が 揃 う。 そ して 警 備 業 務 の研 修 も終 え た こ ろ、1さ. んが 私 の とこ. ろ にや っ て きます 。 「この 仕 事 辞 め よ う と思 うね ん 」 「何 言 うて ん の 、研 修 が や っ と終 っ た の に」 と言 う と、 「次 か ら次 へ と な んで こ ん 一10一. ゜ 一 馬..9.,.
(11) 地域就労支援事業 と自治体財政 の改善. な い っ ぱ い や らん な あ か ん ね ん 。 お 前 に何 が わ か る 」 と言 っ て興 奮気 味 に 私 にせ ま る の で す 。 か な りお 酒 も飲 ん で い る 様 子 で す 。 別 室 に 連 れ て 行 き落 ち 着 い た ころ を 見 計 らい 「 何 が あ っ た ん や 」 と聞 く と、 一 枚 の 紙 を出 して 「これ 毎 日書 く よ うに と い わ れ て ん ね ん 」 と 「日報 」 を 差 し出 す 。 文 字 に コ ンプ レ ッ クス を持 っ て い る1さ ん に とっ て 、 か な りの プ レ ッ シ ャー に な って い た よ うで す 。 早 速 、 警備 会社 に 連 絡 し、 記 入 方 式 か らチ ェ ッ ク方 式 へ の 変 更 と、 口頭 で の 電 話 連 絡 方 式 に変 更 依 頼 を し た と ころ 、 そ の 趣 旨 を理 解 して も らい ク リ アで す 。 い よい よ仕 事 が 始 ま りま した 。 色 々 トラブ ル はあ りま した が 、 何 とか 一 つ 一 つ 解 決 し、 仕 事 も順 調 にす す み 、 生 活 保 護 か ら 自立 へ と向 か い ます 。 まず は、 「家 賃 」 で す。 も う少 し安 い家 賃 の と こ ろへ 引 越 しす れ ば 生 活 が 楽 に な る と考 え て1さ ん と相 談 す る と、 「ボ ク み ん な に助 け て も らわ ん な 無 理 や し、 この 地 域 で しか あ か ん とお も うね ん 。 団 地(公 営 住 宅) に入 れ るか な」 とい うの で 募 集 時 に応 募 す る こ とに な りま した。 そ の 後 順 調 に進 み 、 雇 用 期 間 も延 長 に な り年 度 末 ま で働 け る よ う に な ります 。 後 は1さ. ん が 雇 用 期 間 を しっ か り勤 め あ げ る こ と と思 っ て い た 矢 先 の 出 来 事 で す 。. 「藤 本 さ ん、1さ. ん あ ばれ て る。 ち ょ っ と来 て 」 と保 護 者 会 の 役 員 さん か ら連 絡 が. 入 りま した。 事 務 所 で1さ ん と話 し合 うが 冷 静 に話 せ な い。 「あ ば れ て い な い 」「助 け て ほ しい 」 「も う、 仕 事 続 け られへ ん 」 を 繰 り返 す だ け。 「ひ とつ ひ とつ 話 し を し ま し ょ う。 い い で す か 。 あ ばれ た の?」 「ち ょ っ と大 きな 声 を出 した 。」 「な ん で?」 「あ い さつ して も返 事 して くれ へ ん 親 が い る。 いつ もや1前 か らや1」 「何 を助 けれ ば い い の?」 「夫 が 来 る って 言 って い た 。 どつ か れ る。 怖 い ね ん」 「で も1さ ん 、 ほ め られ た行 動 で は な い ね。 助 け るた め に は あ ん た が あ や ま る事 が まず 、 第 一や と思 う け ど、 い い な!」 一11一.
(12) 人権問題研究所紀要. 程 な く1さ ん と ひ と悶 着 あ っ た女 性 の夫 が え らい剣 幕 で や っ て き ま した 。1さ ん は私 の後 ろ に隠 れ て 出て き ませ ん 。 私 とそ の 保 護 者 の 二 人 で 話 す こ と にな り、 今 日 の 状 況 や これ まで の1さ ん の こ と を話 し ま した 。 彼 は何 も言 わ ず 、 黙 って 聞 い て く れ ま した 。彼 は 、 異 様 な緊 張 感 の 中 で 事 務 所 に い る1さ ん の も とへ 行 き、 「お っ さ ん 、 相 手 女 や ろ 、 み ん な に、 応 援 して も う て て ん や ろ」 「お っ さん 、 ア ホ か、 もっ た い ない こ とす る な」 とい って 事 務 所 を後 に し ま した 。1さ ん は し っか り頭 を下 げ て い ま した 。 「1さ ん仕 事 、 明 日か ら どうす る?」 「も う、 行 か れへ ん。 や め る」 そ れ 以 上 わ た し も1さ ん に は言 い ませ ん で した 。. そ の 後 も努 力 を続 け た1さ ん は今 、 某 大 学 の 清掃 員 と して 働 い て い ます 。 市営 住 宅 に も運 よ く入 居 で き ま した 。 地域 就 労 支援 事 業 が あ れ ば こそ 実 現 した 、 生 活保 護 か らの 自立 の取 り組 み で す 。. [4]発 (1)人. 想 の転 換 権行政のイメージ改革. 人権 行 政 の イメ ー ジを たず ね る と、 え て して狭 い 。 人権 を 守 りま し ょ う と市 民 に 広 報 す る 啓 発 行 政 と と らえ た り、 差 別 を受 け て い る 人 び と に対 す る特 別 対 策 とイ コー ルで 結 ぶ 人 も多 い 。 行 政 内 で は、 「人権 と名 の つ く部 局 が 担 当 して い る職 務 で あ る 」 と解 釈 され が ち で あ る。 確 か に 、啓 発 行 政 や差 別 を受 け て い る 入 び とへ の取 り組 み が 人権 行 政 で あ る こ とに 間違 い は な い。 人権 担 当部 局が 所 管 して い る分 掌 で あ る こ と も正 しい。 しか し、 人権 行 政 の意 味 は本 当 は もっ と広 くて多 面 的 な もの で は な い だ ろ うか 。 「人 権 」 の 定 義 は い ろ い ろ な され て い るが 、 人 問 は 他 の 生 物 と同 じ く自然 存 在 で あ る こ とを踏 ま え れ ば、 生 きて い くこ と、 つ ま り安 心 して暮 ら して い く権 利 が 「人 一12一.
(13) 地域就労支援事業 と自治体財政 の改善. 聞 の 権 利 」 の 不 可 欠 な 側 面 で あ る と考 え られ る。 同時 に、 人 聞 は他 の生 物 と異 な り 社 会 的 存 在 で あ る こ と に注 目す る と き、 他 者 と豊 か につ なが り、 社 会 の一 員 と して 相 互 に認 め られ て 生 きて い く権 利 も 「人 聞の 権 利 」 の欠 け て は な らな い側 面 とい え よ う。 これ らの こ と を逆 に言 え ば、 人 権 侵 害 の 典 型 で あ る 「差 別 」 とは、 生 活 実 態 の 厳 しさや 社 会 的 孤 立 と して 姿 を表 して い る とい う こ とに な る。 「人 権 」 につ い て 理 屈 を並 べ て し ま った が 、 人権 行 政 の ベ ー ス で あ る 「人 権 」 が こ の よ うな もの で あ る こ とを 考 え る と き、 「働 く」 とい う こ とが 人権 行 政 の はず し て は な らな い 重 要 な課 題 で あ る こ とが 見 え て くる。 「働 く」 と は生 活 の 糧 を得 て暮 ら しを立 て て い くこ とで あ り、 「働 く」 と は他 者 との協 働 と い う社 会 参 加 の 最 も基 本 的 な形 で あ るか らで あ る。 この と き、 「失業 者 に もな れ な い 失 業 者 」 が存 在 し、 「失 業 者 」 を対 象 に した雇 用 行 政 か らも抜 け落 と され て い る市 民 に焦 点 を 当 て て、 こ う した人 び との就 労 支 援 を 行 う こ と は、 む しろ 人 権 行 政 の 真 髄 で あ る とい え よ う。 市 民 の生 活 を最 前 線 で守 っ て い る市 町村 行 政 が 、 そ の 総 合 力 を発 揮 して、 就 職 困 難 者 の就 労 支 援 に乗 り出す も の と して あ る地 域 就 労 支 援 事 業 は、 人 権 行 政 そ の もの で あ る とい え る。 こ う した 取 り組 み には お 金 が か か る。 人 権 行 政 が 自治 体 財 政 悪 化 の 「元 凶」 で あ るか の よ う に主 張 す る 人 び と もい る。 行 政 と して取 り組 むの だか ら、 人 権 の課 題 遂 行 に も経 費 が 必 要 な こ とは 当 然 で あ る。 地 域 就 労 支 援 事 業 も しか りで あ る。 しか し そ の 取 り組 み が 、ジ ワ リ と して で は あ る が 、財 政効 果 も発 揮 し始 め て い る の で あ る。 この 事 実 を受 け 止 め た い 。. (2)「 行 政 の福 祉 化 」 と い う発 想 地 域 就 労 支援 事 業 の 実 質 的 な 発 案 者 で あ る冨 田 一 幸 さん(大 阪 市 地 域 就 労 支 援 セ ン ター所 長)は 、 行 政発 注事 業 の 入 札 の 際 に、 価 格 だ け で はな く環 境 問 題 や 障 害 者 雇 用 な ど に対 す る取 り組 み 状 況 も評価 の 対 象 とす る 「総 合 評 価 一 般 競 争 入 札 制 度 」 を 大 阪府 や大 阪市 に お い て 具体 化 した 功 労 者 で もあ る 。 これ に よ って 、 今 多 くの 障 一13一.
(14) 人権 問題研究所紀要. 害者 が大 阪府 や大 阪市 の施 設 に お け る清 掃 事 業 を担 っ て い る(詳. し くは 、大 阪 知 的. 障害 者 雇 用促 進 建 物 サ ー ビ ス事 業 協 同組 合 編 『エ ル ・チ ャ レ ンジ ー入札 制 度 に い ど ん だ 障 害 者 雇 用 』 解 放 出 版社)。 行 政 の 業 務 や 仕 組 み を福 祉 とい う観 点 か ら少 し変 え る だ け で 、 障 害者 の雇 用 の場 が 開拓 で きて い くで は な い か とい う提 案 は 、 こ れ ま で の 「障 害者 対 策」 の発 想 を大 き く塗 り替 えつ つ あ る。 「行 政 の 福祉 化 」 とい う こ う した 発 想 を考 案 した 申 川 治 さん(大 阪18区 院議 員 で捲 土 重 来 を期 して い る)は 、大 阪府 議3期 算 委 員 会(2004年3月)で. の元 衆議. で の実 績 を踏 ま え て 、 国会 の予. 、 国 も こ う した 視 点 を持 つ べ きで あ る こ と を指 摘 した 。. そ して 、取 り組 み の財 政 面 で の プ ラ ス効 果 を 次 の よ うに語 っ た 。 「既 に就 労 訓練 あ るい は民 間企 業 に雇 用 さ れ て 、 大 阪 府 庁 の 本 館 で働 い て い る知 的 障害 の 人 た ち は 、多 分 、1日4時. 聞 ぐ らい の労 働 で、 月6万 円 ぐ らい の収 入 に な. ります 。 こ の 人 た ち が 、 お 父 さ ん お母 さ ん が亡 くな ります と、 大 体 生 活 保 護 に な る わ け で あ り ます 。 そ う します と、 大 体17、8万 に な ります 。6万. 円 ぐ らい の生 活 保 護 費 を も らう こ と. 円 を 自力 で稼 ぎます と、 本 人 に6万 円 ふ え る ん で は な い。6万. 助 か る の は 、 国が3万. 円、 市 町村 が3万. 円. 円。 結 局 は、 生 活 保 護 費 だ とか福 祉 の 費用. は低 くな る。 こ うい う形 で 、 行 政 全 体 の コス トと して は プ ラス に な る ん じ ゃ な い か」。 地 域 就 労 支 援 事 業 が 、 こ う した新 しい 人権 と福 祉 の発 想 か ら育 ま れ て き た こ とが わか る。同時 に この 取 り組 み は、分権 と 自治 の 時 代 を象徴 す る 先駆 的 実践 で もあ る 。 そ れが 、 自治 体 財 政 の改 善 に も確 か な効 果 を持 ち始 め て い く もので あ る こ と に 関心 を寄 せ た い。. なお 本 稿 の作 成 に 当 た って は、 和 泉 市 都 市 デザ イ ン部 の 竹 田竜 彦 次 長 、 環 境 産 業 部 労 働 政 策 課 の小 林 信 子 課 長 、 八 尾 市 地 域 就 労 支 援 事 業 コー デ ィ ネー ター の 藤 本 高 美 さ ん に大 変 お 世 話 に な った 。 厚 く謝 して 、 筆 をお きた い 。. 一14一.
(15) 地域就労支援事業 と自治体財政の改善. 〔参 考 図 書 〕 ・社 団 法 人 お お さか 人 材 雇 用 開 発 人権 セ ン ター(編)『 労 支援 事 業』(2005年3月. 解 放 出 版 社). 一15一. お お さか 仕 事 探 し一 地 域 就.
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