出会いに支えられて
発達障害の 子機構研究への道のり
三
井
真
一
縁あって昨 2011年 8月より本学保 学研究科に参り ました三井と申します. ようやく 1年が過ぎて落ち着い て来ましたところ, 本稿を仰せ付かりましたので, ご挨 拶をかねてお引き受けいたしました. 私は北海道大学理学部を卒業後, 同大学大学院理学研 究科修士課程修了, 名古屋大学大学院理学研究科博士課 程を単位取得後中退し,花王 (株)基礎科学研究所に研究 員として 1991年 4月に入社いたしました. 大学院では 植物を材料に 子生物学的解析を行ってきましたが, 花 王では育毛剤開発にかかる基礎研究を主に行いました. 当時はまだバブル期の余韻が残っており, 商品開発の傍 ら企業においても純粋な基礎研究を行うことができまし た.順天堂大学皮膚科学教室の坪井良治先生 (現・東京医 科大学皮膚科学教室主任教授) のご指導の下, 毛母細胞 の 化誘導機構などについて解析いたしました. 民間企 業でのフラットな組織体制や組織改革のスピード感は今 でも印象に強く残っており, 今後の教室運営等に活かせ ることができればと思っております. 1997年 7月より京都府立医科大学付属脳・血管系老化 研究センター細胞生物学部門に助手 (現在の助教) とし て勤め始めました.山口希先生 (現・介護老人保 施設マ ムフローラ施設長) のもとで脳内に発現する新規なセリ ンプロテアーゼのクローニングと性状解析を行いまし た.記憶・学習に重要な neuropsinのヒト特異的なアイソ フォーム や hippostasin, spinesinな ど の 新 規 な プ ロ テ アーゼを見いだしました. また, 血中 hippostasinの前立 腺癌マーカーとしての有用性や髄液中の neurosinのア ルツハイマー病との関連などを明らかにしました. 私 は, いくつかのドメイン構造を持ち, 発達期の海馬で発 現が高まることを明らかにした motopsinの機能につい て特に興味を抱いていました. 2001年にサンディエゴで 開かれた北米神経科学会の広い会場を歩いている際に大 学院で同級であった Yuqing Li博士 (現・フロリダ大学 神経学講座教授) と偶然再会しました. 当時, Li博士は MIT の利根川研でのポスドク生活を終えてイリノイ大 学へ移り, ジストニア発症の原因となる遺伝子 DYT1や sgceのノックアウトマウスの作製に取りかかろうとし ていました. その場で motopsinのノックアウトマウス の作製を共同で行うことを提案すると快く引き受けてく れました. Motopsinノックアウト ES細胞株を取得して いた 2002年の冬にフランスのグループから motopsin 遺伝子内の 4bpの欠損がヒトで重篤な精神遅滞を引き 起こすことが報告され, ノックアウトマウスの作製を急 がなければならなくなりました. Motopsin ノックアウトマウスのキメラマウスが取れ 始めた 2004年 4月には, 高知医科大学解剖学教室 (由利 和也教授) に移動することになりました. 着任した半年 後の 10月には旧高知大学と統合され, 高知大学医学部 と組織名が変わりました. 高知大学では慣れない解剖学 教育に四苦八苦しながらも由利教授には自由に研究をや らせていただきました. まず, motopsinの生化学的性状 や脳内局在などの基本性状を明らかにしました. そうこ うしているうちに motopsinノックアウトマウスを取得 63 Kitakanto Med J 2013;63:63∼64 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科リハビリテーション学講座 平成24年11月30日 受付 論文別刷請求先 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科リハビリテーション学講座 三井真一することができました. それまでマウスの行動解析の経 験は皆無でノックアウトマウスの行動解析を如何に行う か, 思案していました. 幸い由利研究室にいた大迫洋治 助教 (現・准教授)がラットを用いて行動解析を行ってお り, 協力を得ることが出来ました. 研究資金が潤沢にあ るわけでなく, 二人で種々の実験装置を手作りで作製し ながら研究を進めていきました. その結果, motopsin ノックアウトマウスの異常な社会行動の亢進や海馬の機 能と形態の異常などを明らかにすることができました. 同じ頃, スイスのグループが, 細胞外プロテオグリカン の agrinを motopsinが神経活動依存的に切断すること でフィロポディア形成を誘導すると報告しました. これ らのことから, motopsinがフィロポディア形成を介して 社会行動に関わる高次脳機能を制御する重要な因子であ ることが明らかになってきました.Motopsinノックアウ トマウスの解析が一段落し, ようやく解剖学教育にも慣 れた 2011年に本学保 学研究科の解剖学担当教授の職 に応募したところ採用していただき, お世話になってい る次第です. こうしてこれまでの研究生活を少し振り返ってみます と諸先生方との出会いによって研究が進展していくこと を改めて感じ, 感謝の念に堪えません. 昨年より活動の 場を本学に移し, motopsinの機能解析に加えて一夫一婦 制を示すプレリーハタネズミを用いて研究を進めて参り たいと えております. これからも様々な先生方との出 会いによって研究の進展があるだろうと期待に胸を躍ら せているところです. 本稿を読まれている先生方にもお 世話になることがあるかもしれませんが, その節には宜 しくお願い申しあげて筆を置くことにいたします. 文 献
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2. Mitsui S, Okui A, Uemura H, et al. Decreased cere-brospinal fluid levels of neurosin (KLK6), an ageing-related protease, as a possible new risk factor for Alz-heimers disease. Annal NY Acad Sci 2002; 977: 216-223.
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