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医療と情報:第2部 身体情報を医療と結びつける情報学:5.ユビキタスコンピューティング技術を活用した共同注視解析・断層画像閲覧支援の試み

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Academic year: 2021

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(1)特集. Special Feature. [医療と情報 第 2 部 身体情報を医療と結びつける情報学]. ⑤ ユビキタスコンピューティング. 基 応 専 般. 技術を活用した共同注視解析・ 断層画像閲覧支援の試み. 杉本麻樹. 慶應義塾大学理工学部. 小澤宏之 林田 哲. 慶應義塾大学医学部. ユビキタスコンピューティング技術と 医療情報提示・再生支援. 患部には,CT で撮像された断層画像と位置合わせ.  ユビキタスコンピューティング技術の普及により. 枠組みとして,ウェアラブルデバイスを用いた集合. 多様な形態での医療情報の記録・閲覧が可能となっ. 的視線情報解析の試み 1)を紹介する.. てきている.情報機器の遍在化や小型化によって,.  内視鏡手術においては執刀医と内視鏡操作医の両. 手術室をはじめとした医療環境において医師や患者. 方が内視鏡からの映像を画像提示装置と正対した状. の身体と密接な情報の記録・提示が可能となってき. 態で閲覧できるように,2 つの画像提示装置を別々. ている. 本稿では,医療従事者の身体に装着したウェ. に配置することが行われる.. アラブルデバイスやタブレット型情報端末を活用し. 図 -2 に,画像提示装置の手術室内での配置を示. た共同注視解析と実環境の情報端末と患部の位置・. す.2 名の医師,それぞれの正面には,同一の内視. 姿勢を考慮した断層画像閲覧支援の試みについて紹. 鏡映像を表示する画像提示装置が配置されており,. 介を行う.. 視認している映像は同じものであるが物理的には異. を行うために再帰性反射マーカが設置されている.  こうした内視鏡手術における共同注視を解析する. なる画面を閲覧しながら協働作業を行っている形と. ウェアラブルデバイスを活用した一人 称視点映像からの共同注視解析. なる.  協働作業においては,一般的に作業者同士が互い.  協働作業においては,互いの注意を共有すること が重要であると考えられる.内視鏡手術においては, 視点を操作する内視鏡操作医と,切削を行う術具を 持ち患部の切開や腫瘍の切除を担当する執刀医が連 携して,適切な視野の確保と施術を行うことが一般 的である.  図 -1 に内視鏡手術(脳下垂体腫瘍切除手術)に おける執刀医と内視鏡操作医の様子を示す.2 名の 医師の手元には,患者の頭部が位置しており,経鼻 で内視鏡と切削を行う術具が挿入されている.また, 336. ■図 -1 手術室における執刀医と内視鏡操作医. 情報処理 Vol.60 No.4 Apr. 2019 特集 医療と情報 第 2 部 身体情報を医療と結びつける情報学.

(2) の意図を理解しながら作業を行うことが重要である.. 図 -3 に提案システムの概略を示す. . 特に内視鏡手術においては,単一の視点を内視鏡操.  図 -4 に提案したシステムにより視線計測を行っ. 作医と執刀医が共有しているため,施術を行うため. ている様子を示す.ウェアラブルデバイスの計測結. に適切な視点を確保する上で,両者が互いの意図を. 果は,装着者の座標系に依存する.この研究で使用. 理解していることが大切であると考えられる.そこ. している視線計測装置の場合,デバイスに装着され. で,両者の共同注視を解析することにより,どのよ. ている一人称視点カメラの 2 次元画像座標系での注. うに注意が共有されているかを解析するシステムを. 視情報を取得することができる.. 構築している..  こうした情報を共通の座標系で解析を行うために.  こうした手術室内においては,実際の内視鏡操作・. は,座標系を統一することが必要となる.このシス. 執刀を行う医師以外にも,看護師や研修医など多く. テムでは,内視鏡映像を表示する画像提示装置の周. の人物が存在する.固定型の視線解析装置を使用す. 囲に基準となるマーカを配置することで,画像提示. る場合においては,こうした手術室の環境が計測の. 装置上に表示されている映像によらず座標系の統一. 外乱要因となり得ることが考えられる.. を行うことができる..  そこで,提案の枠組みでは,ウェアラブルデバイ.  図 -5 に内視鏡操作医の一人称視点映像と,執刀. スを用い複数の視点からの視線情報を集合的に解析. 医と内視鏡操作医の視線情報を内視鏡画像の座標系. することによって,共同注視解析を可能としている.. に統一して表示している映像の一例を示す.. ■図 -2 内視鏡映像を表示する画像提示装置の配置. ■図 -4 ウェアラブル視線計測装置(Tobii Glass2)を装着した 内視鏡手術の様子. ■図 -3 集合的な視線情報を用いた共同注視解析の枠組み. ■図 -5 一人称視点映像と統一した内視鏡映像の座標系での注視点. 5. ユビキタスコンピューティング技術を活用した共同注視解析・断層画像閲覧支援の試み 情報処理 Vol.60 No.4 Apr. 2019. 337.

(3) 特集. Special Feature. 338. タブレット型端末を使用した断層画像 閲覧システム. 知覚を与えてしまうことがある.さまざまな視覚情.  医療情報としては手術映像以外にも多様な情報が.  患部の状態把握を行う上では,こうした奥行きの. 取り扱われているが,空間性を持った情報としては,. 解釈を簡便に行うことができる手法として,タブ. 手術の際の腫瘍位置の把握や診断に使用される医療. レット型の端末とラインレーザ投影装置を用いたイ. 用断層画像がある.. ンタフェース 2)の提案を行っている.図 -6 に提案.  医療用断層画像は,CT(Computed Tomogra-. システムを 3 次元造形装置でプリンティングした胸. phy) ,MRI(Magnetic Resonance Imaging),超音. 部の人体模型の上で使用しているシーンを示す.. 波などの撮影手法が一般的であり,体内の組織の状.  この研究においては,タブレット型の情報端末. 態を把握する上で,欠かせない情報である.一方で,. の 3 次元空間における位置・姿勢を光学式の計測装. 断層画像の閲覧用のインタフェースとしては,2 次. 置によってトラッキングすることで,患部上での端. 元の断層画像を閲覧する方法と,3 次元再構築を行. 末の位置に応じた断層画像の閲覧を可能としている.. い幾何形状の把握をすることが行われているが,一. また,提示している断面をユーザに把握しやすくす. 般的には,コンピュータのスクリーンや手術室内の. るための工夫として,ラインレーザを患部上に投影. 術野から離れたスクリーンに提示されることが一般. することで,どの位置の断層画像を画面上に表示し. 的であり,患部との対応を理解する上では,経験が. ているかを明示する実装を行っている.図 -7 にタ. 求められる.. ブレット端末に装着したラインレーザプロジェクタ.  また,患部に密接な医療情報の閲覧を実現する手. の様子を示す.. 法としては,拡張現実感技術を用いた試みが行われ.  一般的に医師が習得している断層画像から患部を. ている.映像透過型や光学透過型のスクリーンを用. 把握する能力を活かしつつ,断層画像と患部との対. いて,患部の視覚情報に対して断層画像や 3 次元再. 応を把握しやすくする試みとして,タブレット型端. 構築を行ったモデルを提示する手法が提案されてお. 末をかざした面の断層画像を記録してある情報から. り,非常に優れた機能性を示している.. 合成してレンダリングすることで,メンタルロー.  一方で,こうした直接的な視覚情報の重畳を行う. テーションによる認知的負荷を低減しつつ,奥行き. 場合には,複数の情報の視覚手がかりが重なって提. 情報の一意な解釈を可能としている.. 示されるため,現実世界と整合性がとれない奥行き.  このように情報提示を行う端末の位置・姿勢を考. ■図 -6 タブレット型情報端末を用いた断層画像閲覧インタ フェース. ■図 -7 タブレット型情報端末に取り付けたラインレーザプロ ジェクタ. 報の整合性を考慮しなければ,提示されている視覚 情報の奥行きを適切に把握することが行えない.. 情報処理 Vol.60 No.4 Apr. 2019 特集 医療と情報 第 2 部 身体情報を医療と結びつける情報学.

(4) 慮することによって,空間性を踏まえた理解しやす い情報の閲覧を実現するヒューマンインタフェース の構築を行うことができる.. ユビキタスコンピューティング技術と 医療情報の今後の展望. 参考文献 1) 塩田智生,伊藤勇太,藤岡正人,小澤宏之,戸田正博,杉本麻樹: 内視鏡下協働手術における集合視を用いた共同注視解析,日 本コンピュータ外科学会誌,20 巻 4 号,p.274 (2018). 2 )Shimamura, S., Kanegae, M., Morita, Jun, Uema, Y., Takahashi, M., Inami, M., Hayashida, T., Saito, H. and Sugimoto, M. : Virtual Slicer : Visualizer for Tomographic Medical Images Corresponding Handheld Device to Patient, The International Journal of Virtual Reality, Vol.15, No.1, pp.10-17 (2015). (2019 年 1 月 22 日受付).  本稿においては,ユビキタスコンピューティング 技術を活用した医療従事者の共同注視解析と断層画 像の閲覧支援を行うインタフェースについて紹介し た.医療などの専門分野においては,医師や患者と 密接な情報支援を行うインタフェースの持続的な研 究が進むことが期待されている.特にユビキタスコ ンピューティング技術を活用して多くの情報を蓄積 するとともに,記録した情報の活用を行うために空 間性を考慮した情報解析・提示を通じて,大量の記 録情報から柔軟に必要とされる情報へアクセス可能 とすることが重要であると考えられる.. 謝辞 本稿で紹介した研究の一部は,JST CREST(JPMJCR14E1)の支援 を受けたものである.. 杉本麻樹(正会員) 2006 年電気通信大学大学院電気通信学研究科博士後期課程機械制 御工学専攻修了.博士(工学) .慶應義塾大学理工学部情報工学科准 教授.ウェアラブルデバイスを活用したセンシングや複合現実感に関 する研究に従事.. 小澤宏之 1998 年慶應義塾大学医学部卒業.博士(医学) .日本耳鼻咽喉科学 会専門医,頭頸部がん専門医・指導医.慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉 科専任講師.頭頸部癌における低酸素誘導因子発現の転移への影響に 関する研究に従事.. 林田 哲 1998 年慶應義塾大学医学部卒業.博士(医学) .日本乳癌学会 専 門医・評議員.慶應義塾大学医学部一般・消化器外科専任講師.乳癌 における効果予測因子の検証に関する研究に従事.. 5. ユビキタスコンピューティング技術を活用した共同注視解析・断層画像閲覧支援の試み 情報処理 Vol.60 No.4 Apr. 2019. 339.

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