余白の効果について : 尾形光琳筆《燕子花図屏風》を中心に
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(2) ながら、また日本人の精神面から探っていく。. 《燕子花図屏風》の主題は『伊勢物語』第九. そして日本の絵画に余白が必然的に生まれた. 段「八橋」とされている。しかし、そこには物. ことを述べていきたい。. 語上の世界だけではなく、リアリティが生まれ. 歴史的側面からは、余白のもとになっている. ている。光琳は生涯にわたって燕子花を様々な. と思われる重要な出来事や領域をとりあげて. 形で描いている。これらの作品を分類すること. いく。まずは日本絵画に最も影響を与えた中国. で、《燕子花図屏風》は物語性の薄い絵画であ. 絵画についてである。中国絵画にも余白は存在. り、光琳がその構図や造形的な形にも興味を抱. するし、歴史的にみても中国の古代思想が日本. いていたことが認められた。. の余白のもとにあるのは明白である。その中国. また、この作品は装飾的と評されることが多. 絵画による影響を受け入れながら、また拒みな. いが、装飾性の本質が平面性にあり、それはま. がら日本は独自の絵画を発展させてきた。. た日本人の感覚が生み出したものであること. また本稿は室町時代以降に盛んに制作され. も理解できた。. た大画面の障屏画にスポットをあて考察を進. 第3章では、前章で出た抽象性と平面性とい. めていく。障屏画は建築という人間の生活空間. うキーワードを手がかりに、日本絵画の特徴と. と切り離せない関係にある。障屏画はそれをと. してあげられる「余白」の共通した意義につい. りまく周囲の空間と相互にはたらきあう性質. て考察していく。. を持ち、観賞者の感覚がより必要とされるため. 日本人には縮みの志向があり、それが絵画に. 余白の効果を考察するのに最もふさわしいと. もあらわれている。《燕子花図屏風》に描かれ. 考えた。. ている燕子花の見える形は、凝縮され、一種の. 次に日本人の精神的側面から余白を見てい. 単純化が見られる。またそれは対象を抽象的な. く。そこから日本の絵画において余白は必然的. 形にしていると言える。. に生まれることを記述している。. そして日本人は絵画に好情的な趣きを求め. 第2章では、1章で述べた障屏画の作品と作. ていた。この好情性を引き出すには装飾性を強. 家を検証する。ここでは尾形光琳筆《燕子花図. めることが必要になる。よって日本の美術が装. 屏風》を中心に、作品の持つ余白について検証. 飾的と言われることが多いのだ。この装飾性の. していく。. 原理は平面性にある。日本の絵画は装飾的であ. 尾形光琳は江戸時代に活躍し、琳派を代表す. り、平面性が強いと言える。. る画家の一人である。光琳に最も影響を与えた. この二つの要素が見事に含まれているのが. 画家として俵屋宗達をあげることができる。光. 《燕子花図屏風》と言えるのではないだろうか。. 琳は宗達の意志を継ぎ、金地の余白をいっそう. 《燕子花図屏風》において、金地の余白と描. 平面化したと言える。これによって金地の余白. かれている対象物は同価値である。凝縮し、省. は、何もない空間ではなく造形的な空間になっ. 略されたものが余白には含まれているのであ. た。光琳の代表作である《燕子花図屏風》には. る。余白がなければ燕子花も成立しないのであ. この金地の余白があらわれており、その効果を. る。対等の価値を持つ余白は対象物を補い成立. 一番引き出すことに成功している絵画と言え. させるものであり、絵画の 要素なのである。. る。この絵画は、奥行きを一切感じさせない遮 断された金地の平面、そして燕子花の簡略化さ. 主任指導教員 大西 久. れた図から成っている。. 指導教員 喜多村 明里. 一379一.
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