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余白の効果について : 尾形光琳筆《燕子花図屏風》を中心に

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Academic year: 2021

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(1)余白の効果について 一尾形光琳筆《燕子花図屏風》を中心に一 教科・領域教育学専攻.  芸術系コース・美術       1M[10209D.       上山 緑 1、研究動機と員的.   第1項 中国絵画と日本への影響.  国際化への対応が迫られる現在の社会にお.   第2項 絵巻物の登場. いて、日本の伝統文化を理解しながら美術文化.   第3項 障屏画について. の発信をしていくことが必要になってきてい.  第2節 日本人のものの見方. るのではないだろうか。私はこれまで以上に自.   第1項 日本人の持つ「ま」. 国の美術文化、伝統文化の独自性について考え.   第2項 同本の自然. る必要があると考える。.   第3項あらわれた余白.  日本の絵画の特徴といえば様々あげられる. 第2章 余白の種類・スタイル. が、その中の一つに余白がある。この余白が生.  第1節 日本絵画の変遷. まれたのは、日本の湿度の高い風土が背景にあ.  第2節 尾形光琳について. ることや、詩的情緒性を強調するためなど諸説.   第1項 尾形光琳の略歴. ある。しかし、日本の風景がいつも霞や霧につ.   第2項 俵屋宗達の略歴. つまれているわけではない。日本絵画の余白に.   第3項 宗達の影響と光琳の独自性. は、何も描かれていないが、何もあらわしてい.  第3節 尾形光琳筆《燕子花図屏風》. ないわけではない。余白は日本絵画において多.   第1項 《燕子花図屏風》について. くの意味を込めて使われている。.   第2項 物語性について.  余白は描かれているもの同士が働きあう場.   第3項 装飾性と写実性. とする考え方のうえに成立している。最低限の.   第4項 装飾性の原理. ものだけを描いて、あとは空自にしておく。凝.   第5項 平面的な絵画. 縮性をつきつめてきた究極の表現であった。こ. 第3章 余白の意義. の本質性は余白の根本原理である。.  第1節 凝縮化され生まれる抽象性.  本稿では、尾形光琳筆《燕子花図屏風》を中.  第2節 優美なもの. 心に余白の検証をし、日本の画家達が余白に見.  第3節 抽象性と平面性. 出していた意義について考察していく。.  第4節 描かれているものと余白の関係. 2、請文の構成. おわりに. はじめに. 3、請文の概1要. 第1章条自を生んだもの.  第1章では、余白を生み出してきた様々な要.  第1節 日本絵画の特徴. 因と変化について、日本絵画の歴史をふり返り. 一378■.

(2) ながら、また日本人の精神面から探っていく。.  《燕子花図屏風》の主題は『伊勢物語』第九. そして日本の絵画に余白が必然的に生まれた. 段「八橋」とされている。しかし、そこには物. ことを述べていきたい。. 語上の世界だけではなく、リアリティが生まれ.  歴史的側面からは、余白のもとになっている. ている。光琳は生涯にわたって燕子花を様々な. と思われる重要な出来事や領域をとりあげて. 形で描いている。これらの作品を分類すること. いく。まずは日本絵画に最も影響を与えた中国. で、《燕子花図屏風》は物語性の薄い絵画であ. 絵画についてである。中国絵画にも余白は存在. り、光琳がその構図や造形的な形にも興味を抱. するし、歴史的にみても中国の古代思想が日本. いていたことが認められた。. の余白のもとにあるのは明白である。その中国.  また、この作品は装飾的と評されることが多. 絵画による影響を受け入れながら、また拒みな. いが、装飾性の本質が平面性にあり、それはま. がら日本は独自の絵画を発展させてきた。. た日本人の感覚が生み出したものであること.  また本稿は室町時代以降に盛んに制作され. も理解できた。. た大画面の障屏画にスポットをあて考察を進.  第3章では、前章で出た抽象性と平面性とい. めていく。障屏画は建築という人間の生活空間. うキーワードを手がかりに、日本絵画の特徴と. と切り離せない関係にある。障屏画はそれをと. してあげられる「余白」の共通した意義につい. りまく周囲の空間と相互にはたらきあう性質. て考察していく。. を持ち、観賞者の感覚がより必要とされるため.  日本人には縮みの志向があり、それが絵画に. 余白の効果を考察するのに最もふさわしいと. もあらわれている。《燕子花図屏風》に描かれ. 考えた。. ている燕子花の見える形は、凝縮され、一種の.  次に日本人の精神的側面から余白を見てい. 単純化が見られる。またそれは対象を抽象的な. く。そこから日本の絵画において余白は必然的. 形にしていると言える。. に生まれることを記述している。.  そして日本人は絵画に好情的な趣きを求め.  第2章では、1章で述べた障屏画の作品と作. ていた。この好情性を引き出すには装飾性を強. 家を検証する。ここでは尾形光琳筆《燕子花図. めることが必要になる。よって日本の美術が装. 屏風》を中心に、作品の持つ余白について検証. 飾的と言われることが多いのだ。この装飾性の. していく。. 原理は平面性にある。日本の絵画は装飾的であ.  尾形光琳は江戸時代に活躍し、琳派を代表す. り、平面性が強いと言える。. る画家の一人である。光琳に最も影響を与えた.  この二つの要素が見事に含まれているのが. 画家として俵屋宗達をあげることができる。光. 《燕子花図屏風》と言えるのではないだろうか。. 琳は宗達の意志を継ぎ、金地の余白をいっそう.  《燕子花図屏風》において、金地の余白と描. 平面化したと言える。これによって金地の余白. かれている対象物は同価値である。凝縮し、省. は、何もない空間ではなく造形的な空間になっ. 略されたものが余白には含まれているのであ. た。光琳の代表作である《燕子花図屏風》には. る。余白がなければ燕子花も成立しないのであ. この金地の余白があらわれており、その効果を. る。対等の価値を持つ余白は対象物を補い成立. 一番引き出すことに成功している絵画と言え. させるものであり、絵画の 要素なのである。. る。この絵画は、奥行きを一切感じさせない遮 断された金地の平面、そして燕子花の簡略化さ. 主任指導教員 大西 久. れた図から成っている。. 指導教員 喜多村 明里. 一379一.

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