数学教育における「証明」についての基礎的研究 : 「意識されたパターン」について
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(2) . 北海道教育大学紀要 (自然科学編) 第49巻 第1号. 平成10年8月. lo fHokka i iver i ) VOL49 do Un ISc i tyofEducadon (Na I Journa tura s ences ‐ ,No. Au l犯st l998. 数学教育にお ける 「証明」 についての基礎的研究 - 「意識さ れたパ ターン」 について-. 杉山 佳彦 北海道教育大学釧路校数学研究室. FundamentaJ Stud i Si ion es on Proof ] n 公江athemahcs Educat - on shematain reasoning -. YoshihikoSUG ] 霞 ÷AMA Ma l ぬemabcsLabora b 直 rocamPus t o 1γ,Kus , Hokka i do Un i i fEducado珠 tyo vers. 1.は じめ に. 筆者はこれまでに, 主として数学的推論における数学的形式の機能としては ) ) 解釈の多義性を排除する機能1 1 2 ) 判断のもっともらしさを比較するための対象としての機能2 } の二つ につ い て述 べ てき た.. ) については, 具体物に対する操作から 「ある自然数を9で割ったときのあまりは, その自然数の各位の 1 数の和を9で割ったあまりに等しい」 という命題をおは じきなどの具体物 に対する操作から帰納する事例に よった. そしてそこでは, この命題に対する形式的証明の背後にはそこで行ったような具体物に対する 「操 作の系列」 がひそんでおり, それなしでは形式的証明の理解がなされえないことを述べた. 一方, この具体 物に対する 「操作の系列」 は説明しようとする当の命題以外のものをも 同時に帰納しうることを指摘した . それゆえ, ここでの具体物に対する 「操作の系列」 と 「形式的証明」 との間の関係は 前者が一方的に後者 , を指し示すという関係ではなく, 後者が前者に対する解釈に拘束を与える同時に 拘束を与えられたものと , しての前者が後者を指し示す, という相互作用 するものとしての関係にある. このn解釈に拘束を与え られたものとしての 「操作の系列」 ” を, 「意識 さ れたパ ター ン」 とよ ぶ. 本稿でいう 「操作」 は具体物に対する操作には限らない. そこには数に対する操作 (数計算) 文字に対 , する操作 (文字計算) 等をも含む. 本稿 で は, 第 2 節 にお い て, こ の 「意 識 さ れたパ タ ー ン」 の 本研 究 に お ける 重 要 性 を 指摘 し つ い で 第3 ,. 節において数学的推論における役割のいくつかを述べる. 2.「意識さ れた パ タ ー ン」 の重 要性. 数学的概念には操作の系列が付随する. そしてこの操作の系列と概念との結びつきはルーティ ン化されて いる. この状況下にある操作の系列は当の数学的概念に適合する形で拘束されているゆえ, 本稿でいう 「意 識さ れた パ ター ン」 である. この 観点 は A1 ) m・ as魚rdの指摘 に適合する3 .. (2 3).
(3) . 杉山. 24. 佳彦. 本研究におけるこの 「意識されたパターン」 の重要性を見るために次のような状況を想定してみよう. 状況 話者 A と話者B との間で 「二等辺三角形の両底角は等しい」 という命題につい て議論が交わさ れ て いる. 話者 B はこの命題を一般性をもったものとして話者 B に示すために, 「二等辺三角形を想像し ,. それを真ん中で折り重ねてみよ」 といったとする . そして, 話者B は 「両底角が等しい」 を 「両底角の大 きさが等しい」 と理解し, 角の大きさが等しいか否かを判定する操作的手続きとして 「分度器で測定する」 ことの みを帰属 さ せ ていた とする. さ らに, 話 者B は 「重ねる」 を 「合同」 概念にのみ帰属させていたとす る.. この状況化では話者 A が命じた操作は話者 B にと っ て はこ こでの 問題 にな っ ている 命題 に関する 限り無 意味である. これを有意味にする方策として 「合同な図形であれば, 対応する角の大きさは等しい」 という 命題を持ち出すか, あるいは 「角という図形」 という見方を用意し, 「角が等しい」 を 「角という図形が合 同」 と見ることで, 「重ねる」 という操作的手続きを 「両底角が等しい」 に結びつけねばな らない. このよ うにして, 「角の相等」 という概念に付随する 「意識されたパターン」 のレパートリーのうちに 「重ねる」 をつ け加 えね ばな らない. ま た, 話 者 B が 「合同」 概念を 「観察」 という操作的手続きに結びつけていたとすれ ば上記のようにい. ずれの方策も無意味である. この場合には 「見ればわかる」 , あるいは 「見なければわからない」 からであ る.. それゆえこの状況下では, 話者 A の説明が話者 B にとって有意味なものとして理解されるには話者 B が 「角の相等」 概念にどのような操作の系列を 「意識されたパターン」 として結びつけているかが本質的 である. こ れが 「意 識さ れた パ ター ン」 の重要性の ひとつ である.. ) もう一つ事例をあげよう4 . 次のような問題を考える. 問題 S( 1 ( )を次 のよう に定義する. n )を 自然 数列1 , ・・ と し, 以下S ,3 ,4 ,2 2 ( )は ) とする. た とえ ば, S (n 1 で割り切 れる もの に1を加 えて得 られる列 をS S 1 ( )の項 の値 で, n ‐ n ‐ 3 ( ) の最初 の n 個がすべて n 2 ( ) は3 ,5 ,7 , ・ ・ と なる. 列 S ,3 ,5 ,6 , ・ ・ となり, S ,4 ,5 ,3. n. であ. るような n を決定せよ. いくつか実験することにより, n は素数であろうことが容易に推測される. これは 「 素数」 概念に付随 2 ( )の 場 する 「意識されたパターン」 のうちに 「わり算」 に結びつくものがあるためである. そのゆえにS 」 は 「素数」 であるとみなされることになる. そしてさらにいくつかの事例を 3 」 合 の「 2 3 ( ) の場合の 「 ,S ) この観点から見直すこ とでこの 推測の妥当性はより強固になるとみえよう5 . もう一つの事例を取り上げ, 本説での主張を明らかなものにしておく. 次のよう なルー ル で数列 をつくる.. 1 ( )を初項とする数列を次のように定める. 1 ( )として, 3以上の自然数を与える. 以下, このa a. 駕篭 蓄電を 率俳優 認 こ の 数列 は どこか に2が現 れる とそ こ か ら先 は1 , ・ ・の繰り 返 しとなる. そ こ で, この 数列 に 「2」 ,1 ,2. が現れたらそこで数列を打ち切ることとする. すると, 作り方から明らかにこの数列は有限列となる. たと (2 4).
(4) . 「意識されたパターン」 について. 25. え ば, 3、 4、 2;4、 2;5、 6、 3、 4、 2;6、 3、 4、 2;7、 8、 4、 2;. 等 が得 られる。 いま, 次のよう に集合B( )を定める. n B( 0 1 = {上記の再帰的手続きを1回適用してB( 0 )2 1とし, B( ) )に属する数が得られる自然数の集合} した が っ て, B( 1 である. また, 同様にB 1 4 2 1 )= { ( )= {上記の再帰的手続きを1回適用 してB( )に属する. 数が得られる自然数の集合1. この場合B( 1 である. 以 下再帰 的 に, B(n+1)= {この手続 きを1回 適 2 =i 3 ) ,8 用 してB( }, B( 3 4 6 )の 数 が得 ら れる 自然 数の集 合} と 定 める. する と, B( )= i )= 短 12, 14, 15, n ,7 , 16. …. }, B( 32 5 10 1, )= 1 , 11 , 24 , 13 , 28 , 30 , 31 , 64 る. b( )= (B(n )に属 する 数の個 数). n す る と, 1 ,1 ,2 ,3 ,5 ,8 ,. …. を得る. これらを利用して次のような数列をつ く. が得 られる.. そ こ で次のよう な問 題を考える. こ の数列 は フィ ボナ ッ チ 数列 だと い っ てよ い だろう か?. こ れ はなか なか 同意さ れな い種類 の推 測 とい っ てよ い であろう. という の は, 通 常フ ィ ボナ ッ チ 数列 に帰 属 さ せ て いる の は c 0 1 )=c ( (n+2 )十c (n ) ( )=c ( ) n十1 ,c. という手続きだからであり, この数列に多くの手続き. を 帰属 さ せ て いる こと は希 だ と思 わ れる か ら)である. しか し, こ の フ ィ ボナ ッ チ 数列 に 「兎の増 え 方」 と い っ た 手続き を帰属 させ てい れ ば, あ り得 る こと と みえる であろう. という の は, こ こ で は 「兎」 が増 殖 す る ケース が, 「数」 が増 殖 する ケ ース に置 き換 わ っ た だ けだか らである. こ こ で取 り上 げた素 数の 事 例 と 数列 の 事例 との違 いを以 下 で考 察 してお こう. と いう の は この違 い を 区 ,. 別することがらが 「意識されたパターン」 だと考えられるからである. いずれの事例も筆者が授業であつか っ たものであるの で, そこでの状況をも紹介しながら考察を加えよう (対象は, 筆者の勤務校の数学科3年 生 である). (1). 素 数の事例 につ い て. こ こ では最初 のいくつ かの 実 験 か ら 「素 数」 である, と いう こ と に気 づ い た学 生 が 現 れた そ して そ れ は .. 直ちに他の学生の同意を得, 全体的に了解された. なぜ 「素数」 と判定してよいか, との質 問に対しては , 「割り切れるときにだけ数を変え, 割り切れないときにはそのままになるから素数が絡んでくるのは当然だ」 との説明が現れ全体の同意を得た. 一方, 「素数」 という概念にはそれ以外の自然数を積によっ てつくる際の 「原始」 としての概念化もなさ れる. この場合, 積に関する手続きが素数概念に帰属していればこの推測は容易には了承されなかったであ ろう. こ の点 は次 の 数列 の 事例 で示唆さ れる.. (2) 数列の事例について 上述 したよう に, こ の 事例 につ いて は容易 に納 得 さ れなか っ た た しか にいく ら実 験 しても フィ ボナ ッ チ . 数列 である と いう 推測 を 裏付 ける だ けなの だ が, 確信 に はいた らなか っ た こ れ は この 数列 と フィ ボナ ッ . ,. チ数列とを共通のものと見るためのなにものかが欠落していたことから起こる事態といえよう 「確かにそ . う なる の だが, な ぜか がわか らない」 と いう 状態 である とい っ てよ い . こ れは次 のよう なケース と同 じと見 てよ いであろう. F(x)=x2+x+4鼓こx=1 ,2 ,3 ,4 ,. …. を代入すると素数になる. 最初のいくつかを実験しても素数が得られ, なかなか反証はあがらない. しかし 一方ここに素数が現れ , るとするといかにも不思議なことといわねばならない. これは 「素数」 がわり算やかけ算に強く 関連するの に対 して, 足 し算 に 関連する と いう こ と を示 す もの だか らである と い っ てよ い であろう .. (25).
(5) . 杉山. 26. 佳彦. 今の 場合 は, 数列 の 事例 が正 しいの に対 し, 2 次式 の 事例 が誤 っ て いる, と い っ た ことと は何 の 関係 も な. ) の事例も2次式の 2 ) の事例がいかにもありそうなことと了解されるのに対して, ( い. そうではなく, ( 1 事例も不思議なこととして了解されない, という点に問題がある. この両者の違いを区分するものが本稿でいう 「意識されたパ ターン」 である. すなわち, 正しい・誤りと いった区分とは別に一種の必然性を帯 びたタイプの帰納とそうでない帰納とを区分するものとして現れるの である.. 3 .「意識されたパターン」 のもつ数学的推論における機能 本節では前節で述べた性格をもつ 「意識されたパターン」 が他のタイプの数学的推論においてもつ機能を 考察する. ここで扱う推論は 「類推」 と呼ばれるタイ プのものである. 次のような状況から始まる. 問題 「三角形に相当する立体はなにか」 この問題に対して, それは三角錐 (四面体) であり, それは ) 平面図形の辺に当たるものは面であること 1 ) 三角形は辺の個数が最小のものであること 2 で正 当化 できる もの である.. この回答に共通の了解が得られた後, 正三角形に相当する立体はなにかと問えば, おそらく 「正四面体」 であるとしておおかたの了解が得られよう. また, 「直角三角形」 に当たる立体は直方体のカ ドを切り落と してできる四面体であることで共通理解が得られているとしよう. この状況で, さらに 「二等辺三角形」 に 相当する立体はなにか, と問いかけたとすればどうであろうか. ) 以下の対話は筆者がこの問題を授業で行っ たときの学生たちの討議の再構成である6 . 便宜上2者の間の 対話の形に構成した. A 「二等辺三角形は2辺が等 しい. だから2面が等しいというのはどうだろう?」 B 「二面が等しい, というのは面積なのか形なのか?」 A 「面積が等しいとするといろいろいびつな形が入っ てきて, 二等辺三角形のようにきれい形にはなりそ. うにない. それに正三角形に相当する立体は正四面体であることにあわない. だから, 二面が合同とするべ きだろう.」 B 「たとえば, 直角二等辺三角形に相当する立体は何になる だろう?直角二等辺三角形だと形は一通りし. かないが, これを立体に置き換えるとうまくいかないようだ. 二面をやめて, 三面にしたら どうなる?」 A 「い っ たい どんな形 だろう か?」 B 「底面以外の三面が合同だから, 底辺は皆等しいはずだ. だから, 底面は正三角形だ. だから, 正三角. 錐だ.」 A 「直角二等辺三角形に相当する立体は?」 B 「立方体を切ってみればできるだろう.」 A. 「正方形を半分にきたときに直角二等辺ができるのと同じことか.」. B 「すると, このときも直角二等辺三角形と同じように形はただひとつになるといえそうだ.」 A. - 」 「二等辺三角形の他の性質はどうなるだろうか? (26).
(6) . 「意識されたパターン」 について. 27. B 「底角 が等 しい, 線対称, ・ ・」 A 「底角が等しいというのは” 合 同 n という 意 味にと れ ば底 面 に できる 三つ のカ ドが合 同な らいい ので は. ないか?」 B 「正三角錐は線対称ではないが, 面対称になる. 平面での辺に相当するのが立体では面になるのだとす れ ばこ れも いい だろ う.」 A 「二面が合同というのをやめて三面が合同としたのはどうだろうか?」 B 「平面は2次元, 立体は3次元・・か?」 この 事例 で は, ま ず 「二等 辺三角 形」 に 「二 辺 が等 しい」 を帰属 さ せ, この 「二辺 が等 しい」 を こ れ に関 わる 操作 の系 列 の レパ ー トリ ー のう ち か ら 「二 つ の辺 が 図形 と して 合 同 である」 を 「意識 さ れた パ タ ー ン」. として選択したことを意味する. しかし, この見方を徹底させたときに起こるはずの 「正三角形に相当する 三角錐は正四面体以外にもある」 という事態には気 づかなかった. これは正三角形と正四面体の見かけ上の 類似性 (どちらもきわめて整った形である) が強かったためと思われる. いずれにせよ, この段階ではこの判断は集団的な了承を得てはいない. 次 に 問題 にな っ た の は, 「そう だ とする と直角 二等 辺 三角 形 に相 当 する の はな にか」 という こと であ っ た.. この疑問は先ほどの 「二面が合同な三角錐」 という判断に同意しなかった学生から出されたことに注目した い. この主張をした学生ははじめから 「正三角錐」 を想定していたようであった. これも当初は見かけ上の 類似性に基づいたもののようであったが, 直角二等辺三角形に相当する立体の議論にいたって確信した. こ の確信の根拠は見かけ上の類似性ではなく 「直角二等辺三角形と正方形との関係」 と 「直角二等辺三角形に 相当すると思われる三角錐と立方体の関係」 の間の類似性 (どちらも一方を切り落とすと他方ができる) と によ っ てのも の である よう にみえた.. ついで, 正三角錐が求めるものであるとしてよいかどうかの議論に入ったが, そこでは二等辺三角形に帰 属する操作の系列のレパー トリーからいくつか選んではそれに相当する立体図形での操作の系列が帰属でき る か否 かを確 認 している. た だ ひとつ 正 当化 でき なか っ たも の と して残 っ たの は 「な ぜ三 面なの か」 と いう 問題 であ っ た.. この問題に対しては筆者が, たとえば二等辺三角形の 「 」 は平面を囲むことができる直線の最小数の 「 2 3 」 から1取り去ったものだともみえる, ここでの 「三面」 の 「 」 も同じとみえることを指摘して終了した. 3 こ の授 業 で は 「証明」 はい っ さ い 要 求 して いない た め, 実 際 に は誤 っ て いる 推 論や 結 論付 けも多く 含ま れ. ていた. しかし, 本稿での関心はこのような推論の過程において 「意識されたパ ターン」 がどのような機能 を果 た した か, と いう 点 にある.. おそらく数学についての学習経験から, 学生たちが所有する操作の系列のレパートリーは一定の構造をも っていると思われる. そしてその構造体が全体としてたとえば 「二辺が等しい」 といった概念の背後にあり, その概念に内容を与えている. しかし, 常にこれらの操作の系列が全体として概念に内容を与えるのではない. 通常の場合には, その- 部 の み が ルー ティ ン化 さ れた 「意 識 さ れ た パ タ ー ン」 と して 内 容 を与 え て いる とみ てよ い. こ れ は, 「辺 が. 等しい」 に対して即座に 「辺の長さが等しい」 呼び起こされたことからうかがわれる. その 「意識されたパターン」 では問題が解決できない状況にいたったときに意識的な推論活動が開始され る. これは 「面が等しいというのは同じ大きさということか, 合同ということか」 , あるいは 「二等辺三角 形は線対称だが, 正三角錐はそうではない」 といった場面で現れている. この再 構成 か らう かがう こ とができる の はおお むね次のよう な こと である.. (27).
(7) . 杉山 佳彦 ラ ク. 28. 推論の過程での 「意識されたパターン」 は次のような機能をもつ. ) ルー ティ ン化さ れた 「意 識さ れた パ ター ン」 は, 問題解 決を 自動化 する. 1. ) ルーティ ン化された 「意識されたパターン」 によっ てでは解決できない問題が生じたときに, 意識的 2 な推論活動が開始される. ) その推論活動はそこでの 「意識されたパ ターン」 が, 他の操作の系列によってとって変わられること 3 で展開する. ) そしてそこでの操作の系列はさまざまなテストを経て, 当該する問題に対して妥当なものとみなされ 4 るも の が選択さ れ, 「意識さ れた パ タ ー ン」 と して残る.. ) 妥当でないとされた操作の系列は当該するレパートリーから削除される わけではない. そのときには 5 その問題に関する限り他の操作の系列と同等の立場に置かれる. ) は上述した 「二等辺三角形」 に対して 「二辺の長さが等しい」 に関わる操作を帰属させていることか 1 らうかがわれる. ) も上述した 「二面が等しいというのは大きさなのか, 合同ということなのか」 という場面がそれであ 2 る. ここでは 「二面の大きさが等しい」 とすると対称性を全く欠いた三角錐が可能であり, それに対する解 決方策としてこの前に学習していた 「二辺が等しい」 という意味についての議論を想起したものと思われる. ) も上述の場面に現れていると見てよいであろう. 3 ) は, ここでの問題からやや離れたところでみえるものである. それは 「二等辺三角形は線対称である」 4 という場 面 に現 れている. ここ で は, 正三角 錐 が面対称 である こと をも っ てそ れに当たる 性 質と している が,. その背景には 「平面図形の辺に当たるのは, 立体では面」 という対応付けという操作がここでテストされて いる. その結果, 逆に二等辺三角形の辺は正三角錐の面に対応する, という対応操作を強化し, その結果, 」 なのか, といっ た問題を引き起こしたものと考え 「二等辺三角形」 は 「 」 なのに 「正三角錐」 はなぜ 「 2 3 る こ とが できる.. ) はこれなしではいっ たん問題に不適合な操作の系列が削除されることとなり, ルーティ ン化したもの 5 のみ が残る こと になる ため にこのよう な こと はない, とする だ けの目 的のもの である. 4 .結語. 本稿では数学的推論を分析するための装置として 「意識されたパターン」 という概念を準備することが目 的であった. そしてその機能として, 仮想的な事例及び授業の概略のみからなる仮想的な対話等をもとに, 前節で取り上げた5つを述べた. 「思考はうちなる対話である」 が正しいとするならば, ここで取り上げた推論はその矛先を変えることで 「思考」 とみなされ, ひいては 「証明」 ともみなされる. そのように見たときの 「推論」 が 「操作の系列」 のみに基づくものであれば, 第2節であげた数列の事例のように 「証明」 にはならない. これは単純帰納と いわれる推論になる. そうではなく, それが 「意識されたパ ターン」 , すなわち何らかの概念などに解釈を 拘束された操作の系列であればそれは確実性を帯びたものとみえるであろう. これが第2節の論点であった. しか し, こ の 「意識さ れた パ タ ー ン」 の重 要性 はこ れのみで はない.. 仮想的な例ではあるが第3節で主張したように, 操作とその解釈とを結び付けるものであるがゆえに数学 的推論のさま ざまな場面へ現われ, 重要な役割をはたすと思われる. というのは, たとえそこでの 「意識されたパ ターン」 に基づく帰納的推論であるとしても 「形式的証明」 になるためには自律的な振る舞いをする実体のごときものとしての概念が必要だからである. そのためには 少なくとも妥当なものと認定されたある特定の 「操作の系列」 -とりわけ言葉などによって代表されるもの (28).
(8) . 29. 「意 識さ れた パ タ ー ン」 につ いて. にルーテ ィ ン化さ れた結 びつき をも た ね ばな らな い. この 「操作 の系 列」 が 「意識さ れた パ ター ン」 である.. この 「操作の系列」 が妥当なものとして認定されるためには, その時点での 「意識されたパ ターン」 がそ こ で は妥 当 で はな い とさ れた と き に はとく に, 「操 作 の系 列」 の レパ ー トリ ー のう ち で一 種 の 構 造 変 動 が必. 要とされる. このような経過を経ることによっ て, 新しい構造を獲得し最終的には 「概念」 とし」「実体化」 することで 「形式的証明」 が構成される. このようにみてくるとき, 構造変動の過程における 「意識されたパターン」 をめぐる, 操作の系列同士の 間での排除のプロセス, その結果現われる新しい構造, その最終的な局面としての 「実体化」 , という一連 のス テ ッ プが示 唆 さ れる. 一 方, 本考 察の 礎石 の 一つ と したSf ardの指摘 (概 念 形成 論 にお ける も の であ る が) によ れ ば, このス テ ッ プはこ れ 以 降も 繰り 返 し生 じ, 際 限なくつ づ く こと となる.. 本稿での考察からえられた今後の課題は以下のとおりである. ) 本稿での 「意識されたパターン」 に関する議論を実証的に正当化すること 1 2 ) 操作 の系 列 の レパ ー トリ ー がつ く る構造 とそのその 変動 の過 程 を記述 ・ 分析 する こと.. ) 構造をもつ操作の系列レパー トリーが自律的な 「実体」 として現われる局面を分析すること. 3 }が い う よ う にpos lproo危 の ) Sf t 4 ‐おlm 頭 proo毎 に よ るf orma ard の指摘に関連してであるが, LLkatosh7. 乗り越えが正 しい とする なら ば, informal proofsとおrmal proo超 の 間の弁 証法 的な 関連 が想 定 さ れる. そ してこれは概念形成と密接に関連していると 考えられるが, その関係はどのようなものなのか . また, そ う である な ら ば 「形式 的証 明 ( f lproo毎)」 にも そ こ での概 念 に応 じてさ ま ざま な段 階が ある と思 わ れ o rma. る. この 観点から 「証明」 をみたときにはどのように見えるのか. 注及び参考・引用文献 ) 拙稿, 「数学教育における 「証明」 についての基礎的研究‐ 「帰納」 と 「演耀」 についての考察 1 ( 2 ) -」 353 356 ‐ . , 第23回数学 教育 論文発 表会 論文 集, pp. ) 拙稿, 「数学教育における 「証明」 についての基礎的研究‐ 「帰納」 と 「演擬」 についての考察 2 ( 2 9 ) ‐」 3 ‐ , 東北 数学教育 学会年 報, 1991 , 22号, pp‐. ) 3. ” lnatureof mathemadca Anna Sf lconcep誼onざ, Educauon副 Studi ard esin M Athemaロcs , Dua Educa直on, 22 1 36 ‐ ‐ , 1991 , pp. これは数学的概念の形成過程を分析したものである. そこでは, 数学的概念は操作的側面と構造をもつ対 象としての側面 (構造的側面) を合わせ持つ, とされる. そして概念の形成過程においてはまず操作的側面 が先 行 し, そ れによ っ て構 造 的側 面 が 姿を 現す, と いう. Sf ard の見解ではこの操作的側面が拘束を受けた. 形でのものか否か定かではないが, 次のような記述から一定の拘束を受けたものであると考えられる. く< (概念形成の過程では) 最初に, すでに十分熟知している対象に対する操作が必要である. ついで, この操作の過程を自立的な実体とみなす見方が生まれ, 最後にこの実体を, 全体として統合された対象のご とき もの と して み なす こと が可 能 になる. >〉 ( ) 18 p .. ) これは筆者が勤務校の数学科3年次生を対象に授業で扱った事例である. なお, 問題の出典は 4 ” n Loren C L l閉山g Tmr em so ough Probl ems, Sprmger ‐ z狂son, Probl , 1983. ) 5. ac誼on proof は こ の タ イ プ の も の で あ る.. ) 筆者の勤務校数学科3年生が対象である. 6 IWh d ” IProofprove? ) u akatos, f 7 at oseMthemadca ,. in Tie(ed J ) : .Worrm, G.CuI . ,. ”M h ” ics science and ep i l idge Univ at emat stemo oき郎 , Cambr ‐Press. (本 学 助 教 授 釧 路 校). (2 9).
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