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雪結晶の環状透過照明による顕微鏡写真撮影法

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Academic year: 2021

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(1)Title. 雪結晶の環状透過照明による顕微鏡写真撮影法. Author(s). 油川, 英明. Citation. 北海道教育大学紀要. 自然科学編, 56(1): 1-7. Issue Date. 2005-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/616. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育人学紀要(自然科学編)第56巻 第1弓 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(NaturalSciences)Vol.56,No.1. 平成17年8月 August,2005. 雪結晶の環状透過照明による顕微鏡写真撮影法 油 川 英 明. 北海道教育人学岩見沢校物理学教室. AMethodofTakingaPhotomicrographofaSnowCrystal byCircularTransmittedIllumination ABURAKAWA Hideaki. DepartmentofPhysics,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation,Iwamizawa,068−8642. Abstract Anewmethodoftakingaphotomicrographofasnowcrystalwasdevised.Itwasthemethodoftakinga SnOWCryStalpictureofawhiteimageagainstacolororablackbackgroundbycirculartransmittedillu− mination.Theilluminationwasimprovedbyusingaconcavemirrorofanordinarybiologicalmicroscope:. themirrorwascoveredwithacolorfilterorablackoutdiskatthecenterpartandwasabletoreflect Circularlythelightatitsopenside.. 1.はじめに. の構造や外形が背景から少し浮き上がるように撮 影されたモノクロのものである.また同著には,. 雪の結晶は繊細華麗で,その形が千差万別であ. 特別な反射照明型顕微鏡を用いて,雪結晶が暗視. ることが古くから人々の興味・関心を引き寄せ,. 野のなかで白く輝き,印象深く撮影された写真も. スケッチや顕微鏡の写真撮影等が試みられてきて. 示されている.しかし,これはかえって結晶内部. いる(′ト林,1980など).ただ,雪の結晶は無色. の細かい構造が見られなくなるとして,以後は取. 透明で,平均として径が3mm,厚さが1/100mmほ. り上げられていない.. どの微細な氷の物体であることから,顕微鏡によ. 中谷がこ. のような暗視野写真撮影を試みたの. る適切な撮影画像を得るには相応の困難が伴い,. は,雪の研究を触発されたBentley(1931)の写. 熱処理を含め,その照明法については種々の工夫. 真集に倣ったようであるが,その写真集に掲載さ. がなされてきた.. れているものは,透過光により撮影された通常の. Nakaya(1954)は,雪結晶の顕微鏡写真撮影 をはじめて科学的・系統的に行った.そして,そ. れらは自然の精緻な造形として一般にも知られて いる.その写真は,斜光の透過照明により雪結晶. 顕微鏡写真を人為的な操作により暗視野風に作り 変えたものである(LaChapelle,1969). 一方,雪結晶の顕微鏡カラー写真は,吉田の照 明方法(樋口,1962)によるものがあり,青色の.

(3) 油 川 英 明. 背景に雪結晶が白く浮き上がった結晶が華麗に撮 影されている.しかし,その具体的な仕組みにつ いては未公開となっているため,詳細は不明である. ′ト林(1969)は,上述の吉田の原理を応用して. 二色光源による撮影法を開発し,青地に白く輝い た雪結晶の顕微鏡写真を撮影している.この方法 は装置が簡便で撮影は比較的容易であるが,雪結 晶への照射が一方向から大きな傾斜角でなされる ため,斜光効果が強く作用し,結晶の特定方向の み輝いた撮像になっている.. 菊地(1990)は,特殊効果用フィルターを用い て雪結晶の顕微鏡カラー撮影を行っている.この 方法では,雪結晶が白色というよりは,フィルター の調整に応じた色に写し出されている.. 図1 顕微鏡の環状透過照明.Fはフィルター等.. また,暗視野による雪結晶の顕微鏡写真撮影は 油川・尾関(2002)による方法がみられる.この. することになる.図1において,対物レンズの両. 撮影法は,前述のNakaya(1954)の方法に比し. 端から下方に引かれた直線は,このレンズに対し. て簡単なものであるが,撮影された雪結晶が平面. て光線の入射が可能な領域を模式的に示したもの. 的に写し出される傾向があり,二次元的な画像解. である.つまり,凹面鏡からの光は,顕微鏡の哉. 析の資料として有意ではあるものの(油川他,. 物台に試料が無ければ,この領域(角度)の部分. 2003),雪結晶の立体感が余り表現され得ないと. だけが対物レンズに対して直接的に入射するわけ. いう難点がある.. である.そして,この領域を円形のフィルターで. このようなことから,今回は青色などのカラー. 覆えば,顕微鏡の視野にはそのフィルターによる. の背景あるいは暗視野に対して,雪結晶が適度な. 光線のみが人射し,また,フィルターの代わりに. 立体感を示しつつ,その全体が均等に白く輝くよ. 光線を遮断する円板を挿入すれば,対物レンズに. うに,環状の透過照明により顕微鏡写真の撮影を試. は光が入射せず,顕微鏡は暗視野の状態になる.. みた.その方法と撮影結果について以下に報告する.. このフィルター等を挿入する位置は照明用の凹面 鏡の中心部分で,図1に示した通りである.. 2.雪結晶の撮影方法 今回の撮影方法は,凹面鏡を照明用の器具とし. このようにして中心部が円形のフィルターで覆. われた凹面鏡は,図1の矢印で模式的に示した光 線のように,フィルターの外側から環状の白色光. て使用した一般の生物顕微鏡に,自作のフィル. を発し,哉物台の試料(今の場合は雪結晶)を照. ター等を用いるだけの簡単なものである.すなわ. 射することになる.この照射光はフィルターの縁. ち,図1に示したように,顕微鏡の光源から発し. によって回折や散乱がなされるが,基本的には環. た白色光は照明用の凹面鏡により反射されて試料. 状であることから,試料は全方向から一様に照明. を照射するわけであるが,このとき顕微鏡により. がなされることになる.そして,その照射光は試. 観察される範囲は対物レンズの開口角によって決. 料によって反射・屈折の作用を受けて進路が変え. められる.今回の場合,使用した対物レンズの開. られ,対物レンズの光軸方向に向かう光線が生じ. 口角は5.7度ほどであることから,レンズの光軸. る.そのなかで,前述のような対物レンズの開口. に対してこの角度以内の光線だけが顕微鏡に入射. 角よりも小さな入射角の光線が顕微鏡の視野に入.

(4) 雪結晶の環状透過照明による顕微鏡写真撮影法. り,白色光による雪結晶の像を形成する.このと. めるだけでコンピュータにより即座に読み込むこ. き,結晶の背景はフィルターの色,あるいは光を. とができ,撮影画像の確認が短時間で行える.. 遮断する円板が挿入されていれば暗視野の状態に なっている.. 顕微鏡の画像撮影は,一般のコンパクトデジタ ルカメラを用いて行われた(今回はCanon社製 のPowerShotA80を使用).近年,デジタルカメ ラ及びその撮像を印刷するプリンターの性能は飛. 3.雪結晶の撮影例 本照明法により撮影された雪結晶の顕微鏡写真 を以下に示す. 図2は背景を青色としたカラーの写真である.. 躍的に向上し,価格も低下してきていることから,. いずれも雪結晶がほぼ均等に白く写し出されてい. 余り費用をかけずに性能の良いデジタルカメラの. る.そして,結晶の輪郭や内部の構造が比較的鮮. 顕微鏡撮影装置を作製することができる.. 明に示され,白色の濃淡や影が雪結晶の画像に適. デジタルカメラによる撮影装置は,モニターの. 度な立体感を与えている.また,結晶内の平坦な. 画像を見ながら露出を決めたり,雪結晶の大きさ. 部分は背景と同じような色調になっていることか. に合わせてズーム比を変えるなどして,適度な撮. ら,雪結晶の透明性も表現されている.なお,図. 影画像を得ることができる.そして,撮影された. 2の結晶(特に左中のもの)には,その枝の付け. 画像は瞬時にコンピュータヘ取り込むことによ. 根に赤,黄,緑等が連なった細い色線が見られる. り,編集や印刷をその場でおこなうことができる.. が,これは結晶内を透過する白色光が,その細線. これは従来の銀塩フイルム式カメラではできない. 部の構造的な特性により屈折・分光することに. ことであった.. よって,虹のように見えるためではないかと考え. 他方,雪結晶の撮影はデジタルカメラの保証温 度以下の氷点下で行われるので,若干の工夫が必. られる.. 図2において,左側の3つの結晶は対称性がほ. 要となる.つまり,顕微鏡等の観察機材を全て準. ぼ整ったものであり,右側の結晶はそれらに比し. 備し,それらを氷点下の温度に馴染ませてから,. て対称性に欠けるものである.このような非対称. 常温においてデジタルカメラのスイッチを人れ,. の結晶の成凶については種々の仮説が提唱されて. それをそのまま顕微鏡に取り付ける.デジタルカ. きているが,確証となることは未だ示されていな. メラは氷点下で電源を投入することが故障につな. い.例えば右上の結晶は,Nakaya(1954)によ. がるためである.このようにすれば,カメラは周. れば,枝の途中に雪結晶の中心部を担う氷晶核が. 囲の環境により温度が低下しても,カメラの各部. 付着し,そこから二次枝(側枝)が成長した二重. 品は常に励起状態で,かつ自己発熱の効果により. 核の結晶であるとしている.しかし,結晶の周囲. 本体が暖められ,常温と同じように作動する.さ. がほぼ同じ水蒸気庄とすれば,氷のエビタクシー. らに,カメラ本体をポリエチレン等の薄い袋で覆. 成長から,異物の付着した枝から氷結晶が成長す. えば,周囲への放熱が抑制され,その効果はさら. るよりも,異物の付着していない氷結晶そのもの. に高まる.今回は,テレビ受信機をカメラの外付. の枝の方が卓越して成長するはずである.つまり,. けモニターとして用い,このような対処により−. 他の枝に比して側枝の成長が大きなこの部分は,. 12℃ほどの温度においても何ら支障なくデジタル. 均等な水蒸気量の分布における二次核の作用と見. カメラにより撮影することができた.. なすよりは,側枝が水分量の多い場合に成長する. 撮影終了後はカメラだけを顕微鏡から取り外し. ものであること(Nakaya,1954;Gondaand. て,それを密封し,常温の場所へ持ち帰る.なお,. Nakahara,1996)から,水分が特別に集中した. カメラを密封する前に画像が記録されたメモリ. ことによる現象,つまり,天然においては過冷却. カードを取り出しておけば,そのカードを少し暖. 徴水滴が付着して結晶化した(油川,2005)もの.

(5) 油 川 英 明. と考える方が妥当であろう.. 状が比較的単純である.それに比して,大きな結. 図2の右中の結晶は,中心部に放射状の枝が成. 晶は非対称的なものが多く,形状も変化に富んで. 長している七花の結晶で,これはもはや二重核に. いる.両方の良いところを兼ね備えた結晶として. よる結晶の成長とは見なし難く,雪結晶の発生時. は,径が2mm程度のもののようである.また,雪. にさかのぼって過冷却徴水滴の作用を考えるべき. 結晶に厚みが増すほど,そして,その表面のレリー. である(油川,2004).. フ文様(油川,1992)が複雑なほど,本撮影法で. 図2の右下の結晶は樹枝状の十二花であるが,. この成因についてはNakaya(1954)の雪片説と. は結晶が白く写し出される. ところで,吉田(神田,1999)や′ト林(1983). Kobayashietal.(1976)の双晶説が知られている.. の顕微鏡写真は,その照明原理からの必然として,. しかし,これらの説は各々に矛盾が含まれており,. 雪結晶の輝きに一定の偏りがあらわれる.これに. やはり,氷晶の生成に関わる過冷却徴水滴の結晶. は相応の美観や趣も感じられるが,観察の資料と. 化にその成因が求められるべきであると考えられ. しては,明るさが余り偏っていないものの方が結. る(油川,2000).. 晶の形態を確実に把握できる.また,照明が偏り. 図3は暗視野による顕微鏡写真である.これら は,反射光による暗視野写真(Nakaya,1954) よりも雪結晶の輪郭や内部の構造が比較的鮮明に. 過ぎた状態では暗視野による雪結晶の撮像を得る ことが困難である. 今回の照明法は,雪結晶に限らず,無色透明で. 写し出されている.結晶に対する照明も全体的に. 内部や表面に凹凸の構造がある物体の顕微鏡観. ほほ均等になされている.. 察・撮影に適用できる.. 図3の左側の結晶は標準的な樹枝状であり,右. なお,本論文に掲載された雪結晶の写真は,2004. 側の結晶は少し特殊な形状を示しているものであ. 年から2005年にかけての冬季の大雪山系旭岳山麓. る.右上の結晶は,中心部の角板に切れ目が見ら. にある本学の自然教育研究施設において撮影され. れるもので,この部分は段差になっている.その. たものである.. 成因についてはほとんど報告が見られない.右巾 の結晶は,広幅六花の一つの枝が他に比して短く 参考文献. なっているものである.この短い枝は,六花の枝. がほぼ同じ形態であることから,融解とか蒸発に よる変形ではなく,成長過程において何らかの変 化を受けたものと考えられる.また,右下の結晶. は,前述のような形態の変化が極端に現れている もので,一つの枝だけが短く,そして側枝が他に 比して異常に発達している.. 雪結晶は,一般に対称性の整った六花として知 られているが,実際には図2及び図3に示した非 対称的な結晶が多く見られる.そして,それらの. 成因について探求を進めるほど,雪結晶の気相成 長(Nakaya,1954;Kobayashi,1961など)と いうことに疑問が集中するように考えられる.. 今回の図2及び図3に示した雪結晶は,その径 が1.5mm∼3.Ommで,極く一般的なものである.径 の小さな結晶は対称性が整ってはいるものの,形. 油川英明,1992:雪結晶の「裏」と「表」について.雪氷,. 54巻,2号,123130 油川英明,2000:十二花雪結晶の成因について.秋葉 力先生追悼論文集,2736 油川英明・尾関俊浩,2002:二光源による雪結晶の暗視. 野顕微鋭写真撮影法.雪氷,64巻,5号,541547 油川英明・尾関俊浩・丸藤貴弘,2003:雪結晶の対称性 について.北海道教育大学紀要(自然科学編),第52巻,. 第2弓,1726 油川英明,2004:七花の雪結晶.北海道教育大学紀要(自. 然科学編),第54巻,第2号,1525 油川英明,2005:過冷却微水滴の結晶化による雪結晶の 生成.北海道教育大学紀要(自然科学編),第55巻,第. 2号,112 Bentley,W.A.andW.].Humphreys,1931:SnowCrys− tals,McGrawHillBookCo.,NewYork,226pp. Gonda,T.andNakahara,H.,1996:FormationMechan−. ismofsidebranchesofdendriticicecrystalsgrown.

(6) 雪結晶の環状透過照明による顕微鏡写真撮影法 fromvapor.].CrystalGrowth160,162166 樋口敬二,1962:雪の結晶の観察と記録,気象研究ノート, 13,455S 神田健三,1999:天から送られた手紙[写真集・雪の結 晶],中谷宇吉郎 雪の科学館,47pp. 菊地勝弘,1990:特殊フィルターを使った雪の結晶の顕 微抗力ラー写真撮影法,北海道大学地球物理学研究報. 告,No.53,6167 Kobayashi,T.,1961:TheGrowthofSnowCrystalsat LowSupersaturation.Phil.Mag.,6,13631370 小林偵作,1969:雪の結晶の二色光源による顕微鏡撮影. 法,低温科学,物理篇,27,395397 Kobayashi,T.,Furukawa,Y.,Kikuchi,K.,andUeda,H. 1976:Ontwinnedstructuresinsnowcrystals.J. Crystal.Growth,32,233249 小林偵作,1980:六花の美.サイエンス社,149pp. 小林偵作,1983:冬のエフェメラル,北大図書刊行会,. 39pp. LaChapelle,E.,R.,1969:FieldGuidetoSnowCrystals, InternationalGlaciologicalSociety,101pp. Nakaya,U.,1954:SnowCrystals−naturaland artifi− Cial,Harvard Univ.Press,510pp.. (岩見沢校教授).

(7) 油 川 英 明.

(8) 雪結晶の環状透過照明による顕微鏡写真撮影法. 図3 雪結晶の暗視野顕微鏡写真.

(9)

参照

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