第3学年○組 国語科学習指導案
指導者 1 単 元 人間,社会について,自分の考えをもつ 「故郷」 2 指導観 ○ 本単元は,中学校国語科における文学的文章の学習の最後に位置づけられる学習である。中学校3年間 の文学的文章に関する学習では,物語に描かれている場面や人物についての読解を深めたり,生涯にわた って読書に親しんでいく態度を育成したりしていく。主に中学校学習指導要領解説「C読むこと」の「イ・・・ 場面や登場人物の設定の仕方をとらえ,内容の理解に役立てること」「エ文章を読んで人間,社会,自然 などについて考え,自分の意見をもつこと」をねらいとしている。 本単元であつかわれる『故郷』は,「中国近代文学の父」と呼ばれる魯迅の小説作品であり,中国近代 文学の名作である。この作品は,近代中国の社会的背景を理解しながら読むことで読解を深めることがで きる。作品の展開や内容は場面や登場人物の設定と深いかかわりがあり,これらの要素をふまえて,具体 的な叙述で示されていない心情の機微についても周辺の叙述から考えることで,作品への理解がより深ま る。『故郷』では,さらにそこから,社会の中で生きる人と人とのかかわりについて自分の意見や考えを もつことにもつながる。また,社会に絶望を感じるとともに,その絶望のない新しい社会の創造を望む主 人公の姿や作品観は,義務教育を終え,自ら道を切り拓いていく時期でもある生徒たちにとって,困難な 社会状況のなかでどのように生きるかという考えを深めることのできる,意義深い学習であるといえる。 ○ 国語標準得点の分布から,1,2の段階にいる生徒が○%を占めていることがわかる。また,国語の観 点別評価を段階別に見てみると,「書く」「読む」「言語事項」という三つの項目において,やはり○% がCの段階にいることがわかる。しかし,授業に対する意欲は比較的高く,どのような学習活動でも一生 懸命取り組むことができる。ただし,家庭学習をはじめとする自学自習に対する意欲が低く,学習内容を なかなか定着させることができない。これはこの学年の生徒の基礎学力の低さにも起因している。そこで 第1学年の頃から生徒の疑問やそこから生まれる思考を大事にし,継続的に学び合いや話し合い活動に取 り組ませながら,意欲と学習内容の理解の向上を図っている。 ○ 本単元では,登場人物を取り巻く社会状況をふまえた心情や関係の変化に迫ることで主人公の絶望と希 望について考えさせたいと考えている。主人公が絶望を感じた場面として,ヤンおばさんやルントウとの 再会の場面を取り上げ,昔と現在の態度や関係性の変化についてとらえさせる。特に昔親しかったルント ウの態度の変化から壁を乗り越えられない絶望への読みを深めさせることで,近代中国の社会的背景に裏 打ちされる作品観への読解を深めたい。そのために,単元の導入では,この作品に「絶望と希望」が描か れていることにふれ,「なぜ相反する二つの感情が生まれたのか」という疑問をもたせることで問題解決 意欲をもたせたい。そして意見をもち寄るグループ交流や意見を集約する話し合い活動を行いながらヤン おばさんやルントウの昔と現在の変化について探ることで,貧富の差や身分の差といった抜け出せない社 会状況への「絶望」について理解させる。単元の終末では,「作者はなぜ『故郷』の最後を『希望』で終わ らせたのか」について考えさせる。そこで考えたことから,困難な状況でも自ら道を切り拓き生きていく あり方について生徒自身の意見をもたせていきたい。 3 目 標 ○人の生きる姿や社会について関心や意欲をもち,考えを深めるため自ら考えたり交流活動に取り組んだり しようとしている。 (国語への関心・意欲・態度) ○場面や登場人物の設定について考え,場面の内容や登場人物の心情を理解することができる。(読むこと) ○作品を読んで社会の中で生きていく人間の姿について考え,自分の意見をもつことができる。(読むこと) ○心情等を表す一語一語の語句に着目しながら読みを深めることができる。(伝統的な言語文化に関する事項)4 単元指導計画 次 時数 学習活動・内容 評価規準 評価 方法 関心・意欲・態度 読むこと 伝統的な 言語文化 と国語の 特質に関 する事項 第 1 次 ( 7 時 間 ) 2 1 作品に描かれる「絶望と希望」について 考えながら作品を通読する。 作品に描 かれてい る「絶望と希望」に ついて考 えながら 作品を読 もうとし ている。 様相観察 プリント 3 1 昔と現在で変化しているものや人物に ついてグループでその変化を整理する。 ・故郷 ・ヤンおばさん ・ルントウ 2 整理した変化について全体で発表し,ま とめる。 主人公の 絶望の理 由を探ろうと,昔と 現在の変 化につい て読み取 ろうとし ている。 昔と現在 を比較し ながらそ の変化に ついて読み取り,整 理するこ とができ る。 様相観察 プリント 1 ( 本 時 ) 1 ルントウの「喜びと寂しさの色」という 表情について,「喜び」「寂しさ」それぞれ の理由について考える。 2 ルントウの態度の変化の理由や気持ち について考える。 3 近代中国の社会的背景を知り,登場人物 の心情をより理解する。 ルントウ の表情や その気持 ちについ て個人や グループ での活動を通し,文 脈や登場 人物の設 定から考 えようと している。 場面や登 場人物の 設定を知り,主人公 や「ルントウ」の心 情につい て理解す ることができる。 「喜びと 寂しさの 色」という表現に着 目し,「ルントウ」の 心情につ いて読み を深める ことがで きる。 様相観察 プリント 1 1 「故郷」の最後の「希望」の表現につい て考える。 2 作者が「故郷」の最後を「希望」で終わ らせた理由について考える。 作品に描 かれてい る「希望」について 考え,困難を乗り越 えていく 姿につい て自分の 意見をま とめよう としてい る。 困難な状況(絶望) の中で「希望」をも って生き ようとす る登場人 物の姿に ついて読みを深め, 自分の意 見をもつ ことができる。 様相観察 プリント 5 本 時 (1)日時 (2)主眼 ルントウの声にならなかった言葉からルントウの「喜びと寂しさの色」という感情の理由について グループで考えることで,ルントウの態度の変化の理由について考えをまとめることができる。 (3)授業仮説 以下の手立てを講じれば,生徒は「喜び」「寂しさ」それぞれの理由についてグループで分析する ことができ,ルントウの態度の変化の理由・事情について考えをまとめることができるであろう。 【問いづくり】 ①本時の問いをもつことができるように,主人公がルントウの態度の変化にショックを受けて いたことを具体的にふりかえり,ルントウの態度がなぜ変化してしまったのか問いかける。 【思考づくり】 ※観点は後述 ②ルントウの感情の理由について考えを深めることができるように,声にならなかった言葉や 声にならなかった理由といった補助発問を設定し,話し合いをさせる。 (話し合う活動) ③話し合った内容をもとにルントウの態度の変化の理由をまとめることができるように,記述 のモデル文を提示する。 (かく活動) 【価値づくり】 ④本時学習の価値を自覚できるように,表現の分析を行ったことや作品の背景を知ること(方 法)により,ルントウの態度の変化の理由について考えが深まった(内容)ことを称賛する。 (4)準備 ①学習プリント ②デジカメ(タブレット) ③プロジェクター ④スクリーン ⑤タイマー
(5)展開 学習活動・内容 指導上の留意点 ◇評価規準(方法) 配時 形態 導 入 1 前時までの学習を想起し,本時のめあてを 確認する。 ○ 本時の問いをもつことができるように,主人 公がルントウの態度の変化にショックを受けて いたことを具体的にふりかえり,ルントウの態 度が本意だったのかゆさぶりをかける。 5 全体 展 開 2 ルントウの「喜びと寂しさの色」について, その感情の理由を考える。 (1)「唇は動いたが」のところで本当はなん と言いたかったと思うか台詞を考える。 (2)「声にはならなかった」のところで,そ の理由を考える。(言わずに「旦那様」と言 った理由を考える) (3)「喜び」「寂しさ」それぞれの理由を考 える。 ①個人で考える。 ②国語のグループで考える。 ③全体で意見を発表する。 3 近代中国の社会的背景についての説明を 聞く。 ・仕える者と仕えられる者との厳然たる差 ・ヤンおばさんについて ○ めあてを解決する手段であることを理解させ るために,台詞だけではなく,そのときの「表情」 からも人物の心情を考えることができること を,例を出して確認する。 ○ (1)(2)は(3)の問いで考えをまとめる ための補助発問として取り組ませる。全体での 発表は(3)の考えのみとする。 ○ 積極的な机間巡視を行い,ヒントカード(※) を使った助言を行う。 ○ 発表原稿として使えるように学習プリントを 作成し,円滑な全体交流が行えるようにする。 ○ ルントウの「寂しさ」についてより深く理解さ せるために,この作品の舞台が清代から続く制 度や民衆の貧困にあえいでいた時代であること を簡単に確認する。 5 15 12 3 個 小グル ープ 全体 全体 終 末 4 ルントウの態度の変化の理由について考 えをまとめる。 5 本時の自己評価を行う。 ○ 学習の理解の理解度と交流活動の充実 度についての自己評価を行い,復習や次時 に生かせるようにする。 7 3 個 めあて 「旦那様」と言ったルントウの気持ちや事情を考えよう。 (1)・「シュンちゃん,会いたかったよ!」 ・「久しぶり,元気だった?」 (2)壁があるからなれなれしくできなかっ た。 (3) 「喜び」・・・幼少時仲良くしていたずっと会い たかった友達に再会できた喜び。 「寂しさ」・・・主人と使用人という壁が存在し ており,昔のようには接すること ができない寂しさ。 まとめ ルントウは主人と使用人という壁を認識し,寂しさを感じながらも礼儀正しい態度をとっている。 ◇ ルントウの表情やそこに込められる感情につい て,グループ活動を通して考えを深めようとして いる。(関心・意欲・態度) 【評価方法】様相観察・発表用紙への記入 A:「喜び」と「寂しさ」の理由について(1)(2) の問いをもとに考え,具体的に文章化できている。 B:「喜び」と「寂しさ」の理由についてキーワード が記述できている。 C:「喜び」と「寂しさ」の違いを説明している。 →違いをもとに,記述できるよう助言する。 ◇ 場面や登場人物の設定を知り,登場人物の心情 について理解することができる。(読むこと) 【評価方法】学習プリント A:表情の分析や社会的背景をふまえ,登場人物の 心情を自分の言葉でまとめている。 B:表情の分析もしくは社会的背景をもとに,登場 人物の心情を自分の言葉でまとめている。 C:どちらの学習もまとめに反映できていない。 →個の状況に応じた支援,助言を行い,まとめ られるようにする。