子 宮 頚 部 扁 平 上 皮癌 動 注 化 学 療 法 効 果 判 定 の た め の
コル ポス コ ピーの有 用 性 につ い て
岡 山大学 医学部 産科 婦人科 学教 室(指 導:工 藤 尚文 教 授)
大
村
裕
一
(平成11年10月21日 受理)
Key words:
Uterine cervical
carcinoma,
Intra-arterial
injection,
Colposcopy
緒 言 従 来 よ り子 宮 頚 部 扁 平 上 皮 癌II期 症 例 の 治 療 と し て は,広 汎 子 宮 全 摘 術 を施 行 し,症 例 に よ り放 射線 療 法 を追 加 す る こ と で 良 好 な 成 績 が 得 られ て い る が,我 々 は さ ら な る予 後 改 善 を 目指 し, cis-dichlorodiammineplatinum (CDDP)術 前 動 注 化 学 療 法 を 行 っ て き た. 癌 化 学 療 法 を行 う に 際 して 使 用 薬 剤 に 対 す る 感 受 性 を把 握 す る こ とは 有 用 で,特 にNeoad juvant chemotherapy (NAC)の 場 合 は,治 療 効 果 予 測 が 早 期 に 可 能 で あ れ ば レ ジ メ ン の変 更 やAdjuvant therapyの 再 検 討 等,以 後 の 治 療 方 針 決 定 に 貴 重 な指 針 と な る.近 年, chemosen sitiveで あ る こ とが 認 識 さ れ て きた 子 宮 頚 癌 に NACを 行 う場 合 も,早 期 に 治 療 効 果 予 測 が 可 能 で あ れ ば,同 一 の 化 学 療 法 を 続 け て い くか,レ ジ メ ン を 変 更 す る か,化 学 療 法 を 中 断 し て手 術 療 法 に 踏 み 切 るか の 判 断 材 料 に な り有 用 で あ る. 化 学 療 法 の最 終 的 な治 療 評 価 には腫 瘍 の量 的, 質 的 変 化 の 正 確 な把 握 が 必 要 で あ るが,治 療 途 中 で の 効 果 判 定 に は 簡 易 で 低 侵 襲,そ して 正 確 か つ 即 時 的 判 断 が 可 能 な検 査 法 が 好 ま し い.子 宮 頚 部 扁 平 上 皮 癌 に お け る コ ル ポ ス コ ピー は そ れ ら の 条 件 を満 足 す る検 査 法 で あ り,所 見 解 析 の ため の 客 観 的 な 指 標 が 得 ら れ れ ば 治 療 効 果 判 定 を行 う際 の 有 用 な パ ラ メー タ ー と な る 可 能 性 が あ る と考 え た.本 研 究 で は コル ポ ス コー プ を 用 い て 子 宮 頚 癌 病 巣 部 の 経 時 的 変 化 を観 察 し, 動 注 化 学 療 法 で の 早 期 治 療 効 果 判 定 に お け る コ ル ポ ス コ ピー の 有 用 性 に つ き検 討 を行 っ た. 研 究 対 象 お よ び 方 法 本 研 究 は1988年 か ら1993年 ま で の6年 間 に 岡 山大 学 付 属 病 院 産 婦 人 科 で治 療 した 原 発 病 巣 が コ ル ポ ス コー プ で 観 察 可 能 な 子 宮 腟 部 扁 平 上 皮 癌II期 症 例 で,昇 圧 併 用 動 注 化 学 療 法1,2)後,広 汎 子 宮 全 摘 術 お よ び 骨 盤 リン パ 節 廓 清 術 を施 行 し た30∼66歳(平 均48.9歳)の43例 を対 象 に 行 っ た. 動 注 化 学 療 法 は 右 大 腿 動 脈 よ り カ テ ー テ ル を 左 右 内 腸 骨 動 脈 へ 導 き,各 々 の 側 にCDDP50mg/ m2とAngiotensin-II 40μgの半 量 ず つ を約10分 間 で 混 注 した.動 注 は 同 一 レ ジ メ ン で3週 間 隔 に 2コ ー ス行 い,2回 目動 注 後3週 で 広 汎 子 宮 全 摘 術 を施 行 し た(図1).動 注 化 学 療 法 後,毎 週 コ ル ポ ス コー プ を用 い て 病 巣 表 面 の 変 化 を 詳 細 に 観 察 す る と と も にColposcopically Suspect Invasive Carcinoma (IC)部 分 の最 長 径 と直 交
径 の 積 か ら経 時 的 腫 瘍 縮 小 率 を算 定 した. 図1 子 宮頚 癌 術 前動 注 化 学 療法 ス ケ ジュ ー ル (対象)子 宮 腟部 扁平 上 皮癌II期 広 汎 子 宮全 摘術 症 例 (投与 法)非 観 血 的方 法 で 大 腿動 脈 よ りカ テ ー テ ル を挿 入 し,左 右 内腸骨動脈 にCDDP50 mg/m2とAngiotensin II 40μgの半 量 ず つ動 注
動 注化学 療法 期 間 中の コル ポス コ ピー所 見 の
159分 類 は,本 来 の 子 宮 頚 部 病 変 診 断 に お け る分 類3) に 準 じて 行 い, chemotherapyのcを 付 し て 化 学 療 法 後 浸 潤 癌 所 見, c-Colposcopically Sus pect Invasive Carcinoma (cIC),化 学 療 法 後 異 常 所 見, c-Abnormal Colposcopic Findings
(cACF),化 学 療 法 後 正 常 所 見, c-Normal Colposcopic Findings (cNCF)と し た.な お 対 象 症 例 が 子 宮 腟 部 浸 潤 癌 で あ る た め,治 療 過 程 で の 扁 平 円 柱 接 合 を明 確 な か た ち で 確 認 す る事 は 困 難 で あ り,特 に 動 注 に よ っ て病 巣 表 面 が 正 常 所 見 に な っ た もの は 平 滑,無 構 造 な 扁 平 上 皮 を と ら え るの み で 扁 平 円 柱 接 合 部 は 認 め な か っ た.し た が っ て 本 来 コ ル ポ ス コ ピ ー で は 不 適 例, Unsatisfactory Colposcopy (UC)と され る も
の の う ち,扁 平 円柱 接 合 を確 認 で きず コル ポ ス コ ピー で正 常 所 見 な い し良 性 所 見 しか 認 め な い
UC-a with NCFはcNCFに,扁 平 円 柱 接 合 を 確 認 で きず コル ポ ス コ ピー で 異 常 所 見 を 認 め る UC-b with ACFはcACFに 分 類 した.ま た 動 注 後 の コル ポ ス コ ピー 所 見 の 評 価 に 客 観 性 を 持 たせ る た め 変 化 の 過 程 を7段 階 に 分 類 し,コ ル ポ ス コ ピー 所 見 に 対 し点 数 化 を行 っ た(表1). 点 数 はcIC部 分 に ほ と ん ど変 化 が み られ な い も の を0点,cIC部 分 の 白色 化 を1点,cIC部 分 の 隆 起 の 平 坦 化 お よ び 黄 色 調 の 出 現 を2点,扁 平 上 皮 で お お わ れcICの 縮 小 が 著 明 とな っ た状 態 を3点,さ らに 扁 平 上 皮 で 広 くお お わ れ 隆 起 も完 全 に 平 坦 化 し た 状 態 を4点,コ ル ポ ス コ ピ ー 上cICと 判 定 さ れ な くな っ た 状 態 を5点 ,正 常 所 見 を6点 と した(表1).な お,多 種 所 見 が 混 在 す る場 合 は,最 も変 化 の 進 ん だ段 階 の 点 数 を採 用 した. 表1 コル ポス コピー に よ る所 見 の 点数 化 表2 症例
組 織 学 的 に は,各 々 の 時 点 で の最 高 病 変 と思 わ れ る部 位 数 ヵ 所 よ り コル ポ ス コー プ 観 察 下 に 狙 い 生 検 を行 っ た.そ し て 生 検 組 織 で のviable cellの 有 無 に 着 目す る と と もに,癌 治 療 学 会 の 化 学 療 法 の 組 織 学 的効 果 判 定 基 準 に よ り動 注 の 効 果 の 組 織 学 的 判 定 を行 っ た. 動 注 化 学 療 法 後,広 汎 子 宮 全 摘 術 で の 摘 出 子 宮 頚 部 にviable cellを 認 め なか っ た群 を病 巣 消 失 群,摘 出 子 宮 頚 部 にviable cellを 認 め た群 を 病 巣 残 存 群 と し,2群 間 の コル ポ ス コ ピー 所 見 の 差,腫 瘍 縮 小 率 の 差,生 検 組 織 に お け るviable cell消 失 症 例 の 割 合 の 差 を検 討 し,動 注 化 学 療 法 早 期 治 療 効 果 判 定 に お け る コ ル ポ ス コ ピー の 有 用 性 を検 討 し た. 図2 動 注 後 の経 時 的 コル ポ ス コ ピー 所 見 病 巣 消失 群 と病 巣残 存 群 の 比較 有 意 差 検 定 はMann-Whitney検 定(M-W), あ る い は カ イ2乗 検 定(X2)に よ り行 っ た. な お 治 療 開 始 時 点 で の 病 巣 消 失 群 と病 巣 残 存 群 の年 齢,組 織 亜 型 に 有 意 差 は な く,腫 瘍IC部 分 の大 き さ も病 巣 残 存 群 の 方 が や や 大 き い傾 向 は あ っ た が 有 意 差 は な か っ た.ま た 子 宮 傍 組 織 お よ び 腟 壁 へ の 浸 潤 程 度 に も差 は 認 め な か っ た (表2). 研 究 結 果 1. 動 注 化 学 療 法 後 の コ ル ポ ス コ ー プ像 の 経 時 的 変 化 1) コル ポ ス コ ピー 所 見 の 変 化 (1) 病 巣 消 失 群 動 注 化 学 療 法 前 に は7例 全 例 にICを 認 め た. 動 注 後 の 変 化 は 急 激 で,初 回 動 注 後1週 目(以 下,動 注 後 週 数 は 初 回 動 注 後 の 週 数 とす る)に は7例 全 例 で 病 巣 表 面 は 扁 平 上 皮 に お お わ れ つ つ あ り,隆 起 も平 坦 化 しcIC所 見 を 認 め な か っ た.7例 中1例(14.3%)は 正 常 所 見,他 の6 例(85.7%)は 扁 平 上 皮 と 白色 調 や 黄 色 調 の 色 調 変 化 を残 し た部 分 が 混 在 し た 状 態 で,一 部 ヘ ア ピ ン状 血 管 等,軽 度 の 異 型 血 管 所 見(cACF) を認 め た(図2).コ ル ポ ス コ ピー 所 見 の 点 数 化 に よ る と6例 が5点,1例 が6点 とな り平 均5.1 点 で あ っ た(図3). 図3 点数 化 に よ る動 注 後 の コル ポス コピー所 見 の 推移 病 巣消 失 群 と病 巣残 存 群 の
比較-図4 腫 瘍 表 面 の 白色 化 (病巣 残 存群,動 注後1週 目) 図5 腫 瘍 表 面 の 黄 色調 変 化 (同症 例,動 注後2週 目) 図6 腫 瘍表 面 の 扁平 上 皮 に よ る被 覆 (同症 例,動 注後3週 目) 図7 扁 平 上 皮 に よ る被 覆 の拡 大 と隆起 の 平 坦 化 (同症例,動 注 後5週 目)
(2) 病 巣 残 存 群 動 注 化 学 療 法 前 に は36例 全 例 にICを 認 め た. 動 注 後 の 変 化 は 病 巣 消 失 群 に 比 して緩 徐 で あ り, よ り詳 細 な経 時 的 変 化 の 観 察 が 可 能 で あ っ た. 動 注 後 まず 腫 瘍 表 面 に 白色 化 が 出現 した(図4). こ の 白 色 化 し た部 分 は3%酢 酸 を塗 布 す る こ と に よ り さ ら に 鮮 明 な 白 色 調 を呈 し た.ま た 白色 化 とほ ぼ 同 時 期 に 血 管 の 異 型 性 も減 弱 し始 め た. 白 色 化 の 出現 時 期 お よ び 程 度 は 症 例 に よ り様 々 で あ り,出 現 時 期 が 早 期 で程 度 が 顕 著 な症 例 ほ ど以 後 の 変 化 は 急 速 で あ っ た.ま た 白色 化 の 顕 著 な もの は 元 来 血 管 異 型 が 軽 度 で,血 管 径 も細 い傾 向 が あ っ た.白 色 化 に 続 い て 病 巣 部 は 隆 起 が 平 坦 化 し始 め,白 色 化 し た部 分 は全 体 に や や 黄 色 調 に 変 化 した(図5).次 い で 表 面 を 扁 平 上 皮 が お お い始 め た が,こ の 扁 平 上 皮 に よ る被 覆 は 主 に 周 辺 部 か ら 中 央 に 広 が っ た(図6).さ ら に 扁 平 上 皮 に 広 くお お わ れ て くる と隆 起 も完 全 に 平 坦 化 し,cICと は判 定 され な くなっ た(図7). しか し動 注 後1週 目で はcICの 消 失 した 症 例 は な く,cIC表 面 に 扁 平 上 皮 化 生 を認 め る もの12 例,色 調 変 化 の み を 認 め る も の20例 で,白 色 化 も認 め ず コ ル ポ ス コ ピー 上 ほ とん ど変 化 の な い もが4例 で あ っ た.そ し て 動 注 後6週 目にcIC を認 め た もの は4例(11.1%),cICを 認 め な く な っ た も の は32例(88.9%),内 訳 はcACF 20 例, cNCF 12例 で あ っ た(図2).ま た6週 目 で cICを 認 め た4例 は1週 目 で 白色 化 を認 め な か っ た4例 と一 致 し て い た.コ ル ポ ス コ ピー 所 見 の 点 数 化 に よ る と,動 注 後1週 目 で0点4例, 1点8例, 2点12例, 3点10例, 4点2例,平 均1.9点 で あ っ た.そ し て2週 目 で 平 均3.4点, 3週 目で 平 均4.2点 と な り4週 目か らは 変 化 が さ らに 緩 や か に な り,6週 目で は3点2例, 4点 2例, 5点23例, 6点9例,平 均5.1点 で あ っ た (図3). 図8 動 注後 の腫 瘍IC部 分 の経 時 的縮 小 率 病 巣 消 失群 と病 巣 残 存群 の 比較
図9 動注による経時的組織学的効果
(組織学的効果判定 基準)
病巣消失群 と病巣残存群の比較
2) 経 時 的 腫 瘍IC部 分 の 縮 小 率 腫 瘍IC部 分 の 縮 小 傾 向 は動 注 後 比 較 的 早 い 週 数 に 急 峻 で,病 巣 消 失 群 で は 動 注 後1週 目で 全 例 にcIC所 見 を認 め ず,縮 小 率 は100%で あ っ た.一 方,腫 瘍 残 存 群 で は動 注 後1週 目 で縮 小 率 が39.2%, 2週 目 で68.5%と な っ て 以 後 し だ い に 縮 小 傾 向 は 緩 徐 とな り,5週 目 で96.0%, 6週 目で96.6%と 推 移 した(図8). 3) 病 巣 消 失 群 と病 巣 残 存 群 の コ ル ポ ス コ ピ ー に よ る動 注 化 学 療 法 の効 果 判 定 コル ポ ス コ ピー 所 見 の 平 均 点 数 で 比 較 す る と, 動 注 後1週 目 以 降 い ず れ の 週 数 で も両 群 に 有 意 差 を認 め た(図3).動 注 化 学 療 法 に と もな う子 宮 頚 部 扁 平 上 皮 癌 の病 巣 部 変 化 は 病 巣 残 存 群 に 比 し て 病 巣 消 失 群 が 急 激 で あ り,コ ル ポ ス コ ピ ー 所 見 を検 討 す る こ と で動 注 後1週 目 で の 治 療 効 果 予 測 が 可 能 で あ っ た. 2. 動 注 化 学 療 法 の 経 時 的 組 織 学 的 効 果 動 注 に よ り個 々 の癌 細 胞 は まず 核 腫 大,核 小 体 腫 大,N/C比 の 増 加 を示 し,続 い て 細 胞 質 の 膨 化 を 認 め た.そ の 後 細 胞 質 の膨 化 は さ らに 進 み,そ の 結 果N/C比 は 逆 に 減 少 傾 向 と な っ た. さ ら に は 小 空 胞 が 出現 し,細 胞 質 の 膨 化 変 性 に と も な って 大 小 空 胞 が 混 在 し は じめ,多 くの 場 合 強 い 炎 症 所 見 を 背 景 に,核,細 胞 質 の 融 解 像 等 様 々 な 変 化 が 認 め ら れ た.ま た コ ル ポ ス コ ピ ー 上 最 初 の 変 化 で あ る 白色 化 部 分 の 組 織 像 を検 討 した と こ ろ,全 例 に 錯 角 化 所 見 を 認 め た. 動 注 に よ る効 果 を癌 治 療 学 会 の 化 学 療 法 の 組 織 学 的 効 果 判 定 基 準 に従 い分 類 し た(図9).ま た 腫 瘍 細 胞 に お い て 核 膜 お よび 核 小 体 が 明 瞭 に 観 察 で き る も の をviable cellと 判 定 し, viable cellの 有 無 に 着 目 して 動 注 の 経 時 的 組 織 学 的 効 果 を検 討 し た(図10). 1) 病 巣 消 失 群 動 注 化 学 療 法 後1週 目で は,癌 の 約1/3未 満 に 癌 細 胞 の変 性 壊 死 な ど を認 め るG 1aが14.3 %,癌 の2/3以 上 に 著 明 な変 性 壊 死 な ら び に 融 解 消 失 な ど を認 め るG 2が85.7%で あ っ た.動 注 後2週 目 で は,癌 の1/3以 上2/3未 満 に 癌 細 胞 の 変 性 壊 死 な らび に 融 解 な ど を認 め るG 1b が14.3%,G 2が57.1%,癌 全 体 が す べ て 壊 死 に 陥 っ て い るか,ま た は 融 解 消 失 な い し 肉芽 腫 様 組 織 あ る い は線 維 化 巣 で 置 き換 え ら れ て い る G 3が28.6%と な り,5週 目 に は 全 例 がG 3と な っ た(図9). viable cellは 動 注 後1週 目 の 生 検 組 織 で7例 全 例 に 認 め られ,viable cell消 失 症 例 の 比 率 は 0%で あ っ た が,2週 目以 降 は28.6%, 57.1% と変 化 し,5週 目 で100%に な っ た(図10). 2) 病 巣 残 存 群 動 注 化 学 療 法 後1週 目 で はG 1a 13.9%, G 1b 30.5%, G 2が55.6%で あ っ た.動 注 後 2週 目 で は11.1%がG 3と な っ た が 全 体 的 に は 変 化 に とぼ し く,6週 目で はG 1bが8.3%,G 2 が33.3%, G 3が58.4%で あ っ た(図9). viable cell消 失 症 例 の 比率 は 動 注 後1週 目 か ら0%, 11.1%,そ して30.5%へ と変 化 し た. そ して5週 目 で47.2%と な り,こ の 時 点 で 病 巣 消 失 群 との 間 に 有 意 差 を 認 め た(図10). 図10 動 注 後 のviable cell消 失症 例 の 比率 病 巣消 失 群 と病 巣残 存群 の 比 較
考
察
従 来 よ り子 宮頚 部扁 平上皮 癌 に おけ る治療 の
主力 は手 術療 法 と放 射 線療法 であ る.当 教室 で
も広 汎子 宮全摘 術症 例 に は手術摘 出物 の検 索 に
よる術 後療 法 の個別 化 を行 い,ハ イ リス ク例 に
は骨盤 外照射 を加 え,良 好 な成績 を得 てい る.
そ こ で さ らな る 予 後 改 善 の た め に化 学 療 法 を導 入 した が,当 初 術 後 に 行 っ て い た化 学 療 法 で は 手 術 に よ る 脈 管 系 の 破 綻 の た め か 治 療 効 果 が か な らず し も十 分 で は な く,5年 生 存 率 で 放 射 線 療 法 を上 回 る成 績 は 得 られ な か っ た.以 上 の 経 緯 で,脈 管 系 の破 綻 前 に 高 濃 度 の 薬 剤 の 病 巣 へ の 移 行 が 可 能 なNACと して,1965年Rosenberg に よ り開 発 さ れ て 以 来 そ の 有 用 性 に 高 い 評 価 を 得 て い るCDDP4,5)を 使 用 した動 注 化 学 療 法6,7)を 開 始 し た.癌 化 学 療 法 を行 うに 際 し,使 用 薬 剤 に 対 す る 感 受 性 や 治 療 効 果 を 治 療 早 期 に 把 握 す る こ と は そ の 後 の 治 療 方 針 を 決 定 す る上 で重 要 で あ る.と りわ けNACの 場 合 は 主 治 療 ま で の 期 間 に あ る程 度 の 制 約 が あ る ため,よ り早 期 に 薬 剤 感 受 性,治 療 効 果 の 予 測 が 可 能 で あ れ ば そ の 意 義 は 大 き い.癌 化 学 療 法 の 評 価 は,種 々 の 方 法 で 腫 瘍 量 の 変 化 と腫 瘍 の 質 的 変 化 の 両 面 か ら行 わ れ て い る.子 宮 頚 癌 の 治 療 効 果 の 評 価 も 従 来 か ら細 胞 診,組 織 診 と 内 診 を 中 心 と した 理 学 所 見 や 腫 瘍 マ ー カ ー な ど を 組 み 合 わせ て行 っ て い くの が 一 般 的 で あ り,近 年 ではCT8)やMRI9) を 用 い た 評 価 に つ い て も そ の 有 用 性 が 報 告 され て い る が,実 際 の 治 療 現 場 に お い て 治 療 効 果 を 即 時 的 か つ 簡 便 に 判 定 す る方 法 は い ま だ 確 立 し て い な い.子 宮 頚 癌 は そ の 病 巣 が 直 接 肉 眼 的 に 観 察 可 能 で あ る とい う特 徴 を有 して い る.そ こ で この 特 徴 を 利 用 し得 る検 査 法 と し て,即 時 性, 簡 便 性 を備 え た コ ル ポ ス コ ピー に 着 目 した.1925 年Hinselmannに よ っ て 開 発 され た コ ル ポ ス コ ピー は,機 器 の 発 達 と と も に今 日で は 子 宮 頚 部 病 変,と りわ け初 期 頚 癌 や 異 形 成 病 変 に 対 し て は 必 須 の検 査 法 とな っ て い る.と こ ろ が 初 期 子 宮 頚 癌 の 診 断 法 と して す で に確 立 し た感 の あ る コ ル ポ ス コ ピ ー も,そ れ を浸 潤 癌 の 治 療 効 果 判 定 に応 用 し た報 告 は少 な く10,11),特に化 学 療 法 に お け る コ ル ポ ス コ ピー 所 見 を検 討 し た も の は ほ と ん ど報 告 さ れ て い な い.し か し コ ル ポ ス コ ピ ー の す ぐれ た 解 像 能 を利 用 す れ ば,動 注 化 学 療 法 に お い て も治 療 効 果 判 定 に 有 用 な 指 標 が 得 ら れ る可 能 性 が あ る と考 え,本 研 究 を 開始 した. 動 注 化 学 療 法 に と も な う子 宮 頚 癌 病 巣 部 の 変 化 は 緩 急 様 々 で あ っ た が,動 注 後1週 目 のcIC に 着 目す る と,こ の 時 点 でcICを 認 め な くな っ た 症 例 は 全 例 手 術 摘 出 子 宮 頚 部 にviable cellを 認 め な い病 巣 消 失 群 と な り,逆 に動 注 後1週 目 でcICを 認 め た症 例 は全 例 手 術 摘 出 子 宮 頚 部 に viable cellを 認 め る病 巣 残 存 群 とな っ た.こ れ よ りcICの 有 無 は化 学 療 法 感 受 性 を よ く反 映 す る所 見 で あ り,動 注 後1週 目 で のcICの 消 失 は 非 常 に 高 い 治 療 効 果 を期 待 し得 る所 見 で あ る こ とが 示 唆 され た.し か し本 研 究 で動 注 後1週 目 にcICが 消 失 した 症 例 は 全 体 の16%に 過 ぎず, 残 る84%の 症 例 に は程 度 の 差 は あ る もの のcIC の 残 存 を認 め て い る.そ こで 動 注 後1週 目 でcIC の 残 存 して い た 症 例 に つ い て も,治 療 効 果 を反 映 す る コ ル ポ ス コ ピ ー 所 見 の 検 討 を行 っ た.そ の 結 果,動 注 に よ る 子 宮 頚 癌 病 巣 部 の 変 化 は 緩 急 に か か わ ら ず 表 面 の 白 色 化 か ら始 ま る ほ ぼ 同 様 の 過 程 を と り,cICの 縮 小,扁 平 上 皮 に よ る 被 覆 の 急 激 な症 例 ほ ど先 行 す る 白 色 化 の 出 現 が 早 い こ とが 明 らか に な っ た.ま た動 注 後1週 目 で の 白色 化 の 有 無 に 着 目す る こ とが,そ の 後 の 治 療 効 果 を予 測 す る う え で 有 用 で あ っ た.動 注 後 の 白色 化 は,コ ル ポ ス コ ピ ー 上 ご く軽 度 の も の か ら,肉 眼 で 明 らか に確 認 し得 る も の ま で様 々 で あ っ た が,元 来 血 管 異 型 の 程 度 が 軽 微 な症 例, ま た 動 注 後 の 病 巣 部 変 化 が 急 激 な症 例 で よ り早 い 段 階 に 認 め られ た .そ して 動 注 後1週 目の 段 階 で 白色 化 に至 っ て い な い 症 例 は全 例,NAC後 手 術 療 法 直 前 にcIC所 見 が 残 る結 果 と な った. ま た 病 巣 消 失 群 に お け る血 管 異 型 の 程 度 は 病 巣 残 存 群 に 比 して 総 じ て軽 微 で あ り,病 巣 残 存 群 に お け る 血 管 異 型 の 比 較 的 顕 著 な 症 例 で も,白 色 化 の 開 始 に と もな っ て 異 型 性 は 軽 減 傾 向 を と っ た.そ も そ も子 宮 頚 癌 に お け る局 所 血 管 の 異 型 度 は,腫 瘍 血 管 床 に お け る血 流 状 態 を よ く反 映 す る所 見 で あ り,血 管 異 型 が 軽 度,す な わ ち 局 所 血 流 の 良 い もの ほ ど酸 素 効 果 との 関 連 か ら, 良 好 な 治 療 効 果 が 期 待 で き る こ と は す で に 明 ら か に され て い る12).特に 動 脈 内 に 高 濃 度 の 抗 癌 剤 を 注 入 す る こ とで よ り高 い 抗 腫 瘍 効 果 を期 待 す る動 注 療 法 で は,治 療 効 果 と局 所 の 血 流 状 態 と は 密 接 に 関 連 し て い る.以 上 の こ とか ら動 注 療 法 の 治 療 効 果 と白 色 化 の 出 現 時 期 と の 関 連 を考 え る と,白 色 化 の 出 現 が よ り早 期 の もの ほ ど治 療 前 か らの 局 所 血 流 状 態 が 良 好 で あ っ た と考 え
られ る.そ して治 療の 結果,元 来軽 度 であ った
血管 の異 型性 が よ り早期 に改善 し,結 果 と して
元 来の局 所血 流 の良 さ と治療 に よる急速 な血 流
の 改善 が相乗 効果 をな して,治 療 効 果 を よ り向
上 させ る もの と考 え られ た.ま た この 白色化 し
た部分 には,組 織 倹査 で角 層 内に核 の遺 残が 認
め られ顆 粒層 の形 成が 不 良な,い わゆ る錯角化
所 見が認 め られ た.本 来 この錯角 化 は,何 らか
の 原因 に よって表 皮基 底細 胞 の分 裂 増殖 が非常
に 活発 に な る際 に認め られ る所 見 であ る.し た
が って本 研究 におけ る 白色化 は活発 な細 胞増殖
を ともな った扁平 上皮 の被 覆が起 こ りつ つ あ る
こ とを示 す所 見 と考 え られ,組 織 学 的 に も白色
化 が化学 療法 感受 性 を よ く反映 す る所 見 であ る
こ とが示 唆 され た.
病 巣表 面 に 白色 化が 発生 す る と,そ の 後は 比
較 的速や か に黄色 調 の出現 を認 め る.こ の黄色
調部 分 には,組 織 学的 検討 で全体 に強 い炎症所
見 を背景 に した細 胞壊 死像 が確認 され た.こ の
こ とか ら黄色 調変 化 は腫瘍 表面 が扁平 上皮 に お
お われ正 常所 見へ と変 化す る過程 での,癌 組織
の壊 死脱 落 を示す 所見 で あ る と考 え ちれ た.黄
色 調変化 が 出現す る と腫 瘍cIC部 分 は順 調 な縮
小 を示 し,病 巣残 存群 で も特 に動 注 後2週 目ま
で は縮小 が急 速 であ った(図8).一
方,変 化 の
急 激な病 巣消 失群 で も,動 注後1週 目に は病 巣
表面 をおお いつつ あ る扁平上 皮 に混在 して 白色
化 や 黄色 変化 の形 跡 を認め て いる.こ れ よ り病
巣消失 群 にお け る変化 も,短 期 間に 白色化 か ら
黄 色調 そ して 扁平上 皮 に よる被覆 とい う一 連 の
経 過 を経 た もの と推 察 され た.
以上 の よ うに緩 急の差 は あ る もの の子宮 頚癌
動 注化 学療 法 に よる病 巣 表面 変化 は 多 くの場 合
急 激で あ った.淺 野 は子 宮頚癌 放射 線療 法 にお
け るコル ポス コ ピー所 見 につ いて,外 向性 に発
育 した腫 瘍 では早 ければ6Gy,遅
くとも14Gy照
射 時 に は乳頭 状部分 の平坦 化 が見 られ20-30Gy
照 射 時 で腫 瘍 の 明 らか な 縮 小 を認 め るが,内 向 性 に 発 育 し た腫 瘍 で は30Gy照 射 まで 明 らか な 縮 小 は認 め 難 い と報 告 して い る11).よ って 少 な くと も腫 瘍 表 面 の 変 化 は,動 注 療 法 の 方 が 放 射 線 療 法 よ り急 激 で あ る と言 え よ う.本 研 究 で の コ ル ポ ス コ ピ ー 所 見 と生 検 組 織 診 との 経 時 的 対 比 か ら も明 ら か な よ う に,腫 瘍 表 面 の 所 見 だ け か ら 癌 全 体 に 対 す る抗 腫 瘍 効 果 を評 価 す る に は 限 界 が あ り,最 終 的 に 腫 瘍 の 量 的 質 的 変 化 を把 握 す る に は 従 来 か らの 組 織 診,腫 瘍 マ ー カ ー あ る い はCT, MRI等 各 種 画 像 診 断 を含 め た 総 合 的 な 判 断 が 必 要 で あ る.こ の 点 で コ ル ポ ス コ ピー は 決 し て 従 来 か らの 検 査 法 に 取 っ て 代 わ る もの で は な い.し か し 目 的 を治 療 途 中 で の 早 期 効 果 判 定 と した 場 合,治 療 に よ る変 化 が 急 激 で あ るほ ど コ ル ポ ス コ ピー の す ぐれ た 解 像 能,簡 便 性, 即 時 性 は 有 用 で あ り,本 研 究 で 得 ら れ た 指 標 を 用 い る こ とで,子 宮 頚 部 扁 平 上 皮 癌 動 注 化 学 療 法 に お け る 早 期 か つ 客 観 的 な 治 療 効 果 判 定 に か か わ る コ ル ポ ス コ ピー の 有 用 性 を さ ら に 高 め る こ とが 可 能 で あ る と考 え られ た. 結 論 子 宮 頚 部 扁 平 上 皮 癌II期 症 例 に 対 す る動 注 化 学 療 法 の 治 療 効 果 は,腫 瘍 表 面 の 経 時 的 変 化 を コル ポ ス コー プ で観 察 し所 見 を解 析 す るこ とで, 組 織 学 的 変 化 が 認 め ら れ る よ り早 期 に(動 注 後 1週 間)判 定 し得 る可 能 性 が 示 唆 さ れ た. 稿 を終 わ るに 臨 み,御 指 導,御 校 閲 を賜 っ た恩 師 工 藤 尚文 教 授 に 深 甚 な る謝 意 を表 します.ま た直接 御 指 導 い た だ き ま した鳥取 市 立病 院産 婦 人科 佐 能孝 先 生 に 深謝 い た し ます. 尚,本 論 文 の 一 部 は 第20回 日本 婦 人科 病 理 ・コル ポ ス コ ピー 学 会 お よび第44回 日本 産科 婦 人科 学 会 に て発 表 した.文
献
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2) 佐 藤 春 彦:腫 瘍 血 管 の 機 能 特 性 と癌 治 療 へ の 応 用.治 療 (1987) 69, 59-63.3) 杉 森 甫,矢 島 聰,山 辺 徹:コ ル ポ ス コ ピ ー 標 準 図 譜,日.婦 人 科 病 理.コ ル ポ 学 会 編,中 外 医 学 社, 東 京 (1994) PP. 6-12.
4) Rosenberg B, Van Camp L and Krigas T: Inhibition of cell division in Escherichia coli by electrolysis
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5) Thigpen T, Shigleton H, Homesley H, Lagasse L and Blessing J: Cis-Platinum in treatment
of
advanced or recurrent squamous cell carcinoma of the cervix. A phase II study of the gynecologic
oncology group. Cancer (1981) 48, 899-903.
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Cis-Platinum in the management of squamous cell carcinoma of the uterine cervix. Gyn Oncol (1981)
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7) 近 藤 恒 正:子 宮 頚 部 扁 平 上 皮 癌 に 対 す る 術 前 昇 圧 動 注 化 学 療 法 の 効 果.産 婦 中 四 会 誌 (1992) 40, 199-209. 8) 鈴 木 正 彦,高 橋 康 一,山 内 格,飯 塚 義 浩,野 口 顕 一:CTに よ る 子 宮 頚 癌 放 射 線 療 法 の 管 理.産 と婦 (1991)
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9) 飯 塚 義 浩:子 宮 頚 癌 放 射 線 治 療 効 果 評 価 に お け るmagnetic resonance imaging (MRI)の 意 義.日 産 婦 誌 (1996) 48, 37-44.
10) Yew Cheong Choo, Chih Hsu and Ho-kei: The assessment of radioresponce of cervical carcinoma by colposcopy. Gyn Oncol (1984) 18, 28-37.
11) 淺 野 浩 一:コ ル ポ ス コ ピ ー に よ る子 宮 頚 癌 の 放 射 線 照 射 効 果 の 予 測.産 婦 中 四 会 誌 (1992) 40, 137-146 . 12) 奥 田 博 之:子 宮 頚 癌 放 射 線 療 法 例 に 於 け る組 織 微 小 循 環 状 態 の 研 究.日 産 婦 誌 (1973) 25, 799-808.