第2学年 美術科学習指導案 1 題材 自分らしさをみつめて ~「わたし」を木の彫刻で表現しよう~ 2 指導観 ○ 表現題材の中で絵画と彫刻はもっとも心象表現に適している。人はいつの時代も自らの心に沸き上がるさ まざまな感情に突き動かされて絵画や彫刻等の作品にその思いを込めてきた。昨年は「私の心の友達」をテー マに紙粘土による彫塑(首振り人形の制作)を行った。対象(心の友達)がもつ人柄や性格を、表情やポーズ に表していくというものであるが、自分の心の中にこんな友達がいて支えて欲しい。時には叱り、時には褒め てくれる。そんな対象を心に思い描き、制作することで生徒たちは間接的に自分自身を見つめていた。また、 可塑性のある紙粘土という素材で塑像を作ることで立体的な感覚や量感はある程度身についた。 今回はこの学習をステップとして、自己そのものを対象とする作品を制作する。中学校という環境に不安や期 待を抱いている1年生、そろそろ自我が目覚め、他人と自分を比べて優越感を抱いたり劣等感を抱いたりし始 める2年生、進路選択という人生で初めての山場を迎え自分の能力や適性について考え悩む3年生、それぞれ の内面や心情がストレートに表現できる題材として全校で取り組むのは意義深いことと考える。 木という素材を生かしながら、1年生では、自分を観察し、立体としての基本的な成り立ちを理解した上でか たちや動勢を大まかにとらえて表現すること。2年生では、構想を練る段階で単純化したり強調したりして表 現意図を明確にした「わたし」を表現すること。3年生では自分を客観的に見つめ、自分と対話しながら表現 意図に合った技法や素材の組み合わせなどの表現方法を幅広く選択し、かたちや色で心象表現をしていく。そ して、木彫という題材を通して、木のもつよさを感じ、立体的な感覚を身につけたり、今の自分を素直にとら え、自分の内面を表現することで、自分自身を客観的に見つめ、肯定的に受けとめることのできる自尊感情の 高まりを期待したい。 ○ 本学級の生徒たちは男子21名、女子18名の計39名である。学習態度は比較的真面目で、学習内容を 理解しようと真剣に取り組むことができる生徒が多い。しかし、自尊アンケートの結果を見ると、自己有用感 が低い生徒が多く(約4割)、自分を肯定的に見ることができない生徒も25%ほどいる。美術の授業において は、1年生の時に「わたしの心の友達」をテーマに紙粘土による彫塑の授業に取り組んだ経験がある。紙粘土 という素材の扱いや量感を考えて立体的に作品を創造することはある程度できるようになってきているが、自 分をテーマに作品をつくることに対しては、「自分をどう表現してよいかわからない。」と答えた生徒が7割を 超えている。また、木という素材に対しては、「もとのかたちをどう削っていけばイメージ通りに仕上がるのか が想像できない。」「紙粘土のようにかたちを自由に変えられないため失敗が怖い。」といった生徒がほとんどで あった。「わたし」の制作を通して、立体造形の基礎的な技法を学びながら、自分はどういう人間であるのかを 見つめさせ、自分の好きなところやよいところを肯定的に受け入れることができるようになってほしいと考え る。 ○ 本題材の指導にあたっては、そのそれぞれの制作過程で「アイデアアドバイザー」「糸鋸マイスター」「彫 刻刀マイスター」「カラーコーディネーター」「ディスプレイアドバイザー」の5つの部門に分かれて、自分の 得意な技術を教え合う活動を通して互いの意見や思いを交流させ、かたちや色で心象表現をしていくことをね らいとする。 彫刻の表現では具象表現と抽象表現の作品に大別することができるため、まず、自己理解の段階においては舟 越桂、ヘンリームーアなど人物の彫刻を主に制作している彫刻家の作品を鑑賞し、人物の内面を表現する意味 を感じ取らせるようにする。テーマに対する不安をもつ生徒が多いため、自分がどのタイプで作品を制作して いきたいか大きく具象、抽象の2つから選択させるようにする。次に、自分に合ったかたちや色を導き出すた めの学習プリントをもとに構想を深めていき、アイデアスケッチへと入らせるようにする。この時「アイデア アドバイザー」には、舟越桂、ヘンリームーア以外の具象表現、抽象表現をする彫刻家の資料を渡しておき、 さまざまな表現方法があることをアドバイスできるようにしておく。次に自己受容の段階では、木という素材 への不安をほとんどの生徒がもっているため、制作のそれぞれの段階で手順を視覚的にわかりやすく提示する ことが大切になってくると考える。まず、木材のかたちに沿って設計をさせる場面では、座像または、規定の 木材に入るようなかたちであるということから、立体的な感覚を働かせて断面化させていくようにする。もと もとのかたちと同じ透明のケースを用意しておき、どの部分を大まかに落としていけばよいのか視覚的に理解 させるようにする。その上で不要な部分を大まかに糸鋸で切断し、細かい部分は彫刻刀で彫り落としてかたち を整えていく。「糸鋸マイスター」「彫刻刀マイスター」には事前に糸鋸の扱いや彫刻等の 指導しておき、技
術的なことを互いにアドバイスし合えるようにしておく。その後紙ヤスリで表面を磨き、制作意図に合った配 色を考えて着色していく。「カラーコーディネーター」には混色や重色で得られる色の効果などやや専門的な知 識を与えておきアドバイスさせる。この交流活動を通して、それぞれの生徒が、友達から自分の得意なことを 賞賛されたり、頼りにされたりすることで自尊感情を高めることができると考える。また、自分の発想を友達 に伝えたり、いろいろな人の発想からヒントを得たり、他人の色彩感覚を学んだりすることは、発想や構想の 幅を広げることにつながっていくと考える。 3 目標 ◇ 自分の内面を深く見つめ、彫刻の作品に意欲的に自分の思いを表現しようとすることができる。 (関心・意欲・態度) ◇ 「わたし」をテーマに自分の表現意図を明確にしながら彫刻をする構想を練ることができる。 (発想・構想の能力) ◇ 材料や用具の特性を生かし、表現意図に合わせてかたちや色を表現することができる。 (創造的な技能) ◇ 互いの作品を鑑賞し、そこに込められた思いやよさを味わい、感想や自己評価を述べることができる。 (鑑賞の能力) 4 指導計画 (総時間13時間) 段階 学習活動 評価規準(観点) 配時 【自己理解】 1 舟越桂・ヘンリームーアの作品を鑑賞 し、人物彫刻の表現方法やよさを味わう。 2 題材をつかみ、「自分」とは何かを考え る。 題材のめあて 「わたし」を木の彫刻で表現してみよう ○鑑賞した作品から人物彫刻の表現方 法やよさを味わうことができる。 【鑑賞】 ○木彫の作品で「わたし」を表現しよ うと自分について考えることができ る。 【関心・意欲】 1 1 【自己受容】 3 アイデアスケッチをし、構想を深める。 4 設計図を描き、断面化する。 5 彫刻をする。 ・糸鋸で大まかな部分を切り落とす。 ・彫刻刀で細部の立体感をつけていく。 ・紙ヤスリで表面を磨く。 6 着色をする。 ・構想に沿って配色を考える。 ・配色計画に沿って塗る。 ・ニス塗りと仕上げをする。 ○表現したい「わたし」について構想 を練ることができる。 【発想・ 構想】 ○立体的な感覚を生かして断面図を考 え、木に描き込むことができる。 【創造】 ○糸のこの用途を理解し、大まかなか たちに切ることができる。 【創 造】 ○彫刻刀の用途を理解し、場面に合わ せて彫刻刀を使い分け細かい立体感を 表現することができる。 【創 造】 ○紙ヤスリの効果を考えて表面を整え ることができる。 【創 造】 ○制作意図を効果的に表現できる配色 を考える。 【発想・構 想】 ○丁寧に着色ができる。 【創造】 ○ 丁寧に最終仕上げをすることが できる。 【創造】 1 1 1 3 1 1 本時 (10/13) 1 1
【自己変容】 7 自他の作品を鑑賞する。 8 学級ごとに展示(ディスプレイ)の方法 を考える。 ○自他の作品を鑑賞し、感想を述べる ことができる。 【鑑賞】【関心・意 欲】 ○学級でテーマを考え展示の方法を考 えることができる。 【発想・構 想】 1 5 本時の指導観 前時までに生徒たちは自分の構想を書いたプリントのアイデアスケッチにあらかた配色を考えて着色をしてい る。 そこで、本時では、自己理解の段階でこれまでに学習した色に関する基本的な性質や色が持つ感情などについ て確認した上で本時学習のめあてを確認する。 自己受容の段階では、かたちのでき上がった「わたし」の表情やポーズ、制作意図(どんな自分を表現したい のか)をもとに作品の配色計画を立てさせていく。その際、グループのメンバーからアドバイスをもらいながら 再考させるようにしていく。特に役割分担の中でカラーコーディネートの部門を担当しているメンバーから配色 カードや色に関する資料を提示してもらいながら考えを深めさせるようにしていきたい。 最終的には自分の制作意図を最重視しながら配色を決定させていくようにする。友達やカラーコーディネータ ーの意見も参考にしてよいが、自分が選択した色についても自信を持って決定していってよいことも伝える。配 色が決まったら、アイデアスケッチに絵の具で着色させ、視覚的に確認させるようにする。 自己変容の段階では、本時学習のまとめとして、決定した配色についてカラーコーディネーターから評価して もらい、自己評価を記入する。 次時の学習では、本時で考えた色を実際に着色していくことを伝える。 6 主眼 ○グループでの配色についてのアドバイス活動を通して、構想に基づいた「わたし」のイメージに合う配色を決 めることができる。(発想・構想の能力) 7 授業仮説 グループでのアドバイス活動において、友達やカラーコーディネーターからのアドバイスを活用させれば、イ メージに合った「わたし」の配色を決めることができ、自尊感情を高めることができるであろう。 8 準 備 ①学習プリント②提示用資料③めあて④配色カード⑤絵の具
9 展開 過 程 学習活動・内容 教具・資料 指導上の留意点 形態 配 時 評価(期待される 生徒の様相) 自 己 理 解 1 前 時 ま で の 学 習 を 振 り返る。 2 色 の 性 質 の 学 習 を 振 り返る。 3 本 時 学 習 の め あ て を 確認する。 「わたし」のイメージに 合う配色を決めよう ① ② ③ ・色のもつ感情や重色、混 色など配色の効果について 資料を黒板に掲示しながら 確認する。 ・本時のめあてを確認させ る。 一斉 3 5 5 自 己 受 容 4 自 分 の 構 想 プ リ ン ト を グ ル ー プ の メ ン バ ー や カ ラ ー コ ー デ ィ ネ ー ターに見せ、アドバイス をもらう。 5 ア ド バ イ ス と 自 分 の ア イ デ ア を も と に 配 色 を再考する。 ① ④ ⑤ ・構想プリントに書いた制 作意図と配色について迷っ ていることなどについて意 見をもらう。 ・よい点は認め、迷ってい る点についてアドバイスす るようにさせる。 ・もらったアドバイスと自 分の構想をもう一度併せて 吟味させる。 ・自分の最初の構想を必ず 変える必要はないことを伝 える。 グループ グループ 15 5 ・カラーコーディネー ター用の資料を活用し てイメージに合う色に するには重色や混色が 大切であることをアド バイスしている。(髪や 服の色など) 自 己 変 容 6 決 定 し た 配 色 を 学 習 プリントに塗る。 7 本 時 学 習 の ま と め と 自己評価をする。 8次時の予告を聞く。 ① ⑤ ① ・決定した配色を実際に絵 の具で作って構想プリント に塗り、視覚的に確かめさ せる。 ・自分で決めた配色につい て自己評価させる。 グループ 一斉 10 5 2 ・もらったアドバ イ ス と 自 分 の 考 え か ら 吟 味 し て 制 作 意 図 に 応 じ た 配 色 を 決 め る ことができる。
美術科学習プリント
「わたし」を木の彫刻で表現しよう
<気づいたこと・感想> <気づいたこと・感想> 私は具象 ・ 抽象
表現にしよう! 私の好きな「わたし」を書いてみよう! ○ ○ ○ 友達から聞いた「わたし」のいいところ ○ ○ ○ な「わたし」を表現したい。 具象表現 抽象表現アイデアスケッチをしてみよう! 表情
服装・ポーズ